JP5332164B2 - 電子機器からのノイズの抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子機器等の電磁ノイズ対策に使用される、安価で軽量な、伝導ノイズおよび放射ノイズ両方を抑制でき、かつ回路との短絡の発生を抑制可能な、電子機器の電磁ノイズ対策に用いるノイズ抑制シートに関するものである。
近年、電子機器、特に持ち運び可能な小型電子機器は、多機能、高性能化に加えて、小型、軽量化が要求されており、これを受けて、機器内の狭小なスペースに電子部品やプリント配線、基板が高密度に実装されるようになってきている。また、高性能の実現のため、高速化も図られている。これらにより、配線回路内に混入する伝導ノイズや、機器外や隣接する部品に影響を及ぼす放射ノイズ等の電磁ノイズによる障害が発生しやすくなっている。
電磁ノイズを抑制・除去する手段として、導電性充填材と強磁性体とを含むノイズ抑制シートや、強磁性体含む層と導電体層とからなるノイズ抑制シートが開示されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、これらのノイズ抑制シートは、磁性材料を使用するために重量が重くなるといった問題があった。
また、磁性材料を使用せずグラファイト化カーボンブラック等の炭素粉末・粒子を用いたノイズ抑制シートも開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3)。
しかしながら、これらのノイズ抑制シートでは、伝導ノイズおよび放射ノイズの両方を十分に抑制することはできなかった。加えて、シートが配線回路等と接触して短絡を生ずる危険性もあった。
特開2005−251918号公報(請求項1、請求項3、図1、図4) 特開平11−112188号公報(請求項1、図1) 特開2000−244167号公報(請求項1、図1)
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、安価で軽量な、伝導ノイズおよび放射ノイズの両方を抑制可能で、かつ回路との短絡の発生を抑制可能な、電子機器の電磁ノイズ対策に用いるノイズ抑制シートを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、導電性材料を含む導電性材料含有層を複数積層してなり、導電性材料またはその含有量が異なる導電性材料含有層同士の組み合わせを有し、かつ、前記導電性材料含有層の1つ以上が不織布であり、積層した導電性材料含有層の表面の少なくとも一方に電気絶縁層を有してなり、前記積層した導電性材料含有層の層間に電気絶縁層を有してなり、前記層間の電気絶縁層が不織布であることを特徴とするノイズ抑制シートである。さらに、前記シートを電子機器に設けたことを特徴とする電子機器からのノイズの抑制方法である。
本発明によれば、安価で軽量な、伝導ノイズおよび放射ノイズの両方について高いノイズ抑制効果を有し、かつ回路との短絡の発生を抑制可能なノイズ抑制シートおよびノイズの抑制の方法を得ることができる。
本発明のノイズ抑制シートは、導電性材料を含む導電性材料含有層を複数積層してなる。導電性材料により電磁ノイズを抑制しうる。
導電性材料としては、金属粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ粒子、カーボンマイクロコイル粒子、グラファイト粒子等の導電性粒子や、炭素繊維、ステンレス、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属繊維等の導電性繊維を挙げることができる。また、非導電性の粒子もしくは繊維に金属をメッキ、蒸着、溶射する等して導電性を付与したものを挙げることもできる。また、後述するように、金属層そのものであってもよい。
これらの導電性材料の中でも、導電性短繊維を用いることが好ましい。すなわち、本発明のノイズ抑制シートは、複数の導電性材料含有層の1つ以上における導電性材料が短繊維であることが好ましい。導電性繊維はアスペクト比が大きいので、繊維同士が接触しやすく、少量でも粉体に比べて高いノイズ抑制性能を得ることができる。
さらに、炭素繊維は長期間の使用においてほとんど性能の変化がないため、より好ましい。
導電性材料を一部に含有して導電性材料含有層を形成する材料としては、導電性材料を含有する基材が樹脂膜やフィルムである場合には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等のゴム材料や、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
また、織物、編物、不織布等の繊維を主体とする構造体の場合には、ガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維、合成繊維、綿、麻、ウール、木材パルプといった天然繊維、レーヨン等の半合成繊維が挙げられる。さらに、合成繊維を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびそれらのポリエステルの酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸等を共重合した共重合ポリエステル等のポリエステルや、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66とを共重合した共重合ポリアミド等のポリアミドや、ポリビニルアルコールや、芳香族ポリアミドや、ポリエーテルエーテルケトンや、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールや、ポリフェニレンサルファイドや、ポリエチレンや、ポリプロピレン等を挙げることができる。
