JP2009171871A - メタロエンドペプチダーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】ペプチド中のプロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有する、エンドペプチダーゼを提供すること。
【解決手段】本発明のメタロエンドペプチダーゼは、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、好適には、以下の性質:(1)至適反応pH:pH6.5〜7.5;(2)至適反応温度:約40℃;(3)熱安定性:50%熱不活性化温度として、約50℃;(4)カルシウムイオンおよびコバルトイオンにより活性化される;および(5)EDTA、1,10−フェナンスロリン、ジチオトレイトールおよびグルタチオンによって阻害される;を有する。また、本発明のメタロエンドペプチダーゼは、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3(FERM P−21343)により産生される。
【選択図】なし

Description

本発明は、ペプチド中のプロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有する新規メタロエンドペプチダーゼに関する。
タンパク質分解反応は、タンパク質を多く含む食品における調味料の開発に重要である。短いペプチドおよび遊離アミノ酸は、食品の特有の味を誘起してうまみを導き出す。一方、長いペプチドは一般的に苦いため、加水分解によって苦味を低減させる。
カゼイン、グルテン、コラーゲン、ゼラチンなどは、プロリンリッチなタンパク質として知られている。例えば、コラーゲンは、非常の多量のプロリン残基を含み(20%以上)、代表的なプロリンリッチなタンパク質である。コラーゲン分子のポリペプチド鎖は、多くのトリペプチド繰り返し単位Gly−Pro−Xaaから構成されており、Xaaはプロリンであることが多い。また、ペプチド中のプロリン残基は、翻訳後修飾によりヒドロキシプロリンになっていることも多い。プロリンは、ピロリジン環構造を有するためN−Cα結合間の回転が制限される独特のアミノ酸である。そのため、プロリン残基に隣接するペプチド結合は、分解しにくく、一般的に入手可能な酵素を用いて切断することは困難である。しかし、コラーゲンおよびそのペプチドは、生化学的および医学的機能のため、産業上興味深い生体材料である。したがって、細菌由来のプロリン特異的プロテアーゼおよびアミノペプチダーゼを、コラーゲンからのペプチドフラグメントおよびアミノ酸の生成に用いることが期待される。
現在までに、いくつかの細菌由来のコラーゲン分解性プロテアーゼが報告されている(非特許文献1)。それらのいくつかは、ビブリオまたはクロストリジウム種のような病原性細菌によって産生されるので、食品や医薬品産業への利用には適切ではない(非特許文献2〜5)。
プロリルオリゴペプチダーゼは、N末端にプロリン残基を含むペプチドからプロリンを切断するエキソペプチダーゼであることが知られている(非特許文献6)。さらに、Lactobacillus(非特許文献7)、Streptomyces(非特許文献8)、およびBifidobacterium(非特許文献9)由来のオリゴペプチダーゼのいくつかが、プロリンに特異的な活性を有することが報告されている。しかし、その活性は、オリゴペプチドに対するものに限られる。
近年、プロテアーゼの基質優先性について、FRETSコンビナトリアルライブラリーを用いて検討されている(非特許文献10〜12および特許文献1)。しかし、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性(以下、「ポストプロリン加水分解活性」という場合がある)を有するエンドペプチダーゼについての報告はない。
特開2006−197802号公報 K. Watanabe、Appl. Microbiol. Biotechnol. 2004年,63巻,520-526頁 H. Takeuchiら、Biochem. J.,1992年,281巻,703-708頁 S. Miyoshiら、Infect. Immun.,1998年,66巻,4851-4855頁 K. Yoshiharaら、J. Bacteriol.,1994年,176巻,6489-6496頁 O. Matsushitaら、J. Bacteriol.,1994年,176巻,149-156頁 D. ReaおよびV. Fulup,Cell Biochem. Biophys.,2006年,44巻,349-365頁 Y-S. Chenら、Appl. Environ. Microb.,2003年,69巻,1276-1282頁 C. Janerら、Appl. Environ. Microb.,2005年,71巻,8460-8465頁 Y. Umezawaら、J. Biochem.,2004年,136巻,293-300頁 T. Hatanakaら、Arch. Biochem. Biophys.,2005年,434巻,289-298頁 K. Odaら、FEBS Lett.,2005年,579巻,5013-5018頁 S. Tankulら、Biochem. Biophys. Res. Commun.,2003年,309巻,547-551頁 K. Titaniら、Nature,1972年,238巻,35-37頁 S. Kojimaら、Biosci. Biotechnol. Biochem.,1998年,62巻,1392-1398頁 U. Neumannら、Anal. Biochem.,2004年,328巻,166-173頁 H. Tsuyukiら、J. Biochem.,1991年,110巻,339-344頁
上述のように、コラーゲンおよびそのペプチドは、生化学的および医学的機能のため、産業上興味深い生体材料であり、そのペプチド中のポストプロリンの加水分解活性を有するエンドペプチダーゼが、このようなプロリンリッチなタンパク質の処理に必要とされている。したがって、本発明のポストプロリン加水分解活性を有するエンドペプチダーゼを提供することを目的とする。
近年、ストレプトマイセス・セプタタス(Streptomyces septatus)TH−2株が、無機リン酸および炭素源の存在下で大量のメタロエンドペプチダーゼ(SSMP)を分泌することが見い出されている(特許文献1および非特許文献10)。そこで、入手可能なストレプトマイセス属放線菌においてフルオレセイン結合ゼラチン(FITC−ゼラチン)に対するタンパク質分解活性についてスクリーニングして、ポストプロリン加水分解活性を有するプロテアーゼを探索し、新規なエンドペプチダーゼを得ることに成功した。
本発明は、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有する、メタロエンドペプチダーゼを提供する。
1つの実施態様では、上記メタロエンドペプチダーゼは、以下の性質:
(1)至適反応pH:pH6.5〜7.5;
(2)至適反応温度:約40℃;
(3)熱安定性:50%熱不活性化温度として、約50℃;
(4)カルシウムイオンおよびコバルトイオンにより活性化される;および
(5)EDTA、1,10−フェナンスロリン、ジチオトレイトールおよびグルタチオンによって阻害される;
を有する。
ある実施態様では、上記メタロエンドペプチダーゼは、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3(FERM P−21343)により産生される。
さらなる実施態様では、上記メタロエンドペプチダーゼは、(A)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列、
(B)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列、および
(C)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。
さらにある実施態様では、上記メタロエンドペプチダーゼは、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列の3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、そして該配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対する基質優先性を有する。
本発明はまた、メタロエンドペプチダーゼをコードする遺伝子を提供し、該メタロエンドペプチダーゼは、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、そして該遺伝子は、
(a)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(b)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(c)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列をコードする塩基配列、および
