JP5335413B2 - アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子およびl−ホスフィノスリシンの製造方法 - Google Patents

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子およびl−ホスフィノスリシンの製造方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびその遺伝子、並びにL−ホスフィノスリシンの製造方法に関する。本発明はまた、アミノトランスフェラーゼ遺伝子を発現させるための組換えベクターや該ベクターが導入された宿主に関する。
L−ホスフィノスリシンは、ビアラホスの構成成分であり、除草活性を有する物質である(Tachibana,K., J. pesticide Sci., 11:27-31,1986)。本発明者らはこれまでに、4−(ヒドロキシメチルホスフィニル)−2−オキソ−酪酸(以下「OMPB」ということがある)をアミノ基供与体の存在下で、微生物の有するアミノトランスフェラーゼの作用を利用することによりL−ホスフィノスリシンに変換する技術を構築し(特許第2638541号公報)、また、L−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子の利用により、使用する微生物の菌体量(培養液量)を削減する技術についても確立している(特開平2−195889号公報)。
このような微生物変換(酵素変換)によるL−ホスフィノスリシンの製造法においては、OMPBと等量(または等モル量)のグルタミン酸とアスパラギン酸を使用することが一般的である。これは、グルタミン酸のみを使用した場合、反応は平衡に達し、理論変換率50%で終了してしまうが、グルタミン酸とアスパラギン酸を併用した場合、グルタミン酸の脱アミノによって生じたα−ケトグルタル酸にアスパラギン酸のアミノ基が転移し、反応が連続的に進行し、高い変換率が得られるからである。この場合、アスパラギン酸の脱アミノによって生じたオキザロ酢酸は通常の反応温度(例えば37℃)で容易に脱炭酸され、ピルビン酸となり反応系外に出るため、収率に影響を与えない。
一方、L−ホスフィノスリシンを除草剤として製造、販売する場合において、その製造費用は著しく安価なことが期待される。具体的には、原料OMPBからL−ホスフィノスリシンへの変換率(少なくとも90%以上)を高くすることに加え、アミノ基供与体となるグルタミン酸やアスパラギン酸使用量を削減することも重大な課題となる。この課題を解決するための一手段として、特許3018261号公報の実施例4において、大腸菌K−12由来のL−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼとブタ由来のGOT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)を混合して用いることにより、グルタミン酸を低減した基質(OMPB(HMPB):グルタミン酸:アスパラギン酸=1:0.2:1)においても、L−ホスフィノスリシンが合成されることが開示されている。しかしこの技術は、L−ホスフィノスリシンへの変換率が最高でも86%であり、工業的な目標収率に満たない上、安価な大量調達が難しいブタ由来の酵素を使用しているため、実質的に実用化が難しい技術であるといえる。別の一手段として、アスパラギン酸を直接のアミノ基供与体とするアミノトランスフェラーゼが開示されている(特表2003−528572号公報)。しかしこの技術は、基質としてOMPBとアスパラギン酸のみを使用するため、グルタミン酸を全く使用しないというメリットを有するものの、最高の変換率は約75%であり、工業的には不十分な結果であるといえる。
したがって現在、微生物(または酵素)によるL−ホスフィノスリシンの製造法においては、原料OMPBからL−ホスフィノスリシンへの変換率をより高くすることに加えて、標準的な基質(すなわち、OMPB:グルタミン酸:アスパラギン酸=1:1:1)からグルタミン酸を削減することが重要な課題であり、その解決が切望されている。
発明の概要
本発明者らは、Streptomyces hygroscopicusより、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下「AAT」と呼ぶことがある)をコードする新規の遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターでStreptomyces hygroscopicusを形質転換し、得られた形質転換体のAAT活性を親株のAAT活性と比較した結果、約47倍であることを見出した(実施例3)。該AAT活性増強株を用いてL−ホスフィノスリシンを製造したところ、97%と、比較対照株を用いた場合に比べ高い変換率を示し、更に、グルタミン酸を低減した基質(OMPB:グルタミン酸:アスパラギン酸=1:0.25:1)においても90.1%という高い変換率を示した(実施例4)。また、L−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ(以下「PAT」と呼ぶことがある)の一種であるAT−IIとAATをStreptomyces hygroscopicusにおいて共発現させることにより、PAT活性とAAT活性が共に増強された菌株を作出し、得られた形質転換体のAAT活性およびPAT活性を親株と比較した結果、PAT活性は約16倍、AAT活性は約170倍であることを見出した(実施例5)。該AAT・PAT活性増強株を用いてL−ホスフィノスリシンを製造したところ、比較対照株を用いた場合に比べ、95.3%という高い変換率を示し、更に、グルタミン酸を低減した基質(OMPB:グルタミン酸:アスパラギン酸=1:0.25:1)においても95.5%という極めて高い変換率を示した(実施例6)。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明は、AAT遺伝子およびAATタンパク質を提供することをその目的とする。
本発明はまた、目的遺伝子を高発現させることができるプロモーターを提供することを目的とする。
本発明は更に、AAT遺伝子を宿主に導入するための組換えベクターおよびAAT遺伝子が導入された宿主を提供することを目的とする。
本発明は更に、L−ホスフィノスリシンを高変換率で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の(i)、(ii)、(iii)および(iv)から選択される、ポリヌクレオチドが提供される:
(i)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(ii)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつAAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(iii)配列番号:1で表される塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつAAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(iv)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつAAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本発明によれば、以下の(v)、(vi)、(vii)および(viii)から選択されるタンパク質(以下「本発明によるタンパク質」と呼ぶことがある)が提供される:
(v)配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(vi)配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAAT活性を有するタンパク質;
(vii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、かつAAT活性を有するタンパク質;および
(viii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつAAT活性を有するタンパク質。
本発明によればまた、本発明によるタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。(このポリヌクレオチドと前述の(i)、(ii)、(iii)および(iv)から選択されるポリヌクレオチドを併せて、「本発明によるAAT遺伝子」と呼ぶことがある。)
本発明によれば、以下の(ix)、(x)、(xi)および(xii)から選択される、ポリヌクレオチド(以下「本発明によるプロモーター」と呼ぶことがある)が提供される:
(ix)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(x)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(xi)配列番号:3で表される塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;および
(xii)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
本発明によれば、本発明によるAAT遺伝子を含んでなる、組換えベクター(以下「本発明による第一の態様の組換えベクター」と呼ぶことがある)が提供される。
本発明によれば、本発明による第一の態様の組換えベクターにより形質転換された宿主(以下「本発明による第一の態様の宿主」と呼ぶことがある)が提供される。
本発明によれば、本発明によるAAT遺伝子とPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下「PAT遺伝子」と呼ぶことがある)とを含んでなる、組換えベクター(以下「本発明による第二の態様の組換えベクター」と呼ぶことがある)が提供される。
本発明によれば、本発明による第二の態様の組換えベクターにより形質転換された宿主(以下「本発明による第二の態様の宿主」と呼ぶことがある)が提供される。
本発明によれば、式(I):
Figure 0005335413
で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、式(II):
Figure 0005335413
で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、グルタミン酸またはその塩およびアスパラギン酸またはその塩の存在下で、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌と接触させる工程を含んでなり、使用される放線菌が親株のAAT活性を超える活性を示すことを特徴とする方法(以下「本発明による第一の態様の方法」と呼ぶことがある)が提供される。
本発明によれば、式(I):
Figure 0005335413
で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、式(II):
Figure 0005335413
で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、グルタミン酸またはその塩およびアスパラギン酸またはその塩の存在下で、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌と接触させる工程を含んでなり、使用される放線菌が親株のAAT活性を超える活性を示し、かつ、親株のPAT活性を超える活性を示すことを特徴とする方法(以下「本発明による第二の態様の方法」と呼ぶことがある)が提供される。
AAT遺伝子を含む約5.8Kbpの制限酵素地図を示した図である。 発現ベクターpLG04の構築を示した図である。 発現ベクターpSG11の構築を示した図である。 プラスミドpATSG01の構築を示した図である。 発現ベクターpAHSG7201の構築を示した図である。
発明の具体的な説明
[微生物の寄託]
本発明で使用されるStreptomyces hygroscopicus SF1293 NP−50株は、1987年5月20日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−1368である。
本発明で使用されるStreptomyces hygroscopicus SF1293株は、1982年5月19日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−130である。