難燃性向上の観点からは、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等を用いることが好ましい。
また、導電性材料含有層には、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機粉体を含有せしめてもよい。
例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等を添加することにより、難燃性を向上させることができる。
本発明のノイズ抑制シートは、複数の導電性材料含有層の1つ以上が不織布であることが、軽量性、柔軟性および製造コストの点から好ましい。不織布の種類としては、乾式不織布であるレジンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布や、湿式不織布である紙やスパンレース不織布等が挙げられるが、シートをより薄型化できることから、紙であることがより好ましい。
本発明のノイズ抑制シートは、複数の導電性材料含有層のなかで、導電性材料またはその含有量が異なる導電性材料含有層同士の組み合わせを有することが重要である。そうすることで、相対的に導電性の低い導電性材料含有層と相対的に導電性の高い導電性材料含有層とを積層のなかに有することとなり、相対的に導電性の低い導電性材料含有層が伝導ノイズの抑制を担い、相対的に導電性の高い導電性材料含有層が放射ノイズの抑制を担うことで、ノイズ抑制シートとして伝導ノイズおよび放射ノイズの両方を抑制することが可能となる。
例えば、同種の導電性材料を含有させた導電性材料含有層同士においては、導電性材料の含有量を異なるものとし、含有量が低い層が相対的に導電性の低い導電性材料含有層となり、含有量が高い層が相対的に導電性の高い導電性材料含有層となる。
相対的に導電性の高い導電性材料含有層としては例えば、金属からなる層が好ましい。すなわち、本発明のノイズ抑制シートは、複数の導電性材料含有層の1つが金属からなる層であることが好ましい。金属からなる層は、放射ノイズをより高度に抑制できるからである。
金属からなる層を形成する材料としては、チタン、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、鉄、ステンレス等の金属が挙げられる。
金属からなる層を形成する方法としては、他の導電性材料含有層に金属箔や金属シートを貼り付ける方法や、他の導電性材料含有層の表面に対して真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を施し金属薄膜を形成する方法等が挙げられる。
本発明のノイズ抑制シートにおける、導電性材料またはその含有量が異なる導電性材料含有層同士の並び方は、用途に応じ適宜設定すると良い。例えば導電性材料含有層A/導電性材料含有層Bの様に単純に1層ずつを積層したもの(図1,2参照)は、薄さ・軽量性に優れる。また、A/B/Aの様に相対的に導電性の高い導電性材料含有層を2枚の相対的に導電性の低い導電性材料含有層で挟んで積層したもの(図3参照)は、両面からの伝導ノイズを抑制できる点で好ましい。
また、本発明のノイズ抑制シートは、積層した導電性材料含有層の表面の少なくとも一方に電気絶縁層を有することが重要である。導電性材料含有層を電気絶縁層で覆うことにより、導電性材料と本発明の使用対象の配線回路等との接触による短絡を防ぐことができる。
この表面の電気絶縁層としては例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等のゴム材料や、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の材料からなる樹脂膜やフィルム等のシートや、ガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のホモポリエステル、およびそれらのポリエステルの酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸等を共重合した共重合ポリエステル等からなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66とを共重合した共重合ポリアミド等からなるポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維や、綿、麻、ウール、木材パルプといった天然繊維、レーヨン等の半合成繊維等からなる織物、編物、不織布等といった繊維を主体とする構造体等が挙げられる。
なかでも、軽量性、柔軟性および薄型化の点から、その形態は樹脂膜もしくはフィルムであることが好ましい。
また、材料としては、難燃性向上の観点から、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の高度な難燃性を有する樹脂や、難燃剤を添加したポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
難燃剤としては、非ハロゲンの難燃剤を使用することが好ましい。
また、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機粉体を、樹脂膜、フィルムや繊維構造体中に含有せしめてもよく、また、紙として繊維材料とともに抄きあげてもよい。
この表面の電気絶縁層は、積層した導電性材料含有層の表面にシート状の電気絶縁体を貼り付けたり、絶縁性樹脂材料を積層体の表面に塗布することにより形成される。
さらに、本発明のノイズ抑制シートは、積層した導電性材料含有層の層間に電気絶縁層を有することが好ましい。
