JP5329281B2 - 塗布液及び当該塗布液を用いるシリカ系被膜の形成方法 - Google Patents

塗布液及び当該塗布液を用いるシリカ系被膜の形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリカ系被膜を形成するための塗布液及びその塗布液を用いるシリカ系被膜の形成方法に関する。
半導体デバイスのプリメタル絶縁膜(Pre−Metal Dielectrics:PMD)として、あるいはSTI(Shallow Trench Isolation)溝に形成される素子分離絶縁膜として、SiOを主成分とするシリカ系被膜が用いられている。
このようなプリメタル絶縁膜等は、CVD後に高温でリフローさせることにより形成することが一般的であったが、近年ではシロキサンポリマーを含む塗布液を用いる方法が検討され、実施されるに至っている。このような塗布液を用いる方法は、上記のリフロー温度よりも低い温度で焼成することによってシリカ系被膜を形成することができ、その被膜表面の平坦性にも優れるという利点を有する。
特開2007−254677号公報
ところで、近年のように半導体デバイスの微細化が一段と進んでくると、プリメタル絶縁膜や素子分離絶縁膜を形成するため、微細な溝に塗布液を埋め込む必要が出てくる。しかし、このような微細な溝に塗布液を埋め込んだ場合には、酸素不足等の影響から、溝底部の塗布液が完全にはSiOに変換されず、緻密なシリカ系被膜が形成されないという問題があった。
特にプリメタル絶縁膜の場合、プリメタル絶縁膜にコンタクトホールを形成し、その内部をフッ酸で洗浄することが行われる。上記のように緻密なシリカ系被膜が形成されていない場合には、その部分のシリカ系被膜が基板に対して水平方向にエッチングされる、いわゆるサイドエッチングの問題が生じることになる。
ここで、緻密なシリカ系被膜を形成する方法としては、シロキサンポリマーと、熱の作用により酸又は塩基を発生する化合物とを含有する塗布液を用いる方法が知られている(特許文献1)。しかし、このような塗布液によってもなお、微細な溝に埋め込んだ場合には、溝底部において緻密なシリカ系被膜を形成することができなかった。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、微細な溝に埋め込んだ場合であっても緻密なシリカ系被膜を形成することが可能な塗布液、及びその塗布液を用いるシリカ系被膜の形成方法を提供することにある。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために、塗布液に加える添加剤に着目し鋭意研究を重ねた。その結果、シロキサンポリマーに特定の塩基発生剤を添加することで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
本発明の第一の態様は、シロキサンポリマー(A)と、下記一般式(I)で表される塩基発生剤(B)と、を含有してなる塗布液である。
(式中、R及びRは同一又は異なる炭素数1〜5の炭化水素基であるか、一方が水素原子であり他方が炭素数1〜5の炭化水素基である。R及びRがともに炭化水素基のとき、これらは互いに結合して環を形成してもよい。Rは二価の連結基であり、Rは縮合環である。)
本発明の第二の態様は、本発明の塗布液を基板上に塗布し、塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の塗膜を焼成してシリカ系被膜を形成する焼成工程と、を有するシリカ系被膜の形成方法である。
本発明によれば、微細な溝に塗布液を埋め込んだ場合であっても、緻密なシリカ系被膜を形成することができる。
実施例1のFT−IRのチャートを示す図である。 比較例1のFT−IRのチャートを示す図である。 比較例2のFT−IRのチャートを示す図である。 実施例1の溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像である。 比較例1の溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像である。 比較例2の溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<塗布液>
本発明の塗布液は、シロキサンポリマー(A)と、特定の塩基発生剤(B)と、を含有する。
[シロキサンポリマー(A)]
本発明に用いるシロキサンポリマー(以下、「(A)成分」ともいう。)は、特に限定されず、Si−O−Si結合を有するポリマーであればよい。このシロキサンポリマーの中でも、アルコキシシランの加水分解縮合物を好適に用いることができる。アルコキシシランとしては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(a)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基若しくはアリール基であり、Rは一価の有機基であり、nは0〜2の整数を示す。)
ここで、一価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリル基、グリジル基等を挙げることができる。これらの中では、アルキル基及びアリール基が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。また、アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記一般式(a)で表される化合物の具体例としては、
