JP5337320B1 - 振動抑制装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】構造物の変位を伝達するためのケーブルを、変位の方向にかかわらず、緩みのない状態に保持することで、作動流体の流動による慣性効果を確保し、構造物の振動を十分に抑制できる振動抑制装置を提供する。
【解決手段】本発明による振動抑制装置は、建物Cの下梁BLに設けられた一対のシリンダ8、8と、上梁BUから反対方向に延びる一対のケーブル10、10と、各ケーブル10の他端部がそれぞれ連結され、各シリンダ8内をケーブル10側の第1油室12と反対側の第2油室13に区画する一対のピストン9、9と、下梁BLと上梁BUが相対的に変位したときに、一方のピストン9が、ケーブル10で引っ張られることによりシリンダ10内を移動し、このピストン9の移動に伴い、作動油HFが、両第1油室12、12の間で第1バイパス通路6を通って流動し、両第2油室13、13の間で第2バイパス通路7を通って流動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、構造物を含む系内の第1部位と第2部位の間の相対的な変位を抑制することによって、構造物の振動を抑制する振動抑制装置に関する。
従来、この種の振動抑制装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この振動抑制装置は、構造物の梁の上下方向の振動を抑制するためのものであり、マスダンパと、マスダンパに梁の振動を伝達するためのケーブルと、ケーブルにテンションを付与するための付加ばねを備えている。ケーブルは、鋼材で構成され、梁の下側に沿って延び、梁の両端部に連結されている。マスダンパ及び付加ばねは、梁とケーブルの間に互いに並列に設けられている。この付加ばねでケーブルが下方に付勢されることにより、ケーブルにはテンションがあらかじめ付与されている(プレテンション)。マスダンパは、ボールねじ、回転マス及び粘性体を有する一般的なタイプのものである。
以上の構成の従来の振動抑制装置では、地震時などに梁が上下方向に振動すると、梁の振動が、ケーブルを介してマスダンパに伝達され、回転マスの回転運動に変換される。それにより、回転マスの回転慣性効果と粘性体の粘性減衰効果によって、梁の振動が抑制される。
特開2010−38318号公報
上述した従来の振動抑制装置では、振動時に梁が下方に変位した(撓んだ)ときには、ケーブルがマスダンパを介して下方に押圧されることで、ケーブルのテンションが増大する。したがって、この場合には、ケーブルの剛性が発揮される結果、梁の振動をマスダンパに伝達し、その回転慣性効果を得ることができる。
一方、梁が上方に変位したときには、それに追従して、マスダンパ及び付加ばねが上方に移動することによって、ケーブルが緩み、付加ばねの移動量が限界値を超えたときに、ケーブルのテンションが消失する。この場合には、ケーブルの剛性が発揮されず、梁の振動がマスダンパに伝達されないため、その回転慣性効果を得ることができない。以上のように、従来の振動抑制装置では、梁が下方に変位したときのみ、回転マスの回転慣性効果が「片効き」の状態で発揮されるため、梁の振動を十分に抑制することができない。
このような不具合を回避するために、例えば、付加ばねとしてばね定数のより高いものを用いることが考えられる。しかし、その場合には、付加ばねと並列に配置されているマスダンパに梁の変位が伝達されにくくなり、回転マスの回転慣性効果が抑制される結果、やはり十分な制振効果を得ることができない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、構造物の変位を伝達するためのケーブルを、その変位の方向にかかわらず、緩みのない状態に保持でき、それにより、作動流体の流動による慣性効果を確保することによって、構造物の振動を十分に抑制することができる振動抑制装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造物を含む系内の第1部位と第2部位の間の相対的な変位を抑制することによって、構造物の振動を抑制する振動抑制装置であって、第1部位に設けられ、作動流体が充填された一対のシリンダと、一端部が第2部位に連結され、第2部位から互いに反対方向に延びる一対のケーブルと、一対のシリンダ内にそれぞれ摺動自在に設けられ、一対のケーブルの他端部がそれぞれ連結されるとともに、シリンダ内をケーブル側の第1流体室とケーブルと反対側の第2流体室に区画する一対のピストンと、を備え、第1部位と第2部位が相対的に変位したときに、変位の方向に応じて、一対のピストンの一方が、ケーブルで引っ張られることによりシリンダ内を移動するように構成され、一対のシリンダ内の第1流体室にそれぞれ接続され、一方のピストンがシリンダ内を移動するのに伴い、一方のピストンに対応する一方の第1流体室から他方の第1流体室に作動流体を流動させる第1バイパス通路と、一対のシリンダ内の第2流体室にそれぞれ接続され、一方のピストンがシリンダ内を移動するのに伴い、他方のピストンに対応する他方の第2流体室から一方の第2流体室に作動流体を流動させる第2バイパス通路と、をさらに備えることを特徴とする。
この振動抑制装置によれば、構造物を含む系内の第1部位と第2部位の間に、シリンダ、ピストン及びケーブルなどが一対で設けられている。各シリンダは、第1部位に設けられ、作動流体が充填されるとともに、その内部は、摺動自在のピストンによって、ケーブル側の第1流体室とその反対側の第2流体室に区画されている。一対のケーブルは、それぞれの一端部が第2部位に連結され、第2部位から互いに反対方向に延びるとともに、各他端部が各ピストンに連結されている。また、一対の第1流体室は第1バイパス通路を介して互いに連通し、一対の第2流体室は第2バイパス通路を介して互いに連通している。
