JP5334664B2 - 光電変換デバイスの製造方法および光電変換デバイス - Google Patents

光電変換デバイスの製造方法および光電変換デバイス Download PDF

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Description

この発明は、シリコン系薄膜光電変換デバイスおよびその製造方法、製造装置に関するものである。
シリコン系薄膜光電変換デバイスとしては、互いに結晶構造が異なる複数の層を積層したいわゆるハイブリッド型のものが製造されている。これは、各層の光の吸収波長が異なるため、入射光のエネルギーを効率よく電気エネルギーに変換して光電変換効率を高めることができるからである。例えば、特許文献1には、容量結合型のRFプラズマCVD法またはマイクロ波プラズマCVD法により、ポリシリコン、微結晶シリコンおよびアモルファスシリコン層をガラス基板上に形成し積層した光起電力素子が記載されている。
特許第3768672号公報(段落0069、0072)
一方、近年ではより薄型、軽量の光電変換デバイスが求められるようになってきており、これに伴って、例えば樹脂製のシートを基材とし、該基材上に光電変換層を形成するための技術が検討されている。しかしながら、上記した従来技術の製造方法では基材の温度が最高で500℃程度に達しており、一般的な樹脂材料には適用することが難しい。特に、ポリシリコンを形成するときに高い基材温度が必要である。
また、特許文献1に記載された光起電力素子は、微結晶シリコンによるpin接合起電力素子と、アモルファスシリコンによるpin接合起電力素子とを積層した構造を有しており、製造工程が複雑でシリコンの使用量が多いという問題がある。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基材上にポリシリコン層を含む光電変換層を設けてなる光電変換デバイスの製造方法および製造装置において、低い基材温度でも膜質の良好な光電変換層を形成することのできる技術を提供することを第1の目的とする。
また、この発明は、基材上に結晶構造の異なる複数層からなる光電変換層を設けてなり、しかもその構造および製造工程が比較的簡単な光電変換デバイスを提供することを第2の目的とする。
この発明にかかる光電変換デバイスの製造方法は、上記第1の目的を達成するため、第1電極を形成された基材上に、第1の導電型を有するポリシリコンからなる第1層を形成する第1層形成工程と、前記第1層上に、i型シリコンからなる第2層を形成する第2層形成工程と、前記第2層上に、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するアモルファスシリコンからなる第3層を形成する第3層形成工程と、前記第3層上に第2電極を形成する第2電極形成工程とを備え、前記第1ないし第3層形成工程では、前記基材に近接配置した磁場形成手段により形成させた高周波磁場によってシリコン化合物を含む原料ガスをプラズマ化することでシリコンを堆積させる、誘導結合プラズマCVD法によってそれぞれ前記第1ないし第3層を形成し、前記第2層形成工程では、基材温度と前記原料ガスの供給量との組み合わせを段階的に変化させることで、いずれもi型のポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を順番に形成することを特徴としている。
誘導結合プラズマCVD法によれば、低い放電圧力で高いプラズマ密度を得ることができる。また、高周波磁場のエネルギーが誘導結合によって原料ガスおよびプラズマに与えられる。これらの点から、基材を比較的低い温度に保って光電変換層を成膜することができる可能性がある。しかしながら、従来の誘導結合プラズマ発生装置では均一な磁場を発生させることが難しく、特に広い面積で均質なポリシリコン層を形成することが必要な光電変換デバイスの製造には使用されるに至っていなかった。一方、本願出願人は先に、広い面積で均一な磁場を形成することのできる誘導結合プラズマ処理装置を提案した(特開2005−228738号公報参照)。
このような装置を用いて本願発明者はポリシリコンの成膜を試み、その結果、比較的低い基材温度でも膜質の良好なポリシリコン膜を形成することが可能であることが明らかになった。かかる知見に鑑み、この発明では、p型ポリシリコンからなる第1層、i型シリコンからなる第2層およびn型アモルファスシリコンからなる第3層をそれぞれ誘導結合プラズマCVD法によって形成する。このようにすれば、基材の温度をあまり高くしなくても、ポリシリコン層およびアモルファスシリコン層を含むpin接合型の光電変換素子を良好な膜質で形成することができる。このため、耐熱性に劣る樹脂製シートを基材として用いることが可能となり、これまでより薄く軽量で柔軟性に富んだ光電変換素子を製造することができる。
