JP4381871B2 - 電磁波ノイズ抑制体、その製造方法、および電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板 - Google Patents

電磁波ノイズ抑制体、その製造方法、および電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板 Download PDF

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本発明は、電磁波ノイズ抑制体、その製造方法、および電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板に関する。
携帯電話、ノートパソコン等のモバイル電子機器の小型化、軽量化、多機能化に伴い、モバイル電子機器内のプリント配線板に搭載されるCPU、周辺半導体等は、ますます高集積化され、取り扱われる周波数も高くなってきている。このような高集積化、高周波数化に伴い、機器内部での電磁干渉や機器外部への放射ノイズといった電磁ノイズ障害が問題になっている。
この対策には、これまで、チップノイズフィルターやフェライトビーズなど回路中に挿入する電磁波ノイズ対策部品が使用されてきた。しかしながら、特に高い周波数域を扱う機器では、十分な効果が得られず、また、機器の多機能化により電磁波ノイズ対策部品の搭載スペースの確保が難しいというケースが増えている。このため、プリント配線板上や機器筐体に電磁波ノイズ対策材を設置して、伝導ノイズや輻射ノイズを抑制する手段が求められている。
プリント配線板上に配置される電磁波ノイズ対策材としては、(i)ゴムやプラスチックなどのベース材にフェライト粉や金属磁性粉を混ぜ、シート状にしたもの(特許文献1);(ii)ゴムやプラスチックなどのベース材にフェライト粉や金属磁性粉を混ぜ、塗料としたもの(特許文献2);(iii)ベース材表面に金属や金属酸化物などからなる導電体層を設けたもの(特許文献3)などが知られている。(i)および(ii)は、プリント配線板上のノイズ放射源や信号の干渉部分に配置し、磁気的損失を利用して伝導ノイズを吸収するものであり、(iii)は、導電体層を積層することにより輻射ノイズをシールドするものである。
しかしながら、ベース材にフェライト粉や金属磁性粉を混ぜたシートや塗料は、電磁波吸収体として用いる場合、十分な吸収特性を発揮するためにシート厚または塗工厚を厚くする必要があった。したがって、比重が高いフェライト粉や金属磁性粉を用いた電磁波吸収体は、非常に重くなり、さらに可撓性も乏しくなるため、特にフレキシブルプリント配線板に貼り付けて使用する場合には問題があった。
また、導電体層によって輻射ノイズをシールドする場合、シールド特性を十分発揮させるために、プリント配線板と導電体層とを接続する必要があった。このため、プリント配線板にはシールド用のグランド回路(いわゆるダミーパターン)を別途設けることが必要となり、プリント配線板の薄型化、小型化に不利であり、また回路の設計に制約が出るという問題があった。さらには、プリント配線板のグランド回路と電磁波ノイズ対策材の導電体層との接触が不安定であると、シールド効果が不完全となり、プリント配線板に流れる信号に基づく電磁波が外部へ漏洩、または電磁波ノイズが内部へ侵入する恐れがあった。
特開2003−234022号公報 特開2000−328006号公報 特開2002−361770号公報
よって本発明の目的は、高い周波数帯域における電磁波ノイズ抑制効率がよく、省スペース、薄型、かつ軽量であり、さらには可撓性を有する電磁波ノイズ抑制体;このような電磁波ノイズ抑制体を容易に製造できる製造方法;およびこのような電磁波ノイズ抑制体が配置された電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板を提供することにある。
すなわち、本発明の電磁波ノイズ抑制体は、絶縁性樹脂フィルム層、結合剤を含有する結合剤層、および結合剤層の一部と磁性体とが一体化してなる複合層を有する電磁波ノイズ抑制体本体と;電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に設けられた接着剤層とを有し;前記複合層が、磁性体の物理的蒸着に際してせん断弾性率が5×10 7 Pa以下の結合剤を含有する結合剤層の表面に磁性体を、蒸着質量が膜厚換算値で0.5〜200nmとなるように物理的に蒸着させてなる層であることを特徴とするものである。
ここで、前記結合剤が、硬化性樹脂であることが望ましい。
また、本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板は、プリント配線板の少なくとも一部分に、本発明の電磁波ノイズ抑制体が配置されていることを特徴とするものである。
そして、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法は、結合剤を含有する結合剤層および絶縁性樹脂フィルム層を有する積層体を製造する積層体製造工程と;磁性体の物理的蒸着に際してせん断弾性率が5×10 7 Pa以下の結合剤を含有する結合剤層の表面に磁性体を、蒸着質量が膜厚換算値で0.5〜200nmとなるように物理的蒸着させて、結合剤層の表面に複合層を形成し、電磁波ノイズ抑制体本体を得る蒸着工程と;電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に接着剤層を設ける接着剤層積層工程とを有することを特徴とする。
