JP5320625B2 - アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、それぞれ櫛歯状であって近接してかみ合う固定電極群と可動電極群とからなる電極対を2対有し、各可動電極群につながる1個の回動板を有するアクチュエータ及びその製造方法に関するものである。本発明は、特に、回動板が光を反射する反射鏡として機能するアクチュエータ及びその製造方法に関するものである。
従来から、光スイッチ用等のミラーデバイスとして使用されるアクチュエータは、SOI(Silicon On Insulator)基板を使用して製造される(例えば、特許文献1参照)。以下、特許文献1の文言と符号とを適宜使用して説明する。
この従来技術によれば、SOI基板の両面において、フォトリソグラフィー法によるマスクの形成及びエッチングを順次行う。そして、主としてSiOで構成された第2の層7からなるスペーサ5によって、可動側櫛歯状電極211、212及びこれらにつながる質量部21と、可動側櫛歯状電極211、212にそれぞれ噛み合っている固定側櫛歯状電極331、341とが、第3の層8すなわち支持基板4から浮いた状態になる(特許文献1の第11−13頁、図3(d)参照)。
言い換えれば、ウエットエッチングによるパターニングにおいてエッチングされずに残存した第2の層7により、第1の支持部22、23および第2の支持部31、32が第3の層8(支持基板4)に、それぞれ固定される。この残存した第2の層7がスペーサ5として機能する。その後に、第1の層6のうち固着部33、34に対応する部分を第3の層8(すなわち支持基板4)に固着させる(特許文献1の第13頁参照)。この固着方法としては、前述したパターニングの後に、基板10を洗浄水により洗浄し、その後、乾燥させて、第1の層6と第2の層7との間に介在する洗浄水の除去に伴う引力により、第1の層6のうち固着部33、34に対応する部分を第3の層8とを接触させ前記固着を行うのが好ましいとされている(特許文献1の第14頁参照)。これにより、固定側櫛歯状電極331、341は、前述した可動側櫛歯状電極211、212に対し支持基板4の板厚方向でずれるように、より具体的には、スペーサ5の厚さ分だけ支持基板4側へずれるように、初期変位している(特許文献1の第9頁、図2参照)。
また、この従来技術によれば、固着部33、34に対応する部分を第3の層8(すなわち支持基板4)に固着させた状態で、可動側櫛歯状電極211、212と固定側櫛歯状電極331、341とに交互に電圧(例えば位相を180度ずらした交流(交番)電圧)を印加する。すると、可動側櫛歯状電極211と固定側櫛歯状電極331との間と、可動側櫛歯状電極212と固定側櫛歯状電極341との間とに交互に静電気力(クーロン力)が生じる。この静電気力により、質量部21が、“I”字状の平面形状を有する弾性連結部24、25を回動中心軸として支持基板4の板面(図1における紙面に平行な面)に対して傾斜するように振動(回動)する。これにより、質量部21の上面に設けられている光反射部213が振動(回動)する。したがって、特許文献1に記載されたアクチュエータ1を光スキャナ、光アッテネータ、光スイッチなどの光デバイスに適用することができる(特許文献1の第9−10頁、図1参照)。
特開2006−334697号公報(第9〜14頁、図1〜図3)
しかしながら、上述した従来技術によれば次のような問題がある。第1に、次の2つの理由から、アクチュエータを製造する際の製造費を削減することが困難である。最初の理由は、SOI基板を使用するので、材料費の削減が困難であることである。次の理由は、SOI基板の両面においてフォトリソグラフィー法によるマスクの形成及びエッチングを順次行うので、工数、ひいては加工費の削減が困難であることである。
第2に、固定側櫛歯状電極331、341と可動側櫛歯状電極211、212との間の噛み合わせ具合がばらついて、質量部21が振動(回動)する運動がばらつくおそれがある。質量部21が振動(回動)する運動がばらつく理由は、次の2つである。
最初の理由は、ウエットエッチングによるパターニングにおいて、本来除去されるべき部分にSiOで構成された第2の層7が残る、言い換えればエッチング残りが発生するおそれがあることに起因する。本来除去されるべき部分に第2の層7が残った場合には、支持基板4に一様に固着されるべき固着部33、34が、浮いたり傾いたりするおそれがある。そして、固着部33、34が浮いたり傾いたりすることによって、接続部35、36における撓み具合がばらつく。これにより、固定側櫛歯状電極331、341と可動側櫛歯状電極211、212との間の噛み合わせ具合がばらつくので、可動側櫛歯状電極212と固定側櫛歯状電極341との間とに生じる静電気力(クーロン力)がばらつく。したがって、アクチュエータ1相互間において、質量部21が振動(回動)する運動がばらつくおそれがある。この問題は、第1の層6および第3の層8に覆われた第2の層7の部分が、エッチングにより露出した側面側からウエットエッチングが進行して(言い換えれば水平方向にもエッチングされて)、徐々に除去されることに起因している(特許文献1の第13頁、図3(c)〜(e)参照)。
次の理由は、可動側櫛歯状電極212と固定側櫛歯状電極341との間において静電気力(クーロン力)によって引力が発生し、その引力によって弾性連結部24、25に加えられる力に水平方向の成分が存在し得ることに起因する。この力の水平方向の成分によって、“I”字状の平面形状を有する弾性連結部24、25が水平方向に変形して、質量部21が振動(回動)する運動において横ずれ(横滑り)が発生するおそれがある。また、平面視して質量部21が微小な角度だけ回動するおそれがある。したがって、1個のアクチュエータ1において質量部21が振動(回動)する運動がばらつくおそれがある。
第3に、“I”字状の平面形状を有する弾性連結部24、25において、“I”の上下方向に伸びる回動中心軸の回りに質量部21が回動する。このことにより、弾性連結部24、25の付け根部分において、応力が集中するので疲労破壊が発生するおそれがある。したがって、アクチュエータ1の長寿命化が図れないおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、アクチュエータについて、製造費を削減することが困難であること、回動板が回動する運動がばらつくおそれがあること、及び、長寿命化が困難であることである。
以下の説明における()内の数字・記号は、図面における符号を示しており、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの数字は、「説明における用語を、図面に示された構成要素に限定して解釈すること」を意味するものではない。
