本発明に係るハイブリッド車両用クラッチ装置40を制御するクラッチ制御装置80の実施形態について図面を参照して以下に説明する。図1は、エンジン10(本発明に係る第1の駆動源に該当する)および自動変速装置5を含んだ状態のハイブリッド車両用クラッチ装置40(以降クラッチ装置40とのみ称す)およびクラッチ制御装置80の概略を示している。ハイブリッド車両用クラッチ装置40は、エンジン10に回転可能に連結される入力軸41と、該入力軸41と同一回転軸線R1上に配置され電動モータ20(本発明に係る第2の駆動源に該当する)に回転可能に連結される出力軸26と、を連結または遮断する装置である。そしてクラッチ制御装置80は、クラッチ装置40の作動を制御する。
図1乃至図3に示すように、クラッチ装置40はケース30(本発明に係るケースに該当する)と、複数のセパレートプレート43(本発明に係る第1クラッチプレートに該当する)と、複数の摩擦プレート42(本発明に係る第2クラッチプレートに該当する)と、シリンダ部材48(出力軸26と兼用している)と、ピストン部材44と、コイルばね45(本発明に係る弾性部材に該当する)と、固定部材54と、加圧室46と、キャンセラ室52と、電動オイルポンプ60と、電磁切替弁50(本発明に係る制御弁に該当する)と、を備えている。クラッチ制御装置80は、コントローラ(ECU)70に備えられている。
図1において、実線による矢印は、各装置間をつなぐ油圧配管を示しており、破線による矢印は、制御用の信号線を示している。また、図1において電磁切替弁50、電動オイルポンプ60リザーバ72(本発明に係る油貯留部に該当する)およびリリーフ弁90は電動モータ20等と別体で記載されている。しかし、実際には、電磁切替弁50、電動オイルポンプ60およびリリーフ弁90は、電動モータ20およびケース30と一体化され、リザーバ72はケース30を構成するケース3およびフロントケース6内の下方に形成されている(図2参照)。本実施形態においては、電動モータ20のエンジン(EG)側を前側とし、自動変速装置5側を後側とする。
図2に示すように、クラッチ装置40を構成するケース30のケース3は、外形を形成する外周壁部3bと、電動モータ20とトルクコンバータ2との間に形成された後側側壁部3aと、を有している。また、ケース3は外周壁部3bが後側側壁部3aから後側に向って所定量延在され、トルクコンバータ2の一部を覆っている。そして延在されたケース3は、トルクコンバータ2の残りの部分を覆う図略のケースとボルトによって固定され、自動変速装置5のケース(図示せず)を形成している。
ケース30のエンジン10側には、ケース30の蓋部であり前側側壁部6bを形成するフロントケース6が配置され、ケース3とフロントケース6とは、ボルトによって固定されている。ケース30を構成するフロントケース6の前側側壁部6bの中心部には本発明において他方の軸である入力軸41が軸承されるよう貫通孔6aが設けられている。そして貫通孔6aと入力軸41との間にはボールベアリング34が介在され、入力軸41を回転可能に軸承している。
クラッチ装置40は、湿式多板クラッチによるクラッチ装置であり、図1に示したように、エンジン(EG)10と電動モータ20との間に介在され、エンジン(EG)10および電動モータ20と直列に接続されている。クラッチ装置40は、エンジン10と電動モータ20との間の連結を接離し、エンジン10からのトルク伝達を断続して連結状態と遮断状態とを切替える。そして、車両停止時等の通常時においてクラッチ装置40は、エンジン10と電動モータ20との間を連結状態とするノーマルクローズタイプのクラッチ装置である。また、電動モータ20には、車両の自動変速装置5が直列に接続されており、自動変速装置5には、図示しない車両の駆動輪が図示しないディファレンシャル装置を介して接続されている。自動変速装置(T/M)5は、トルクコンバータ2および変速機(図示しない)からなり、トルクコンバータ2の出力が、変速機の入力軸に入力されている。
図1、図2に示すように、電動モータ20とトルクコンバータ2とは本発明において、一方の軸である出力軸26およびトルクコンバータ2の入力軸であるセンタピース16を介して回転連結されている。トルクコンバータ2の入力軸であるセンタピース16は入力軸41と同一回転軸線R1で並んで配置され、トルクコンバータ2のフロントカバー14に連結されてフロントカバー14と一体回転される。センタピース16とともにフロントカバー14が回転されることにより、フロントカバー14と連結されるトルクコンバータ2内のポンプインペラ(図示せず)が回転される。これによりポンプインペラによって油流が発生し、発生した油流によって変速機の入力軸に連結されたタービンランナ(図示せず)が回転して変速機の入力軸に回転力が伝達される。このように、出力軸26、センタピース16およびフロントカバー14の回転軸は、変速機の入力軸と同一回転軸線R1で配置されている。
第1の駆動源であるエンジン10は、炭化水素系の燃料により出力を発生させる通常の内燃機関である。ただし、これに限定されるものではなく、回転軸を駆動させる駆動源であればどのようなものでもよい。また、第2の駆動源である電動モータ20は、車輪駆動用の3相同期モータであるが、これに限定されるものではない。さらに、自動変速装置5の変速機は、通常の遊星歯車式自動変速機であるが、これに限定されるものではなく、例えば手動式変速機の変速を自動化したAMT(オートメーテッド マニュアル トランスミッション)でもよいし、他の自動変速機でもよい。
