JP2005251918A - 電磁波ノイズ抑制体 - Google Patents

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和時 田原
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利行 川口
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Atsushi Taniguchi
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Abstract

【課題】 電子機器や電子部品などに組み込み応用が容易で、電磁波ノイズ抑制性能および電磁波遮蔽特性が良く、小型、軽量な電磁波ノイズ抑制体を提供する。
【解決手段】 有機高分子及び導電性充填剤を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層とを有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。また、有機高分子を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層と、導電体層とを有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電磁波ノイズ抑制体に関する。
近年、インターネット利用をはじめとして、携帯電話あるいは携帯情報端末、高度道路情報システム、ブルートゥ−スなど電波を利用した情報通信機器が普及してきており、ユビキタス社会が訪れてきている。しかし、これら情報機器の普及に伴って、これら情報機器から放射される電磁波がもたらす、他の電子機器への誤作動や、人体への影響が問題とされてきている。
そのため、電子機器には、誤作動を起こしたり、他の電子機器や人体に影響を与えたりしないように、電磁波をできるだけ放出しないこと、外部から電磁波を受けても誤作動のないことが求められ、例えば、電子機器に、電磁波を反射あるいは吸収する部材を設けることが行われている。
また、電子機器、特に携帯可能な電子機器は、多機能化、高性能化、小型化、軽量化が求められ、電磁波ノイズを抑制する処置においても同様で、ノイズを抑制する効率がよく、省スペースで軽量であるものが求められている。
また、上記のように多機能化、高性能化、小型化、軽量化の図られた電子機器においては、電子部品類や配線基板、プリント配線が高密度に実装される。このことにより、高密度に実装された電子部品間あるいは基板間において、電磁波ノイズによる電磁障害が発生しやすくなっている。
過密に実装された電子部品類やプリント配線には、信号処理速度の高速化も図られているため、静電及び電磁結合による線間結合の増大化や放射ノイズによる干渉などが生じ、電子機器類の正常な動作を妨げる、いわゆる電磁障害が生じていた。
特に、複数の配線基板を重ね合わせて実装する場合においては、部品間や配線基板間の電磁波干渉に由来する電磁障害の起こる可能性が極めて高くなっていた。
そのため、電子部品に対し、電磁波遮蔽等の処置を施すことが行われている。
例えば、電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体として、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層が軟磁性体粉末と有機結合剤とを含む電磁波干渉抑制体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平7−212079号公報
しかしながら、特許文献1に記載の電磁波干渉抑制体では、電磁波干渉抑制体自体の厚みが厚く、しかも磁性体を絶縁性軟磁性体層の全領域にわたって多量に含むので重く、軽量化が達成されたとはいえない。
また、有機結合剤の量が少ないので堅牢性、可撓性も充分とはいえず、高密度実装化を図るうえで満足のいくものではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電子機器や電子部品などに組み込み応用が容易で、電磁波ノイズ抑制性能および電磁波遮蔽特性が良く、小型、軽量な電磁波ノイズ抑制体を提供することを目的とする。
さらに、可撓性があり、堅牢な電磁波ノイズ抑制体を提供することを目的とする。
本発明の第一のノイズ抑制体は、有機高分子及び導電性充填剤を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層とを有することを特徴とする。
ここで、前記導電性充填剤が、金属粉、金属繊維、金属被覆微粒子、カーボン微粒子、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種類の導電性微粉末からなることが好ましい。
本発明の第二のノイズ抑制体は、有機高分子を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層と、導電体層とを有することを特徴とする。
前記導電体層が、金属箔、金属繊維布、導電繊維布、金属線編組体、導電繊維編組体、導電性充填剤の分散された有機高分子層、及び導電性フィルムから選ばれることが好ましい。
前記導電性フィルムは、支持フィルムと、該支持フィルムに金属が物理蒸着されてなる厚み5〜500nmの金属層とからなることが好ましい。
支持フィルムへの金属の物理蒸着が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法によることが好ましい。
本発明第一、第二のノイズ抑制体において、前記基体は、誘電体粉末を含むことが好ましい。