プラスミドpSG11で形質転換された放線菌(Streptomyces lividans)(実施例3(1))は、2006年2月1日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−10495である。
プラスミドpMSB515で形質転換された放線菌(Streptomyces lividans)は、1989年6月30日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−2496である。
プラスミドpAHSG7201で形質転換された放線菌(Streptomyces lividans)(実施例5(1))は、2006年2月1日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−10496である。
[AAT遺伝子およびAATタンパク質]
本発明によるAAT遺伝子は、それによりコードされるタンパク質がAAT活性を有する限り、その由来は特に限定されないが、好ましくは放線菌由来であり、より好ましくは、Streptomyces hygroscopicus由来である。
本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて、1もしくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された」および「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の方法により、または天然に生じ得る程度の複数個のヌクレオチドあるいはアミノ酸の置換等により改変がなされたことを意味する。ヌクレオチドおよびアミノ酸の改変の個数は、1個または複数個(例えば、1個ないし数個あるいは1、2、3、または4個)である。
改変された塩基配列の例としては、1個または複数個(例えば、1個ないし数個あるいは1、2、3、または4個)の、AAT活性に影響を与えない変異を有する配列番号:1に記載の塩基配列が挙げられる。
改変されたアミノ酸配列の例としては、1個または複数個(例えば、1個ないし数個あるいは1、2、3、または4個)の、AAT活性に影響を与えない変異を有する配列番号:2に記載のアミノ酸配列が挙げられる。
ここで「AAT活性」とは、AATがL−アスパラギン酸のアミノ基をα−ケトグルタル酸に転移し、L−グルタミン酸とオキザロ酢酸を生じさせる反応(またはその逆反応)を触媒する能力として定義される。より具体的には、AAT活性測定用基質(150mM アスパラギン酸、50mM α−ケトグルタル酸、0.1mM ピリドキサルリン酸、100mM Tris−HCl buffer;pH8.5)とAATを混合し、37℃、20分間インキュベートした後、反応を停止し、生成したグルタミン酸の量をアミノ酸分析用HPLC(model LC−VP、島津製作所社製)にて分析することにより求められる酵素力(1分間に1μmolのグルタミン酸を生成する能力を1U(ユニット)とする)として定義される。
本発明において、微生物の産生するAAT活性を評価する場合、比活性(U/mg)を指標として評価することが望ましい。
比活性(U/mg)は、AAT活性(U)をタンパク質量(例えば、プロティンアッセイキット(バイオラッド社製))を用いてγ−グロブリンをスタンダードとして測定することができる)で除することにより求められる。
また、「活性に影響を与えない変異」の例としては、保存的置換が挙げられる。ここで、「保存的置換」とは、タンパク質の活性を実質的に改変しないように1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
本願明細書において「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温下低塩濃度溶液中で行うことを意味し、例えば、0.5×SSC濃度(1×SSC:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)、60℃、15分間の洗浄条件、好ましくは0.5×SSC濃度、0.1%SDS溶液中で60℃、15分間の洗浄条件、を意味する。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
本願明細書において、塩基配列またはアミノ酸配列についての「同一性」とは、比較される配列間において、各々の配列を構成する塩基またはアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いられる。本明細書において示した「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えばFASTA、BLAST等においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、容易に算出することができる。
本発明において、配列番号:2で表されるアミノ酸配列が与えられれば、それをコードするポリヌクレオチドは容易に決まり、配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードする種々のポリヌクレオチドを選択することができる。
従って、配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとは、配列番号:1で表されるDNA配列の一部または全部に加え、同一のアミノ酸をコードするDNA配列であって縮重関係にあるコドンをDNA配列として有する配列をも意味するものである。さらに、これらに対応するRNA配列も含まれる。
配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの好ましい例としては、配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
[プロモーター配列]
実施例3によれば、Streptomyces hygroscopicusより単離したAAT遺伝子の全長配列の内、BamHI〜XhoI断片を含む発現ベクターにより形質転換された宿主についてAAT活性を調べたところ、親株の47倍であった。これは、PstI〜XhoI断片を含む発現ベクターにより形質転換された宿主における活性と比べ顕著に高活性であった。このことから、AAT遺伝子のプロモーター領域の内、転写開始点から上流のBamHIサイトまでの配列が強力なプロモーターとして働くことが認められた。上流領域を5’上流から切りつめた場合には、その上流領域により制御される構造遺伝子の発現が低下するのが通常であるが、本発明によるプロモーターは、意外にも、強力なプロモーター活性を有する。
本発明によるプロモーターの塩基配列としては、配列番号:3に記載される塩基配列が挙げられるが、この配列のみならず、プロモーター活性を同等程度有するその改変配列も含まれる。
ここで「プロモーター活性」を有するか否かは、例えば、実施例3に記載のようにAAT遺伝子の発現ベクターを作成し、宿主にて発現させ、AAT活性を測定することにより評価することができる。AAT活性が認められれば、プロモーター活性を有するといえるが、好ましくは親株の2倍以上、より好ましくは20倍以上、最も好ましくは40倍以上のAAT活性の増強が認められた場合に「プロモーター活性を有する」と評価することができる。
本発明によるプロモーターは、目的遺伝子に作動可能に連結することにより、目的遺伝子を高発現させることができる。本発明によるプロモーターによってより高発現させることができる目的遺伝子としては、放線菌由来の遺伝子が挙げられる。また、目的遺伝子をより高発現させることができる宿主としては、放線菌が挙げられる。
ここで「放線菌」としては、Streptomyces hygroscopicusStreptomyces albusStreptomyces coelicolorStreptomyces griseusStreptomyces lividansStreptomyces virginiaeStreptomyces viridochromogenesStreptomyces pilosusStreptoverticillium cinnamoneumStreptomyces morookaensisNocardia mediterraneiNocardopsis dassonvilleiSaccharopolyspora hirsutaKitasatosporia phosalacineaMicromonospora carbonacaeStreptosporangium pseudovulgareが挙げられ、より好ましくはStreptomyces hygroscopicusである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるプロモーターを、放線菌(好ましくはStreptomyces hygroscopicus)由来の遺伝子(好ましくはAAT遺伝子)に作動可能に連結することができる。
本発明の好ましい態様によればまた、本発明によるプロモーターを、放線菌(好ましくはStreptomyces hygroscopicus)由来の遺伝子(好ましくはAAT遺伝子)に作動可能に連結してなる組換えベクターを放線菌(好ましくはStreptomyces hygroscopicus)に導入することができる。
[PAT遺伝子]
本発明による組換えベクターに使用されるPAT遺伝子は、それによりコードされるタンパク質がPAT活性を有する限り、その由来は特に限定されないが、好ましくは放線菌由来であり、より好ましくは、Streptomyces hygroscopicus由来である。
ここで、「PAT活性」とは、PATがL−グルタミン酸のアミノ基をOMPBに転移し、L−ホスフィノスリシンとα−ケトグルタル酸を生じさせる反応(またはその逆反応)を触媒する能力として定義される。より具体的には、PAT活性測定用基質(150mM グルタミン酸、50mM OMPB、0.1mM ピリドキサルリン酸、100mM Tris−HCl buffer;pH8.5)とPATを混合し、37℃、20分間インキュベートした後、反応を停止し、生成したL−ホスフィノスリシンの量をアミノ酸分析用HPLC(model LC−VP、島津製作所社製)にて分析することにより求められる酵素力(1分間に1μmolのL−ホスフィノスリシンを生成する能力を1U(ユニット)とする)として定義される。
本発明において、微生物の産生するPAT活性を評価する場合、比活性(U/mg)を指標として評価することが望ましい。
比活性(U/mg)は、PAT活性(U)をタンパク質量(例えば、プロティンアッセイキット(バイオラッド社製))を用いてγ−グロブリンをスタンダードとして測定することができる)で除することにより求められる。
PAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、以下の(i’)、(ii’)、(iii’)および(vi’)から選択されるものを使用することができる。
(i’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(ii’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(iii’)配列番号:4で表される塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(vi’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
PAT活性を有するタンパク質としては、以下の(v’)、(vi’)、(vii’)および(viii’)から選択されるものを使用することができる:
(v’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(vi’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質;
(vii’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、かつPAT活性を有するタンパク質;および
(viii’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質。
[組換えベクター]
本発明による組換えベクターは、例えば、Sambrook, J. et al., Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989)等に記載される遺伝子組換え技術の慣行法に従って作製することができる。
本発明による組換えベクターにおいては、各遺伝子の発現に必要な制御配列、例えば、プロモーター、転写開始信号、リボソーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号等の転写調節信号、翻訳調節信号等が、目的遺伝子に作動可能に連結されていてもよい。