図1に示すように、電磁切替弁50は、4ポートを有する2ポジションの電磁弁である。電磁切替弁50の1つ目のポートaは、図2に示す管路65a、65b、65c、65dを介してクラッチ装置40が有する後述する加圧室46に接続されている。2つ目のポートbは、図2に示す管路65e、65f、65g、65hを介してクラッチ装置40が有する後述するキャンセラ室52に接続されている。また3つ目のポートcは、リザーバ72に接続され、4つ目のポートdは、電動オイルポンプ60の吐出口に接続されている。そして、電動オイルポンプ60の吸込口は、常にリザーバ72と接続されている。
電磁切替弁50が、図1に示した作動位置P2(本発明の第2位置に該当する)にある場合、電動オイルポンプ60の吐出口が加圧室46に接続されており、キャンセラ室52に接続されるポートbおよびcは、電磁切替弁50内で封止されている。
電磁切替弁50が、作動位置P1(本発明の第1位置に該当する)に切替えられた場合には、電動オイルポンプ60の吐出口とキャンセラ室52とが接続され、加圧室46がリザーバ72(大気)と接続される。
このように構成される電磁切替弁50が、第2位置P2にある場合に電動オイルポンプ60が駆動されると、電動オイルポンプ60は、リザーバ72内の作動油を吸引し、電磁切替弁50を介して加圧室46へと作動油を吐出する。そして加圧室46へ給油された作動油の油圧が後述するピストン部材44をキャンセラ室52方向へ押圧して移動させ、クラッチ装置40の係合を切断して遮断状態とする。このとき、加圧室46へ吐出される作動油は、前述したリリーフ弁90の作用によって所定の圧力Paに制御される。
また、電磁切替弁50が、図1に示した第1位置P1にある場合に、電動オイルポンプ60が作動されると、電動オイルポンプ60は、リザーバ72内の作動油を吸引する。そして、電磁切替弁50を介してキャンセラ室52へ作動油を所定量(後に詳述する)だけ給油するとともに、加圧室46をリザーバ72、即ち大気に連通させる。これによって、キャンセラ室52に配設されたコイルばね45の付勢力および給油された作動油による第1遠心油圧RP1が、ピストン部材44を、加圧室46内の作動油をリザーバ72に向けて押し出しながら加圧室46方向へ移動させ、クラッチ装置40を連結状態とする。なお、キャンセラ室52が回転軸線R1回りに回転していないときには、ピストン部材44は、コイルばね45の付勢力のみによって連結状態にされる。また、キャンセラ室52内に作動油が供給されていなくても、ピストン部材44は、コイルばね45の付勢力のみによって連結状態にされる。
そして、このような連結状態において、加圧室46の容積は、設計上、完全にはゼロにならないようになっている。つまり、加圧室46は、ピストン部材44の押圧部44aがセパレートプレート43および摩擦プレート42をコイルバネ45の付勢力によって確実に押圧し係合させるように、ピストン部材44の受圧面44cと、受圧面44cと対向する固定部材54の出力軸側平面54dとの間には所定の隙間が設けられている。このため、該隙間に存在する作動油は、外部との連通路として電磁切替弁50との接続通路しか有さず袋状を呈する加圧室46からは排出されにくいため、ピストン部材44と固定部材54との間に残存してしまう場合がある。
また、電動オイルポンプ60の吸込口に接続される流路d1と吐出口に接続される流路d2との間には、電動オイルポンプ60と並列にリリーフ弁90が設けられている。そして、電動オイルポンプ60の吐出によって流路d2内の圧力が所定の圧力Paよりも高くなるとリリーフ弁90が開弁し、流路d2を所定の圧力Paに保持するよう構成されている。なお、リリーフ弁90の構造はどのようなものでもよい。しかし本実施形態においては、リリーフ弁90の開口部を閉鎖するためのボール弁と、該ボール弁を開口部のシール部に向って押圧しボール弁を閉鎖状態とするコイルばねとによって構成される機械式のリリーフ弁を使用している(いずれも図示しない)。
電磁切替弁50および電動オイルポンプ60には、クラッチ制御装置80を備えるコントローラ70(ECU)が電気的に接続されている。コントローラ70は、電動オイルポンプ60および電磁切替弁50を作動させて、クラッチ装置40に適正な油圧または油量の作動油を供給し、クラッチ装置40を、目標とする連結状態および遮断状態となるよう後に詳述する連結遮断制御部81および給油制御部82によって制御している。
また、コントローラ70は、エンジン10または電動モータ20の回転を制御し、車両を走行させている。さらに、コントローラ70は、自動変速装置5のシフトバルブを作動させる電磁ソレノイド(図示せず)と接続されており、エンジン10の回転速度、車両速度、シフト位置等に基づき、自動変速装置5の作動を制御し、変速段の切替えを実行している。
次に、クラッチ装置40について図2、3に基づいて詳細に説明する。前述したようにクラッチ装置40は、ケース30と、出力軸26の大径側係合部26aに係合された複数セパレートプレート43(第1クラッチプレート)と、入力軸41の小径側係合部41dに係合された複数の摩擦プレート42(第2クラッチプレート)と、を有している。また、クラッチ装置40は、出力軸26と一体的に形成されたシリンダ部材48と、該シリンダ部材48に回転軸線R1方向に摺動可能に嵌合され、複数のセパレートプレート43、及び摩擦プレート42を押圧する押圧部44aを備えたピストン部材44と、を有している。