前記誘電体粉末が、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミックから選ばれる少なくとも1種類の誘電体粉末からなることが好ましい。
前記複合層は、前記基体に強磁性体が物理蒸着されてなることが好ましい。
基体への強磁性体の物理蒸着が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法によることが好ましい。
前記基体の剪断弾性率は、1×10〜5×1010Paであることが好ましい。
本発明によれば、電子機器や電子部品などに組み込み応用が容易で、電磁波ノイズ抑制性能および電磁波遮蔽特性が良く、電磁波の反射による電磁結合を助長させることのない、小型、軽量な電磁波ノイズ抑制体を提供することができる。
さらには、可撓性があり、堅牢な電磁波ノイズ抑制体を提供することができる。
本発明の第一の電磁波ノイズ抑制体は、有機高分子及び導電性充填剤を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層とを有する。
本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体は、有機高分子を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層と、導電体層とを有する。
また、第一および第二の電磁波ノイズ抑制体において、基体は、誘電体粉末を含むことが好ましい。この場合、後述のように、電磁波ノイズ抑制体のノイズ抑制性能がさらに向上する。
「第一の電磁波ノイズ抑制体」
図1に、本発明の第一の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す。この例は、別層の導電体層を有せず、基体に導電性充填剤が分散された構成の電磁波ノイズ抑制体であり、基体において、導電性充填剤と併用して誘電体粉末が分散されたものである。
図1に示す電磁波ノイズ抑制体10は、支持フィルム18と、支持フィルム18の上に積層された、有機高分子20を含む基体12と、強磁性体が原子状となって基体12の一部と混ぜ合わされた状態の複合層14とから構成されている。基体12において、有機高分子20に誘電体粉末31および導電性充填剤32が分散している。
導電性充填剤が基体に含まれることにより、基体が導電性を示して、電磁波ノイズ抑制体が、電磁波ノイズの反射効果であるシールド特性を発現する。
導電性充填剤を含む基体は、例えば、未硬化の有機高分子に導電性充填剤を分散添加して基体材料を調製し、この基体材料を、支持フィルム等の支持体に塗布した後に硬化させて形成することができる。
基体を構成する有機高分子としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂や、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等の有機高分子化合物が挙げられる。これらは熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよく、その未硬化物であってもよい。また、上述の樹脂、ゴム等の変性物、混合物、共重合物であってもよい。
また、上述の有機高分子は、硬化剤、補強剤、その他改質剤、などの各種機能性充填剤を含有するものであってもよく、例えば、熱伝導性の良好な充填剤を含有した有機高分子を基体とすれば、放熱特性を兼ね備えた電磁波ノイズ抑制体を提供することができる。
基体に含まれる導電性充填剤32は、金属粉、金属繊維、金属被覆微粒子、カーボン微粒子、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種類の導電性微粉末からなることが、シールド特性のさらなる向上のために好ましい。
導電性充填剤32の形状は、材料の種類によってことなるが、金属粒子の不定形であるものや、カーボンナノチューブのような針状形状や、ストラクチャー構造をなす球状のカーボンであってもよく、分散添加によって導電性が発現されるものであれば特に限定されない。導電充填剤32の大きさは、粒子状や不定形のものでは、その粒子径が10μm以下であることが好ましく、繊維形状のものであればその繊維径が5μm以下であることが好ましい。それぞれの大きさを超えると電磁波ノイズ抑制体の基体の厚みが増大し、薄型化に不利となる。
有機高分子への導電性充填剤の分散添加量は、10〜50vol%(体積%)が好ましい。10vol%未満では、導電性の安定な発現が難しく、50vol%を超えると基体の剪断弾性率が増大し、強磁性体との一体化による複合層の形成が困難となる。
基体の固有体積抵抗率(「固有抵抗値」という場合がある)(JIS K−7194)は、500Ωcm以下が好ましい。さらには、50Ωcm以下であることが好ましい。
本発明のノイズ抑制体において、基体をなす有機高分子に誘電体粉末31を分散させる場合、誘電体粉末31としては、高周波領域での誘電率が大きく、かつ誘電率の周波数特性が比較的平坦なものが好ましい。誘電体粉末の分散添加により、空間とのインピーダンス整合が図られるために、電磁波の不要輻射の反射が起こり難くなる。
誘電体粉末としては、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミックから選ばれる少なくとも1種類の誘電体粉末を用いることが、不要輻射の反射を抑制する性能の向上のために好ましい。
誘電体粉末31の粒子形状は特に限定されないが、ほぼ球状のものが好ましい。また、誘電体粉末31の粒子径は、5μm以下が好ましい。5μmを超えると、有機高分子からなる基体に分散添加量が確保できなくなるとともに薄型化に不利となる。より好ましくは、1μm以下がよい。