以上の構成により、この振動抑制装置では、構造物の振動に伴って第1部位と第2部位が相対的に一方の方向に変位すると、その相対変位の方向に応じて、一方のピストンが一方のケーブルで引っ張られることにより、この相対変位がケーブルを介してピストンに伝達される。これにより、一方のピストンが第2部位側に移動するのに伴い、作動流体が、一方の第1流体室から流出し、第1バイパス通路を通って他方の第1流体室に流入する。
また、他方の第1流体室に流入した作動流体の圧力により、他方のピストンが第1部位側に移動する。これにより、他方のケーブルが引っ張られるとともに、作動流体が、他方の第2流体室から流出し、第2バイパス通路を通って一方の第2流体室に流入し、戻される。また、ピストン及びケーブルなどが一対で設けられているため、第1部位と第2部位が上記と逆の方向に変位したときには、ピストンの移動方向や作動流体の流動方向が逆になるだけで、上記と同じ動作が得られる。
以上のように、本発明の振動抑制装置によれば、構造物の振動に伴って第1部位と第2部位の間に相対変位が発生したときに、この相対変位が一方のケーブルを介して一方のピストンに伝達されるのに応じて、一対のピストンが連動して移動する。そして、この両ピストンの移動に伴い、作動流体が、一対の第1流体室の間で第1バイパス通路を介して流動すると同時に、一対の第2流体室の間で第2バイパス通路を介して流動する。したがって、このようなバイパス通路を介した作動流体の流動による慣性効果と作動流体の粘性減衰効果により、第1部位と第2部位との相対変位を抑制することによって、構造物の振動を抑制することができる。
また、第1バイパス通路を介した作動流体の流動と第2バイパス通路を介した作動流体の流動が、並行して同時に行われるので、作動流体の流動による、より大きな慣性効果を得ることができ、構造物の制振効果を向上させることができる。
また、一方のピストンが一方のケーブルで引っ張られ、移動するのに伴い、作動流体が他方の第1流体室に流入し、他方のピストンを移動させることにより、他方のケーブルは、移動した他方のピストンで引っ張られることによって、緩みのない状態に保持される。その結果、第1部位と第2部位との相対変位を、その方向にかかわらず、緩みのない状態に保持されたケーブルを介してピストンに伝達し、作動流体の流動による慣性効果と粘性減衰効果を確保でき、したがって、構造物の振動を十分に抑制することができる。
さらに、この振動抑制装置では、テンション状態に保持されるケーブルから成る弾性要素と、作動流体から成る慣性接続要素及び粘性要素が、直列に接続された関係になるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。したがって、ケーブルの剛性(ばね定数)や、作動流体の密度及び粘度、シリンダの断面積、第1及び第2バイパス通路の通路面積などの諸元を適切に設定することによって、この付加振動系の固有振動数を構造物の所望の固有振動数に同調(共振)させることができ、それにより、構造物の振動エネルギを第1付加振動系で吸収することによって、構造物の振動をさらに良好に抑制することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の振動抑制装置において、一対のケーブルの各々と第2部位との間には、第1部位に設けられた第1滑車と、第2部位に設けられた第2滑車が配置されており、各ケーブルは、その中間の部分において、第1滑車及び第2滑車に巻き回されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1部位に第1滑車が、第2部位に第2滑車がそれぞれ設けられ、一対のケーブルの各々が、その中間の部分において、第1及び第2滑車に巻き回されているので、両滑車の一方は他方に対して動滑車として機能する。この動滑車機能により、第1部位と第2部位との相対変位が、増幅された状態でケーブルからピストンに伝達されることによって、ピストンの移動量及び作動流体の流動量が増大するので、構造物の制振効果をさらに高めることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の振動抑制装置において、回転自在の第1回転マスと、第1バイパス通路及び第2バイパス通路の少なくとも一方に設けられ、作動流体の流動を回転運動に変換し、第1回転マスを回転させる動力変換機構と、をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1及び第2バイパス通路を作動流体が流れるときに、それらの少なくとも一方に設けられた動力変換機構により、そのバイパス通路における作動流体の流動が回転運動に変換されることによって、第1回転マスが回転する。これにより、第1回転マスの回転慣性による慣性効果が付加されることによって、構造物の制振効果をさらに高めることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の振動抑制装置において、第1部位と第2部位の間に、一対のケーブルの各々及びそれに対応するピストンとそれぞれ並列に設けられ、第1部位及び第2部位にそれぞれ連結され、互いに直線的に移動可能な第1移動部材及び第2移動部材と、回転自在の第2回転マスとを有し、第1部位と第2部位が相対的に変位したときに、第1移動部材と第2移動部材との相対的な直線運動を第2回転マスの回転運動に変換する一対のマスダンパをさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1部位と第2部位の間に、第1及び第2移動部材と回転マスをそれぞれ有する一対のマスダンパが設けられている。第1部位と第2部位が相対的に変位すると、第1及び第2部位にそれぞれ連結された第1及び第2移動部材が相対的に直線運動し、この直線運動がマスダンパによって第2回転マスの回転運動に変換され、第2回転マスの回転慣性による慣性効果が付加されることによって、構造物の振動が抑制される。