さらにクラッチ装置40は、ピストン部材44の背面とシリンダ部材48との間に縮設され、ピストン部材44を複数のセパレートプレート43および摩擦プレート42に向かって付勢するコイルバネ45(弾性部材)と、シリンダ部材48に設けられ、ピストン部材44とコイルバネ45の反対側で対向する固定部材54と、ピストン部材44と固定部材54との間に区画形成される加圧室46と、ピストン部材44の背面とシリンダ部材48との間に形成されるキャンセラ室52と、を有している。つまり、本実施形態においては、コイルバネ45は、キャンセラ室52内に配設されている。
また、キャンセラ室52には、キャンセラ室52の内外を連通させる所定の開口径を有する排出孔53が、コイルバネ45の端面が着座するシリンダ部材48の出力軸側端面に貫設されている。このとき、キャンセラ室52の外部とはケース30内を意味し、具体的には油貯留部であるリザーバ72に連通している。排出孔53は流量絞りとして機能し、径方向において排出孔53の軸線と回転軸線R1との距離はL(図2参照)として示される。排出孔53の開口径および距離Lは、キャンセラ室52の作動油の排出速度に影響を与え、キャンセラ室52の遠心油圧力に影響を与え、延いてはクラッチ装置40を連結状態から遮断状態に切り換える応答性、更には電力回生効率に影響を与える。
入力軸41は、図示しないフライホイール、及び回転振動を吸収するためのダンパを介してエンジン10の出力軸11(図1参照)に回転連結されている。図2に示すように、入力軸41はダンパとの固定部41aと、フロントケース6の前側側壁部6bの貫通孔6aに回転支持される連結部41bと、摩擦プレート42を係合する小径側係合部41dが外周部に形成された環状円板部41cと、を有している。以後、入力軸41が支持される前側側壁部6bの側を入力軸側と称す。図2、図3に示すように、環状円板部41cは入力軸41に半径方向に環状に延在するように形成されている。
出力軸26は、トルクコンバータ2の入力軸であるセンタピース16に回転連結されている。センタピース16は、ケース3の後側側壁部3aに形成された貫通孔3cに回転可能に軸承されている。以後、出力軸26と連結されるセンタピース16が軸承される後側側壁部3aの側を出力軸側と称す。
出力軸26は、図2に示す回転軸方向の断面が逆S字状を呈し、半径方向外周側にエンジン10側に開口された外周開口部27(シリンダ部材48と兼用)が形成され、内周側に自動変速装置5側に開口された内周開口部32が形成されている。外周開口部27は小径側壁部27dと、大径側壁部27cと、段付きの各底壁部27e、27fとによって包囲され形成されている。大径側壁部27cの入力軸側の先端部内周面の大径側係合部26aには前述した複数の円環状のセパレートプレート43が回転を規制され回転軸線R1方向に移動可能に係合されている。
そして複数のセパレートプレート43と、入力軸41の環状円板部41cの外周部に形成された小径側係合部41dに係合された複数の摩擦プレート42とが交互に接離可能に配置されている。摩擦プレート42と、セパレートプレート43とが交互に配置された状態でセパレートプレート43が回転軸線R1方向入力軸側に向かってピストン部材44によって押付けられるとセパレートプレート43が軸方向に移動(スライド)する。これによって各摩擦プレート42の両面に貼付された各摩擦板と各セパレートプレート43とが押付け合って係合し、入力軸41と出力軸26とが回転連結されて、エンジン10の出力軸11と自動変速装置5の入力軸とが一体回転する。
内周開口部32と外周開口部27の小径側壁部27dとによって囲まれ自動変速装置5側に開口される空間には、ケース3の後側側壁部3aから円環状の突部63が突設されている。そして外周開口部27の小径側壁部27d内周面が突部63の外周面63bに嵌合され、突部63の内周面63aと内周開口部32の固定部32bとの間にはボールベアリング64が介在され、突部63と内周開口部32とがスムーズに相対回転可能となっている。
図2の下方に示すように後側側壁部3aおよび突部63の内部には前述したように電磁切替弁50と加圧室46とを接続する、連通して形成された管路65a、65b、65c、65dおよび電磁切替弁50とキャンセラ室52とを接続する連通して形成された管路65e、65f、65g、65hを有している。管路65aおよび65eが電磁切替弁50側の接続管路であり、管路65dおよび65hが加圧室46およびキャンセラ室52側の接続管路である。そして加圧室46の管路65dは、突部63の外周面63b全周に刻設された油路66と接続し、キャンセラ室52の管路65hは、突部63の外周面63b全周に刻設された油路69と接続している。
油路66は、外周開口部27の小径側壁部27dに貫設される流入ポート61を介して加圧室46に接続され、加圧室46に作動油を給排する。油路69は、外周開口部27の小径側壁部27dに貫設される流入ポート71を介してキャンセラ室52に接続され、キャンセラ室52に作動油を供給する。回転軸線R1方向における油路66および油路69の前後両側には溝が刻設され、該溝内には例えばゴム製の環状リング67、68、73が設けられ油路66および油路69からの作動油の外部への漏洩を防止している。なお、図3に示すキャンセラ室52の作動油は、キャンセラ室52に充填可能な最大量の作動油が充填された状態を示し、加圧室46の作動油は、連結状態において加圧室46に残留している状態を示している。