上述の課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータ(1、37)は、基体(2)と、基体(2)の上面に固定され相対向する第1の支持部(4)と、基体(2)の上面に固定され相対向する第2の支持部(5)と、第1の支持部(4)から各々伸びるとともに基体(2)の上面から浮いている弾性連結部(6)と、弾性連結部(6)を介して第1の支持部(4)の各々につながるとともに基体(2)の上面から浮いている回動板(7)と、回動板(7)において第2の支持部(5)と対向する側に設けられた櫛歯状の可動電極群(11)と、第2の支持部(5)の各々から回動板(7)に向かって伸びるとともに少なくとも第2の支持部(5)の側において基体(2)の上面から浮いている変形可能部(8)と、変形可能部(8)を介して第2の支持部(5)の各々につながるとともに基体(2)の上面に固定されている固定部(9)と、可動電極群(11)に対して所定の距離を隔ててかみ合わされるようにして固定部(9)に設けられた櫛歯状の固定電極群(10)とを備えるとともに、可動電極群(11)は固定電極群(10)に対して所定の距離だけ上方に位置しており、固定部(9)は該固定部(9)の自重によって下降して基体(2)の上面に接触して固定されており、固定部(9)と第2の支持部(5)とをつなぐ変形可能部(8)は変形しており、かみ合っている可動電極群(11)と固定電極群(10)とに対して異なる極性の電圧を印加することによって可動電極群(11)と固定電極群(10)との間に引力を発生させ、該引力によって弾性連結部(6)を回動軸として回動板(7)が回動することを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータは、上述したアクチュエータ(1、37)において、基体(2)の上面に一部が固定された微細構造体(3)を備えるとともに、第1の支持部(4)と第2の支持部(5)と弾性連結部(6)と回動板(7)と可動電極群(11)と変形可能部(8)と固定部(9)と固定電極群(10)とは微細構造体(3)に含まれることを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータは、上述したアクチュエータ(1)において、微細構造体(3)は、該微細構造体(3)における基体(2)に固定される側からエッチングされることと、該エッチング後に残った薄肉部(28、36)が除去されることとによって製作されたことを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータは、上述したアクチュエータ(1、37)において、基体(2)の上面と固定部(9)とを位置決めする位置決め部(14)を備えたことを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータは、上述したアクチュエータ(1、37)において、弾性連結部(6)の平面形状は「V」字状、「A」字状、「X」字状、又は、「H」字状のいずれかであることを特徴とする。
また、本発明に係るアクチュエータの製造方法は、基体(2)と、基体(2)の上面に一部が固定された微細構造体(3)とを備えたアクチュエータ(1)を製造するアクチュエータの製造方法であって、微細構造体(3)の材料である基板(17)を準備する工程と、基板(17)の1つの面をエッチングして第1の溝(23)を形成する第1のエッチング工程と、1つの面をエッチングして、第1の溝(23)を掘り下げた第2の溝(25)と、1つの面を掘り下げた凹部と、第2の溝(25)及び凹部以外の部分である第1の支持部(4)及び第2の支持部(5)と、基板(17)において1つの面に相対向する他の面の側に残る薄肉部(28)とを有するエッチングされた基板(26)を形成する第2のエッチング工程と、エッチングされた基板(26)を基体(2)の上面に固定して中間体(29)を形成する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、中間体(29)においては薄肉部(28)によって保持されていた固定部(9)を該固定部(9)の自重によって下方に変位させて基体(2)の上面に固定する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、凹部の一部に相当する部分において回動板(7)を形成する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、凹部の一部に相当する部分において回動板(7)と第1の支持部(4)とをつなぐ弾性連結部(6)を形成する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、凹部の一部に相当する部分において固定部(9)と第2の支持部(5)とをつなぐ変形可能部(8)を形成する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、凹部の一部に相当する部分のうち回動板(7)において第2の支持部(5)と対向する側に櫛歯状の可動電極群(11)を形成する工程と、中間体(29)から薄肉部(28)を除去することによって、凹部の一部に相当する部分のうち固定部(9)において可動電極群(11)に対して所定の距離を隔ててかみ合わされるようにして櫛歯状の固定電極群(10)を形成する工程とを備えるとともに、可動電極群(11)は固定電極群(10)に対して所定の距離だけ上方に位置しており、中間体(29)から薄肉部(28)が除去された状態において固定部(9)と第2の支持部(5)とをつなぐ変形可能部(8)が変形していることを特徴とする。
また、本発明に係るアクチュエータ(1)の製造方法は、上述の製造方法において、基板(17)はシリコン又はプラスチックからなることを特徴とする。
また、本発明に係るアクチュエータ(1)の製造方法は、上述の製造方法において、固定する工程では、基体(2)の上面に設けられた凸部(15)又は凹部若しくは貫通孔(13)と固定部(9)に設けられた凹部若しくは貫通孔(13)又は凸部(15)とを位置決めすることを特徴とする。
また、本発明に係るアクチュエータ(1)の製造方法は、上述の製造方法において、除去する工程では、振動切削加工、研削加工、研磨加工、又は、プラズマ加工のいずれかを使用することを特徴とする。
また、本発明に係るアクチュエータ(1)の製造方法は、上述の製造方法において、弾性連結部(6)の平面形状は「V」字状、「A」字状、「X」字状、又は、「H」字状のいずれかであることを特徴とする。
本発明によれば、固定部(9)が自重によって下方に変位する(下降する)。また、基体(2)に対して微細構造体(3)を高精度で容易に位置決めすることができる。したがって、簡易な工程によってアクチュエータ(1、37)を製造するので、アクチュエータ(1、37)を製造する際の加工費を削減することができる。