また、マスダンパが、第1部位と第2部位の間にケーブル及びピストンと並列に設けられているので、ケーブル及び作動流体から成る付加振動系(以下「第1付加振動系」という)とは別個に、マスダンパを含む付加振動系(以下「第2付加振動系」という)を構成できる。したがって、第1付加振動系の諸元に加えて、第2付加振動系の第2回転マスの質量や径などの諸元を適切に設定することによって、第1及び第2付加振動系の組合わせ固有振動数をそれぞれ構造物の所望の固有振動数に同調させることができ、それにより、構造物の振動エネルギを第1及び第2付加振動系で吸収することによって、構造物の振動をさらに良好に抑制することができる。
また、第2付加振動系が構造物の固有振動数に同調した状態で振動しているときには、マスダンパの第1及び第2移動部材が相対的に大きく変位する。したがって、第1部位と第2部位との間のケーブル以外の部分の剛性が小さい場合には、その部分の変形を抑制しながら、第1部位と第2部位との相対変位を、その変位ロスが小さな状態で、ケーブルに伝達でき、それにより、第1付加振動系による制振効果を有効に得ることができる。
本発明の第1実施形態による振動抑制装置を、これを適用した建物の一部とともに概略的に示す正面図である。 図1の振動抑制装置の左半部の下側部分を拡大して示す正面図である。 第1実施形態による振動抑制装置の振動モデルを示す図である。 振動抑制装置の第1変形例を示す図である。 図4のV−V線に沿う断面図である。 第1変形例による振動抑制装置の振動モデルを示す図である。 振動抑制装置の第2変形例を示す、図5と同様の断面図である。 第2変形例による振動抑制装置の振動モデルを示す図である。 本発明の第2実施形態による振動抑制装置の構成を、これを適用した鉄塔とともに概略的に示す正面図である。 図9の振動抑制装置に用いられるマスダンパの断面図である。 第2実施形態による振動抑制装置のモデル図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の第1実施形態による振動抑制装置1を示している。この振動抑制装置1は、ビルなどの高層の建物Cの内部に設けられ、その水平方向の層間変位を抑制することによって、建物Cの振動を抑制するものであり、上下の梁BU、BLと左右の柱PL、PRによって取り囲まれた空間(以下「設置空間」という)Sに配置されている。
具体的には、振動抑制装置1は、支持部材2、慣性質量ダンパ3、2つの第1滑車4、4及び第2滑車5、5と、一対のケーブル10、10を備えており、これらの構成要素は、設置空間S内に左右対称に配置されている。
支持部材2は、例えばH形鋼で構成されたブレース状のものであり、左右の斜め材2a、2aの上端部が、左右の柱PL、PRと上梁BUとの接合部にそれぞれ連結されている。斜め材2a、2aは、下梁BLの付近まで延び、それらの下端部が互いに連結され、ケーブル連結部2bになっている。以上の構成により、建物Cの上梁BUの部分(上層)の変位が、支持部材2によって取り出される。
慣性質量ダンパ3は、第1バイパス通路6、第2バイパス通路7、左右一対のシリンダ8、8及びピストン9、9を備えている。シリンダ8は、円筒状のものであり、その端壁の部分において、下梁BLと各柱Pとの接合部付近に設けられたシリンダ取付部材11に一体に取り付けられ、設置空間Sの内方に向かって水平に延びている。また、シリンダ8には作動油HFが充填されている。
ピストン9は、円板状のピストン本体9aとロッド9bを一体に有し、ピストン本体9aを介してシリンダ8内に左右方向に摺動自在に設けられている。また、シリンダ8の内部空間は、ピストン本体9aによって、設置空間Sの中央側の第1油室12と、それと反対側の第2油室13に区画されている。ロッド9bは、ピストン本体9aの中心から設置空間Sの中央側に水平に延び、シリンダ8の端壁を液密状態で貫通し、その外部に突出している。
第1バイパス通路6は、左右の第1油室12、12に接続され、両者を連通している。一方、第2バイパス通路7は、左右の第2油室13、13に接続され、両者を連通している。
図2に示すように、ピストン本体9aには、これを貫通する2つの孔が形成されており、これらの孔にそれぞれ、第1リリーフ弁14と第2リリーフ弁15が設けられている。第1リリーフ弁14は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばね(いずれも図示せず)で構成されており、第1油室12内の作動油HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、第1及び第2油室12、13を互いに連通させる。第2リリーフ弁15は、第1リリーフ弁14と同様に構成され、逆向きに配置されており、第2油室13内の作動油HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、第1及び第2油室12、13を互いに連通させる。
ケーブル10の一端部は、シリンダ8から突出したピストン9のロッド9bに連結され、他端部は、支持部材2のケーブル連結部2bの側面に連結されている。また、下梁BLには、例えばH形鋼で構成された左右2つの滑車取付部材16、16が立設され、ケーブル連結部2bに対向している。前記第1滑車4は滑車取付部材16に、第2滑車5はケーブル連結部2bに、互いに対向するように設けられている。ケーブル10は、その中間の部分において、第1滑車4及び第2滑車5に折り返された状態で巻き回され、両端部においてピストン9のロッド9bと支持部材2のケーブル連結部2bに連結されることにより、緩みのない状態で張られている。