誘電体粉末31の有機高分子への分散添加量は、5〜50vol%(体積%)が好ましく、5vol%未満では、高周波領域での誘電損失の効果が発現されず、50vol%を超えると基体の剪断弾性率が増大し、強磁性体との一体化される複合層の形成が困難となる。
また、誘電体粉末31と導電性充填剤32とを併用して分散添加する場合には、それぞれの効果を発現する添加量とすればよいが、誘電体粉末31と導電性充填剤32の合計の分散添加量は、50vol%以下が好ましい。50vol%を超えると基体の剪断弾性率が増大し、強磁性体との一体化による複合層形成が困難となる。
基体の剪断弾性率は、1×10〜5×1010Paであることが好ましい。
基体の剪断弾性率は、有機高分子及び導電性充填剤を含む基体材料を調製し、この基体材料を試料として、JIS K−6254に準拠して常温で測定した値を示す。
基体の剪断弾性率が低いほど、後述する強磁性体の物理蒸着の際に、強磁性体が基体に入り込みやすくなる。すなわち、強磁性体の基体への侵入あるいは強磁性体の衝突による有機高分子の変形や流動により、強磁性体が基体表層の数ミクロンの層に渡り分散しやすくなる。この観点から基体の剪断弾性率は、1×10〜10Paが好ましく、より好ましくは、1×10〜10Pa、さらに好ましくは1×10〜10Paとされる。これら条件を満たす基体を得るために好適な有機高分子としては、おおよそゴム硬度90°(JIS−A)以下の弾性体が挙げられる。基体の剪断弾性率が1×10Paを超えても5×1010Pa以下であれば、軽度の変形や流動が可能となるので、表面に凹凸を付けた基体を用いる、あるいは一度の蒸着量を下げて、強磁性体が連続層を形成しない程度の蒸着量の電磁波吸収層を複数層積層して合計の蒸着量を稼ぐことにより良好な電磁波ノイズ抑制性能を有するものとすることができる。
図2に、有機高分子を含む基体の表面に強磁性体が物理的に蒸着されて形成された複合層の近傍を示す電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。図3に、有機高分子を含む基体の表面に強磁性体が物理的に蒸着されて複合層を形成した部位の模式図を示す。
図1に示す複合層14は、基体12の一部と強磁性体とが一体化してなるものであるが、好ましくは、図2、3に示すように、基体12の表面に強磁性体5が物理的に蒸着(物理蒸着)されてなる層であり、物理的に蒸着された強磁性体5が均質膜を形成することなく、原子状態で結合剤中に分散一体化してなるものである。
この場合、複合層14は、非常に小さな結晶として数Å間隔の強磁性体原子が配列された結晶格子4が観察される部分と、非常に小さい範囲で強磁性体が存在しない有機高分子のみが観察される部分6と、強磁性体(強磁性体原子)5が結晶化せず有機高分子中に分散して観察される部分からなっている。すなわち、強磁性体が明瞭な結晶構造を有する微粒子として存在を示す粒界は観察されず、ナノオーダーで強磁性体と有機高分子が一体化した複雑なヘテロ構造(非均質・不斉構造)を有しているものと考えられる。
物理蒸着法(PVD)での各種成膜方法は、真空にした容器の中で薄膜形成物質を何らかの方法で気化させ、近傍に置いた基板上に堆積させて薄膜を形成する方法である。
物理蒸着法を薄膜物質の気化方法で分類すると、蒸発系とスパッタ系に分けられ、蒸発系にはEB蒸着、イオンプレーティング、スパッタ系には、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングなどが挙げられる。
EB蒸着は、蒸発粒子のエネルギーが1eVと小さいので、基板のダメージが少なく、膜がポーラスになりやすく、膜強度が不足する傾向があるが、強磁性体膜の固有抵抗は高くなるという特徴がある。
イオンプレーティングはアルゴンガスや蒸発粒子のイオンは加速されて基板に衝突するため、EBよりエネルギーは大きく、付着力の強い膜を得ることができる。しかし、ドロップレットと呼んでいるミクロンサイズの粒子が多数付着してしまうと放電が停止してしまう。また、酸化物系強磁性体を成膜するには、酸素などの反応性ガスを導入しなければならず、膜質コントロールが難しい。
通常のマグネトロンスパッタリングは、磁界の影響で強いプラズマが発生するため成長速度が速く、図1に示す様に強磁性体が部分的に基体の中に潜り込んだ状態となり、三次元的に偏在して均質膜を形成しない状態で蒸着されるという特徴があるが、ターゲットの利用効率が低い。
ミラートロンスパッタリングなど、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングは、二枚のターゲットを向かい合わせに平行に配置し、対向するターゲット間にターゲット面の垂直な磁力線を印加して、プラズマを発生させ、対向するターゲットの外に基板を置いて行う方法であって、薄膜を再スパッタする必要がなく、成長速度がさらに速く、スパッタされた原子が衝突緩和することがない。
有機高分子の共有結合エネルギーは、約4eVであり、C−C、C−H、Si−O,Si−Cの結合エネルギーはそれぞれ3.6、4.3、4.6、3.3eVであるのに対して、対向ターゲット型マグネトロンスパッタでスパッタされた原子は8eV以上と高いエネルギーを持っている。
対向ターゲット型マグネトロンスパッタでは、スパッタされた原子がこのように高いエネルギーを持っていることにより、有機高分子の種類にもよるが有機高分子の化学結合を切断し、衝突する。したがって、強磁性体原子が有機高分子を含む基体の表面からおおよそ0.005〜5μm程度まで進入することができる。
これは高エネルギーの強磁性体原子の基体表面への衝突により強磁性体原子と有機高分子の局部的なミキシングが生じたためと推定される。このような現象が生ずることにより、前記した複合層のヘテロ構造をもたらすことができ、一度に大量の強磁性体を分散させることができるので好ましい。すなわち、一度の蒸着で、強磁性体の質量を稼ぐことができることから、吸収減衰率の大きなノイズ抑制体を容易に得ることができるため、好ましい。