この層間の電気絶縁層により、相対的に導電性の低い導電性材料含有層にて発現する伝導ノイズ抑制効果が、相対的に導電性の高い導電性材料含有層の影響により低下するのを抑制できるためである。
この層間の電気絶縁層を形成する材料としては例えば、表面の電気絶縁層と同じく各種ゴム材料や各種樹脂材料からなる樹脂膜やフィルム等のシートや、各種繊維材料からなる織物、編物、不織布等といった繊維を主体とする構造体等が挙げられる。
なかでも、柔軟性および製造コストの点から、その形態は不織布であることが好ましい。さらに、シートをより薄型化できることから、紙であることがより好ましい。
また、材料としては、難燃性向上の観点から、ガラス繊維や芳香族ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維を用いることが好ましい。
また、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機粉体を、樹脂膜、フィルムや繊維構造体中に含有せしめることが、難燃性を向上させる上で好ましい。
層間の電気絶縁層は、積層される導電性材料含有層のうちのいずれかの片面にシート状の電気絶縁体を貼り付けたり、絶縁性樹脂材料を積層体の表面に塗布することにより形成することができる。
また、層間の電気絶縁層及び導電性材料含有層のうちの1つ以上を、紙同士とする場合には、抄造工程で複数層に抄きあげる手法も製造コストの点から好ましい。
層間の電気絶縁層の厚さとしては、0.001〜0.2mmであることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。0.001mm以上とすることにより、積層した導電性材料含有層間において十分な電気絶縁が得られ、伝導ノイズ抑制効果が向上する。一方、0.2mm以下とすることで、ノイズ抑制シートを薄型化でき取扱性が向上する。
本発明のノイズ抑制シートは、UL94の難燃性試験でV−0もしくはV−1に合格するレベルであることが好ましい。電子機器には、安全性の点で難燃性を有することが求められており、この電子機器にて使用されるノイズ抑制シートも難燃性を有することが好ましいためである。ここで、ULとは、米国Underwriters Laboratories Inc.が制定・認可している電子機器に関する安全性規格であり、UL94は難燃性の規格である。
以上に説明した本発明のノイズ抑制シートは、例えば次の製造方法によって得られる。
まず、導電性材料としてカーボンブラック等の導電性粉体や、炭素繊維等の導電性繊維を、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミル等でゴムや樹脂材料に混練し含有させ、圧延や溶融押出によりシート化したり、上記導電性材料とパルプ等の繊維材料に必要に応じて水酸化アルミニウム等の無機粉体を加えて、水の中で混合したスラリーを抄きあげ紙としたりして導電性材料含有層を作成する。
そして、フェノール樹脂やユリア樹脂からなるコーティング層を形成したり、ポリエステル樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂からなるフィルム、もしくはパルプやポリエステル繊維等の繊維材料や水酸化アルミニウム等の無機粉体を抄きあげた紙を、上記導電性材料含有層の片面にラミネートすることにより、層間の電気絶縁層を形成する。
その後、層間の電気絶縁層側の表面に、積層される導電性材料含有層として、チタン、アルミニウム等を箔として貼り付けたり、蒸着やスパッタリングすることにより金属からなる層を形成する。
しかる後、この積層した導電性材料含有層の表面のいずれか一方に、樹脂材料等をコーティングやラミネートして表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得る。
[測定方法]
(1)ノイズ抑制シートの難燃性
UL難燃性試験(UL94)により難燃性を評価した。
ノイズ抑制シートをタテ・ヨコのそれぞれについて5枚ずつ、長さ125mm、幅13mmにカットして試験片を用意した。試験片の上端をクランプで挟んで垂直に垂らし、その試験片の下端から300mm下に標識用綿(50mm×50mm)を置いた。一方、バーナーを、高さ20mmの青い炎が出るように調節し、バーナーの先端が試験片の下端から10mm下にあるようにして10秒間保持した。このとき発炎物質が滴下する場合には、バーナーを傾け、バーナーの管内に発炎物質が滴下することを防止した。10秒間接炎後、直ちにバーナーを試験片から150mm以上離し、残炎時間tを測定した。残炎が止むと、直ちに再度バーナーを試験片の残存部分の下端から10mm下に移動させて10秒間保持し、その後、バーナーを試験片から150mm以上離し、残炎時間t及び残煙時間tを測定した。
以上のような測定をタテ・ヨコ5枚ずつ(計10枚)の試験片について行い、以下に示した表1のUL94 V−0もしくはV−1の規格をタテ5枚およびヨコ5枚の全てが満足するか否かを判定した。
Figure 0005332164
(2)ノイズ抑制シートの伝導ノイズ抑制効果
IEC規格62333−2「Noise suppression sheet for digital devices and equipment」中の4.3項「Transmission attenuationpower ratio:Rtp」に準じて評価した。この評価方法は、マイクロストリップライン(MSL)治具を用いて実施し、このMSL上にノイズ抑制シートを置いて、伝導ノイズ抑制度Rtp(dB)を測定するものである。ネットワークアナライザーとしては、アジレント・テクノロジー(株)製、ベクトルネットワークアナライザー8719ESを用いて、500MHz、1GHzおよび3GHzの周波数において測定を行った。また、ノイズ抑制シートサンプルの大きさは10cm×5cmで、相対的に導電性の低い導電性材料含有層(導電性材料含有層A)側がMSLサイドになるように置いて測定を実施した。