また、前記第2層形成工程では、基材温度と前記原料ガスの供給量との組み合わせを段階的に変化させることで、いずれもi型のポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を順番に形成する。誘導結合プラズマCVDでは高いプラズマ密度が得られるため、基材表面への薄膜材料の供給量を大きくして高い成膜速度を得ることができる。このとき、基材の温度を変えることによって、形成される膜の結晶構造を変えることができる。具体的には、温度が高いほどシリコンの結晶化が進むため、高温ではポリシリコンが、低温ではアモルファスシリコンが形成される。またその中間的な温度では微結晶シリコンが形成される。このように、誘導結合プラズマCVD法によれば、成膜中の基材温度を変えることにより、結晶構造が互いに異なる複数層を簡単に形成することができる。これに合わせて原料ガスの供給量を変化させるようにすれば、結晶成長が温度と原料供給量に律速されることで結晶構造が決まるので、各層の構造をより制御しやすくなる。こうして形成された、いずれもi型であるが互いに結晶構造の異なる各層は、吸収する光の波長が互いに異なるので、複数の波長成分を含む光を効率よく吸収して光電変換効率の向上に寄与することができる。
この発明において、少なくとも前記第3層形成工程においては、前記第1層形成工程よりも基材温度を低くすることが望ましい。アモルファスシリコンはポリシリコンに比べて低い温度で成膜することができるので、アモルファスシリコンからなる第3層を形成する工程ではポリシリコンを形成する第1層形成工程よりも基材温度を低くすることで、高温による基材へのダメージを抑えることができる。また、先に形成された層の熱による変質を防止することができる。
特に、前記第1層形成工程における基材温度から前記第3層形成工程における基材温度まで、前記第2層形成工程における基材温度を段階的に低下させるようにすると、i型中間層のうちp型ポリシリコン層に近い領域はi型ポリシリコンに、またn型アモルファスシリコン層に近い領域はi型のアモルファスシリコンとなるので、結晶構造の不連続性に起因する光の反射を抑えて、光電変換効率をさらに向上させることのできる光電変換デバイスを製造することができる。
また、この発明においては、前記第1ないし第3層の基材温度を摂氏300度以下とすることが望ましい。前記したように、誘導結合プラズマCVD法によれば低い基材温度でもポリシリコンを成膜することができる。特に、基材温度を摂氏300度以下とすることで、耐熱性の点から通常は光電変換デバイスに使用されないような樹脂材料を基材として使用することができ、例えば従来よりも薄く、軽量で柔軟性に富んだ光電変換デバイスを製造することが可能になる。本願発明者の実験によれば、誘導結合プラズマCVD法を用いることによって、300℃以下でも膜質の良好なポリシリコン層を形成することができた。
また、前記第1ないし第3層形成工程における雰囲気を1Pa以下とすることが望ましい。誘導結合プラズマCVDにおいて、圧力を低くすることでイオンおよび電子の平均自由行程を長くすることができ、これにより形成される薄膜の膜質をより改善することができる。
また、前記第1ないし第3層形成工程を同一チャンバ内で連続的に行うようにしてもよい。こうすることで、薄膜への無用な汚染物質の混入を防止することができ、また基材の移動を必要としないので高いスループットで光電変換デバイスを製造することができる。導電型の違いは、例えば原料ガスに混入する不純物成分の違いによって実現することができる。また、連続的に各層を形成することにより、各層間の界面における不連続性が小さくなり、デバイスの特性を向上させることができる。
また、前記第1ないし第3層形成工程では、開口部を穿設されたマスクを介してシリコンを堆積させることで、前記第1ないし第3層を所定のパターンに形成するようにしてもよい。誘導結合プラズマCVDでは、磁場形成手段とプラズマとの誘導結合によってプラズマにエネルギーが与えられるので、プラズマと基材との間にマスクを配しても、プラズマの発生および均一性に影響を及ぼすことがない。そして、こうしてマスクを設置した状態でCVDを行わせることにより、所望のパターンを有する光電変換層を形成することができるので、成膜後の光電変換層を後加工によってパターン形成する必要がない。パターン形成のための後加工としてはレーザー加工が一般的に用いられるが、例えば耐熱性の低い樹脂基材はレーザー加工に耐えない。この発明では、成膜に高温を要しないことに加えて後加工を必要としないので、レーザー加工に耐えない樹脂素材であっても基材に用いることが可能となる。
また、この発明にかかる光電変換デバイスは、上記第2の目的を達成するため、基材と、第1電極と、第1の導電型を有するポリシリコンからなる第1層、i型シリコンからなる第2層、および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するアモルファスシリコンからなる第3層からなる発電層と、第2電極とを積層してなり、前記第2層は、前記第1層に接するポリシリコン層と、前記第3層に接するアモルファスシリコン層と、前記ポリシリコン層と前記アモルファスシリコン層との間の微結晶シリコン層とを有することを特徴としている。
