JP5325266B2 - 回転体のアンバランス量測定方法および装置 - Google Patents

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本発明は、ガスタービン、圧縮機等の回転機械に使用される回転体(例えばタービンホイール)のアンバランス量を測定する際のデータ処理に関し、さらに言えば、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)を利用して回転体のアンバランス量を測定する際のデータ処理方法を改善することで、回転体の回転数に変動があっても、その回転体の回転運動により生じる振動信号の一次成分のスペクトルを正確に(高精度に)求めることができる、回転体のアンバランス量測定方法および装置に関する。
回転体のアンバランス量を測定する方法のひとつとして、従来、同期整流方式が知られている。この方式では、まず、回転体(ワーク)の振動をセンサで計測してセンサ信号を得る(その際フィルタリングによりノイズを除去する)一方、前記回転体の回転に同期した信号を取り出して基準信号とする。そして、この基準信号と同位相で大きさがπの信号と、この基準信号に対して位相が(π/2)遅れた大きさがπの信号を生成し、それぞれをX成分用同期信号、Y成分用同期信号とする。こうして生成したX成分用同期信号とY成分用同期信号を用いて、前記センサ信号を同期整流し、さらに平均化して、前記回転体の回転振動速度のX成分とY成分を抽出する。最後に、これらX成分とY成分について影響係数を用いてベクトル演算を行い、アンバランス量を得る。
しかし、上述した同期整流方式では、フィルタリング、同期整流、平均化の各処理を行うアナログ処理系がノイズの影響を受けやすいため、所望の測定精度を実現するにはS/Nを向上させる必要がある、測定を高速化するには平均化処理の対象となるデータ量を削減する必要がある、という難点がある。
そこで、上述した同期整流方式のこのような問題点を解決する方法の一つとして、高速フーリエ変換(FFT)を使用する方式(以下、FFT方式という)が提案されている。この方式では、回転体(ワーク)の振動をセンサで測定して得た振動信号を高速フーリエ変換することで、前記回転体の回転周波数のスペクトル強度を求め、これを前記回転体の振動の大きさとみなしてアンバランス量を求める。FFT方式では、測定に必要ない周波数成分を高精度に除去できるため、外乱ノイズに強く、したがって上述した同期整流方式の上記難点が解消される(非特許文献1参照)。本発明は、このFFT方式を利用するものである。
本発明に関連する先行技術としては、特許文献1に開示された「振動測定装置」と、特許文献2に開示された「能動的制振装置」がある。
特許文献1の振動測定装置では、回転体の振動信号について、トラッキング・フィルタを用いて前記回転体の回転信号と同期したフィルタリング処理を行い、前記振動信号から回転一次周波数成分のみを取り出す。変換器により、この回転一次周波数成分を振幅に変換すると共に、前記回転信号(同期信号)を基準としてこの回転一次周波数成分の位相を求め、両者を記憶装置に記憶する。こうして記憶された前記回転一次周波数成分の振幅及び位相と、後に同様にして新たに測定され記憶された回転一次周波数成分の振幅及び位相とを、比較器で比較し、その結果を前記記憶装置に記憶すると共に表示装置で表示する。
前記回転体にネジの緩みやクラックが発生すると、前記回転一次周波数成分の位相が変化するので、前記回転体のアンバランスの変化が検出される。このように、前記回転一次周波数成分の振幅だけでなくその位相の変化をも検出できるので、従来は検出できなかった小さい状態変化を検出することができる。よって、より正確に前記回転体の状態を監視することができる(要約、請求項1、図1〜図2、段落0012〜0022を参照)。
特許文献1の振動測定装置では、トラッキング・フィルタは、アナログ方式であって、回転信号(同期信号)に同期して、振動信号の中からノイズを減衰させて回転一次周波数成分のみを取り出すために使用されている。
特許文献2の能動的制振装置は、振動センサにより、機械、構造物等の制振対象の振動を検出し、得られた振動信号をトラッキング・フィルタを通してからA/D変換器によりデジタル信号に変換する。トラッキング・フィルタは、前記振動信号を周波数成分ごとに分解して得たn個の振動信号成分に分割する。それらn個の周波数成分は、それぞれ、前記制震対象から得られる回転信号(同期信号)の周波数の整数倍の周波数を持つ。前記振動信号を周波数成分ごとに分解して得たn個の振動信号成分のデジタル信号は、デジタル演算器に入力され、それらの位相とゲインを相互に独立して最適値に調整した後、加算されて、制振信号が生成される。こうして得られた制振信号は、D/A変換器によりアナログ信号に変換されてから、制振用アクチュエータに入力される。こうして、前記制振対象に対して、広い周波数範囲にわたって効果的に振動を抑制することができる(請求項1、図1〜図3、段落0005〜0009を参照)。
特許文献2の能動的制振装置では、トラッキング・フィルタは、アナログ方式であって、振動信号を周波数成分ごとに分解して得たn個の振動信号成分(それぞれは制震対象から得られる回転信号(同期信号)の周波数の整数倍の周波数を持つ)に分割するために使用されている。
特開2001−289728号公報 特許第2778843号公報
デンソーテクニカルレビュー Vol.6、No.2(2001年)
上述した従来のFFT方式の回転体のアンバランス量測定方法では、周波数が離散的であるため、回転体(ワーク)の回転周波数が演算可能な周波数でないと、誤差が発生し、しかも、この誤差は測定時間を短くするにしたがって大きくなる、という問題点がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、回転体の回転数が変化しても、常に、前記回転体の振動信号の一次周波数成分のスペクトルを、従来より高精度に求めることができる、回転体のアンバランス量測定方法および装置を提供することにある。
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかになる。
(1) 本発明の回転体のアンバランス量測定方法は、
回転体の回転振動を検出して得た振動信号を、A/D変換してデジタル振動信号を生成し、
前記回転体の回転数信号の周波数fに同期した基準信号を、A/D変換してデジタル基準信号を生成し、
前記回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍して逓倍回転数信号を生成し、
前記振動信号及び前記基準信号の各々の離散データをFFT演算する際に適切な標本化周波数fsが得られるように、そのFFT演算の標本値数Nと前記逓倍比mを考慮して前記逓倍回転数信号に対する分周比dの値を設定し、
デジタル・トラッキング・フィルタにより、前記標本化周波数fsを用いて前記デジタル振動信号と前記デジタル基準信号に対して、前記回転数信号の周波数fとその近傍の成分を選択的に透過させ、
前記デジタル・トラッキング・フィルタを透過した前記成分のデータに対してFFT演算を行うことを特徴とするものである。
本発明の回転体のアンバランス量測定方法では、上記のように構成しているので、FFT演算の標本値数Nと分周比dと逓倍値mを適切に指定することで、前記デジタル振動信号及び前記デジタル基準信号の各々のデータをFFT演算する際に適切な前記標本化周波数fsを得ることができる。このため、FFT演算における測定周波数fmを指定しなくても、回転体30の回転数に追従する標本化周波数fsを生成することができる。また、回転体30の回転数に追従するスペクトルをFFT演算により正確に求めることができる。
よって、前記回転体の回転数の変化にかかわらず、常に、前記回転体の前記振動信号の一次周波数成分のスペクトルを、従来より高精度に求めることができる。