ここで、前記結合剤として硬化性樹脂を用い、結合剤層の表面に磁性体を物理的に蒸着させた後、結合剤を硬化させることによって、硬化後の結合剤のせん断弾性率を、1×10 7 Pa以上、かつ硬化前の結合剤のせん断弾性率よりも高くすることが望ましい。
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、高い周波数帯域における電磁波ノイズ抑制効率がよく、省スペース、薄型、かつ軽量であり、さらには可撓性を有する。
また、結合剤が硬化性樹脂であれば、未硬化状態の硬化性樹脂に磁性体を物理的に蒸着することで、磁性体が未硬化の結合剤中により均一に分散し、かつ結合剤が硬化した後には、磁性体が結晶化し、微粒子に成長することはなく、結合剤と磁性体がナノオーダーで一体化した複合層とすることができるため、より好ましい。
本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板は、ノイズ発生源の近傍にコンパクトに配置された電磁波ノイズ抑制体によって、高い周波数帯域における電磁波ノイズを効率よく抑制することができる。
また、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法によれば、結合剤と磁性体とが一体化してなる複合層を有する本発明の電磁波ノイズ抑制体を、容易に製造することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
<電磁波ノイズ抑制体>
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、絶縁性樹脂フィルム層、結合剤を含有する結合剤層、および結合剤層の一部と磁性体とが一体化してなる複合層を有する電磁波ノイズ抑制体本体と;電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に設けられた接着剤層とを有するものである。
このような電磁波ノイズ抑制体としては、例えば、図1に示すように、絶縁性樹脂フィルム層2、絶縁性樹脂フィルム層の片面に設けられた結合剤層3、および結合剤層3の一部と磁性体とが一体化してなる複合層4を有する電磁波ノイズ抑制体本体5と;電磁波ノイズ抑制体本体5の絶縁性樹脂フィルム層2側の表面に設けられた接着剤層6とを有する電磁波ノイズ抑制体1が挙げられる。この他、図2に示すように、電磁波ノイズ抑制体本体5の複合層4側の表面に接着剤層6を設けた電磁波ノイズ抑制体10;図3に示すように、絶縁性樹脂フィルム層2、絶縁性樹脂フィルム層の両面に設けられた2層の結合剤層3、およびそれぞれの結合剤層3の一部の結合剤と磁性体とが一体化してなる2層の複合層4を有する電磁波ノイズ抑制体本体21と;電磁波ノイズ抑制体本体21の両面に設けられた2層の接着剤層6とを有する電磁波ノイズ抑制体20であっても構わない。
(複合層)
複合層4は、図4の高分解能透過型電子顕微鏡像や、電子顕微鏡像の模式図である図5に示すように、結合剤層3表面に磁性体を物理的蒸着させてなる層であり、物理的に蒸着された磁性体が均質膜を形成することなく、原子状態で結合剤中に分散一体化してなるものである。
複合層4は、非常に小さな結晶として数Å間隔の磁性体原子が配列された結晶格子11が観察される部分と、非常に小さい範囲で磁性体が存在しない結合剤12のみが観察される部分と、磁性体原子13が結晶化せず結合剤12中に分散して観察される部分からなっている。すなわち、磁性体が明瞭な結晶構造を有する微粒子として存在を示す粒界は観察されず、ナノオーダーで磁性体と結合剤とが一体化した複雑なヘテロ構造(不均質・不斉構造)を有しているものと考えられる。
複合層4の厚さは、結合剤層3の表層に磁性体原子が侵入した深さであり、磁性体の蒸着質量、結合剤材質、物理的蒸着の条件などに依存し、およそ磁性体の蒸着厚さの1.5〜3.0倍ほどとなる。ここで、磁性体の蒸着厚さとは、磁性体原子が侵入することのない硬い基材上に磁性体原子を物理的蒸着させた際の膜厚を意味する。
複合層4の厚さを0.005μm以上とすることにより、磁性体原子と結合剤との分散一体化ができ、形状異方性に由来する高周波領域での大きな磁気損失特性を有するものと思われ、十分な電磁波ノイズ抑制効果を発揮させることができる。一方、複合層4の厚さが3μmを超えると、明瞭な結晶構造を経て均質な磁性体膜が形成され、バルクの磁性体に戻ってしまい、形状異方性が減少し、電磁波ノイズ抑制効果も小さくなり、実効的でない。それゆえ、複合層の厚さは、より好ましくは0.3μm以下である。
(結合剤)
結合剤は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリレートなどの樹脂や、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴム、ブチル系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの非ジエン系ゴム等の有機物が挙げられる。これらは熱可塑性であっても、熱硬化性であってもよく、その未硬化物であってもよい。また、上記の樹脂、ゴムなどの変性物、混合物、共重合物であってもよい。