このように構成された発明では、pin接合を有する光電変換デバイスのi型中間層が、ポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を積層した構造となっている。これらの各層は光の吸収波長が異なるので、入射光のエネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができ、高い光電変換効率を得ることができる。また、各層は成膜時の基材温度を順次変化させることによって形成可能であるので、構造およびその製造工程が簡単でありシリコンの使用量も少ない。また、i型中間層の結晶構造は、p型ポリシリコン層に接する層はポリシリコン、n型アモルファスシリコンに接する層はアモルファスシリコンとなっているので、p−i接合面、i−n接合面での結晶構造の変化がなく、界面の不連続性に起因するデバイス特性の低下がない。
この場合において、前記基材は、樹脂製シートであってもよい。こうすることで、ガラスを基材とする場合に比べて薄く軽量で、また柔軟性に富んだ光電変換デバイスを構成することが可能となる。特にこれを誘導結合プラズマCVD法により製造した場合、基材に高温によるダメージを与えることがないので、耐熱性に劣る樹脂素材であっても基材として利用することが可能となる。
この発明にかかる光電変換デバイスの製造方法および製造装置によれば、誘導結合プラズマCVD法により、ポリシリコン層を含む光電変換層を形成しているので、基材を高温にする必要がない。このため、耐熱性に劣る樹脂材料を基材として用いることが可能となり、従来より薄く軽量で柔軟性に富む光電変換デバイスを製造することが可能となる。またこの発明にかかる光電変換デバイスは、pin接合を有する光電変換デバイスのi型中間層が、ポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を積層した構造となっているので、種々の波長の光を効率よく吸収して電気エネルギーに変えることができ、その構造および製造工程が簡単でありながら、高い光電変換効率を得ることが可能である。
この発明にかかる太陽電池パネルの一形態を示す図である。 図1の太陽電池パネルの断面構造を示す図である。 図1の太陽電池パネルの製造工程を示すフローチャートである。 この発明にかかる光電変換デバイス製造装置の一態様である誘導結合プラズマCVD装置を示す図である。 誘導結合プラズマCVD装置による成膜の原理を示す図である。 図1の太陽電池パネルを形成するための成膜条件を示す図である。 光電変換層の成膜工程を示すタイミングチャートである。 成膜工程の進行状況を模式的に示す図である。 ポリイミド樹脂を基材とする太陽電池パネルの製造工程を示す図である。
図1はこの発明にかかる太陽電池パネルの一形態を示す図である。より詳しくは、図1は、本発明にかかる製造方法または製造装置により製造された光電変換デバイスとしてのシリコン薄膜太陽電池パネル1の外観を示す図である。この太陽電池パネル1は、透明の基材10の表面に帯状のユニットセル11が複数配置されるとともに、各ユニットセル11が例えばアルミニウムからなる金属電極12により互いに直列接続された構造を有している。各ユニットセル11は図1の下方から透明の基材10を通して入射される光を受けて起電力を発生し、各ユニットセル11の直列接続によって所定の出力電圧Voが得られるように構成されている。
図2は図1の太陽電池パネルの断面構造を示す図である。より詳しくは、図2(a)は図1のA−A線断面図である。また、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図であり、ユニットセル11のさらに詳細な断面構造を模式的に示す図である。各ユニットセル11は、図2(a)に示すように、基材10上に透明電極(第1電極)としてのTCO(Transparent Conductive Oxide)111、p型ポリシリコン層112、i型シリコンからなる中間層113、n型アモルファスシリコン層114および金属電極12(12a)をこの順番で積層した構造となっている。このうちp型ポリシリコン層112、中間層113およびn型アモルファスシリコン層114が光電変換層110を構成している。TCO111の一端部は、光電変換層110よりも外側にまで延設された延設部111aとなっており、この延設部111aと、隣接するユニットセル11のn型アモルファスシリコン層114とが金属電極(第2電極)12(12b)によって接続され、これにより各ユニットセル11が直列接続される。
