JP5321423B2 - ハイブリッド車両用駆動装置 - Google Patents
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Description
本発明は、エンジンに回転可能に連結される入力軸と、電気モータのロータと一体的に連結された出力軸とが、クラッチ装置によって係脱可能に回転連結されるハイブリッド車両用駆動装置に関する。
従来、ハイブリッド車両用駆動装置のクラッチ装置には、通常ばね力で、エンジンに連結される入力軸と電気モータのロータに連結された出力軸とを接続状態とし、これを切離す際にクラッチ装置の油圧室に電動ポンプで給油してバネを押し縮め、これによって切離状態となるノーマルクローズタイプのものがある。これとは逆に、通常は入力軸と出力軸とを切離状態とし、油圧室に潤滑油が供給されることにより接続状態となって入力軸と出力軸とを接続するノーマルオープンタイプのクラッチ装置がある。
この種の従来技術として特許文献1に記載の油圧供給装置及び車両用駆動装置が有る。これは、動力源としての内燃機関及びモータと、ロックアップクラッチを有し、動力源からの駆動力を車輪側へ伝達するトルクコンバータと、少なくとも一つの摩擦係合手段を有した変速機構と、動力源により駆動されて少なくともロックアップクラッチ及び変速機構に油圧を供給する機械式オイルポンプと、を備えた車両用駆動装置に補助油圧を供給する油圧供給装置を付加したものである。この油圧供給装置が、機械式オイルポンプと並列に配置され、動力源とは独立して駆動される電動オイルポンプを備え、この電動オイルポンプの吐出口とロックアップクラッチとを連通する第一油路に第一逆止弁を備え、電動オイルポンプの吐出口と機械式オイルポンプとを連通する第二油路に、油圧制限手段及び第二逆止弁を備えて構成されている。
この構成において、電動オイルポンプから第一油路を介してロックアップクラッチに給油することで、停車中にロックアップクラッチを係合可能な油圧を供給することができる。また、電動オイルポンプの吐出口と、機械式オイルポンプとが第二油路で連通されているので、機械式オイルポンプが停止中であっても、ロックアップクラッチ以外の車両用駆動装置の構成要素(例えば、摩擦係合手段)に対して、油圧を供給することができる。更に、第二油路に油圧制限手段が設けられており、第一油路の油圧を優先的に高くすることができるので、第一油路を介して、電動オイルポンプから吐出されるオイルを優先的にロックアップクラッチの係合に利用することができる。更には、第一油路及び第二油路にそれぞれ第一逆止弁及び第二逆止弁を備えているので、機械式オイルポンプの作動時に第一油路及び第二油路へのオイルの流入を防止し、機械式オイルポンプの負荷を増大させないようになっている。
しかし、上記の特許文献1の装置は、電動オイルポンプの吐出口側の第一及び第二油路に各々逆止弁が配設されているので、電動オイルポンプでのクラッチへの給油時にそれら逆止弁による圧力損失が大きくなって、クラッチへの適正な油圧が阻害されるという問題がある。
更に、ノーマルクローズタイプのハイブリッド車両用駆動装置においては、クラッチ装置の油圧室に電動ポンプで給油して切離状態とした後、接続状態に戻す際に、電動ポンプを停止させると、油圧室から油溜部までの油流通経路内のオイルが全て油溜部に抜ける。このため、クラッチ装置の接続状態では油圧室から油溜部までの油流通経路は空の状態となっているので、次回クラッチ装置を切離状態とする際に電動ポンプを起動させてもオイルが油流通経路を通って油圧室に至るまでに時間が掛かり、クラッチ装置を即時切離状態とすることができないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンに回転可能に連結される入力軸と、電気モータのロータと一体的に連結された出力軸とを係脱可能に回転連結するクラッチ装置の油圧室への給油を適正な油圧で即時行うことができるハイブリッド車両用駆動装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、エンジンに回転可能に連結される入力軸と、電気モータのロータと同一軸線上に配置されて一体的に連結された出力軸と、油圧室に潤滑油が給琲されることにより前記入力軸と前記出力軸とを係脱可能に連結するクラッチ装置と、前記入力軸及び前記出力軸を前記同一軸線上で回転可能に支承すると共に前記電気モータ及