上記特許文献1に開示された振動測定装置では、トラッキング・フィルタは、アナログ方式であって、回転信号(同期信号)に同期して、振動信号の中からノイズを減衰させて回転一次周波数成分のみを取り出すために使用されている。また、特許文献2の能動的制振装置では、トラッキング・フィルタは、アナログ方式であって、振動信号を周波数成分ごとに分解して得たn個の振動信号成分(それぞれは制震対象から得られる回転信号(同期信号)の周波数の整数倍の周波数を持つ)に分割するために使用されている。
これに対し、本発明の回転体のアンバランス量測定方法では、前記回転数信号の周波数fをm倍に逓倍して逓倍回転数信号を生成し、所望の標本化周波数fsが得られるように分周比dを適切に設定して、前記逓倍回転数信号を分周し、デジタル・トラッキング・フィルタにより、前記標本化周波数fsを用いて前記回転数信号の周波数fとその近傍の成分を選択的に透過させ、前記回転数信号の前記デジタル・トラッキング・フィルタを透過した成分に対して、前記標本化周波数fsを用いてFFT演算を行うものである。
したがって、本発明の回転体のアンバランス量測定方法で使用される前記トラッキング・フィルタは、特許文献1及び2に開示されたトラッキング・フィルタとは、それらの構成と機能・効果の点で明らかに異なっている。
本発明の回転体のアンバランス量測定方法の好ましい例では、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードとを有する。
本発明の回転体のアンバランス量測定方法の他の好ましい例では、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、前記振動信号の周波数分布を知るための第3モードとを有する。
(2) 本発明の回転体のアンバランス量測定装置は、
回転体の回転振動を検出して得た振動信号を、A/D変換してデジタル振動信号を生成する第1A/D変換手段と、
前記回転体の回転数信号の周波数fに同期した基準信号を、A/D変換してデジタル基準信号を生成する第2A/D変換手段と、
前記回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍して逓倍回転数信号を生成する周波数逓倍器と、
前記逓倍回転数信号を分周比dで分周する可変分周器と、
標本化周波数fsを用いて前記デジタル振動信号と前記デジタル基準信号に対して、前記回転数信号の周波数fとその近傍の成分を選択的に透過させるデジタル・トラッキング・フィルタと、
前記デジタル・トラッキング・フィルタを透過した前記成分のデータに対してFFT演算を行うFFT演算手段とを備え、
前記振動信号及び前記基準信号の各々の離散データをFFT演算する際に適切な標本化周波数fsが得られるように、そのFFT演算の標本値数Nと前記逓倍比mを考慮して前記逓倍回転数信号に対する分周比dの値が設定されることを特徴とするものである。
本発明の回転体のアンバランス量測定装置では、本発明の回転体のアンバランス量測定方法で述べたのと同じ理由により、前記回転体の回転数の変化にかかわらず、常に、前記回転体の前記振動信号の一次周波数成分のスペクトルを、従来より高精度に求めることができる。
前記第1A/D変換手段と前記第2A/D変換手段は、共用してもよい。つまり、単一のA/D変換手段を設けて、前記振動信号と前記基準信号の双方で使用するようにしてもよい。
本発明の回転体のアンバランス量測定装置の好ましい例では、前記FFT演算手段におけるFFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードとを有する。
本発明の回転体のアンバランス量測定装置の他の好ましい例では、前記FFT演算手段におけるFFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、前記振動信号の周波数分布を知るための第3モードとを有する。
本発明の回転体のアンバランス量測定方法及び装置によれば、回転体の回転数の変化にかかわらず、常に、前記回転体の振動信号の一次周波数成分のスペクトルを、従来より高精度に求めることができる、という効果が得られる。
本発明の一実施形態に係る回転体のアンバランス量測定装置の全体構成を示す機能ブロック図である。 図1の回転体のアンバランス量測定装置に設けられたDSPの構成を示す機能ブロック図である。 図1の回転体のアンバランス量測定装置に設けられたDSPの動作を示すフローチャートで、測定モード0及び1での動作フローを示す。 図1の回転体のアンバランス量測定装置に設けられたDSPの動作を示すフローチャートで、測定モード2での動作フローを示す。 図1の回転体のアンバランス量測定装置に設けられたDSPの動作を制御するソフトウェアの機能を示すフローチャートである。 図1の回転体のアンバランス量測定装置に入力される、被測定物の回転に伴って生じる振動信号の周波数分布の一例を示すスペクトル図で、測定モード0で得られるものである。 図6の振動信号のスペクトルにバンドパスフィルタを作用させる状況を示すスペクトル図である。 図6の振動信号のスペクトルにバンドパスフィルタを作用させた結果として得られる振動信号の周波数分布のスペクトル図で、測定モード1で得られるものである。 図1の回転体のアンバランス量測定装置において、測定モード2で得られる振動信号0、振動信号1及び基準信号の間の関係を示す説明図である。 図1の回転体のアンバランス量測定装置のDSPに設けられたデジタル・トラッキング・バンドパスフィルタの動作特性を示すフローチャートである。 図1の回転体のアンバランス量測定装置のDSPに設けられたデジタル・トラッキング・バンドパスフィルタの回路構成例を示す説明図である。 二つの異なる周波数の成分の和で表される非周期信号のフーリエ変換を示すスペクトル図である。 図12の非周期信号のフーリエ変換を示す複素平面図である。 図12の非周期信号の一方の成分に異なる値の減衰係数をかけた場合の、その非周期信号のフーリエ変換の変化を示す複素平面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(回転体のアンバランス量測定装置の構成)
本発明の一実施形態に係る回転体のアンバランス量測定装置1の全体構成を、図1に示す。同図から分かるように、本実施形態に係る回転体のアンバランス量測定装置1では、測定対象(被測定物)である回転体30の回転軸30aの両端に、それぞれ、振動検出器(振動センサ)11及び12が設けられている。
振動検出器11は、回転体30の回転のアンバランスに起因する振動を検出し、アナログの振動信号0(第1振動信号に対応する)として増幅器13に出力する。増幅器13は、振動検出器11より送られた振動信号0を増幅して、アンチエイリアシング・フィルタ(anti-aliasing filter, AAF)15に出力する。AAF15は、増幅されたアナログ振動信号0をフィルタリングしてから切替回路18に出力する。
同様に、振動検出器12は、回転体30の回転のアンバランスに起因する振動を検出し、アナログの振動信号1(第2振動信号に対応する)として増幅器14に出力する。増幅器14は、振動検出器12より送られた振動信号1を増幅して、AAF16に出力する。AAF16は、増幅されたアナログ振動信号1をフィルタリングしてから切替回路18に出力する。
振動検出器11及び12は、測定装置1の外部に設けてもよい。その場合、振動検出器11及び12から送られるアナログ振動信号0及び1を、測定装置1に取り込むようにすればよい。
回転体30の回転軸30aの一端の近傍には、さらに、光反射センサ24が設けられている。光反射センサ24は、回転体30の回転に同期したアナログの回転数信号(その周波数をfとする)を生成し、周波数逓倍器22に出力する。回転数信号は、回転体30の1回転につき、1パルスを発生するのが好ましい。周波数逓倍器22としては、PLL(Phase-Locked Loop)回路を使用するのが好ましい。
光反射センサ24も、測定装置1の外部に設けてもよい。その場合、光反射センサ24から送られるアナログ回転数信号を、測定装置1に取り込むようにすればよい。
