JP5340755B2 - セラミックス多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、セラミックス多孔体に関する。
セラミックス多孔体は、フィルター、ガス分散板、真空吸着装置等に用いられている。セラミックス多孔体は耐食性に優れており、特に不純物による汚染を嫌う環境で使用される部材として好適である。
例えば、特許文献1には、多孔質体からなる載置部と緻密質体からなる支持部とを具備する真空吸着装置であって、該載置部と該支持部との接合界面が実質的に隙間なく一体的に焼成されてなる真空吸着装置が開示されている。特許文献1の多孔質体は、セラミックス粉末とガラスから構成されている。
また、特許文献2には、高気孔率と高強度を両立させた高強度アルミナ多孔体を製造する方法であって、アルミナ粉末を主成分とする成型体をパルス通電焼結により、アルミナ粒子間の局所加熱を誘起させ、それによりネック成長を促進させるとともに組織を微細化することにより、アルミナ多孔体とする製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、通気孔を有する多孔質アルミナ焼結体において、アルミナ純度が99.5重量%以上であり、平均粒子径が1μm以下のアルミナ粒子と、平均粒子径が2〜5μmのアルミナ粒子との2種の粒子の組み合わせの結合により形成された骨格で通気孔が形成され多孔質アルミナ焼結体が開示されている。
さらに、特許文献4には、緻密質部分と多孔質部分とを備えたセラミック焼結体であって、前記緻密質部分がセラミック微粒の焼結によって形成されており、前記多孔質部分がセラミック粗粒の焼結によって形成されており、前記セラミック微粒と前記セラミック粗粒とが一体で加圧焼結されたセラミック焼結体が開示されている。この多孔質部分には粒径40μm以上のセラミック粗粒が用いられている。
特開2005−22027号公報 特開2002−128562号公報 特開2004−315358号公報 特開2002−338334号公報
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、結合材にガラスを使用しているため、多孔体のヤング率が低く、またガラス成分がゴミになるおそれがあるため、特に不純物を嫌う厳しい環境では、使用できない場合があった。
また、特許文献2及び3に記載された発明では、セラミックスの純度は高いものが得られるが、使用できるセラミックス粉末が小さいため、気孔径の比較的大きな多孔体には適用できなかった。
また、特許文献4に記載された発明では、粗粒の成形体と微粒の成形体とをホットプレスにより同時に焼結させて多孔体と緻密体とを接合しているが、このような方法では、ホットプレスにより、本来収縮率の異なるものを主として加圧方向に強制的に収縮させて焼結させるため、焼結後の残留応力が極めて大きく、多孔体や緻密体に割れが生じ易いという問題があった。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、加工が容易であり、高精度に加工でき、さらに、緻密質セラミックスとの嵌合体としたときにもクラックが生じ難い高純度のセラミックス多孔体を得ることを目的とする。
本発明は、これらの問題を解決するため、結合材を実質的に含まず、アルミナ粒子であるセラミックス粒子同士の結合により形成され、ヤング率が50GPa以上であるセラミックス多孔体であって、前記セラミックス多孔体は、内側部分(以下、中央部という。)と、前記内側部分を環状に囲み、かつ隣接する外側部分(以下、外周、場合により外周部という。)とからなり、少なくとも前記内側部分のヤング率が100GPa以上であり、前記セラミックス粒子は、平均粒径が10μm以上であり、純度が99.5%以上であり、前記外側部分は前記内側部分のヤング率に対して5〜40%低いことを特徴とするセラミックス多孔体を提供する。
また、成形冶具に挿入された環状の仕切りの内側に、平均粒径が10μm以上、純度が99.5%以上のセラミックス粒子を、前記仕切りの外側に造孔材を含むセラミックス粒子を充填する充填工程と、充填したセラミックス粒子をパンチによりプレスして成形する成形工程と、所定の雰囲気でホットプレス焼結する焼結工程と、を含むセラミックス多孔体の製造方法を提供する。
