JP5320032B2 - ビールまたはビール様飲料製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ビールまたはビール様飲料の製造方法に関する。
本発明を通じて「ビールまたはビール様飲料」は、酒税法およびその関係法規に現在規定されているビールおよび発泡酒はもちろん、いわゆる第3のビールおよびビールテイスト飲料などをも包含する意味で用いる。尚、本明細書において説明を簡略化するために単に「ビール」と言うことがあるが、これは「ビールまたはビール様飲料」を代表して言うものであり、発泡酒その他のビール様飲料にも適用可能であることが理解されるべきである。
ビールの製造プロセスにおいては、発酵および熟成前の仕込みのために、麦汁にホップを添加して煮沸する工程がよく知られている(例えば特許文献1〜3を参照のこと)。このような麦汁およびホップの煮沸は、ホップの苦味成分を可溶化させて麦汁に苦味を付けたり、麦芽に由来する香気成分(以下、単に「麦芽香気成分」と言う)を蒸散除去するなどの目的で行われるものである。
特開平10−323174号公報 特表2002−519018号公報 特開2003−251175号公報 特公昭40−4427号公報
従来の煮沸工程では、煮沸釜に麦汁を供給すると共にホップを投入し、麦汁とホップとを一緒に煮沸しており(特許文献3を参照のこと)、一般的には、ペレットなどの形態を有する市販のホップを何ら処理せずにそのまま用いて、麦汁とホップとの混合物を加熱により昇温し、沸騰状態に達した後も加熱し続けて、所定の蒸発率を得るように煮沸している。(以下、このような煮沸方法を「従来一般的な煮沸方法」とも言う。)
製品ビールは、苦味、香り、泡持ち、酸化耐久性などの多くの品質によって評価される。煮沸工程における加熱条件は、これら品質に大きな影響を及ぼすので、所望される製品品質に応じて最適な条件を模索しなければならい。
ホップの苦味成分であるα酸は高温下でイソ化することにより可溶化するので、ホップの苦味成分を有効利用するには加熱により十分にイソ化させる必要がある。他方、麦汁は加熱すると、麦芽に由来するS−メチルメチオニンからジメチルスルフィドが生成し、不快な香気を発するので、このような麦芽香気成分を煮沸により蒸散除去することが望ましい。また、泡持ちに寄与する物質(例えば40kDa蛋白質)や酸化耐久性に寄与する物質(例えば還元性物質またはレダクトンと総称される物質群)も麦芽に由来するが、これら物質は、麦汁を加熱することにより時間と共に減少するので、泡持ちや酸化耐久性を向上させるためには、麦汁の加熱は短いほうが望ましい。
例えば、ビールの泡持ちや酸化耐久性を向上させようとして、単に煮沸時間を短くすると、ホップの苦味成分の抽出(可溶化)が不十分となって、製品ビールの苦味が弱まり(あるいは、弱まった分を補うためにより多量のホップを要し)、また、麦芽香気成分の蒸散が不十分となって、不快な麦芽香気成分が製品ビールに残ることになる。
このように煮沸工程における加熱条件の1つを変えただけでも、多くの品質が影響を受けるので、所望される品質通りの製品が得られるような加熱条件を設定することは非常に難しい。裏返して見れば、従来一般的な煮沸方法では、加熱条件の自由度が極めて狭く、得られる製品品質に限りがあると言える。
以上、麦汁およびホップの煮沸について述べたが、麦汁を原料液汁としてホップと煮沸するこのような場合のみならず、いわゆる第3のビールのように、麦芽以外のものから得られる他の原料液汁をホップと煮沸する場合にも同様の問題が起こり得る。
この問題に関し、ホップの苦味成分をより高い割合で有効利用することを目的として、ホップ毬花を直接に溶媒中で煮沸する方法や、ホップから苦味成分を抽出し、この抽出物を溶媒中で煮沸する方法が文献に開示されている(特許文献4を参照のこと)。この文献には、前者の方法はホップ毬花に対して少なくとも120倍重量の溶媒を用いる必要があり、後者の方法は抽出した苦味成分が水系の溶媒中で油状に分離すると記載されており、新たに、超高粘度のコロイド分散相を利用することが提案されている。
従来、ホップについては、ホップの苦味成分の有効利用(特許文献4を参照のこと)が重視されてきた。