また、結合剤は、低いせん断弾性率を有する無機物であってもよく、アエロゲル、発砲シリカなどの空隙部が大きく、誘電率の低いもので、超微粒子の捕獲が行える硬度を有するものであれば用いることができる。また、前記有機物との複合物であっても構わない。
中でも、結合剤としては、結合剤への磁性体原子の入り込みやすさの点で、後述する磁性体の物理的蒸着に際して、そのせん断弾性率が低いものが好ましく、具体的には、せん断弾性率が5×107 Pa以下のものが好ましい。所望のせん断弾性率にするために、必要に応じて、例えば100〜300℃に結合剤を加熱することもできるが、分解や蒸発が起きない温度に加熱することが必要である。常温で物理的蒸着を行う場合には、結合剤としては、ゴム硬度が約80°(JIS−A)以下の弾性体が好ましい。
また、結合剤としては、前記したヘテロ構造を維持する点から、磁性体の物理的蒸着の後には、せん断弾性率が高いものが好ましい。磁性体の物理的蒸着の後に結合剤のせん断弾性率を高くすることにより、ナノオーダーの磁性体原子あるいはクラスターが凝集して結晶化し、微粒子に成長することを確実に防止できる。具体的には、電磁波ノイズ抑制体が使用される温度範囲で、1×107 Pa以上のものが好ましい。
結合剤としては、所望のせん断弾性率にするために、磁性体の物理的蒸着の後に結合剤を架橋することができる硬化性樹脂がより好ましい。硬化性樹脂であれば、未硬化状態の硬化性樹脂に磁性体を物理的に蒸着することで、磁性体が未硬化の結合剤中により均一に分散し、かつ結合剤が硬化した後には、磁性体が結晶化し、微粒子に成長することはなく、結合剤と磁性体とがナノオーダーで一体化した複合層とすることができる。つまり、結合剤としては、蒸着時に低いせん断弾性率であり、蒸着後に架橋してせん断弾性率を上げることができる硬化性樹脂がより好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、エネルギー線(紫外線、電子線)硬化性樹脂が挙げられる。
さらに、プラズマ化あるいはイオン化された磁性体原子が、結合剤と一部反応し、安定化するように、結合剤中にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ノニオン系界面活性剤、極性樹脂オリゴマーなどを配合してもよい。このような添加剤を配合することにより、酸化防止のほか、原子の凝集によるところの均質膜の形成を防止して、均質膜による電磁波の反射を防止し、吸収特性を改善することができる。
結合剤に、補強フィラー、難燃剤、難燃助剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、可塑剤、滑剤、耐熱向上剤などを適宜添加しても構わないが、硬質なものを配合すると、磁性体がこれに衝突し、十分な分散が行われないことがあるので、注意が必要である。このほか、磁性体を蒸着後、さらに酸化ケイ素や窒化ケイ素の蒸着を施して、対環境特性を改善することも可能である。
(絶縁性樹脂フィルム層)
絶縁性樹脂フィルム層2は、一般的な絶縁性の有機高分子フィルムであればよく、その材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタンが挙げられる。特に、難燃性、耐熱性を有するフッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが好ましい。また、これらの変性物、混合物、共重合物であってもよい。さらには、これらから選ばれる複数のフィルムを積層して用いてもよい。
絶縁性樹脂フィルム層2には、補強性フィラー、難燃剤、難燃助剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、可塑剤、滑剤、耐熱性向上剤などを適宜添加しても構わない。
絶縁性樹脂フィルム層2の厚さは、特に限定はないが、薄型、軽量でコンパクトな電磁波ノイズ抑制体とするために、薄いほうが好ましい。具体的には、その厚さは、好ましくは50μm、以下、より好ましくは25μm以下である。
(接着剤層)
電磁波ノイズ抑制体をプリント配線板上に配置するための接着剤としては、一般的な熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤等を適宜用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン、フェノキシ系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等を使用することができる。
なお、接着剤の種類によっては、結合剤と相溶したり、結合剤中に拡散したり、さらには結合剤を溶解、膨潤させたりして、複合層4の磁性体原子あるいはクラスターを凝集させ、結晶化し、微粒子に成長させてしまうおそれがあるため、接着剤の選定には、十分な注意が必要である。また、接着剤を溶剤に溶解させ、電磁波ノイズ抑制体へ塗工し、接着剤層6を形成する場合には、接着剤を溶解する溶剤の種類も同様の理由により考慮しなければならない。
