JP2005327853A - 電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法 - Google Patents

電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法 Download PDF

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貴司 権田
Hajime Tsujiha
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Abstract

【課題】 省スペースで軽量であって、伝導ノイズおよび放射ノイズの両方を抑制し、電子機器等への対策作業が簡便で、使いやすい電磁波ノイズ抑制体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 基体樹脂層2と、基体樹脂層2の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層3と、線状導電体を含む変換層4とを有する電磁波ノイズ抑制体;または線状導電体および基体樹脂を含む変換層と、変換層の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層とを有する電磁波ノイズ抑制体;および、基体樹脂層または変換層に強磁性体を物理的蒸着させて、基体樹脂層または変換層表面に複合層を形成する蒸着工程を有する電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法に関する。
近年、インターネット利用の普及に伴い、パソコン、情報家電、無線LAN、ブルートゥース、光モジュール、携帯電話、携帯情報端末、高度道路情報システムなど、準マイクロ波帯(0.3〜10GHz)の高いクロック周波数を持つCPUや高周波バスを利用した電子機器、電波を利用した情報通信機器が普及してきており、高速デジタル化と低電圧駆動化によるデバイスの高性能化を必要とするユビキタス社会が訪れてきている。しかしながら、これら機器の普及に伴って、これら機器から放射される電磁波がもたらす、自身あるいは他の電子機器への誤作動、人体への影響などといった電磁波障害が問題とされてきている。そのため、これら機器には、自身あるいは他の電子機器や、人体に影響を与えないように、不要な電磁波をできるだけ放出しないこと、および外部から電磁波を受けても誤作動しないことが求められている。このような電磁波障害を防止する方法としては、電磁波遮蔽材、すなわち電磁波を反射する電磁波シールド材あるいは電磁波を吸収する電磁波吸収材を利用する方法がある。
電磁波障害を防止するために、電子機器間においては、電子機器の筐体表面や電子機器間に電磁波遮蔽材を設けて電磁波を遮蔽する対策(inter−system EMC)が行われており、また、電子機器内においては、電子部品や回路が互いに影響を及ぼして誤作動を起こすのを抑制したり、処理スピードの遅れや信号波形の乱れを抑制したりするため、電子部品や回路を電磁波遮蔽材で覆う対策(intra−system EMC)が行われている。特に、電子機器内のような近傍界での環境においては、電磁波ノイズ発生源である電子部品そのものに電磁波遮蔽材による対策を施し、回路などの導体を伝搬している伝導ノイズから電磁波ノイズ(放射ノイズ)が放射される前に、伝導ノイズを吸収し、電磁波ノイズの発生を抑制すること、あるいは信号間の干渉を抑制し伝送特性を向上させることが、求められて来ている(micro EMC)。
また、電子機器、電子部品にも、高性能化、小型化、軽量化が求められており、これらに用いられる電磁波遮蔽材にも同様に、準マイクロ波帯のように高い周波数帯域における電磁波ノイズ抑制効率がよく、省スペースで軽量であって、対策の作業が簡便で行いやすいものが求められている。
電磁波遮蔽材の一つとしては、導電性材料からなる導電性線分パターンと、金属薄膜などの電磁波シールド能力を有する電磁波シールド層と、これらの間に設けられた絶縁性中間材とからなる電磁波吸収シールド材が知られている(特許文献1)。この電磁波吸収シールド材は、具体的には、厚さ0.1mmのアルミ蒸着パターンフィルムと厚さ0.3mmのアルミ板とを厚さ2mmのPP発泡シートを介して貼り合わせた総厚2.4mm強のものである(特許文献1の実施例参照)。
また、電磁波遮蔽材としては、金属からなる電波反射層と、バインダー中にコイル状カーボンとフェライトなどの磁性材料粉末(平均粒径が1〜80μm)とが分散した電磁波吸収層とを有する電磁波吸収材料が知られている(特許文献2)。この電磁波吸収材料は、具体的には、0.1mmのアルミニウムからなる電波反射層を除いて、厚さ0.72mm〜2.25mmのものであり(特許文献2の実施例参照)、従来の電磁波吸収材料に用いられていたフェライト粉などの比重の大きい吸収材料の使用を抑え、コイル状カーボンとの複合により軽量化を図るものとされている。
特許文献1に記載の電磁波吸収シールド材は、導電性線分パターンの線分の長さを対象とする電磁波の波長の半分以上にしなければならない。したがって、この電磁波吸収シールド材を電子部品など小型のものに適用する場合には、導電性線分パターンの線分を細くし、かつ線分間距離を狭くして、導電性線分パターンを微細化する必要がある。しかしながら、導電性線分パターンを微細化するには困難を伴うという問題があった。また、電子機器、電子部品などに適用する場合においては、電磁波吸収シールド材の設置スペースに限りがあるため、厚さ2.4mm強の電磁波吸収シールド材は、厚すぎて用いることができなかった。また、電子機器、電子部品などに適用する場合においては、電子部品の形状や配置の形状に合わせて、電磁波吸収シールド材をトリミングする必要が急に生じることがある。このような場合、導電性線分パターンを分断することとなり、吸収性能が安定しない。それ故、電子機器などの複雑でかつ小型の形状にあわせて用いることは、困難であった。また、金属膜による反射性が強く、シールド特性の著しい電磁波吸収シールド材は、伝送特性の改善効果を期待して、ノイズ源との距離が対象の電磁波の周波数の波長以下である近傍界で使用した場合、ほとんどが反射損失となり、伝送特性の改善効果は小さく、すなわわち、伝導ノイズ抑制効果が小さく、電子機器、部品への適用には向かなかった。