また、特に、強磁性体をスパッタする場合は、通常のマグネトロンスパッタでは磁力線が強磁性体ターゲット中を通るのでターゲットの厚みによってスパッタレートが決まったり、放電が起きにくくなったりするのに対し、対向ターゲット型マグネトロンスパッタでは、磁場をターゲットのスパッタ面に垂直に印加するため、強磁性体をターゲットに用いても磁場が保持され、ターゲット厚みに関係なく高速スパッタができるという特徴がある。
複合層14の厚みは、0.3μm以下であることが好ましい。ここで、複合層の厚みは、有機高分子の表層に強磁性体層が侵入した深さであり、後述する強磁性体の蒸着質量、有機高分子材質、物理蒸着の条件に依存する。複合層の厚みを0.005μm以上とすることにより、強磁性体原子と有機高分子基体との分散一体化が形成でき、形状異方性に由来する高周波領域での大きな損失特性を有するものと思われ、充分なノイズ抑制効果を発揮させることができる。一方、複合層の厚さが0.3μmを超えると、例えば物理蒸着で、強磁性体原子の有機高分子との分散一体化が達成できないおそれがあり、形状異方性に由来する高周波領域での損失特性が発現されない場合がある。
強磁性体としては、例えば、金属系軟磁性体及び/または酸化物系軟磁性体からなるものが挙げられる。
金属系軟磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトの金属、これらの金属の合金等を用いることができるが、鉄、鉄合金が好ましく用いられる。鉄合金として具体的にはFe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al及びFe−Al−Si合金を用いることができる。これらの金属系軟磁性体は、1種類単独としてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。
酸化物系軟磁性体としては、フェライトが好ましい。フェライトとして、具体的にはMnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe,MgFe、FeO、Cu−Zn―フェライト、Ni−Zn―フェライト、Mn−Zn―フェライト、BaCoFeO、BaNiFeO、BaZnFe1222、BaMnFe1222、BaMgFe1222、BaCuFe1222、BaCoFe2441が挙げられる。これらのフェライトは1種類単独としてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。
複合層が、基体の表面に強磁性体が物理蒸着されてなる層である場合、強磁性体の蒸着質量は、強磁性体単品の膜厚換算値で200nm以下が好ましい。200nmを超えると基体の強磁性体蒸着質量の包含能力の限界に達し、強磁性体が分散から堆積状態となって、均質な導通性を有する連続した強磁性体膜を形成してしまう。すなわち明瞭な結晶構造を経て均質な強磁性体膜が形成され、バルクの磁性体となり形状異方性が減少し、ノイズ抑制効果も小さくなり、実効的でない。より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下が好ましい。また、ノイズ抑制効果からは、0.5nm以上であることが好ましい。
この蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基板上に同条件で蒸着し、堆積した厚みを測定することによって求められる。
蒸着された強磁性体は、基体の表層に分散されており、この複合層の厚みは、強磁性体単品の膜厚換算値よりも厚くなる。その測定は、図2に示したように、断面のSEM像から観測、算出することができる。
また、物理蒸着一回あたりの蒸着質量が小さいとノイズ抑制効果は低いことから、図5の例のように複数の複合層を積層した態様とすることにより、適宜、分散された状態の強磁性体の総質量を増大させることが好ましい。この総質量は、要求する抑制機能レベルにもよるが、おおよそ総合の膜厚換算値で10〜500nmが好ましい。
尚、基体の複合層が形成された面の他方の面である基体側に、膜厚換算値で200nmを超えるような導通性を有するバルクの金属層として蒸着することによって、電磁波の反射特性を持たせることも可能である。
「第二の電磁波抑制体」
図4に、本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す。以下、第二の電磁波ノイズ抑制体の説明において、上記「第一の電磁波抑制体」と同様の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図4に示す電磁波ノイズ抑制体10は、有機高分子20に誘電体粉末31が分散した基体12と、強磁性体が原子状となって基体12の一部と混ぜ合わされた状態の複合層14と、基体12の表面に積層された導電体層16とを有する。
この例では、導電体層16は、支持フィルム18と、支持フィルム18に金属が物理蒸着されてなる金属層19とからなる導電性フィルムから構成されている。
第二の電磁波抑制体において、基体12は導電性充填剤を含まなくても構わないが、含んでいても構わない。
図5、6に、第二の電磁波ノイズ抑制体の、さらに他の例を示す。
図5に示す電磁波ノイズ抑制体10においては、支持フィルム18および金属層19を有する導電性フィルムからなる導電体層16の両面に、誘電体粉末31が有機高分子20に分散された基体12が設けられ、これらの基体12の表面に、それぞれ複合層14が設けられている。
図6に示す電磁波ノイズ抑制体10においては、支持フィルム18および金属層19を有する導電性フィルムからなる導電体層16の片面に、誘電体粉末31が有機高分子20に分散された基体12と、複合層14とがそれぞれ複数設けられている。