本発明による組換えベクターはまた、形質転換体を選抜するための選択マーカーを含んでいてもよく、使用する宿主に応じて適宜選択マーカーを選択することができる。選択マーカーとしては薬剤耐性遺伝子、栄養要求性を相補する遺伝子などが挙げられ、好ましい例としては、宿主が細菌の場合は、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等が、宿主が酵母の場合は、トリプトファン生合成遺伝子(TRP1)、ウラシル生合成遺伝子(URA3)、ロイシン生合成遺伝子(LEU2)等が、放線菌の場合は、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子、チオストレプトン耐性遺伝子等が、それぞれ挙げられる。
本発明による組換えベクターは、使用する宿主の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクター等から適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR322系、pUC系のベクター、枯草菌の場合はpUB110系、pPL603系、pC194系ベクター、酵母の場合はpYC系、pYE系ベクター、放線菌の場合はpIJ702系、pIJ680系、pAK114系ベクターが挙げられる。
本発明による第一の態様の組換えベクターは、好ましくは、本発明によるプロモーターを更に含んでいてもよい。この場合、本発明によるプロモーターは、本発明によるAAT遺伝子に作動可能に連結することができる。この組換えベクターは宿主(特に放線菌)においてAAT遺伝子を高発現させることができる点で有利である。
本発明による第二の態様の組換えベクターは、好ましくは、本発明によるプロモーターを更に含んでいてもよい。この場合、本発明によるプロモーターは、本発明によるAAT遺伝子に作動可能に連結することができる。この組換えベクターは宿主(特に放線菌)においてAAT遺伝子およびPAT遺伝子を高発現させることができる点で有利である。
本発明による第二の態様の組換えベクターはまた、PAT遺伝子の発現を誘導するプロモーターを更に含んでいてもよく、そのプロモーターはPAT遺伝子に作動可能に連結することができる。
PAT遺伝子のプロモーターについては、当業者であれば適宜選択することができ、好ましくは、特開平2−195889号公報に記載のプラスミドpMSB515中のAT−II遺伝子プロモーターを使用することができる。
本発明によるプロモーターへの連結は、例えば、常法に従い、目的タンパク質をコードする遺伝子(目的遺伝子)の翻訳領域をプロモーターの下流に順方向に挿入することによって行うことができる。この場合、目的遺伝子を他のタンパク質の翻訳領域をコードする外来遺伝子と連結させて融合タンパク質として発現させることもできる。
本発明による第二の態様の組換えベクターにおいては、本発明によるAAT遺伝子とPAT遺伝子とは逆方向に連結されていても、順方向に連結されていてもよいが、AAT活性を増強する観点から、好ましくは、逆方向に連結することができる。
本発明によるプロモーターには、本発明によるAAT遺伝子以外の目的遺伝子を連結することができる。
[形質転換体]
形質転換される宿主は、使用される組換えベクターの種類に応じて、放線菌、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、その他の微生物の中から適宜選択されてよい。宿主として使用できる放線菌としては、Streptomyces hygroscopicusStreptomyces albusStreptomyces coelicolorStreptomyces griseusStreptomyces lividansStreptomyces virginiaeStreptomyces viridochromogenesStreptomyces pilosusStreptoverticillium cinnamoneumStreptomyces morookaensisNocardia mediterraneiNocardopsis dassonvilleiSaccharopolyspora hirsutaKitasatosporia phosalacineaMicromonospora carbonacaeStreptosporangium pseudovulgareが挙げられ、好ましくはStreptomyces hygroscopicusであり、より好ましくは、FERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293 NP−50株またはFERM BP−130の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293株が挙げられる。
組換えベクターを宿主に導入する方法は周知であり、宿主やベクターの種類によって最も効率のよい方法が選択される。放線菌を形質転換する場合には、大腸菌との接合による伝達、放線菌ファージによる感染、宿主菌のプロトプラストへの導入等が実施できる。形質転換によって得られた組換え体の選別には、用いるベクターの保有する遺伝的指標、例えば、抗生物質耐性、ポック形成、メラニン生合成等が利用できる。
形質転換された宿主の培養は、常法に従って、当該分野で通常用いられる培地、培養条件を使用することができる。
培地については、慣用の成分、例えば炭素源としては、グルコースおよびその他の糖類、並びに澱粉等が使用できる。また、窒素源としては、肉エキスおよびペプトン、並びにコーン、小麦、大豆、微生物などの各種抽出物が使用できる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、リン酸、硫酸などの無機塩類や各種ビタミンを添加することもできる。培養中の発砲を抑えるため、市販の消泡剤を添加することもできる。
培地の殺菌方法については、蒸気殺菌やフィルター殺菌などの方法を使用することができる。
培養条件については、ロータリーシェーカーを用いたフラスコ培養や、ジャーファーメンター装置やタンク設備を用いた通気攪拌培養などにより行うことができる。培地のpH、培養温度、培養日数は、形質転換体に応じて適宜決定することができる。
本発明による第一の態様の形質転換体の好ましい例としては、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結された第一の態様の組換えベクターにより形質転換された放線菌(特に、Streptomyces hygroscopicus)が挙げられる。この形質転換体は、親株の放線菌のAAT活性を超える活性を示す点で有利である。
本発明による第一の態様の形質転換体のより好ましい例としては、FERM BP−10495の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託された形質転換体から調製される発現ベクターpSG11で形質転換されたStreptomyces hygroscopicusが挙げられ、最も好ましくは、該発現ベクターpSG11で形質転換されたFERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されたSF1293 NP−50株が挙げられる。この形質転換体は、親株と比較して、非常に高いAAT活性を示す点で極めて有利である。
本発明による第二の態様の形質転換体の好ましい例としては、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結された第二の態様の組換えベクターにより形質転換された放線菌(特に、Streptomyces hygroscopicus)が挙げられる。この形質転換体は、親株の放線菌のAAT活性およびPAT活性のいずれをも超える活性を示す点で有利である。
本発明による第二の態様の形質転換体のより好ましい例としては、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結され、かつ本発明によるAAT遺伝子とPAT遺伝子とが逆方向に連結された第二の態様の組換えベクターにより形質転換された放線菌(特に、Streptomyces hygroscopicus)が挙げられる。この形質転換体は、親株の放線菌のAAT活性およびPAT活性を超える活性を示す点で有利である。
本発明による第二の態様の形質転換体のより好ましい例としては、FERM BP−10496の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託された形質転換体から調製される発現ベクターpAHSG7201で形質転換されたStreptomyces hygroscopicusが挙げられ、最も好ましくは、該発現ベクターpAHSG7201で形質転換されたFERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されたSF1293 NP−50株が挙げられる。この形質転換体は、親株と比較して、非常に高いAAT活性およびPAT活性を示す点で極めて有利である。
[L−ホスフィノスリシンの製造方法]
酵素反応
本発明による製造方法において使用する放線菌は、AAT活性およびPAT活性を示し、L−ホスフィノスリシンの製造に関与する。具体的には、この放線菌は、OMPB、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸の存在下で、以下の酵素反応の進行に関与する。
(1)PATがL−グルタミン酸とOMPBに作用することにより、L−グルタミン酸のアミノ基がOMPBに転移し、L−ホスフィノスリシンとα−ケトグルタル酸が生じる。
(2)AATがL−アスパラギン酸とα−ケトグルタル酸に作用することにより、L−アスパラギン酸のアミノ基がα−ケトグルタル酸に転移し、L−グルタミン酸とオキザロ酢酸を生じる。
(3)(2)で生じたL−グルタミン酸が(1)において再び利用され、反応が継続する。
変換率の定義
本発明による製造法において、「変換率」とは、基質としてのOMPBのうち、L−ホスフィノスリシンに変換された割合を意味し、下記の式により算出することができる。
Figure 0005335413
第一の態様の製造方法
本発明による第一の態様の製造方法によれば、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌のうち、親株のAAT活性を超えるAAT活性を有する放線菌をL−ホスフィノスリシンの製造に用いることにより、これまでに達成できなかった高効率でL−ホスフィノスリシンを製造することができる。特に、本発明による第一の態様の製造方法では、L−ホスフィノスリシンの製造原料であるグルタミン酸を削減してもなお、L−ホスフィノスリシンを高効率で製造できることから、コスト削減の観点から極めて有利である。
すなわち、実施例4によれば、親株のAAT活性を超えるAAT活性を有する形質転換体を使用してL−ホスフィノスリシンを製造した場合、変換率は97%であった。親株の変換率が93.2%であり、またPAT遺伝子のみを高発現させた株の変換率が92.6%であることを考慮すると、AAT活性の増強により、L−ホスフィノスリシンの変換率が向上すると考えられる。
実施例4によればまた、親株のAAT活性を超えるAAT活性を有する形質転換体を使用して、グルタミン酸を減量した基質からL−ホスフィノスリシンを製造した場合、変換率は90.1%であった。親株の変換率が76.2%であり、またPAT遺伝子のみを高発現させた株の変換率が82.7%であることを考慮すると、グルタミン酸減量基質を使用した場合にも、AAT活性の増強により、L−ホスフィノスリシンの変換率が向上すると考えられる。
これまで、L−ホスフィノスリシンの製造においては、L−ホスフィノスリシンへの変換工程に直接作用するPATに着目して、放線菌のPAT活性を増強する試みがなされたが、満足できる高効率での製造は達成できなかった。また、仮にAAT活性を増強してもPAT活性が律速になり、結局、L−ホスフィノスリシンの高効率での製造は達成できないと考えられてきた。
以下の理論に拘束される訳ではないが、L−ホスフィノスリシンを産生する放線菌においてAAT活性が増強されると、L−ホスフィノスリシンとともに生じたα−ケトグルタル酸が増強されたAATにより速やかにL−グルタミン酸に戻されるため、α−ケトグルタル酸による生成物阻害がかからなくなり、反応が円滑に進行するようになったと考えられる。