また、前記充填工程で得られる充填物の外周に造孔材を含む製造方法、また、前記成形工程で用いるパンチが中凸形状である製造方法、また、前記焼結工程の雰囲気が窒素雰囲気、さらには0.0001〜0.01MPaの窒素雰囲気である製造方法を提供する。
ヤング率が高く、高純度のセラミックス多孔体を提供できる。また、加工が容易であり、高精度に加工でき、さらに、緻密質セラミックスとの嵌合体としたときにもクラックが生じ難い。
本発明のセラミックス多孔体は、結合材を実質的に含まず、セラミックス粒子同士の結合により形成され、ヤング率が50GPa以上である。
従来、気孔率が10〜40%のセラミックス多孔体でヤング率が50GPa以上のものを得ることは困難であったが、本発明によれば、高ヤング率のセラミックス多孔体を得ることができ、100GPa以上の多孔体を得ることも可能となる。ヤング率が高いので加工精度が良く、他の部材と接合する場合であっても、接合部を高精度で接合することができる。
セラミックス多孔体を構成するセラミックス粒子は、平均粒径が10μm以上である。本発明では、このような粗いセラミックス粒子を用いて50GPa以上の高ヤング率のセラミックス多孔体を得ることができる。セラミックス粒子の平均粒径のより好ましい範囲は、10〜200μmであり、より好ましくは、10〜100μmである。なお、本発明では、レーザー回折式粒度分布測定により求めたメディアン径(D50)をもってセラミックス粒子の平均粒径とする。
このようなセラミックス粒子を用いて得られる多孔体の平均気孔径は、3〜30μmとすることができる。このように気孔径の大きな多孔体が得られるので、例えばフィルターやガス分散板に用いる場合には、通気抵抗を小さくすることが可能となる。なお、本発明でいう平均気孔径は、水銀圧入法により測定したものである。
セラミックス粒子の純度は、99.5%以上のものを用いることができる。このように純度が高く、結合材を用いないので不純物による汚染を抑えることができる。
さらに、本発明は、外周にヤング率の小さい低剛性部を有するセラミックス多孔体を提供する。低剛性部は、セラミックス多孔体の中心部のヤング率に対して5〜40%低いことが好ましい。低剛性部であっても、通常のセラミックス多孔体よりは十分にヤング率が高いことから、精度良く加工でき、しかも加工されることが多い外周に低剛性部を有するので、加工が容易になる。ここで、中心部とはセラミックス多孔体の表面に露出していない内部の略中心を意味する。低剛性部が形成される外周は、セラミックス多孔体のホットプレス方向に平行な外側の表面をいうが、セラミックス多孔体の表面全体に低剛性部を形成しても良い。低剛性部は少なくともホットプレス方向に平行な外側の表面から所定の距離の厚さで形成される。例えば、円板や円柱形状であれば、円の半径に対して5〜50%の厚さとすることができる。
低剛性部は、他の部材との嵌合体または接合体を構成する場合に、特に有効である。セラミックス多孔体は、緻密質セラミックスと接合されて用いられることが多く、特に真空吸着装置やガス分散板など、セラミックス多孔体の外周を緻密質セラミックスで囲うように接合したものがある。例えば、円板、円柱等の形状のセラミックス多孔体と、それを嵌め込むことのできる環状、管状等の緻密質セラミックスとが接合される。その際、本発明のセラミックス多孔体は、外周に低剛性部を有しているので、嵌合または接合時に低剛性部が変形し、割れや欠けを生じることなく作製することができる。
セラミックス多孔体の気孔率は、10〜40%とすることが好ましい。このような範囲であれば、フィルター、ガス分散板、真空吸着装置等に好適である。
次に本発明のセラミックス多孔体の製造方法について、説明する。
セラミックス粒子は10μm以上、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmの平均粒径のものを用いることができる。このようなセラミックス粒子は、セラミックスを溶融、固化、粉砕する溶融法の他、噴霧乾燥法、溶射法、CVD法等、種々の方法を用いて作製することができる。特に粒度分布をシャープに調整したものを用いたものが好ましい。