周波数逓倍器22は、アナログ回転数信号の周波数を所定の逓倍比m(ただしm>1)(例えば256倍)に逓倍し、得られたアナログ逓倍回転数信号を後述するデジタル信号処理器(Digital Signal Processor, DSP)20に出力する。アナログ逓倍回転数信号の周波数はmfとなる。周波数逓倍器22は、それと同時に、アナログ逓倍回転数信号をカウンタ23にも出力する。カウンタ23は、アナログ逓倍回転数信号の波形を整形して、アナログ回転数信号と周波数が同一(つまりf)でデューティ比50%のパルスを生成する。こうして生成されたパルス信号が、回転体30の回転に同期する(回転体30の回転数に一致する)アナログの「基準信号」となる。このアナログ基準信号はAAF17に送られる。AAF17は、この基準信号をフィルタリングしてから切替回路18に出力する。
AAF15及び16は、それぞれ、増幅器13及び14より出力されたアナログの振動信号0及び振動信号1から、それらをデジタル信号に変換する際に生じる折り返し雑音(エイリアス)を除去(遮断)するフィルタである。AAF17も、カウンタ23より出力された基準信号から、それをデジタル信号に変換する際に生じる折り返し雑音(エイリアス)を除去(遮断)するフィルタである。これらは通常、ローパスフィルタにより構成される。
切替回路18は、DSP20より送られる入力切替信号に応答して、三つのチャネルを介して入力される三つのアナログ信号、すなわち、振動信号0、振動信号1及び基準信号から一つを選択し、A/D変換器19に出力する。したがって、入力切替信号の内容に応じて振動信号0、振動信号1及び基準信号のいずれか一つがA/D変換器19に送られることになる。切替回路18としては、これら三つのアナログ信号を切り替えることができる回路であれば、公知の構成を使用できる。
A/D変換部19は、入力されるアナログの振動信号0、振動信号1または基準信号を、標本化周波数fsで標本化することによってデジタル信号に変換し、デジタルの振動信号0、振動信号1または基準信号を生成し、DSP20に送る。A/D変換部19でのA/D変換処理は、次のようにして行われる。
A/D変換部19は、DSP20の制御部21Aと協働してA/D変換処理を実行する。すなわち、A/D変換部19は、制御部21Aから送信される変換開始命令(DSP20については後に詳述する)を待機している。その変換開始命令は、制御部21Aが、後述するDSP20内に設けられた可変分周器20dにおいて最適値に等しい標本化周期Ts=(1/fs)を検知する毎に送信される。この検知は、可変分周器20d内のレジスタ(図示せず)を監視することで容易に実行できる。こうして、その時にA/D変換部19に入力されているアナログ信号(すなわち振動信号0、振動信号1または基準信号)の標本化が実行される。このため、DSP20の入力制御部20eから切替回路18に送られる入力切替信号によって、A/D変換部19に入力されるアナログ信号を切り替えれば、振動信号0、振動信号1及び基準信号のそれぞれについて、最適な標本化周波数fsでA/D変換を行うことができる。(標本化したデータの量子化は、公知の方法を用いて実行すればよい。)
A/D変換部19は、こうして生成されたデジタル信号をDSP20に出力する。DSP20は、入力されたデジタル信号を、DSP20に外付けされた記憶装置21にいったん記憶し、その後、必要に応じてこれを読み出して、必要な処理(フィルタリング演算やFFT演算)を実行する。
後述するように、標本化周波数fsの最適値は、周波数逓倍器22の逓倍比mの値と、可変分周器20dの分周比dの値とを、調整することで設定される。A/D変換部19としては、上述した機能を実行できるものであれば、任意の公知の構成を使用できる。
DSP20は、標本化周波数fsを最適値に設定するほか、主としてデジタル・トラッキング・フィルタ演算とFFT演算を実行する。
DSP20の外部には、DSP20内で生成されたデータを記憶する記憶装置21と、DSP20の全体動作を制御する制御部21Aが設けられている。記憶装置21としては、公知のRAM(Random-Access Memory)が使用可能であるが、これに限定されるわけではない。制御部21Aは、DSP20の全体動作を制御する制御プログラムから構成されており、この制御プログラムは公知のROM(Read-Only Memory)に格納されている。制御部21Aは、RS−232Cケーブルを介して、測定装置1の外部に設けられたホスト・コンピュータ40に接続されており、ホスト・コンピュータ40からの指示に応じてDSP20を制御する。
A/D変換部19で生成・出力されるデジタルの振動信号0、振動信号1及び基準信号は、それぞれ、上述したようにして決定された最適な標本化周期Ts=(1/fs)で時間軸に沿って配置された複数個の離散値を持つ。これら三つの信号の離散値データは、それぞれDSP20に送られ、DSP20に外付けされた記憶装置21に記憶される。例えば、デジタル振動信号0の全離散値データは、記憶装置21の第1領域に記憶され、デジタル振動信号1の全離散値データは、記憶装置21の第2領域(第1領域とは異なる)に記憶され、基準信号の全離散値データは、記憶装置21の第3領域(第1領域及び第2領域とは異なる)に記憶される。こうして記憶された全離散値データは、必要に応じてDSP20内で実行されるFFT演算に使用される。
ホスト・コンピュータ40は、本実施形態の測定装置1(DSP20を含む)の全体動作と、回転体30の回転・停止動作とを制御する。すなわち、ホスト・コンピュータ40は、後述するモードやレンジの指定命令、測定開始・停止命令等を測定装置1に随時送信する。測定装置1は、それらの命令を受信した後、それら命令にしたがって動作する。ホスト・コンピュータ40は、回転体30の回転開始と停止、並びに回転速度も制御する。ホスト・コンピュータ40は、さらに、DSP20ひいては測定装置1から出力されるスペクトル・データに基づいて、回転体30のアンバランス量を計算し、回転体30の振動を解析する。
(DSPの構成及び動作)
次に、DSP20の構成について詳細に説明する。
DSP20は、図2に示すように、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20a、FFT演算部20b、送受信部20c、可変分周器20d及び入力制御部20eを備えている。デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20a、FFT演算部20b、送受信部20c、可変分周器20d及び入力制御部20eの動作は、制御部21A(の制御プログラム)によって制御される。
入力制御部20eは、入力切替信号を切替回路18に送って、A/D変換部19から出力されるデジタルの振動信号0、振動信号1及び基準信号のいずれか一つを選択し、選択された一つのデジタル信号の全離散値データを取り込んで、記憶装置21の所定領域に記憶させる。したがって、入力切替信号によりDSP20への入力を切り替えて振動信号0、振動信号1及び基準信号を順に選択すれば、これら三つの信号の全離散値データを記憶装置21に記憶させることができる。これらの離散値データは、記憶状態でも、最適な標本化周期Ts=(1/fs)に等しい間隔で、時間軸に沿って配置された状態を保持する。こうして記憶装置21に記憶された振動信号0、振動信号1及び基準信号の離散値データは、それぞれ、必要に応じて読み出され、FFT演算に使用される。
可変分周器20dは、ホスト・コンピュータ40から送られる命令に基づき、アナログの振動信号0、振動信号1または基準信号の標本化に使用される標本化周波数fsを、FFT演算部20bで実行されるFFT演算に最適な値(FFT演算が正確に行われる値)に設定する。その際には、FFT演算で使用される標本値数(ポイント数)Nに応じて、周波数逓倍器22の逓倍比mの値と可変分周器20dの分周比dの値とを適宜設定する。こうすることで、標本化周波数fsを最適値に設定することができる。可変分周器20dは、公知のデジタル回路から構成される。
