JP5329269B2 - 画像表示媒体 - Google Patents
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Description
さらに、発色状態における極大吸収波長が異なるフォトクロミック化合物を含有する複数の感光層が積層された画像表示媒体は、多色画像、さらにはフルカラー画像の形成も可能である。
したがって、かかる中間層には耐有機溶剤性と透明性が必要となり、これらの要求を満たす材料としてポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)が好適に用いられている。
また、感光層の最外表面にも使用時や保存時の油分やガス等による感光層への悪影響を防止するために保護層が設けられ、かかる保護層の材料としても、透明性と耐有機溶剤性、ガスバリア性に優れるPVA系樹脂が使用されている。(例えば、特許文献1参照。)
これは有機溶剤等から感熱発色層を保護するためにPVA系樹脂を中間層、および表面保護層に用いている多層感熱記録用媒体においても同様の問題点であり、かかる用途においては、PVA系樹脂を架橋させることで耐水性を向上させたもの、特に、反応性に富むアセト酢酸エステル基を含有するPVA系樹脂がグリオキザール等のアルデヒド化合物によって架橋された架橋物を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
すなわち、PVA系樹脂の架橋による耐水化は、結晶化の阻害につながることから、耐水性と水蒸気バリア性は相反する特性であると考えられる。
これらの作用効果のうち、優れた耐水性は、架橋構造中に形成されるカルボン酸塩が水の存在下でも解離・イオン化し難いことによるものと推測される。また、優れた水蒸気バリア性は、グリオキシル酸塩がPVA系樹脂、およびアセト酢酸エステル基に対する親和性に優れるため架橋構造の偏在がなく、その結果、非晶部である架橋構造部分と、結晶部分がバランスよく配置されたことによるものと推測される。
以下、各順に説明する。
まず、本発明に用いられるAA化PVA系樹脂について説明する。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂とは、側鎖にアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂である。
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
なお、上述の共重合モノマーを用いた共重合体を使用する場合の共重合モノマーの導入量は、モノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
なお、かかるAA化PVA系樹脂の平均重合度およびケン化度は、上述のPVA系樹脂とジケテンの反応によってAA化PVA系樹脂を得る場合には、原料として用いたPVA系樹脂に依存するものであり、通常は、JIS K6726に準じて測定される。
かかる水酸基平均連鎖長およびその測定方法に関しては、「ポバール」(発行所:高分子刊行会、248ページ、1981)およびMacromolecules,Vol.10,p532(1977)に詳述されている。
かかるAA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVA系樹脂や、先にAA化PVA系樹脂の原料として列記した各種モノマーを用いた変性PVA系樹脂を挙げることができる。
次に、本発明においてAA化PVA系樹脂の架橋剤として用いられるグリオキシル酸塩について説明する。
かかるグリオキシル酸塩としては、グリオキシル酸の金属塩やアミン塩などが挙げられ、金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、その他の亜鉛、アルミニウムなどの金属とグリオキシル酸の金属塩、また、アミン塩としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類とグリオキシル酸の塩が挙げられる。
特に、耐水性に優れる架橋高分子が得られる点から金属塩、特にアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の塩が好ましく用いられる。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸塩を得ることができる。なお、(2)の方法において用いられるグリオキシル酸より解離定数が大きい酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩が挙げることができる。
また、AA化PVA系樹脂中のAA基量に対するグリオキシル酸塩の量として見ると、通常、0.01〜10当量であり、特に0.05〜5当量、さらに0.1〜3当量の範囲が好ましく用いられる。
かかるAA化PVA系樹脂に対するグリオキシル酸塩の使用量が少なすぎると、耐水性が不充分となる傾向があり、逆に多すぎると、水蒸気バリア性が低下したり、両者の混合水溶液が増粘しやすくなり、ポットライフが短くなる傾向がある。
次に、本発明の画像表示媒体におけるAA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層について説明する。
かかる架橋物層は、フォトクロミック化合物を発色物質として含有する感光層の少なくとも一方の面に存在するもので、特に、感光層を複数有する場合の感光層間の中間層、および、最外感光層の表面保護層として用いることが好ましい。なお、かかる表面保護層は、最外感光層に直接隣接していてもよいし、その他の層、例えば後述の変色防止層などを介していてもよい。
本願発明で用いられるAA化PVA系樹脂は水溶性樹脂であり、グリオキシル酸塩も水溶性を有することから、かかる塗工液に用いる溶剤は、水を主体とするものであることが好ましいが、製造工程で問題がおこらない範囲であれば、有機溶剤を併用することも可能であり、その例としては、アルコール類、ケトン類などの水溶性の有機溶剤を挙げることができる。
また、かかる塗工液には、塗工液に含まれる無機微粒子等の分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、などを配合することも可能である。
なお、かかる塗工液のpHの調整は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどのアミン化合物、塩酸、硫酸などの各種無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸などの有機酸、を適宜添加することによって行うことができる。
その塗工量は、用いた塗工液の濃度から、所望の厚さが得られるように調節すればよい。
その乾燥温度は、通常、5〜150℃であり、特に30〜120℃、さらに50〜120の範囲が好ましい。また、その乾燥時間としては、通常、0.1〜60分、特に0.1〜30分、さらに0.2〜20分の範囲が好適に用いられる。
また、かかる層には、通常、画像表示媒体の中間層や保護層に用いられる各種添加剤を含有することが可能であり、例えば、製品の特性向上や機能性付与を目的として用いられる、無機微粒子、染料、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、還元剤、熱安定剤などを挙げることができる
