JP5328166B2 - 漢方薬およびパンテチン類を含有する錠剤 - Google Patents

漢方薬およびパンテチン類を含有する錠剤 Download PDF

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Description

本発明は、所望の機械的強度および崩壊性を有する、漢方薬を含有する錠剤に関する。
一般的に、錠剤は1個の計量単位として摂取し易く、服用が容易であり、その製法も比較的容易であるなどの理由から、多くの医薬品、健康食品等に利用されている。錠剤は、製錠された後、包装されて輸送されるが、この過程で相当の振動、衝撃等の外力を受けるので、その商品価値を維持するため、錠剤が崩壊しないように適当な機械的強度(硬度)を有するように製錠しなければならない。
また一方で、内服薬などの場合、服用後一定時間で崩壊しなければ効果が発揮されない。このため、硬度を高めるとともに、適度な崩壊性を錠剤に付与することが必要となる。
錠剤の硬度を高める手段の一つとして、打錠圧を上げることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、種々の漢方薬の製錠において、過剰な打錠圧は打錠時のキャッピング(錠剤上面の剥離)、ラミネーション(層状の剥離)等の原因となるので望ましくない。そればかりか、硬度を高めることで、崩壊性が低下してしまうという大きな問題が生じていた。
錠剤の崩壊性を向上させる手段として、(1)デンプンやセルロース類などの崩壊剤の添加、(2)酸塩基反応による発泡作用の利用(発泡剤の添加)、(3)滑沢剤の微量化(外部滑沢)が知られている(非特許文献2および3)。しかし、錠剤は1錠あたりの原料の配合量がある程度限られているので、“崩壊剤や発泡剤の添加”は、有効成分などの配合量を低下させてしまう点が、また、“滑沢剤の微量化”では得られる効果が小さいという点が問題であった。
このため、錠剤の硬度を高めるとともに、崩壊性も向上できる方法が求められていた。
医薬品開発基礎講座X・製錠工学、地人書館、156頁、1971年 すぐに役立つ粒子設計・加工技術、じほう、221頁、2003年 Pharm. Tech. Japan, 第14巻、第11号、111頁、1998年
そこで、本発明は、機械的強度および崩壊性の点で優れた効果を有する漢方薬を含有する錠剤を提供することを目的とする。
本発明者は、漢方薬および錠剤を構成する他の全てまたは一部の材料を混合し、当該混合物を造粒して顆粒とし、その後、常法により打錠し、錠剤を製造した。また、本発明者は、錠剤を構成する全ての材料を混合し、その後、得られた混合物を常法により直接打錠し、錠剤を製造した。この場合、前者の造粒工程を経て製錠された錠剤は、造粒工程を経ることなく直接製錠された後者の錠剤と比較して硬度が高く、したがって製造方法を変更することで錠剤強度の改善が認められた。しかしながら、前記錠剤の場合であっても、商品として流通に耐え得る錠剤としては、なお不充分であった。
また、本発明者は、漢方薬に公知の賦形剤であるコーンスターチなどのデンプン類、乳糖、ショ糖などの糖類、でん粉のりやヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤を添加し、従来の方法により錠剤の製造を多数試みた。しかしながら、この場合も硬度および崩壊性の点で満足のいくものではなかった。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねたところ防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯または大柴胡湯とパンテチン類を含有させることによって、硬度が向上され、かつ崩壊時間が短縮された錠剤が得られることを見出した。すなわち、パンテチン類には、漢方薬を含有する錠剤の硬度を向上させ、かつ崩壊時間を短縮できる効果があると考えられる。本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
(1)錠剤
(1−1)防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬、ならびにパンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を含有する錠剤。
(1−2)錠剤の垂直方向の硬度が6N以上である、上記(1−1)に記載の錠剤。
(2)硬度向上剤、崩壊性向上剤
(2−1)パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とする、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の硬度向上剤。
(2−2)パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とする、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の崩壊性向上剤。
(2−3)パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とする、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の硬度及び崩壊性向上剤。
(3)硬度向上方法、崩壊性向上方法
(3−1)防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用する、上記漢方薬を含有する錠剤の硬度向上方法。
(3−2)防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用する、上記漢方薬を含有する錠剤の崩壊性向上方法。