本発明による第一の態様の製造方法は、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌であって、親株のAAT活性を超える活性を示す放線菌を使用することを特徴とする。本発明による第一の態様の製造法では、使用される放線菌のAAT活性が親株の活性を超えるものであればよいが、好ましくは2倍以上、より好ましくは10倍以上、特に好ましくは20倍以上、最も好ましくは40倍以上である。
ここで、「使用される放線菌が親株のAAT活性を超える活性を示す」か否かは、使用される放線菌が産生するAATの比活性を測定し、親株の比活性と比較することにより確認することができる。
本発明による第一の態様の製造方法で使用できる放線菌としては、親株のAAT活性を超える活性を示す放線菌であればよく、例えば、AAT遺伝子を含む発現ベクターで形質転換して得られた放線菌や、変異処理(ニトロソグアニジン処理、UV処理等)により育種されたAAT活性が増強された放線菌株を使用することができる。好ましくは、AAT活性が親株よりも20倍以上増強された放線菌を用いることができ、具体的には、本発明による第一の態様の宿主(放線菌)、より好ましくは、FERM BP−10495の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託された形質転換体から調製される発現ベクターpSG11で形質転換されたStreptomyces hygroscopicus、最も好ましくは、該発現ベクターpSG11で形質転換されたFERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されたSF1293 NP−50株、を使用することができる。
本発明による第一の態様の製造方法において使用される基質については、式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25〜1:1とすることができるが、経済的な観点からは、好ましくは、約1:約0.25:約1である。
本発明による第一の態様の製造法の好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第一の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法が挙げられる。
本発明による第一の態様の製造法のより好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第一の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、その宿主に導入された組換えベクターが本発明によるプロモーターを更に含んでなり、かつ本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結されている方法が挙げられる。
本発明による第一の態様の製造法の特に好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第一の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、その宿主に導入された組換えベクターが本発明によるプロモーターを更に含んでなり、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結され、かつその宿主がStreptomyces hygroscopicus由来である方法が挙げられる。
第二の態様の製造方法
本発明による第二の態様の製造方法によれば、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌のうち、親株のAAT活性およびPAT活性を超える活性を有する放線菌をL−ホスフィノスリシンの製造に用いることにより、これまでに達成できなかった極めて高い効率でL−ホスフィノスリシンを製造することができる。特に、本発明による第二の態様の製造方法では、L−ホスフィノスリシンの製造原料であるグルタミン酸を削減してもなお、L−ホスフィノスリシンを高効率で製造できることから、コスト削減の観点から極めて有利である。
すなわち、実施例6によれば、親株のAAT活性およびPAT活性を超える活性を有する形質転換体を使用してL−ホスフィノスリシンを製造した場合、変換率は95.3%であった。親株の変換率が93.2%であり、またPAT遺伝子のみを高発現させた株の変換率が92.6%であることを考慮すると、AAT活性に加えてPAT活性を増強することにより、L−ホスフィノスリシンの変換率が更に向上すると考えられる。
実施例6によればまた、親株のAAT活性およびPAT活性を超える活性を有する形質転換体を使用して、グルタミン酸を減量した基質からL−ホスフィノスリシンを製造した場合、変換率は95.5%であった。親株の変換率が76.2%であり、またPAT遺伝子のみを高発現させた株の変換率が82.7%であることを考慮すると、グルタミン酸減量基質を使用した場合にも、AAT活性に加えてPAT活性を増強することにより、L−ホスフィノスリシンの変換率が向上すると考えられる。
前述のように、放線菌のPAT活性のみを増強してもL−ホスフィノスリシンの変換率を向上させることができなかった。また、L−ホスフィノスリシンの製造においてAAT活性のみならずPAT活性を増強することは報告されていなかった。
本発明による第二の態様の製造方法は、AAT活性およびPAT活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌であって、親株のAAT活性およびPAT活性を超える活性を示す放線菌を使用することを特徴とする。本発明による第二の態様の製造法では、使用される放線菌のAAT活性が親株の活性を超えるものであればよいが、好ましくは約2倍以上、より好ましくは約20倍以上、さらに好ましくは約40倍以上、特に好ましくは約100倍以上、最も好ましくは約170倍以上である。本発明による第二の態様の製造法ではまた、使用される放線菌のPAT活性が親株の活性を超えるものであればよいが、好ましくは約2倍以上、より好ましくは約10倍以上、最も好ましくは約16倍以上である。
実施例6によれば、増強されたAAT活性が、増強されたPAT活性よりも相対的に強い場合に、L−ホスフィノスリシンの極めて高い製造効率が達成された。以下の理論に拘束される訳ではないが、生成物阻害を起こすと考えられるα−ケトグルタル酸が相対的に増強されたAATにより速やかにグルタミン酸に変換されるためであると考えられる。従って、本発明による第二の態様の製造方法では、使用する放線菌において、AAT活性の方がPAT活性よりも相対的に強いことが好ましい。
ここで、「使用される放線菌が親株のAAT活性を超える活性を示す」か否かは、使用される放線菌が産生するAATの比活性を測定し、親株の比活性と比較することにより確認することができる。また、「使用される放線菌が親株のPAT活性を超える活性を示す」か否かは、使用される放線菌が産生するPATの比活性を測定し、親株の比活性と比較することにより確認することができる。
本発明による第二の態様の製造方法で使用できる放線菌としては、親株のAAT活性およびPAT活性を超える活性を示す放線菌であればよく、例えば、AAT遺伝子とPAT遺伝子を含む発現ベクターで形質転換して得られた放線菌や、変異処理(ニトロソグアニジン処理、UV処理等)により育種されたAAT活性およびPAT活性が増強された放線菌株を使用することができる。好ましくは、AAT活性が親株よりも40倍以上増強されるとともに、PAT活性が10倍以上増強された放線菌を用いることができ、具体的には、本発明による第二の態様の宿主(放線菌)、より好ましくは、FERM BP−10496の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託された形質転換体から調製される発現ベクターpAHSG7201で形質転換されたStreptomyces hygroscopicus、最も好ましくは、該発現ベクターpAHSG7201で形質転換されたFERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されたSF1293 NP−50株、を使用することができる。
本発明による第二の態様の製造方法において使用される基質については、式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25〜1:1とすることができるが、経済的な観点からは、好ましくは、約1:約0.25:約1である。
本発明による第二の態様の製造法の好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第二の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法が挙げられる。
本発明による第二の態様の製造法のより好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第二の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、その宿主に導入された組換えベクターが本発明によるプロモーターを更に含んでなり、かつ本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結されている方法が挙げられる。
本発明による第二の態様の製造法の特に好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第二の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、その宿主に導入された組換えベクターが本発明によるプロモーターを更に含んでなり、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結され、かつその宿主がStreptomyces hygroscopicus由来である方法が挙げられる。
本発明による第二の態様の製造法の最も好ましい態様としては、式(II)で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、本発明による第二の態様の宿主(放線菌)と接触させる工程を含んでなる、式(I)で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、その宿主に導入された組換えベクターが本発明によるプロモーターを更に含んでなり、本発明によるAAT遺伝子と本発明によるプロモーターとが作動可能に連結され、その宿主がStreptomyces hygroscopicus由来であり、かつ、AAT遺伝子とPAT遺伝子とが逆方向に連結されている方法が挙げられる。
製造条件
本発明による製造方法は、特許第2638541号公報の記載に従って行うことができる。例えば、3%OMPBまたはその塩と0.75%〜3%グルタミン酸またはその塩と3%アスパラギン酸またはその塩との混合液を基質として、これを水酸化ナトリウムにより中和し、pH7.0〜9.5、好ましくは、pH約8.5、温度30〜45℃、好ましくは、37℃の条件で、0.5〜5日間、AAT活性が増強された放線菌あるいはAAT活性およびPAT活性が増強された放線菌を作用させることにより行うことができる。また、変換反応時に、微量のピリドキサルリン酸またはその塩を添加することも可能である。
更に本発明においては、得られたL−ホスフィノスリシンを含む混合液より、精製工程を経て、L−ホスフィノスリシンを純化することが可能である。この場合の精製方法は、当該分野で通常用いられている方法は全て適用可能であるが、イオン交換クロマトグラフィーや溶媒(例えばメタノールなど)による沈澱法を使用することが望ましい。本発明で得られる変換液はこれらの精製法により容易に純化可能であるため、変換液に微量のアラニンが存在しても特に問題とはならない。
式(I)の化合物、式(II)の化合物、グルタミン酸、およびアスパラギン酸はそれぞれ塩として存在することができる。
式(I)の化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩の他、有機塩基、無機酸、有機酸との塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩である。
式(II)の化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩の他、有機塩基との塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩である。
グルタミン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩の他、有機塩基、無機酸、有機酸との塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩である。