(3)ノイズ抑制シートの放射ノイズ抑制効果
上記(2)の伝導ノイズ抑制効果の測定で使用したMSLを用いて評価した。MSLの一端とネットワークアナライザーのport1を接続し、他端には50Ωの終端抵抗を接続した。また、ネットワークアナライザーのport2には、アンリツ(株)製、EMIプローブMA2601B/Cを接続した。このプローブ測定部下端がMSLの長手方向の中央部上方5mmの位置となるよう固定し、MSLから漏れ出る放射ノイズをプローブにて検出した。また、ネットワークアナライザーとしては、上記(2)の伝導ノイズ抑制効果の測定と同じく、アジレント・テクノロジー(株)製、ベクトルネットワークアナライザー8719ESを用いて、500MHzおよび1GHzの周波数において測定を行った。
まず、何も置かない状態のMSLにおける放射ノイズの大きさを表すS21R(dB)を測定した後、先ほどと同様にMSL上に10cm×5cmの大きさのノイズ抑制シートを相対的に導電性の低い導電性材料含有層(導電性材料含有層A)側がMSLサイドになるように置いて、放射ノイズの大きさを表すS21S(dB)を測定した。これらの値より、放射ノイズ抑制度Arを下式にて算出した。
Ar(dB)=S21R−S21S
Arが大きいほど放射ノイズ抑制効果が高いことを示している。
[実施例1]<参考例>
図1におけるノイズ抑制シート1を以下の方法にて作成した。
(導電性材料含有層A用のシート)
炭素短繊維(東レ(株)製、“トレカカットファイバー” T010、繊維長6mm)、チョップドガラス繊維(繊維長6mm、繊維径7μm)、パラ系芳香族ポリアミド繊維パルプ(東レ・デュポン(株)製、“ケブラー”パルプ、繊維長2mm)を、それぞれ10質量%、70質量%、20質量%の割合で混合して湿式抄紙し、厚さ100μm、米坪量100g/mの相対的に導電性の低い導電性材料含有層A用のシートを得た。
(導電性材料含有層B用のシート)
相対的に導電性の低い導電性材料含有層B用のシートとして、厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた。
(接着剤)
カルボキシル含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製“ニポール”1072、ニトリル含量27)300部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル(株)製“エピコート”1001、エポキシ当量470)320部、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(東都化成(株)製 YDCN−703P、エポキシ当量210)147部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子(株)製、水酸基価106)146部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)300部、劣化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学工業(株)製)1.5部、水酸化アルミニウム300部および2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5部を混合し、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
(導電性材料含有層A/Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートに上記接着剤をロールコーターで乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布して乾燥し、その接着剤面と上記導電性材料含有層B用のシートを重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンで100℃×3時間、160℃×3時間処理し、接着剤を硬化させて、導電性材料含有層A/Bの積層体を作成した。
(表面の電気絶縁層)
グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂(油化シェル(株)製“エピコート”828、エポキシ当量180)100部、ジシアンジアミド(油化シェル(株)製“Dicy”、平均粒径7μm)4.0部、2−ヘプタデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製 C17Z)4.0部を混合した樹脂組成物30質量%に対して、アルミナ粒子(昭和電工(株)製 AS−50、平均粒径10μm)70質量%を添加した無機粒子含有樹脂組成物を表面の電気絶縁層形成用に調整した。
上記導電性材料含有層A/Bの積層体の導電性材料含有層Aの面に対し、この樹脂組成物をロールコーターで乾燥後の厚さが12μmとなるように70℃にてコーティングした。これを150℃×1分処理することで表面の電気絶縁層を形成した。さらに、導電性材料含有層A/Bの積層体の導電性材料含有層Bの面に対しても、この樹脂組成物をロールコーターで乾燥後の厚さが12μmとなるように70℃にてコーティングした後、150℃×1分処理することで表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が206g/mと磁性材料を用いた従来のノイズ抑制シート(3000g/m以上)よりも軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度、放射ノイズ抑制度ともに、十分な性能を有することが分かった。