すなわち、図4に示す電磁波ノイズ抑制体10においては、導電体層16の一方の面に、基体12を介して一つの複合層14が設けられているが、本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体においては、例えば、図5に示すように、導電体層16の両面に、基体12を介して複合層14が設けられていてもよいし、図6に示すように、導電体層16の一方の面に、基体12を介して複数の複合層14が設けられていてもよい。図4、6に示す態様において、金属層19を、導電体層16のうち基体12と反対側に設けてもよいし、基体12側に設けてもよい。実装において、薄膜の金属層19を保護する点では、金属層19を基体12側とすることが好ましい。
第二の電磁波ノイズ抑制体のさらに他の例を、図7に示す。この例は、導電体層16を金属編組体として、その表面に、有機高分子20に誘電体粉末31が分散してなる基体12を設け、その基体12の表面の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層14を設けた態様の一例である。
第二の電磁波ノイズ抑制体において、基体、複合層の材料、好ましい条件等は、上記「第一の電磁波ノイズ抑制体」における例示と同様に示される。
第二の電磁波ノイズ抑制体において、基体の剪断弾性率は、有機高分子を含む基体材料を調製し、この基体材料を試料として、JIS K−6254に準拠して常温で測定した値を示す。
導電体層の固有体積抵抗率(JIS K−7194)は、500Ωcm以下が好ましい。さらには、50Ωcm以下であることが好ましい。
導電体層16は、金属箔、金属繊維布、導電繊維布、金属線編組体、導電繊維編組体、導電性充填剤の分散された有機高分子層、及び導電性フィルムから選ばれることが好ましい。
金属箔としては、例えばアルミニウム、ニッケル、錫、銅、リン青銅、洋白、黄銅、その他銅合金等の箔が挙げられる。
金属繊維布としては、例えばニッケルやステンレス等の繊維の不織布が挙げられる。
導電繊維布としては、例えばカーボンファイバーやポリエステル繊維に、銅およびニッケルの2層メッキを施した導電繊維などの不織布が挙げられる。
金属線編組体としては、例えばニッケル、錫、銅、リン青銅、洋白、黄銅、そのた銅合金等からなるメッシュが挙げられる。
導電繊維編組体としては、例えば銅、ニッケル、その他金属のメッキされた繊維のメッシュが挙げられる。
また、導電体層は、導電性充填剤の分散された有機高分子層、すなわち有機高分子と、これに分散された導電性充填剤とからなる有機高分子層であってもよい。有機高分子は特に限定されないが、絶縁性有機高分子であって構わない。導電体層に用いられる有機高分子として、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリケトン系、ポリウレタン系等の樹脂、シリコーン、イソプレン、ブタジエン、スチレンブタジエン、ウレタン、エチレンプロピレン等のエラストマーが挙げられる。導電体層に用いられる導電性充填剤としては、金属粒子、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボン微粉末などが挙げられる。
導電性フィルムとしては、例えば、支持フィルムおよび金属層からなるものが挙げられる。
導電体層として、図4に例示されるように支持フィルム18と、金属層19とからなる導電性フィルムを用いる場合、金属層19の厚みは5〜500nmであることが好ましい。5nm未満では、金属層として導電性が不安定で電磁波シールド効果の発現が困難となる場合があり、500nmを超えることは、経済的に不利なものとなる。厚みが5〜150nmであれば、電磁波ノイズ抑制体10の軽量化、薄型化、可撓性に寄与するものとなる。
支持フィルム18の材料としては、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリケトン系、ポリウレタン系等の樹脂、シリコーン、イソプレン、ブタジエン、スチレンブタジエン、ウレタン、エチレンプロピレン等のエラストマー等が挙げられる。さらに、例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等からなる可撓性フィルム等を用いることができる。
金属層19の成り立ちとしては、支持フィルムに対する金属のメッキ加工、支持フィルムと金属箔のラミネート加工、支持フィルムに対する金属の物理蒸着等を行って形成されたものが例示される。
これらの中でも、支持フィルムに対する金属の物理蒸着を採用することで、上記厚み5〜500nmの条件を満たし、かつ均一な金属層を安定して得ることができる。
メッキ加工において、例えばニッケル、錫、銅、リン青銅、洋白、黄銅、その他銅合金等の金属を用いることができ、ラミネート加工において、例えばアルミニウム、銅、ニッケル箔等を用いることができる。
金属層19を得るための金属の物理蒸着は、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法とすることが好ましい。これは、メッキ加工法におけるメッキ液を用いるウエット加工に対して、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法はドライ加工であることから廃液処理等がなく、安全で環境保全の面で優れているとともに、薄膜の金属層が均質で安定した膜厚を容易に調整可能な生産性に優れた加工方法であるためである。
上記第二の電磁波ノイズ抑制体は、例えば、上記の導電層に、有機高分子を含み、好ましくは誘電体粉末をさらに含む基体材料を塗工した後、塗工表面に強磁性体を物理蒸着させ、その後、有機高分子を硬化させて製造することができる。