また、本発明によれば、基体(2)の上面に一部が固定された微細構造体(3)を備え、第1の支持部(4)と第2の支持部(5)と弾性連結部(6)と回動板(7)と可動電極群(11)と変形可能部(8)と固定部(9)と固定電極群(10)とが微細構造体(3)に含まれる。加えて、微細構造体(3)は、該微細構造体(3)における基体(2)に固定される側からエッチングされること、該エッチング後に残った薄肉部(28、36)が除去されること、及び、固定部(9)は該固定部(9)の自重によって下降して基体(2)の上面に接触して固定されることにより、製作される。これらにより、第1に、微細構造体(3)の材料の同じ面に対して、微細構造体(3)の厚さ方向に複数回エッチングを施すことによって、アクチュエータ(1、37)を製造する。第2に、固定部(9)に外力を加えることなく、かつ、特別な工程を必要とすることなく、固定部(9)が自重によって下方に変位する(下降する)。したがって、簡易な工程によりアクチュエータ(1、37)を製造するので、アクチュエータ(1、37)を製造する際の加工費を削減することができる。
また、本発明によれば、固定部(9)が該固定部(9)の自重によって下降して基体(2)の上面に接触して固定される際に、位置決め部(14)において基体(2)の上面と固定部(9)とが位置決めされる。したがって、基体(2)に対して微細構造体(3)を高精度で容易に位置決めすることができる。
また、本発明によれば、固定電極群(10)を含む固定部(9)と可動電極群(11)を含む回動板(7)とは、同じエッチング工程において溝が形成される方向(微細構造体(3)の厚さ方向)にエッチングされることによって、形成される。これにより、回動板(7)が回動する運動に関係する部分においてエッチング残りの発生が防止される。したがって、回動板(7)が回動する運動のばらつきが抑制される。
また、本発明によれば、アクチュエータ(1、37)が有する弾性連結部(6)の平面形状は、「V」字状、「A」字状、「X」字状、又は、「H」字状のいずれかである。これにより、第1に、回動板(7)がθ方向に回動する際の横ずれ(横滑り)、及び、平面視した場合に回動板(7)が微小な角度だけ回動する運動が抑制される。したがって、回動板(7)がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。第2に、回動板(7)がθ方向に回動する際に、弾性連結部(6)における応力が分散するので、弾性連結部(6)における疲労破壊の発生が抑制される。したがって、アクチュエータ(1、37)の長寿命化を図ることができる。
また、本発明によれば、微細構造体(3)が製作される際に、微細構造体(3)の材料がエッチングされた後に残った薄肉部(28、36)が、振動切削加工、研削加工、研磨加工、又は、プラズマ加工のいずれかによって除去される。これによって、形成された回動板(7)の表面が鏡面になる。したがって、回動板(7)に光反射部を別途取り付ける必要がないので、少ない工数でアクチュエータ(1、37)を製造することができる。
また、本発明によれば、固定部(9)が自重によって下方に変位する際に変形可能部(8)が伸張することにより、固定部(9)が、ひいては固定電極群(10)が傾くことが防止される。したがって、回動板(7)が回動する運動のばらつきが抑制される。加えて、固定部(9)が自重によって下方に変位する際に第2の支持部(5)の側に引っ張られにくいので、固定電極群(10)と可動電極群(11)とのX方向における重なりの量が増大する。したがって、回動板(7)が回動する運動の効率が向上する。
また、本発明によれば、微細構造体(3)の材料である基板(17)は、シリコン又はプラスチックからなる。したがって、SOI基板を使用する必要がないので、アクチュエータ(1、37)を製造する際の材料費を削減することができる。
アクチュエータ(1、37)に、基体(2)と、基体(2)の上面に固定された微細構造体(3)とを備える。微細構造体(3)は、いずれも同じ厚さを有し基体(2)の上面に固定されている、Y方向に相対向する第1の支持部(4)とX方向に相対向する第2の支持部(5)とを有する。相対向する第1の支持部(4)には「V」字状の平面形状を有する1対の弾性連結部(6)が設けられ、それらの弾性連結部(6)を介してアクチュエータ(1、37)のほぼ中央部に回動板(7)が設けられている。相対向する第2の支持部(5)からは、それぞれアクチュエータ(1、37)の中央部に向かって折り返しばねからなるばね部(8)が設けられている。それらのばね部(8)は、アクチュエータ(1、37)の中央部に向かって伸びて、それぞれ固定部(9)につながっている。
2つの固定部(9)におけるアクチュエータ(1、37)の中央部に近い側の端部には櫛歯上の固定電極群(10)が設けられ、固定部(9)と固定電極群(10)とは基体(2)の上面に固定されている。回動板(7)の左右の端部には櫛歯上の可動電極群(11)が設けられ、弾性連結部(6)と回動板(7)と可動電極群(11)とは基体(2)の上面から距離を隔てて浮いている。固定電極群(10)と可動電極群(11)とは、Y方向に微小な距離を隔ててかみ合わされるようにして設けられている。これらによって、基体(2)の上面に固定された固定電極群(10)に対して、可動電極群(11)は所定の距離だけ上方(+Z方向)に位置して設けられていることになる。また、固定電極群(10)を含む固定部(9)は、該固定部(9)の自重とばね部(8)が伸張することとによって直下に変位して、基体(2)の上面に接触して固定されている。
本発明に係るアクチュエータ及びその製造方法の実施例1を、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本実施例に係るアクチュエータを示す概略平面図である。図2(1)及び図2(2)は、図1におけるアクチュエータ1をそれぞれA−A線及びB−B線に沿って示す断面図である。図3(1)〜(5)は、本実施例に係るアクチュエータの製造方法におけるシリコン基板に成膜する工程から1回目のエッチング後のレジスト除去工程までを順次示した断面図である。図4(1)〜(5)は、本実施例に係るアクチュエータの製造方法における2回目のエッチング工程からアクチュエータを完成させる工程までを順次示した断面図である。なお、本出願書類に含まれるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。また、単なる「X方向」、「Y方向」、「Z方向」、及び「θ方向」という文言を使用した場合には、それぞれ「±X方向」、「±Y方向」、「±Z方向」、及び「±θ方向」を意味する。
図1のアクチュエータ1は、シリコン基板(シリコンウェーハ)、ガラス板、プラスチック板等からなる基体2と、基体2の上面に固定された微細構造体3とを有する。以下、アクチュエータ1の主として平面的な構造について図1と図2とを参照して説明する。