特許文献2に記載の電磁波吸収材料は、コイル状カーボンの比重が小さいため使用量が増せば、軽量化の効果は上がるものの、依然として、電波反射層の金属、および電磁波吸収層に用いられる磁性材料が必要であるため、軽量化および薄膜化に限界があった。また、金属板(箔)による反射は99%以上と強く、特許文献1に記載の電磁波吸収シールド材と同様に、近傍界での使用では反射による「自家中毒」現象、すなわち電磁波吸収材料によって反射された、電子機器等の自らの放射ノイズによる誤動作が生じ、特に伝送特性の改善効果は低く、電子機器、部品への適用には向かないものである。また、10GHz以上の電磁波に対する、遠方界での電磁波吸収特性は認められるが、10GHzよりも低域の準マイクロ波帯の電磁波に対する、近傍界での電磁波吸収特性は不十分であった。
特開平9−148780号公報 特開2000−232295号公報
よって本発明の目的は、省スペースで軽量であって、準マイクロ波帯のように高い周波数帯域において、空中を伝搬している放射ノイズはもとより、回路などの導体を伝搬している伝導ノイズをも抑制し、また電子機器等への対策作業が簡便で、使いやすい電磁波ノイズ抑制体、およびその製造方法を提供することにある。
上記状況に鑑み、本発明者らは、量子効果があるとされる、強磁性体の原子状態での樹脂との複合化を検討したところ、強磁性体が原子状態で樹脂と複合化してなる複合層が、体積あたりの伝導ノイズ抑制効率が高いことを見出した。さらに、この複合層と線状導電体とを組み合わせたものは、線状導電体が空中を伝搬している電磁波エネルギーを吸収し、電流にモード変換することにより、放射ノイズを伝送線路に伝わる伝導ノイズとしてから複合層によって抑制できることを見出し、軽量で、省スペースの電磁波ノイズ抑制体を開発した。
すなわち、本発明の電磁波ノイズ抑制体は、基体樹脂と強磁性体とが一体化した複合層と、線状導電体を含む変換層とを有することを特徴とするものである。
ここで、前記複合層は、基体樹脂に強磁性体を物理的に蒸着させてなる層であることが望ましい。
また、前記線状導電体は、カーボン化合物であることが望ましく、このカーボン化合物は、コイル状のものであることが望ましい。
また、前記基体樹脂は、架橋性樹脂であることが望ましい。
さらに、一層の複合層の厚さは、10〜200nmであることが望ましい。
そして、複合層の厚さと変換層の厚さとの合計は、1〜500μmであることが望ましい。
本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法は、基体樹脂を含む基体樹脂層と、基体樹脂層の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層と、線状導電体を含む変換層とを有する電磁波ノイズ抑制体の製造方法であって、基体樹脂層に強磁性体を物理的蒸着させて、基体樹脂層表面に複合層を形成する蒸着工程を有することを特徴とする。
また、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法は、線状導電体および基体樹脂を含む変換層と、変換層の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層とを有する電磁波ノイズ抑制体の製造方法であって、変換層に強磁性体を物理的蒸着させて、変換層表面に複合層を形成する蒸着工程を有することを特徴とする。
前記蒸着工程においては、基体樹脂のせん断弾性率を1×104 〜1×108 Paとすることが望ましい。
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、省スペースで軽量であって、準マイクロ波帯のように高い周波数帯域において、空中を伝搬している放射ノイズはもとより、回路などの導体を伝搬している伝導ノイズをも抑制し、また電子機器等への対策作業が簡便で、使いやすい。このような電磁波ノイズ抑制体は、小型化している電子機器、電子部品に好適に用いることができる、
また、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法によれば、本発明の電磁波ノイズ抑制体を生産性よく得ることができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
<形態例1>
図1は、本発明の電磁波ノイズ抑制体の一形態例を示す断面図である。この電磁波ノイズ抑制体1は、基体樹脂を含む基体樹脂層2と、強磁性体がナノオーダーで基体樹脂層2の基体樹脂の一部と一体化した複合層3と、複合層3に隣接する、線状導電体を含む変換層4からなるものである。なお、図2に示す電磁波ノイズ抑制体10のように、複合層3と変換層4との間に接着剤層5が設けられていてもよい。
(複合層)
複合層3は、具体的には、基体樹脂層2に強磁性体を物理的に蒸着させてなる層であり、物理的に蒸着された強磁性体が均質膜を形成することなく基体樹脂中に分散しているものである。
より具体的には、複合層3は、図3の複合層断面の高分解能透過型電子顕微鏡像や、電子顕微鏡像の模式図である図4に示すように、強磁性体が原子状となって、基体樹脂の分子と混ぜ合わせられた状態になって構成されている。