アスパラギン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩の他、有機塩基、無機酸、有機酸との塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1:Streptomyces hygroscopicus由来のAAT遺伝子のクローニング
(1)PCR法による長鎖プローブの作製
a)Streptomyces hygroscopicus のゲノムDNAの調製
Streptomyces hygroscopicus(SF1293 NP−50株、FERM BP−1368)をSPY培地(2%でんぷん、1%ポリペプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.05%KHPO:pH7.0)に植菌し、28℃で24時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を回収し、凍結乾燥した。この凍結乾燥菌体をWO00/24879号公報の実施例B2記載の方法により処理することにより、ゲノムDNAを調製した。
b)PCR法によるAAT遺伝子部分断片の増幅
公知のデータベース(DDBJホームページ http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html で利用可能な公共データベース)より得られる2種類の放線菌(Streptomyces virginiaeおよびStreptomyces coelicolor)由来のAATのアミノ酸配列を比較し、ホモロジーのある領域を検索した。その結果、相同性のある2ヶ所のアミノ酸配列(GEPDFPTPおよびKTYAMTGWRVG)を特定し、この部分に対応する2種類の合成オリゴヌクレオチドプライマーを作製した。
SV−GOT−N:
5’−GGCGAGCCCGACTTCCCGACCCCG−3’(配列番号:6)
5’−CCCACGCGCCAGCCGGTCATGGCGTACGTCTT−3’(配列番号:7)
このプライマーを使用して、上述のStreptomyces hygroscopicusのゲノムDNAを鋳型にPCRを実施した。PCRには、TaKaRa LA Taq with GC buffer(タカラバイオ社製)を使用し、94℃・1分間の熱変性の後、98℃・30秒間、60℃・30秒間、72℃・1分15秒間のサイクルを30回繰り返した後、72℃で更に10分間インキュベートした。反応終了後、サンプルを0.8%アガロース電気泳動に供し解析したところ、約0.6kbpの特異的なバンドの増幅が確認された。
c)増幅した遺伝子断片のサブクローニング
実施例1(1)b)で得られた約0.6kbpの遺伝子バンドをゲルから回収した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−up System(プロメガ社製)によりDNAを精製し、TOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)およびE.coli competent cells JM109(タカラバイオ社製)を使用してサブクローンした。得られたプラスミドをpSH−AATとした。プラスミドpSH−AATの挿入断片の塩基配列を解析したところ、Streptomyces virginiae由来のAATをコードするDNA配列との相同性が確認された(塩基配列の解析装置は、アプライドバイオシステム社製のABI PRISM310 Genetic Analyzerを使用した。シーケンス反応は、同社のDNA sequencing Kit であるdRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionを用いた。解析用のプライマーは、キット添付のM13プライマーを使用した)。よって、本挿入断片をStreptomyces hygroscopicus由来のAAT遺伝子の部分断片であると判断し、以後の実験のプローブとして用いた。
(2)AAT遺伝子のクローニング
a)ゲノムDNAのライブラリーの構築
実施例1(1)a)で得られたゲノムDNAをSau3AIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、9〜23kbpのDNA断片をゲルから回収した。回収断片をフェノール処理し、エタノール沈殿により精製した後、λEMBL3/BamHI Vector Kit(ストラタジーン社製)、およびDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社製)を用いて、部分消化したゲノムDNA断片とλEMBL3ベクターを連結した。得られたligation mixtureをMaxplax Packaging Extract(エピセンター社製)を用いてパッケージングした後、大腸菌XL1−Blue MRA株に感染させた。この方法により得られた2.0×10個のファージライブラリーを用いて、目的遺伝子のクローニングを行った。
b)ライブラリーのスクリーニング
実施例1(1)c)で得られたプラスミドpSH−AATをEcoRIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約0.6kbpのDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をWizard SV Gel and PCR Clean−up System(プロメガ社製)を用いて精製し、DIG High Prime DNA Labeling and Detection Starter Kit I(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いてプローブをDIG標識した。
次に、実施例1(2)a)で得られたファージライブラリーをHybond−N+メンブラン(アマシャムバイオサイエンス社製)に写し取り、0.5N水酸化ナトリウムで変性後、5×SSC(1×SSc:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)で洗浄し、乾燥させてDNAを固定した。前述キットの記載に従って、1時間のプレハイブリダイゼーション(42℃)の後、熱変性した標識化プローブを添加し、16時間ハイブリダイゼーション(42℃)を行った。ラベルの洗浄についてもキット記載の方法に従い、まず、0.1%SDSを含む2×SSCで、室温で5分間×2回洗浄した後、0.1%SDSを含む0.5×SSCで、65℃で15分間×2回洗浄した。更に、キット記載の方法に従い、アルカリホスファターゼ標識抗DIG抗体を反応させた後、キット添付の基質(NBT/BCIP)を添加した。結果、青色を呈する2個の陽性クローンが得られた。
c)ファージDNAの調製
陽性のファージを、前述λEMBL3/BamHI Vector Kit記載の方法に従い大腸菌XL1−Blue MRA株に感染させた後、16時間後にファージ粒子を回収し、Grossbergerの方法(Grossberger, D., Nucleic Acids. Res., 15:6737, 1987)に従い、プロティナーゼKおよびフェノール処理後、エタノール沈殿によりファージDNAを調製した。
d)サザンハイブリダイゼーション
実施例1(1)a)で得られたゲノムDNAおよび、実施例1(2)c)で得られたファージDNAを複数の制限酵素でそれぞれ消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。DNAをSouthenの方法(Southern, E. M., J. Mol. Biol., 98:503-517,1975)により、Hybond−N+メンブランに写し取った後、ECF Random−Prime Labelling and Detection System(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてハイブリダイゼーションを実施した。本システム記載の方法により、30分間のプレハイブリダイゼーション(60℃)の後、熱変性した標識化プローブを添加し、16時間ハイブリダイゼーション(60℃)を行った。プローブは、実施例1(2)b)で得られたpSH−AAT由来の約0.6kbpのDNA断片を、本システム記載の方法によりフルオレセイン標識して用いた。ラベルの洗浄についても本システム記載の方法に従い、まず、0.1%SDSを含む1×SSCで、60℃で15分間洗浄した後、0.1%SDSを含む0.5×SSCで、60℃で15分間洗浄した。更に、本システム記載の方法に従い、アルカリホスファターゼ標識抗フルオレセイン抗体を反応させた後、本システム添付の基質(ECF substrate)を添加し、得られた蛍光バンドをモレキュラーイメージャーFX(バイオ・ラッド ラボラトリーズ社製)で検出した。その結果、ゲノムDNAおよびファージDNAをBamHIで処理した場合に約4.3kbpの共通のバンドが、PstIで処理した場合に約2.7kbpの共通のバンドが、BamHIとXhoIで処理した場合に約1.5kbpの共通のバンドがそれぞれ得られることが明らかとなった。
e)目的遺伝子のサブクローニング
まず、実施例1(2)c)で得られたファージDNAを制限酵素BamHIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約4.3kbpのDNA断片をゲルから回収、精製した。得られたDNA断片を、pUC118 BamHI−BAP処理DNA(タカラバイオ社製)に連結し、得られたプラスミドをp118G−411Bとした。同様にファージDNAを制限酵素PstIで処理し、約2.7kbpのDNA断片をゲルから回収した後、pUC118 PstI−BAP処理DNAに連結し、得られたプラスミドをp118G−411Pとした。
得られたプラスミドp118G−411Pを制限酵素PstIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約2.7kbpのDNA断片をゲルから回収、精製した。次に、プラスミドp118G−411Bを制限酵素PstIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約6.2kbpのDNA断片をゲルから回収、精製した。得られたDNA断片をアルカリホスファターゼ(BAP;タカラバイオ社製)処理により脱リン酸化した後、先に得られたp118G−411P由来の約2.7kbpのDNA断片と連結した。得られたプラスミドをpAAT3−5とした。
得られたプラスミドpAAT3−5を制限酵素HindIII、XhoIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約2.9kbpのDNA断片をゲルから回収、精製した。次に、プラスミドpUC19(タカラバイオ社製)を制限酵素HindIII、SalIで消化した後、約2.7kbpのDNA断片をゲルから回収、精製し、先に得られたプラスミドpAAT3−5由来の約2.9kbpのHindIII−XhoI断片と連結した。得られたプラスミドをpHX−01とした。
Streptomyces hygroscopicus由来のAAT遺伝子を含む約5.8Kbpの制限酵素地図を図1に示す。
実施例2:Streptomyces hygroscopicus 由来のAAT遺伝子の塩基配列解析
(1)プラスミドpHX−01の塩基配列の解析
a)シーケンス反応
シーケンス反応は、BigDye Terminator V3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステム社製)を用いて実施した。反応には、鋳型DNAとしてプラスミドpHX−01を、プライマーとしては下記の配列を有する合成オリゴヌクレオチドを使用した。
M13−20:5’−CGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT−3’(配列番号:8)
M13−R :5’−GGAAACAGCTATGACCATGATTAC−3’ (配列番号:9)
付属のマニュアルに従い反応液を調製後、サーマルサイクラーに使用して96℃・10秒間、50℃・5秒間、60℃・4分間のサイクルを30回繰り返すことによりシーケンス反応を実施した。
b)シーケンス解析
実施例2(1)a)で得られた反応液から、余剰の蛍光色素およびプライマーをエターノール沈殿法により除去した後、サンプルを3730xl DNA Analyzer(アプライドバイオシステム社製)に供した。得られた塩基配列データを基に新規のプライマーを作製し、シーケンス反応・解析を繰り返すことにより、全長を両方向でカバーする配列データを取得した。最後にSequencher(ジーンコード社製)を使用して得られた配列データのアセンブルを実施し、塩基配列を確定した(配列番号:10)。