接着剤層6の耐熱性向上のため、無機粒子等を充填すると効果的である。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カーボンブラック等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、接着剤層6には、粘着助剤、補強フィラー、難燃剤、難燃助剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、可塑剤、滑剤、耐熱向上剤などを接着特性に影響を与えない範囲で適宜添加しても構わない。
接着剤層6の厚さは、接着剤の種類によって異なるが、概ね5〜25μmが好ましい。5μm未満であると、十分な接着強度が得られない場合があり、25μmを超えると、可撓性が低下したり、総厚が厚くなったりしてしまうため、好ましくない。
接着剤層6は、電磁波ノイズ抑制体だけでなく、電磁波ノイズ抑制体とプリント配線板との両方に設けて、接着剤層同士を貼り合わせても構わない。また、この場合の接着剤は、同一の接着剤でも、異なる接着剤の組み合わせでもよい。
<電磁波ノイズ抑制体の製造方法>
以下、電磁波ノイズ抑制体の製造方法について説明する。
本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法は、結合剤を含有する結合剤層および絶縁性樹脂フィルム層を有する積層体を製造する積層体製造工程と;結合剤層の表面に磁性体を物理的蒸着させて、結合剤層の表面に複合層を形成し、電磁波ノイズ抑制体本体を得る蒸着工程と;電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に接着剤層を設ける接着剤層積層工程とを有する方法である。
(積層体製造工程)
積層体の製造は、例えば、絶縁性樹脂フィルム上に結合剤を押出ラミネートする方法;絶縁性樹脂フィルム上に結合剤を塗布する方法;結合剤からなるフィルム(シート)と絶縁性樹脂フィルムとを接着剤、粘着剤等によって貼り合わせる方法などにより行うことができる。
(蒸着工程)
まず、物理蒸着法(PVD)の一般的な説明を行う。
物理蒸着法は、一般に、真空にした容器の中で蒸発材料を何らかの方法で気化させ、気化した蒸発材料を近傍に置いた基体上に堆積させて薄膜を形成する方法であり、蒸発物質の気化方法の違いで蒸発系とスパッタ系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティングなどが挙げられ、スパッタ系としては、高周波スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタなどが挙げられる。
EB蒸着は蒸発粒子のエネルギーが1eVと小さいので、基板のダメージが少なく、膜がポーラスになりやすく膜強度が不足する傾向があるが、膜の固有抵抗は高くなるという特徴がある。
イオンプレーティングによれば、アルゴンガスや蒸発粒子のイオンは加速されて基板に衝突するため、EBよりエネルギーが大きく、粒子エネルギーは1KeVほどになり、付着力の強い膜を得ることはできるものの、ドロップレットと呼んでいるミクロンサイズの粒子の付着を避けることができず、放電が停止してしまうおそれがある。
マグネトロンスパッタリングはターゲット(蒸発材料)の利用効率が低いものの、磁界の影響で強いプラズマが発生するため成長速度が速く、粒子エネルギーは数十eVと高い特徴となる。高周波スパッタリングでは絶縁性のターゲット(蒸発材料)を使用することもできる。
マグネトロンスパッタリングのうち、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングは、対向するターゲット(蒸発材料)間でプラズマを発生させ、対向するターゲットの外に基体を配置し、プラズマダメージを受けることなく所望の薄膜を生成する方法である。そのため、基体上の薄膜を再スパッタリングすることなく、成長速度がさらに速く、スパッタされた原子が衝突緩和することがなく、緻密なターゲット組成物と同じ組成のものを生成することができる。
以上の物理蒸着法の中でも、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法においては、次の理由から、イオンプレーティング、マグネトロンスパッタ、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法が好ましく、特に対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法が好適である。
結合剤が樹脂あるいはゴムからなる場合は、樹脂の共有結合エネルギーは約4eVであり、具体的にいえば、C−C、C−H、Si−O、Si−Cの結合エネルギーはそれぞれ3.6eV、4.3eV、4.6eV、3.3eVである。これに対して、イオンプレーティング、マグネトロンスパッタや対向ターゲット型マグネトロンスパッタでは、蒸発粒子は高いエネルギーを持っているので、樹脂の一部の化学結合を切断し、衝突することが考えられる。
したがって、本発明においては、樹脂またはゴムからなる結合剤の弾性率が十分小さいと、磁性体を蒸着させた際、樹脂の分子が振動、運動し、ある場合は切断され、磁性体原子と樹脂との局部的なミキシング作用が生じて、磁性体原子は樹脂の表面から最大で3μm程度まで進入し、樹脂などとインターラクションを生じ、均質的な磁性体膜ではなくナノオーダースケールのヘテロ構造を有した複合層が形成されると考えられる。