図1に示されているように、微細構造体3は、Y方向に相対向する第1の支持部4と、X方向に相対向する第2の支持部5とを有する。第1の支持部4及び第2の支持部5は、それぞれ2枚の薄板からなり、基体2の上面に固定(接着又は固着)されている。また、図2に示されているように、第1の支持部4と第2の支持部5とは同じ厚さを有する。Y方向に相対向する第1の支持部4には、「V」字状(逆「V」字状を含む)の平面形状を有する弾性連結部(トーションバー)6が設けられている。そして、それらの弾性連結部6を介して、アクチュエータ1のほぼ中央部に回動板7が設けられている。弾性連結部6と回動板7とは、基体2の上面からは距離を隔てて浮いている。回動板7の表面(上面)は、照射された光が反射されるように鏡面になっている。
図1及び図2(2)における右側の第2の支持部5には、その第2の支持部5の平面視した場合の両端(上端及び下端)に近い側において、それぞれ折り返しばねからなる2つのばね部8が設けられている。それらのばね部8は、アクチュエータ1の中央部に向かって(−X方向に向かって)伸びて右側の固定部9につながっている。同様に、図1における左側の第2の支持部5にも2つのばね部8が設けられ、それらのばね部8は、アクチュエータ1の中央部に向かって(+X方向に向かって)伸びて左側の固定部9につながっている。回動板7と各ばね部8と各固定部9とは同じ厚さを有し、その厚さは第1の支持部4及び第2の支持部5の厚さよりも小さい。また、各固定部9は、基体2の上面に固定されている。
各ばね部8は、薄板状の部材が複数回折り返された形状を有している。また、各ばね部8は、抵抗器(resistor)の旧式の図記号がX方向に沿って描かれたような形状を有しているので、X方向の力が加えられることによってX方向に伸縮することが可能である。また、各ばね部8と第2の支持部5との上面同士はつながっているので、各ばね部8は第2の支持部5の側において基体2の上面から距離を隔てて浮いている(図2(2)参照)。
2つの固定部9におけるアクチュエータ1の中央部に近い側の端部には、櫛歯上の固定電極群10が設けられている。固定部9に含まれる固定電極群10は、基体2の上面に固定(接着又は固着)されている。また、回動板7の左右の端部には、櫛歯上の可動電極群11が設けられている。回動板7に含まれる可動電極群11は、基体2の上面から距離を隔てて浮いている。また、固定電極群10を含む固定部9と可動電極群11を含む回動板7とは同じ厚さを有し、その厚さは第1の支持部4及び第2の支持部5の厚さよりも小さい。また、固定電極群10と可動電極群11とは、Y方向に微小な距離を隔ててかみ合わされるようにして設けられている。これらによって、基体2の上面に固定された固定電極群10に対して、可動電極群11は所定の距離だけ上方(+Z方向)に位置して設けられていることになる(図2参照)。そして、この所定の距離は、回動板7及び固定部9の厚さと第1の支持部4及び第2の支持部5の厚さとの差に等しい。
なお、固定電極群10及び可動電極群11の個別の電極の幅(厚さ)は、例えば、3〜5μm程度である。また、固定電極群10の個別の電極とこれに隣接する可動電極群11の個別の電極との間の間隔は、例えば、1.5〜5μm程度である。
2つの固定部9には、それぞれ、複数の開口12と、「+」字状の位置決め孔13とが設けられている。そして、基体2とその上面に固定された微細構造体3とは、位置決め部14によって位置決めされている。この位置決め部14は、固定部9に設けられた「+」字状の位置決め孔13と、位置決め孔13に対応して基体2に設けられた「+」字状の位置決め用突起(図1には示されていない)とを有する。なお、複数の開口12を位置決め孔として使用することもできる。また、位置決め孔13は貫通孔でも止り穴でもよい。
以下、アクチュエータ1の主として立体的な構造について図2を参照して説明する。なお、図2においては、わかりにくくなることを避けるために適宜省略して示している。
図2に示されているように、基体2と微細構造体3とは、固定部9に設けられた位置決め孔13と、位置決め孔13に対応して基体2に設けられた位置決め用突起15とによって、位置決めされている。また、微細構造体3が有する第1の支持部4及び第2の支持部5は、基体2の上面において外周に沿って設けられた二重の枠16の間に挟まれるようにして固定されている。なお、基体2がシリコン基板である場合には、基体2の表面(少なくとも上面)に絶縁膜(図示なし)が設けられている。
図2に示されているように、第1の支持部4と、第2の支持部5と、固定電極群10を含む固定部9とは、基体2の上面に固定(接着又は固着)されている。また、弾性連結部6(図2には示されていない)と可動電極群11を含む回動板7と固定電極群10を含む固定部9とは、第1の支持部4と第2の支持部5とに比べて小さい厚さを有する。
弾性連結部6と可動電極群11を含む回動板7とは、基体2の上面からは距離を隔てて浮いている。折り返しばねからなるばね部8は、第2の支持部5と固定部9とをつないでいる。そして、ばね部8は、第2の支持部5の側においては基体2の上面からは距離を隔てて浮いているとともに、固定部9の側では基体2の上面の位置まで下がっている。言い換えれば、ばね部8は、第2の支持部5から固定部9に向かって斜め下に下がり、かつ、伸張するようにして設けられている(図2(2)参照)。
本実施例に係るアクチュエータ1の動作を説明する。図2の状態において、可動電極群11が上方に位置した状態でかみ合っている固定電極群10と可動電極群11とに、異なる極性の電圧を印加する。例えば、図2の左側の固定電極群10には正の電圧を、可動電極群11には負の電圧を、それぞれ印加する。すると、静電気力によって固定電極群10と可動電極群11との間には互いに引き合う力(引力)が発生する。ここで、固定電極群10に対して可動電極群11は所定の距離だけ上方(+Z方向)に位置して設けられている。したがって、図2の左側において可動電極群11が固定電極群10に向かって、すなわち下方(−Z方向)に引きつけられる。このことにより、弾性連結部6(図1参照)を回動軸として、回動板7が+θ方向に回動する。この動作によって、回動板7の表面(図2では上面)に照射された光を反射させることができ、かつ、所定の範囲の角度内において光の向き(角度)を制御することができる。言い換えれば、回動板7は照射された光を反射する反射鏡として機能することができる。
本実施例に係るアクチュエータの製造方法を、主として図3と図4とを参照して説明する。なお、図3と図4とにおいては、わかりにくくなることを避けるために、図2に比較して更に模式的に示している。
まず、図3(1)に示すように、シリコン基板17の上に適当な材料を使用して膜18を形成する。膜18は、熱酸化法によって形成されるSiO膜でもよく、蒸着法等によって形成されるAl(アルミニウム)膜でもよい。
次に、図3(2)に示すように、周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を使用して、膜18のうち必要な部分のみをパターン19として残すとともに他の部分を除去する。このことにより、シリコン基板17の元の表面からなる第1の露出面20を形成する。パターン19は、これ以降の2度のエッチング工程において、シリコン基板17の表面において残したい部分を保護するマスクとして機能する。