(a1)n=0の場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができ、
(a2)n=1の場合、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン、モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン等を挙げることができ、
(a3)n=2の場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン等を挙げることができる。
本発明の塗布液において、シロキサンポリマー(A)の質量平均分子量は、200〜50000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。この範囲であれば、塗布液の塗布性を向上させることができる。
アルコキシシランの加水分解縮合は、重合モノマーとなるアルコキシシランを、有機溶媒中、酸触媒又は塩基触媒の存在下で反応させることにより得られる。重合モノマーとなるアルコキシシランは、1種のみの使用であっても、また複数種を組み合わせて縮合してもよい。
また、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等のトリフェニルアルコキシシラン等を加水分解時に添加してもよい。
縮合の前提となるアルコキシシランの加水分解の度合いは、添加する水の量により調整することができるが、一般的には、上記一般式(a)で示されるアルコキシシランの合計モル数に対して、1.0〜10.0倍モルにすることが好ましく、1.5〜8.0倍モルの割合で添加することがより好ましい。水の添加量を1.0倍モル以上にすることにより加水分解度を十分大きくすることができ、被膜形成を良好にすることができる。一方で、10.0倍モル以下にすることによりゲル化を防止することができ、保存安定性を良好にすることができる。
また、一般式(a)で示されるアルコキシシランの縮合においては、酸触媒を用いることが好ましい。酸触媒としては、特に限定されるものではなく、従来慣用的に使用されている有機酸、無機酸のいずれも使用することができる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸を挙げることができ、無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。酸触媒は、アルコキシシランと水との混合物に直接添加するか、又は、水とともに酸性水溶液としてアルコキシシランに添加してもよい。
加水分解反応は、通常5〜100時間程度で完了する。また、室温〜80℃を超えない加熱温度において、一般式(a)で示される1種以上のアルコキシシランを含む有機溶剤に酸触媒水溶液を滴下して反応させることにより、短い反応時間で反応を完了させることも可能である。加水分解されたアルコキシシランは、その後、縮合反応を起こし、その結果、Si−O−Siのネットワークを形成する。
[塩基発生剤(B)]
本発明に用いる塩基発生剤(B)は、下記一般式(I)で表される。
上記一般式(I)中のR及びRは、同一又は異なる炭素数1〜5の炭化水素基であるか、一方が水素原子であり他方が炭素数1〜5の炭化水素基である。炭素数1〜5の炭化水素基としては、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。また、RとRとが結合して形成する環としては、炭素数2〜8で形成される環が好ましく、例えば、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等のアザシクロアルカン環が挙げられる。これらの環の中でも、特にピペリジン環が好ましい。
上記一般式(I)中のRは二価の連結基である。二価の連結基としては、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、−C≡C−R−(Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)で表される基が挙げられる。これらの中でも、特にメチレン基が好ましい。
一般式(I)中のRは縮合環である。縮合環はヘテロ原子を含んでいてもよい。縮合環の中でも、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、ナフタセン環、ベンゾアントラセン環、チオキサンテン環、アントラキノン環等の2〜4の環構造が縮合したものが好ましく、特にアントラセン環、チオキサンテン環、アントラキノン環が好ましい。また、この縮合環は、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基、ニトロ基、酸素原子(=O)等の置換基を有していてもよい。
本発明に用いる塩基発生剤(B)は、上記一般式(I)で表されるものであれば特に限定されない。上記一般式(I)で表される塩基発生剤としては、例えば下記構造式(I−a)〜(I−k)で表される化合物が挙げられる。この中でも、下記構造式(I−d)で表される化合物が特に好ましい。