[実施例2]<参考例>
(導電性材料含有層A用のシート)
炭素短繊維(東レ(株)製、“トレカカットファイバー” T010、繊維長6mm)、チョップドガラス繊維(繊維長6mm、繊維径7μm)、パラ系芳香族ポリアミド繊維パルプ(東レ・デュポン(株)製、“ケブラー”パルプ、繊維長2mm)を、それぞれ3質量%、77質量%、20質量%の割合で混合して湿式抄紙し、厚さ100μm、米坪量100g/mの相対的に導電性の低い導電性材料含有層A用のシートを得た。
(導電性材料含有層B用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(接着剤)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層A/Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性材料含有層A/Bの積層体を作製した。
(表面の電気絶縁層)
上記導電性材料含有層A/Bの積層体に対して、実施例1と同様にして、積層体の両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が208g/mと軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度は実施例1より若干低下するものの、伝導ノイズ抑制度、放射ノイズ抑制度ともに十分な性能を有することが分かった。
[実施例3]
図2のように、層間の電気絶縁層を有するノイズ抑制シートを以下の方法にて作成した。
(導電性材料含有層A用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層B用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(層間の電気絶縁層用のシート)
チョップドガラス繊維(繊維長6mm、繊維径7μm)、パラ系芳香族ポリアミド繊維パルプ(東レ・デュポン(株)製、“ケブラー”パルプ、繊維長2mm)を、それぞれ80質量%、20質量%の割合で混合して湿式抄紙し、厚さ50μm、米坪量50g/mの層間の電気絶縁層用のシートを得た。
(接着剤)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートに上記接着剤をロールコーターで乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布して乾燥し、その接着剤面と上記層間の電気絶縁層を重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンで100℃×3時間、160℃×3時間処理し、接着剤を硬化させた。
次いで、前記電気絶縁層の面に上記接着剤をロールコーターで乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布して乾燥し、その接着剤面と上記導電性材料含有層B用のシートを重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンで100℃×3時間、160℃×3時間処理し、接着剤を硬化させて、導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体を作成した。
(表面の電気絶縁層)
上記導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体に対して、実施例1と同様にして、積層体の両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が265g/mと実施例1および2よりは若干重くなるものの、磁性材料を用いた従来のノイズ抑制シートよりは十分軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度は実施例1よりも更に高度な性能を有し、また放射ノイズ抑制度も十分な性能を有することが分かった。
[実施例4]
(導電性材料含有層A用のシート)
実施例2で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層B用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(層間の電気絶縁層用のシート)
実施例3で用いたのと同様のものを用いた。
(接着剤)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体を作製した。
(表面の電気絶縁層)
上記導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体に対して、実施例1と同様にして、積層体の両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が266g/mと軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度、放射ノイズ抑制度ともに十分な性能を有することが分かった。
[実施例5]
(導電性材料含有層A用のシート)
炭素短繊維(東レ(株)製、“トレカカットファイバー” T010、繊維長3mm)、チョップドガラス繊維(繊維長6mm、繊維径7μm)、パラ系芳香族ポリアミド繊維パルプ(東レ・デュポン(株)製、“ケブラー”パルプ、繊維長2mm)を、それぞれ10質量%、70質量%、20質量%の割合で混合して湿式抄紙し、厚さ100μm、米坪量100g/mの相対的に導電性の低い導電性材料含有層A用のシートを得た。