(d)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列のアンチセンス鎖と、ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする塩基配列、
からなる群より選択される塩基配列を有する。
1つの実施態様では、上記遺伝子がコードするメタロエンドペプチダーゼは、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列の3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、そして該配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対する基質優先性を有する。
本発明はさらに、上記の遺伝子を含む、発現用担体を提供する。
本発明はまた、上記の遺伝子が組み込まれている、形質転換細胞を提供する。
本発明はさらに、上記の形質転換細胞により産生される、組換えメタロエンドペプチダーゼを提供する。
本発明はまた、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3(FERM P−21343)株を提供する。
本発明によれば、ポストプロリン加水分解活性を有するメタロエンドペプチダーゼが提供される。本発明のメタロエンドペプチダーゼを用いれば、カゼイン、グルテン、コラーゲン、ゼラチンなどのプロリンリッチなタンパク質を、比較的短いペプチドに加水分解することができる。
本明細書において、アミノ酸の表記を、3文字または1文字で表記する場合がある。すなわち、アラニンは、AlaまたはA;アルギニンは、ArgまたはR;アスパラギンは、AsnまたはN;アスパラギン酸は、AspまたはD;システインは、CysまたはC;グルタミン酸は、GluまたはE;グルタミンは、GlnまたはQ;グリシンは、GlyまたはG;ヒスチジンは、HisまたはH;イソロイシンは、IleまたはI;ロイシンは、LeuまたはL;リジンは、LysまたはK;メチオニンは、MetまたはM;フェニルアラニンは、PheまたはF;プロリンは、ProまたはP;セリンは、SerまたはS;トレオニンは、ThrまたはT;トリプトファンは、TrpまたはW;チロシンは、TyrまたはY;そしてバリンは、ValまたはVを示す。また、任意のアミノ酸は、XaaまたはX、あるいはYaaまたはZaaと表記する場合がある。
本明細書において、「置換、欠失、挿入または付加」を有するアミノ酸配列とは、天然由来の変異を有するアミノ酸配列であってもよく、人為的な変異を導入されたアミノ酸配列であってもよい。「アミノ酸配列の置換、欠失、挿入または付加」は、当該技術分野で通常用いられる部位特異的変異導入法などにより、アミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して生じさせ得る。得られたアミノ酸配列を有するペプチドが、元のペプチドと同等またはそれ以上の活性を示せばよい。
本発明のメタロエンドペプチダーゼは、ポストプロリン加水分解活性を有する。すなわち、ペプチド中のプロリン残基のC末端側のペプチド結合を切断する活性を有する。
本発明において、メタロエンドペプチダーゼの酵素活性を測定する際に用いられる基質としては、FITC−ゼラチン(Molecular Probes)が挙げられる。これは、ゼラチンを、プロテアーゼによる切断により蛍光が消光して、その蛍光を検出するように、フルオレセインで高濃度に標識されている。このような基質として他に、例えば、高蛍光の(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Lys−Pro−Leu−Gly−Leu−D−2,3−ジアミノプロピオン酸(2,4−ジニトロフェニル)−Ala−Arg−NH(配列番号3:以下、MOCAc−KPLGL−Dnpと記載する)が挙げられる。
本発明において、メタロエンドペプチダーゼの酵素活性の測定は、例えば、以下のように行われ得る。まず、測定対象の酵素を含む反応液を基質溶液(例えば、約50μg/mLのFITC−ゼラチンおよび25mMのCaClを含む80〜100mMのTris−マレイン酸緩衝液(pH7.0))に加え、次いで反応液を37℃にて約1〜5分間インキュベートする。次いで、反応を、37℃にてλex355nmおよびλem460nmでの蛍光強度の上昇によってモニターすることができる。あるいは、MOCAc−KPLGL−Dnpを基質として用いる場合は、反応を、加熱処理(90℃にて約5分間)で停止させた後、例えば、等量の水/アセトニトリル/TFA=70/30/0.1(v/v/v)を試料に加え、そして得られた試料をHPLC分析することによって、切断されたMOCAc−KPLGL−Dnpに由来するフラグメントを検出できる(例えば、励起波長328nmおよび発光波長393nm)。
本発明のメタロエンドペプチダーゼは、至適反応pHが、好ましくはpH6.5〜7.5であり、そして至適反応温度が、10℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは37℃以上、さらに好ましくは約40℃である。また、本発明のメタロエンドペプチダーゼは、50%熱不活性化温度として、約50℃の熱安定性を示す。
本発明のメタロエンドペプチダーゼは、カルシウムイオンおよびコバルトイオンの存在により、その酵素活性が増強される。しかし、酵素の安定性については、これらの金属イオンによる影響を受けない。一方、EDTA、1,10−フェナンスロリン、ジチオトレイトールおよびグルタチオンの存在下では、酵素活性が阻害される。例えば、10mMの還元型および酸化型グルタチオンの存在下では、酵素活性は完全に阻害される。
本発明のメタロエンドペプチダーゼは、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、好ましくは、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対して、3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性についての基質優先性を有する。
本発明のメタロエンドペプチダーゼは、SDS−PAGE、ゲルろ過分析、およびMALDI−TOF−MS分析に基づいて算出された分子量が約35kDaであり、単量体である。
本発明のメタロエンドペプチダーゼとしては、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3株[Streptomyces aureofaciens TH-3と命名・表示され、受託番号:FERM P−21343(寄託日:2007年8月17日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている]により産生されるメタロエンドペプチダーゼが挙げられる。
本発明のストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3(FERM P−21343)株は、岡山県の吉備高原の土壌より分離された放線菌であり、ISP培地No.2(「ダイゴ」日本製薬株式会社)にて30℃で48時間培養した場合、以下の(i)〜(iii)の性質を有する。
(i)形態的性質(ISP培地No.2で生育)
コロニーサイズ:φ4.0〜5.0mm
コロニー表面の形状:しわ状
コロニーの色調:表面(気菌糸)および裏面(基生菌糸)ともに茶色
水溶性色素産生:−
なお、ISP培地No.3、ISP培地No.4、またはISP培地No.5で生育させた場合には、コロニー表面および基底ともに灰色であった。
(ii)培養的性質
気菌糸の形状:分岐あり、幅0.7〜0.8μm
(iii)生理・生化学的性質(+は陽性、−は陰性を示す)
ゼラチンの液化: −
デンプンの加水分解: +
硝酸還元反応: −
脱脂粉乳のペプトン化・凝固: −
生育温度の範囲(℃):
20 +(反応弱)
25 +
30 +
37 +
45 −
耐塩性(%):
3.0 −
5.0 −
7.0 −
10.0 −
炭素源の利用性:
ISP培地No.9 −
グルコース +
L−ラムノース +
D−マンニトール +
D−フラクトース −
L−アラビノース +
ラフィノース +
シュクロース −
D−キシロース +
イノシトール +
メラニン様色素産生:
ISP培地No.6 −
ISP培地No.7 −
このストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株を培養し、培養上清から単離・精製することによって、メタロエンドペプチダーゼを容易に得ることができる。ストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株の培養条件は、特に限定されず、約30℃、例えば、25〜34℃で、5日間前後、例えば、3〜5日間培養する条件が挙げられる。菌体を良好に生育させる観点から、エアレーションを十分にすることが望ましく、例えば、回転振盪させることが望ましい。