本発明の第一の電磁波ノイズ抑制体においては、複合層が電子部品、回路自体から発生する伝導ノイズを抑制し、基体に分散添加された導電性充填剤が電子部品外部の基板等からの放射ノイズを遮蔽し、不要輻射の反射による電磁結合の増大化を抑制する。
第一の電磁波ノイズ抑制体では、強磁性体が有機高分子との間で、上述のような複合層を形成していることにより、強磁性体の使用量が少なくても充分な伝導ノイズ抑制効果が得られるから、複合層が軽量で薄いものとなる。また、基体に含まれる導電性充填剤の量が少なくても充分な放射ノイズ遮蔽効果をあげることができる。よって、基体を、主として有機高分子からなるものとできる。また、所望の特性を有する有機高分子を選択して用いることができる。
したがって、可撓性、堅牢性と電磁波ノイズ抑制特性と電磁波遮蔽特性とを兼ね備え、伝導ノイズ、放射ノイズ、電磁結合を良好に抑制する電磁波ノイズ抑制体が提供される。
本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体においては、複合層が電子部品、回路自体から発生する伝導ノイズを抑制し、導電体層が電子部品外部の基板等からの放射ノイズを遮蔽し、不要輻射の反射による電磁結合の増大化を抑制する。
第二の電磁波ノイズ抑制体においても、複合層が軽量で薄いものとなる。また、導電体層の構成が特に限定されないので、導電体層を、軽量で薄いものとすることも容易である。よって、軽量で薄く、可撓性、堅牢性と電磁波ノイズ抑制特性と電磁波遮蔽特性とを兼ね備え、伝導ノイズ、放射ノイズ、電磁結合を良好に抑制する電磁波ノイズ抑制体が提供される。
本発明の第一、第二の電磁波ノイズ抑制体は種々の電子機器において使用され、電子機器における電磁波のシールド機能である遮蔽効果をもち、かつ電磁波の反射による電磁結合による障害を抑制することができる。このような電子機器としては、信号を発信、受信あるいは受発信する機器であればどのような電子機器も対象となる。したがって、高周波化、高密度化が要求される電子機器の不要ノイズならびに自家電磁波中毒を抑制でき、薄くて軽く、可撓性を有し、堅牢な電磁波ノイズ抑制体として優れている。
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、電子機器のハウジング内部に貼り付けて使用することも可能であるが、電磁波ノイズ抑制体を、電子部品、あるいは電子部品の配備された配線基板(基板)表面を直接被覆するように配置することにより、当該電子部品およびこれが接触する回路に起因する伝導ノイズを抑制するとともに、当該電子部品以外の電子回路、当該電子部品の配備された基板以外の基板、電子部品等から発生する放射ノイズを遮蔽することができる。さらには、導電体層を備えた本発明の電磁波ノイズ抑制体を配線基板間に挿入しても、上記複合層を有することにより、不要輻射の反射による電磁結合の増大化は抑制される。
また、その他の機能性充填剤が含有された有機高分子を基体とした電磁波ノイズ抑制体において、熱伝導性の充填剤が含有されたものでは、高密度化される電子機器の放熱機能と、電磁波抑制機能とを兼ね備えたものとなる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例において、基体の剪断弾性率は、基体材料を試料として用い、JIS K−6254に準拠して常温で測定した。
<実施例1>
図1に示す電磁波ノイズ抑制体を下記条件で作製した。
(導電性充填剤および誘電体粉末の分散された基体)
平均粒径1μmのチタン酸バリウムからなる誘電体粉末15vol%と、平均粒径3.5μmの燐片状銀粉からなる導電性充填剤30vol%を分散添加したシリコーンゴムを調製し、これを基体材料(常温の剪断弾性率8.3×10Pa、常温の炭酸ガス透過率2.1×10−7[cm(STP)/(cm×sec×cmHg)、湿式シリカ含有、]とした。
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持フィルム(常温での剪断弾性率3.8×10Pa)の上に、上記で得た基体材料を塗布し、厚み10μmの基体を設けた。
(複合層)
前記基体表面に、膜厚換算で30nmのFe−Ni系軟磁性体金属をスパッタして複合層を形成させ、電磁波ノイズ抑制体を得た。スパッタは、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により、基体温度を常温に保ち、8eVの粒子エネルギーを持つようにわずかにバイアス電圧を印加して行った。
得られた電磁波ノイズ抑制体の表面抵抗を直流4端子法で測定したところ2×10Ω/□であり、電磁波ノイズ抑制体の総厚みは19μmであった。
<実施例2>
図4に示す電磁波ノイズ抑制体を下記条件で作製した。
(導電体層)
9μm厚みのポリイミド(PI)フィルムからなる支持フィルム上に、45nm厚みでCu金属を、及び80nm厚みでNi金属を、対向ターゲットマグネトロンスパッタ法により物理蒸着させて金属層を形成し、表面抵抗0.2Ω/□(4端子法)の導電体層を作製した。
(基体)
次いで、この導電体層の金属成膜面上に、導電性充填剤を含まない以外は実施例1と同様の基体材料(常温の剪断弾性率6.5×10Pa、常温の炭酸ガス透過率2.3×10−7[cm(STP)/(cm×sec×cmHg)、湿式シリカ含有]を塗布し、10μm厚みの基体を形成した。
(複合層)
前記基体の表面に、膜厚換算で50nmの、Ni金属からなる強磁性体を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により、100eVの粒子エネルギーを持つようにバイアス電圧を印加してスパッタし、表面抵抗6×10Ω/□の総厚み19.125μmである電磁波ノイズ抑制体を得た。
<実施例3>