次に、図3(3)に示すように、周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を使用して、シリコン基板17の表面のうち残したい部分の上及びパターン19の上に、レジストパターン21を形成する。この工程により、レジストパターン21同士の間には凹部22が形成され、凹部22においては第1の露出面20が露出する。
次に、図3(4)に示すように、レジストパターン21が形成されたシリコン基板17の表面に対して、シリコン基板17の厚さ方向に向かって1回目のエッチングを行う。このことによって、図3(3)に示された第1の露出面20において、所定の深さの浅い溝23を形成することができる。ここで、本実施例において使用するエッチングとしては、ウエットエッチング及びドライエッチングのいずれをも使用することができる。好ましくは、RIE(Reactive Ion Etching)を使用すればよく、Deep RIEを使用すればいっそうよい。
次に、図3(5)に示すように、図3(4)に示されたレジストパターン21を除去する。ここまでの工程によって、シリコン基板17の表面においては、パターン19に覆われた部分と第1の露出面20と浅い溝23とが形成される。
次に、図4(1)に示すように、図3(5)に示されている状態から、レジストパターン21が除去されたシリコン基板17の表面に対して、シリコン基板17の厚さ方向に向かって2回目のエッチングを行う。このことにより、第1の露出面20が掘り下げられた浅い第2の露出面24と、図3(5)に示された浅い溝23が更に掘り下げられた所定の深さの深い溝25とを形成することができる。
次に、図4(2)に示すように、図4(1)に示されたパターン19を除去する。ここまでの工程によって、表面に微細な凹凸を有する微細構造体、言い換えればエッチングされたエッチング後の基板26が完成する。エッチング後の基板26は、外周に沿って元のシリコン基板17の厚さが残っている外枠部27と、外枠部27における第1の露出面20と、外枠部27の内側における第2の露出面24と、第2の露出面24において形成された深い溝25と、深い溝25におけるシリコン基板の残存部からなる薄肉部28とを有する。
なお、1回目及び2回目のエッチングにより、図1に示された「+」字状の位置決め孔13(図3及び図4には示されていない)を所定の場所に形成しておくことが好ましい。このことによって、基体2に対してエッチング後の基板26を高精度で容易に位置決めすることができる(後述)。
次に、図4(3)に示されている基体2を準備する。基体2としては、例えば、シリコン基板、ガラス板、プラスチック板等を使用することができる。完成したアクチュエータ1において静電気力を発生させるためには、基体2の表面が非導電性(絶縁性)を有することが必要である。そこで、基体2としてシリコン基板を使用する場合には、表面(少なくとも上面)にSiO等の絶縁膜を予め形成しておく。この絶縁膜の材料として、基体2にエッチング後の基板26を固定するための接着(粘着)テープ、液状接着剤等を使用してもよい。
ここで、周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を使用して、基体2に位置決め用突起15(図2(1)参照)と二重の枠16(図2(2)参照)とを予め形成しておくことが好ましい。これらによって、第1に、位置決め部14において、位置決め用突起15と位置決め孔13(図1、図2(1)参照)とを使用して、基体2に対してエッチング後の基板26を高精度で容易に位置決めすることができる。第2に、二重の枠16と外枠部27とによって、基体2とエッチング後の基板26との位置決め(特に、粗い位置決め)と固定とを図ることができる(図4(3)参照)。すなわち、二重の枠16と外枠部27とは位置決め部としても機能する。
次に、図4(3)に示すように、基体2に対してエッチング後の基板26を粗く位置決めした後に、基体2にエッチング後の基板26を固定する。この固定には、接着剤や接着テープ等による接着を使用することができる。また、基体2の上面とエッチング後の基板26の下面とをそれぞれ活性化処理した後に、活性化されたそれらの面を接合することによって固着してもよい。ここまでの工程によって、基体2とエッチング後の基板26とが一体化された中間体29が完成する。
次に、図4(4)に示すように、エッチング後の基板26が有する薄肉部28を除去する。薄肉部28を除去する方法としては、振動切削加工、特に楕円(真円を含む)振動切削加工を使用することが好ましい。これにより、切削ツール30を使用してエッチング後の基板26を切削する際に、切削ツール30の楕円状の振動方向に沿って切削くず31がエッチング後の基板26から引き上げられるようにして、エッチング後の基板26が切削される。なお、この工程では、切削加工に起因するエッチング後の基板26の変形を防止するために、基体2とエッチング後の基板26との間の空間に周知の補強材を充填しておくことが好ましい。
次に、引き続き図4(4)の切削工程において薄肉部28を完全に除去する。これにより、エッチング後の基板26において薄肉部28が除去されることによって生成された面が鏡面になる。また、薄肉部28を完全に除去することによって、固定部9が自重によって下方(直下の方向)に変位するとともにばね部8が伸張する。ここまでの工程により、図1、図2、及び、図4(5)に示されたアクチュエータ1が完成する。
ここで、固定部9が自重によって直下の方向に変位する際にばね部8が伸張することによって、固定部9が傾くことが防止される。加えて、固定部9が自重によって直下の方向に変位する際に第2の支持部5の側に引っ張られにくいので、固定電極群10と可動電極群11とのX方向における重なりの量が増大する(図2参照)。
また、中間体29は次の構造を有する(図4(4)参照)。第1に、薄肉部28が完全に除去される前は、図4(5)に示されている固定部9に相当する部分は、基体2の上面から距離を隔てて浮いている。第2に、薄肉部28が完全に除去される前は、図4(5)に示されている固定部9に相当する部分は、基体2に固定されている第2の支持部5に対してばね部8(図4には直接示されていない)に相当する部分によってつながっている。第3に、ばね部8に相当する部分は、薄肉部28が完全に除去されることによって、本来のばね部8(図1、図2(2)参照)として変形(伸縮)可能になる。第4に、位置決め部14において、基体2に設けられた位置決め用突起15と、位置決め用突起15に対応してエッチング後の基板26に設けられた位置決め孔13(図2(1)参照)とが、設けられている。
上述した中間体29の構造によって、図4(5)に示されたアクチュエータ1は、次の特徴を有する。第1に、図4(5)に示すように、薄肉部28が完全に除去されることによって、固定部9に外力を加えることなく、固定部9が自重によって下方に変位する(下降する)。固定部9が自重によって下降する理由は、まず、薄肉部28が完全に除去される前は、固定部9に相当する部分が基体2の上面から距離を隔てて浮いているからである(図4(4)参照)。また、基体2に固定されている第2の支持部5に対して、固定部9がばね部8(図4には直接示されていない)でつながっているとともに、ばね部8が容易に伸張するからである(図1、図2(2)参照)。