(3−3)防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用する、上記漢方薬を含有する錠剤の硬度及び崩壊性向上方法。
本発明の錠剤は、製錠されてから服用するまでに受ける振動や衝撃などの外力に十分に耐えることが可能な機械的強度を有する。また、本発明の錠剤は、服用後一定時間で崩壊する適度な崩壊性を有する。
また、本発明の錠剤によれば、配合される漢方薬およびパンテチン類に基づいて、その漢方薬特有の効能、およびパンテチン類由来のコレステロールに対する効果や腸の蠕動運動を活発化させる効果を、同時に得ることができる。
また、パンテチン類を有効成分とする本発明の硬度および/または崩壊性向上剤によれば、漢方薬を含有する錠剤において、その機械的強度を高くでき、また崩壊時間を短縮させることができる。
また、本発明の硬度および/または崩壊性向上方法によれば、漢方薬を含有する錠剤においてその機械的強度を高くでき、また崩壊時間を短縮させることができ、所望の効果を有する錠剤を得ることができる。
本発明の錠剤は、特定の漢方薬およびパンテチン類を含有することを主な特徴とする。以下、本発明の構成について詳細に説明する。
(1)漢方薬
本発明の錠剤に配合される漢方薬としては、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯が挙げられる。漢方薬として、硬度および崩壊性に優れる点で、好ましくは防風通聖散および大柴胡湯である。本発明において漢方薬はエキス形態またはエキス末形態である。本発明において漢方薬は、好ましくはエキス末形態である。本発明において漢方薬は、単独で配合してもよく、複数組み合わせて配合してもよい。
本発明において使用し得る漢方薬の原料としては、具体的には、マオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)、レンギョウ(Forsythia suspense Vahl, Forsythia viridissima Lindley)、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa, Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、センキュウ(Cnidium officinale Makino)、サンシン(Gardenia jasminoides Ellis)、ハッカ(Mentha arvensis Linne var. piperascens Malinvaud)、ボウフウ(Saposhnikovia divaricata Schischkin)、ダイオウ(Rheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinable Baillon, Rheum coreanum Nakaiまたはそれらの種間雑種)、ビャクジュツ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura, Atractylodes ovata De Candolle)、キキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、オウゴン(Scutellariae baicalensis Georgi)、サイコ(Bupleurum falcatum Linne)、ハンゲ(Pinellia ternata Breitenbach)、タイソウ(Zizypus jujube Miller var. inermis Rehder)、キジツ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino, Citrus aurantium Linne ,Citrus natsudaidai Hayata)、ボウイ(Sinomenium acutum Rehder et Wilson)、オウギ(Astragalus membranaceus Bunge, Astragalus mongholicus Bunge)、ジュツ(Atractylodes lancea De Candolle, Atractylodeschinensis Koidzumi)、ボウショウ(芒硝:硫酸ナトリウム)、カッセキ(滑石:天然含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素含有物)およびセッコウ(石膏:含水硫酸カルシウム)である。
上記漢方薬は、下記表1に示す原料から得られる。
Figure 0005328166
表中、*は任意成分を表す。
これらの原料のうち、植物原料は、日本薬局方に準じて使用部位が規定されている。
本発明において使用し得る漢方薬(防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯)の調製は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)に準じて行い得る。
本発明において使用される上記漢方薬には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている漢方処方(生薬配合物)やこれらの漢方処方から得られるエキスが包含される。本発明において、漢方薬は得られたエキス(エキス形態)を使用してもよく、エキスを常法により製剤化した、いわゆるエキス末(エキス末形態)を使用してもよい。
かかるエキス末の製造方法としては、例えば、上記各成分の混合物に対し、約10〜20倍量の水を加え、80〜100℃程度で1〜3時間程度撹拌抽出し、温時遠心分離もしくは、ろ過して抽出液を得、これを減圧下に濃縮し、スプレードライ法により乾燥エキス末とするか、或いはエキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着エキス末とする方法が挙げられる。