制御部21A(の制御プログラム)は、可変分周器20d中のレジスタを監視することで、最適値に等しい標本化周期Tsを検知することができる。標本化周期Tsが最適値に等しくなったことを検知すると、制御部21Aは、その標本化周期Ts毎に変換開始命令をA/D変換部19に送信する。A/D変換部19は、入力される変換開始命令に従って、その時にA/D変換部19に入力されているアナログ信号(すなわち振動信号0、振動信号1または基準信号)を標本化する。このため、DSP20の入力制御部20eから切替回路18に送られる入力切替信号によって、A/D変換部19に入力されるアナログ信号を切り替えれば、振動信号0、振動信号1及び基準信号のそれぞれについて、標本化周波数fsをFFT演算に最適な値に設定してA/D変換が行われる。
可変分周器20dは、このようにして、回転体30の回転数信号の周波数fの変化に追従し、分周比dの値により標本化周波数fsを適宜調整する。そして、A/D変換で使用される標本化周波数fsをFFT演算部20bでのFFT演算が正確に行われる値に設定するのである。
デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aは、記憶装置21に記憶された振動信号0、振動信号1及び基準信号の離散値データに対して、必要に応じてバンドパス・フィルタリングを実行する。すなわち、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aは、回転体30の回転数信号の周波数fの値の変化に追従する標本化周波数fsを用いてバンドパス・フィルタリングを実行する。したがって、後述するように、使用するバンドパス・フィルタの透過周波数領域も追従する。この特性に基づいて実時間のフィルタリングを行い、当該離散値データの測定周波数fm(これは回転数信号の周波数fに等しい)とその近傍の周波数成分のみを選択的に透過させる。こうして、振動測定の障害になるノイズを除去するのである。デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aは、公知のデジタル回路から構成される。
FFT演算部20bは、記憶装置21に記憶された振動信号0、振動信号1及び基準信号のフィルタリング前の離散値データに対して、あるいは、それら三つの信号のフィルタリング後の離散値データに対して、FFT演算を実行する。これらの離散値データは、記憶状態でも時間軸に沿って配置された状態を保持しているから、また、標本化周波数fsがFFT演算が正確に行われる値を持つように決定されているから、FFT演算の結果は正確なものとなる。FFT演算部20bは、公知のデジタル回路から構成される。
送受信部20cは、記憶装置21に記憶されたFFT演算の結果を読み出し、ホスト・コンピュータ40に送信する。また、ホスト・コンピュータ40から送られる命令等を受信する。
(回転体のアンバランス量測定装置の動作)
次に、以上の構成を持つ本実施形態の回転体のアンバランス量測定装置1の動作について説明する。
標本化された標本値に対して適用されるフーリエ変換が、離散時間のフーリエ変換である、フーリエ変換は、標本値群の連続な周波数(時間は離散だが周波数は連続である)における、スペクトルの周波数分布を提供する。フーリエ変換は本来、無限に続く時間(連続時間)での信号の標本値に対して適用されるが、本実施形態の測定装置1のような測定装置では、そのような連続時間での信号の標本値から一部を切り出し、本来の信号と見なして測定する。このような理由から、一部の標本値にフーリエ変換を適用すると正しい周波数解析ができない、という難点がある。つまり、単一のスペクトルの場合は、所望するスペクトルが得られるが、本来存在しない周波数域にスペクトルが現れてしまう。複数のスペクトルの場合は、それらスペクトルが互いに干渉し合って、本来存在しない周波数域にスペクトルが現れてしまう。
離散時間のフーリエ変換は連続な周波数であるために、コンピューターやDSPで計算することは不可能である、測定時間内の非周期信号を無限時間続く周期信号と見なし、離散的な周波数になる離散時間のフーリエ級数を応用したものが離散的フーリエ変換(Discrete Fourier Transform, DFT)である、しかし、DFTの計算には膨大な時間がかかる。そこで、DFTを高速に演算する方法として考案されたのがFFT演算である。
FFT演算は、その標本値数をNとすると、離散時間のフーリエ変換が提供するスペクトルの周波数分布における、離散周波数(2π/N)(rad)ごとのスペクトルを求める演算である。従って、測定時間内に切り出された標本値に対してFFT演算を実行しても、常に正しいスペクトルが得られるわけではない、正しいスペクトルを得るには、標本化周波数を適切に設定しなければならないのである。以下に詳細に説明する。
FFT演算で正確に所望のスペクトルを求めるには、実際(連続時間)の測定周波数(つまり一次成分の周波数)fm(Hz)に対する離散時間の周波数をλとすると、定数kを用いて、
λ=k(2π/N) (1)
の関係を満たす必要がある。ただし、定数kは正の整数である。
ここで、T(sec)を標本化周期、ω(rad)を角周波数とすると、
λ=ωT (2)
の関係があるから、
k(2π/N)=ωT=2π・fm・T
k=fm・T・N (3)
の関係が成り立つ。
他方、定数kを標本化周波数fsを用いて表すと、
k=fm(N/fs)または fm=k(fs/N) (4)
となる。
ここで、(fs/N)は、FFT演算の基本周波数(周波数分解能)を示すから、定数kはFFT演算での基本周波数の何番目になるかをも表す。従って、FFT演算で測定対象信号の正確なスペクトルを計算するには、当該信号の周波数(測定周波数)fmが基本周波数(fs/N)のk倍になっていればよいことになる。
本実施形態の測定装置1では、周波数逓倍器22で回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍して周波数がmfのパルス信号を作り、可変分周器20dにおいて分周比dで分周して標本化周波数fsを設定するので、
fs=m(f/d) (5)
が成り立つ。
また、測定装置1では、回転数信号の周波数fが測定信号の周波数fmに対応するから、数式(5)は、
fs=m(fm/d) (6)
と表せる。
FFT演算に最適な標本化周波数fsを得るためには、数式(4)と(6)から、定数kが
k=fm(N/fs)=Nd/m (7)
の関係を満たせばよい。
FFT演算の標本値数Nと逓倍比mは既知だから、数式(6)、(7)の関係から分かるように、分周比dにより標本化周波数fsと定数kが同時に決まる。換言すれば、数式(6)にしたがって標本化周波数fsを決めれば、数式(7)から定数kは簡単な整数の関係により決まる。よって、定数kがいずれかの「正の整数」になるように分周比dを指定すれば、FFT演算で正確にスペクトルを求める条件を満たすことができる。このとき、数式(6)で決まる標本化周波数fsが最適値になるのである。なぜなら、この標本化周波数fsが定数kを整数たらしめる条件だからである。標本化周波数fsは分周比dで決まるから、ある程度の自由度を持つ。標本化周波数fsは、測定信号の周波数fmに追従して変化し、顕わには現れない。
よって、回転体30の回転数(周波数=f)に追従する逓倍回転数信号(周波数=mf)を利用して標本化周波数fsを生成すれば、FFT演算部20bでのFFT演算における測定周波数fmを指定しなくても、回転体30の回転数に追従する標本化周波数fsを生成することができる。また、回転体30の回転数に追従するスペクトルをFFT演算により正確に求めることができる。
デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aのデジタル・フィルタの特性を決定するフィルタ係数は、標本化周波数fsを元に設計されたフィルタリング特性(遮断周波数、通過帯域周波数等)が標本化周波数fsの定数倍で決まるから、標本化周波数fsが回転体30の回転数に追従すれば、フィルタリング特性もその回転数に追従(トラッキング)する。したがって、デジタル・トラッキング・フィルタが実現できることになる。