図2(b)に示すように、i型シリコンからなる中間層113は3層構造となっており、p型ポリシリコン層112にもっとも近い(図において下方)層から順に、i型ポリシリコン層113a、i型微結晶シリコン層113b、i型アモルファスシリコン層113cを備えている。このように結晶構造の異なるシリコン薄膜は吸収する光の波長が互いに異なっているため、特にi型中間層をこれらを積層した構造とすることによって、例えば太陽光のように多くの波長成分を含む光を効果的に各層で吸収することができ、光エネルギーから電気エネルギーへの変換効率を高めることができる。また、p−i接合面およびi−n接合面においては、接合面の両側で結晶構造が同じであるので、例えば界面の不連続性が電子および正孔の移動を阻害することに起因する電気抵抗の増大を抑えて、光電変換デバイスとしての特性を向上させるという効果もある。
図3は図1の太陽電池パネルの製造工程を示すフローチャートである。この太陽電池パネル1の製造工程においては、まず透明基材10上にTCOを成膜して第1電極としての透明電極111を形成する(ステップS101)。基材10へのTCO膜の形成については、公知のスパッタリング法や蒸着法によって行うことができるが、基材10の表面全体に形成するのではなく、マスクを用いて予め図1に示す帯状パターンに形成しておく。
次に、光電変換層110を形成する。すなわち、p型ポリシリコン層112(ステップS102)、i型中間層113(ステップS103)、n型アモルファスシリコン層114(ステップS104)を順に形成する。これらの各層は、後述する誘導結合プラズマCVD装置によって形成される。
そして、こうして形成された光電変換層110の上に、第2電極としての金属電極12を形成する(ステップS105)。電極材料としては例えばアルミニウムを用いることができ、電極の形成には、TCOと同様に、マスクを使用したスパッタリング法や蒸着法を用いることができる。
なお、図2には記載していないが、こうして形成された太陽電池パネル1の両面または片面に、入射光に対する反射防止膜あるいはユニットセルの保護膜として例えば窒化シリコン(SiN)膜をさらに形成してもよい(ステップS106)。窒化シリコン膜も、誘導結合プラズマCVDにより形成することが可能である(例えば、特開2006−164543号公報参照)。また、上記構造では金属電極12の面積を小さくして太陽電池パネル1全体に光透過性を持たせているが、光透過性が要求されない場合には、光電変換層110の上面全体を覆うように、金属電極を設けてもよい。このようにすると、基材10側から入射し光電変換層110を透過した光が金属電極で反射され光電変換層110に再入射するので、より光電変換効率を高めることができる。
これら各層を形成する成膜工程は、不純物の混入や膜の変質を防止するために、基材10を雰囲気管理された閉空間内に置いたまま順次実行されることが望ましい。この目的のため、上記した各工程をそれぞれ実行する処理装置については、各処理装置間で基材10を受け渡すための搬送ロボットを設けた搬送室を中心としたクラスターツールとして構成されることが望ましい。
図2のユニットセル11を構成する各層の膜厚の数値例を以下に示すが、これらの数値例に限定されるものではない。TCO電極111:100nm、p型ポリシリコン層112:10nm、i型ポリシリコン層113a:150nm、i型微結晶シリコン層113b:150nm、i型アモルファスシリコン層113c:150nm、n型アモルファスシリコン層114:10nm、金属電極12:100nm、反射防止膜/保護膜(SiN):50nm。
図4はこの発明にかかる光電変換デバイス製造装置の一態様である誘導結合プラズマCVD装置を示す図である。この誘導結合プラズマCVD装置2は、上記したクラスターツールの一部となるものであり、図示を省略する真空ポンプによって内部が所定の圧力に制御される減圧手段としての減圧チャンバ26を備えている。減圧チャンバ26の内部には、成膜対象である基材Sを上面に載置可能に構成された基材保持手段25が設けられている。基材保持手段25は、図示を省略する昇降機構により昇降自在となっている。また、その内部にはヒータ251が設けられて、基材Sを所定の温度に昇温させることができる。
基材保持手段25の周縁部には、マスク保持ピン252が立設されており、該マスク保持ピン252により、平板状のマスク24が基材Sの上面に対しほぼ平行かつ所定の間隔を隔てて対向するように、または基材S表面に密着して配置される。マスク24は、例えばステンレス板により基材Sより少し大きく形成されており、基材S上に形成すべき薄膜のパターンに対応する開口部241が設けられている。例えば図1の太陽電池パネル1を製造するプロセスにおいては、光電変換層110の形状に対応した長方形の開口部が複数個設けられる。
減圧チャンバ26の上面は高周波を透過させるための誘電体窓27となっており、その上方には、磁場形成手段として、高周波電力(代表的には13.56MHz)を発生する高周波発生部21と、整合器22と、磁場形成部材としてのコイル23とが設けられている。コイル23の形状としては、減圧チャンバ26内に強度の均一な磁場を形成することのできるものが望ましく、例えば、本願出願人が先に開示した特開2005−228738号公報に記載された構造のものを用いることができる。このような構成により、この装置2では、コイル23の近傍に、コイル面に平行な方向に強度が均一な高周波磁場を発生させることができる。高周波磁場は、誘電体窓27を通して、減圧チャンバ26内にセットされたマスク24および基材Sの上部空間SPにまで及ぶ。