本発明者は、ホップの苦味成分の抽出(可溶化、具体的にはα酸のイソ化)に加え、ホップに由来する香気成分(以下、単に「ホップ香気成分」と言う)に着目し、従来の一般的技術では実現できないとされてきた商品コンセプトに基づいて、最終的に麦汁に付加されるホップ香気成分量をコントロールして、ホップ香気成分を低減すること、更には除去することが望ましいという全く新しい発想を独自に得た。本発明は、よりフレキシブルな加熱条件設定が可能で、ホップ香気成分を低減または除去し得る新規ビールまたはビール様飲料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、よりフレキシブルな加熱条件設定を可能としつつ、最終的に麦汁に付加されるホップ香気成分を低減または除去するという全く新しい発想に基づいて鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の要旨によれば、ビールまたはビール様飲料の製造方法であって、
(a)ホップを、ペレット状原料ホップ1kg当り25〜100リットルに蒸発減量分を加えた量の溶媒と一緒に、ペレット状原料ホップ1kg当り1〜15kgの蒸発減量が得られるように煮沸すること、および
(b)工程(a)により得られるホップ処理液状物を原料液汁に添加し、原料液汁とホップ処理液状物との混合物を煮沸すること
を含んで成る製造方法が提供される。
従来一般的な煮沸方法では、ホップを何ら処理せずに、ホップと麦汁とを一緒に煮沸釜で煮沸しているのみであるので、ホップと麦汁との双方の制約を受けつつ加熱条件を設定しなければならない。更に、ホップと麦汁とを一緒に煮沸すると麦芽香気成分が蒸散除去されると共にホップ香気成分も期せずして蒸散除去され得るが、従来一般的な煮沸方法では、ホップに比べて麦汁が大量に存在するため(典型的にはペレット状原料ホップ1kg当り初期麦汁量約1000リットル程度)、このホップ香気成分の蒸散はホップが希薄な系で起こる物理現象である。また、従来一般的な煮沸方法では、所定のエキス濃度を得るために蒸発レベルを管理する場合、そのパラメータとして蒸発率が用いられている。
これに対し、本発明によれば、工程(a)にてホップを予め煮沸し(「ホップ処理」とも言う)、工程(a)と別個の工程(b)にて原料液汁(麦汁)を(本発明の第1の要旨による場合はホップ処理液状物と共に、後述する本発明の第2の要旨による場合はこれと別個に)煮沸しているので、ホップと原料液汁とで異なる加熱条件を設定することができる。より詳細には、本発明の第1の要旨による場合、加熱条件をホップと原料液汁とに分解し、ホップについて所望される加熱条件を工程(a)および工程(b)の全体にて、原料液汁について所望される加熱条件を工程(b)にて得られるように設定できる。この工程(a)のホップ処理により、ホップの苦味成分を抽出する(具体的にはα酸のイソ化)ことができる。この工程(a)にて、ペレット状原料ホップ1kg当り25〜100リットルに蒸発減量分を加えた量の溶媒を用いているので、ホップ香気成分の蒸散はホップが相当高い割合で存在する系で起こる物理現象である。更に、このような系にて、ペレット状原料ホップ1kg当りの蒸発減量というパラメータを1〜15kgとすることにより、溶媒量にかかわらず、ホップ香気成分を効率的に低減または除去することが可能となる。このように、ホップと原料液汁とで異なる加熱条件を適用でき、ホップが相当高い割合で存在する系にて、ペレット状原料ホップ1kg当りの蒸発減量が所定範囲となるように煮沸することは、本発明に独特の特徴である。
尚、本発明に用いる「ホップ」はペレット、エキス、毬花などの任意の形態でよいが、「ペレット状原料ホップ1kg当り」とは、原料に用いた任意の形態の「ホップ」を「ペレット状」の原料ホップに換算することを意味する。また、本発明において「蒸発減量」は、(開始時の液状物重量−終了時の液状物重量)として求められる(減量は全て液体蒸発によるものと考えて差し支えない)。そして、「ペレット状原料ホップ1kg当り」の「蒸発減量」とは、上記のようにした換算した未処理の「ペレット状」の原料ホップ1kg当りの(開始時の液状物重量−終了時の液状物重量)を意味する。