粒子エネルギーが5eV以上である磁性体原子を結合剤上に物理的に蒸着させると、一度に大量の磁性体を結合剤中に分散させることができるので好ましい。すなわち、一度の蒸着で磁性体の質量を稼ぐことができることから、電磁波ノイズ抑制効率の大きな電磁波ノイズ抑制体を容易に得ることができる。蒸着速度は結合剤の振動や運動の速度が粒子速度を比較して遅いことから、結合剤の緩和のタイミングにあわせるように小さいほうが好ましく、磁性体により異なるがおよそ60nm/minに抑えることが好ましい。
蒸着工程において蒸発材料(ターゲット)として用いられる磁性体としては、金属系軟磁性体および/または、酸化物系軟磁性体および/または、窒化物系軟磁性体が主に用いられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
金属系軟磁性体としては、鉄および鉄合金が一般に用いられている。鉄合金としては、具体的にはFe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Co−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt合金を用いることができる。これらの金属系軟磁性体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。鉄および鉄合金のほかに、コバルトやニッケルの金属あるいはそれらの合金を用いてもよい。ニッケルは単独で用いた場合、酸化に対して抵抗力があるため好ましい。
酸化物系軟磁性体としては、フェライトが好ましい。具体的には、MnFe24、CoFe24、NiFe24、CuFe24、ZnFe24、MgFe24、Fe34、Cu−Zn−フェライト、Ni−Zn−フェライト、Mn−Zn−フェライト、Ba2Co2Fe1222、Ba2Ni2Fe1222、Ba2Zn2Fe1222、Ba2Mn2Fe1222、Ba2Mg2Fe1222、Ba2Cu2Fe1222、Ba3Co2Fe2441を用いることができる。これらのフェライトは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
窒化物系軟磁性体としては、Fe2N、Fe3N、Fe4N、Fe162などが知られている。これらの窒化物系軟磁性体は透磁率が高く、耐食性が高いので好ましい。
なお、結合剤に磁性体を蒸着させる際には、磁性体はプラズマ中あるいはイオン化された磁性体原子として結合剤中に入り込むので、結合剤中に微分散された磁性体の組成は、蒸着材料として用いた磁性体の組成比と必ずしも同一であるとは限らない。また、結合剤の一部と反応し、強磁性体が常磁性体や反強磁性体になるなどの変化が生じる場合もある。
一回の物理的蒸着操作による磁性体の蒸着質量は、磁性体単品の膜厚換算値で200nm以下が好ましい。これより厚いと、結合剤が磁性体を包括する能力に達し、磁性体が結合剤に分散できずに表面に堆積し、均質な導通性を有する連続したバルクの膜が生成してしまう。それゆえ、磁性体の蒸着質量は、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。一方、電磁波ノイズ抑制効果の点からは、磁性体の蒸着膜厚は0.5nm以上であることが好ましい。
蒸着質量が小さくなると、電磁波ノイズ抑制効果が低減するものであるから、複合層を複数層積層することにより、磁性体の総質量を増やすことができる。この総質量は要求される電磁波ノイズの抑制レベルにもよるが、おおよそ総合の磁性体の膜厚換算値で10〜500nmが好ましい。
ここで、蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基板上に同条件で磁性体を蒸着し、堆積した厚さを測定することによって求められる。
蒸着工程における結合剤層の厚さは、特に限定はしないが、薄く、コンパクトな電磁波ノイズ抑制体とするには薄いことが好ましい。具体的には、その厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。
(接着剤積層工程)
接着剤層は、例えば、電磁波ノイズ抑制体本体の片面または両面に、コーティング、ラミネート、スピンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷等の一般的な塗工方法で接着剤を塗工することにより設けることができる。
<電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板>
本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板は、プリント配線板の少なくとも一部分に、本発明の電磁波ノイズ抑制体が配置されているものである。
プリント配線板は、ガラスエポキシ基板等からなる硬質プリント配線板;硬質プリント配線板を積層したビルドアップ多層配線板;可撓性を有するポリイミド等の絶縁性樹脂フィルムの片面または両面に、回路を形成する銅箔層を積層したフレキシブルプリント配線板;フレキシブルプリント配線板を積層したフレキシブルビルドアップ多層配線板;硬質プリント配線板とフレキシブルプリント配線板とを多層積層したビルドアップ配線板等が挙げられる。
(電磁波ノイズ抑制体とプリント配線板との貼り合わせ)