ピストン部材44は、前述した外周開口部27と兼用するシリンダ部材48のシリンダ部48aに回転軸線R1方向に摺動可能に嵌合されている。ピストン部材44は、略円板状に形成されて中心部に貫通孔44bが形成され、兼用する外周開口部27の小径側壁部27d(シリンダ部48a)の外周面に、ピストン部材44側に設けられたゴム製等のOリングを介して軸方向に移動可能に嵌合されている。ピストン部材44は入力軸側に入力軸41の軸線と直交する平面である受圧面44cを有している。そしてピストン部材44は、受圧面44cの外周側に、軸方向入力軸側に向かって突設される前述の押圧部44aを有している。押圧部44aは円環状に設けられ、押圧部44aの円環内周面には、ピストン部材44が回転軸線R1方向に摺動可能なように、後述する固定部材54の外周面54aと嵌合するための摺動面44dが形成されている。またピストン部材44および押圧部44aの外周面は、外周開口部27の大径側壁部27cの内周面と、ゴム製のOリング56を介して回転軸線R1方向に移動可能なように液密に嵌合している。
固定部材54は、外周開口部27の小径側壁部27d外周面に装架されている。固定部材54は、略円環状に形成され、外周面54aと、内周面54bと、入力軸側平面54cと、出力軸側平面54dと、を有している。そして、小径側壁部27dの外周面で固定部材54の入力軸側には例えばCリング等の固定リング47が嵌入しており、これによって固定部材54の入力軸側方向への移動が規制されている。
固定部材54の内周面54bにはゴム製のOリングが配設され、加圧室46を液密に封止している。また、固定部材54の外周面54aは、ピストン部材44の押圧部44aの内周面である摺動面44dに嵌合し、外周面54aにもゴム製のOリングが配設され、加圧室46を液密に封止している。
加圧室46は、シリンダ部48aにおいて固定部材54の出力軸側平面54dと、ピストン部材44の受圧面44cと、押圧部44aの摺動面44dと、外周開口部27の小径側壁部27d外周面とによって囲繞され区画形成されている。加圧室46は、前述したように電磁切替弁50、管路65a、65b、65c、65dおよび油路66を介して電動オイルポンプ60とリザーバ72とに連通する流入ポート(流入口)61と接続されている。流入ポート61は、小径側壁部27dの円周上に例えば3カ所等配に設けられている。ただし、流入ポート61の個数は3カ所に限らず、加圧室46に供給する油圧の大きさおよび流量や、加圧室46から油を排出するときの排出能力を考慮して決定すべきであり、適宜実施者によって決定すればよい。加圧室46に作動油(油圧)を供給する側(第2位置P2側)と、加圧室46から作動油(油圧)を抜く側(第1位置P1側)とは電磁切替弁50を操作することによって切替えられ、電磁切替弁50の第1位置P1側に切替えられることによって加圧室46は流入ポート61を介して大気(リザーバ72)と連通される。
キャンセラ室52は、出力軸26(シリンダ部材48)が回転軸線R1まわりに回転することによって、前述した加圧室46に残留する作動油に発生する遠心油圧を打ち消すための油圧を発生させる空間である。キャンセラ室52は、ピストン部材44の背面と、シリンダ部材48とによって囲繞され区画形成されている。キャンセラ室52は、前述したように電磁切替弁50、管路65e、65f、65g、65hおよび油路69を介して電動オイルポンプ60とリザーバ72とに連通する流入ポート(流入口)71と接続されている。流入ポート71は小径側壁部27dの円周上に例えば3カ所等配に設けられている。ただし、流入ポート71の個数は3カ所に限らず、キャンセラ室52に供給する油圧の大きさや、流量を考慮して決定すべきであり、適宜実施者によって決定すればよい。
電動オイルポンプ60と接続し、キャンセラ室52に作動油(油圧)を供給する側(第1位置P1側)と、キャンセラ室52を封止する側(第2位置P2側)とは電磁切替弁50を操作することによって切替えられる。そして、第2位置P2側に切替えられ、加圧室46に所定圧の作動油が供給されると、ピストン部材44がキャンセラ室52方向に移動され、これによってキャンセラ室52の容積が縮小される。そして、該容積の縮小に応じてキャンセラ室52の作動油の一部が、外周開口部27の底壁部27fに貫通された排出孔53を介して押し出され排出される。なお、キャンセラ室52に作動油が供給される第1位置P1側においても、キャンセラ室52に必要量以上の作動油が供給された場合には、キャンセラ室52からは作動油が排出孔53を介して排出されている。つまりキャンセラ室52に作動油が供給された状態でキャンセラ室52が回転すると、作動油はキャンセラ室52の外径部(外周面52a)から内径方向に向かって貯留され排出孔53まで到達する。そして排出孔53に到達した分が排出孔53から外部に順次排出される。本実施形態においては、この状態の作動油の最大充填量(図3参照)が、加圧室46に発生する第2遠心油圧RP2に対抗するための第1遠心油圧RP1を発生させるために必要な量であるように設定している。そして、前述した電動オイルポンプ60によってキャンセラ室52に供給するべき作動油の所定量とは、該最大充填量に達するために必要な量のことをいうものとする。
そして、出力軸26(キャンセラ室52)が回転すると、キャンセラ室52の外径部(外周面52a)と排出孔53の最外径位置までの間に貯留された作動油に遠心力が作用して発生する第1遠心油圧RP1によってピストン部材44には、加圧室46方向に付勢する第1付勢力Faが発生する。そして本実施形態においては、一例として設定した第1付勢力Faの大きさは、加圧室46内に残留する虞のある最大量の作動油による第2遠心油圧RP2が、ピストン部材44をキャンセラ室52方向に付勢する第2付勢力Fbの大きさと等しくなるよう排出孔53の位置、径等を設定している。これによって、キャンセラ室52に作動油を所定量だけ供給することによって確実に第2付勢力Fbを相殺できるので、下記に説明するコイルばね45の加圧室46方向への付勢力によってクラッチ装置40を適切な連結状態とすることができる。ただし、これはあくまでも一例であって、第1付勢力Faの大きさはどのように設定してもよい。例えば第2付勢力Fbよりも確実に大きな付勢力になるようにしても良い。また、第2付勢力Fbより小さくてもよく、これによっても第2付勢力Fbを減殺することはでき、相応の効果は得られる。