実施例1の基体材料から導電性充填剤および誘電体粉末の分散添加を除いたシリコーンゴム(常温の剪断弾性率1.2×10Pa、常温の炭酸ガス透過率2.2×10−7[cm(STP)/(cm×sec×cmHg)、湿式シリカ含有]を用いて基体を形成した以外は、実施例2と同様の電磁波ノイズ抑制体を得た。
<実施例4>
(導電体層)
支持フィルムを設けず、金属線編組体である平織り165メッシュのSUS網(線径0.05mmΦ、目開き0.104mm、空隙率 43.9%)を導電体層とした。
(基体)
次いで、この導電体層の金属編組体に、実施例2と同様の基体材料を用いて10μm厚みの基体を設けた。
(複合層)
実施例2と同様のスパッタを前記基体の表面に行い、総厚み110μmである電磁波ノイズ抑制体を得た。
<比較例1>
実施例1の基体材料から導電性充填剤および誘電体粉末の分散添加を除いたシリコーンゴム(常温の剪断弾性率1×10Pa、常温の炭酸ガス透過率2.2×10−7[cm(STP)/(cm×sec×cmHg)、湿式シリカ含有]のみを用いて基体を形成し、複合層の形成を実施例1と同様に行い、導電体層を有していない電磁波ノイズ抑制体とした。
<比較例2>
表面を酸化させ不導体膜を形成させた扁平状Fe−Ni系軟磁性金属粉(平均粒径15μm、アスペクト比65)94質量部に、ポリウレタン樹脂5質量部、硬化剤としてイソシアネート化合物1質量部、溶剤(シクロヘキサンとトルエンの1:1混合物)30質量部を加えたペーストを調製した。このペーストを、金属線編組体である平織り165メッシュのSUS網(線径0.05mmΦ、目開き0.104mm、空隙率 43.9%)に、乾燥後の厚みが510μmとなるようにバーコート法で塗布して機能層を形成し、充分に乾燥させた。その後、真空プレスし、85℃で24時間キュアリングして、機能層の膜厚500μmで、総厚み1,120μmの電磁波ノイズ抑制体とした。
<比較例3>
金属箔として厚み100μmの銅箔を、そのまま後述の評価に供した。
(評価)実施例において、評価は下記条件で行った。
・断面観察:日立製作所製 透過型電子顕微鏡H9000NARを用いた。
・電磁波の伝導ノイズ特性:キーコム製 近傍界用電磁波ノイズ抑制測定装置を用いて、マイクロストリップライン(MSL)法によるS11(反射減衰量)とS21(透過減衰量)を測定した。また、そのパワーロス値を評価した。
なお、パワーロス値は、電磁波ノイズ抑制機能の反射・透過特性の総合的な指標であって、次式で求められ、0〜1の値をとる。伝送特性のS11とS21の変化を図8のようにして調べて、パワーロス値を次式より求めた。
パワーロス値(Ploss/Pin)=1−(│Γ│+│Τ│
S11=20log│Γ│
S21=20log│Τ│
ネットワークアナライザーとしては、アンリツ製 ベクトルネットワークアナライザー37247Cを用い、50Ωのインピーダンスを持つマイクロスプリットラインのテストフィクスチャーとしては、キーコム製のTF−3Aを用いた。
・電磁波の放射ノイズ特性:キーコム製のΦ2mm(2mm径)のマイクロループを用い近傍界用電磁反射ノイズ特性をマイクロループアンテナ法によって、内部減結合率および相互結合率をアドバンテスト(ADVANTEST)社製 スペクトラムアナライザー R3132を用いて測定した。
結果のまとめを表1に、マイクロストリップライン(MSL)法による伝導ノイズ特性(S11、S21)とパワーロス特性を図8から図19に、マイクロループ法による放射ノイズの減衰特性(内部減結合レベル、相互減結合レベル)を図20と図21に示す。
Figure 2005251918
実施例1〜4の電磁波ノイズ抑制体は、基体の一部と強磁性体とが一体化した複合層を有し、マイクロストリップライン法による伝導ノイズ評価において、特には、透過減衰量が、−3.93〜−5.29dB(at 1GHz)と大きな減衰特性を有するものであった。パワーロス値においても、0.45以上(at 1GHz)の性能を発現していた。比較例2の構成物において、機能層が500μmほどの厚みを要しても透過減衰量が−2.29(at 1GHz)であることと比較しても、実施例の電磁波ノイズ抑制体は、薄くて特異的に大きな減衰が見られるものであった。
また、マイクロループアンテナ法による放射ノイズ評価においては、比較例3の金属箔においては内部結合レベルで、アンテナや共振の現象により放射ノイズが助長され、プラス側の値を示すのに対し、本発明に係る実施例1〜4の電磁波ノイズ抑制体では、−3.0〜−6.5dB(at 0.8GHz)と抑制機能を発現していることが示されている。また、実施例1〜4のノイズ抑制体は、相互減結合レベルにおいて、比較例1の、導電充填剤、導電体層を有していない電磁波ノイズ抑制体と比較して、−15.9〜−26.5dB(at 0.8GHz)の電磁波遮蔽特性を示している。
以上実施例より、実施例の電磁波ノイズ抑制体は、電磁波のシールド機能である遮蔽効果を有すると共に、近傍界における電磁波の伝導ノイズ及び放射ノイズを抑制する機能を兼ね備えていることが示された。
また、電子機器のハウジング内部に添付したり、電子部品あるいは電子部品の配備された配線基板(基板)表面を直接被覆することが可能な可とう性を有し、薄型化して配線基板間に挿入した場合においても、放射や反射による電磁結合の増大化を抑制できることが示された。