複合層3は、非常に小さな結晶として数Å間隔の強磁性体原子が配列された結晶格子6が観察される部分と、非常に小さい範囲で強磁性体が存在しない基体樹脂7のみが観察される部分と、強磁性体原子8が結晶化せず基体樹脂7中に分散して観察される部分からなっている。すなわち、強磁性体が明瞭な結晶構造を有する微粒子として存在を示す粒界は観察されず、ナノオーダーで強磁性体と基体樹脂とが一体化した複雑なヘテロ構造を有しているものと考えられる。
理論的には明らかではないが、この様なヘテロ構造が、量子効果や、材料固有の磁気異方性、形状磁気異方性、あるいは外部磁界による異方性などに関係するため、複合層3の伝送特性に及ぼす効果は、後述のマイクロストリップラインおよびネットワークアナライザを用いた測定システムでSパラメータを測定し、伝導ノイズ抑制効果の一つ指標であるロス電力比で表すと、おおよそ0.4以上の大きな値となる。
すなわち、複合層3は、導電体中を流れる伝導ノイズを、効率よく抑制することができる。
ここでロス電力比は、次式で求められ、0〜1の値をとり、伝送特性のS11とS21の変化を調べることにより求めることができる。
ロス電力比(Ploss/Pin)=1−(│Γ│2+│Τ│2
S11=20log│Γ│
S21=20log│Τ│
ここで、Γは反射係数、Τは透過係数を表す。
複合層3の厚さは、10〜200nmであることが好ましい。ここで、複合層3の厚さは、基体樹脂の表層に強磁性体原子が浸入した深さであり、強磁性体の蒸着質量、樹脂材質、物理的蒸着の条件などに依存する。複合層3の厚さを10nm以上とすることにより、十分な伝導ノイズ抑制効果を発揮させることができる。一方、複合層3の厚さが200nmを超えると、均質な強磁性体膜が形成され、厚さに対する伝導ノイズ抑制効果も小さくなり、実効的ではない。
(基体樹脂層)
基体樹脂層2の基体樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリレートなどの樹脂や、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの非ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよく、その未硬化物であってもよい。また、上述の樹脂、ゴムなどの変性物、混合物、共重合物であってもよい。
中でも、基体樹脂への強磁性体原子の入り込みやすさの点で、後述する強磁性体の物理的蒸着に際してそのせん断弾性率が低いものが好ましく、具体的には、せん断弾性率が1×104 〜1×108 Paのものが好ましい。所望のせん断弾性率にするために、必要に応じて、例えば100〜300℃に基体樹脂を加熱することもできるが、分解や蒸発が起きない温度に加熱することが必要である。常温で物理的蒸着を行う場合には、厚さ等の条件にもよるが、樹脂としては、ゴム硬度が約90°(JIS−A)以下の弾性体が好ましい。
また、基体樹脂としては、前記したヘテロ構造を維持する点から、強磁性体の物理的蒸着操作の後には、せん断弾性率が高いものが好ましい。強磁性体の物理的蒸着の後に基体樹脂のせん断弾性率を高くすることにより、ナノオーダーの強磁性体原子あるいはクラスターが凝集して結晶化し、微粒子に成長することを確実に抑えることができる。具体的には、電磁波ノイズ抑制体が使用される温度範囲で、1×107 Pa以上のものが好ましい。所望のせん断弾性率にするために、強磁性体の物理的蒸着操作の後に基体樹脂を架橋することが好ましい。
この点においては、基体樹脂としては、蒸着時には低弾性率であり、蒸着後に架橋して弾性率を挙げることができることから、熱硬化性樹脂、エネルギー線(紫外線、電子線など)硬化性樹脂等の架橋性樹脂が好適である。
また、強磁性体原子が入り込みやすい分子間空隙の広さを示す指標として、ガス透過率を用いることができる。本来であれば、前記した強磁性体原子の大きさと同等のアルゴンガス、クリプトンガスの透過率によって基体樹脂の分子間空隙を確認することが好ましいが、これらガスはガス透過率の測定には一般的でないため、例えば炭酸ガスの透過率データで代用することができる。常温における炭酸ガス透過率の大きな樹脂としては、炭酸ガス透過率が1×10-9[cm3 (STP)cm/(cm2 ×s×cmHg)]以上のポリフェニレンオキサイド、ポリメチルペンテン、ナイロン11、ハイインパクトポリスチレンなどのゴム成分と他の成分との混合物や共重合物、1×10-8[cm3 (STP)cm/(cm2 ×s×cmHg)]以上のポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。中でも、せん断弾性率の点から、シリコーンゴムなどのゴム類は特に好ましい。
また、基体樹脂としては、強磁性体原子の酸化を防止する観点からは、酸素透過性の低い樹脂が好ましく、酸素透過率が1×10-10 [cm3 (STP)cm/(cm2 ×s×cmHg)]以下のポリエチレン、ポリトリフルオロクロロエチレン、ポリメチルメタクリレートなどや、さらには1×10-12 [cm3 (STP)cm/(cm2 ×s×cmHg)]以下のポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
さらに、プラズマ化あるいはイオン化された強磁性体原子が、基体樹脂と一部反応し、安定化するように、基体樹脂にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ノニオン系界面活性剤、極性樹脂オリゴマーなどを配合してもよい。このような添加剤を配合することにより、酸化防止のほか、原子の凝集によるところの均質膜の形成を防止して、均質膜による電磁波の反射を防止し、吸収特性を改善することができる。