本発明の画像表示媒体は、支持基材上にフォトクロミック化合物を発色物質として含有する感光層を有するもので、特に、発色状態における極大吸収波長が異なる複数のフォトクロミック化合物を含有する複数の感光層を有するものである。
そして、かかる感光層間の中間層、あるいは最外感光層の表面保護層に、AA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有することを特徴とするものである。
特に、フィルム、合成紙、樹脂コート紙、紙などの薄膜状基材を用いる場合には、その厚みは50〜250μmのものが好ましく用いられる。
なお、かかる支持基材は、通常、白色であり、上述の素材のうち、無色のものの場合は、白色に着色されて用いられる。
また、かかるフォトクロミック化合物は、マイクロカプセル化されたものを用いることも可能である。
なお、感光層に用いられるバインダー材料としては、フォトクロミック化合物との相溶性と透明性に優れ、フォトクロミズム機能に悪影響を及ぼさない材料であることが好ましく、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどを挙げることができる。
例えば、これらのフォトクロミック化合物を含有する感光層は、通常、消色状態において可視短波長域(400〜450nm)に吸収を有している場合があり、白熱灯や蛍光灯等によって徐々に発色し、形成した画像が変色してしまう場合がある。そのため、感光層上、あるいはさらに他の層を介してその上に、変色防止層を設けることが好ましい。かかる変色防止層は、光吸収層と光反射層に大別され、光吸収層は、可視短波長に吸収を有する色素を、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどのバインダー樹脂に分散させたものである。また、光反射層は、可視短波長域を選択的に反射するように構成された誘電体多層膜を蒸着などの方法によって形成してえられたものである。
例えば、発色状態における極大吸収波長が異なるフォトクロミック化合物を複数の感光層に有する画像記録用媒体の場合、消色状態は支持基材の白色を呈している。これに、紫外光を照射することにより全てのフォトクロミック化合物を発色させ、その後、各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射し、選択的に消色させることにより、所望の画像が形成される。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
50%グリオキシル酸水溶液456g(3.10モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液645g(3.22モル)を加え、生じた白色結晶をろ過、水洗した後、50℃にて1時間乾燥して、グリオキシル酸ナトリウム210g(1.84モル、収率59.5%)を得た。得られたグリオキシル酸ナトリウムの23℃における水への溶解度は、17.1%であった。
50%グリオキシル酸水溶液101g(0.68モル)に水101gを加え、25%水溶液とした後、これに20%酢酸カルシウム水溶液268g(0.34モル)を2時間かけて滴下し、生じた白色結晶をろ過、水洗した後、50℃にて1時間乾燥して、グリオキシル酸カルシウム70.3g(0.32モル、収率93.6%)を得た。得られたグリオキシル酸カルシウムの23℃における水への溶解度は0.7%であった。
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%であるAA化PVA系樹脂の10%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られたグリオキシル酸ナトリウムを1重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.8当量)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で3日間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの水蒸気バリア性、耐有機溶剤性、および耐水性を以下の要領で評価した。
得られたフィルムの透湿度を、JIS Z 0208(カップ法)に基づいて測定した。結果を表1に示す。
得られたフィルムから3.8cm×3.8cmの試料を打ち抜き、これを30℃のトルエン中に12時間浸漬し、目視によって以下の通り評価した。結果を表1に示す。
○・・・変化なし
△・・・膨潤
×・・・溶けて変形
得られたフィルムに80℃の温水をスポイトで二滴滴下し、10秒後、指で5回こすった際の感触によって以下の通り評価した。結果を表1に示す。
○・・・変化なし
△・・・少しぬるぬるする(表面が僅かに溶解)
×・・・ぬるぬるする(表面が著しく溶解)
実施例1において、架橋剤として製造例2によって得られたグリオキシル酸カルシウム0.5重量部(AA化PVA系樹脂に対して5重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.4当量)添加した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例2において、架橋剤の量を1重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.8当量)添加した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキザールを用い、その量を0.1重量部(AA化PVA系樹脂に対して1重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して3.0当量)添加した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてメチロール化メラミン(商品名「M−30W」、長春人造樹脂廠?有限公司社製)を用いた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
参考例1において、AA化PVA系樹脂に代えて、ケン化度99.2モル%、平均重合度1200の未変性PVAを用いた以外は同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
Claims (3)
- フォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体であって、かかる感光層に隣接する少なくとも一方の面にアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層を有することを特徴とする画像表示媒体。
- フォトクロミック化合物を含有する感光層を2層以上有する画像表示媒体であって、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層が、感光層間の中間層であることを特徴とする請求項1記載の画像表示媒体。
- アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層が、最外感光層の表面保護層であることを特徴とする請求項1記載の画像表示媒体。
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