び前記クラッチ装置を両側壁部と外周壁部とで囲繞し、前記電気モータのステータが前記外周壁部の内周面に固定され、前記潤滑油を貯留する油溜部が下方に形成されたケースと、吸入ポートが前記ケースの油溜部に連通された電動ポンプと、前記クラッチ装置の油圧室、前記電動ポンプの吐出ポート及び前記油溜部に油路でそれぞれ接続され、前記クラッチ装置の油圧室を前記ポンプの吐出ポート又は前記ケースの油溜部に選択的に連通するバルブと、前記バルブと前記油溜部とを接続する油路に設けられ潤滑油の圧力が所定の低圧を超えると前記バルブから前記油溜部への潤滑油の流れを許容し、低圧以下で前記油溜部から前記バルブへの潤滑油の流れを規制する調圧弁と、を備えたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記クラッチ装置は、バネ力により常時接続状態であり、油圧室に潤滑油が供給されることにより切離状態となるノーマルクローズタイプであることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、クラッチ装置の油圧室に所定圧力で給油を行う際に、バルブを油圧室と電動ポンプの吐出ポートとを連通する側に切り換えて電動ポンプを起動する。これによって油溜部の潤滑油が電動ポンプで吸い上げられてバルブを介して油圧室へ供給される。この際、油溜部から電動ポンプを介した油圧室に至る油路には従来の逆止弁のような抵抗負荷となるものは何も無いので、油圧室への給油を適正な圧力で行うことができる。
一方、油圧室への給油を停止する場合は、バルブを油圧室と油溜部とを連通する側に切り換えて電動ポンプを停止する。この停止によって油圧室への給油が停止するので、油圧室に溜まった潤滑油がバルブを通り調圧弁を介して油溜部へ所定の圧力で流れる。この際、調圧弁が介在するので、油溜部へ流れる潤滑油の圧力が所定の低圧を超えていれば調圧弁は潤滑油を油溜部へ流す。その後、潤滑油の圧力が所定の低圧以下となると調圧弁は潤滑油の流れを規制する。これによって潤滑油が調圧弁でストップし油溜部へ流れなくなるので、潤滑油は油圧室から調圧弁までの油路に詰まった状態で残留する。
この後、バルブを油圧室と電動ポンプの吐出ポートとを連通する側に切り換えると、潤滑油は油圧室から調圧弁までの油路に詰まった状態で残留しているので、潤滑油は油圧室から電動ポンプまでの油路に詰まった状態となる。従って、この状態で電動ポンプを起動すると、油溜部の潤滑油が電動ポンプで吸引された直後に油圧室に供給されることとなる。つまり、バルブを油圧室と電動ポンプの吐出ポートとを連通する側に切り換えて電動ポンプを起動すると、即時油圧室に潤滑油を供給することができる。従って、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置によれば、クラッチ装置の油圧室への給油を迅速に行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、ノーマルクローズタイプのクラッチ装置において、接続状態のクラッチ装置の油圧室への給油を迅速に行うことができるので、クラッチ装置を接続状態から応答性よく切離状態とすることができる。これにより、クラッチ切り替えの応答性を高めることができるので、回生時における負荷が低減され、回生効率が高められる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置は、図1及び図2に示す電気モータ1及びクラッチ装置3を備え、クラッチ装置3の油圧室PCと、電気モータ1の下方の油溜部101との間に、ソレノイド切換バルブ9を介して電動ポンプ7及び調圧弁200が接続されている。なお、油溜部101は、図1においては電気モータ1を収容するケース10内に示さずハイブリッド車両のパワートレーンとならべて別途示してあり、図2にはケース10の下部に潤滑油の油面OLと共に示してある。
まず、ハイブリッド車両のパワートレーンについて図1、図2に基づいて説明する。車両のエンジン(EG)2と回転可能に連結される入力軸32と、電気モータ1のロータ13と同一軸線上に配置されて一体的に連結された出力軸41とは、湿式多板クラッチであるクラッチ装置3により係脱可能に連結されるようになっている。また、出力軸41には、車両のトランスミッション(T/M)4が直列に接続されており、トランスミッション4には、ディファレンシャル装置5を介して、車両の右駆動輪6R及び左駆動輪6Lが接続されている。以下、右駆動輪6Rおよび左駆動輪6Lを包括して駆動輪6R、6Lという。