次に、上述した構成の振動抑制装置1の動作を説明する。建物Cが静止している状態では、振動抑制装置1は、図1に示す中立状態にあり、左右のピストン9、9及びケーブル10、10などは中立位置に位置し、各ケーブル10は緩みのない状態になっている。この状態から、地震時などに建物Cが振動するのに伴い、上梁BUと下梁BLが左右方向に相対的に変位すると、この層間変位は、上梁BU付近に連結された支持部材2と、下梁BL付近に設けられたシリンダ8、8との間の変位として現れる。
例えば、上梁BUが下梁BLに対して図1の右方に変位したときには、支持部材2のケーブル連結部2bが右方に移動することによって、ケーブル連結部2bに連結された左側のケーブル10が右方に引っ張られることにより、左側のピストン9が中立位置から右方に移動する。このピストン9の移動に伴い、左側の第1油室12から作動油HFが流出し、この作動油HFは、第1バイパス通路6を通って右側の第1油室12に流入する。
また、第1油室12に流入した作動油HFの圧力により、右側のピストン9が右方に移動する。これにより、右側のケーブル10は、ピストン9で右方に引っ張られることにより、緩みのない状態に保たれる。さらに、このピストン9の右方への移動に伴い、右側の第2油室13から作動油HFが流出し、この作動油HFは、第2バイパス通路7を通って左側の第2油室13に流入する。
また、上梁BUが下梁BLに対して左方に変位したときには、ピストン9、9が上記とは逆に左方に移動し、第1及び第2バイパス通路6、7における作動油HFの流動方向が逆になるだけで、上記と同じ動作が得られる。
以上のように、本実施形態の振動抑制装置1によれば、建物Cの振動に伴って下梁BLと上梁BUの間に層間変位が発生したときに、この層間変位が一方のケーブル10を介して一方のピストン9に伝達され、ピストン9が移動するのに伴い、作動油HFが、一方の第1油室12から第1バイパス通路6を通って他方の第1油室12に流れるとともに、他方の第2油室13から第2バイパス通路7を通って一方の第2油室13に流れる。したがって、このような作動油HFの流動による慣性効果と作動油HFの粘性減衰効果により、層間変位を抑制することによって、建物Cの振動を抑制することができる。
また、第1バイパス通路6を介した作動油HFの流動と第2バイパス通路7を介した作動油HFの流動が、並行して同時に行われるので、作動油HFの流動による、より大きな慣性効果を得ることができ、建物Cの制振効果を向上させることができる。
また、一方のピストン9が一方のケーブル10で引っ張られ、移動するのに伴い、作動油HFが他方の第1油室12に流入することによって、他方のピストン9が一方のピストン9と反対方向に移動し、他方のケーブル10を引っ張るので、他方のケーブル10は、緩みのない状態に保持される。その結果、層間変位を、その方向にかかわらず、緩みのない状態に保持されたケーブル10を介してピストン9に伝達し、作動油HFを流動させることができ、それにより、建物Cの制振効果をさらに向上させることができる。
さらに、各ケーブル10が巻き回される第1滑車4及び第2滑車5は、下梁BLに立設された滑車取付部材16と、支持部材2のケーブル連結部2bに、それぞれ設けられており、両滑車4、5の一方が他方に対して動滑車として機能する。したがって、層間変位は、第1及び第2滑車4、5におけるケーブル10の折返し数に等しい倍数で増幅された状態で、ケーブル10からピストン9に伝達され、それに応じてピストン9の移動量及び作動油HFの流動量が増大するので、建物Cの制振効果をさらに高めることができる。
また、第1油室12又は第2油室13の作動油HFの圧力が所定値に達したときに、ピストン9に設けられた第1リリーフ弁14又は第2リリーフ弁15が開弁し、両油室12、13を連通させることによって、作動油HFの圧力を油室12、13の一方から他方に逃がす。これにより、作動油HFによる慣性効果及び粘性減衰力を制限することによって、ケーブル10に弾性限界を超える過大な引張荷重が作用するなどの、振動抑制装置1の過負荷状態を防止することができる。
以上の構成の振動抑制装置1をモデル化すると、図3のように表される。すなわち、振動抑制装置1では、上梁BUと下梁BLの間に、支持部材2及びテンション状態に保持されるケーブル10から成る弾性要素と、作動油HFから成る慣性接続要素及び粘性要素が、直列に設けられているので、これらの要素によって付加振動系が構成される。したがって、支持部材2及びケーブル10の剛性や、作動油HFの密度及び粘度、シリンダ8の断面積、第1及び第2バイパス通路6、7の通路面積などの諸元を適切に設定することによって、この付加振動系の固有振動数を建物Cの所望の固有振動数、例えば1次の固有振動数に同調させることができ、それにより、建物Cの振動を適切に抑制することができる。
図4及び図5は、振動抑制装置1の第1変形例を示す。この第1変形例は、第1バイパス通路6及び第2バイパス通路7の途中に、回転慣性による慣性効果を付与するための歯車ポンプ21及び第1回転マス27をそれぞれ設けたものである。なお、両図では、第1バイパス通路6の構成のみが示され、第2バイパス通路7のものについては省略されている。
両図に示すように、歯車ポンプ21は、ケーシング22と、ケーシング22に収容された第1ギヤ23及び第2ギヤ24を有している。ケーシング22は、第1バイパス通路6よりも大きな流路面積を有しており、互いに対向する2つの出入口22a、22aを介して、第1バイパス通路6に連通している。