セラミックスとしては、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素等の種々のセラミックスを用いることができる。なかでもアルミナが好ましい。また、セラミックスは不純物が少ないことが好ましく、例えば、アルミナの場合は、純度90%以上のアルミナを用いることができ、なかでも、純度99.5%以上のアルミナが好適である。
上記したセラミックス粒子を成形冶具に充填する。その際、プレスが偏らないように均一に充填する。成形冶具は所定の気孔率の多孔質セラミックスが得られるように、スペーサを入れて調整する。成形冶具には、カーボンを用いることができる。
充填したセラミックス粒子をパンチによりプレスして成形する。成形のプレス圧は1〜3MPaとすることが好ましい。
焼結はホットプレス法を用いることができる。ホットプレスのプレス圧は5〜20MPaが好ましい。また、放電プラズマ焼結を併用してもよい。
焼結温度は、セラミックスの種類による。アルミナの場合は、1400〜1800℃で行うことが可能である。
セラミックス多孔体の外周に低剛性部を形成する方法として、充填工程で得られる充填物の外周に造孔材を含むようにする方法を用いることができる。造孔材としては、エポキシやアクリル等の樹脂バインダや、樹脂ビーズ等を用いることができる。具体的には、はじめに中央部に造孔材を含まない第一充填物を形成し、その周りに造孔材を含む第二充填物を形成することで、外周部に造孔材を含むように充填できる。
また、成形及び焼結工程で用いるパンチを中凸形状とすることによりセラミックス多孔体の外周部に低剛性部を形成する方法が採用できる。パンチを中凸にすることで中央部と外周部とにプレス圧の差が生じて外周部に低剛性部が形成される。パンチはプレスの片側を中凸としても良いし、両側を中凸としても良い。中凸の形状は特に限定されず、所定の低剛性部を得るために調整することができる。
またセラミックス多孔体の剛性を高めるには窒素雰囲気が好ましく、さらに減圧窒素雰囲気とすることでセラミックス多孔体の外周に低剛性部を形成することができ、所定の低剛性部を得るために雰囲気圧力を調整することができる。雰囲気圧力のより望ましい範囲は0.0001〜0.01MPaである。
さらに、低剛性部を形成する方法としては、造孔材を用いる方法、中凸形状のパンチを用いる方法、および焼結雰囲気を調整する方法のいずれかを単独で用いても良いし、これらを組み合わせても良い。
セラミックス多孔体をセラミックス緻密体と接合する場合には、ホットプレス焼結後のセラミックス多孔体をそのまま加工せずに接合しても良いし、セラミックス多孔体の低剛性部の一部または全部を研削加工して接合しても良い。
接合は、セラミックスの焼結収縮を利用して焼き嵌める方法を用いることができる。例えば、環状または管状のセラミックス成形体に円板または円柱状のセラミックス多孔体を嵌め込み、加熱することでセラミックス成形体を緻密化させるとともに、環状または管状のセラミックス緻密体とセラミックス多孔体とを直接接合させる方法を用いることができる。この場合、セラミックス成形体の焼結後の寸法をセラミックス多孔体と同等かそれよりもやや小さく調整することで、セラミックス多孔体がセラミックス緻密体に締め付けられて隙間無く接合することができる。例えば、環状のセラミックス成形体の寸法は、焼結後の内径がセラミックス多孔体の外径よりも1〜2%小さくなるように調整することができる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。
セラミックス粒子としてアルミナ(純度99.5%)を用いた。内径100mmのカーボンの成形冶具に詰め、2MPaで仮プレスし、昇温速度300℃/min、1600〜1720℃で180分、8MPaの圧力をかけてホットプレス焼結を行った。低剛性部については、以下の方法でそれぞれ形成した。焼結は窒素雰囲気とした。得られる多孔体の形状は、外径100mmで、少なくとも50mmの厚さとなるように調整した。
造孔材を用いた方法については、上記の内径100mmのカーボンの成形冶具内に内径80mmのアクリル製の仕切りを入れ、仕切り内に造孔材を含まないアルミナ粒子を充填し、仕切り外に造孔材(エポキシ樹脂、5wt%)を含むアルミナ粒子を充填した後、仕切りをはずして、上記のようにホットプレス焼結を行った(試験例1〜4)。