電気モータ1は、これに限定されるものではないが、車輪駆動用の同期モータであり、トランスミッション4は通常の自動変速機である。また、クラッチ装置3は、通常は入力軸32と出力軸41とを接続しているノーマルクローズタイプのクラッチ装置であり、エンジン2とトランスミッション4との間のトルク伝達を断続している。
このパワートレーンを用いた車両は、エンジン2により走行する場合、エンジン2がトランスミッション4を介して駆動輪6R、6Lを回転させる。また、電気モータ1により走行する場合、電気モータ1がトランスミッション4を介して駆動輪6R、6Lを回転させる。そして、電気モータ1のみで走行するときは、エンジン2を停止させクラッチ装置3をレリーズさせて、エンジン2と電気モータ1との間の接続を解除している。更に、電気モータ1は、クラッチ装置3によりエンジン2との連結を遮断された状態で、駆動輪6R、6L側から駆動され、発電機としても機能する。
クラッチ装置3の後述する油圧室PC(図2参照)には、ソレノイド切換バルブ9を介して、電動ポンプ7の吐出口が油路90で接続されている。ソレノイド切換バルブ9は、ソレノイド及びバネにより第1位置91と第2位置92とに切り替えられる。第1位置91は、油路90と電動ポンプ7とを連通させる通路9aと、油路90と油溜部101とを連通させると共に絞り9bを有する通路9cとを有する。第2位置92は、油路90と電動ポンプ7とを連通させる通路9dと、油路90と油溜部101とを途中に調圧弁200を有して連通させる通路9eとを有する。電動ポンプ7及びソレノイド切換バルブ9には、コントローラ8が電気的に接続されている。
調圧弁200は、本実施形態の特徴要素であり、球状の弁体201が圧縮スプリング202のばね力で弁座203に着座された構成となっている。これにより、調圧弁200は油溜部101からソレノイド切換バルブ9へ向かう方向には潤滑油を通さず、この逆方向であるソレノイド切換バルブ9から油溜部101へ向かう方向には所定の低圧力以下では潤滑油を通さないが、その低圧力を超えると弁体201が圧縮スプリングのばね力に抗して弁座から離れ潤滑油を通すようになっている。つまり、油圧室PCからソレノイド切換バルブ9の通路9d及び9eを通って油溜部101へ向かう方向の潤滑油が所定の低圧力を超える場合には潤滑油を通し、その低圧力以下となると潤滑油を通さなくなるようになっている。
コントローラ8にはエンジン2、電気モータ1が電気的に接続されるとともに、車両のアクセル開度センサ、車速センサ、トランスミッション4のシフトスイッチ(いずれも図示せず)からの検出信号が入力されている。コントローラ8は、アクセル操作量等に基づいて、電気モータ1、エンジン2及びクラッチ装置3の作動を制御している。更に、コントローラ8は、電動ポンプ7及びソレノイド切換バルブ9が電気的に接続されており、電動ポンプ7の起動又は停止、ソレノイド切換バルブ9の切換を後述で詳細に説明するように制御する。
次に、図2を参照して、電気モータ1の構成をクラッチ装置3とともに詳述する。なお、図2において、左方を電気モータ1及びクラッチ装置3の前方といい、右方を後方ということがあるが、実際の車両上における方向とは無関係である。
モータケース11は、電気モータ1を内蔵した状態で、前方をモータカバー12により封止されている。モータカバー12の前方にはエンジン2が取り付けられ、モータケース11の後方にはトランスミッション4が接合されている。また、電気モータ1を構成するロータ13の半径方向内方には、クラッチ装置3が設けられている。
モータカバー12の内周端には、軸受31を介してクラッチ装置3の入力軸32が、回転軸Cを中心に回転可能に取り付けられている。回転軸Cは、エンジン2、電気モータ1及びトランスミッション4の回転軸でもある。入力軸32は、エンジン2の図示しないクランクシャフトと回転連結されている。また、入力軸32は、半径方向外方に突出したクラッチインナ321を備えている。クラッチインナ321の外周面には、複数枚の摩擦プレート322が相対回転を規制して軸線方向に相対移動可能に嵌合されている。
それぞれの摩擦プレート322の間には、略リング状に形成された複数のセパレートプレート331が交互に介装されている。セパレートプレート331の外周部は、クラッチアウタ33の内周面に相対回転を規制して軸線方向に相対移動可能に嵌合している。