分周比dにより定数kが所望の整数に決定されるから、測定周波数fmが周波数分解能の何番目かに現れるかが分かる。つまり、数式(4)より、fm=(k/N)fsだから、測定周波数のスペクトルは周波数軸上において、標本化周波数fsの(k/N)倍の位置に現れることになり、従って(k/N)の位置も追従するのである。デジタル・フィルタのフィルタ係数については、(k/N)が知れるから、この周波数が通過する帯域通過特性に設計すればよい。後述するレンジが変われば、定数kも変わるから、その都度、予め計算された(k/N)が通過するフィルタ係数をROMより読み込み、デジタル・トラッキング・フィルタの周波数特性を更新するようにしている。
周波数逓倍器22で回転数信号の周波数fをm倍に逓倍するのは、分周比dの指定範囲を広くして、定数kと標本化周波数fsの指定範囲を広くするためである。そうすると、標本化周波数fsを段階的に低くすることも高くすることもできるから、測定時間、周波数分解能を調整することができる。
この点を考慮して、この測定装置1では、5段階のレンジ(レンジ1、2、3、4、5)を設定していて、ホスト・コンピュータ40からのレンジ切替命令によって任意に切り替えできるようになっている。各レンジにおいて、分周比dはそれぞれ2、4、6、8、10に設定されている。つまり、レンジ1ではd=2、レンジ2ではd=4、レンジ3ではd=6、レンジ4ではd=8、レンジ5ではd=10とされている。測定装置1は、ホスト・コンピュータ40からのレンジ切替命令に応じてレンジを切り替えることで、分周比dの値を5段階に変更する。なお、レンジの数と、分周比dの値は、ここに挙げたものに限定されるわけではなく、必要に応じて任意に変更可能である。
このため、レンジが変わるごとに分周比dの値が変わるから、レンジ毎に標本化周波数fsの値と一次成分の周波数位置が変わり、それに応じてデジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aの測定周波数fmの値が変わる。このために、同演算部20aによるデジタル・トラッキング・フィルタの周波数特性を決定する係数は、各レンジの測定周波数fmの値に整合するように設定されていて、その係数データは図示しないROMに格納されている。レンジが変わる毎に、最適な係数がROMから読み出され、その係数が入れ替えられることで、デジタル・トラッキング・フィルタの周波数特性が変更される。この動作の制御は、制御部21Aによって行われる。
測定装置1は、三つの測定モード、すなわち測定モード0、測定モード1、測定モード2を持ち、ホスト・コンピュータ40からの指令によっていずれかの測定モードが選択されて実行される。
「測定モード0」は、回転体30の回転時の周波数分布を表示するモードであり、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aを動作させずに、FFT演算部20bでFFT演算を行う。標本化周波数fsは、回転体30の回転数に追従して変化する。例えば、FFT演算の標本化標本値数Nを512とし、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の三つのチャネルのそれぞれについて、200個のスペクトル・データを出力する。ホスト・コンピュータ40は、これらのスペクトル・データに基づいて、下記の数式を用いて各回転数における電圧と位相を算出する。なお、これらスペクトル・データの出力方法は、n番目の複素数スペクトルzをz=a+bj(jは虚数単位)で表し、(a、b)を一つのスペクトル・データとして区切り記号を付けて、ホスト・コンピュータに出力する。
具体的には、電圧と位相は次の数式で求められる。
電圧: V=20|a+bj|=20(a +b 1/2(V) (8)
位相: θ=tan-1(b/a)(rad) (9)
こうすることで、図6に示すような周数数特性図が得られるから、抽出したい信号に対して、ノイズ混入状態とノイズ源を特定することができる。また、この周数数特性図から、回転体30の回転に伴う測定装置1自体の周波数特性を把握することができ、したがって、回転体30の回転機構とアンバランス量測定装置1とホスト・コンピュータ40を含む測定システム全体の性能を向上させることができる。
「測定モード1」は、回転体30の回転に伴うデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の一次周波数成分を抽出し、それ以外の成分(雑音)を除去して、回転体30回転時の周波数分布を表示するモードである。測定モード1では、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aを動作させながら、測定モード0と同じFFT演算をFFT演算部20bで行う。
例えば、FFT演算の標本化の標本値数Nを512とし、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の三つのチャネルのそれぞれについて、200個のスペクトル・データを出力する。この時、標本化周波数fsが回転体30の回転数に追従して変化するので、各回転数(周波数)について、ノイズが除去された一次周波数成分のみの正しいスペクトル・データが得られる。ホスト・コンピュータ40は、上記数式(8)と(9)を用いて、これらのスペクトル・データに基づいて各回転数における電圧と位相を算出する。こうすることで、回転体30の回転に伴う振動信号(図7を参照)の一次周波数成分を抽出し、ノイズを除去した周波数特性(図8を参照)が得られる。これを用いると、振動信号の一次周波数成分に対するノイズの減衰の程度を視認することができる。
「測定モード2」は、測定モード1と同様に、回転体30の回転に伴うデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の一次周波数成分を抽出し、それ以外の成分(雑音)を除去して、回転体30回転時の一次周波数成分のスペクトルのみを表示するモードであり、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aを動作させながら、モード0と同じFFT演算をFFT演算部20bで行う。しかし、測定モード1とは異なり、FFT演算の標本化標本値数Nが測定モード1より小さくしてあって、測定モード1よりも測定時間が短縮されている。この測定装置1の中心となるモードである。
例えば、FFT演算の標本化の標本値数Nを64とし、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の三つのチャネルのそれぞれについて、一つのスペクトル・データを出力する。ホスト・コンピュータ40は、上記数式(8)と(9)を用いて、これらのスペクトル・データに基づいて各回転数における電圧と位相を算出する。スペクトル・データの出力方法は、次のようにする。すなわち、デジタル振動信号0の複素数スペクトルzをz=a+bjで表し、(a、b)を一つのスペクトル・データとする。デジタル振動信号1の複素数スペクトルzをz=a+bjで表し、(a、b)を一つのスペクトル・データとする。デジタル基準信号の複素数スペクトルzをz=a+bjで表し、(a、b)を一つのスペクトル・データとする。そして、それらスペクトル・データの間に区切り記号をつけてホスト・コンピュータに出力するのである。
具体的に言うと、振動信号0については、
電圧: V=20|a+bj|=20(a +b 1/2(V)
位相: θ=tan-1(b/a)(rad)
振動信号1については、
電圧: V=20|a+bj|=20(a +b 1/2(V)
位相: θ=tan-1(b/a)(rad)
基準信号については、
電圧: V=20|a+bj|=20(a +b 1/2(V)
位相: θ=tan-1(b/a)(rad)