漢方薬のうち、例えば、防風通聖散は、原料の乾燥重量換算にて、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2〜3およびカッセキ3〜5を、その20倍重量(従って560〜620重量部)の湯で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたものをエキスとして使用でき、このエキスからエキス末が製造される。
ここで、書簡によっては、上記成分中、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行、1993年)、オウゴンを含まないもの(例えば、「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行、昭和1968年)、上記分量中、1.2をすべて1.5としているもの(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行、1966年)など、成分や成分比が多少異なるものもある。
また、防風通聖散の製造方法についても、ボウショウ以外の上記各成分に水400重量部を加え、200重量部まで煎じて、カスを除き、次いでボウショウを加えるとしているもの(例えば「和漢薬ハンドブック」、久保道徳、森山健三共著、保育社発行、1995年)など、作り方が上記と多少異なるものがある。
本発明においては、これらの差異は特に制限されず、いずれも防風通聖散として包含される。
例えば、本発明に使用可能な防風通聖散エキス末は、前述のとおり製造することが可能であるが、例えば、防風通聖散乾燥エキスA、防風通聖散乾燥エキスAM、防風通聖散乾燥エキスEおよび防風通聖散乾燥エキスEM(いずれも日本粉末株式会社製)ならびに防風通聖散料乾燥エキス−Cおよび防風通聖散料乾燥エキス−F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等の商品が知られており、商業的に入手することもできる。
漢方薬のうち、例えば、大柴胡湯は、原料の乾燥重量換算にて、サイコ6.0(重量部、以下同じ)、ハンゲ3.0〜4.0、ショウキョウ4.0〜5.0、オウゴン3.0、シャクヤク3.0、タイソウ3.0、キジツ2.0、ダイオウ1.0〜2.0とされており、原則として、これを、その20倍重量(従って500〜560重量部)の湯で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたものエキスとして使用でき、このエキスからエキス末が製造される。
なお、書簡によっては、成分や成分比、作り方が上記と多少異なるものもある。本発明においては、これらの差異は特に制限されず、いずれも上記各々の漢方薬として包含される。
また、大柴胡去大黄湯エキス末、防已黄耆湯エキス末および大柴胡湯エキス末についても同様に製造することが可能であり、例えば、防已黄耆湯は、防已黄耆湯乾燥エキスAおよび防已黄耆湯乾燥エキスAZ(いずれも日本粉末株式会社製)ならびに防已黄耆湯エキス末および防已黄耆湯乾燥エキス−F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等が、大柴胡湯は、大柴胡湯乾燥エキス、大柴胡湯乾燥エキスAM、大柴胡湯乾燥エキスSNおよび大柴胡湯乾燥エキス粉末(いずれも日本粉末株式会社製)ならびに大柴胡湯乾燥エキスFおよび大柴胡湯乾燥エキス−F(いずれもアルプス薬品工業製)等の商品が知られており、商業的に入手することもできる。
本発明の錠剤における漢方薬の配合割合は、本発明の効果が奏される限りとくに限定されないが、例えば、錠剤中に、通常、エキスの乾燥重量総量またはエキス末総量で0.01〜98重量%程度、好ましくは0.1〜95重量%程度、より好ましくは1〜90重量%程度である。
漢方薬として、とくに防風通聖散および/または大柴胡湯を用いる場合は、その配合割合は錠剤中に、通常、総量で0.1〜98重量%程度、好ましくは1〜95重量%程度、より好ましくは3〜90重量%程度、さらに好ましくは10〜90重量%程度、とくに好ましくは30〜80重量%程度である。ほかの漢方薬を用いる場合には、その配合量は、前記防風通聖散の配量合を参考に本願発明の効果を奏するように適宜設定することができる。
(2)パンテチン類
本発明の錠剤は、上記漢方薬とパンテチン類とを含有することを特徴とする。
本発明においてパンテチン類としては、パンテチン、パントテン酸、パンテテイン、パンテノール、およびパンテチンまたはパントテン酸の塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。パンテチンまたはパントテン酸の塩としては、薬学的に許容されるものであれば限定されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸などの有機酸塩などを挙げることができる。これらのパンテチン類は類似の基本骨格を有している。
本発明の錠剤には、パンテチン類の中から選択された1種単独でまたは2種以上を組み合わせて配合される。本発明の錠剤に配合されるパンテチン類としては、パンテチンが好ましい。
パンテチン(Pantethine)は、ビス(2−{3−[(2R)−2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタノイルアミノ]プロパノイルアミノ}エチル)ジスルフィドとして表され、パントテン酸(ビタミンB5)誘導体または活性型ビタミンB5とも呼ばれる。