より具体的には、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株を、500mL容のバッフル付きフラスコ中の2.0%(w/v)グルコース、0.8%(w/v)KHPO、0.05%(w/v)MgSO・7HO、0.5%(w/v)ポリペプトン、および0.5%(w/v)イーストエクストラクトを含む培養培地(50mL)にて、125rpmで回転振盪しながら30℃にて3日間増殖させる。
得られた培養物は、細胞と培地成分とを分離し得る手段、例えば、遠心分離、限外ろ過などに供し、培養上清を得る。得られた培養上清は、適切な緩衝液などに対して透析してもよい。さらに、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどの当該技術分野で通常用いられるタンパク質精製法により、本発明のメタロエンドペプチダーゼを精製することができる。
より具体的には、4℃にて、0.45μm孔径での限外ろ過により培養ろ液(上清)を得る。このろ液を70%(w/v)飽和硫酸アンモニウム分画に供し、沈殿物を回収して、0.2MのNaClを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解する。この溶液を、ゲルろ過カラムにかけ、活性の高い画分をプールし、20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に対して透析する。遠心分離後、得られた上清を、イオン交換カラムにかけて、活性の高い画分を溶出させることにより、目的のメタロエンドペプチダーゼを得ることができる。
このようにして得られるストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株由来のメタロエンドペプチダーゼの一次構造は、バシラス・サーモプロテオリティカス(Bacillus thermoproteolyticus)由来のサーモライシン(非特許文献13)、ストレプトマイセス・セプタタス(Streptomyces septatus)由来のメタロエンドペプチダーゼ(非特許文献10)、およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)由来のメタロエンドペプチダーゼ(非特許文献14)と、それぞれ40%、66%、および61%の配列同一性を示す。また推定アミノ酸配列は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のメタロエンドペプチダーゼ中で保存されている亜鉛結合のためのHEXXHコンセンサス配列およびCFCモチーフを含む。
本発明のメタロエンドペプチダーゼとしては、より具体的には、
(A)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列、
(B)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列、および
(C)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、FASTAアルゴリズムで、KTUP 2、expect value 10.0、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1の条件で算出された配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、メタロエンドペプチダーゼが挙げられる。
上記(A)の配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列は、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株のメタロエンドペプチダーゼのアミノ酸配列である。このストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株由来のメタロエンドペプチダーゼは、配列表の配列番号2の1位から9位までのアミノ酸配列からなるプレ配列、および10位から220位までのアミノ酸配列からなるプロ配列を有すると推定される。
本発明においては、上記メタロエンドペプチダーゼ活性の測定法の条件下に、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列の3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、該配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対する優先性を有するものであれば、本発明のメタロエンドペプチダーゼには、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列のバリアントの配列を有するポリペプチドも含まれる。配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列のアミノ酸配列のバリアントとしては、上記(B)または(C)のアミノ酸配列が挙げられる。また、後述の核酸によりコードされるポリペプチドであって、上記メタロエンドペプチダーゼ活性の測定法の条件下に同様の活性を示すものであれば、本発明のメタロエンドペプチダーゼに含まれる。
上記(B)および(C)のアミノ酸配列のバリアントの天然の供給源となる生物は、特に限定されるものではなく、ストレプトマイセス・オーレオファシエンスに分類される他の株などが挙げられる。
上記(B)のアミノ酸配列について、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加(以下、「変異」ともいう)の数は、上記メタロエンドペプチダーゼ活性の測定法の条件下に同様の活性を示す範囲であればよく、少なくとも1個、好ましくは、1個〜複数個、より好ましくは、1個〜数個である。上記変異を有するアミノ酸配列は、天然に存在するアミノ酸配列、すなわち、自然発生による変異を有するアミノ酸配列であってもよく、人為的に、所望の部位またはアミノ酸残基に変異を導入したアミノ酸配列であってもよい。人為的に、所望の部位またはアミノ酸残基に変異を導入する場合、天然に存在する配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列のバリアントに準じて人為的に変異を導入してもよい。人為的な変異の導入は、例えば、慣用のPCRを用いた部位特異的変異導入方法などにより行われ得る。
上記(B)のアミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が、類似した物理学的性質を有する他のアミノ酸残基に置換(保存的置換)されたアミノ酸配列が挙げられる。保存的置換は、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴などに類似した機能を発揮するアミノ酸残基との置換、本来のポリペプチドの生理活性を維持する程度にのみ該ポリペプチドの立体構造や折り畳み構造を変化させ得ないアミノ酸残基との置換などが挙げられる。より具体的には、上記(B)のアミノ酸配列としては、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が、他のアミノ酸と保存的置換されたアミノ酸配列を有し、該保存的置換が、以下のアミノ酸群(1)〜(6):
(1)グリシンおよびアラニン、
(2)バリン、イソロイシンおよびロイシン、
(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンおよびグルタミン、
(4)セリンおよびスレオニン、
(5)リジンおよびアルギニン、および
(6)フェニルアラニンおよびチロシン
からなる群より選択されるアミノ酸群に属するアミノ酸残基内で行われたものであるアミノ酸配列が挙げられる。
上記(C)において、配列同一性は、参照配列(例えば、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列)に対して、クエリー配列(評価対象の配列)を、適切にアラインメントし、算出された値である。具体的には、本明細書においては、配列同一性は、商品名:GENETYX−MAC(ソフトウェア開発株式会社製)によるマルチプルアラインメントにおいて使用可能なアルゴリズムをデフォルト値、より具体的には、PearsonおよびLipmanによるFASTAアルゴリズムで、KTUP 1〜2(アミノ酸配列ベース)、expect value 10.0、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1の条件で用いて、算出された値である。
本発明においては、配列同一性は、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上である。