(導電性材料含有層B用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(層間の電気絶縁層用のシート)
実施例3で用いたのと同様のものを用いた。
(接着剤)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体を作製した。
(表面の電気絶縁層)
上記導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体に対して、実施例1と同様にして、積層体の両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が260g/mと軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度は実施例1より若干低下するものの、伝導ノイズ抑制度、放射ノイズ抑制度ともに十分な性能を有することが分かった。
[実施例6]
(導電性材料含有層A用のシート)
炭素短繊維(東レ(株)製、“トレカカットファイバー” T010、繊維長3mm)、チョップドガラス繊維(繊維長6mm、繊維径7μm)、パラ系芳香族ポリアミド繊維パルプ(東レ・デュポン(株)製、“ケブラー”パルプ、繊維長2mm)を、それぞれ3質量%、77質量%、20質量%の割合で混合して湿式抄紙し、厚さ100μm、米坪量100g/mの相対的に導電性の低い導電性材料含有層A用のシートを得た。
(導電性材料含有層B用のシート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(層間の電気絶縁層用のシート)
実施例3で用いたのと同様のものを用いた。
(接着剤)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体)
上記導電性材料含有層A用のシートを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体を作製した。
(表面の電気絶縁層)
上記導電性材料含有層A/層間の電気絶縁層/導電性材料含有層Bの積層体に対して、実施例1と同様にして、積層体の両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、米坪量が259g/mと軽量であり、また、目標とするUL94 V−0の基準を合格できるレベルの難燃性を有していた。さらに、伝導ノイズ抑制度は実施例1より若干低下するものの、伝導ノイズ抑制度、放射ノイズ抑制度ともに十分な性能を有することが分かった。
[比較例1]
(導電性材料含有層A)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(導電性材料含有層B)
導電性材料含有層Bは用いなかった。
(表面の電気絶縁層)
導電性材料含有層Bを積層せず導電性材料含有層Aのみを用いた以外は、実施例1と同様にして両面に表面の電気絶縁層を形成し、ノイズ抑制シートを得た。
このノイズ抑制シートは、伝導ノイズ抑制度は高度な性能を有するものの、放射ノイズ抑制度が実施例よりも低く劣っていた。
[比較例2]
(導電性材料含有層A)
導電性材料含有層Aは用いなかった。
(導電性材料含有層B)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(表面の電気絶縁層)
表面の電気絶縁層は形成しなかった。
このノイズ抑制シートは、放射ノイズ抑制度は高度な性能を有するものの、1GHz、3GHzといった高周波帯域において伝導ノイズ抑制度が実施例よりも低く劣っていた。
以上の結果を纏めたのが次の表2である。
Figure 0005332164
実施例1および2で製作された本発明のノイズ抑制シートの一例を示す断面概念図である。 実施例3〜6で製作された本発明のノイズ抑制シートの一例を示す断面概念図である。 本発明のノイズ抑制シートの他の一例を示す断面概念図である。
符号の説明
1・・・ノイズ抑制シート
2・・・導電性材料含有層
2A・・導電性材料含有層A
2B・・導電性材料含有層B
3・・・導電性材料
4・・・表面の電気絶縁層
5・・・層間の電気絶縁層

Claims (6)

  1. 導電性材料を含む導電性材料含有層を複数積層してなり、導電性材料またはその含有量が異なる導電性材料含有層同士の組み合わせを有し、かつ、前記導電性材料含有層の1つ以上が不織布であり、積層した導電性材料含有層の表面の少なくとも一方に電気絶縁層を有してなり、前記積層した導電性材料含有層の層間に電気絶縁層を有してなり、前記層間の電気絶縁層が不織布であるノイズ抑制シートを電子機器に設けたことを特徴とする電子機器からのノイズの抑制方法
  2. 前記ノイズ抑制シートがUL94の難燃性試験でV−0もしくはV−1に合格するレベルである、請求項1記載の電子機器からのノイズの抑制方法
  3. 前記ノイズ抑制シートを構成する前記積層した導電性材料含有層の表面の少なくとも一方に有する電気絶縁層が非ハロゲンの難燃剤を含有する、請求項1または2記載の電子機器からのノイズの抑制方法
  4. 前記ノイズ抑制シートを構成する前記導電性材料含有層の1つ以上における導電性材料が短繊維である、請求項1〜3のいずれか記載の電子機器からのノイズの抑制方法
  5. 前記ノイズ抑制シートを構成する前記導電性材料含有層の1つ以上が金属からなる層である、請求項1または4記載の電子機器からのノイズの抑制方法
  6. 前記ノイズ抑制シートを構成する前記層間の電気絶縁層の厚さが0.001〜0.2mmである、請求項1〜のいずれか記載の電子機器からのノイズの抑制方法
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