パンテチンは公知の化合物であり、従来公知の方法に従って合成することもできるが、パンテチンとしては例えば「パンテチンA」(第一三共プロファーマ製)等の商品も知られており、商業的に入手することもできる。パンテチン以外のパンテチン類も公知であり、従来の方法に従って得ることができ、また市販のものを用いることもできる。
本発明の錠剤におけるパンテチン類の配合割合は、本発明の効果が奏される限りとくに限定されないが、例えば、錠剤中に、通常、パンテチン量換算で0.01〜95重量%程度、好ましくは0.1〜80重量%程度、より好ましくは0.1〜40重量%程度である。
パンテチン類として、とくにパンテチンを用いる場合は、その配合割合は錠剤中に、通常、総量で0.01〜95重量%程度、好ましくは0.1〜80重量%程度、より好ましくは0.1〜40重量%程度である。
(3)漢方薬に対するパンテチン類の配合割合
本発明の錠剤における、漢方薬に対するパンテチン類の配合割合は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、漢方薬とパンテチン類の混合物が過剰にべたつくことなく、例えば、打錠時に使用する杵や臼に混合物が付着することなく錠剤を好適に製造でき、また、パンテチン類由来のコレステロールに対する効果や腸の蠕動運動を活発化させる効果などが損なわれず、かつ硬度および崩壊性の点で優れた錠剤が製造できることから、例えば、漢方薬の総量100重量部に対するパンテチン類の総量の下限値は、好ましくは0.01重量部であり、より好ましくは0.1重量部であり、さらに好ましくは0.125重量部であり、とくに好ましくは0.2重量部である。また、パンテチン類の総量の上限値は、好ましくは30重量部であり、より好ましくは28重量部であり、さらに好ましくは25重量部である。
例えば、本発明の一実施形態について説明すると、漢方薬として防風通聖散および/または大柴胡湯を使用し、パンテチン類としてパンテチンを使用する場合、防風通聖散および/または大柴胡湯の総量100重量部に対してパンテチンの総量の下限値は、好ましくは0.1重量部であり、より好ましくは1重量部であり、さらに好ましくは1.25重量部であり、とくに好ましくは2重量部である。また、パンテチンの総量の上限値は、好ましくは30重量部であり、より好ましくは28重量部であり、さらに好ましくは25重量部である。この範囲内であると、錠剤硬度、崩壊性および打錠時の臼・杵への付着の点で好ましい。
(4)錠剤の大きさ
本発明の錠剤の大きさは本発明の効果を奏する限りとくに限定されないが、使用対象、使用目的等に応じて適宜調整される。例えば、本発明の錠剤の直径は服用しやすいサイズが例示され、好ましくは直径18mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは12mm以下が例示される。また、本発明の錠剤の厚みも服用しやすいサイズが例示され、好ましくは直径10mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは8mm以下が例示される。
(5)錠剤に含有可能なほかの成分
本発明の錠剤には、例えば、担体として当該分野で従来公知のものを広く使用することができる。このような担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。また、本発明の錠剤には、上記以外に、添加剤として、例えば界面活性剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を含有させることができる。さらに、本発明の錠剤には、上記以外にアミノ酸、ビタミン類、有機酸塩類等の他の活性成分を含有させることができる。他の活性成分としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等のアミノ酸;ビタミンA1、ビタミンA2、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン等のビタミン類;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の有機酸塩類が例示される。
さらに錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
(6)錠剤の製造方法
本発明の錠剤の製造方法は、得られた錠剤が所望の効果を発揮できる限り限定されず、従来公知の方法に従い製造することができる。また、漢方薬およびパンテチン類の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。通常は、漢方薬とパンテチン類、およびその他、必要に応じて賦形剤等を混合して打錠すればよい。また、打錠については配合材料の全部を直接打錠してもよく、また打錠前に配合材料の一部または全部を顆粒状にしてそののちに打錠するなど、常法に従い打錠すればよい。
(7)錠剤の硬度および崩壊性
本発明の錠剤の硬度は、本発明の効果を奏する限りとくに限定されないが、例えば、垂直方向の硬度が6N以上であることが好ましく、8N以上であることがより好ましく、10N以上であることがさらに好ましい。
本発明において錠剤の硬度は、木屋式デジタル硬度計KHT−20N型(株式会社藤原製作所)を用いて測定される。
本発明の錠剤の崩壊性は、製造される錠剤の大きさ、形状、製錠時の圧力等により左右されるためこれらに応じて変更し得るので、本発明の効果を奏する限りとくに限定されないが、漢方薬単独からなる錠剤の崩壊時間(T)に対する、漢方薬およびパンテチン類からなる錠剤の崩壊時間(T)の割合の逆数、すなわち(T/T)にて評価される。
例えば、本発明の一実施形態について説明すると、漢方薬として防風通聖散および/または大柴胡湯を使用し、圧力25Mpaにて直径9mmの凸型錠剤を打錠して錠剤を製造する場合、崩壊性の向上(崩壊時間の短縮)はとくに限定されないが、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である。