上記一般式(I)で表される塩基発生剤(B)を用いることにより、シロキサンポリマーのSi−Hの水素原子部分、アルコキシ基部分を水酸基に置き換えることができる。基板上に塗布した塗膜の焼成時にポリシロキサン内の水酸基同士が縮合することで、Si−O−Siのネットワークが形成される。
また、本発明では上記一般式(I)で表される塩基発生剤を用いる。このため、シロキサンポリマーのSi−Hの水素原子、アルコキシ基部分を、緻密なSi−O−Siネットワークを形成するために充分な量の水酸基に置き換えることができる。その結果、例えば、深さ100〜500nm、幅20〜150nmのような溝幅の非常に狭い溝に形成されたシリカ系被膜であっても、緻密なSi−O−Siネットワークを持つシリカ系被膜になる。そして、非常に微細な配線パターン上に形成されたシリカ系被膜であっても、緻密なSi−O−Siネットワークを持つシリカ系被膜になる。
本発明の塗布液中の塩基発生剤(B)の含有量は、上記シロキサンポリマー(A)のSiO換算質量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましい。より好ましい塗布液中の塩基発生剤(B)の含有量は、0.5〜10質量%である。上述の通りポリシロキサン内に含まれる水酸基同士が縮合することにより緻密なSi−O−Siネットワークを形成するが、塩基発生剤(B)の含有量が上記範囲内にあれば、塩基発生剤の塩基発生効率が適切な範囲に調整され、より緻密なSi−O−Siネットワークが形成される。
[その他の成分]
本発明の塗布液は、本発明の効果を害さない範囲で、他の成分を含有することができる。本発明の塗布液に含有される他の成分としては、例えば、界面活性剤、溶剤等を挙げることができる。
(界面活性剤)
本発明の塗布液には、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤の存在により、基板に対する塗布性、展開性を向上させることが可能となる。
(溶剤)
本発明の塗布液は、塗布性及び膜厚均一性を向上させる目的で、溶剤を含むことが好ましい。この溶剤としては、従来より一般的に使用されている有機溶剤が使用できる。具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノールのような一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのような多価アルコール誘導体;酢酸、プロピオン酸のような脂肪酸;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトン等を挙げることができる。これらの中でも、アルコール系、グリコール系の溶剤が好ましく用いられる。また、これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
この溶剤の量は、特に限定されるものではないが、溶剤以外の成分(固形分)の濃度が5〜100質量%になるようにすることが好ましく、20〜50質量%になるようにすることがより好ましい。この範囲にすることにより塗布性を向上させることができる。
(その他)
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂、添加剤等を配合することが可能である。
<シリカ系被膜の形成方法>
本発明のシリカ系被膜の形成方法は、本発明の塗布液を基板上に塗布し、塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の塗膜を焼成してシリカ系被膜を形成する焼成工程と、を有する。本発明のシリカ系被膜の形成方法は、本発明の塗布液を用いるため、非常に緻密なシリカ系被膜を形成することができる。
本発明のシリカ系被膜の形成方法は、塗布工程と加熱工程との間に、基板に塗布した塗布液に対し紫外線を照射する照射工程をさらに有することが好ましい。より緻密なSi−O−Siネットワークを形成できるからである。
[塗布工程]
塗布工程とは、本発明の塗布液を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程である。基板上に塗布液を塗布し塗膜を形成する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコート法等、任意の方法を用いることができるが、通常スピンコート法が用いられる。
本発明の塗布液を塗布する基板としては、半導体、ガラス、セラミック、金属等を挙げることができる。また、上記基板には、基板上にマスク部材等の他の層を形成したものも含まれる。
[照射工程]
照射工程とは、塗布工程で基板上に形成した塗膜に対し、紫外線を照射する工程である。上記塗膜に紫外線を照射することで、焼成時に起こるポリシロキサン内の水酸基同士の縮合前に、塩基発生剤から塩基を発生させ、シロキサンポリマー中のSi−Hの水素原子、アルコキシ基を水酸基に変換することができる。上記縮合前にシロキサンポリマーのSi−Hの水素原子、アルコキシ基を水酸基に変換することで、より緻密Si−O−Siネットワークを持つシリカ系被膜を形成できる。塩基発生剤の分解(塩基発生)温度は通常200〜250℃である。このため、紫外線照射を行わなくとも上記反応は起こる。しかし、最初から高温(200℃以上)で加熱してしまうと、被膜の上層から固化してしまい、底部まで酸素が透過しなくなる。その結果、底部での上記反応に悪影響が及ぶ可能性がある。以上の通り本発明では照射工程を行うことが好ましい。