「煮沸」は、対象とする液状物に熱を加え、少なくともその一部の期間において液状物が沸騰状態となることを意味する。
「液状物」は液体のみならず、存在する場合にはホップ(またはホップ粕)などの固体をも含む意味で用いる。
「ホップ香気成分」は、ホップに由来する香気成分であれば特に限定されないが、典型的にはリナロールである。
「麦芽香気成分」は、麦芽に由来する香気成分であれば特に限定されないが、典型的にはS−メチルメチオニンから生じて不快な香気を発するジメチルスルフィドである。
工程(a)における蒸発減量は、ペレット状原料ホップ1kg当り1kg以上であればホップ香気成分を低減でき、ペレット状原料ホップ1kg当り15kg以下であれば不要な熱エネルギーを消費することを防止できる。
工程(a)における溶媒の液量は、ペレット状原料ホップ1kg当り25リットル(本発明の範囲で最も少ない状態、即ち、煮沸完了時25リットル)以上であればホップ処理を支障なく実施でき、ペレット状原料ホップ1kg当り115リットル(本発明の範囲でホップが最も希薄な系であり、100リットルに最大蒸発減量分15kgに相当する量を加えた煮沸前の状態115リットル)以下であればホップが相当高い割合で存在する系とでき、ペレット状原料ホップ1kgあたりの蒸発減量をホップ香気成分蒸散のパラメータとして用いるのに適する。
また、工程(a)に用いる溶媒の液量は、工程(b)に用いる原料液汁の液量の約1/10〜1/200(体積基準)とし得る。このように、工程(a)のホップ処理は、ホップが相当高い割合で存在する系であり、工程(b)で用いる原料液汁に比べて極めて少ない量の溶媒で実施することができる。溶媒の液量が原料液汁の液量に対して約1/200(体積基準)以上であればホップ処理を支障なく実施でき、約1/10(体積基準)以下であれば熱エネルギーを効率的に利用できる。このように少量の溶媒でよいので、工程(a)を実施する装置には、従来の煮沸釜に比べて相当小さい容器または釜を用いることができる。
工程(a)における煮沸は、約30〜180分間の高温保持時間が得られるように実施され得る。高温保持の間、ホップの苦味成分の可溶化反応(具体的にはα酸のイソ化反応)が進行し、ホップの苦味成分を溶媒中に抽出することができる。ホップの苦味成分を有効利用する(換言すれば、使用するホップを少なくして製品コストを下げる)ためには、より少量のホップでなるべく多くの苦味成分を抽出することが望ましく、高温保持約180分間までで、ホップの苦味成分を十分抽出できる。また、約30分間からの高温保持で、知覚可能な程度の苦味を製品に付けることができる。
工程(b)における煮沸には、原料液汁に所望される加熱条件を設定できるが、使用する原料液汁や、製品であるビールまたはビール様飲料の目指す商品コンセプトなどによってさまざまであり得る。本発明によれば、工程(b)にて原料液汁を煮沸しているので、原料液汁に麦汁を用いる場合であっても、麦芽香気成分を蒸散除去することができる。
原料液汁としては、麦汁を用いるのが一般的である。麦汁は、一般的に知られているように、麦芽を主原料とし、更に場合により、例えば大麦、小麦、小麦麦芽、ライ麦、ライ麦麦芽、オート麦、米、トウモロコシ、デンプン、液糖などの1種またはそれ以上の副原料を適宜用いて得ることができる。
しかし、本発明はこれに限定されず、麦芽以外のもの、例えば大豆ペプチド、大豆蛋白、エンドウタンパク、トウモロコシなどの1種またはそれ以上から得られる他の原料液汁を用いてもよい。
溶媒としては、水、原料液汁と同じ液汁(例えば麦汁)、および液糖からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。また、このような群より選択される少なくとも1種に添加剤が添加されて成るものを用いてもよい。添加剤は、酸、アルカリ、塩類などのpH調整剤およびその他の液質調整剤や、乳化剤、安定化剤、酸化防止剤など、更にその他任意のさまざまなフルーツ、ハーブ、スパイスなどであり得る。
本発明の第1の要旨による1つの態様では、工程(b)における煮沸は、
(i)原料液汁を加熱して昇温させ、
(ii)昇温させた原料液汁を非沸騰状態にて高温保持しつつ、ホップ処理液状物を加えて、原料液汁とホップ処理液状物との混合物として引き続き非沸騰状態にて高温保持し、および