電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板の製造は、一般的な貼り合わせ方法により達成される。例えば、電磁波ノイズ抑制体の接着剤層側とプリント配線板とを重ね合わせ、プレスまたはロール等を用いて加圧および/または加熱することにより貼り合わせることによって、電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板が得られる。
また、ビルドアップ多層配線板に電磁波ノイズ抑制体を用いる場合、ビルドアップ多層プリント配線板の基板間に配置することも可能である。
(実装の例)
図6は、本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板の一例を示す図である。この電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板30は、一端がコネクタ31により電気的、機械的に硬質プリント配線板32に接続され、他端が同様にコネクタ33液晶表示装置34(LCD)に接続されたフレキシブルプリント配線板35に、電磁波ノイズ抑制体1が接着剤層(図示略)を介して積層された構成となっている。このように、本発明の電磁波ノイズ抑制体1を用いることで、フレキシブルプリント配線板35の優れた可撓性を損ねることなく、フレキシブルプリント配線板35に効果的に電磁波ノイズ抑制機能を付与することが可能である。
図7は、本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板の他の例を示す図である。このビルドアップ多層配線板40は、配線回路41が形成された基板42の間に電磁波ノイズ抑制体1を配置し、表面に絶縁層43を設けた構成となっている。本発明の電磁波ノイズ抑制体1は、非常に薄いものであるので、容易にビルドアップ多層配線板40の基板間に配置でき、かつ効果的に電磁波ノイズ抑制機能を付与することが可能である。
<作用>
以上説明した本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、理論的には完全に明らかになっていないが、結合剤と磁性体が一体化された複合層が形成されているので、少ない磁性体であっても、そのナノオーダーのヘテロ構造に由来する量子効果や、材料固有の磁気異方性、形状磁気異方性、あるいは外部磁界による異方性などの影響で、高い共鳴周波数体を持つ。これにより、優れた磁気特性を発揮し、少ない磁性体であっても、高い周波数帯域において、電磁波ノイズ抑制効果を発揮できているものと考えられる。
そのため、本発明の電磁波ノイズ抑制部材にあっては、少ない磁性体であっても、電磁波ノイズ抑制効果を発揮できるので、磁性体の量を大幅に減らすことができ、軽量化を図ることができる。また、本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、複合体層の厚さが0.005〜0.3μmと極めて薄くても、十分な電磁波ノイズ抑制効果が発揮できるので、電磁波ノイズ抑制体を薄型化、省スペース化を図ることができる。
さらに、磁性体の量を大幅に減らすことができるので、前記結合剤が樹脂またはゴムの場合、磁性体による樹脂またはゴムの可撓性や強度の低下を最小限に抑えることができる。特に、フレキシブル配線板に本発明の電磁波ノイズ抑制体を用いると、薄型、軽量、可撓性等、優れた特性を十分に維持することが可能となる。ここで、前記結合剤が熱硬化性樹脂であれば、硬化前においては磁性体が結合剤中により均一に分散し、硬化後においては、高温条件下で電磁波ノイズ抑制部材を使用した場合でも、磁性体が結晶化し、微粒子に成長することが抑えることができ、耐環境特性が向上するため、より好ましい
また、本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板は、電磁波ノイズ発生源の近傍に電磁波ノイズ抑制体がコンパクトに配置されるため、高い周波数帯域の電磁波ノイズを効率よく抑制することができる。
以下、実施例を示す。
(評価)
断面観察:
日立製作所製 透過型電子顕微鏡H9000NARを用いた。
耐折性:
電磁波ノイズ抑制体について、MIT耐折度試験機(テスター産業(株)製、BE−203)を用い、JIS P 8115に準拠して、MIT試験(R=0.8、5N)を行い、20,000回後の電磁波吸収特性を測定した。
電磁波吸収特性:
キーコム製近傍界用電磁波吸収材料測定装置を用い、Sパラメータ法によるS11(反射減衰量)とS21(透過減衰量)とを測定した。ネットワークアナライザーとしてはアンリツ社製ベクトルネットワークアナライザー37247Cを用い、50Ωのインピーダンスを持つマイクロストリップラインのテストフィクチャーとしては、キーコム社製TF−3Aを用いた。また、電磁波ノイズ抑制効果(Ploss/Pin)は、伝送特性のS11とS21の変化から次式で求められる。
loss/Pin=1−(|S112+|S212
loss/Pinは、反射・透過特性の総合的な指標であって、反射減衰量、透過減衰量が実使用上で実効的な値である必要あり、具体的にはPloss/Pin=0.4〜0.7の範囲であることが好ましい。
(実施例1)