第2に、固定電極群10と可動電極群11とが互いにかみ合わされるようにして設けられている(図1、図2参照)電極部32において、固定部9につながっている固定電極群10に対して、基体2の上面から浮いている回動板7につながっている可動電極群11が上方(+Z方向)に位置して設けられている。
第3に、位置決め部14(図4(4)参照)において、位置決め用突起15と位置決め孔13(図1、図2(1)参照)とを使用することによって、基体2に対して微細構造体3が高精度で容易に位置決めされる。
以上説明したように、本実施例によれば、SOI基板を使用することなく、通常のシリコン基板17の同じ面に対して複数回エッチングを施すことによって、アクチュエータ1を製造する。したがって、アクチュエータ1を製造する際の材料費と加工費とを削減することができる。
また、本実施例によれば、固定部9に外力を加えることなく、かつ、特別な工程を必要とすることなく、固定部9が自重によって下方に変位する(下降する)。また、基体2に対して微細構造体3を高精度で容易に位置決めすることができる。したがって、簡易な工程によってアクチュエータ1を製造するので、アクチュエータ1を製造する際の加工費を削減することができる。
また、本実施例によれば、固定電極群10を含む固定部9と可動電極群11を含む回動板7とは、同じエッチング工程において、シリコン基板17がZ方向にエッチングされることによって形成される。これにより、回動板7が回動する運動に関係する部分においてエッチング残りの発生が防止される。したがって、回動板7がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。
また、本実施例によれば、図1に示されているように、回動板7がθ方向に回動する際の回動軸である弾性連結部6が、「V」字状の平面形状を有する。これにより、第1に、弾性連結部6が有する斜めの部分が、X方向に加えられる力に対して弾性連結部6を補強するように作用する。このことによって、回動板7がθ方向に回動する際の横ずれ(横滑り)が抑制される。したがって、回動板7がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。第2に、回動板7がθ方向に回動する際に、弾性連結部6における応力が分散する。これにより、弾性連結部6における疲労破壊の発生が抑制される。したがって、アクチュエータ1の長寿命化を図ることができる。
また、本実施例によれば、シリコン基板17から形成されるエッチング後の基板26の薄肉部28を、振動切削加工によって除去する。これにより、形成された回動板7の表面(図2では上面)が鏡面になる。したがって、回動板7に光反射部を別途取り付ける必要がないので、少ない工数でアクチュエータ1を製造することができる。
また、本実施例によれば、固定部9が自重によって下方に変位する際にばね部8が伸張することにより、固定部9が、ひいては固定電極群10が傾くことが防止される。これにより、固定電極群10と可動電極群11とのX方向における重なりの量が安定する。したがって、回動板7がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。加えて、固定部9が自重によって下方に変位する際に第2の支持部5の側に引っ張られにくいので、固定電極群10と可動電極群11とのX方向における重なりの量が増大する。したがって、回動板7が回動する運動の効率が向上する。
なお、本実施例では、エッチング後の基板26の薄肉部28を除去する工程において振動切削加工を使用した。振動切削加工に代えて、ラッピング加工等の研磨加工を使用してもよい。また、プラズマ加工を使用してもよい。プラズマ加工の場合には、基体2とエッチング後の基板26との間の空間に補強材を充填する必要がないという利点がある。
また、図1に示されたアクチュエータ1において、2個の弾性連結部6の平面形状を入れ替えることもできる。言い換えれば、上側にある弾性連結部6の平面形状が「V」字状(又は逆「V」字状)であるとともに、下側にある弾性連結部6の平面形状が逆「V」字状(又は「V」字状)であればよい。いずれの場合にも、回動板7がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。また、アクチュエータ1の長寿命化を図ることができる。
また、ここでいう「V」字状の平面形状については、それらの文字を構成する2本の帯状の部分が、根元においてつながっていてもよく、離れていてもよい。図1には後者の例が示されている。
また、図1に示されたアクチュエータ1において、上側にある弾性連結部6の平面形状を「A」字状(又は逆「A」字状)にするとともに、下側にある弾性連結部6の平面形状を逆「A」字状(又は「A」字状)とすることもできる。この場合には、「A」字の横棒の部分により、回動板7が回動する際の横ずれ(横滑り)がいっそう抑制されるので、回動板7がθ方向に回動する運動のばらつきが抑制される。また、アクチュエータ1の長寿命化を図ることができる。
また、ここでいう「A」字状の平面形状については、それらの文字を構成する2本の帯状の部分(斜めの部分)が、根元においてつながっていてもよく、離れていてもよい。
また、本実施例では、1回目及び2回目のエッチングを使用して、原材料であるシリコン基板17から微細構造体3を製作した。原材料としては、シリコン基板17以外にアクリル(PMMA)等のプラスチックを使用することもできる。
本発明に係るアクチュエータ及びその製造方法の実施例2について、図5を参照して説明する。図5(1)〜(4)は、本実施例に係るアクチュエータの製造方法において、製作された成形型を使用してインプリント成形する工程からアクチュエータを完成させる工程までを順次示した断面図である。本実施例では、実施例1と同じ方法によりシリコン基板17を材料として製作した微細構造体(図4(2)のエッチング後の基板26に相当する)を、図5(1)に示されているインプリント成形用の成形型33として使用する。
以下、本実施例に係るアクチュエータの製造方法を、図5を参照して説明する。まず、図5(1)に示されているように、180℃程度に加熱したプラスチック板(アクリル板等)に、適当な圧力で成形型33を押圧する。これにより、表面に微細な凹凸を有する微細構造体、言い換えればインプリント成形された成形後の基板34が製作される。
次に、図5(2)に示されているように、基体2に対して成形後の基板34を位置決めして、その後に基体2に成形後の基板34を固定する。ここまでの工程によって、基体2と成形後の基板34とが一体化された中間体35が完成する。ここで、位置決め部14、位置決め用突起15、及び、二重の枠16は、実施例1の場合と同様に機能する。