(iii)高温保持の後、混合物を加熱して沸騰させる
ことを含むものとして実施され得る。以下、本発明を通じて、昇温、高温保持および沸騰という一連の煮沸を「三段煮沸」とも言うものとする。
不快な麦芽香気成分であるジメチルスルフィド(DMS)の蒸散除去は、S−メチルメチオニン(SMM)からジメチルスルフィド(DMS)を生じる反応段階と、ジメチルスルフィド(DMS)が蒸散により除去される蒸散段階を経ており、これらのうち律速となるのは反応段階である(DMSの沸点は37〜38℃である)。この反応は非沸騰状態であっても高温保持すれば進行し、その後に沸騰させればDMSを短時間で除去できる。従来一般的な煮沸方法では、加熱により昇温させ、沸騰状態に達した後も加熱し続けて、連続的に煮沸させている。これに対して、本発明の上記態様(三段煮沸)によれば、(ii)段目で非沸騰状態としつつも高温保持することにより上記反応を進行させてSMMをDMSとした後、(iii)段目で煮沸することによりDMSを従来と同等に十分に蒸散除去しつつ、(ii)段目で非沸騰状態とすることにより、少なくとも潜熱に相当するエネルギー分を削減でき、更に、麦汁の流動が沸騰状態に比べて抑制されるため、蛋白質の熱凝固反応が進行し難くなり、泡持ちに寄与する物質(例えば40kDa蛋白質)の減少を緩和できる。
尚、本発明において単に「高温保持」と言う場合、沸騰状態および非沸騰状態のいずれであってもよく、工程(a)について言う場合はα酸のイソ化反応が進行するような温度、工程(b)について言う場合はS−メチルメチオニンがジメチルスルフィドとなる反応が進行するような温度、いずれも例えば沸点から沸点以下約10℃までの範囲内の温度に保つことを意味する。「高温保持時間」には、沸騰状態となる時間(即ち、沸点温度が維持される期間)も含まれることに留意されたい。
本発明の第2の要旨によれば、ビールまたはビール様飲料の製造方法であって、
(a)ホップを、ペレット状原料ホップ1kg当り25〜100リットルに蒸発減量分を加えた量の溶媒と一緒に、ペレット状原料ホップ1kg当り1〜15kgの蒸発減量が得られるように煮沸すること、および
(c)原料液汁を煮沸すること
を含んで成り、工程(a)および(c)をそれぞれ実施し、工程(a)により得られるホップ処理液状物を、工程(c)により得られる原料煮沸液状物に、工程(c)の後、冷却するまでの1つまたはそれ以上の段階で添加する製造方法が提供される。
本発明の上記第1の要旨では、工程(a)により得られるホップ処理液状物を、原料液汁を煮沸する前に添加しているのに対し、本発明の上記第2の要旨では、原料液汁を煮沸した後に添加している。このような本発明の第2の要旨においても、第1の要旨による場合と同様、ホップと原料液汁とで異なる加熱条件を設定することができる。より詳細には、本発明の第2の要旨による場合、加熱条件をホップと原料液汁とに分解し、ホップについて所望される加熱条件を工程(a)にて、原料液汁について所望される加熱条件を工程(b)にて得られるように設定できる。よって、本発明の第2の要旨によっても、ホップ香気成分を効果的に低減または除去することができる。
本発明の第2の要旨による1つの態様では、工程(c)における煮沸は、
(i’)原料液汁を加熱して昇温させ、
(ii’)昇温させた原料液汁を非沸騰状態にて高温保持し、および
(iii’)高温保持の後、原料液汁を加熱して沸騰させる
ことを含むものとして実施され得る。この態様(三段煮沸)も、本発明の第1の要旨における上記態様(三段煮沸)と同様の効果を得ることができる。
その他、本発明の第2の要旨に対しては、特段断りのない限り、本発明の上記第1の要旨について上述したものと同様の説明(工程(c)については工程(b)について上述したものと同様の説明)が当て嵌まる。
本発明によれば、工程(a)のホップ処理と、工程(b)または(c)の原料液汁(および場合によりホップ処理液状物)煮沸とにより、ホップと原料液汁とで異なる加熱条件を適用でき、工程(a)にてホップの苦味成分を抽出することができ、更に、工程(a)にてホップが相当高い割合で存在する系にてホップを加熱し、この加熱をペレット状原料ホップ1kg当りの蒸発減量というパラメータを所定範囲になるように実施しているので、ホップ香気成分を効果的に低減または除去することができる。