エポキシ樹脂(硬化前の常温のせん断弾性率8.0×106 Pa、硬化後の常温のせん断弾性率5.0×109 Pa)100質量部に、硬化剤として2−メチルイミダゾール(四国化成社製)3質量部を添加した後、25μm厚のポリイミドフィルム(カプトン 100EN、東レ・デュポン社製)上に、膜厚が15μmとなるように塗布、製膜し、Bステージ状態のエポキシ樹脂と絶縁性樹脂フィルムとからなる積層体を得た。この積層体のエポキシ樹脂面に、膜厚換算で10nmのFe−Ni系軟磁性体金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により物理的に蒸着させ、複合層を形成した。この際、エポキシ樹脂面の温度を常温に保ち、蒸発粒子が8eVの粒子エネルギーを持つようわずかに負の電圧を印加し、スパッタを行った。ついで、40℃6時間加熱し、さらに120℃2時間加熱して、エポキシ樹脂を硬化させ、電磁波ノイズ抑制体本体を得た。
得られた電磁波ノイズ抑制体本体の一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリッシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により複合層の断面を観察した。断面観察結果を図4に示す。複合層の膜厚は25nm(0.025μm)であった。
電磁波ノイズ抑制体本体の複合層側表面に、半硬化状態のエポキシ樹脂からなる弾性接着剤を膜厚が15μmとなるように塗布し、接着剤層を形成し、電磁波ノイズ抑制体を得た。
この電磁波ノイズ抑制体について、初期の1GHzでの電磁波吸収特性、およびMIT試験後の1GHzでの電磁波吸収特性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
湿式シリカ含有シリコーンゴム(2液型)(加硫後の常温のせん断弾性率1.5×107 Pa)を、25μm厚のポリイミドフィルム(カプトン 100EN、東レ・デュポン社製)上に20μm厚となるように押出ラミネートした後、150℃で1時間、シリコーンゴムを加硫させて積層体を得た。この積層体のシリコーン面に膜厚換算で15nmのFe−Ni系軟磁性体金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により物理的に蒸着させ、複合層を形成し、電磁波ノイズ抑制体本体を得た。この際、シリコーン面の温度を常温に保ち、蒸発粒子が8eVの粒子エネルギーを持つようわずかに負の電圧を印加し、スパッタを行った。
得られた電磁波ノイズ抑制体本体の一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリッシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により複合層の断面を観察した。複合層の膜厚は30nm(0.030μm)あった。
電磁波ノイズ抑制体本体の絶縁性樹脂フィルム側表面に、実施例1と同じ弾性接着剤を膜厚が10μmとなるように塗布し、接着剤層を形成し、電磁波ノイズ抑制体を得た。
この電磁波ノイズ抑制体について、初期の1GHzでの電磁波吸収特性、およびMIT試験後の1GHzでの電磁波吸収特性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
絶縁性樹脂フィルムの両面に、結合剤層、複合層および接着剤層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして電磁波ノイズ抑制体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
表面を酸化させて形成された不導体膜を有する扁平状のFe−Ni系軟磁性金属粉(平均粒径15μm、アスペクト比65)300質量部に、湿式シリカ含有シリコーンゴム(2液型)100質量部を添加し、ミキシングロールで混練し、複合磁性物を得た。複合磁性物を25μmのポリイミドフィルム(カプトン 100EN、東レ・デュポン社製)上に、複合磁性体の厚みが20μmとなるように押出ラミネートしたのち、150℃で1時間加硫させて、電磁波ノイズ抑制体を得た。実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
NiO、ZnO、CuO、Fe23の混合体からなる軟磁性金属粉(平均粒子径10μm)100質量部とポリエステル樹脂15質量部とを、溶剤としてブチルセルロースとシクロヘキサノンを用いて混合し、500poiseの粘度となるように磁性体ペーストを調製した。この磁性体ペーストを25μmのポリイミドフィルム(カプトン 100EN、東レ・デュポン社製)上に、複合磁性体の厚みが100μmとなるようにステンレススクリーンを使用して製膜、乾燥させ、電磁波ノイズ抑制体を得た。実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
結合剤層を設けずにポリイミドフィルム表面に直接、Fe−Ni系軟磁性体金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により物理的に蒸着させ、金属層を設けた以外は、実施例1と同様にして電磁波ノイズ抑制体を得た。実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004381871