錠剤の崩壊時間は、日本薬局方に記載の崩壊時間の測定法によって測定できるが、その他に適宜試験条件を設定し、水溶液中にて錠剤が崩壊する時間を測定すればよく、例えば、100mlビーカーに37℃の水80mlをいれ、2cmのスターラーバーを400rpmにて回転させ、錠剤を投入してから錠剤が目視により観察できなくなるまでの時間を測定することでも可能である。
本発明の錠剤の1日摂取量は、摂取対象に応じて適宜変更され得るが、例えば大人一人(体重60kg)に対する投与量は、漢方薬のエキスの乾燥重量総量またはエキス末総量で通常0.01〜12g程度、好ましくは0.05〜10g程度、より好ましくは0.07〜8g程度である。また、例えば漢方薬として防風通聖散を用いる場合は、エキスの乾燥重量総量またはエキス末総量で、通常0.1〜10g程度、好ましくは1.0〜8g程度、より好ましくは1.5〜6g程度である。また、本発明の医薬組成物は、通常一日2〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻は、特に限定されないが、食前または食間が好ましい。
(8)硬度向上剤、崩壊性向上剤
本発明の錠剤の硬度向上剤は、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とするものであり、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の硬度を高めることができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
また、本発明の錠剤の崩壊性向上剤は、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とするものであり、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の崩壊時間を短縮することができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
また、本発明の錠剤の硬度及び崩壊性向上剤は、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とするものであり、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬を含有する錠剤の硬度を高めることができ、かつ崩壊時間を短縮することができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
(9)硬度向上方法、崩壊性向上方法
本発明の錠剤の硬度向上方法によれば、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用することにより、上記漢方薬を含有する錠剤の硬度を高めることができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
本発明の錠剤の崩壊性向上方法によれば、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用することにより、上記漢方薬を含有する錠剤の崩壊時間を短縮することができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
本発明の錠剤の硬度および崩壊性向上方法によれば、防風通聖散、大柴胡去大黄湯、防已黄耆湯および大柴胡湯からなる群より選択される少なくとも1種の漢方薬と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用することにより、上記漢方薬を含有する錠剤の硬度を高めることができ、かつ崩壊時間を短縮することができる。パンテチン類および漢方薬の具体的な材料およびそれらの配合割合等は、前述の記載に従って適宜設定される。また、当該向上剤は、上記錠剤の製造方法に従い打錠することにより製造される。
本発明によれば、パンテチン類に代えてマルチトール、マンニトールまたはソルビトールなどの従来結合剤として使用されている物質を漢方薬と併用した場合より、優れた硬度を錠剤に付与することができる。また、本発明によれば、漢方薬を含有する錠剤、さらには漢方薬以外の物質を含有する錠剤においても、硬度および/または崩壊時間を短縮させることができる。
以下に実施例、処方例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
下記表2の配合割合にて、防風通聖散とパンテチンを混合した。
防風通聖散としては、原料乾燥重量に換算して、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0を、水20倍量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライを用いて乾燥した「防風通聖散エキス末」(スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った)を用いた。また、パンテチン類としては、80重量%パンテチン水溶液である「パンテチンA」(第一ファインケミカル株式会社製)を用いた。表中の配合割合は、防風通聖散エキス末については乾燥重量、パンテチンについては、パンテチンAのパンテチン含有率(80重量%)からそれぞれ算出した値である。得られた混合物0.36gを油圧打錠機SMP−3(理研精機株式会社製)を用いて圧力25Mpaにて直径9mmの凸型錠剤を打錠して錠剤を得た。この打錠時に杵や臼への錠剤の付着の有無を確認した。