(実施形態1)
本実施形態は本発明の第1の要旨に関するものであり、図面を参照しながら以下に詳述する。尚、本実施形態においては原料液汁として麦汁を用いて一般的な淡色ビールを製造する場合について説明するが、これに限定されるものではない。
・工程(a)
まず、図1に示すホップ処理装置10にてホップ処理を行う。ホップ処理装置10は加熱器9を含み、加熱器9の上部には、ホップ投入口1(例えばいわゆるマンホールであり得る)と、溶媒供給ライン3(例えば先端にスプレーボールを備え得る)と、排気ライン5とが備えられ、加熱器9の下部には、ホップ(図示せず)と溶媒との混合物12を加熱するためのジャケット7と、排出ライン13とが備えられる。また、ホップ処理装置10は、加熱器9内でホップと溶媒との混合物12を攪拌する攪拌羽根または翼を備えた攪拌機11を攪拌手段として含むことが好ましい。加えて、ホップ処理装置10には、蒸発減量を測定または算出するために必要な任意の適切な計測器(図示せず)、例えば荷重変換器、差圧伝送器、液深を測る液面計などが備えられ得る。尚、本発明者はホップ処理装置10を「PIE」(Pre-Isomeriser & Evaporator)と呼んでいる。
図1を参照して、まず最初に、ホップ処理装置10に溶媒を溶媒供給ライン3から供給し、ホップをホップ投入口1から投入する。ホップは、ペレット、エキスまたは毬花などの任意の形態であってよい。溶媒は、水、麦汁(原料液汁と同じ液汁)または液糖、あるいはこれらを2種以上含む混合液や、これらの1種または2種以上の混合物に添加剤が添加されたものなどであってよい。
ホップに対する溶媒の比は、ペレット状原料ホップ1kgに対して溶媒量を25〜100リットルに所定の蒸発減量分を加えた量とし得る。これによりホップが相当高い割合で存在する系とする。
ホップと溶媒との混合物12を、例えば大気圧下にて、攪拌機11を用いて攪拌しながら、ジャケット7により加熱する。この間、pHは、例えば約5〜6とし得る。ホップと溶媒とを攪拌しながら加熱することにより、ホップから成分、特に苦味成分を効率的に抽出することができ、また、ホップ(または成分抽出後のホップ、いわゆるホップ粕)の沈殿を防止することができる。更に、ホップ香気成分の蒸散を促進することができる。加熱は、ジャケット7のようなジャケット式の加熱手段は汚れにくくて低いメンテナンス頻度でよく、また、容器外部に備えられるため、攪拌手段を用いてもこれを邪魔することがない。しかしながら、加熱手段はこれに限定されず、他の任意の適切な加熱器を用いてよい。例えばコイル式の加熱手段は、比較的簡単な構造でメンテナンスが容易である。
加熱は、ペレット状原料ホップ1kg当り1〜15kgの蒸発減量、および30〜180分間の高温保持時間が得られるように実施する。
ペレット状原料ホップ1kg当りの蒸発減量によってホップ香気成分の蒸散除去の程度をコントロールでき、上記のようにホップが相当高い割合で存在する系では、1〜15kgの蒸発減量とすれば、ホップ香気成分であるリナノールを効果的に低減または除去できることが本発明者により確認されている(実施例2にて後述する)。
また、高温保持時間によってホップの苦味成分の可溶化(具体的にはα酸のイソ化)をコントロールでき、約30〜180分間の高温保持時間とすれば、ホップの苦味成分を十分に可溶化させ、溶媒中に抽出することができる。
煮沸は、溶媒を加熱により昇温し、90℃に達した後にホップを加え、これらの混合物を沸騰状態に達した後も加熱し続けて、所定の蒸発率を得、その後、所定の高温保持時間に達するまで非沸騰状態で適宜加熱することが好ましい。このような加熱制御は、簡便に実施することができる。
例えば大気圧下、溶媒を加熱して常温から徐々に昇温させ、90℃に達した後にホップを加え、これら全体で混合物12とする。この混合物12について、約90〜100℃の範囲内の高温を約30〜180分間(沸騰状態となっている期間を含む)に亘って保持する。この間、昇温に引き続いて、約100℃で沸騰させてペレット状原料ホップ1kg当り約1〜15kgの蒸発減量を得てよい。