逓倍されたアナログ回転数信号の波形を整形して得たデューティ比50%のパルス、すなわち基準信号の角度基準エッジ(基準信号パルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジから形成される)と、アナログ回転数信号との間の位相ずれは、ゼロである。アナログの振動信号0と振動信号1と基準信号とは、同じ特性を持つAAF15,16、17及びデジタル・トラッキング・フィルタを通過するから、現実の角度基準エッジと振動信号0の位相ズレと、現実の角度基準エッジと振動信号1の位相ズレとは、各々の一次周波数成分スペクトルの位相ずれに保存される。したがって、基準信号に対する振動信号0の位相ずれ(角度)Θと、基準信号に対する振動信号1の位相ずれ(角度)Θは、それぞれ、
Θ=θ − θ
Θ=θ − θ
で表される。
これを図示すると、図9のようになる。これにより、測定モード2では、回転体30の外周面上における振動信号0及び1のアンバランスが、角度基準エッジに対してどの程度ずれた位相(角度)の位置にあるかが分かる。
図5は、DSP20ひいては測定装置1の動作全体を制御する制御部21A(のプログラム)による一連の動作の概略を示すフローチャートである。
DSP20は、上述したように、五つのレンジと三つの測定モードを持っている。
まず、ステップS41では、ホスト・コンピュータ40から命令が送られて来たか否かを判断する。換言すれば、ホスト・コンピュータ40から何らかの命令が送られて来るのを待機する。ホスト・コンピュータ40から何らかの命令が来ている場合は、ステップS42に進む。来ていない場合は、最初に戻って待機を続ける。
ステップS42では、ホスト・コンピュータ40からレンジ指定命令が来ているか否かを判断する。レンジ指定命令が来ている場合は、ステップS43に進み、送られてきたレンジ指定命令に応じてDSP20を5段階のレンジ(レンジ1、2、3、4、5)のいずれに設定してから、最初に戻る。レンジ指定命令が来ていない場合は、何もしないでステップS44に進む。
ステップS44では、ホスト・コンピュータ40からモード指定命令が来ているか否かを判断する。モード指定命令が来ている場合は、ステップS45に進み、送られてきたモード指定命令に応じてDSP20を三つの測定モード(測定モード0、測定モード1、測定モード2)のいずれかに設定してから、最初に戻る。モード指定命令が来ていない場合は、何もしないでステップS46に進む。
ステップS46では、ホスト・コンピュータ40から測定命令が来たか否かを判断する。測定命令が来ていない場合は、何もしないで最初に戻る。測定命令が来ている場合は、ステップS47に進む。
ステップS47では、モード指定命令が測定モード2であるか否かを判断する。測定モード2でない場合は、ステップS48に進み、測定モード0及び1用の一連の動作(図3のフローチャート参照)を実行してから最初に戻る。測定モード2である場合は、ステップS49に進み、測定モード2用の一連の動作(図4のフローチャート参照)を実行してから最初に戻る。
DSP20(測定装置1)は、以上のような動作フローにより、最初にレンジ設定を行い、次にモード設定を行うことで、測定環境(測定条件)を決定する。その後、測定命令を待って測定モード0、1及び2のいずれかを選択して実行するようになっている。
次に、測定モード0と測定モード1の動作の詳細について、図3を参照しながら説明する。図3は、測定モード0と測定モード1の動作の詳細を示すフローチャートである。
記憶装置21の内部には、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算用として、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号を格納する領域(副領域、フィルタ演算領域)が設けられている。この領域は、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号のデータを標本化周期Tsで獲得する毎にシフトし、実時間処理をする。
ステップS1では、データ取込の準備ができているかどうか、を判断する。この判断は、DSP20の入力制御部20eが行う。
DSP20では、図5のフローチャートに示すように、ステップS1より前に、ホスト・コンピュータ40から送られたレンジ指定命令によってレンジが指定されるから、可変分周器20dの分周比dは、指定されたレンジに対応する値に設定されている。例えば、レンジ1ではd=2、レンジ2ではd=4、レンジ3ではd=6、レンジ4ではd=8、レンジ5ではd=10とされている。また、可変分周器20dは、FFT演算の標本値数Nと逓倍比mの与えられた値を前提とし、レンジ指定命令に対応する分周比dの設定値に応じて、上述した数式(7)を用いて標本化周波数fsを最適値に設定する。その最適値に対応する標本化周期Ts(1/fs)を検知すると、その標本化周期Ts毎に変換開始命令をA/D変換部19に送信する。A/D変換部19は、その変換開始命令を用いてアナログの振動信号0、振動信号1または基準信号の標本化を行い、デジタルの振動信号0、振動信号1または基準信号を生成する。
DSP20の制御部21A(のプログラム)は、可変分周器20d中のレジスタ(図示せず)を監視していて、可変分周器20dで設定された標本化周期(1/fs)の最適値を知ることができるようになっている。このため、標本化周期(1/fs)の値が最適値になると、「データ取込OK」と判断し、ステップS2に進んで、DSP20へのデータの取込を開始する。
ステップS2では、入力制御部20eが、入力切替信号を切替回路18に送信することにより、アナログ振動信号0を取り込んで、A/D変換器19でA/D変換し、デジタル振動信号0を生成する。そして、ステップS3で、ステップS2で生成したデジタル振動信号0の離散値データを記憶装置21の所定領域に格納する。当該離散値データは、同時に記憶装置21の副領域全体をシフトし、空いた領域に格納する。
続くステップS4では、入力制御部20eが、取り込む信号を振動信号0から振動信号1に切り替える。すなわち、入力切替信号を切替回路18に送信することにより、アナログ振動信号1を取り込むのである。そして、ステップS5で、取り込んだアナログ振動信号1をA/D変換器19でA/D変換し、デジタル振動信号1を生成する。そして、ステップS6で、そのデジタル振動信号1の離散値データを記憶装置21の所定領域に格納する。当該離散値データは、同時に記憶装置21の副領域全体をシフトし、空いた領域に格納する。
続くステップS7では、入力制御部20eが、取り込む信号を振動信号1から基準信号に切り替える。すなわち、入力切替信号を切替回路18に送信することにより、基準信号を取り込むのである。そして、ステップS8で、取り込んだアナログ基準信号をA/D変換器19でA/D変換し、デジタル基準信号を生成する。そして、ステップS9で、そのデジタル基準信号の離散値データを記憶装置21の所定領域に格納する。当該離散値データは、同時に記憶装置21の副領域全体をシフトし、空いた領域に格納する。
続いて、ステップS10では、入力制御部20eが、処理対象を基準信号から振動信号0に切り替える。つまり、次のフィルタ演算とFFT演算の対象となる信号をデジタル振動信号0に設定する。そして、次のステップS11で、現在の処理モードがモード1と指定されている否かを判断する。この判断は、制御部21Aが行う。
ステップS11で、現在の測定モードがモード1と指定されている場合は、ステップS12に進み、記憶装置21の副領域に格納されたデータ、すなわち、シフトされた過去のデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データを読み出して、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算を実行し、当該演算実行後の離散値データを記憶装置21の所定領域に戻す。つまり、フィルタ演算後のデータに入れ替える。そして、ステップS13で、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々のデータ数が512に達したか否かを判断し、データ数が512に達していない場合は、最初にもどって、ステップS1以降を再度、実行する。これをデータ数が512に達するまで繰り返す。