パンチを中凸形状とし、故意に圧力差をつけ、外周部のヤング率を低下させる方法については、上記カーボンの成形冶具に対応した外径99mmのパンチに外径70mmの凸部を設けた治具を用い、上記のようにホットプレス焼結を行った(試験例5〜8)。
また、焼結雰囲気を調整する方法によってもセラミックス多孔体を作製した。雰囲気については真空吸引と窒素導入を繰り返して、減圧窒素雰囲気とした(試験例9〜14)。
結果を以下に示す。セラミックス粒子の平均粒径については、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。セラミックス多孔体の気孔率は、アルキメデス法により測定した。ヤング率は、中心部および低剛性部から試験片を切り出してJISR1602に準拠して測定した。なお、低剛性部の試験片は、得られた円柱形状のセラミックス多孔体の外径から10mmの厚さの部分から採取し、中心部の試験片はそれよりも内側の部分から採取した。
Figure 0005340755
得られたセラミックス多孔体のヤング率は、71〜311GPaを示した。いずれの試験においても、中心部は100GPa以上のヤング率を示し、中心部と比べてヤング率が低い低剛性部が形成された。これらの多孔体について低剛性部の加工を行ったところ、精度良く、容易に加工することができた。
次に、上記試験と同様に作製したセラミックス多孔体を環状のセラミックス緻密体と接合した。
接合は、環状のセラミックス成形体(アルミナ99.5%、平均粒径0.5μm)に、セラミックス多孔体を嵌め込んで焼結する方法を用いて行った。環状のセラミックス成形体の寸法は、焼結後の内径がセラミックス多孔体の外径よりも1〜2%小さくなるように設計した。具体的には、セラミックス多孔体の外径は、側面を1mmの厚さで研削し98mmとし、環状のセラミックス成形体を単独で焼結したときの内径が97mmになるように設計した。セラミックス成形体の環状部分の内側に多孔質セラミックスを入れ、昇温速度10℃/時間、1600℃で3時間保持し、焼結を行った。
その結果、いずれの接合体においてもセラミックス多孔体及びセラミックス緻密体に割れが生じなかった。なお、接合体における環状のセラミックス緻密体の気孔率は、いずれも0.1%以下であった。

Claims (5)

  1. 結合材を実質的に含まず、アルミナ粒子であるセラミックス粒子同士の結合により形成され、ヤング率が50GPa以上であるセラミックス多孔体であって、
    前記セラミックス多孔体は、内側部分と、前記内側部分を環状に囲み、かつ隣接する外側部分とからなり、
    少なくとも前記内側部分のヤング率が100GPa以上であり、
    前記セラミックス粒子は、平均粒径が10μm以上であり、純度が99.5%以上であり、
    前記外側部分は前記内側部分のヤング率に対して5〜40%低いことを特徴とするセラミックス多孔体。
  2. 請求項1記載のセラミックス多孔体の製造方法であって、
    成形冶具に挿入された環状の仕切りの内側に、平均粒径が10μm以上、純度が99.5%以上のセラミックス粒子を、前記仕切りの外側に造孔材を含むセラミックス粒子を充填する充填工程と、
    充填したセラミックス粒子をパンチによりプレスして成形する成形工程と、
    所定の雰囲気でホットプレス焼結する焼結工程と、
    を含むセラミックス多孔体の製造方法。
  3. 前記成形工程で用いる前記パンチが中凸形状である請求項2記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  4. 前記焼結工程の雰囲気が、窒素雰囲気である請求項2又は3記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  5. 前記焼結工程の雰囲気が、0.0001〜0.01MPaの窒素雰囲気である請求項4記載のセラミックス多孔体の製造方法。
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