前述したように、弾性部材であるコイルばね45は、図2、図3に示すように、キャンセラ室52内においてピストン部材44の背面と、シリンダ部材48である外周開口部27の底壁部27fとの間に縮設されている。このとき、コイルばね45は、底壁部27fに貫設される排出孔53を着座部で塞がないようにして配設されている。本実施形態において、コイルばね45は、ピストン部材44の回転軸線R1を中心として同一半径上に28個、均等な間隔で配置されピストン部材44を入力軸側に付勢し、ピストン部材44の押圧部44aによって摩擦プレート42と、セパレートプレート43とを所定の荷重で押圧し圧接させる。コイルばね45が配置されるピストン部材44の出力軸側の面(背面)には、28個の各コイルばね45が配置されるようにコイルばね45のコイル外径より若干大きな径の有底の円筒穴が穿設され、各コイルばね45が該円筒穴に係入されている。なお、本実施形態においてはコイルばね45を28個配置した。しかしこれに限らず摩擦プレート42及びセパレートプレート43を押圧して係合させることが可能な付勢力を付与でき、且つ押圧部44aが摩擦プレート42及びセパレートプレート43を全周に亘って均等に押圧できればコイルばねはいくつ配置してもよい。
図2に示す3相交流モータ等からなる電動モータ20は、出力軸26の外周開口部27の外周側に配置されている。電動モータ20は、円筒状のロータ21と、ロータ21の半径方向外周に対向して配置され珪素鋼板(図示せず)を積層してなるステータ22と、ステータ22の突出部に巻回されるコイル23とを備えている。ロータ21はステータ22との間で磁気的な反発力または吸引力が発生することにより、ステータ22に対し回転可能な構成となっている。
ステータ22は、外周側がケース3の外周壁部3bの内周面に固定されている。またロータ21は、出力軸側端面から板部材24が半径方向内周側に延在されて出力軸26の底壁部27eの出力軸側側面にボルトによって固定されている。これにより、電動モータ20はロータ21のみが出力軸26と一体回転される。またコイル23は、コントローラ70と電気的に接続されており、コントローラ70は、各種状態を検出するいずれも図示しない各センサ(車速センサ、スロットル開度センサ、シフト位置センサ等)からの信号に基づいてコイル23への通電量、或いはコイル23の非通電を制御しロータ21の回転を制御している。
また、図1に示すように、コントローラ70(ECU)を構成するクラッチ制御装置80は、連結遮断制御部81および給油制御部82を有している。連結遮断制御部81は、クラッチ装置40を連結状態とする場合、電磁切替弁50が、加圧室46がリザーバ72(油貯留部)に接続する第1位置に切替える。また、クラッチ装置40を遮断状態とする場合、電動オイルポンプ60を駆動させるとともに、電磁切替弁50が、電動オイルポンプ60の吐出ポートが加圧室46に接続する第2位置に切替える。
給油制御部82は、2つの条件である、停車中の車両においてクラッチ装置40が連結状態となっており、当該連結状態でエンジン10(第1の駆動源)を始動させる場合と、走行中の車両において遮断状態となっているクラッチ装置40を連結状態とする場合とにおいて、電動オイルポンプ60を駆動させ電動オイルポンプ60から吐出される作動油を所定時間だけ供給させて、キャンセラ室52に所定量の作動油を供給する。
このように、本実施形態においては、キャンセラ室52に供給する所定量の作動油は、電動オイルポンプ60の作動時間で管理する。つまり、作動油を供給するキャンセラ室52の容積および電動オイルポンプ60の作動油供給能力から、必要量の作動油をキャンセラ室52に供給するために必要な時間を予め算出し、図略の記憶部に記憶させておくものとする。そして、電動オイルポンプ60を作動させてキャンセラ室52に作動油を供給するときに、該記憶された時間が経過したら電動オイルポンプ60の作動を停止させる。これによって簡素で低コストに精度良く給油量が制御でき、クラッチ装置40の適切な連結状態が実現できる。なお、このとき、キャンセラ室52に給油する場合には、直前にクラッチ装置40が連結状態である場合と遮断状態である場合とにおいて、キャンセラ室52内に残留される作動油の量は異なる。そのため、キャンセラ室52に供給すべき作動油の量が異なるため、作動モードに合わせて作動必要時間を変更して制御することが好ましい。
ここで、上記2つの条件について詳細に説明する。1つ目の条件(条件1とする)は、停車中の車両においてクラッチ装置40が連結状態となっており、当該連結状態でエンジン10を始動させる場合である。具体的には、例えば前日の夜に車両を停車し、次の日の朝、再び、エンジン10を始動するような場合である(この例を例1とする)。このときクラッチ装置40は、ノーマルクローズであるので、コイルばね45の付勢によって連結状態が維持されている。そして、加圧室46には前述した残油が存在している。またキャンセラ室52の作動油は、そのときのキャンセラ室52(出力軸26)の停止状態に応じて配置される複数の排出孔53の位置に応じた量がリザーバ72に排出され、このため、本来、キャンセラ室52に必要な最大充填量の作動油が充足されていない状態となっている。