本発明のメタロエンドペプチダーゼはまた、以下に詳述する本発明の遺伝子を用いて、遺伝子工学的に製造することができる。例えば、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株とは異なる異種細胞において、本発明のメタロエンドペプチダーゼを発現させることができる。
本発明のメタロエンドペプチダーゼをコードする遺伝子は、
(a)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(b)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(c)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、FASTAアルゴリズムで、KTUP 2、expect value 10.0、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1の条件で算出された配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列をコードする塩基配列、および
(d)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列のアンチセンス鎖と、ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする塩基配列、
からなる群より選択される塩基配列を有する。
このうち(a)〜(c)の塩基配列は、それぞれ、上記(A)〜(C)のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、そして(d)の塩基配列は、上記(A)〜(C)のアミノ酸配列のいずれかをコードする塩基配列であり得る。この遺伝子によってコードされるメタロエンドペプチダーゼは、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有する。
上記(d)の「ストリンジェントな条件」とは、6×SSC(1×SSCの組成:0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5%SDSと5×デンハルトと100μg/mLの変性サケ精子DNAと50%(v/v)ホルムアミドとを含む溶液中、室温にて12時間インキュベートし、さらに0.5×SSCで50℃以上の温度で洗浄する条件をいう。さらに、よりストリンジェントな条件、例えば、45℃または60℃にて12時間インキュベートすること、0.2×SSCまたは0.1×SSCで洗浄すること、洗浄に際し60℃または65℃以上の温度条件で洗浄することなどの、より厳しい条件も含む。また、本発明においては、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列のアンチセンス鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列は、該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列に関して、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列との配列同一性が、少なくとも75%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上であり、該塩基配列に関して、配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列との配列同一性が、少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である塩基配列との特異的なハイブリダイゼーションが達成され得る条件であることが望ましい。
なお、本明細書においては、塩基配列の配列同一性は、FASTAアルゴリズムで、KTUP 6、expect value 2.0、Cost to open gap 14、Cost to extend gap 2の条件で算出された値である。
また、本発明の遺伝子に基づき、本発明のメタロエンドペプチダーゼと同等の生理活性を示すアイソザイムをスクリーニングするための、プローブおよびプライマー対も提供できる。
さらに、本発明の遺伝子を含むメタロエンドペプチダーゼの発現用担体を用いて、本発明の遺伝子によりコードされる組換えメタロエンドペプチダーゼを製造することもできる。本明細書において、「発現用担体」とは、慣用の生物ベクターなどを基本骨格として含有し、かつ適切な位置に本発明の遺伝子が作動可能に連結された核酸構築物;金粒子、リポソーム、デキストラン、リン酸カルシウムなどの担体に、細胞内での発現に適したエレメントなどを有する本発明の遺伝子を担持させた構築物などを意味する。
本発明のメタロエンドペプチダーゼの発現用担体を用いて、本発明のメタロエンドペプチダーゼをストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株以外の細胞に導入することができ、それにより、異種細胞において本発明のメタロエンドペプチダーゼを発現させることができる。したがって、本発明のメタロエンドペプチダーゼの工業的な生産のための手段が提供される。
上記生物ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3、pCMVSPORT、pETkmS2(Mishima, N.ら、Biotechnol. Prog.、第13巻、864-868頁、1997年)、pOMal(New England Biolabs)などの大腸菌用プラスミドベクター;λZAPII、λgt11などの大腸菌用ファージベクター;pYES2、pYEUra3、pICZα(インビトロジェン株式会社)などの酵母用ベクター;pIJ486(Mol. Gen. Genet.、203巻、468-478頁、1986年)、pKC1064(Gene、103巻、97-99頁、1991年)、pUWL−KS(Gene、165巻、149-150頁、1995年)、pIJ702(Katz, E.ら、J. Gen. Microbiol.、129巻、2703-2714頁、1983年)、およびpIJ8600(Sun, J.ら、Microbiology、145巻、2221-2227頁、1999年)などの放線菌用ベクター;pAcSGHisNT−Aなどの昆虫細胞用ベクター;pKCR、pEFBOS、cDM8、pCEV4などの動物細胞用ベクターなどが挙げられる。このようなベクターには、適切なプロモーター(例えば、lacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、trpプロモーター、CMVプロモーター、SV40初期プロモーターなど)、選択マーカー遺伝子、ターミネーターなどのエレメントを適宜有していてもよい。
また、上記ベクターは、本発明のメタロエンドペプチダーゼを、慣用のタグ(例えば、Hisタグなど)や融合パートナー(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼなど)と融合した状態で発現させ得るベクターであってもよい。
このようなベクターの調製に用いられる菌としては、例えば、当該技術分野で通常用いられる宿主菌が挙げられ、具体的には、例えば、放線菌、大腸菌などが挙げられる。より具体的には、放線菌としては、ストレプトマイセス・リビダンス1326、ストレプトマイセス・リビダンスTK−23など、そして大腸菌としては、BL21(DE3)、JM109などが挙げられる。これらの宿主菌のうち、精製の容易化、大量調製、安全性などの観点から、大腸菌BL21(DE3)、JM109が望ましい。
本発明のメタロエンドペプチダーゼの発現用担体は、適切な宿主細胞へ導入されて、宿主細胞を形質転換して、形質転換細胞を作製する。形質転換法として、例えば、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクル銃によるボンバードメント法など、当業者に周知の方法が採用される。
本発明においては、宿主細胞として、好適には微生物(宿主菌)が用いられる。宿主菌としては、放線菌、大腸菌、バシラス属菌、シュードモナス属菌、サーマス属菌、アグロバクテリウム属菌、酵母(例えば、メタノール資化性酵母Pichiaなど)などが挙げられる。中でも、本発明においては、放線菌が好適に用いられる。