クラッチアウタ33は、後述する電気モータ1のロータ13の内周面内に配置されて保持プレート132bで一体的に連結されている。それとともに、クラッチアウタ33は半径方向内方へと延び、内端においてトランスミッション4に設けられたトルクコンバータのポンプシャフトに連結される出力軸41とスプライン嵌合している。これにより、ロータ13はトランスミッション4を介して、駆動輪6R、6Lへと連結されており、電気モータ1による駆動力が駆動輪6R、6Lに入力される。また、クラッチアウタ33とモータケース11の固定壁111との間には、双方の間の相対回転が可能なように、ベアリング34が介装されている。
モータケース11及びモータカバー12により、入力軸32及び出力軸41を同一軸線(回転軸C)上で回転可能に支承すると共に電気モータ1及びクラッチ装置3を、モータケース11の固定壁111(側壁部)と外周壁部112及びモータカバー12の蓋壁部121(側壁部)で囲繞するケース10が構成されている。
クラッチアウタ33の外周部に前方に向けて形成された凹部の小径円筒部には、リング状のディスク部材35が液密的に固定されており、ディスク部材35の外周面と、クラッチアウタ33の凹部の小径円筒部とには、ピストン部材36の前方に突出した大径突出部の内周面と、後方に突出した小径突出部の内周面がそれぞれ回転軸方向に移動可能に液密的に嵌合されている。また、ピストン部材36の背面とクラッチアウタ33の凹部底面との間には、係合スプリング37が介装されており、係合スプリング37はピストン部材36を、常時、図2おいて左方に押圧している。係合スプリング37により押圧されたピストン部材36は、前方に突出した大径突出部の左端においてセパレートプレート331を左方に付勢し摩擦プレート322とセパレートプレート331とを圧着させてクラッチ装置3を接続状態としている。
このように、クラッチアウタ33の凹部の小径円筒部、ディスク部材35及びピストン部材36により油圧室PCが形成されている。油圧室PC内には、上述したように電動ポンプ7から潤滑油が供給され、この潤滑油の圧力によって係合スプリング37の付勢力に抗してピストン部材36が図2において右方に移動され、摩擦プレート322とセパレートプレート331とが離間し、クラッチ装置3が接続を解除した切離状態となる。
但し、電動ポンプ7、ソレノイド切換バルブ9、調圧弁200は、モータケース11の外面に当該外面と一体に形成された図示しない筺体内に設けられている。従って、油溜部101、電動ポンプ7、調圧弁200、ソレノイド切換バルブ9および油圧室PCをそれぞれ連通する油流通経路はモータケース11の壁面内に形成されている。なお、電動ポンプ7、ソレノイド切換バルブ9、調圧弁200は、モータケース11の内部に配設しても良い。これにより、油流通経路の長さを短くすることができ、クラッチ装置3の応答性を向上することができる。
電気モータ1のロータ13は、クラッチ装置3に対して半径方向外方に位置するように、モータケース11に回転可能に取り付けられている。ロータ13は、積層された複数の鋼板(積層鋼板)131を一対の保持プレート132a,132bにより挟み、積層鋼板131に等ピッチで例えば8個設けられた貫通口に金属製の細長い円筒形状の固定部材133をそれぞれ貫通させてその両端部をかしめることにより形成されている。
また、ロータ13の円周上には、図示せぬ複数の界磁極用マグネットが設けられている。そして、前述したように、一方の保持プレート132bは、クラッチ装置3のクラッチアウタ33に取り付けられ、これにより、ロータ13はクラッチアウタ33に固定されている。
また、モータケース11の外周壁部112の内周面には、ロータ13と半径方向に対向するように、電気モータ1のステータ14が取り付けられている。ステータ14は、ステータリング15の内周面に、回転磁界発生用の複数のコア体16が円環状に並ぶように取り付けられて形成されている。各々のコア体16は、およそT字状を呈した複数のケイ素鋼板が積層されることにより形成されたティース161を備えている。ティース161には一対のボビン162、163が装着され、各ボビン162,163は、ティース161の外周面を囲むように互いに嵌合している。更に、ボビン162,163の回りには、回転磁界を発生させるためのコイル164が巻回されている。コア体16の周囲に巻回されたコイル164は、図示しないバスリングを介して外部のインバータと接続される。