また、第1ギヤ23は、スパーギヤで構成され、第1回転軸25に一体に設けられている。第1回転軸25は、第1バイパス通路6に直交する方向に水平に延び、ケーシング22に回転自在に支持され、ケーシング22の外部に若干、突出している。第2ギヤ24は、第1ギヤ23と同様、スパーギヤで構成され、第2回転軸26に一体に設けられており、第1ギヤ23と噛み合っている。第2回転軸26は、第1回転軸25と平行に延び、ケーシング22に回転自在に支持されている。また、第1及び第2ギヤ23、24の互いの噛合い部分は、ケーシング22の出入口22a、22aに臨んでいる。
第1回転マス27は、比重の比較的大きな材料、例えば鉄から成る円板で構成されている。また、第1回転マス27は、第1回転軸25に同心状に固定されており、第1ギヤ23及び第1回転軸25と一体に回転する。
以上の構成により、この第1変形例では、建物Cの振動時に下梁BLと上梁BUの間に層間変位が発生するのに伴い、作動油HFが第1及び第2バイパス通路6、7を流動する際に、ケーシング22に流入した作動油HFによって第1及び第2ギヤ23、24が回転駆動され、第1ギヤ23と一体の第1回転マス27が回転する。このように、作動油HFの流動を歯車ポンプ21で回転運動に変換し、第1回転マス27を回転させることによって、第1実施形態による作動油HFの慣性効果及び粘性減衰効果に、第1回転マス27の回転慣性による慣性効果が付加されるので、建物Cの制振効果をさらに高めることができる。
以上の構成の第1変形例による振動抑制装置をモデル化すると、図6のように表される。すなわち、この振動抑制装置では、第1実施形態の振動抑制装置1に対し、第1回転マス27から成る慣性接続要素が作動油HFから成る慣性接続要素に並列に付加された関係になる。
したがって、この第1変形例の場合、付加振動系の固有振動数を定める諸元には、第1実施形態の場合の前述した諸元に加えて、歯車ポンプ21の容積効率や第1回転マス27の質量や径などが含まれる。したがって、これらの諸元を適切に設定することによって、この付加振動系の固有振動数を建物Cの所望の固有振動数に同調させることができる。
図7は、振動抑制装置1の第2変形例を示す。この第2変形例は、上述した第1変形例の第1回転マス27に対して、第2回転マス31をさらに付加したものである。なお、図7では、図4及び図5に示した第1変形例と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
同図に示すように、前述した第1回転軸25は、第1回転マス27を越えてケーシング22と反対側に延びており、その先端部に、粘弾性ゴム32を介して、第2回転マス31が同心状に設けられている。第2回転マス31は、第1回転マス27と同様、例えば鉄から成る円板で構成されており、その径は第1回転マス27よりも小さい。また、粘弾性ゴム32は、粘性及び弾性の双方を有している。
以上の構成により、この第2変形例では、建物Cの振動時に下梁BLと上梁BUの間に層間変位が発生するのに伴い、第1回転軸25及び第1回転マス27が回転すると、第1回転軸25の回転が粘弾性ゴム32を介して第2回転マス31に伝達される。これにより、第2回転マス31が回転することによって、第2回転マス31の回転慣性による慣性効果がさらに付加されるので、建物Cの制振効果をさらに高めることができる。
以上の構成の第2変形例による振動抑制装置をモデル化すると、図8のように表される。すなわち、この振動抑制装置では、第2回転マス31から成る慣性接続要素と粘弾性ゴム32から成る弾性要素及び粘性要素が直列に接続されるとともに、これらの要素が、第1変形例の振動抑制装置の作動油HF及び第1回転マス27などから成る要素に、並列に接続された関係になる。
以上の関係から、この振動抑制装置では、付加振動系として、第1変形例による作動油HF及び第1回転マス27などから成る第1付加振動系と、第2回転マス31などから成る第2付加振動系が、互いに別個に存在することになる。
したがって、第1及び第2付加振動系の諸元を適切に設定することによって、例えば、第1及び第2付加振動系の一方の組合わせ固有振動数が建物Cの1次の固有振動数に同調し、他方の組合わせ固有振動数が建物Cの2次の固有振動数に同調するように、多重同調させることができ、ひいては、建物Cの1次及び2次モードによる振動を適切に抑制することができる。この場合、第1付加振動系の諸元は、第1変形例の場合について前述したとおりであり、第2付加振動系の諸元には、第2回転マス31の質量や径、粘弾性ゴム32のばね定数及び粘度などが含まれる。
なお、第1及び第2付加振動系によって同調させる建物Cの固有振動数は、1次及び2次の固有振動数に限らず、他の任意の固有振動数でもよい。あるいは、第1及び第2付加振動系の固有振動数をいずれも、建物Cの同じ1つの固有振動数に多重同調させてもよい。
また、第1及び第2変形例では、歯車ポンプ21及び第1回転マス27を第1及び第2バイパス通路6、7の両方に設けているが、これらのいずれか一方のみに設けてもよい。
あるいは、第1油室12と第1バイパス通路6をつなぐ配管、及び第2油室13と第2バイパス通路7をつなぐ配管の一方をたすき掛け状に配置することによって、作動油HFが第1及び第2バイパス通路6、7を互いに同じ方向に流動するようにするとともに、両バイパス通路6、7に共通の1組の歯車ポンプ21及び第1回転マス27のみを設け、両バイパス通路6、7を流動する作動油HFによって作動させるようにしてもよい。