これにより、ホップと溶媒との混合物12が処理されて、ホップ処理液状物(成分が抽出された後のホップと、成分を抽出した溶媒との混合物)となる。これは、ホップの苦味成分が十分可溶化しており、ホップ香気成分が効果的に低減または除去されている。
・工程(b)
次に、図2に示す原料液汁煮沸器20にてホップ処理液状物と麦汁との混合物の煮沸を行う。原料液汁煮沸器20には、排出ライン13を通じてホップ処理装置10と接続されており、更に、原料液汁供給ライン15および排出ライン17が、例えば図示するように接続されて備えられ得る。このような原料液汁煮沸器20には、図2に示すような一般的なローレンコッファ型煮沸釜を用いることができるが、これに限定されない。
工程(a)のホップ処理により得た混合物12をホップ処理液状物としてホップ処理装置10から排出ライン13に通じて原料液汁煮沸器20へ移送する。また、原料液汁煮沸器20に原料液汁供給ライン15から麦汁を供給する。麦汁は、特に限定されるものではないが、麦芽を場合により副原料と共に煮てできるもろみを麦汁濾過器にて濾過して得ることができる。
麦汁の液量は、特に限定されるものではないが、工程(a)で用いた溶媒の液量に対して、例えば約10〜200倍(体積基準)とし得る(即ち、工程(a)に用いる溶媒の液量は、工程(b)に用いる麦汁の液量の約1/10〜1/200(体積基準)となる)。
そして、ホップ処理液状物と麦汁との混合物19を、例えば大気圧下にて、煮沸する。この間、pHは、例えば約5〜6とし得る。
煮沸は、以下の三段煮沸により行うことが好ましい。
(i)原料液汁を加熱して昇温させ、
(ii)昇温させた原料液汁を非沸騰状態にて高温保持しつつ、ホップ処理液状物を加えて、原料液汁とホップ処理液状物との混合物19として引き続き非沸騰状態にて高温保持し、および
(iii)高温保持の後、混合物を加熱して沸騰させる。
(i)段目の昇温速度は適宜設定してよい。また、(i)段目から(ii)段目に移る間に沸騰状態が存在してもよい。
(ii)段目では、SMMをDMSとする反応が進行するが、非沸騰状態であるので、沸騰させた場合に比べて少なくとも潜熱に相当するエネルギー分を削減できる。更に、非沸騰状態では沸騰状態に比べて麦汁の流動が抑制されるため、蛋白質の熱凝固反応が進行し難くなり、泡持ちに寄与する物質(例えば40kDa蛋白質)の減少を緩和できる。(ii)段目は、最終的に(iii)段目で混合物19が煮沸される限り、連続的に、または間欠的に(非沸騰状態の間に沸騰状態や高温保持から逸脱した状態が短期間存在し得る)実施してよい。
(iii)段目は、麦芽香気成分であるDMSを十分に蒸散除去するように、例えば約3〜4重量%の蒸発率が得られるように実施する。尚、「蒸発率」は、(開始時の液状物重量−終了時の液状物重量)/(開始時の液状物重量)×100(重量%)として求められる。この蒸発率は、従来一般的な煮沸方法による場合(蒸発率約11〜12重量%)より小さくできる。
具体的には、(i)段目で所望の高温状態になるまで加熱し(加熱は原料液汁煮沸器20に蒸気供給することにより行われ得る)、(ii)段目で加熱を休止し(この間、余熱で高温保持される)、(iii)段目で短時間加熱して煮沸させる。尚、本発明者は、このような操作を、前駆体SMMをDMSに変換する際に加熱休止する「DMS休止法」と呼んでいる。
三段煮沸によれば、従来一般的な煮沸方法による場合(蒸発率約11〜12重量%)に比べて、より小さい熱エネルギー消費で、泡持ちを良くすることができ、更に、不快な麦芽香気成分であるDMSを効果的に低減または除去することができる。
しかし、本実施形態はこれに限定されず、三段煮沸に代えて、通常の煮沸(即ち、(ii)段目が存在せず、(i)段目に続けて(iii)段目を実施するもの)を用いてもよい。
これにより、ホップ処理液状物と麦汁との混合物19が煮沸されて、原料煮沸液状物が得られる。得られた原料煮沸液状物は、原料液汁煮沸器20より排出ライン17を通じて抜き出されて、次の工程へと移送され得る。
その後、例えば図3に示すように、ワールプールにて旋回分離により不要な凝固蛋白質などを除去し、冷却器にて冷却した後に酵母を加え、フローテーションタンクで浮上分離により不要な物質を除去し、発酵タンクで酵母により発酵させて若ビールとし、熟成タンクで熟成し、そして、濾過器に通して最終濾過して製品ビールとなる。