また条件1の別の例(この例を例2とする)としては、例えば、車両走行時に信号等で停止し、エンジン10がアイドリングストップ状態になった場合である。このときにも、上記と同様、クラッチ装置40は、コイルばね45の付勢によって連結状態となっている。そして、加圧室46の残油の状態およびキャンセラ室52の残油の状態も上記と同様の状態になっている。
次に、2つ目の条件(条件2)は、走行中の車両において遮断状態となっているクラッチ装置40を連結状態とする場合である。具体的には、車両減速時における回生制御後に再加速を行なう場合が一例として挙げられる(この例を例3とする)。本実施形態において回生制御中には、効率よく回生を行なうためにクラッチ装置40を遮断状態に制御している。前述したように、遮断状態においてクラッチ装置40のピストン部材44は、加圧室46に供給された作動油の圧力によってキャンセラ室52方向に移動されている。このためキャンセラ室52の容積は縮小され、縮小された分に相当する作動油は排出孔53を介して押し出され排出されている。そして、そのような状態において運転者がアクセルを踏込むと、エンジン10の駆動力を追加するため、クラッチ装置40を連結状態とするよう制御される。そして、ピストン部材44が加圧室46方向に移動しクラッチ装置40が連結状態に移行していくと、キャンセラ室52の容積は拡大されていき、本来、キャンセラ室52に必要な最大充填量の作動油が充足されない状態となる。
また、条件2の別の例(この例を例4とする)としては、車両走行中に、クラッチ装置40を遮断状態として電動モータ20のみによって走行後、クラッチ装置40を連結状態に制御し、エンジン10の駆動力を電動モータ20の駆動力に加えて走行する場合が挙げられる。この場合もクラッチ装置40は回生制御時と同様の挙動を示す。そして給油制御部82は、車両およびクラッチ装置40が上述した条件を満たしたときに制御を実行する。
次に、クラッチ装置40およびクラッチ制御装置80の作動について上記2条件の場合についてそれぞれ説明する。まず、停車中の車両においてクラッチ装置40が連結状態となっており、当該連結状態でエンジン10を始動させる場合である条件1の例1について説明する。
まず、車両の始動制御について簡単に説明しておく。車両が停止状態にある場合には、図略の車両のイグニッションスイッチをONにして運転者がアクセルペダルを踏む(低スロットル開度時)と、エンジン10が始動される。つまり、発進するためにアクセルペダルが踏まれてスロットルが一定開度以上開かれると、燃料噴射装置が作動されるとともに、点火プラグが点火され、ケース3に固定されるスタータモータ(図示せず)の出力軸が駆動される。そしてスタータモータの出力軸と噛合するフライホイール(図示せず)外周のリングギア(図示せず)が、フライホイール、及び出力軸11とともに回転されエンジン10が始動される。ただしこのようにアクセルペダルを踏むとエンジン10が始動される方式ではなく、イグニッションスイッチをONした段階でエンジン10が始動されてもよい。
そして同時にバッテリ(図示せず)から電動モータ20へ電流が流れ、電動モータ20は駆動モータとして機能する。このとき、クラッチ装置40は接続状態で接続されており、これによりエンジン10と電動モータ20の両方の駆動力が加算され出力軸26を介してトルクコンバータ2に伝達される。そしてトルクコンバータ2にて所定のトルク比にて増大された上で自動変速装置5の入力軸に伝達されて車両が走行する。
次に、このように停止していた車両のイグニッションスイッチをONにして走り出す条件1の例1の場合の制御について図4のフローチャート1に基づき説明する。
まず、ステップS10では、通常時、つまり、停車していた状態からイグニッションスイッチをONにしてエンジン10を始動させ、そのエンジン10が始動完了したか否かが確認される。エンジン10の始動完了は、出力軸11に設けられる図示しない回転センサによって確認すればよい。始動完了していなければ、プログラムを終了する。始動完了が確認されれば、ステップS12に移動する。
エンジン10の始動前においては、電動オイルポンプ60は停止しており、クラッチ装置40の加圧室46およびキャンセラ室52にはともに作動油は供給されていない。このように、車両が停車し、エンジン10および電動オイルポンプ60が停止している状態においては、キャンセラ室52の作動油は、排出孔53から排出孔53の位置に応じた量がリザーバ72に排出され抜けている。また、前述したように、加圧室46には、連結状態において加圧室46が有する隙間に応じた分だけ作動油が残留されているものとする。このような状態でピストン部材44は、コイルばね45によって加圧室46方向に押圧されてクラッチ装置40は連結状態に維持されている。
そして、エンジン10が始動されると、クラッチ装置40は、連結状態が維持されたまま、エンジン10の回転に追従して入力軸41および出力軸26(シリンダ部材48)を同時に回転させる。なお、このとき出力軸26(シリンダ部材48)の回転はトルコンバータまで伝達され、加圧室46およびキャンセラ室52も回転を開始する。そして加圧室46の回転によって加圧室46の残油が第2遠心油圧RP2を発生させ、ピストン部材44を、作動油が抜け第1遠心油圧RP1を充分発生させることができないキャンセラ室52方向に押圧し第2付勢力Fbを発生させる。このためクラッチ装置40の係合力が弱まる虞がある。