(2)公共のデータベースを利用した相同性解析
実施例2(1)b)で決定した配列を用いて、公共のデータベース(DDBJホームページ http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html で利用可能な公共データベース)上の配列との相同性検索を実施した。検索プログラムとしてblastx(DNA配列×アミノ酸配列DB)を使用し、フィルターOFFの条件で検索を行った結果、Streptomyces celicolorのAAT遺伝子と87%、Streptomyces virginiaeのAAT遺伝子と88%の同一性をそれぞれ示した。
実施例3:Streptomyces hygroscopicus 由来のAAT遺伝子の高発現
(1)発現ベクターpLG04、pSG11の構築
発現ベクターpLG04は図2に示すようにして構築した。また、発現ベクターpSG11は図3に示すように構築した。
a)プラスミドpSYTL03の構築
Katz, E., J. Gen. Microbiol., 129, 2703-2714, 1983に記載のプラスミドpIJ702を制限酵素PstI、SacIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約4.9kbpのDNA断片をゲルから回収、精製した。次に、pUC19(タカラバイオ社製)も同様にPstI、SacIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、DNA断片をゲルから回収、精製した。得られた2種類のDNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpSYTL03を構築した(図2)。
b)発現ベクターpLG04の構築
まず、実施例3(1)a)で得られたプラスミドpSYTL03を制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約4.9kbpのDNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。次に、実施例1(2)e)で得られたプラスミドpHX01も同様に制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、電気泳動後、約2.9kbpのDNA断片をゲルから回収し、精製した。これら2種類のDNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社製)を用いて連結し、得られたligation mixtureを放線菌Streptomyces lividansに形質転換した。Streptomyces lividansの形質転換は、Thompsonの方法(Thompson, C. J., J. Bactriol., 151:668-677, 1982)に従い実施した。Streptomyces lividansプロトプラスト、ligation mixture、T培地を混合した後、20%ポリエチレングリコール1000を添加してDNAを導入し、R2YE agarプレート(20ml培地/プレート)上で30℃、一晩培養した。その後、100μg/mlのチオストレプトン2mlをプレート一枚に重層した(チオストレプトン終濃度10μg/ml)。30℃で更に数日間培養し、形成したコロニーを形質転換体とした。得られた形質転換体を10μg/mlのチオストレプトンを含む80ml YEME培地で30℃、2日間、振とう培養した後、培養液からプラスミドDNAを調製した。Streptomyces lividans形質転換体からのプラスミドDNAの調製は、QIAfilter Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を使用し、キット添付の説明書に従い実施した。ただし、菌体の溶菌を促進させるため、キット添付のbuffer P1に終濃度10mg/mlになるようリゾチームを添加し、本溶液で菌体を室温で30分、プレインキュベートするという前処理工程を追加して実施した。培養液20mlよりDNAを回収し、最終的に50μlのTE bufferに溶解した。複数の形質転換体を処理し、得られたプラスミドDNAを制限酵素HindIII、EcoRIで切断後、0.8%アガロース電気泳動に供し、切断パターンを確認した。約2.9kbpと約4.9kbpのバンドを呈するプラスミドDNAを目的のDNAとして選択し、これを発現ベクターpLG04とした(図2)。
c)発現ベクターpSG11の構築
実施例1(2)e)で得られたプラスミドpHX01を制限酵素BamHIで切断し、電気泳動後、約1.5kbpのDNA断片をゲルから回収し、精製した。このDNA断片をpUC118 BamHI−BAP処理DNA(タカラバイオ社製)に連結し、得られたプラスミドをp118−G1とした(図3)。
このプラスミp118−G1を制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、電気泳動後、約1.5kbpのDNA断片をゲルから回収し、精製した。また、実施例3(1)a)で得られたプラスミドpSYTL03も同様に制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、電気泳動後、約4.9kbpのDNA断片をゲルから回収し、精製した。これら2種類のDNA断片をDNA Ligation Kit ver.2を用いて連結し、得られたligation mixtureを実施例3(1)b)の方法に従い放線菌Streptomyces lividansに形質転換した。得られた形質転換体を10μg/mlのチオストレプトンを含む80mlYEME培地で30℃、2日間、振とう培養した後、培養液から実施例3(1)b)の方法に従い、プラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素HindIII、EcoRIで切断後、0.8%アガロース電気泳動に供し、切断パターンを確認した。約1.5kbpと約4.9kbpのバンドを呈するプラスミドDNAを目的のDNAとして選択し、これを発現ベクターpSG11とした(図3)。
(2)発現ベクターpLG04、pSG11によるStreptomyces hygroscopicus の形質転換
a)プロトプラストの調製
Streptomyces hygroscopicus(SF1293 NP−50株、FERM BP−1368)の菌株ストック(凍結乾燥菌体)を10mlのS1培地(2%でんぷん、1%ポリペプトン、0.3%モルトエキストラクト、0.05%KHPO;pH7.0)に植菌し、28℃で40時間、振とう培養した。得られた培養液のうち2mlを、5%グリシンを含む80mlのS2培地(1%グルコース、0.4%ペプトン、0.4%イーストエキストラクト、0.05%MgSO・7HO、0.2%KHPO、0.4%KHPO4;pH7.0)に移植し、28℃で18時間、振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、0.5M シュクロースで洗浄した後、終濃度2.5mg/mlのリゾチームと終濃度1.25mg/mlのアクロモペプチダーゼを含むP3培地(70mM NaCl、0.5M シュクロース、5mM MgCl・6HO、5mM CaCl・2HO、25mM TES buffer;pH7.2)に懸濁し、30℃で一時間振とうし、溶菌させた。生じたプロトプラストをP3培地で洗浄した後、約500μlのP3培地に懸濁し、これをプロトプラスト溶液とした。
b)形質転換
b)−1 培地の調製
形質転換の際に使用するTH培地は以下の方法で調製した。まず、Okanishiの方法(Okanishi, M., J. Gen. Microbiol., 80, 389-400, 1974)に従い、Trace element solutionを調製した。次に、シュークロース 26.7g、KSO 0.0375gを約60mlに溶解し、Trace element solution 0.3mlを加えた後、水で77.5mlにメスアップし、これを3/2TH培地とした。この3/2TH培地 7.75mlに、2M CaCl 0.75mlと0.5M Tris−maleic acid buffer(pH8.0)1.5mlを加え、これをTH培地とした。
プロトプラスト再生用のRME培地は以下の方法で調製した。まず、プロリン 2g、グルコース 10g、イーストエキストラクト 2g、カザミノ酸 2g、シュークロース 174g、KCl 15g、KSO 0.25g、DEXTRAN SULFATE 0.05g、LAB DEMCO 1gを水に溶解し、10% NaOHでpH7.2に調整し、水で500mlにメスアップし、これを2×RME培地とした。2×RME培地500ml、0.5%KHPO 10ml、1M CaCl2 50ml、3%コーンスティープリカー(NaOHでpH7.0に調整)100ml、5%アスパラギン酸ナトリウム(NaOHでpH7.0に調整)10ml、3.03%アガー 330mlを別々に殺菌後、混合しこれをRME培地(アガー終濃度 1%)とした。重層用のRMEソフトアガー培地は、RME培地のアガー終濃度を0.5%に変更したものを用いた。
b)−2 形質転換体の作出
実施例3(1)b)で得られたベクターpLG04および実施例3(1)c)で得られたベクターpSG11のDNA溶液各25μl、TE buffer 25μlに実施例3(2)b)−1で得られたTH培地100μlを加えよく混合した後、実施例3(2)a)で得られたプロトプラスト溶液100μlを加え、緩やかに混合した。このDNA/プロトプラスト混合液にPEG solution(3g ポリエチレングリコール1000、6ml TH培地)375μlを加え、約1分間混合した後、適当量(10μl〜100μl)をRME培地(約20ml/プレート)にプレーティングし、さらにRMEソフトアガー培地を重層した(約2ml/プレート)。28℃で約2日間培養した後、100μg/mlのチオストレプトン溶液2mlをプレートに添加し塗布した。さらに28℃で7〜10日間培養し、得られたコロニーを形質転換体とした。
(3)発現ベクターpLG04およびpSG11による形質転換体の評価
a)形質転換体の培養
実施例3(2)b)−2で得られたコロニーを10μg/mlのチオストレプトンを含む10mlのSPY培地に植菌し、28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液のうち2mlを10μg/mlのチオストレプトンを含む30mlのSPY培地に植菌し、28℃で2日間、更に振とう培養した。
b)形質転換体の評価
実施例3(3)a)で得られた培養液から遠心分離により菌体を回収し、0.9%食塩水で洗浄した後、菌体を−80℃で凍結した。凍結菌体を20mlのbuffer A2(20mM リン酸バッファー、0.1mM ピリドキサルリン酸、5mM 2−メルカプトエタノール、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド;pH7.0)に溶解、懸濁し、菌体を超音波により破砕した。破砕液から遠心分離により細胞断片を除去し、上清を粗酵素液とした。得られた粗酵素液を用いて、Tanakaらの方法(Tanaka, T., Agric. Biol. Chem., 54:625-631, 1990)に従い、37℃、pH7.5におけるAAT活性を測定した。
その結果、pLG04形質転換体のAAT活性に対してpSG11形質転換体のAAT活性が約5.4倍と顕著に高活性であったことから(表1)、pSG11形質転換体をAAT高発現株として以降の実験に用いた。
Figure 0005335413
(4)発現ベクターpSG11による形質転換体の評価
a)形質転換体の培養
実施例3(2)b)−2で得られた発現ベクターpSG11による形質転換体の菌株ストック(凍結乾燥菌体)を10μg/mlのチオストレプトンを含む10mlのSPY培地に植菌し、28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液のうち2mlを10μg/mlのチオストレプトンを含む30mlのP−101培地(7%グルコース、4.4%ソイトン、0.327%KHPO、0.085%NaHPO、1.15% TES、0.0001%CoCl・6HO;pH6.0)に移植し、28℃で4日間振とう培養した。対照として親株(プラスミドなし)および特開平2−195889号公報記載のプラスミドpMSB515による形質転換体も同様の工程で培養した(ただし、親株はチオストレプトンを含まない培地で培養した)。
b)酵素活性の測定
b)−1 粗酵素液の調製