このほか、基体樹脂に、補強性フィラーや難燃剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、チクソトロピー性向上剤、可塑剤、滑剤、耐熱向上剤などを適宜添加して構わないが、硬質なものを配合すると、強磁性体原子がこれに衝突し、十分な分散が行われないことがあるので、注意が必要である。このほか、さらに強磁性体を蒸着後、さらに酸化ケイ素や窒化ケイ素の蒸着を施して、対環境特性を改善することも可能である。
基体樹脂層2の厚さは、おおよそ2〜500μmとされるが、強度が不足する場合は、別の樹脂フィルムなどの支持体で補強し、ハンドリング性を向上させることもできる。
樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーなどが挙げられる。
(変換層)
変換層4は、線状導電体を含むものであり、線状導電体が空中を伝搬している電磁波エネルギーを吸収して電流にモード変換し、線状導電体中に電磁波によって励起される高周波電流を起こさせることによって、放射ノイズを伝送線路に伝導する伝導ノイズとし、この伝導ノイズを、一部を線状導電体の抵抗により発熱損失させつつ、先の複合層3により効率的に抑制する作用をもたらすものである。
変換層4としては、例えば、(i)樹脂の表面に、線状導電体として導電性材料からなるパターンを形成したもの、(ii)樹脂中に、線状導電体として繊維状導電体を分散させたもの、などが挙げられる。
導電性材料からなるパターンは、例えば、渦巻状で、線長が対象とする電磁波の波長の1/4以上であればよい。広帯域な電磁波を対象とする場合は、線長の異なったパターンを複数用意し、これらパターンを基体樹脂表面に間隔をあけて(絶縁状態で)配置してもよく、これらパターンを薄膜の絶縁層を介して積層してもよい。ここで、絶縁層を複合層3とすれば、線状導電体と複合層3との距離が近くなり、複合層3による伝導ノイズ抑制効率が高まるので好ましい。
導電性材料からなるパターンとしては、例えば、図5に示すような渦巻状パターン、図6に示すような蛇腹状のパターンが挙げられる。なお、これらのパターンは単なる例示であって、本発明における導電性材料からなるパターンは、これらに限定されるものではない。
導電性材料からなるパターンの形成には、既存の常法を用いることができる。パターンの形成方法としては、金属粒子を配合した導電性ペーストをスクリーン印刷、転写印刷等で形成する方法;蒸着、圧延、電解メッキなどで形成された銅箔などの金属箔をフォトリソグラフ法でマスキングし、余分な部分を除去して形成する方法;還元銀の超微粒子を分散剤で安定化したナノペーストを用い、インクジェット印刷やナノプリント印刷などにより形成する方法などが挙げられる。後段の方法ほど、微細なパターンを形成することができるので、小さいサイズのパターンあるいは長い波長を対象としたパターンの形成に用いることができる。
導電性材料からなるパターンを周波数の低い電磁波に対応させる場合、十分な長さを持つパターンをスペースの制約から形成できないことがあるため、変換層4としては、樹脂に繊維状導電体を分散させたものが好適である。
繊維状導電体としては、金属繊維;導電性セラミックスの繊維、ウィスカー;絶縁性繊維状物にメッキを施したもの;カーボン繊維などの有機繊維の炭化物、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどのカーボン化合物が挙げられる。中でも、放射ノイズを反射して他の部分に影響を及ぼすことのないように、導電性が高くなく適当な、カーボン化合物が好ましい。カーボン化合物の中でも、カーボンマイクロコイルなどのコイル状のカーボン化合物は、電磁誘導により電磁波を効率よく高周波電流に変換することができ、さらに好ましい。
繊維状導電体のサイズは、長さ1〜3000μm、繊維径1nm〜50μmである。コイル状の場合は、コイル長さが長く、コイル径が大きく形成されると低周波領域の吸収が可能であり、おおよそコイル長1〜1000μm、コイル径10nm〜200μmとされる。カーボンマイクロコイルは、アセチレンを金属触媒および不純物ガスの存在下で熱分解することによって得られるものである。低周波領域への広帯域化のために、カーボンマイクロコイルとして、ガスをプラズマ処理により活性化させることにより得られる一重螺旋構造のものを使用することもできる。
繊維状導電体が樹脂に分散された変換層4は、例えば、以下のようにして形成することができる。
まず、樹脂を溶融あるいは溶解し、これに既存の混合装置を用いて繊維状導電体を混合する。混合の際のせん断力が大きいと繊維状導電体の繊維形状を破壊することがあるので注意が必要である。ついで、得られた混合物を、カレンダー加工、押し出し加工、コーティング加工、スクリーン印刷加工などによりシート状など所望の形状にする。
繊維状導電体の配向方向は、放射ノイズを効率よく抑制するため、複合層3の面に平行にすることがよく、通常は、変換層4の面に平行となるように設ければよい。樹脂への線状導電体の充填率は、0.1〜50体積%とされる。また、変換層4の厚さは、線状導電体の種類によって異なるが、おおよそ1〜100μmであり、複数の変換層4を用いた場合でも、変換層の総厚は100〜500μmとすることが、省スペースの点から求められる。
変換層4に用いられる樹脂としては、上述の基体樹脂と同様のものを用いることができる。
(電磁波ノイズ抑制体の製造方法)
電磁波ノイズ抑制体1は、基体樹脂層2に強磁性体を物理的蒸着させて、基体樹脂層2表面に複合層3を形成し(蒸着工程)、これに変換層4を必要に応じて接着剤層5を介して積層することにより製造することができる。