表中、外観の項目における○は目視で表面にクラックが認められない状態であり、△は目視で表面にクラックが認められる状態であり、×は表面に剥離等の破壊が見られる状態である。また、総合の項目における○は外観および電磁波ノイズ抑制効果ともに良好であることを示し、×は外観および/または電磁波ノイズ抑制効果に問題が生じたことを示す。
表1の結果から、1GHzにおけるPloss/Pinは、実施例1〜3において良好な数値を示しており、電磁波ノイズ抑制効果に優れていることが確認された。比較例1、2は軟磁性体粉と結合剤とを単に混合しているだけであるため、100μmの複合磁性体層であっても、1GHzにおけるPloss/Pinは0.3以下であり、電磁波ノイズ抑制効果は低かった。また、比較例3は、軟磁性体金属をポリイミドフィルム上に物理的に蒸着させ、複合層を持たない単なる金属層を設けただけであるため、電磁波ノイズ抑制効果は低かった。
また、耐折性については、実施例1〜3ではMIT試験後の1GHzにおけるPloss/Pinが0.40以上を維持しており、耐折特性にも優れた電磁波ノイズ抑制体を作製するとこが可能であることが分かる。比較例1、2に関しては、軟磁性体粉と結合剤とを単に混合しているだけであるため、MIT試験でクラックが発生し、特に比較例2に関しては、複合磁性体層が100μmと厚いため、数回でクラックが発生し、ポリイミドフィルムから剥離した。また、比較例3は軟磁性体金属をポリイミドフィルム上に物理的に蒸着させただけであるため、ポリイミドフィルムとの密着性が悪く、MIT試験によって金属層に微細なクラックが入り、フィルム表面から金属片が剥離した。
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、高い周波数帯域おいて十分なノイズ抑制効果を発揮しつつ、これが設けられたプリント配線板、そして、このプリント配線板が設けられた電子機器、電子部品の小型化、軽量化を図ることが可能である。
本発明の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す概略断面図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体における複合層の高分解能透過型電子顕微鏡像である。 複合層の近傍の一例を示す模式図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板の一例を示す概略図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板の他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 電磁波ノイズ抑制体
2 絶縁性樹脂フィルム層
3 結合剤層
4 複合層
5 電磁波ノイズ抑制体本体
6 接着剤層
10 電磁波ノイズ抑制体
20 電磁波ノイズ抑制体
30 電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板
40 電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板

Claims (5)

  1. 絶縁性樹脂フィルム層、結合剤を含有する結合剤層、および結合剤層の一部と磁性体とが一体化してなる複合層を有する電磁波ノイズ抑制体本体と、
    電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に設けられた接着剤層と
    を有し、
    前記複合層が、磁性体の物理的蒸着に際してせん断弾性率が5×10 7 Pa以下の結合剤を含有する結合剤層の表面に磁性体を、蒸着質量が膜厚換算値で0.5〜200nmとなるように物理的に蒸着させてなる層であることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
  2. 前記結合剤が、硬化性樹脂であることを特徴とする請求項記載の電磁波ノイズ抑制体。
  3. プリント配線板の少なくとも一部分に、請求項1または2に記載の電磁波ノイズ抑制体が配置されていることを特徴とする電磁波ノイズ抑制機能付きプリント配線板。
  4. 結合剤を含有する結合剤層および絶縁性樹脂フィルム層を有する積層体を製造する積層体製造工程と、
    磁性体の物理的蒸着に際してせん断弾性率が5×10 7 Pa以下の結合剤を含有する結合剤層の表面に磁性体を、蒸着質量が膜厚換算値で0.5〜200nmとなるように物理的蒸着させて、結合剤層の表面に複合層を形成し、電磁波ノイズ抑制体本体を得る蒸着工程と、
    電磁波ノイズ抑制体本体の少なくとも片面に接着剤層を設ける接着剤層積層工程と
    を有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
  5. 前記結合剤として硬化性樹脂を用い、
    結合剤層の表面に磁性体を物理的に蒸着させた後、結合剤を硬化させることによって、硬化後の結合剤のせん断弾性率を、1×10 7 Pa以上、かつ硬化前の結合剤のせん断弾性率よりも高くすることを特徴とする請求項記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
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