本発明において、放線菌とは、放線菌目(order Actinomycetales)に属する菌をいう。放線菌は、グラム陽性細菌に所属する一分類群であり、主に土壌などに生息する。原核生物であるが、多くの放線菌は分岐を伴う糸状の生育を示し、多様な形態を呈する。また、一般的に胞子を形成し、中には胞子嚢や運動性胞子を形成する種も存在する。また、放線菌からは種々の抗生物質および他の生物学的に重要な化合物が発見されている。放線菌目には、フランキア科(Frankiaceae)、ミクロモノスポラ科(Micromonosporaceae)、プロピオニバクトリウム科(Propionibacteriaceae)、シウドノカルジア科(Psuodonocardiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomyceae)、ストレプトスポランギウム科(Streptosporanguaceae)、テルモモノスポラ科(Thermomonosporaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、マイコバクテリウム科(Mycobacteriuaceae)、およびノカジア科(Nocaudiaceae)が含まれる。本発明において放線菌とは、好ましくは、ストレプトマイセス科、より好ましくはストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する菌である。ストレプトマイセス属に属する菌としては、例えば、ストレプトマイセス・セプタタス(S.septatus)、ストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)、ストレプトマイセス・グリセウス(S.griseus)、ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(S.lavendulae)、ストレプトマイセス・バージニア(S.virginia)、およびストレプトマイセス・コエリカラー(S.coelicolor)が挙げられる。本発明においては、宿主菌として、特にストレプトマイセス・リビダンスが好適に用いられる。このようなストレプトマイセス属に属する放線菌やその他の放線菌は、種々のカタログに記載されており、当業者であれば容易に入手可能である。
宿主細胞への本発明の発現用担体の導入により得られた細胞が、目的の形質転換細胞であることは、細胞または該細胞の培養上清について、上記メタロエンドペプチダーゼ活性の測定法により、メタロエンドペプチダーゼ活性が検出されることを指標として、確認され得る。
本発明の形質転換細胞を培養して増殖させることにより、本発明のメタロエンドペプチダーゼを遺伝子工学的に容易に精製できる状態で発現させることができ、それにより、該メタロエンドペプチダーゼを工業的に製造することができる。
本発明の組換えメタロエンドペプチダーゼの製造においては、培地組成、培地のpH、培養温度、培養時間の他、インデューサーの使用量、使用時間などについて、メタロエンドペプチダーゼの発現の最適な条件を決定することによって、効率よく組換えメタロエンドペプチダーゼを生産させることができる。
本発明の形質転換細胞の培養に通常用いられる培地としては、天然培地および合成培地のいずれを用いてもよい。液体培地または固体培地を使用することができる。例えば、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であればよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸などを含んでいてもよい。その他に、無機塩として、微量のカリウム、ナトリウム、鉄などのリン酸塩、塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などを含んでいてもよい。また、必要に応じて植物油、界面活性剤、シリコンなどの消泡剤を添加してもよい。
培養条件は、培地の種類、培養方法などにより適宜選択すればよく、宿主細胞が増殖し、目的のタンパク質を産生できる条件であれば特に制限はない。通常、液体培地中で振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下で、10℃〜40℃、好ましくは28℃で12〜120時間行われる。pHは、4から10、好ましくは6から8に調節される。pHの調整は、無機酸または有機酸、アルカリ溶液などを用いて行う。
形質転換細胞が生産する組換えメタロエンドペプチダーゼは、それが細胞内に生産されるときは細胞内の他のタンパク質、他のポリペプチドなどが共存するが、これらは発現されるメタロエンドペプチダーゼの量に比べて微量にすぎないため、その精製は極めて容易であるという優れた利点がある。また、ベクターとして菌体外分泌型のベクターを用いた場合、メタロエンドペプチダーゼが菌体外に分泌される。
形質転換細胞の培養物からメタロエンドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドを精製するには通常の方法が用いられる。形質転換細胞が大腸菌のように細胞内にメタロエンドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドが蓄積する場合には、培養終了後、遠心分離によって形質転換細胞を集め、得られた細胞を超音波処理などによって破砕した後、遠心分離などによって無細胞抽出液を得る。これを出発材料とし、塩析法や、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどの一般的なタンパク質精製法により精製することができる。用いる形質転換細胞によっては、発現産物が細胞外に分泌される場合がある。このような場合、培養上清から同様に精製を行えばよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。特に明記しない限り、各種操作は、モレキュラークローニング ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)第2版(ザンブルーク(Sambrook, J)ら、1989年)に従って行った。なお、実施例において、%は、特に明記しない限り、w/v%を表す。
以下の実施例における一般的な酵素活性の測定は、FITC−ゼラチン加水分解アッセイにより行った。
FITC−ゼラチン(Molecular Probes)は、フルオレセインで大量に標識されており、その分子内ではほぼ完全に消光しているが、酵素加水分解により分子内自己消光が緩和され、明るい蛍光反応産物を生成する。代表的には、以下のように測定した。このFITC−ゼラチンを蒸留水に溶解し、基質溶液とした(1mg/mL)。10μLの基質溶液を、蛍光分析用のマイクロタイタープレートのウェルあたり25mMのCaClを含む100mMのTris−マレイン酸緩衝液(pH7.0)180μLに加えた。10mLの酵素溶液を各ウェルに加えて反応を開始した。反応を、ARVO 1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)を用いて37℃にてλex535nmおよびλem485nmでの蛍光強度の上昇によってモニターした。酵素活性を、フルオレセインイソチオシアネート(和光純薬工業株式会社)溶液を用いてプロットした標準曲線から推定した。
(実施例1:ストレプトマイセス・オーレオファシエンスTH−3株の培養物からのメタロエンドペプチダーゼの精製および生化学的特徴)
岡山県の吉備高原の土壌より分離された放線菌ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3株を、500mL容のバッフル付きフラスコ中の2.0%グルコース、0.8%KHPO、0.05%MgSO・7HO、0.5%ポリペプトン、および0.5%イーストエクストラクトを含む培養培地(50mL)にて、125rpmで回転振盪しながら30℃にて3日間増殖させた。
次いで、4℃にて、0.45μm孔径での限外ろ過により、150mLの培養ろ液を得た。このろ液を70%飽和硫酸アンモニウムに加え、15000×gにて2時間遠心分離して沈殿物を回収した。得られた沈殿物を、0.2MのNaClを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解して、試料を調製した。この試料を、同じ緩衝液で平衡化しておいたHiLoad 16/60 Superdex200カラムにかけ、活性の高い画分をプールし、20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に対して透析した。遠心分離後、上清を、透析緩衝液で予め平衡化しておいたMono Q HR5/5にかけた。20ベッド容量の緩衝液中の0〜0.25MのNaClでの直線グラジエントにより酵素を溶出した。精製過程を表1に示す。精製工程において、酵素活性は、25mMのCaClを含む80mMのTris−マレイン酸(pH7.0)中の50μg/mLのFITC−ゼラチンを用いて37℃にて測定した。酵素活性の1ユニットは、上記条件下で1分当たり1nmolのFITCを放出するに必要な酵素量として算出した。
Figure 2009171871
150mLの培養ろ液から、メタロエンドペプチダーゼを均一にまで精製し(図1)、8.0%の収率で13.1倍に精製した。このストレプトマイセス・オーレオファシエンスTH−3株由来のメタロエンドペプチダーゼをキビライシン(kibilysin)と命名した。したがって、以下、ストレプトマイセス・オーレオファシエンスTH−3株由来のメタロエンドペプチダーゼをキビライシンと記載する場合がある。