まず、物理蒸着法(PVD)の一般的な説明を行う。
物理蒸着法は、一般に、真空にした容器の中で蒸発材料を何らかの方法で気化させ、気化した蒸発材料を近傍に置いた基板上に堆積させて薄膜を形成する方法であり、蒸発物質の気化方法の違いで、蒸発系とスパッタ系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティングなどが挙げられ、スパッタ系としては、高周波スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングなどが挙げられる。
EB蒸着は、蒸発粒子のエネルギーが1eVと小さいので、基板のダメージが少なく、膜がポーラスになりやすく、膜強度が不足する傾向があるが、膜の固有抵抗は高くなるという特徴がある。
イオンプレーティングによれば、アルゴンガスや蒸発粒子のイオンは加速されて基板に衝突するため、EBよりエネルギーが大きく、粒子エネルギーは1KeVほどになり、付着力の強い膜を得ることはできるものの、ドロップレットと呼んでいるミクロンサイズの粒子の付着を避けることができず、放電が停止してしまうおそれがある。
マグネトロンスパッタリングはターゲット(蒸発材料)の利用効率が低いものの、磁界の影響で強いプラズマが発生するため成長速度が速く、粒子エネルギーは数十eVと高いのが特徴である。高周波スパッタリングでは絶縁性のターゲットを使用することもできる。
マグネトロンスパッタリングのうち対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングは、対向するターゲット間でプラズマを発生させ、対向するターゲットの外に基板を置き、プラズマダメージを受けることなく所望の薄膜を生成する方法である。そのため、基板上の薄膜を再スパッタすることなく、成長速度がさらに速く、スパッタされた原子が衝突緩和することがなく、緻密なターゲット組成物と同じ組成のものを生成することができ、通常8eV以上まで蒸発粒子のエネルギーを上げることができる。
以上の物理蒸着法の中でも、本発明の電磁波ノイズ抑制体の製造方法においては、次の理由から、イオンプレーティング、マグネトロンスパッタ、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法が好ましく、特に対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法が好適である。
樹脂の共有結合エネルギーは約4eVであり、具体的には例えばC−C、C−H、Si−O、Si−Cの結合エネルギーはそれぞれ3.6eV、4.3eV、4.6eV、3.3eVである。これに対して、イオンプレーティング、マグネトロンスパッタや対向ターゲット型マグネトロンスパッタでは、上述のように蒸発粒子は高いエネルギーを持っているので、基体樹脂の一部の化学結合を切断し、衝突する。
したがって、本発明においては、基体樹脂の弾性率が十分小さいと、強磁性体を基体樹脂に蒸着させた際、基体樹脂の分子が振動、運動し、強磁性体原子と基体樹脂との局部的なミキシング作用が生じて、基体樹脂の表面からおおよそ0.01〜0.3μm程度まで進入し、均質な強磁性体膜ではなく、ヘテロ構造を有した複合層3が形成される。
粒子エネルギーが5eV以上である強磁性体原子を基体樹脂に物理的に蒸着させると、一度に大量の強磁性体を基体樹脂中に分散させることができるので好ましい。すなわち、一度の蒸着で、強磁性体の質量を稼ぐことができることから、伝導ノイズ抑制効率の大きな電磁波ノイズ抑制体を容易に得ることができる。蒸着速度は基体樹脂の分子の振動や運動の速度が遅いことから、原子状の強磁性体とのナノスケールでの混合が容易に行えるように、小さいほうが好ましく、基体樹脂や強磁性体により異なるがおよそ60nm/min以下が好ましい。
蒸着工程において蒸発材料(ターゲット)として用いられる強磁性体としては、金属系軟磁性体および/または、酸化物系軟磁性体および/または、窒化物系軟磁性体が主に用いられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
金属系軟磁性体としては、鉄および鉄合金が一般的に用いられる。鉄合金としては、具体的にはFe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt合金を用いることができる。これら金属系軟磁性体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。鉄および鉄合金のほかに、コバルトやニッケルの金属あるいはそれらの合金を用いてもよい。ニッケルは、単独で用いた場合、酸化に対して抵抗力があるので好ましい。
酸化物系軟磁性体としては、フェライトが好ましい。具体的には、MnFe24、CoFe24、NiFe24、CuFe24、ZnFe24、MgFe24、Fe34、Cu−Zn−フェライト、Ni−Zn−フェライト、Mn−Zn−フェライト、Ba2Co2Fe1222、Ba2Ni2Fe1222、Ba2Zn2Fe1222、Ba2Mn2Fe1222、Ba2Mg2Fe1222、Ba2Cu2Fe1222、Ba3Co2Fe2441を用いることができる。これらのフェライトは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
窒化物系軟磁性体としては、Fe2N、Fe3N、Fe4N、Fe162などが知られている。これらの窒化物系軟磁性体は、透磁率が高く、耐食性が高いので好ましい。
なお、基体樹脂に強磁性体を物理的に蒸着させる際には、強磁性体はプラズマ化あるいはイオン化された強磁性体原子として基体樹脂に入り込むので、基体樹脂中に微分散された強磁性体の組成は、蒸発材料として用いた強磁性体の組成と必ずしも同一であるとは限らない。