得られた錠剤について、木屋式デジタル硬度計KHT−20N型(株式会社藤原製作所製)を用いて、錠剤に対して垂直方向の硬度を測定した。垂直方向は、打錠時に杵で加圧・圧縮する方向であり、水平方向は、垂直方向に対して直角の方向である。
また、得られた錠剤について崩壊時間を測定し、崩壊性の評価を防風通聖散単独からなる錠剤と比較して行った。各処方10錠の平均値の結果を表2に記した。
(崩壊時間の測定)
100mlビーカーに37℃の水80mlをいれ、2cmのスターラーバーを400rpmにて回転させ、錠剤を投入してから錠剤が目視により観察できなくなるまでの時間を測定した。
(崩壊性の評価)
防風通聖散単独からなる錠剤の崩壊時間(T)に対する、防風通聖散およびパンテチン類からなる錠剤の崩壊時間(T)の割合の逆数、すなわち(T/T)を算出して評価した。
Figure 0005328166
表2から明らかなように、防風通聖散エキス末にパンテチンを加えることにより、硬度の増加と、パンテチン類の添加濃度依存的な崩壊時間の短縮が観られた。防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が0.1重量部である場合、パンテチン類を含有しない錠剤と比較して、錠剤強度は格段に向上した。さらに、防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が1.0重量部である場合には、前者よりさらに錠剤強度が向上した。一方、防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が30重量部である場合には、打錠時に杵や臼への錠剤の付着が確認された。
実施例2
前記実施例1において、パンテチン類としてパンテチンを用い、パンテチンとしては「パントシン(登録商標)散50%」(第一三共株式会社製)を使用した。下記表3の配合割合で混合した以外は、上記実施例1と同様にして錠剤を製造し、硬度および崩壊時間を測定し、打錠時の杵や臼への付着の有無を観察した。なお、パンテチンの配合割合は細粒中のパンテチン含有率(50重量%)に基づき算出した。各処方10錠の平均値の結果を表3に記した。
Figure 0005328166
表3から明らかなように、上記パンテチンの細粒を使用した場合も、前記実施例1と同様に硬度の増加と、パンテチン類の添加濃度依存的な崩壊時間の短縮が観られた。防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が0.1重量部である場合、パンテチン類を含有しない錠剤と比較して、錠剤強度は格段に向上した。さらに、防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が1.0重量部である場合には、前者よりさらに錠剤強度が向上した。一方、防風通聖散100重量部に対するパンテチン類の総量が30重量部である場合には、打錠時に杵や臼への錠剤の付着が確認された。
実施例3
実施例1において、防風通聖散エキス末に代えて大柴胡湯を用いた以外は、実施例1と同様に錠剤を得た。その結果、硬度については、防風通聖散エキス末を用いた実施例1の結果より劣るものの、硬度および崩壊時間について、それぞれ実施例1と同様の傾向がみられた。また、大柴胡去大黄湯または防已黄耆湯を用いた以外は、実施例1と同様に錠剤を得た。結果としては、硬度および崩壊時間について、それぞれ実施例1と同様の傾向がみられたが、硬度については、防風通聖散エキス末を用いた実施例1の方がより高かった。
比較例1〜3
前記実施例1において、パンテチンに代えてマルチトール(東和化成工業株式会社製「レシス」:比較例1)、マンニトール(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「マンニトール」:比較例2)またはソルビトール(ソルビトール(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製):比較例3)を使用し、下記表4〜6の配合割合で混合した以外は、上記実施例1と同様にして錠剤を製造し、硬度を測定した。マルチトール、マンニトールおよびソルビトールは通常結合剤として使用されるものである。各処方10錠の平均値の結果を表4〜6に記した。
Figure 0005328166
Figure 0005328166
Figure 0005328166
表4〜6から明らかなように、結合剤として一般的に使用されるマルチトール、マンニトールまたはソルビトールを加えた場合は、望まれるほどの硬度の増加は観られなかった。
処方例1〜36
処方例1〜36に従い、常法により錠剤を製した。
Figure 0005328166
Figure 0005328166
Figure 0005328166
Figure 0005328166
Figure 0005328166
Figure 0005328166

Claims (4)

  1. 防風通聖散、ならびにパンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を含有する錠剤。
  2. 錠剤の垂直方向の硬度が6N以上である、請求項1に記載の錠剤。
  3. パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を有効成分とする、防風通聖散を含有する錠剤の硬度向上剤。
  4. 防風通聖散と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテインおよびパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用する、防風通聖散を含有する錠剤の硬度向上方法。
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