ステータリング15の外周縁には、円周上の均等な位置に複数の取付ボス151が設けられ、それぞれの取付ボス151には、回転軸方向に延びた貫通孔152が形成されている。ステータリング15の回転軸方向の端面をモータケース11のボス部112に当接させ、貫通孔152に取付ボルト17を挿通した後、ボス部112に螺合させることにより、ステータ14はモータケース11に固定されている。
このような構成のハイブリッド車両用駆動装置において、通常クラッチ装置3は接続状態となっており、エンジン2がトランスミッション4を介して駆動輪6R、6Lを回転させ、車両を走行させる。一方、電気モータ1のみで車両を走行させる場合、まずエンジン2を停止し、クラッチ装置3を切離状態とする。この後、電気モータ1のコイル164に例えば三相の交流電流が供給されることによりステータ14において回転磁界が発生し、回転磁界に起因する吸引力又は反発力によってロータ13が回転され、電気モータ1が駆動するようになっている。
このようなクラッチ装置3の接続状態又は切離状態とする動作を詳細に説明する。通常、図3に示すように、クラッチ装置3は入力軸32と出力軸41とを係合スプリング37の付勢力で接続する接続状態となっているので、この際、電動ポンプ7は停止され、ソレノイド切換バルブ9は、第2位置92に切り換えられている。この状態からクラッチ装置3が入力軸32と出力軸41とを切り離す切離状態とする場合、コントローラ8は、電動ポンプ7を作動させると共にソレノイド切換バルブ9を、図4に示すように第1位置91に切り換える。
これによって油溜部101に溜まった潤滑油が電動ポンプ7から吐出され、この吐出された潤滑油が通路9aを介してクラッチ装置3の油圧室PCに供給される。この供給によって油圧室PC内の圧力が上昇しピストン部材36が係合スプリング37のばね力に抗して後退し、ピストン部材36の大径突出部がセパレートプレート331から離間し、摩擦プレート322とセパレートプレート331とを開離させてクラッチ装置3を切離状態とする。この際、電動ポンプ7によって油圧室PCに供給された潤滑油が切離状態を維持するために必要な圧力を維持するため、電動ポンプ7から吐出された潤滑油がしぼり部9cで絞られて油溜部101に戻される。
クラッチ装置3が切離状態から接続状態となる場合は、コントローラ8で電動ポンプ7が停止されると共にソレノイド切換バルブ9が図3に示す第2位置92に切り換えられ、電動ポンプ7が停止される。この電動ポンプ7が停止された際に潤滑油の供給が停止されるので、油圧室PCの潤滑油による圧力が無くなりスプリング37が左方向に戻るばね力によって、ピストン部材36が同左方向に移動し、油圧室PCの潤滑油が電動ポンプ7側に押し戻される。
この際、電動ポンプ7は停止しているので、押し戻された潤滑油はソレノイド切換バルブ9内の通路9eから調圧弁200を介して油溜部101へ戻される。この戻る潤滑油の圧力が、調圧弁200で設定される所定の低圧力を超えていれば、潤滑油は調圧弁200を通過して油溜部101へ戻る。
その後、ピストン部材36が停止し、油圧室PC内の潤滑油の圧力が所定の低圧力以下となった場合、調圧弁200が潤滑油を通さなくなる。これによってピストン部材36が左方に移動しきってクラッチ装置3が接続状態となった際には、油圧室PCから調圧弁200および電動ポンプ7までの油路に潤滑油が詰まった状態で残留する。
従って、この接続状態のクラッチ装置3が次に切離状態となる場合、図4に示したように、ソレノイド切換バルブ9を第1位置91に切り換えて電動ポンプ7の起動が行なわれるが、この際、上述した状態に潤滑油が残留しているので、第1位置91に切り換えても油圧室PCからソレノイド切換バルブ9を介した電動ポンプ7までの間に潤滑油が詰まった状態となる。この状態で電動ポンプ7が起動されるので、油溜部101の潤滑油が電動ポンプ7で吸引された直後に油圧室PCに潤滑油が供給されることとなる。この供給によって油圧室PCが拡張するとクラッチ装置3が迅速に切離状態となる。
上述のように、クラッチ装置3の油圧室PCに潤滑油を供給する際に、ソレノイド切換バルブ9を油圧室PCと電動ポンプ7の吐出ポートとを連通する第1位置91に切り換えて電動ポンプ7を起動する。これによって油溜部101の潤滑油が電動ポンプ7で吸い上げられてソレノイド切換バルブ9を介して油圧室PCへ供給される。この際、油溜部101から電動ポンプ7を介した油圧室PCに至る油路には従来の逆止弁のような抵抗負荷となるものは何も無いので、油圧室PCへの給油を適正な圧力で行うことができる。