照射する紫外線の波長は、特に限定されないが100〜1000nmであることが好ましく、150〜600nmであることよりが好ましい。また、照射する紫外線の照度(紫外線照度)は、特に限定されないが10〜1000mW/cmであることが好ましく、20〜800mW/cmであることよりが好ましい。
紫外線の照射は、被膜中の残存溶剤を除去し、反応効率を向上させるという理由から、加熱しながら行うことが好ましい。塗膜を加熱しながら紫外線を照射する場合には、25〜400℃で塗膜を加熱することが好ましく、80〜200℃で加熱することがより好ましい。
紫外線源、紫外線照射距離、紫外線照射時間等の条件は、特に限定されず、使用する材料に応じて適宜変更することができる。
[加熱工程]
加熱工程とは、上記塗布工程後に基板上に形成される塗膜を加熱する工程である。加熱工程は、塗膜から溶剤等を揮発させ、塗膜を乾燥させるために行う。この加熱の際にポリシロキサン内に含まれる水酸基同士の縮合反応が進む。
加熱工程での加熱温度は、特に限定されないが80〜300℃であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、特に限定されないが10〜300秒であることが好ましく、60〜180秒であることがより好ましい。
加熱工程では、3段階以上に段階的に加熱してもよい。具体的には、大気中又は窒素等の不活性ガス雰囲気下、60〜150℃程度のホットプレート上で30秒〜2分間程度第1回目の焼成を行ったのち、100〜220℃程度で30秒〜2分間程度第2回目の焼成を行い、さらに150〜300℃程度で30秒〜2分間程度第3回目の焼成を行う方法が挙げられる。
[焼成工程]
焼成工程とは、加熱後の塗膜を焼成しシリカ系被膜を形成する工程である。焼成工程では、ポリシロキサン内に含まれる水酸基同士の縮合反応が進み緻密なSi−O−Siネットワークが形成される。上記加熱工程や加熱しながら行う上記照射工程中でも、ポリシロキサンに含まれる水酸基同士の縮合反応は進むが、本工程で上記縮合反応はさらに進む。
焼成工程での焼成温度は、特に限定されないが300〜1200℃であることが好ましく、400〜600℃であることがより好ましい。また、焼成時間は、特に限定されないが10分〜7時間であることが好ましく、30分〜2時間であることがより好ましい。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
溶剤としてプロピレングリコールジメチルエーテルで固形分濃度を調整したトリアルコキシシランの加水分解生成物を主成分とするスピンオンガラス材料(OCD T−12 1500−V(商品名):東京応化工業(株)製、SiO換算固形分濃度:15質量%)に対し、上記塩基発生剤(I−d)(和光純薬工業(株)製)をスピンオンガラス材料中の固形分に対して1質量%となるように添加して、塗布液を製造した。幅100nm、深さ300nmの溝を形成したTEG(Test Elementary Group)基板上に、塗布液をコーター(SS8261NUU:東京応化工業(株)製)を用いて回転数1000rpmにて塗布し、TEG基板上に塗膜を形成した。
低圧水銀灯(LH3201N(商品名):GS YUASA(株)製)を用いて、メインの紫外線波長が185、254nm、紫外線照度が35mW/cm、紫外線照射距離40mm、紫外線照射時間が90秒、温度環境が150℃の条件で、TEG基板上の塗布液に紫外線を照射した。次にホットプレート上で、200℃で60秒間、紫外線照射後の塗膜を加熱し、塗膜に含まれる溶剤等を揮発させ、塗膜を乾燥させた。また、乾燥後の塗膜の膜厚は7000Åであった。さらに、550℃、1時間の条件で加熱工程後の塗膜を焼成し、シリカ系被膜をTEG基板上に形成した。
<実施例2>
塩基発生剤を、上記構造式(I−d)で表される化合物から上記構造式(I−a)で表される化合物(和光純薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリカ系被膜を形成した。
<実施例3>
塩基発生剤を、上記構造式(I−d)で表される化合物から上記構造式(I−i)で表される化合物(和光純薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリカ系被膜を形成した。
<実施例4>
塩基発生剤を、上記構造式(I−d)で表される化合物から上記構造式(I−k)で表される化合物(和光純薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリカ系被膜を形成した。
<比較例1>
塩基発生剤を用いなかった以外は実施例1と同様にしてシリカ系被膜を形成した。
<比較例2>
塩基発生剤を、上記構造式(I−d)で表される化合物から下記構造式(II)で表される化合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリカ系被膜を形成した。
<成膜性評価>