強磁性体の蒸着質量は、強磁性体単品の膜厚換算値で150nm以下が好ましい。これより厚いと、基体樹脂の包含能力に達し、強磁性体が基体樹脂に分散できずに表面に堆積し、均質な導通性を有する連続した膜が生成してしまう。それゆえ、強磁性体の蒸着質量は、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。一方、伝導ノイズ抑制効果の点からは、強磁性体の蒸着質量は、0.5nm以上であることが好ましい。
ここで、蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基板上に同条件で強磁性体を蒸着し、堆積した厚さを測定することによって求められる。
蒸着質量が小さくなると、伝導ノイズ抑制効果が低減するものであるから、複合層3を複数層積層する、あるいは強磁性体を基体樹脂層2の両表面に蒸着することにより、総質量を増やすことができる。この総質量は要求される電磁波の抑制レベルにもよるが、おおよそ総合の膜厚換算値で10〜1000nmが好ましい。このほか、基体樹脂層2の片面に強磁性体を蒸着した後、さらにその上に同一あるいは異なる樹脂層を設け、複合層3を絶縁性樹脂で保護することも可能である。
<形態例2>
図7は、本発明の電磁波ノイズ抑制体の他の形態例を示す断面図である。この電磁波ノイズ抑制体20は、線状導電体および基体樹脂を含む変換層4と、強磁性体がナノオーダーで変換層4の基体樹脂の一部と一体化した複合層3とからなるものである。
変換層4と、複合層3が形成された基体樹脂層2とを図2に示すように接着剤剤層5を介して貼着しても構わないが、効率よく電磁波ノイズを抑制するためには、変換層4と複合層3との距離が短いほうがよい。したがって、図7に示すように、変換層4に強磁性体を直接、物理的に蒸着し複合層3を形成することは簡便でもあり特に好ましい。また、電子機器などに固定するための粘着剤層をさらに形成することも可能である。
(複合層)
複合層3は、具体的には、変換層4に強磁性体を物理的に蒸着させてなる層であり、物理的に蒸着された強磁性体が均質膜を形成することなく基体樹脂中に分散しているものである。
より具体的には、複合層3は、形態例1と同様に、強磁性体が原子状となって、基体樹脂の分子と混ぜ合わせられた状態になって構成されている。
複合層3の伝送特性に及ぼす効果は、形態例1と同様に、ロス電力比で表すと、おおよそ0.4以上の大きな値となる。
また、複合層3の厚さは、形態例1と同様に、10〜200nmであることが好ましい。
(変換層)
変換層4は、線状導電体および基体樹脂を含むものであり、線状導電体が空中を伝搬している電磁波エネルギーを吸収して電流にモード変換し、線状導電体中に電磁波によって励起される高周波電流を起こさせることによって、放射ノイズを伝送線路に伝導する伝導ノイズとし、この伝導ノイズを、一部を線状導電体の抵抗により発熱損失させつつ、先の複合層3により効率的に抑制する作用をもたらすものである。
変換層4としては、形態例1と同様に、(i)樹脂の表面に、線状導電体として導電性材料からなるパターンを形成したもの、(ii)樹脂中に、線状導電体として繊維状導電体を分散させたもの、などが挙げられる。
変換層4に用いられる基体樹脂としては、形態例1で例示された基体樹脂を用いることができる。
(電磁波ノイズ抑制体の製造方法)
電磁波ノイズ抑制体20は、変換層4に強磁性体を物理的蒸着させて、変換層4表面に複合層3を形成することにより製造することができる。
物理蒸着法としては、形態例1と同様の方法を採用することができる。また、強磁性体としては、形態例1と同様のものを用いることができる。
強磁性体の蒸着質量も、形態例1と同様の量とすればよい。
<作用>
以上説明した本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、理論的には完全に明らかになっていないが、基体樹脂と強磁性体とが一体化された複合層3が形成されているので、少ない強磁性体であっても、そのナノオーダーのヘテロ構造に由来する量子効果や、材料固有の磁気異方性、形状磁気異方性、あるいは外部磁界による異方性などの影響で、高い共鳴周波数体を持つ。これにより、優れた磁気特性を発揮し、少ない強磁性体であっても、高い周波数帯域において、伝導ノイズ抑制効果を発揮できているものと考えられる。
そのため、本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、少ない強磁性体であっても、伝導ノイズ抑制効果を発揮できるので、強磁性体の量を大幅に減らすことができ、軽量化を図ることができる。また、本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、複合層3の厚さが10〜200nmと極めて薄くても、十分な伝導ノイズ抑制効果が発揮できるので、電磁波ノイズ抑制体を薄型化、省スペース化を図ることができる。
さらに、強磁性体の量を大幅に減らすことができるので、強磁性体による基体樹脂の可撓性や強度の低下を最小限に抑えることができる。このような電磁波ノイズ抑制体は、十分な可撓性や強度を有するので、電子機器等への対策作業が簡便で、使いやすい。ここで、基体樹脂が架橋性樹脂であれば、硬化前においては磁性体が基体樹脂中により均一に分散し、硬化後においては、高温条件下で電磁波ノイズ抑制体を使用した場合でも、強磁性体が結晶化し、微粒子に成長することが抑えることができ、耐環境特性が向上するため、より好ましい
そして、本発明の電磁波ノイズ抑制体にあっては、変換層4を有しているので、変換層4の線状導電体が放射ノイズを伝送線路に伝導する伝導ノイズに変換し、この伝導ノイズを先の複合層3により効率的に抑制することができる。