フィルタ演算が完了したデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号のデータ数それぞれが512に達すると、ステップS14に進み、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算を実行したデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データを、順に記憶装置21から読み出して、FFT演算を実行し、当該演算実行後の全離散値データを記憶装置21に戻す。
その後、ステップS15で、記憶装置21の演算結果を読み出して、換言すれば、フィルタ演算とFFT演算の双方が実行されたデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データ(各々512個ずつある)を、順に記憶装置21から読み出して、先頭から200個ずつ、ホスト・コンピュータ40に送信する。これで、測定モード1の一連の動作が終了する。
他方、ステップS11で、現在の測定モードがモード1と指定されていない場合、つまり、現在の測定モードがモード0と指定されている場合は、ステップS12を飛ばしてステップS13に進む。その後は、現在の処理モードが測定モード1と指定されている場合と同様である。つまり、ステップS13では、フィルタ演算を実行していないデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号のデータ数がそれぞれ512に達したか否かを判断し、データ数が512に達していない場合は、最初にもどって、ステップS1以降を再度、実行する。これをデータ数が512に達するまで繰り返す。
ステップS13で、フィルタ演算を実行していないデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号のデータ数が512に達すると、ステップS14に進む。そして、それらデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データを、順に記憶装置21から読み出して、FFT演算を実行し、当該演算実行後のデ全離散値データを記憶装置21に戻す。
その後、ステップS15で、記憶装置21の演算結果、すなわち、FFT演算のみが実行されたデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の全離散値データ(各々512個ずつある)を記憶装置21から読み出して、先頭から200個ずつ、ホスト・コンピュータ40に送信する。これで、測定モード0の一連の動作が終了する。
次に、測定モード2の動作の詳細について、図4を参照しながら説明する。図4は、測定モード2の動作の詳細を示すフローチャートである。
ステップS21〜S30までの動作は、図3のステップS1〜S10までのそれと同じであるから、その説明は省略する。
ステップS31は、ステップS12と同じである。すなわち、記憶装置21の副領域に格納されたデータ、すなわち、シフトされた過去のデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データを読み出して、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算を実行し、当該演算実行後の離散値データを記憶装置21の所定領域に戻す。そして、ステップS32で、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々のデータ数が64に達したか否かを判断し、データ数が64に達していない場合は、最初にもどって、ステップS21以降を再度、実行する。これをデータ数が64に達するまで繰り返す。
測定モード2では、FFT演算の標本化の標本値数Nが64であり、測定モード0及び1の標本化の標本値数Nである512の(1/8)になっているので、取り込むデータ数が64と少なく、したがって、演算時間ひいては測定時間が大幅に短縮される。
フィルタ演算が完了したデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号のデータ数それぞれが64に達すると、ステップS33に進み、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算を実行したデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の全離散値データを、順に記憶装置21から読み出して、FFT演算を実行し、当該演算実行後の全離散値データを記憶装置21に戻す。
その後、ステップS34で、記憶装置21の演算結果を読み出して、換言すれば、フィルタ演算とFFT演算の双方が実行されたデジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号の各々の一次周波数成分スペクトルデータを、各々1個(計3個)、順に記憶装置21から読み出して、ホスト・コンピュータ40に送信する。これで、測定モード2の一連の動作が終了する。
次に、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aについて、詳細に説明する。
デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aの周波数特性は、バンドパスフィルタの特性を持ち、例えば図10のような特性になる。すなわち、図10のように、所望の測定周波数fmとその近傍において、フィルタの減衰率が1(減衰なし)に設定され、そのすぐ外側ではフィルタの減衰率が0.01より徐々に小さく設定され、それ以外の領域ではフィルタの減衰率が0.01に設定される。
図11は、デジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aを実現するデジタル・トラッキング・フィルタの構成例を示す。このフィルタは。同図に示すように、複数個のレジスタ51aを直列に接続してなるシフトレジスタ51と、レジスタ51aと同数の係数乗算器52と、一つの加算器53とを備えている。これらのレジスタ51aのために、記憶装置21の内部には、デジタル・トラッキング・バンドパスフィルタ演算用として、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号を格納する副領域が設けられている。
上述したように、DSP20では、レンジが変わるごとに分周比dの値が変わるから、レンジ毎に標本化周波数fsと一次成分の周波数位置が変わり、それに応じてデジタル・トラッキング・フィルタ演算部20aの測定周波数fmの値が変わる。このために、同演算部20aによるデジタル・トラッキング・フィルタの周波数特性を決定する係数は、各レンジの測定周波数fmの値に整合するように設定される。図11の構成のフィルタでは、これらのフィルタ周波数特性を決定する係数は、係数乗算器52の各々に使用される係数データとして設定される。
次に、デジタル振動信号0、デジタル振動信号1及びデジタル基準信号に対して、FFT演算の前にデジタル・トラッキング・フィルタを作用させる理由を説明する。
システムに二つの離散時間の周波数λ1、λ2を持つ非周期信号x[n]=Aejλ1n+Bejλ2n(0≦n≦N−1、A及びBは複素振幅、λ1≠λ2)を入力する場合を考える。ただし、λ1とλ2は、FFT演算の基本周波数の整数倍にならない周波数とする。
周波数λ1の信号と周波数λ2の信号のフーリエ変換をX1(Ω)、X2(Ω)とすると、x[n]のフーリエ変換X(Ω)は、
X(Ω)=X1(Ω)+X2(Ω) (10)
と表せる。
この場合、二つのスペクトルが重なったグラフになり、一般的に図12に示すように、X1(Ω)、X2(Ω)のスペクトルが加算されるから、本来存在しないスペクトルが現れる。この時の複素平面図は図13のようになる。