さらに、第1実施形態では、作動油HFの流動を第1回転マス27の回転に変換する機構として、歯車ポンプ21を有する歯車ポンプ機構を用いているが、これに代えて、作動油HFの流動によって回転するスクリュー羽根を有するスクリュー機構を用いてもよい。この場合には、スクリュー羽根の角度などを変えることによって、作動油HFの慣性効果を調整することが可能である。また、第1実施形態では、振動抑制装置1を、建物Cの下梁BLとそのすぐ上側の上梁BUとの間に設置し、2層間の層間変位を抑制しているが、3層以上の間の層間変位を抑制してもよいことはもちろんである。あるいは、第2滑車5が設けられた支持部材2を省略し、第2滑車5を左右の柱PL、PRと上梁BUとの接合部に直接、設け、第5滑車5から第1滑車4にケーブル10を延ばすようにしてもよい。
図9は、本発明の第2実施形態による振動抑制装置51を示している。この振動抑制装置51は、構造物としての鉄塔Tの水平方向の変位を抑制することによって、鉄塔Tの振動(揺動)を抑制するものであり、鉄塔TとアウトフレームOFの間に配置されている。
鉄塔Tは、地盤に設けられた基礎Fに立設されている。アウトフレームOFは、H形鋼などの部材を用いた柱及び梁で構成されるラーメン構造であり、基礎Fに立設され、鉄塔Tを取り囲むように配置されている。なお、以下の説明では、振動抑制装置51の構成要素のうち、第1実施形態の振動抑制装置1と共通のものについては、同じ符号を付し、詳細な説明を適宜、省略するものとする。
振動抑制装置51は、振動抑制装置1と同様、慣性質量ダンパ3、2つの第1滑車4、4及び第2滑車5、5と、一対のケーブル10、10を備えており、これらの構成要素は、鉄塔Tを中心として左右対称に配置されている。
慣性質量ダンパ3は、第1バイパス通路6、第2バイパス通路7、左右一対のシリンダ8、8及びピストン9、9を備えている。シリンダ8は、アウトフレームOFの左右の下端部にそれぞれ固定され、上下方向に延びており、内部に作動油HF(図示せず)が充填されている。各ピストン9は、ピストン本体9aを介してシリンダ8内に上下方向に摺動自在に設けられており、シリンダ8の内部は、ピストン本体9aによって、上側の第1油室12と下側の第2油室13に区画されている。
第1バイパス通路6は、左右の第1油室12、12に接続され、両者を連通し、水平に延びるとともに、第2バイパス通路7は、左右の第2油室13、13に接続され、両者を連通し、水平に延びている。また、図示しないが、各ピストン9のピストン本体9aには、第1実施形態と同様、第1リリーフ弁14及び第2リリーフ弁15が設けられている。
ピストン9のロッド9bは、ピストン本体9aの中心から上方に延び、シリンダ8の外部に突出しており、この突出部に各ケーブル10の下端部が連結されている。また、アウトフレームOFの屋上の左右の端部には、第1滑車4、4がそれぞれ設けられ、それに対向する鉄塔Tの左右の外側部には、第2滑車5、5がそれぞれ設けられている。各ケーブル10は、ピストン9のロッド9bとの連結部からアウトフレームOFの外側部に沿って上方に延び、第1滑車4及び第2滑車5に折り返された状態で巻き回され、その端部において鉄塔Tの外側部に連結されている。
以上の構成によれば、地震時などに鉄塔Tが揺動するのに伴い、第1実施形態の振動抑制装置1と基本的に同じ動作が得られる。具体的には、鉄塔Tの上層部が図9に示す中立位置から例えば右方に変位すると、その変位は、第1滑車4及び第2滑車5による動滑車機能により増幅された状態で、左側のケーブル10から左側のピストン9に伝達される。これにより、ピストン9がケーブル10で引っ張られ、上方に移動するのに伴い、作動油HFが、左側の第1油室12から第1バイパス通路6を通って右側の第1油室12に流入する。
また、右側の第1油室12に流入した作動油HFの圧力により、右側のピストン9が下方に移動するのに伴い、右側のケーブル10が、ピストン9で下方に引っ張られ、緩みのない状態に保持されるとともに、作動油HFが、右側の第2油室13から第2バイパス通路7を通って左側の第2油室13に流入する。また、上記とは逆に鉄塔Tが図9の左方に変位したときには、上記とは左右逆で、同じ動作が得られる。
以上のように、本実施形態においても、第1実施形態の振動抑制装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、鉄塔Tの揺動に伴ってその上層部が横方向に変位したときに、慣性質量ダンパ3の第1バイパス通路6及び第2バイパス通路7を作動油HFが流動することにより、この作動油HFの流動による慣性効果と粘性減衰効果によって、鉄塔Tの上層部の変位を抑制し、鉄塔Tの揺動を抑制することができる。
また、一方のピストン9が一方のケーブル10で引っ張られ、移動するのに伴い、他方のケーブル10が、他方のピストン9で引っ張られることで、緩みのない状態に保持される。その結果、鉄塔Tの変位を、その方向にかかわらず、ケーブル10を介してピストン9に伝達し、作動油HFを流動させることができ、それにより、鉄塔Tの制振効果をさらに向上させることができる。
さらに、第1滑車4及び第2滑車5による動滑車機能により、鉄塔Tの変位が増幅された状態でケーブル10からピストン9に伝達され、それに応じてピストン9の移動量及び作動油HFの流動量が増大するので、鉄塔Tの制振効果をさらに高めることができる。また、慣性質量ダンパ3が鉄塔Tの最下層部に配置されるので、そのメンテナンスを容易に行うことができる。
振動抑制装置51はさらに、左右一対のマスダンパ52、52を備えている。これらのマスダンパ52、52は、鉄塔Tの左右の側部とアウトフレームOFの最上部との間にそれぞれ設けられ、鉄塔Tを中心として左右対称に配置されている。各マスダンパ52の構成は、本発明者が提案した特願2012−279982号に開示されたものと同じであるので、以下、図10を参照しながら簡単に説明する。