実施例3(4)a)で得られた培養液から遠心分離により菌体を回収し、0.9%食塩水で洗浄した後、菌体を−80℃で凍結した。凍結菌体を20mlのbuffer A2に溶解、懸濁し、菌体を超音波により破砕した。破砕液から遠心分離により細胞断片を除去し、上清を粗酵素液とした。得られた粗酵素液を用いて、AATおよびPAT活性を測定した。
b)−2 PAT活性およびAAT活性の測定
PAT活性の測定は、Schulzの方法(Schulz, A., Appl. Environ. Microbiol., 56, 1-6, 1990)に従って実施した。PAT活性測定用基質(150mM グルタミン酸、50mM OMPB、0.1mM ピリドキサルリン酸、100mM Tris−HCl buffer;pH8.5)と粗酵素液を混合し、37℃、20分間インキュベートした後、沸騰水浴中で5分間加熱することにより反応を停止した。反応停止後、サンプルを0.45μmのフィルターによりろ過し、アミノ酸分析用HPLC(model LC−VP、島津製作所社製)に供し、生成したL−ホスフィノスリシン濃度を測定した。酵素力は、1分間に1μmolのL−ホスフィノスリシンを生成する能力を1U(ユニット)として定義した。粗酵素液中のタンパク質濃度をプロティンアッセイキット(バイオラッド社製)を用いてγ−グロブリンをスタンダードとして測定し、粗酵素液の比活性(U/mg)を求めた。
AAT活性の測定は、以下の方法で実施した。AAT活性測定用基質(150mM アスパラギン酸、50mM α−ケトグルタル酸、0.1mM ピリドキサルリン酸、100mM Tris−HCl buffer;pH8.5)と粗酵素液を混合し、37℃、20分間インキュベートした後、沸騰水浴中で5分間加熱することにより反応を停止した。反応停止後、サンプルを0.45μmのフィルターによりろ過し、アミノ酸分析用HPLC(model LC−VP、島津製作所社製)に供し、生成したグルタミン酸濃度を測定した。酵素力は、1分間に1μmolのグルタミン酸を生成する能力を1U(ユニット)として定義した。粗酵素液中のタンパク質濃度を上述のプロティンアッセイキットで測定し、粗酵素液の比活性(U/mg)を求めた。
その結果、pSG11の組換え体のPAT活性は親株とほとんど変わらなかったが、AAT活性は親株の約47倍であった(表2)。
Figure 0005335413
実施例4:AAT遺伝子の高発現株によるL−ホスフィノスリシンの生産
(1)発現ベクターpSG11による形質転換体の培養
実施例3で得られたpSG11による形質転換体の菌株ストック(凍結乾燥菌体)を10μg/mlのチオストレプトンを含む30mlのSPY培地に植菌し、28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液のうち2mlを10μg/mlのチオストレプトンを含む40mlのSPY培地に移植し、28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液のうち20mlを10μg/mlのチオストレプトンを含む400mlのSBK培地(2%でんぷん、3%脱脂大豆かす、0.05%KHPO;pH7.0)に移植し、28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液のうち5mlを4LのSBK培地に移植し、28℃で2日間、通気攪拌培養した。得られた培養液のうち400mlを4LのP2培地(3%グルコース、3%脱脂大豆かす、1%グルテンミール、0.001%CoCl・6HO、0.01%MgSO・7HO、0.013%CaCl・2HO;pH7.0)に移植し、28℃で4日間通気攪拌培養した。得られた培養液を用いて、下記の条件で微生物変換を実施し、L−ホスフィノスリシンの生産を行った。尚、対照として親株(プラスミドなし)およびプラスミドpMSB515による形質転換体も同様の工程で培養し(ただし、親株はチオストレプトンを含まない培地で培養した)、同様に変換反応を行った。
(2)微生物変換によるL−ホスフィノスリシンの生産
a)基質溶液Aの調製
まず、OMPB、アスパラギン酸、グルタミン酸を各66g測りとり、約1Lの水に懸濁した。次に、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調製し、水で1760mlにメスアップし、これを基質溶液Aとした。
b)基質溶液Bの調製
まず、OMPB、アスパラギン酸を各66g、グルタミン酸を各16.5g測りとり、約1Lの水に懸濁した。次に、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調製し、水で1760mlにメスアップし、これを基質溶液Bとした。
c)微生物変換
実施例4(1)で得られた培養液440mlと実施例4(2)のa)またはb)でそれぞれ得られた基質溶液AまたはB1760mlを混合し反応を開始した。変換条件は、温度37℃、pH8.5(水酸化ナトリウムで調整)とし、攪拌しながら3日間(約70時間)反応を実施した。変換終了後、サンプルを0.45μmのフィルターによりろ過し、アミノ酸分析用HPLC(model LC−VP、島津製作所社製)に供し、生成されたL−ホスフィノスリシンの濃度を測定した。また、変換終了時の変換液量も正確に測定し、それらの積から生産されたL−ホスフィノスリシン量を求めた。さらに使用したOMPBと生産されたL−ホスフィノスリシンのモル比を求めることにより、各培養液におけるL−ホスフィノスリシンへの変換率を算出した。
その結果、AAT高発現株は、親株やpMSB515による形質転換体に比べ、グルタミン酸濃度を低減した基質溶液Bにおいても、顕著に高い変換率を示した(表3)。
Figure 0005335413
実施例5:AAT遺伝子とPAT遺伝子の共発現
(1)発現ベクターpAHSG7201の構築
プラスミドpATSG01は図4に示すようにして構築した。また、発現ベクターpAHSG7201は図5に示すようにして構築した。
a)プラスミドpATII515−03の構築
PAT遺伝子は、PATの一種であるAT−II(特開平2−195889号公報参照)の遺伝子を使用した。まず、特開平2−195889号公報記載のプラスミドpMSB515より、PATの一種であるAT−IIの遺伝子を制限酵素SacI(SstI)で切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約4.7kbpのDNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。次に、pUC18(タカラバイオ社製)も同様にSacIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、DNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。pUC18のSacI断片をアルカリホスファターゼ(BAP;タカラバイオ社製)により処理した後、pMSB515由来の約4.7kbpのSacI断片と連結した。得られたプラスミドをpATII515−03とした(図4)。
b)プラスミドpATSG01の構築
まず、実施例1(2)e)で得られたプラスミドpHX−01を制限酵素BamHIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約1.5kbpのDNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。次に、実施例5(1)a)で得られたプラスミドpATII515−03を制限酵素BamHIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約7.4kbpのDNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。pATII515−03のBamHI断片をアルカリホスファターゼ(BAP)により処理した後、pHX−01由来の約1.5kbpのBamHI断片と連結した。得られたプラスミドをpATSG01とした(図4)。
c)発現ベクターpAHSG7201の構築
まず、実施例3(1)a)で得られたプラスミドpSYTL03を制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した後、約4.9kbpのDNA断片をゲルから回収し、DNAを精製した。次に、実施例5(1)b)で得られたプラスミドpATSG01も同様に制限酵素HindIII、EcoRIで切断し、電気泳動後、約5.6kbpのDNA断片をゲルから回収し、精製した。これら2種類のDNA断片をDNA Ligation Kit ver.2を用いて連結し、得られたligation mixtureを実施例3(1)b)と同様の方法で放線菌Streptomyces lividansに形質転換した。得られた形質転換体を10μg/mlのチオストレプトンを含む80ml YEME培地で30℃、2日間、振とう培養した後、培養液からプラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素HindIII、EcoRIで切断後.0.8%アガロース電気泳動に供し、切断パターンを確認した。約4.9kbpと約5.6kbpのバンドを呈するプラスミドDNAを目的のDNAとして選択し、これを発現ベクターpAHSG7201とした(図5)。
(2)発現ベクターpAHSG7201によるStreptomyces hygroscopicusの形質転換と形質転換体の評価
a)発現ベクターpAHSG7201による形質転換の作出と形質転換体の培養
実施例5(1)c)で得られた発現ベクターpAHSG7201により、Streptomyces hygroscopicus(SF1293 NP−50株、FERM BP−1368)を形質転換した。実施例3(2)の方法に従い形質転換を実施し、得られた形質転換体を培養した。実施例3(4)a)と同様の工程で培養を行い、10μg/mlのチオストレプトンを含むP−101培地で28℃、4日間振とう培養した培養液を得た。得られた培養液より菌体を回収し、実施例3(4)b)−1の方法に従い粗酵素液を調製した。
b)発現ベクターpAHSG7201による形質転換体の評価
実施例5(2)a)で得られた発現ベクターpAHSG7201による形質転換体由来の粗酵素液を用いて、PAT活性およびAAT活性を測定した。酵素活性の測定は、実施例3(4)b)−2の方法に従った(対照として、実施例3(4)b)−2の結果を併記した)。
その結果、pAHSG7201による形質転換体のPAT活性は親株の約16倍、AAT活性は親株の約170倍であった(表4)。
Figure 0005335413
実施例6:AAT遺伝子とPAT遺伝子の共発現株によるL−ホスフィノスリシンの生産
(1)発現ベクターpAHSG7201による形質転換体の培養
実施例5(2)で得られた発現ベクターpAHSG7201による形質転換体を、実施例4(1)と同様の工程で培養した。P−2培地で28℃、4日の通気攪拌間培養を実施し、得られた培養液を用いてL−ホスフィノスリシンの生産を行った。
(2)発現ベクターpAHSG7201による形質転換体の培養
実施例6(1)で得られた発現ベクターpAHSG7201による形質転換体の培養液440mlと実施例4(2)の方法に従って調製した基質溶液AまたはB1760mlを混合し、37℃、pH8.5で3日間(約70時間)反応した。得られた変換液を実施例4(2)と同様の方法で分析し、L−ホスフィノスリシンの生産量を求めた(対照として、実施例4(2)c)の結果を併記した)。
その結果、グルタミン酸を低減した基質溶液Bにおいても、発現ベクターpAHSG7201による形質転換体(すなわち、AAT・PAT共発現株)は他の株に比べ、顕著に高い変換率を示した(表5)。
Figure 0005335413
実施例7:AAT遺伝子とPAT遺伝子の共発現株における、高発現タンパク質のN末端アミノ酸配列の同定
発現ベクターpAHSG7201による形質転換体において高発現したタンパク質のN末端アミノ酸配列を決定するため、特許第3593134号公報の実施例A2記載の方法に従い、N末端アミノ酸のシーケンスを実施した。まず、実施例5(2)c)で得られた発現ベクターpAHSG7201による形質転換体の粗酵素液を、SDS−PAGE mini 12% Gel(テフコ社製)を用いて電気泳動した後、マルチフォーII電気泳動装置(アマシャムバイオサイエンス社製)によりタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に写し取った。次にこのPVDF膜をコマジーブリリアントブルーR−250(ナカライテスク社製)で染色し、脱色した後、水で洗浄し風乾した。ここから50kDaと43kDaのタンパク質がブロットされた部分を切り出し、それぞれをプロティンシーケンサーModel492(パーキンエルマー社製)に供し、下記のようにN末端アミノ酸配列を決定した。