減圧チャンバ26の側面上部には、形成すべき薄膜の材料物質を含む原料ガスを減圧チャンバ26内部空間、より具体的には減圧チャンバ26内にセットされたマスク24および基材Sの上部空間SPに原料ガスを導入するためのガス導入口261が穿設されている。ガス導入口261は、原料ガスを送出する原料供給手段としての原料ガス供給部29に接続されている。
図5は誘導結合プラズマCVD装置による成膜の原理を示す図である。コイル23に高周波発生部21からの高周波電力が与えられて上部空間SPに高周波磁場が形成された状態で、ガス導入口261から原料ガスが上部空間SPに導入されると、磁場のエネルギーにより原料ガスがプラズマ化し、薄膜の材料物質がマスク24を介して基材S上に堆積する。このとき、プラズマPが生成される上部空間SPと、基材Sとの間にマスク24を配置しているので、マスク24の開口部241に対応する位置にのみ材料物質が堆積する。こうして基材S上に所定パターンを有する薄膜を成膜することができる。
上記のように構成された誘導結合プラズマCVD装置2では、高周波発生部21から供給される高周波電力のエネルギーが、コイル23と原料ガス(またはそのプラズマ)との誘導結合によって原料ガス(またはそのプラズマ)に与えられる。したがって、コイル23の形状を適宜に設定し均一な磁場を形成することによって、基材S上に厚さが均一で均質な薄膜を形成することができる。また高いプラズマ密度を得ることができるので、基材温度を比較的低く保った状態で薄膜を形成することができる。
さらに、上記のようにコイル23とプラズマとの間で誘導結合によってエネルギーが伝達されるので、基材Sとプラズマとの間に金属製のマスク24を配置しても、マスク24がプラズマの状態に影響を及ぼすことがない。例えば平行平板電極間に高周波電界を形成してプラズマを発生させる場合には、その間に金属製マスクを配置することは、プラズマの発生およびその均一性に悪影響を及ぼす。しかしながら、誘導結合プラズマではこのような問題がない。
次に、上記構成の誘導結合プラズマCVD装置によって、図1の太陽電池パネル1における光電変換層110を形成する成膜工程について説明する。ここでは代表的に、基材10としていずれも透明なガラスを用いる場合とPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂を用いる場合とについて説明する。成膜工程に先立って、基材10に対し、クラスターツールの一部として別途設けた電極形成装置によってスパッタリング法または蒸着法によりTCO(透明電極)111が図1の帯状パターンに形成される。電極111を形成された基材10は、誘導結合プラズマCVD装置2に搬入されて基材保持手段25に載置され、さらにマスク24がマスク保持ピン252にセットされる(配置工程)。この状態から、光電変換層110の成膜工程が開始される。
図3に示すように、成膜工程は、p型ポリシリコン層112を形成する工程(ステップS102;第1層形成工程)、i型の中間層113を形成する工程(ステップS103;第2層形成工程)およびn型アモルファスシリコン層114を形成する工程(ステップS104;第3層形成工程)を備えている。
図6は図1の太陽電池パネルを形成するための成膜条件を示す図である。また、図7は光電変換層の成膜工程を示すタイミングチャートである。また、図8は成膜工程の進行状況を模式的に示す図である。図6(a)に示すように、p型、i型、n型の各導電型を有するシリコン薄膜層を形成するために、水素(H2)ガスおよびシラン(SiH4)ガスを主体として混合したガスを原料ガスとして用いる。そして、p型層を形成する際にはジボラン(B26)を、n型層を形成する際にはホスフィン(PH3)を、それぞれ水素ガスにより希釈した状態で原料ガスに添加する。各ガスの流量比は図6(a)に示すとおりである。また、高周波発生部21から出力する高周波電力(RFパワー)はいずれも500W、減圧チャンバ26内の圧力は1Pa以下、より具体的にはいずれも0.8ないし0.9Paとする。
このように、基材の温度を低く保つことで、基材10が樹脂製であっても劣化させることなく成膜を行うことができる。低温でもポリシリコンを成長させることができるのは、誘導結合プラズマCVDによれば、高いプラズマ密度を得ることができ、しかも、圧力を低くすることでイオンおよび電子の平均自由行程を長くすることができるからである。本願発明者の実験によれば、基材温度300℃以下(より具体的には250〜300℃)、圧力1Pa以下において膜質の良好なポリシリコン膜を形成することが可能であることがわかった。