同図に示すように、マスダンパ52は、内筒61、ボールねじ62及び回転マス63を有している。内筒61は、鋼材などで構成され、一端部が開口した円筒状のものであり、他端部は、第1フランジ65に取り付けられている。
また、ボールねじ62は、ねじ軸62aと、ねじ軸62aに多数のボール62bを介して螺合するナット62cを有している。ねじ軸62aの一端部は、内筒61の開口に収容され、他端部は、第2フランジ66に取り付けられている。また、ナット62cは、軸受67を介して、内筒61に回転自在に支持されている。
回転マス63は、比重の大きな材料、例えば鉄で構成され、円筒状に形成されている。また、回転マス63は、内筒61及びボールねじ62の外側にこれらを覆うように設けられ、軸受68を介して、内筒61に回転自在に支持されている。回転マス63と内筒61の間の空間は、一対のリング状のシール材69、69で密閉されており、この空間にはシリコンオイルで構成された粘性体70が充填されている。
以上のように構成されたマスダンパ52では、内筒61とねじ軸62aの間に相対変位が発生すると、その直線運動がボールねじ62で回転運動に変換された状態で、回転マス63に伝達されることによって、回転マス63が回転する。なお、同図中の符号64は、マスダンパ52の軸線方向に作用する軸荷重を制限することによって、マスダンパ52の回転変換動作を制限するための制限機構である。
以上の構成のマスダンパ52は、その第1及び第2フランジ65、66が、アウトフレームOFの最上部とこれに対向する鉄塔Tの部位にそれぞれボルトなどで固定された状態で、取り付けられている。
以上の構成によれば、鉄塔Tの揺動に伴い、その上層部が図9の左右方向に変位すると、マスダンパ52の内筒61とねじ軸62aが相対的に変位し、その直線運動が回転マス63の回転運動に変換され、回転マス63の回転慣性による慣性効果と粘性体70の粘性減衰効果が付加されることによって、鉄塔Tの振動が抑制される。
また、以上の構成の振動抑制装置51をモデル化すると、図11のように表される。すなわち、振動抑制装置51では、鉄塔Tの上層部と鉄塔Tの最下層部である基礎Fとの間に、アウトフレームOF及びケーブル10から成る弾性要素と、慣性質量ダンパ3の作動油HFから成る慣性接続要素及び粘性要素が、直列に接続されるとともに、マスダンパ52の回転マス63から成る慣性接続要素と粘性体70から成る粘性要素が、ケーブル10及び作動油HFなどから成る要素に並列に接続された関係になる。
以上の関係から、この振動抑制装置51では、付加振動系として、ケーブル10及び作動油HFなどから成る第1付加振動系と、アウトフレームOF及び回転マス63などから成る第2付加振動系が、互いに別個に存在することになる。
したがって、第1及び第2付加振動系の諸元を適切に設定することによって、例えば、第1及び第2付加振動系の一方の組合わせ固有振動数が鉄塔Tの1次の固有振動数に同調し、他方の組合わせ固有振動数が鉄塔Tの2次の固有振動数に同調するように、多重同調させることができ、鉄塔Tの1次及び2次モードによる振動を適切に抑制することができる。この場合、第1付加振動系の諸元は、第1変形例の場合について前述したとおりであり、第2付加振動系の諸元には、回転マス63の質量や径、粘性体70の粘度などが含まれる。
また、第2付加振動系が鉄塔Tの固有振動数に同調した状態で振動しているときには、マスダンパ52の内筒61とねじ軸62aが相対的に大きく変位する。したがって、アウトフレームOFの剛性が小さい場合には、その変形を抑制しながら、第1部位と第2部位との相対変位を、その変位ロスが小さな状態で、ケーブルに伝達でき、それにより、第1付加振動系による制振効果を有効に得ることができる。
なお、本発明は、これまでに説明した第1実施形態とその第1及び第2変形例や第2実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、建物Cなどの構造物の静止状態において、ケーブル10を、特にテンションを付与することなく、緩みのない状態で設置しているが、ケーブル10に積極的にあらかじめテンションを付与してもよい(プレテンション)。このプレテンションにより、慣性質量ダンパ3の作動時にケーブル10をテンション状態に確実に保持でき、作動油HFの流動による慣性効果及び粘性減衰効果を確実に得ることができる。
また、慣性質量ダンパ3の内部、例えば一対のピストン9のピストン本体9aとロッド9bとの間に、それぞれ付加ばねを設けてもよい。この場合、付加ばねはケーブル10と直列に連結されるので、両付加ばねのばね定数k1、k2を含めて付加振動系の諸元を設定することによって、その固有振動数を調整できる。また、付加ばねのばね定数k1、k2は、互いに同じ値でもよく、又は異なる値に設定してもよい。後者の場合には、構造物などが一方の方向に変位するときと、他方の方向に変位するときとで、互いに異なる付加振動系の固有振動数を得ることができる。
さらに、一対の付加ばねに圧縮の予荷重を導入してもよい。この場合には、ピストン9の移動量が予荷重による圧縮量に達するまでは、両付加ばねの反力が作用するため、付加ばね全体のばね定数kは、両付加ばねのばね定数k1、k2の和(=k1+k2)になる。これに対し、ピストン9の移動量が予荷重による圧縮量に達した後には、ケーブル10によって引っ張られる側の一方の付加ばねの予荷重が消失し、他方の付加ばねの反力だけが作用するようになるため、付加ばね全体のばね定数kは、その付加ばねのばね定数k1又はk2になる。
このように、一対の付加ばねに予荷重を付与することによって、構造物(建物C又は鉄塔T)の変位に対する両付加ばねから成る弾性要素の剛性の特性として、バイリニアな特性を得ることができる。したがって、例えば、振動による構造物の変位が大きくなるのに伴って振動抑制装置1や51の反力が過大にならないうちに、この弾性要素の剛性がより小さな値(k1又はk2)に切り替わるようにすることが可能になる。それにより、付加振動系の固有振動数を構造物の固有振動数と異ならせることで、振動抑制装置1や51の反力の過大化を防止することができる。