43kDaタンパク質:
Ser−Ala−Ala−Thr−Pro−Ser−Ala−Ser(配列番号:11)
50kDaタンパク質:
Thr−Glu−Leu−Ser−Gly−Ala−Pro−Ala(配列番号:12)
43kDaタンパク質のN末端アミノ酸配列は配列番号:2の第2番目〜第9番目と一致した。従って、43kDaタンパク質は、AATタンパク質であることが明らかとなった。また、50kDaタンパク質のN末端アミノ酸配列は配列番号:5の第2番目〜第9番目と一致した。従って、50kDaタンパク質は、PATタンパク質であることが明らかとなった。

Claims (22)

  1. 以下の(i)、(ii)、および(iv)から選択される、ポリヌクレオチド:
    (i)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (ii)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
    (iv)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつAAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
    以下の(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド:
    (v)配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (vi)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)活性を有するタンパク質;および
    (viii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつAAT活性を有するタンパク質と、
    以下の(ix)、(x)、および(xii)から選択される、ポリヌクレオチド:
    (ix)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (x)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;および
    (xii)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチドと
    を含んでなり、前記(ix)、(x)、および(xii)から選択されるポリヌクレオチドが、前記(i)、(ii)、および(iv)から選択されるポリヌクレオチド、または前記(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、組換えベクター。
  2. FERM BP−10495の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された放線菌から調製される発現ベクターpSG11である、請求項に記載の組換えベクター。
  3. 請求項1または2に記載の組換えベクターにより形質転換された宿主。
  4. 放線菌である、請求項に記載の宿主。
  5. 放線菌がStreptomyces hygroscopicusである、請求項に記載の宿主。
  6. FERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293 NP−50株またはFERM BP−130の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293株が形質転換されてなる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の宿主。
  7. 以下の(i)、(ii)、および(iv)から選択される、ポリヌクレオチド:
    (i)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (ii)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
    (iv)配列番号:1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつAAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
    以下の(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド:
    (v)配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (vi)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)活性を有するタンパク質;および
    (viii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつAAT活性を有するタンパク質と、
    以下の(ix)、(x)、および(xii)から選択される、ポリヌクレオチド:
    (ix)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (x)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;および
    (xii)配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチドと、
    L−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドと
    を含んでなり、前記(ix)、(x)、および(xii)から選択されるポリヌクレオチドが、前記(i)、(ii)、および(iv)から選択されるポリヌクレオチド、または前記(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、組換えベクター。
  8. L−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ(PAT)活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、以下の(i’)、(ii’)、および(iv’)から選択される、請求項に記載の組換えベクター:
    (i’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (ii’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにおいて、1もしくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
    (iv’)配列番号:4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含んでなり、かつPAT活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  9. L−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ(PAT)活性を有するタンパク質が、以下の(v’)、(vi’)、および(viii’)から選択される、請求項に記載の組換えベクター:
    (v’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (vi’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質;および
    (viii’)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつPAT活性を有するタンパク質。
  10. 前記(i)、(ii)、および(iv)から選択されるポリヌクレオチド、または前記(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとL−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドとが逆方向に連結されている、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組換えベクター。
  11. 前記(i)、(ii)、および(iv)から選択されるポリヌクレオチド、または前記(v)、(vi)、および(viii)から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとL−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドとが正方向に連結されている、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組換えベクター。
  12. FERM BP−10496の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された放線菌から調製される発現ベクターpAHSG7201である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の組換えベクター。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項に記載の組換えベクターにより形質転換された、宿主。
  14. 放線菌である、請求項13に記載の宿主。
  15. 放線菌がStreptomyces hygroscopicusである、請求項14に記載の宿主。
  16. FERM BP−1368の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293 NP−50株またはFERM BP−130の受託番号のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたSF1293株が形質転換されてなる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の宿主。
  17. 式(I):
    Figure 0005335413
    で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、式(II):
    Figure 0005335413
    で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、グルタミン酸またはその塩およびアスパラギン酸またはその塩の存在下で、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性およびL−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌と接触させる工程を含んでなり、使用される放線菌が、請求項3〜6のいずれか一項に記載の宿主であることを特徴とする方法。
  18. 式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25〜1:1である、請求項17に記載の方法。
  19. 式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25:1である、請求項18に記載の方法。
  20. 式(I):
    Figure 0005335413
    で示されるL−ホスフィノスリシンまたはその塩を製造する方法であって、式(II):
    Figure 0005335413
    で示される4−ヒドロキシメチルホスフィニル−2−オキソ−酪酸またはその塩を、グルタミン酸またはその塩およびアスパラギン酸またはその塩の存在下で、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性およびL−ホスフィノスリシンアミノトランスフェラーゼ活性を示し、かつL−ホスフィノスリシンを産生することができる放線菌と接触させる工程を含んでなり、使用される放線菌が、請求項13〜16のいずれか一項に記載の宿主であることを特徴とする方法。
  21. 式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25〜1:1である、請求項20に記載の方法。
  22. 式(II)の化合物またはその塩:グルタミン酸またはその塩:アスパラギン酸またはその塩=1:0.25:1である、請求項21に記載の方法。
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