図7に示すように、成膜開始当初には、基材10の温度を比較的高い温度T1に保つとともに、ジボラン(B26)を含む原料ガスを上部空間SPに送り込む。その結果、図8(a)に示すように、p型の導電型を有するポリシリコン層112が、予め基材10上に成膜されたTCO111の上に成膜される。このとき、図1に示す帯状パターンに対応する開口部241を有するマスク24がプラズマPと基材10との間に設置されているので、この帯状パターンに対応する帯状のp型ポリシリコン層112が形成される。温度T1は、図6(b)に示すように、基材10がガラスであるときには300℃、PEN樹脂であるときには、基材へのダメージを低減するべくより低い250℃とする。
成膜を開始してから所定時間が経過した時刻t1(図7)において、ジボラン(B26)の供給を停止し、原料ガスをシラン(SiH4)と水素ガスのみとする。シランガスの供給量は比較的小流量のM1とする。このとき、基材10の温度T1は維持される。これにより、図8(b)に示すように、以後はi型のポリシリコン層113aが、p型ポリシリコン層112上に形成される。
時刻t2において、基材10の温度をT2に低下させる。このときシランガスの供給量は中流量のM2とする。温度T2は、図6(b)に示すように、基材10がガラス、PEN樹脂のいずれにおいても200℃である。基材10の温度を低下させることにより、基材10上におけるシリコンの結晶化は抑制されるため、図8(c)に示すように、ポリシリコンよりは粒径の小さな微結晶シリコン層(i型)113bが、i型ポリシリコン層113aの上部に形成される。
さらに、時刻t3において、基材10の温度をより低い温度T3に変更するとともに、シランガスの供給量を大流量のM3とする。この温度T3は、図6(b)に示すように、いずれの基材においても100℃である。基材温度が低く原料供給量が大きいためシリコンはもはや結晶化せず、図8(d)に示すように、i型のアモルファスシリコン層113cがi型微結晶シリコン層113bの上に形成される。
時刻t4においては、基材温度を温度T3(100℃)に保ったまま、原料ガスにホスフィン(PH3)を添加する。これにより、図8(e)に示すように、n型アモルファスシリコン層114が、i型アモルファスシリコン層113cの上に形成される。
以上の成膜プロセスにより、p型ポリシリコン層112、i型ポリシリコン層113a、i型微結晶シリコン層113b、i型アモルファスシリコン層113cおよびn型アモルファスシリコン層114がこの順番で基材10上に形成される。この間、マスク24は同一であり、基材10との位置も変わらないので、各層はいずれも図1に示す帯状パターンに形成される。
このプロセスでは、基材温度を段階的に低下させることで、形成される各層の結晶構造はポリシリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンの順に変化する。また、原料ガスの組成を変化させることで、各層の導電型はp型、i型、n型の順に変化する。ここで、基材温度を変化させるタイミングと、原料ガスの組成を変化させるタイミングとが互いに異なっている。つまり、伝導型からみた層の境界と、結晶構造からみた層の境界とが異なっている。このため、比較的簡単な製造プロセスでありながら、図2(b)に示すように多くの層が複合化された高機能デバイスを製造することが可能である。
なお、光電変換層110以外の各層の成膜温度は図6(c)に示すとおりである。すなわち、透明電極TCO111としては、ガラス基材に対してはFTO(フッ素ドープ酸化スズ)を、またPEN基材に対してはITO(スズドープ酸化インジウム)を用いるが、成膜温度はp型ポリシリコン層112の成膜温度と同じでそれぞれ300℃、250℃である。また、光電変換層110の上に金属電極12としてのアルミニウム(Al)電極を形成する際および保護膜としての窒化シリコン(SiN)層を形成する際には、n型アモルファスシリコン層114を形成する際よりもさらに低い50℃とする。
このように、この実施形態では、高周波磁場が形成された上部空間SPに原料ガスを供給しながら、基材10の温度を段階的に低下させることで、基材上でのシリコンの結晶化の進行度合を異ならせ、ポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を順次積層するようにしている。また、基材温度の変更とは異なるタイミングで、原料ガスに加える不純物材料を順次切り換えている。こうして基材温度および原料ガスに混入する不純物を順次切り換えることによって、p型ポリシリコン層112、i型ポリシリコン層113a、i型微結晶シリコン層113b、i型アモルファスシリコン層113cおよびn型アモルファスシリコン層114が順に積層された、図2に示す構造の光電変換層110が得られる。