次に、ステップS12では、PレンジまたはNレンジにあったシフトレバーのレンジが、D(ドライブレンジ)、2速、1速等の前進走行レンジまたはR(リバースレンジ)に切替えられたか否かが確認される。切替えが確認されなければ、プログラムを終了し、確認されれば、ステップS14に移動する。
ステップS14では、クラッチ装置40を連結状態にするため、連結遮断制御部81が電磁切替弁50を加圧室46がリザーバ72(油貯留部)に接続する第1位置に切替える。このとき、すでに、電磁切替弁50が第1位置にあるときには第1位置への切替え制御信号を送信してもよいし、第1位置に位置することを確認して制御信号を送信しないようにしてもよい。
ステップS16(給油制御部82)では、電動オイルポンプ60が前述した予め設定された所定時間だけ駆動され、電動オイルポンプ60から吐出される作動油がキャンセラ室52に所定量だけ充填されたのち電動オイルポンプ60の駆動が停止される。このとき、充填される作動油の量は、図3に示すように、キャンセラ室52の外周面からキャンセラ室52に設けられた排出孔53の回転軸線R1を中心とした最外径までの間の容積を満たす量である。ただし、その量は、停車していた状態等に大きく依存し一定ではない。そこで条件1においては、キャンセラ室52には一切、作動油が残存していないものと仮定して、給油すべき作動油の必要量を決定するものとする。ただし、この態様に限らず、キャンセラ室52に残存する作動油の量を各種センサによって取得し、該取得した量に応じて給油すべき作動油の必要量を決定してもよい。
これにより、加圧室46の残油によって発生した第2遠心油圧RP2による第2付勢力Fbに対抗する同等の大きさの第1付勢力Faがキャンセラ室52に貯留された作動油によって発生する第1遠心油圧RP1によって発生され、第2付勢力Fbは第1付勢力Faによって相殺される。そして、クラッチ装置40はコイルバネ45の付勢力によって好適に係合され安定した連結状態が実現できる。
次に、条件1の例2であるアイドルストップ制御の場合について図5のフローチャート2に基づき説明する。アイドルストップ制御では、車両走行時に信号等でブレーキを踏んで停車すると、アイドルストップ制御によってエンジン10が停止する。そしてエンジン10が停止した状態において、足をブレーキから離すことによって、エンジン10が再始動し車両が走行を開始する。
このようなアイドルストップ制御でエンジン10が停止している状態においては、電動オイルポンプ60が停止し、クラッチ装置40は、上記の条件1の例1の場合と同様にノーマルクローズ状態で連結状態となっている。そして、ブレーキペダルから足を離すと、図略の制御装置は、エンジン10を始動させる。このとき、始動の方法はどのようなものでもよいが、今回は、電動モータ20を回転させることによってエンジン10をクランキングさせ始動させるものとする。
そして、ステップS20において、アイドルストップ制御中であり、かつエンジン10が始動完了したか否かが確認される。アイドルストップ制御中ではない、またはアイドルストップ制御中であるがエンジン10の始動が完了していなければ、プログラムを終了する。アイドルストップ制御中であり、かつエンジン10の始動完了が確認されれば、ステップS22に移動する。このとき、上記と同様にエンジン10の始動前においては、電動オイルポンプ60は停止しており、クラッチ装置40の加圧室46およびキャンセラ室52には、ともにオイルは供給されていない。そして、ピストン部材44がコイルばね45によって加圧室46方向に押圧されてクラッチ装置40は連結状態に維持されている。また、前述したように、加圧室46には、作動油が残留されているものとする。また、キャンセラ室52の作動油は、排出孔53から排出孔53の位置に応じた量がリザーバ72に排出され抜けている。ただし、条件1と同様、キャンセラ室52に残存する作動油の量は、停車した状態等に大きく依存し一定ではない。そこで条件2においても、キャンセラ室52には一切作動油が残存していないものと仮定する。これにより、加圧室46の回転によって、加圧室46の残油が第2遠心油圧RP2を発生させると、第1遠心油圧RP1を充分発生させることができないキャンセラ室52方向にピストン部材44を押圧しクラッチ装置40の係合力を弱める虞がある。
以降、ステップS22(連結遮断制御部81)およびステップS24(給油制御部82)は、フローチャート1のステップS14およびステップS16と同様である。これにより、フローチャート1と同様にクラッチ装置40はコイルバネ45の付勢力によって適切に係合され安定した連結状態が実現できる。
次に、回生制御時や、電動モータ20のみによって走行している条件2の例3および例4の場合についてフローチャート3に基づき説明する。回生制御とは、車両走行時における車両減速時にあって、電動モータ20によって電力を発生させバッテリに回収することをいう。具体的には、本実施形態においては、クラッチ装置40が遮断状態にされてエンジン10が切り離され、エンジン10のエンジンブレーキによる減速の影響を排除した状態で電動モータ20によって高効率で発生する回生電力を回収している。このように、回生制御時や、電動モータ20のみによって走行する運転状態においては、クラッチ装置40は完全に遮断状態にある。しかし、その後、運転者が加速を要求し、アクセルを踏込むと、エンジン10による駆動力のアシストを行なうためクラッチ装置40を遮断状態から連結状態に切替えて再度エンジン駆動を追加する制御が実行される。