得られた酵素の一部を、ZipTip μC18(Millipore)を用いて固相抽出によって精製し、そしてAutoflex II TOF/TOF(BRUKER DALTONICS)でのマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間マススペクトル法(MALDI−TOF−MS)分析を行った。その結果、分子量が約35kDの単量体であることがわかった。また、SDS−PAGEおよびゲルろ過クロマトグラフィーによっても、分子量が約35kDaであることを確認した。
至適pHおよび温度、熱およびpH安定性、アクチベーターおよびインビビターなどの基本的酵素学的特性について検討した。結果を表2に示す。
Figure 2009171871
酵素活性は、25mMCaClの存在によって1.3倍に増強されたが、その安定性は増強されなかった(データは示さず)。25mMのCaClの存在下で10mMのCoClによっても1.7倍の増強効果があった(データは示さず)。一方、酵素活性は、EDTA、1,10−フェナンスロリン、およびジチオトレイトールによって阻害された。さらに、10mMの還元型および酸化型グルタチオンの存在下でも、酵素活性は完全に阻害された。
(実施例2:基質特異性の検討)
蛍光エネルギー転移(FRETS)コンビナトリアルライブラリーにより、基質特異性の解析を行った。FRETS−25Xaaライブラリー(株式会社ペプチド研究所:配列番号3)は、図2に示される構造を有する基質のライブラリーである。これは、アミノ末端のD−2,3−ジアミノプロピオン酸(D−Apr)残基の側鎖に結合した高蛍光の2−(N−メチルアミノ)ベンゾイル(Nma)基を含み、このNmaはLysのε−アミノ基に連結した2,4−ジニトロフェニル(Dnp)基によって効率的に消光されているという性質を有する。FRETS−25Xaaライブラリーを基質として、上記実施例1で得た精製キビライシンについて、100mMのTris−マレイン酸緩衝液(pH7.0)を用いて37℃にて酵素反応を行った。
一次スクリーニングに、50ngの精製キビライシンを用いた。FRETSを用いる手順は、非特許文献10に従って行った。反応を、ARVO 1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)を用いて37℃にてλex355nmおよびλem460nmでの蛍光強度の上昇によってモニターした。なお、配列番号3(FRETS−25Xaaライブラリー)の4位のアミノ酸がGlyであるFRETS−25Glyの2種の分解産物を用いて検量線を作成し、該検量線に基づき、基質選択性を評価した。結果を図3に示す。この結果から、キビライシンが、図3のグラフのX軸に記載の左から順にP位でLeu、Tyr、Phe、およびThr残基を優先することがわかる。
次いで、二次スクリーニングについては、ライブラリー中から最良の基質としてFRETS−25Leu(配列番号4)を選択した。200ngの精製キビライシンを用いて37℃にて7分間または14分間酵素反応を行って、P位およびP位についての酵素の基質優先性を決定した。反応液へのEDTAの添加により反応を停止し、基質の切断割合を決定した。得られた試料は、約5〜17%が切断されていた液体クロマトグラフィー(LC)−マススペクトロメトリー(MS)により、酵素によって切断されたFRETS−25Leuに由来する配列を同定した。結果を図4に示す。
図4に示すように、精製キビライシンは、Tyr、Pro、およびLeuにP優先性を有し、Arg、Ala、Phe、およびTyrにP優先性を有し、そしてLeuおよびAlaにP’優先性を有した。この結果は、精製キビライシンがポストプロリン加水分解活性を明らかに有することを示す。なお、精製キビライシンは、Gly−Zaa−Yaa−Pro−Ala−Phe配列を有するFRETS−25Pro(配列番号5)に対する活性が低かったので(データは示さず)、そのポストプロリン加水分解活性は、P、PおよびP’位の残基によって影響を受けるようである。
(実施例3:速度論的検討)
上記実施例2のFRETS−25Xaaライブラリーを用いて得られた結果に基づいて、高蛍光の(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル(MOCAc)基を含むFRETSであるMoCAc−Lys−Pro−Leu−Gly−Leu−Apr(Dnp)−Ala−Arg−NH(MOCAc−KPLGL−Dnp(非特許文献15)、株式会社ペプチド研究所:配列番号6)を基質として設計した。
精製キビライシンのポストプロリン加水分解活性を確認するために、HPLC分析を行った。HPLCは、Waters 474スキャンニング蛍光検出器を備えたHPLCミレニアムシステム(Waters)およびYMC Hydrosphere C18 150×4.6mmカラム(YMC)を用いて行った。溶離液Aは、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)であり、そして溶離液Bは、水/アセトニトリル/TFA=30/70/0.085(v/v/v)であった。0.8mL/分の流速で20分の時点で20〜100%の溶離液Bのグラジエントを用いた。検出波長は、325nm(励起)および400nm(発光)であった。25μMのMOCAc−KPLGL−Dnpを、25mMのCaClを含む100mMのTris−マレイン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した。精製酵素(100ng)を100μLの基質溶液に加え、次いで反応液を37℃にて5分間インキュベートした。酵素反応を加熱処理(90℃にて5分間)で停止した後、等量の水/アセトニトリル/TFA=70/30/0.1(v/v/v)を試料に加え、そして10μLの反応液をHPLC分析に供した。Waters社に依頼して、LC−MSにより、精製キビライシンによって切断されたMOCAc−KPLGL−Dnpに由来するフラグメントの分子量を同定した。結果を図5に示す。
精製キビライシンでの処理により、保持時間6分に新しいピークを検出した。このピークの蛍光強度は、保持時間17分に検出される未処理の基質(MOCAc−KPLGL−Dnp)よりも10倍増強した。LC−MSおよびMALDI−TOF−MSを用いて、切断された基質が、MOCAc−KPおよびLGL−Dnpの両フラグメントを含むことを確認した。この結果によれば、精製キビライシンは、確実にポストプロリン加水分解活性を有することがわかる。
次いで、基質のストック溶液を、25mMのCaClを含む100mMのTris−マレイン酸緩衝液(pH7.0)で希釈した。この希釈した基質(3〜50μM、490μL)を37℃にて5分間プレインキュベートした。10μLの精製メタロエンドペプチダーゼ(50ng/μL)を基質溶液に加え、次いで37℃にて1分間反応させた。アッセイを、サーマルセルホルダーを備えたHitachi蛍光分光光度計F-4500を用いて行った(励起波長328nmおよび発光波長393nm)。反応速度を、MOCAc−Pro−Leu−Gly(株式会社ペプチド研究所)溶液を用いてプロットした標準曲線から推定した。
その結果、基質に対するS.aureofaciens TH−3由来の精製メタロエンドペプチダーゼ(キビライシン)のK、kcat、およびkcat/Kは、それぞれ28.1±2.5μM、12.0±0.8(1/秒)および0.43±0.01(1/秒・1/μM)であった。
(実施例4:メタロエンドペプチダーゼ遺伝子の取得)
精製キビライシンを12.5%SDS−PAGEに供した。次いで、得られたゲル中のタンパク質を、トランスブロットSDセル(BioRad社製)を用い、製造者の説明書に準じて、シーケブロットPVDF(BioRad社製)にエレクトロブロッティングした。ブロットされたタンパク質を、プロテインシークエンサーに供して、N末端アミノ酸配列(AAGTGNVFV:配列番号7)を同定した。また、精製キビライシンを、トリプシンで処理し、トリプシン処理ペプチド断片を得た。得られたトリプシン処理ペプチド断片を、LC−MSにより解析し、内部アミノ酸配列(ESAAVDAQFG:配列番号8およびAATLSAASDLYG:配列番号9)を同定した。
次に、ゲノムDNAを、Hopwoodらの方法(D.A. Hopwoodら、A Laboratory Manual, The John Ines Foundation,Norwich,1985年,70-84頁)を用いてストレプトマイセス・オーレオファシエンスTH−3株から調製した。キビライシン遺伝子フラグメントを、キビライシンのN末端配列(AAGTGNVFV:配列番号7)および内部配列(AATLSAASDLYG:配列番号9)から設計したプライマー(フォワード:5’−AC(CG)GG(CG)AACGG(CG)GT(CG)TTCGT−3’(配列番号10)およびリバース:5’−CCGTA(CG)A(GA)GTC(CG)(CG)(TA)(CG)GC(CG)GC−3’(配列番号11))を用いて、ゲノムDNAからPCRによって増幅した。PCRは、98℃にて1分のインキュベーションの後、98℃にて30秒、50℃にて30秒、72℃にて1分を30サイクル行い、次いで72℃にて5分のインキュベーションを行った。PCR産物を、pGEM−Tイージーベクター(Promega)中にクローニングし、そして配列決定した。ジゴキシゲニン(DIG)標識したプローブを、キビライシン遺伝子配列の一部およびPCR DIGプローブ合成キット(Roche Molecular Biochemicals)を用いて合成した。このプローブを、BalIで切断したゲノムDNAの2.5kbフラグメントにハイブリダイズさせた。次に、これらのフラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いて回収し、そして自己ライゲートさせた。ライゲーション産物を、キビライシン遺伝子の部分DNAフラグメントから設計したプライマーセットを用いて増幅した。PCR産物をクローニングして配列決定した。結果を図6に示す。