また、振動による構造物の変位が比較的小さいときには、両付加ばねから成る弾性要素の剛性としてより大きな値(k1+k2)を得ることが可能になる。それにより、例えば風力により構造物が振動した場合であって、それによる構造物の変位が比較的小さいときでも、構造物の変位を、付加ばねの弾性変形により吸収されるのを抑制しながら、作動油HFや第1回転マス27などに適切に伝達でき、ひいては、構造物の振動を適切に抑制することができる。さらに、構造物の変位が大きいときと、小さいときとで、異なる付加振動系の固有振動数を得ることができるので、それによる多重同調を行うことも可能である。
また、実施形態では、本発明の作動流体として、作動油HFを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。さらに、実施形態では、構造物の左右に、第1滑車4及び第2滑車5を1個ずつ設けているが、その設置数及びケーブル10の折返し数を増やしてもよい。それにより、ケーブル10からピストン9に伝達される構造物の変位の増幅倍率を高めるとともに、ケーブル10の剛性を調整することができる。
さらに、実施形態では、振動抑制装置1や51を、建物Cの層間や鉄塔Tと基礎Fの間に設置し、いわゆる制振装置として用いているが、構造物とこれを支持する支持体との間に設置し、いわゆる免震構造の振動抑制装置として用いてもよい。あるいは、第1変形例に示したような歯車ポンプ機構を用い、構造物の変位に応じて歯車ポンプをモータで駆動し、作動流体を強制的に流動させることによって、風揺れなどに対する建物内の居住性を改善するためのアクティブダンパとして用いてもよい。
また、実施形態は、本発明を建物Cや鉄塔Tに適用した例であるが、本発明による振動抑制装置は、他の適当な構造物、例えば橋梁などにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
C 建物(構造物)
BL 下梁(第1部位)
BU 上梁(第2部位)
HF 作動油(作動流体)
1 振動抑制装置
3 慣性質量ダンパ
4 第1滑車
5 第2滑車
6 第1バイパス通路
7 第2バイパス通路
8 シリンダ
9 ピストン
10 ケーブル
12 第1油室(第1流体室)
13 第2油室(第2流体室)
21 歯車ポンプ(動力変換機構)
27 第1回転マス
T 鉄塔(構造物、第2部位)
F 基礎(第1部位)
51 振動抑制装置
52 マスダンパ
61 内筒(第1移動部材)
62a ねじ軸(第2移動部材)
63 回転マス(第2回転マス)

Claims (4)

  1. 構造物を含む系内の第1部位と第2部位の間の相対的な変位を抑制することによって、当該構造物の振動を抑制する振動抑制装置であって、
    前記第1部位に設けられ、作動流体が充填された一対のシリンダと、
    一端部が前記第2部位に連結され、当該第2部位から互いに反対方向に延びる一対のケーブルと、
    前記一対のシリンダ内にそれぞれ摺動自在に設けられ、前記一対のケーブルの他端部がそれぞれ連結されるとともに、前記シリンダ内を前記ケーブル側の第1流体室と当該ケーブルと反対側の第2流体室に区画する一対のピストンと、を備え、
    前記第1部位と前記第2部位が相対的に変位したときに、当該変位の方向に応じて、前記一対のピストンの一方が、前記ケーブルで引っ張られることにより前記シリンダ内を移動するように構成され、
    前記一対のシリンダ内の前記第1流体室にそれぞれ接続され、前記一方のピストンが前記シリンダ内を移動するのに伴い、前記一方のピストンに対応する一方の前記第1流体室から他方の前記第1流体室に作動流体を流動させる第1バイパス通路と、
    前記一対のシリンダ内の前記第2流体室にそれぞれ接続され、前記一方のピストンが前記シリンダ内を移動するのに伴い、他方の前記ピストンに対応する他方の前記第2流体室から一方の前記第2流体室に作動流体を流動させる第2バイパス通路と、をさらに備えることを特徴とする振動抑制装置。
  2. 前記一対のケーブルの各々と前記第2部位との間には、前記第1部位に設けられた第1滑車と、前記第2部位に設けられた第2滑車が配置されており、
    前記各ケーブルが前記第1滑車及び前記第2滑車に巻き回されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動抑制装置。
  3. 回転自在の第1回転マスと、
    前記第1バイパス通路及び前記第2バイパス通路の少なくとも一方に設けられ、作動流体の流動を回転運動に変換し、前記第1回転マスを回転させる動力変換機構と、
    をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振動抑制装置。
  4. 前記第1部位と前記第2部位の間に、前記一対のケーブルの各々及びそれに対応する前記ピストンとそれぞれ並列に設けられ、
    前記第1部位及び前記第2部位にそれぞれ連結され、互いに直線的に移動可能な第1移動部材及び第2移動部材と、回転自在の第2回転マスとを有し、
    前記第1部位と前記第2部位が相対的に変位したときに、前記第1移動部材と前記第2移動部材との相対的な直線運動を前記第2回転マスの回転運動に変換する一対のマスダンパをさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の振動抑制装置。
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