この間、マスク24をプラズマPと基材10との間に介在させているので、マスク24の開口部241に対応する位置にのみ各層が形成され、成膜と同時に図1に示す帯状パターンへの整形がなされている。したがって、成膜後にレーザー加工等によって素子分離を行う必要がない。このため、太陽電池パネル1の基材10として、従来より使用されているガラスの他、耐熱性に劣るためレーザー加工に耐えない例えばPEN樹脂などの樹脂製シートを使用することができる。その結果、これまでより薄く軽量で、また柔軟性に富む太陽電池パネル1を製造することが可能となる。
なお、樹脂製シート上に太陽電池を形成する技術として、低温で成膜可能なアモルファスシリコンを主材料としたものはこれまで提案されているが、ポリシリコンを主材料とする太陽電池に比べると光電変換効率が低いという欠点があった。この実施形態では、低圧で高いプラズマ密度を得ることのできる誘導結合プラズマCVDを用いて、互いに結晶構造の異なる(したがって吸収波長の異なる)ポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を積層した構造の光電変換層110を形成しているので、アモルファスシリコンを主材料とした従来のものより高い光電変換効率を得ることが可能である。
次に、基材10としてポリイミド樹脂を使用した場合の太陽電池パネルの製造方法について説明する。ポリイミド樹脂は、前記したPEN樹脂に比べて耐熱性・安定性の点では優れているが、一般に光の透過性はやや劣る。
図9はポリイミド樹脂を基材とする太陽電池パネルの製造工程を示す図である。図9(a)に示すように、光透過性の低いポリイミド樹脂を基材30とする太陽電池パネル3では、基材30とは反対側の面から光を入射させる。このため、図2の構造とは異なり、ポリイミド基材30、金属(アルミニウム)電極311、n型ポリシリコン層312、i型中間層313(ポリシリコン層313a、微結晶シリコン層313b、アモルファスシリコン層313c)、p型アモルファスシリコン層314、透明電極315、保護膜を兼ねる窒化シリコンによる反射防止膜316をこの順で積層する。金属電極311は、図9(a)の上方から入射し光電変換層を透過した光を反射させ光電変換層に再入射させることで、さらに光電変換効率を高める反射膜としても機能する。
図9(b)に示すように、各層を形成するための原料ガスの組成は前述した例(図6(a))と同じであるが、その供給順序が異なる。また、ポリイミド基材30が耐熱性を有しているので、膜質をより高めるために、成膜時の基材温度T1、T2およびT3を、PEN樹脂の場合よりは高く、それぞれ300℃、200℃および150℃とする。
以上のように、この実施形態では、ポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層からなるpin型太陽電池を誘導結合プラズマCVDにより形成する。誘導結合プラズマCVDでは、低温・低圧で高いプラズマ密度を得られるので、太陽電池の製造に適している。特に、基材温度が低い状態で良質の薄膜を得られることから、耐熱性に劣る樹脂製シートを基材として用いる場合に好適である。中でも、本願出願人が先に開示した(特開2005−2287398号公報)プラズマ処理装置は、広い範囲で均一な高周波磁界を発生させることができるので、均質で大面積の太陽電池を製造するのに特に好適である。
また、プラズマPへのエネルギー付与は、減圧チャンバ26の外部に設けられたコイル23との誘導結合によって行われているので、プラズマの発生やその均一性に影響を与えることなく、基材10の近傍に金属製のマスク24を設置することができる。そのため、マスク24の開口形状を工夫することで、任意のパターンを有する太陽電池を事後の加工なしで製造することができる。この点も、樹脂製シートを基材として利用する際には大きな利点となる。
また、誘導結合プラズマCVDでは、異なる結晶構造を有する複数層からなる光電変換層を、基材温度を段階的に低下させることにより一連の連続した成膜プロセスによって形成することができる。このことは、製造コストおよびスループットの点で有利であるだけでなく、特に複数層を同一マスクを用いて積層することで各層の位置合わせを高い精度で実現することができる。また、減圧チャンバ内といえども、各層の形成工程間にインターバルがあると残存酸素に起因する酸化物やその他の意図しない化合物が界面に取り込まれてしまい、デバイスの性能を低下させる可能性があるが、各層を連続形成することで、このような問題も生じない。
また、複数層を形成するに際しては、後の工程ほど基材温度が低くなるようにしているので、より高い温度で先に形成された層の膜質が、後の層の形成時に変質してしまうことがない。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態ではシリコンの供給源である原料ガスとしてシランを、またp型不純物としてのボロンを含む原料ガスとしてジボランを、n型不純物としてのリンを含む原料ガスとしてホスフィンを使用しているが、原料ガスの種類はこれらに限定されるものではない。また不純物の種類もこれらに限定されない。また、光電変換デバイスの基材や電極の材料についても、上記した実施形態に限らず種々のものを使用することができる。