このように、本発明の電磁波ノイズ抑制体は、準マイクロ波帯のように高い周波数帯域において、回路などの導体を伝搬している伝導ノイズおよび空中を伝搬している放射ノイズの両方を抑制することができる。
以下、実施例を示す。
(評価)
断面観察:
日立製作所製、透過型電子顕微鏡H9000NARを用いた。
伝導ノイズ抑制効果:
キーコム製近傍界用電波吸収材料測定装置を用い、Sパラメータ法によってS21(透過減衰量)およびS11(反射減衰量)を測定し、ロス電力比を求めた。具体的には、図8に示すように、50Ωのインピーダンスを持つマイクロストリップライン21が形成されたテストフィクスチャー22(キーコム製、TF−3A)と、マイクロストリップライン21に接続されたネットワークアナライザ23(アンリツ社製、ベクトルネットワークアナライザ、商品名:37247C)とを用い、テストフィクスチャー22上に、絶縁フィルム(図示略)を介してテストシート24を配置し、測定周波数1GHzでS21(透過減衰量)およびS11(反射減衰量)を測定した。
放射ノイズ抑制効果:
図9に示すように、2mmφのシールドループアンテナ41、41を、スペクトラムアナライザ42(アドバンテスト製、商品名:R3132)の入出力に接続し、シールドループアンテナ41、41をテストシート43の表面の同じ側に、テストシート43から0.1mmの間隔をあけて配置し、電磁波ノイズ抑制体の内部減結合率を測定した。
また、図10に示すように、テストシート43を挟むようにして、シールドループアンテナ41、41をアンテナ間の最小間隔が1mmとなるように配置し、電磁波ノイズ抑制体の相互減結合率を測定した。
(実施例1)
支持体である12μm厚のポリエーテルサルホンフィルム上に、基体樹脂であるエポキシ樹脂(硬化前の25℃のせん断弾性率8×106 Pa、硬化後の25℃のせん断弾性率2×109 Pa)を10μm厚で塗布し、支持体と硬化前の基体樹脂層とからなる積層フィルムを得た。積層フィルムの基体樹脂層上に、膜厚換算で40nmのFe−Ni系軟磁性金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により物理的に蒸着した。この際、基体樹脂層の温度を常温に保ち、蒸発粒子が8eVの粒子エネルギーを持つようわずかに負の電圧を印加し、窒素を25sccmで流しながら蒸着を行った。次いで、積層フィルムを40℃で6時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱し、さらに180℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させ、複合層を有する積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により複合層の断面を観察した。断表面観察結果を図3に示す。複合層の厚さは63nmであった。また、この積層フィルムについて伝導ノイズ抑制効果を確認した。S11は−7.7dB、S21は−5.2dBであり、ロス電力比が0.57の良好な伝導ノイズ抑制効果を確認した。
上記と同様のポリエーテルサルホンフィルム上に、可とう性エポキシ樹脂をバインダーとする銀カーボン塗料(銀とカーボンの質量比:7:3)を、表面抵抗が1000Ω/cm2 となるように全面コートし、硬化させ、銀カーボン塗膜を形成した。銀カーボン塗膜を、マスクスキャンタイプのYAGレーザーにて、図5に示すパターン(線幅0.3mm、外形寸法10×20mm2 )に加工し、導電性材料からなるパターンを8面有する積層フィルム(変換層)を得た。
次いで、これら積層フィルムを、複合層と導電性材料からなるパターンとが接するように貼着し、総厚65μmの図2に示す構造の電磁波ノイズ抑制体を得た。この電磁波ノイズ抑制体について、放射ノイズ抑制効果を確認した。1GHzでの内部減結合率は図11に示すように−2.1dBであり、相互減結合率は図12に示すように−6.1dBであった。結果を表1にまとめる。
(実施例2)
可とう性エポキシ樹脂をバインダーとし、カーボンナノチューブ(昭和電工製、商品名:VGCF)を15質量%含む塗料を、実施例1と同様のポリエーテルサルホンフィルム上にコートし、表面抵抗30Ω/cm2 の変換層を有する積層フィルムを得た。複合層を有する積層フィルムを実施例1と同様に準備し、これら積層フィルムを、複合層と導電性材料からなるパターンとが接するように貼着し、総厚65μmの電磁波ノイズ抑制体を得た。この電磁波ノイズ抑制体について、放射ノイズ抑制効果を確認した。1GHzでの内部減結合率は図11に示すように−2.8dBであり、相互減結合率は図12に示すように−4.4dBであった。結果を表1にまとめる。
(実施例3)
エポキシ樹脂(硬化前の25℃のせん断弾性率8×106 Pa、硬化後の25℃のせん断弾性率2×109 Pa)に、カーボンマイクロコイル(平均コイル長50μm)を14質量%配合した塗料を、乾燥膜厚が100μm厚になるようにポリエーテルサルホンフィルム(厚さ25μm)上にコートし、常温で減圧乾燥を行い未硬化の変換層を有する積層フィルムを得た。
次いで、この変換層上に、膜厚換算で20nmの鉄(純度99.99質量%)を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタ法により、蒸着速度0.05nm/秒で物理的に蒸着した。この際、変換層の温度を常温に保ち、窒素を50sccmで流しながら蒸着を行った。次いで、積層フィルムを40℃で6時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱し、さらに180℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させ、総厚125μmの電磁波ノイズ抑制体を得た。