成膜性評価は、FT−IR(FTIR−615(商品名):日本分光株式会社製)を用いて行った。実施例1及び比較例1の加熱工程後の塗膜及びシリカ系被膜のSi−H結合のピーク面積により評価を行った。なお、FT−IRのチャートにおいて、880cm−1近辺のピークが問題となるSi−H結合を示す。実施例1のFT−IRのチャートを図1に示す。図1(a)中の太線で囲んだ部分の拡大図を図1(b)に示す。比較例1のFT−IRのチャートを図2に、比較例2のFT−IRのチャートを図3に示す。図2、3についても図1と同様に、(b)には、(a)の太線で囲んだ部分の拡大図を示す。なお、2250cm−1近辺のSi−Hのピークは、いずれのFT−IRのチャートからも確認されず問題とならなかった。
図1から明らかなように、一般式(I−d)を用いた実施例1では、焼成後にSi−Hのピークが見られない。一方、図2、3から明らかなように、塩基発生剤(化合物(I−d))を加えなかった比較例1、塩基発生剤として上記の構造式(II)で表される化合物を用いた比較例2では、加熱キュア後にSi−Hのピークが見られる。塩基発生剤として化合物(I−d)を用いた実施例1は、緻密なSi−O−Siのネットワークが形成されていることが確認できた。
さらに、上記実施例1、比較例1のシリカ系被膜について、バッファードフッ酸(63BHF(商品名):ステラケミファ(株)製、6質量%濃度のフッ酸と30質量%濃度のフッ化アンモニウムの混合液)に対する耐性を、上記シリカ系被膜形成後、パターン部分の断面をカットした状態で、63BHFにて25℃、3秒間の条件で浸漬した後の溝底部に形成されたシリカ系被膜のエッチング耐性を確認した。実施例1〜4、比較例1、2の塗布液に含まれる成分及び実施例1〜4、比較例1、2の溝底部に形成されたシリカ系被膜のエッチング耐性の評価を表1に示した。エッチング耐性の評価は「◎」、「○」、「×」、「△」の四段階評価で行った。「◎」の評価は、溝底部のシリカ系被膜に全くボイドが見られない場合の評価である。「○」は、溝底部のシリカ系被膜にボイドがほとんど見られない場合の評価である。「△」は、溝底部のシリカ系被膜に小さなボイドが見られる場合の評価である。「×」は、溝底部のシリカ系被膜に大きなボイドが見られる場合の評価である。また、実施例1の溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像を図4に、比較例1の溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像を図5に示した。比較例2溝底部に形成されたシリカ系被膜のSEM像を図6に示した。
表1から明らかなように、塩基発生剤として構造式(I−d)、(I−a)、(I−i)、(I−k)で表される化合物を用いた実施例1〜4では、塩基発生剤(構造式(I−d)で表される化合物)を加えなかった比較例1及び塩基発生剤として上記の構造式(II)で表される化合物を用いた比較例2に比べ、溝底部に形成されたシリカ系被膜のエッチング耐性が良好である。
表1及び図4〜6から明らかなように、塩基発生剤として構造式(I−d)で表される化合物を用いた実施例1では、塩基発生剤(構造式(I−d)で表される化合物)を加えなかった比較例1及び塩基発生剤として上記の構造式(II)で表される化合物を用いた比較例2に比べ、溝底部に形成されたシリカ系被膜のエッチング耐性が特に良好である。

Claims (5)

  1. シロキサンポリマー(A)と、下記一般式(I)で表される塩基発生剤(B)と、を含有し、
    前記シロキサンポリマー(A)が下記一般式(a)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物である塗布液。
    (式中、R及びRは同一又は異なる炭素数1〜5の炭化水素基であるか、一方が水素原子であり他方が炭素数1〜5の炭化水素基である。R及びRがともに炭化水素基のとき、これらは互いに結合して環を形成してもよい。Rは二価の連結基である。アントラセン環、チオキサンテン環、及びアントラキノン環からなる群から選択される縮合環である。当該縮合環は、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基、ニトロ基、及び酸素原子(=O)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。
    (式中、R は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基若しくはアリール基であり、R は一価の有機基であり、nは0〜2の整数を示す。)
  2. 前記Rがアントラセン環である請求項1に記載の塗布液。
  3. 前記塩基発生剤(B)の含有量は、前記シロキサンポリマー(A)のSiO換算質量に対して、0.1〜20質量%である請求項1又は2に記載の塗布液。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の塗布液を基板上に塗布し、塗膜を形成する塗布工程と、
    前記塗膜を加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程後の塗膜を焼成してシリカ系被膜を形成する焼成工程と、を有するシリカ系被膜の形成方法。
  5. 前記塗布工程と前記加熱工程との間に、前記塗膜に対して、紫外線を照射する照射工程をさらに有する請求項4に記載のシリカ系被膜の形成方法。
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