次に、図5(3)に示されているように、切削ツール30を使用する振動切削加工によって、成形後の基板34が有する薄肉部36を除去する。この工程は、実施例1において図4(4)に示された工程と同じである。この工程により、成形後の基板34において薄肉部36が除去されることによって生成された面が鏡面になる。
次に、図5(3)に示された工程の後に、薄肉部36が除去された成形後の基板34の表面に、スパッタリング等の方法によってAu膜等の導電膜(図示なし)を形成する。この導電膜を形成する理由は、完成したアクチュエータにおいて静電気力を発生させるために必要だからである。ここまでの工程によって、図5(4)に示されたアクチュエータ37が完成する。このアクチュエータ37は、図1及び図2に示されたアクチュエータ1に相当する。ここで、成形後の基板34の材料として導電性プラスチックを使用した場合には、導電膜の形成は不要である。
本実施例によれば、実施例1における効果と同様の効果が得られる。加えて、シリコン基板を材料として製作した成形型33を使用して、プラスチック板を材料として成形後の基板34を製作し、その成形後の基板34を基体2に固定する。これにより、シリコン基板17を材料として製作したエッチング後の基板26を基体2に固定する実施例1(図4参照)に比較して、アクチュエータ37を製造する際の材料費をいっそう削減することができる。
本実施例には、次の変形例がある。それは、シリコン基板を材料として製作したエッチング後の基板26(図4(2)参照)を使用して、電鋳によって微細構造体を製作するというものである。この微細構造体は、図5(1)に示された成形型33に相当する形状を有する。この変形例によれば、電鋳によって製作した微細構造体をインプリント成形用の成形型として、その微細構造体をプラスチック板に押圧する。これにより、エッチング後の基板26を母型として電鋳によってインプリント成形用の成形型を製作し、その成形型を使用して成形後の基板34を製作し、その成形後の基板34を基体2に固定することができる。したがって、インプリント成形用の成形型を安価に製作できる。また、電鋳によって製作した成形型のほうが、シリコン基板から製作した成形型よりも破損しにくい。これらによって、アクチュエータ37を製造する際のランニングコストを削減することができる。
本発明に係るアクチュエータ及びその製造方法の実施例3を、図6と図7とを参照して説明する。図6は、本実施例に係るアクチュエータの一例を示す概略平面図である。図7は、本実施例に係るアクチュエータの他の例を示す概略平面図である。なお、図6と図7とにおけるA−A線に沿って示す断面図が図2(1)に、B−B線に沿って示す断面図が図2(2)に、それぞれ示されている。
図6に示されているように、本実施例に係るアクチュエータの1つの例によれば、Y方向に相対向する第1の支持部4と回動板7とを連結する弾性連結部6が、「X」字状の平面形状を有する。これにより、図6の弾性連結部6は、第1の支持部4と回動板7との双方に対してそれぞれ2か所で連結されていることになる。
また、図7に示されているように、本実施例に係るアクチュエータの別の例によれば、Y方向に相対向する第1の支持部4と回動板7とを連結する弾性連結部6が、「H」字状の平面形状を有する。これにより、図7の弾性連結部6は、第1の支持部4と回動板7との双方に対してそれぞれ2か所で連結されていることになる。
以上説明したように、本実施例によれば、第1の支持部4と回動板7との双方に対して弾性連結部6がそれぞれ2か所で連結されている。更に、「X」字状の場合には、交差する2本の斜めの部分が設けられている。また、「H」字状の場合には、Y方向に相対向する第1の支持部4と回動板7とを連結する2本の部分が、X方向に伸びる部分によって連結されている。これらによって、回動板7が回動する際のX方向の横ずれ(横滑り)がいっそう抑制される。
また、本実施例によれば、第1の支持部4と回動板7との双方に対して弾性連結部6がそれぞれ2か所で連結されているので、弾性連結部6における疲労破壊の発生がいっそう抑制される。したがって、アクチュエータ1の更なる長寿命化を図ることができる。
なお、図6に示されたアクチュエータ1において、「X」字における交差する部分においてX方向に伸びる部分が設けられていてもよい。これによれば、回動板7が回動する際の横ずれ(横滑り)がよりいっそう抑制される。図6では、下側の弾性連結部6にX方向に伸びる部分が示されている。
なお、ここまでの各実施例では、固定部9が自重によって下方に変位する(下降する)際にばね部8が伸張する。このことによって、固定部9が自重によって下方に変位することが容易になる。このばね部8に代えて、撓むようにして変形する部材を使用することもできる。要は、ばね部8に相当する部分が、薄肉部28が完全に除去された状態で固定部9がその固定部9の自重によって下降することができる程度に変形することが可能な部分(変形可能部)であればよい。
また、ここまでの各実施例では、1回目及び2回目のエッチングを使用して、原材料であるシリコン基板17等からエッチング後の基板26及びインプリント成形用の成形型33を製作した。エッチング後の基板26及び成形型33は、Z方向に異なる位置を有する3つの面を備える。これらの面の数を増やすために、エッチングの回数を3回以上にすることもできる。要は、少なくとも2回のエッチングを使用して、エッチング後の基板26及び成形型33を製作すればよい。
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用されるものである。
実施例1に係るアクチュエータを示す概略平面図である。 図2(1)及び図2(2)は、図1におけるアクチュエータ1をそれぞれA−A線及びB−B線に沿って示す断面図である。 図3(1)〜(5)は、実施例1に係るアクチュエータの製造方法におけるシリコン基板に成膜する工程から1回目のエッチング後のレジスト除去工程までを順次示した断面図である。 図4(1)〜(5)は、実施例1に係るアクチュエータの製造方法における2回目のエッチング工程からアクチュエータを完成させる工程までを順次示した断面図である。 図5(1)〜(4)は、実施例2に係るアクチュエータの製造方法において、製作された成形型を使用してインプリント成形する工程からアクチュエータを完成させる工程までを順次示した断面図である。 実施例3に係るアクチュエータの一例を示す概略平面図である。 実施例3に係るアクチュエータの他の例を示す概略平面図である。
符号の説明
1、37 アクチュエータ
2 基体
3 微細構造体
4 第1の支持部
5 第2の支持部
6 弾性連結部
7 回動板
8 ばね部(変形可能部)
9 固定部
10 固定電極群
11 可動電極群
12 開口
13 位置決め孔(貫通孔)
14 位置決め部
15 位置決め用突起(凸部)
16 枠
17 シリコン基板(基板)
18 膜
19 パターン
20 第1の露出面
21 レジストパターン
22 凹部