この場合、まず、ステップS30によって、車両走行中において電磁制御弁50が連結遮断制御部81によって第2位置P2に制御され、クラッチ装置40の状態が遮断状態であるか否かが確認される。つまり、回生制御状態であるか、若しくは電動モータ20のみによって走行している状態であるかを確認する。そして、クラッチ装置40が遮断状態でなければ、プログラムを終了する。遮断状態が確認されれば、ステップS32に移動する。
ステップS32(連結遮断制御部81)では、遮断状態を維持するため、電磁制御弁50が第2位置P2に制御され電動オイルポンプ60の吐出ポートが加圧室46に接続された状態で、継続して電動オイルポンプ60を駆動し加圧室46に作動油を給油する。
ステップS34では、運転者によってアクセルが踏込まれる等のエンジン駆動力が必要となる条件が発生し、図略の制御部がエンジン10の駆動力を車軸に伝達させるためにクラッチ装置40を連結状態とするよう指令を送出したか否かが確認される。連結状態にする指令が送出されていなければ、ステップS32の動作を継続して実行し、指令が送出されれば、ステップS36に移動する。ステップS36(連結遮断制御部81)は、フローチャート1のステップS14およびフローチャート2のステップS22と同様である。
次に、ステップS38(給油制御部82)では、電動オイルポンプ60が前述した予め設定された所定時間だけ駆動され、電動オイルポンプ60から吐出される作動油がキャンセラ室52に所定量だけ充填されたのち電動オイルポンプ60の駆動が停止される。このとき、キャンセラ室52に供給するべき作動油の量は、直前に制御されていたクラッチ装置40の遮断状態におけるピストン部材44の作動によってキャンセラ室52から排出された量と同等の量を供給(補給)すればよい。このとき、クラッチ装置40の遮断状態においてキャンセラ室52から排出される作動油の量は、事前に演算若しくは実験によって求め、図略の記憶部に記憶させておく。そして、該排出される作動油の量と同量の作動油を供給するための必要時間を、電動オイルポンプ60の吐出容量から演算すればよい。これによって、電動オイルポンプ60の作動時間を短くすることができ省電力が図れる。以上により、フローチャート1、2と同様にクラッチ装置40はコイルバネ45の付勢力によって適切に係合され安定した連結状態が実現できる。
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、停車中の車両においてクラッチ装置40が連結状態となっており、該連結状態でエンジン10(第1の駆動源)を始動させる場合、または走行中の車両において遮断状態となっているクラッチ装置40を、回転するエンジン10(第1の駆動源)と連結して連結状態とする場合に、キャンセラ室52に作動油を所定量だけ給油する制御を行なう。これにより、エンジン10とともに回転するキャンセラ室52に供給された作動油が遠心油圧RP1を発生させ、該遠心油圧RP1がピストン部材44をクラッチ装置40が連結状態となる方向に押圧する。その結果、たとえ加圧室46に作動油が残っており、該作動油によって遠心油圧RP2が発生しピストン部材44がキャンセラ室52方向でクラッチ装置40が遮断状態となる方向に押圧されてもキャンセラ室52に発生した遠心油圧RP1が、加圧室46に発生した遠心油圧RP2を減殺し、クラッチ装置40の接続力および制御応答性を高めることができる。
また本実施形態においては、給油制御部82は、作動油をキャンセラ室52に所定量だけ充填するために、電動オイルポンプ60を予め設定した所定時間だけ作動させる。このように、予め、キャンセラ室52に作動油を所定量だけ充填するために必要な時間を取得し、該時間だけ電動オイルポンプ60を作動させることにより、精度良く必要量の作動油を供給でき、電動オイルポンプ60の不要な作動を抑制することができ効率的である。
なお、本実施形態においては出力軸26を一方の軸とし出力軸26に形成した大径側係合部26aに第1クラッチプレートとしてのセパレートプレート43を係合した。また入力軸41を他方の軸とし入力軸41に形成した小径側係合部に第2クラッチプレートとしての摩擦プレート42を係合した。しかしこれに限らず入力軸41を一方の軸とし入力軸41に形成した小径側係合部41dに第1クラッチプレートとしてのセパレートプレート43を係合し、出力軸26を他方の軸とし出力軸26に形成した大径側係合部26aに第2クラッチプレートとしての摩擦プレート42を係合してもよい。これにより入力軸41側のセパレートプレート43を押圧するための出力軸26側のピストン部材44の押圧部44aの構成が少し複雑となる点を除いて同様の効果が得られる。
また、本実施形態における入力軸41と出力軸26とを反転させる構成としてもよい。つまり本実施形態における出力軸26にエンジンを連結して新入力軸とし、入力軸41を電動モータのロータと一体的に回転する構成とし新出力軸としてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
また、本実施形態における変速機は、一般的に変速機として用いられる遊星歯車変速機以外にも、無段変速機であってもよい。
また、本実施形態において弾性部材としてコイルばね45を適用したが、これに限らず板バネ等によって構成してもよい。さらに、ゴムや気体を利用してもよい。
さらに、本ハイブリッド車用クラッチ装置40は、上述した使用態様に限らず、車両発進時にクラッチ装置40を切断して電動モータ20のみによって駆動する等、他の使用態様にて使用してもよい。その場合には、本発明をフローチャート3に示す車両走行時における回生時および電動モータ20のみによって走行する場合のように、クラッチ装置40が遮断状態から連結状態に制御される場合に適用すればよい。