得られた電磁波ノイズ抑制体の一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により複合層の断面を観察した。複合層の厚さは29nmであった。この電磁波ノイズ抑制体について、伝導ノイズ抑制効果および放射ノイズ抑制効果を確認した。S11は−5.1dB、S21は−6.1dBであり、ロス電力比が0.45の良好な伝導ノイズ抑制効果を確認した。また、1GHzでの内部減結合率は図11に示すように−6.9dBであり、相互減結合率は図12に示すように−7.1dBであった。結果を表1にまとめる。
(比較例1)
実施例1で得られた、導電性材料からなるパターンを有する積層フィルム(変換層)のみについて、伝導ノイズ抑制効果および放射ノイズ抑制効果を確認した。S11は−1.2dB、S21は−15.1dBであり、ロス電力比は0.21であった。また、1GHzでの内部減結合率は図13に示すように−0.8dBであり、相互減結合率は図14に示すように−7.2dBであった。結果を表1にまとめる。
(比較例2)
実施例2で得られた、変換層を有する積層フィルムのみについて、伝導ノイズ抑制効果および放射ノイズ抑制効果を確認した。S11は−8.2dB、S21は−3.5dBであり、ロス電力比は0.40であった。また、1GHzでの内部減結合率は図13に示すように−2.1dBであり、相互減結合率は図14に示すように−0.9dBであった。結果を表1にまとめる。
Figure 2005327853
本発明の電磁波ノイズ抑制体は、体積あたりの電磁波ノイズ抑制効率が高く、省スペースで、軽量である。このような電磁波ノイズ抑制体を用いることにより、放射ノイズ、伝導ノイズを効率よく抑制することができ、電子機器に対する高性能化、小型化、軽量化の要求に応えることができる。
本発明の電磁波ノイズ抑制体の一例を示す概略断面図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体における複合層の高分解能透過型電子顕微鏡像である。 複合層の近傍の一例を示す模式図である。 変換層における導電性材料からなるパターンの一例を示す図である。 変換層における導電性材料からなるパターンの他の一例を示す図である。 本発明の電磁波ノイズ抑制体の他の例を示す概略断面図である。 S21(透過減衰量)およびS11(反射減衰量)の測定法を示す概略図である。 内部減結合率の測定法を示す概略図である。 相互減結合率の測定法を示す概略図である。 実施例の電磁波ノイズ抑制体の内部減結合率を示すグラフである。 実施例の電磁波ノイズ抑制体の相互減結合率を示すグラフである。 比較例の電磁波ノイズ抑制体の内部減結合率を示すグラフである。 比較例の電磁波ノイズ抑制体の相互減結合率を示すグラフである。
符号の説明
1 電磁波ノイズ抑制体
2 基体樹脂層
3 複合層
4 変換層
6 結晶格子(強磁性体)
7 基体樹脂
8 強磁性体原子
10 電磁波ノイズ抑制体
20 電磁波ノイズ抑制体

Claims (10)

  1. 基体樹脂と強磁性体とが一体化した複合層と、
    線状導電体を含む変換層と
    を有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
  2. 前記複合層が、基体樹脂に強磁性体を物理的に蒸着させてなる層であることを特徴とする請求項1記載の電磁波ノイズ抑制体。
  3. 前記線状導電体が、カーボン化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電磁波ノイズ抑制体。
  4. 前記カーボン化合物が、コイル状のものであることを特徴とする請求項3記載の電磁波ノイズ抑制体。
  5. 前記基体樹脂が、架橋性樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  6. 一層の複合層の厚さが、10〜200nmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  7. 複合層の厚さと変換層の厚さとの合計が、1〜500μmであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の電磁波ノイズ抑制体。
  8. 基体樹脂を含む基体樹脂層と、基体樹脂層の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層と、線状導電体を含む変換層とを有する電磁波ノイズ抑制体の製造方法であって、
    基体樹脂層に強磁性体を物理的蒸着させて、基体樹脂層表面に複合層を形成する蒸着工程を有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
  9. 線状導電体および基体樹脂を含む変換層と、変換層の基体樹脂の一部と強磁性体とが一体化した複合層とを有する電磁波ノイズ抑制体の製造方法であって、
    変換層に強磁性体を物理的蒸着させて、変換層表面に複合層を形成する蒸着工程を有することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
  10. 前記蒸着工程において、基体樹脂のせん断弾性率を1×104 〜1×108 Paとすることを特徴とする請求項8または請求項9記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
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