一方、油圧室PCへの給油を停止する場合は、ソレノイド切換バルブ9を油圧室PCと油溜部101とを連通する第2位置92に切り換えて電動ポンプ7を停止する。この停止によって油圧室PCへの給油が停止するので、油圧室PCに溜まった潤滑油がソレノイド切換バルブ9を通って調圧弁200を介して油溜部101へ流れる。この際、調圧弁200が介在するので、油溜部101へ流れる潤滑油の圧力が所定の低圧を超えていれば調圧弁200は潤滑油を油溜部101へ流す。その後、潤滑油の圧力が所定の低圧以下となると調圧弁200は潤滑油の流れを遮断する。これによって潤滑油が調圧弁200でストップし油溜部101へ流れなくなるので、潤滑油は油圧室PCから調圧弁200までの油路に詰まった状態で残留する。
この後、ソレノイド切換バルブ9を油圧室PCと電動ポンプ7の吐出ポートとを連通する第1位置91に切り換えると、潤滑油は油圧室PCから調圧弁200までの油路に詰まった状態で残留しているので、電動ポンプ7を起動すると、油溜部101の潤滑油が電動ポンプ7で吸引された直後に油圧室PCに供給されることとなる。つまり、ソレノイド切換バルブ9を油圧室PCと電動ポンプ7の吐出ポートとを連通する側に切り換えて電動ポンプ7を起動すると、即時、油圧室PCに潤滑油を供給することができる。
従って、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置によれば、クラッチ装置3の油圧室PCへの給油を迅速に行うことができる。
また、クラッチ装置3は、バネ力により常時接続状態であり、油圧室PCに潤滑油が供給されることにより切離状態となるノーマルクローズタイプである。従って、接続状態のクラッチ装置3の油圧室PCへの給油を迅速に行うことができ、これによってクラッチ装置3を応答性よく切離状態とすることができるので、回生時における負荷が低減され、回生効率が高められる。
なお、本実施形態の特徴構成を、ノーマルオープンタイプのクラッチ装置を搭載したハイブリッド車両用駆動装置に適用しても、通常の入力軸と出力軸との切離状態から、油圧室に潤滑油を給油することにより接続状態とする際に、その給油を迅速に行うことができるので、クラッチ装置3を応答性よく接続状態とすることができる。
1…電気モータ、2…エンジン、3…クラッチ装置、6R…右駆動輪、6L…左駆動輪、7…電動ポンプ、9…ソレノイド切換バルブ、10…ケース、101…油溜部、11…モータケース、111…固定壁(側壁部)、12…モータカバー、121…蓋壁部(側壁部)、13…ロータ、14…ステータ、32…入力軸、41…出力軸、200…調圧弁。
Claims (2)
- エンジンに回転可能に連結される入力軸と、
電気モータのロータと同一軸線上に配置されて一体的に連結された出力軸と、
油圧室に潤滑油が給琲されることにより前記入力軸と前記出力軸とを係脱可能に連結するクラッチ装置と、
前記入力軸及び前記出力軸を前記同一軸線上で回転可能に支承すると共に前記電気モータ及び前記クラッチ装置を両側壁部と外周壁部とで囲繞し、前記電気モータのステータが前記外周壁部の内周面に固定され、前記潤滑油を貯留する油溜部が下方に形成されたケースと、
吸入ポートが前記ケースの油溜部に連通された電動ポンプと、
前記クラッチ装置の油圧室、前記電動ポンプの吐出ポート及び前記油溜部に油路でそれぞれ接続され、前記クラッチ装置の油圧室を前記ポンプの吐出ポート又は前記ケースの油溜部に選択的に連通するバルブと、
前記バルブと前記油溜部とを接続する油路に設けられ潤滑油の圧力が所定の低圧を超えると前記バルブから前記油溜部への潤滑油の流れを許容し、低圧以下で前記油溜部から前記バルブへの潤滑油の流れを規制する調圧弁と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。 - 請求項1において、前記クラッチ装置は、バネ力により常時接続状態であり、油圧室に潤滑油が供給されることにより切離状態となるノーマルクローズタイプであることを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。
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