周波数λ1、λ2が共にFFT演算の基本周波数の整数倍になる場合は、周波数λ1、λ2のスペクトルが正しく現れ、その他の整数倍では、X(kΩ)=0でスペクトルが0となるから、FFTは現実のスペクトル分布を表す。
周波数λ1がFFT演算の基本周波数の整数倍となり、λ2がFFT演算の基本周波数の整数倍にならない場合は、周波数λ2のスペクトルが周波数λ1のスペクトルに影響を及ぼすから、周波数λ1のスペクトルは正しいものにはならない。
周波数λ1におけるスペクトルは、X(λ1)=X1(λ1)+X2(λ1)であるから、X2(λ1)が0に近づけば、X1(λ1)に与える影響は小さくなる。求めたいスペクトルをX1(λ1)とすれば、減衰係数をaを用いて、スペクトルは
X(λ1)=X1(λ1)+aX2(λ1) (11)
と表される。
数式(11)において減衰係数a→0とすると、X1(λ1)はX(λ1)に近づくから、
X(λ1)=X1(λ1) (12)
とみなすことができる。
これらの関係を複素平面を使って示すと、図14のようになる。
図14(a)はaの値が大きい時であり、aの値が小さくなると図14(b)のようになる。aが0に近づくと、図14(c)のようになる。
以上の考察から、FFT演算を実行する前にバンドパス・フィルタを作用させて、減衰係数a→0とすると、X2(λ1)の影響を減少させることができることが分かる。
実際のシステムでは、より多くの信号のスペクトルによる影響がX1(λ1)に及ぼされる。つまり、
X(λ1)=X1(λ1)+a{X2(λ1)+X3(λ1)
+X4(λ1)+・・・・} (13)
となる。
数式(11)においても同様に、減衰係数a=0.01とすれば、他のスペクトルの影響を除去できるから、周波数特性が急峻で減衰率が0.01となり且つ周波数λ1の近傍のみ通過させる特性を持つバンドパス・フィルタを作用させればよいことが分かる。
以上説明したように、本実施形態の回転体のアンバランス量測定装置1では、光反射センサ24により回転体30の回転数(周波数=f)に同期した回転数信号を生成し、その回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍してから,DSP20の可変分周器20dに送って、分周比dで分周している。そして、振動信号0、振動信号1及び基準信号の各々の離散データをFFT演算する際に適切な標本化周波数fsを得るために、上述した数式(7)の関係であるk=fm(N/fs)=Nd/mを満たすように、換言すれば、定数kがいずれかの「正の整数」になるように、分周比dの値を指定することで、標本化周波数fsの値を決定している。つまり、定数kを適当な「正の整数」に設定すると共に、それに整合するように分周比dを指定することで、適切な標本化周波数fsを決定している。
よって、FFT演算における測定周波数fmを指定しなくても、回転体30の回転数に追従する標本化周波数fsを生成することができる。また、回転体30の回転数に追従するスペクトルをFFT演算により正確に求めることができる。
このため、たとえ回転体30の回転数が変化したとしても、前記デジタル振動信号の選択された成分はその変化に追従して変化する。また、FFT演算での標本化周波数としては、前記分周基準信号が使用されるので、FFT演算も回転体30の回転数変化に追従する。
よって、回転体30の回転数変化にかかわらず、常に、回転体30の振動信号の一次周波数成分のスペクトルを、従来より高精度に求めることができる。
(変形例)
上述した実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、二つの振動検出器を11及び12を用いて回転体30の回転振動を二箇所で検出しているが、いずれか一方の振動検出器のみを使用してもよいことは言うまでもない。また、上述した実施形態では、振動信号0、振動信号1及び基準信号で一つのA/D変換部を共用しているが、本発明はこれには限定されない。振動信号0、振動信号1及び基準信号のそれぞれに対してA/D変換部を設けてもよい。要は、振動信号0、振動信号1及び基準信号のそれぞれについてA/Dができる構成であればよい。
1 アンバランス量測定装置
11、12 振動検出器
13、14 増幅器
15,16、17 AAF
18 切替回路
19 変換器
20 DSP
20a デジタル・トラッキング・フィルタ演算部
20b 演算部
20c 送受信部
20d 可変分周器
20e 入力制御部
21 記憶装置
22 周波数逓倍器
23 カウンタ
24 光反射センサ
30 回転体
30a 回転軸
40 ホスト・コンピュータ
51 シフトレジスタ
51a レジスタ
52 係数乗算器
53 加算器

Claims (6)

  1. 回転体の回転振動を検出して得た振動信号を、A/D変換してデジタル振動信号を生成し、
    前記回転体の回転数信号の周波数fに同期した基準信号を、A/D変換してデジタル基準信号を生成し、
    前記回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍して逓倍回転数信号を生成し、
    前記振動信号及び前記基準信号の各々の離散データをFFT演算する際に適切な標本化周波数fsが得られるように、そのFFT演算の標本値数Nと前記逓倍比mを考慮して前記逓倍回転数信号に対する分周比dの値を設定し、
    デジタル・トラッキング・フィルタにより、前記標本化周波数fsを用いて前記デジタル振動信号と前記デジタル基準信号に対して、前記回転数信号の周波数fとその近傍の成分を選択的に透過させ、
    前記デジタル・トラッキング・フィルタを透過した前記成分のデータに対してFFT演算を行うことを特徴とする、回転体のアンバランス量測定方法。
  2. FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードとを有する請求項1に記載の回転体のアンバランス量測定方法。
  3. FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、前記振動信号の周波数分布を知るための第3モードとを有する請求項1に記載の回転体のアンバランス量測定方法。
  4. 回転体の回転振動を検出して得た振動信号を、A/D変換してデジタル振動信号を生成する第1A/D変換手段と、
    前記回転体の回転数信号の周波数fに同期した基準信号を、A/D変換してデジタル基準信号を生成する第2A/D変換手段と、
    前記回転数信号の周波数fを逓倍比mで逓倍して逓倍回転数信号を生成する周波数逓倍器と、
    前記逓倍回転数信号を分周比dで分周する可変分周器と、
    標本化周波数fsを用いて前記デジタル振動信号と前記デジタル基準信号に対して、前記回転数信号の周波数fとその近傍の成分を選択的に透過させるデジタル・トラッキング・フィルタと、
    前記デジタル・トラッキング・フィルタを透過した前記成分のデータに対してFFT演算を行うFFT演算手段とを備え、
    前記振動信号及び前記基準信号の各々の離散データをFFT演算する際に適切な標本化周波数fsが得られるように、そのFFT演算の標本値数Nと前記逓倍比mを考慮して前記逓倍回転数信号に対する分周比dの値が設定されることを特徴とする、回転体のアンバランス量測定装置。
  5. FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードとを有する請求項4に記載の回転体のアンバランス量測定装置。
  6. FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に小さく、高速測定ができる第1モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、雑音を除去した周波数分布を知るための第2モードと、FFTの演算で使用される標本値数Nが相対的に大きく、前記振動信号の周波数分布を知るための第3モードとを有する請求項4に記載の回転体のアンバランス量測定装置。
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