23 浅い溝(第1の溝)
24 第2の露出面
25 深い溝(第2の溝)
26 エッチング後の基板(エッチングされた基板)
27 外枠部
28、36 薄肉部
29、35 中間体
30 切削ツール
31 切削くず
32 電極部
33 成形型
34 成形後の基板

Claims (10)

  1. 基体と、
    前記基体の上面に固定され相対向する第1の支持部と、
    前記基体の上面に固定され相対向する第2の支持部と、
    前記第1の支持部から各々伸びるとともに前記基体の上面から浮いている弾性連結部と、
    前記弾性連結部を介して前記第1の支持部の各々につながるとともに前記基体の上面から浮いている回動板と、
    前記回動板において前記第2の支持部と対向する側に設けられた櫛歯状の可動電極群と、
    前記第2の支持部の各々から前記回動板に向かって伸びるとともに少なくとも前記第2の支持部の側において前記基体の上面から浮いている変形可能部と、
    前記変形可能部を介して前記第2の支持部の各々につながるとともに前記基体の上面に固定されている固定部と、
    前記可動電極群に対して所定の距離を隔ててかみ合わされるようにして前記固定部に設けられた櫛歯状の固定電極群とを備えるとともに、
    前記可動電極群は前記固定電極群に対して所定の距離だけ上方に位置しており、
    前記固定部は該固定部の自重によって下降して前記基体の上面に接触して固定されており、
    前記固定部と前記第2の支持部とをつなぐ前記変形可能部は変形しており、
    かみ合っている前記可動電極群と前記固定電極群とに対して異なる極性の電圧を印加することによって前記可動電極群と前記固定電極群との間に引力を発生させ、該引力によって前記弾性連結部を回動軸として前記回動板が回動することを特徴とするアクチュエータ。
  2. 請求項1に記載されたアクチュエータにおいて、
    前記基体の上面に一部が固定された微細構造体を備えるとともに、
    前記第1の支持部と前記第2の支持部と前記弾性連結部と前記回動板と前記可動電極群と前記変形可能部と前記固定部と前記固定電極群とは前記微細構造体に含まれることを特徴とするアクチュエータ。
  3. 請求項1又は2に記載されたアクチュエータにおいて、
    前記微細構造体は、該微細構造体における前記基体に固定される側からエッチングされることと、該エッチング後に残った薄肉部が除去されることとによって製作されたことを特徴とするアクチュエータ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載されたアクチュエータにおいて、
    前記基体の上面と前記固定部とを位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とするアクチュエータ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載されたアクチュエータにおいて、
    前記弾性連結部の平面形状は「V」字状、「A」字状、「X」字状、又は、「H」字状のいずれかであることを特徴とするアクチュエータ。
  6. 基体と、前記基体の上面に一部が固定された微細構造体とを備えたアクチュエータを製造するアクチュエータの製造方法であって、
    前記微細構造体の材料である基板を準備する工程と、
    前記基板の1つの面をエッチングして第1の溝を形成する第1のエッチング工程と、
    前記1つの面をエッチングして、前記第1の溝を掘り下げた第2の溝と、前記1つの面を掘り下げた凹部と、前記第2の溝及び前記凹部以外の部分である第1の支持部及び第2の支持部と、前記基板において前記1つの面に相対向する他の面の側に残る薄肉部とを有するエッチングされた基板を形成する第2のエッチング工程と、
    前記エッチングされた基板を前記基体の上面に固定して中間体を形成する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記中間体においては前記薄肉部によって保持されていた固定部を該固定部の自重によって下方に変位させて前記基体の上面に固定する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記凹部の一部に相当する部分において回動板を形成する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記凹部の一部に相当する部分において前記回動板と前記第1の支持部とをつなぐ弾性連結部を形成する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記凹部の一部に相当する部分において前記固定部と前記第2の支持部とをつなぐ変形可能部を形成する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記凹部の一部に相当する部分のうち前記回動板において前記第2の支持部と対向する側に櫛歯状の可動電極群を形成する工程と、
    前記中間体から前記薄肉部を除去することによって、前記凹部の一部に相当する部分のうち前記固定部において前記可動電極群に対して所定の距離を隔ててかみ合わされるようにして櫛歯状の固定電極群を形成する工程とを備えるとともに、
    前記可動電極群は前記固定電極群に対して所定の距離だけ上方に位置しており、
    前記中間体から前記薄肉部が除去された状態において前記固定部と前記第2の支持部とをつなぐ前記変形可能部が変形していることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
  7. 請求項6に記載されたアクチュエータの製造方法において、
    前記基板はシリコン又はプラスチックからなることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載されたアクチュエータの製造方法において、
    前記固定する工程では、前記基体の上面に設けられた凸部又は凹部若しくは貫通孔と前記固定部に設けられた凹部若しくは貫通孔又は凸部とを位置決めすることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載されたアクチュエータの製造方法において、
    前記除去する工程では、振動切削加工、研削加工、研磨加工、又は、プラズマ加工のいずれかを使用することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載されたアクチュエータの製造方法において、
    前記弾性連結部の平面形状は「V」字状、「A」字状、「X」字状、又は、「H」字状のいずれかであることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
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