本発明の第一の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す概略断面図。 複合層の近傍の一例を示す電子顕微鏡写真(SEM像)。 複合層の近傍の一例を示す模式図。 本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す概略断面図。 本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図。 本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図。 本発明の第二の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図。 実施例1の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 実施例1の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 実施例2の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 実施例2の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 実施例3の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 実施例3の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 実施例4の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 実施例4の電磁波ノイズ抑制体における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 比較例1における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 比較例1における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 比較例2における、伝導ノイズの反射減衰量の周波数特性を示すグラフ。 比較例2における、伝導ノイズのパワーロス値の周波数特性を示すグラフ。 実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3の電磁波ノイズ抑制体をマイクロスループ法で測定した放射ノイズの内部減結合率のレベルを示すグラフ。 実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3の電磁波ノイズ抑制体をマイクロスループ法で測定した放射ノイズの相互減結合率のレベルを示すグラフ。
符号の説明
5 強磁性体
10 電磁波ノイズ抑制体
12 基体
14 複合層
16 導電体層
32 導電性充填剤

Claims (11)

  1. 有機高分子及び導電性充填剤を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層とを有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
  2. 前記導電性充填剤が、金属粉、金属繊維、金属被覆微粒子、カーボン微粒子、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種類の導電性微粉末からなることを特徴とする請求項1に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  3. 有機高分子を含む基体と、該基体の一部と強磁性体とが一体化してなる複合層と、導電体層とを有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
  4. 前記導電体層が、金属箔、金属繊維布、導電繊維布、金属線編組体、導電繊維編組体、導電性充填剤の分散された有機高分子層、及び導電性フィルムから選ばれることを特徴とする請求項3に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  5. 前記導電性フィルムは、支持フィルムと、該支持フィルムに金属が物理蒸着されてなる厚み5〜500nmの金属層とからなることを特徴とする請求項4に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  6. 支持フィルムへの金属の物理蒸着が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法によることを特徴とする請求項5に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  7. 前記基体は、誘電体粉末を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電磁波ノイズ抑制体。
  8. 前記誘電体粉末が、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミックから選ばれる少なくとも1種類の誘電体粉末からなることを特徴とする請求項7に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  9. 前記複合層は、前記基体に強磁性体が物理蒸着されてなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の電磁波ノイズ抑制体。
  10. 基体への強磁性体の物理蒸着が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法によることを特徴とする請求項9に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  11. 前記基体の剪断弾性率は、1×10〜5×1010Paであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の電磁波ノイズ抑制体。

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