図6に示すように、キビライシン遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号1、DDBJデータベースアクセッション番号:AB281185)を示す。N末端および内部アミノ酸配列の解析から、1861〜1863位にインフレームの停止コドンTAGがある。推定アミノ酸配列からのキビライシンの一次構造は、S.septatus TH−2(SSMP)(非特許文献10)およびS.griseus(SGMP)(非特許文献16)由来のメタロエンドペプチダーゼの構造と類似する。キビライシン遺伝子とこれらの2つの放線菌メタロエンドペプチダーゼの遺伝子とを比較すると、キビライシンは、N−プレ配列(11アミノ酸残基)およびN−プロ配列(209アミノ酸残基)を有するようである。推定リボソーム結合部位は、N−プレ配列の上流に見られた。推定リボソーム結合部位からN−プレ配列までの領域に、ATG開始コドンはなかった。ヌクレオチド220〜222位に見られるGTGコドンは、放線菌の開始コドンと同様に作用すると推定された。オープンリーディングフレームは、1644ヌクレオチド長であり、推定分子量56945の547アミノ酸の酵素をコードすると推定された。成熟酵素の計算分子量は34389であり、これはSDS−PAGEおよびMALDI−TOF−MSによって決定した実測分子量(約35kD)と一致する(データは示さず)。
また、成熟メタロエンドペプチダーゼの一次構造のアラインメントを図7に示す。図7においては、SSMP、SGMP、およびサーモライシン(Bacillus thermoproteolyticus由来:非特許文献9)と並べた。アステリスクは、4つの配列中の同一残基を示す。亜鉛結合部位についてのコンセンサス配列(HEXXH)に下線を付し、そしてCFCモチーフを四角で囲む。その推定アミノ酸配列は、亜鉛結合に関与するHEXXHコンセンサス配列を含み、したがって、メタロエンドペプチダーゼをコードすることを確認した。
(参考例1:発現ベクターpTONA5の作製)
大腸菌と放線菌との間の遺伝子間結合によって、ストレプトマイセスのメタロエンドペプチダーゼのプロモーターを含む発現ベクターpTONA5aを構築した。
まず、pBluescript II KS (-)(TOYOBO)を鋳型に大腸菌JM109のori(0.6kb)の部分をプライマー1および2(配列番号12および13)を用いてPCRで増幅した。PCRの条件は、94℃で2分の後、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分を30サイクル繰り返し、その後4℃に冷却した。PCRには、KOD plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。次いで、pTYM18(オナカ(Onaka,H.)ら、J. Antibiotics、56巻、950-956頁、2003年)を鋳型に、aphII(大腸菌−放線菌カナマイシン耐性遺伝子:1.3kb)を、プライマー3および4(配列番号14および15)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。
得られた2つの断片をそれぞれ制限酵素SspIおよびPstIで処理し、2つの断片を互いにライゲーションした後、大腸菌に導入した。大腸菌を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(1%NaCl、1%ポリペプトン、および0.5%酵母エキス)中37℃にてカナマイシンを選択マーカーにして、ライゲーションした断片を含むプラスミドpBSaphIIを得た。pIJ702(モルナー(Molnar)ら、J. Ferment. Bioeng.、72巻、368-372頁、1991年)および得られたpBSaphIIをそれぞれ制限酵素PstIで処理し、2つの断片をライゲーションした後、大腸菌に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpIJE702を得た。
次に、pTYM18を鋳型にoriT(0.8kb)をプライマー5および6(配列番号16および17)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。得られた断片を制限酵素HincIIおよびSmaIで処理し、そしてpIJE702を制限酵素SspIで処理した。得られた2つの断片をライゲーションした後、大腸菌に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpIJEC702を得た。次いで、pIJEC702のNdeI部位を、QuikChange II Kit(Stratagene)ならびにプライマー7および8(配列番号18および19)を用いてサイレント変異によって欠失させ、pIJEC’702を得た。
次に、S. septatus TH-2ゲノムDNAを、S. septatus TH-2[Streptomyces septatus TH-2と命名・表示され、受託番号:FERM P−17329(寄託日:1999年3月24日)として、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センター(現:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている]から、サイトウ・ミウラ法(サイトウ(Saito,H.)ら、Biochem.Biophys.Acta.,72巻、619-629頁、1963年)により調製した。SSMPプロモーター(0.4kb)を、S. septatus TH-2ゲノムDNAを鋳型としてプライマー9および10(配列番号20および21)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。また、S. aureofaciens TH-3ゲノムDNAをS. aureofaciens TH-3(FERM P−21343)から上記と同様の方法により調製した。TH−3 collターミネーター(0.5kb)を、S. aureofaciens TH-3ゲノムDNAを鋳型としてプライマー11および12(それぞれ配列番号22および23)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。SSMPプロモーター断片を、AseIおよびEcoRIで処理し、ターミネーター断片をEcoRIおよびBglIIで処理し、そしてpIJEC’702を制限酵素AseIおよびBglIIで処理した。得られた3つの断片をライゲーションした後、大腸菌JM109に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpTONA5を得た。プラスミドpTONA5の構成(制限酵素地図)を図8に示す。このプラスミドpTONA5には、SSMPプロモーター配列(配列番号24)およびTH−3 collターミネーター(配列番号25)が含まれている。
(実施例5:組換えメタロエンドペプチダーゼ発現ベクターの構築)
本実施例において、S. lividans 1326株を、キビライシン発現用の宿主株として用いた。キビライシン遺伝子を、NdeI部位(CATATG:ATGが開始コドン)を含むセンスプライマー(CATATGAAGCGAAAGCTCGCAGCT:配列番号26)と停止コドンの下流にHindIII部位を含むアンチセンスプライマー(AAGCTTAGGCCCGAGCTAGTTGACGTTGAC:配列番号27)とのセットおよびKOD ver.2 DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社)を用いてPCRにより増幅した。得られたフラグメントを、pCR-Blunt II-TOPOクローニングベクター(Invitrogen)を用いてクローニングして配列決定した。キビライシンをコードするDNAフラグメントをNdeIおよびHindIIIで切断し、そしてpTONA5aのNdeI−HindIIIギャップに連結した(pTONA5−キビライシン)。
(実施例6:組換えメタロエンドペプチダーゼの発現および精製)