また、上記実施形態は、減圧チャンバ26内に搬入した平板状の基材10に光電変換層110を形成するものであるが、例えば特開2007−224339号公報に記載されたように、ローラに巻回された基材シートを順次引き出して成膜を行い他のローラで巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロールでの成膜に上記した技術を適用するようにしてもよい。このような技術によれば、長尺・大面積のデバイスを低コストで製造することが可能である。
また、上記実施形態では、光電変換層110を構成する各層を同一の減圧チャンバ26内で同一のマスク24を用いて成膜しているが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、各層を異なるチャンバや異なるマスクを用いて形成するようにしてもよい。
この発明は、基材上に光電変換層を形成してなる光電変換デバイス製造の技術分野に適用することができ、特に樹脂製シートを基材としてその表面に光電変換層を積層する場合に特に好適に適用することができるものである。
1 太陽電池パネル(光電変換デバイス)
10 基材
11 ユニットセル
12 金属電極(第2電極)
110 光電変換層
111 透明電極(第1電極)
112 p型ポリシリコン層(第1層)
113 i型中間層(第2層)
113a i型ポリシリコン層
113b i型微結晶シリコン層
113c i型アモルファスシリコン層
114 n型アモルファスシリコン層(第3層)
2 誘導結合プラズマCVD装置
21 高周波発生部(磁場形成手段)
22 整合器(磁場形成手段)
23 コイル(磁場形成手段)
24 マスク
25 基材保持手段
26 減圧チャンバ(減圧手段)
27 誘電体窓
29 原料ガス供給部(原料供給手段)

Claims (9)

  1. 第1電極を形成された基材上に、第1の導電型を有するポリシリコンからなる第1層を形成する第1層形成工程と、
    前記第1層上に、i型シリコンからなる第2層を形成する第2層形成工程と、
    前記第2層上に、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するアモルファスシリコンからなる第3層を形成する第3層形成工程と、
    前記第3層上に第2電極を形成する第2電極形成工程と
    を備え、
    前記第1ないし第3層形成工程では、前記基材に近接配置した磁場形成手段により形成させた高周波磁場によってシリコン化合物を含む原料ガスをプラズマ化することでシリコンを堆積させる、誘導結合プラズマCVD法によってそれぞれ前記第1ないし第3層を形成し、
    前記第2層形成工程では、基材温度と前記原料ガスの供給量との組み合わせを段階的に変化させることで、いずれもi型のポリシリコン層、微結晶シリコン層およびアモルファスシリコン層を順番に形成する
    ことを特徴とする光電変換デバイスの製造方法。
  2. 前記第3層形成工程において、前記第1層形成工程よりも基材温度を低くする請求項1に記載の光電変換デバイスの製造方法。
  3. 前記第2層形成工程では、前記第1層形成工程における基材温度から前記第3層形成工程における基材温度まで、基材温度を段階的に低下させる請求項2に記載の光電変換デバイスの製造方法。
  4. 前記第1ないし第3層の基材温度を摂氏300度以下とする請求項1ないしのいずれかに記載の光電変換デバイスの製造方法。
  5. 前記第1ないし第3層形成工程における雰囲気を1Pa以下とする請求項1ないしのいずれかに記載の光電変換デバイスの製造方法。
  6. 前記第1ないし第3層形成工程を同一チャンバ内で連続的に行う請求項1ないしのいずれかに記載の光電変換デバイスの製造方法。
  7. 前記第1ないし第3層形成工程では、開口部を穿設されたマスクを介してシリコンを堆積させることで、前記第1ないし第3層を所定のパターンに形成する請求項1ないしのいずれかに記載の光電変換デバイスの製造方法。
  8. 基材と、
    第1電極と、
    第1の導電型を有するポリシリコンからなる第1層、i型シリコンからなる第2層、および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するアモルファスシリコンからなる第3層からなる発電層と、
    第2電極と
    を積層してなり、前記第2層は、前記第1層に接するポリシリコン層と、前記第3層に接するアモルファスシリコン層と、前記ポリシリコン層と前記アモルファスシリコン層との間の微結晶シリコン層とを有することを特徴とする光電変換デバイス。
  9. 前記基材は、樹脂製シートである請求項に記載の光電変換デバイス。
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