上記実施例5で得られた発現ベクターを、大腸菌S17−1に導入して形質転換した。形質転換体の単一コロニーを、カナマイシン50μg/mLを含むLB培地中で37℃にて7時間振盪培養した。細胞を回収し、ピペットを用いてLB培地で3回洗浄して、カナマイシンを除去した。細胞を500μLのLB培地に懸濁し、次いで放線菌S. lividans 1326株の胞子懸濁液と混合した。混合物をISP No.4寒天プレート(10cmΦ)上に塗布し、30℃にて一晩培養した。カナマイシン20μg/mLおよびナリジキシン酸ナトリウム5μg/mLを含むソフトアガー栄養培地の3mLアリコートを、プレート上に重層し、30℃にて3〜5日間インキュベートした。単一コロニーを、水道水中に2.0%大豆ミール、2.0%マンニトール、カナマイシン(20μg/mL)およびナリジキシン酸ナトリウム(5μg/mL)を含む培地を含む寒天プレート上に画線した。プレートを、30℃にて5〜7日間インキュベートした。得られたS. lividans 1326形質転換体を、500mL容バッフル付フラスコ中の0.8%KHPO、2.0%グルコース、0.05%MgSO・7HO、0.5%ポリペプトンおよび0.5%イーストエクストラクトを含む培養培地(PG培地)50mLに接種し、そして180rpmで回転振盪しながら30℃にて6日間増殖させた。
限外ろ過装置(Millipore、0.45μm孔径)を用いて培養ろ液を得た。ろ液を、20mMのTris−HCl(pH8.0)に対して透析した。この溶液を、同じ緩衝液で平衡化したVivapure-Qスピンカラム(Millipore)にかけた。結合したタンパク質を、50mMのNaClを含む緩衝液を用いて溶出させた。溶出液を10mMのTris−マレイン酸(pH7.0)に対して透析し、精製組換えキビライシンを含む試料を得た。
得られた精製組換えキビライシンについて、上記実施例3に記載と同様の操作をおこなって、ポストプロリン加水分解活性を確認した。その結果、精製組換えキビライシンでは、基質に対するK、kcat、およびkcat/Kは、それぞれ34.2±5.9μM、13.3±1.6(1/秒)および0.39±0.03(1/秒・1/μM)であった。したがって、組換え酵素の活性は、野生型とほぼ同様であった。
本発明によれば、ポストプロリン加水分解活性を有するメタロエンドペプチダーゼが提供される。本発明のメタロエンドペプチダーゼを用いれば、カゼイン、グルテン、コラーゲン、ゼラチンなどのプロリンリッチなタンパク質を、比較的短いペプチドに加水分解することができる。したがって、食品、医薬品などの分野において、これらのプロリンリッチなタンパク質のさらなる利用が可能となる。
ストレプトマイセス・オーレオファシエンス TH−3株由来の精製メタロエンドペプチダーゼSDS−PAGEによる電気泳動写真である。レーン1は分子量マーカーであり、そしてレーン2は、3μgの精製酵素である。 FRETS−25Xaaコンビナトリアルライブラリーの構造を示す。Xaaは、Cys以外の19の天然アミノ酸のそれぞれが組み込まれた固定位置を示す。5アミノ酸残基(P、Y、K、I、およびD)の混合物を、各固定されたXaaに対するZaa位の5アミノ酸残基(F、A、V、E、およびR)の混合物とともにYaa位に組み込んだ。 FRETS−25Xaaコンビナトリアルライブラリーを用いたP位の一次スクリーニングの結果を示すグラフである。 FRETS−25Leuを用いたP、P、およびP位の二次スクリーニングの結果を示すグラフである。相対蛍光強度を、LC−MSによるピーク面積から決定した。切断部位を、スラッシュで示す。 精製メタロエンドペプチダーゼによるMOCAc−KPLGL−Dnpの加水分解産物のHPLC/蛍光検出によるクロマトグラムである。約17分のピークは、125nmolのMOCAc−KPLGL−Dnpを示す。約6分のピークは、精製メタロエンドペプチダーゼとともに37℃にて5分間インキュベートした後の、125nmolのMOCAc−KPLGL−Dnpの断片を示す。 キビライシン遺伝子のヌクレオチド配列を示す図である。メタロエンドペプチダーゼ遺伝子の推定−35および−10配列に下線を付す。開始コドンの5ヌクレオチド上流のプリンリッチ配列であるGAAGGAは、リボソーム結合部位として作用し得る。亜鉛結合のためのコンセンサス配列(HEXXH)を四角で囲む。シグナルペプチドの可能性のある切断部位(白三角)を示す。二次切断(黒三角で示す部位)は、メタロエンドペプチダーゼの成熟化の間、分泌後に生じる。 成熟メタロエンドペプチダーゼの一次構造のアラインメントを示す図である。 プラスミドpTONA5の構成(制限酵素地図)を示す模式図である。

Claims (11)

  1. プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有する、メタロエンドペプチダーゼ。
  2. 以下の性質:
    (1)至適反応pH:pH6.5〜7.5;
    (2)至適反応温度:約40℃;
    (3)熱安定性:50%熱不活性化温度として、約50℃;
    (4)カルシウムイオンおよびコバルトイオンにより活性化される;および
    (5)EDTA、1,10−フェナンスロリン、ジチオトレイトールおよびグルタチオンによって阻害される;
    を有する、請求項1に記載のメタロエンドペプチダーゼ。
  3. ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3(FERM P−21343)により産生される、請求項1または2に記載のメタロエンドペプチダーゼ。
  4. (A)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列、
    (B)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列、および
    (C)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列、
    からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から3のいずれかの項に記載のメタロエンドペプチダーゼ。
  5. 配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列の3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性を有する、請求項1から4のいずれかの項に記載のメタロエンドペプチダーゼであって、該配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対する基質優先性を有する、メタロエンドペプチダーゼ。
  6. メタロエンドペプチダーゼをコードする遺伝子であって、該メタロエンドペプチダーゼが、プロリン残基を含むペプチド中の該プロリン残基のC末端側のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、そして該遺伝子が、
    (a)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
    (b)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
    (c)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列に対し、配列同一性が、少なくとも75%であるアミノ酸配列をコードする塩基配列、および
    (d)配列表の配列番号2の221位から547位までのアミノ酸配列をコードする塩基配列のアンチセンス鎖と、ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする塩基配列、
    からなる群より選択される塩基配列を有する、遺伝子。
  7. 前記メタロエンドペプチダーゼが、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列の3位のアミノ酸残基と4位のアミノ酸残基との間のペプチド結合に対する加水分解活性を有し、そして該配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、2位がArg、Ala、Phe、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、3位がTyr、Pro、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、そして4位がLeuおよびAlaからなる群より選択されるアミノ酸残基であるアミノ酸配列からなるペプチドに対する基質優先性を有する、請求項6に記載の遺伝子。
  8. 請求項6または7に記載の遺伝子を含む、発現用担体。
  9. 請求項6または7に記載の遺伝子が組み込まれている、形質転換細胞。
  10. 請求項9に記載の形質転換細胞により産生される、組換えメタロエンドペプチダーゼ。
  11. ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)TH−3(FERM P−21343)株。
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