従来一般的な煮沸方法では、蒸発率を小さくした場合、ホップ香気成分が多く(華やかなホップ香で)、かつ泡持ちのよい(豊かな泡の)ビールを製造できる。逆に、蒸発率を大きくした場合、ホップ香気成分が少なく(控えめなホップ香で)、泡持ちの劣る(貧弱な泡の)ビールとなり、この場合、煮沸途中でホップを補充添加すればホップ香気成分を多くすることができる。しかしながら、従来一般的な煮沸方法では、ホップ香気成分が少なく、かつ泡持ちのよいビールを製造することはできない。
これに対して、本実施形態によれば、ホップ香気成分が少なく(控えめなホップ香で)、かつ泡持ちのよい(豊かな泡の)ビールを製造することができる。
尚、上記では、ホップ香気成分に加えて、ビールの代表的な品質の例として泡持ちを説明したが、その他種々の品質が評価され得、使用するホップおよび溶媒ならびに原料液汁、製品であるビールまたはビール様飲料の目指す商品コンセプトなどに応じて、工程(a)および工程(b)の加熱条件(温度、圧力、蒸発減量または蒸発率、高温保持時間、液相pHなど)を適切に設定し得る。
(実施形態2)
本実施形態は本発明の第2の要旨に関するものであり、以下、実施形態1と相違する点を中心に説明する。実施形態1では、工程(a)より得られたホップ処理液状物を、図4に示す段階(0)麦汁煮沸前にて添加したものであるが、本実施形態はホップ処理液状物の添加段階を変更したものである。
本実施形態では、実施形態1の工程(b)に代えて、工程(c)として麦汁(原料液汁)を単独で煮沸する。
煮沸は、実施形態1の工程(b)においてホップ処理液状物と麦汁との混合物に代えて、麦汁を単独で煮沸した点を除き、同様の条件としてよく、本実施形態においても、実施形態1と同様の三段煮沸を行うことが好ましいが、通常の煮沸を行ってもよい。
その後、工程(a)より得られたホップ処理液状物を、工程(c)より得られた原料煮沸液状物に、工程(c)の後、冷却するまでの1つまたはそれ以上の段階、例えば図4に示す下記(1)〜(3):
(1)麦汁(原料液汁)の煮沸後かつ旋回分離前;
(2)旋回分離の間;および
(3)旋回分離後かつ冷却前
のいずれか1つまたは2つ以上の段階で添加してよい(尚、図4では、代表的に段階(1)にて添加する場合を示す)。
本実施形態によれば、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の範囲内でさまざまな改変が可能であろう。
本発明の実施例1として、図1〜3を参照して上述した実施形態1(工程(b)にて通常の煮沸を行うもの)を下記の条件にて実施した。
・工程(a) ホップ処理装置10における煮沸
加熱器の容量: 400L
ホップ: ペレット(アロマ品種とビター品種を混合したもの) 約3kg
溶媒: 水 約97L
開始時の液状物(ホップと溶媒との混合物)重量: 約100kg
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: 90℃以上まで昇温した後、ホップを添加し、約100℃で約40分間沸騰状態で煮沸
高温保持時間: 約90〜100℃にて約45分間(沸騰状態含む)
pH: 5.2〜5.4
蒸発減量: 約30kg(ペレット状原料ホップ1kg当り約10kg)
・工程(b) 原料液汁煮沸器20(煮沸釜)における煮沸
原料液汁煮沸器の容量: 7500L
ホップ処理液状物: 工程(a)より得られたもの全部 約70kg
麦汁: 約5000L
開始時の液状物(ホップ処理液状物と麦汁との混合物)重量: 約5070kg
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: (i)90℃以上まで昇温した後、(ii)非沸騰状態にて高温保持しつつ、この間にホップ処理液状物を加えて引き続き非沸騰状態にて高温保持し、全体合計で60分間の高温保持とし、(iii)高温保持の後、約100℃で約30分間沸騰状態で煮沸
pH: 5.2〜5.4
また比較例1として、実施例1の工程(a)を行わず、かつ、工程(b)に代えて下記の条件で工程(b)’のみを実施した。比較例1は、ホップ処理装置を使用していない従来一般的な煮沸方法における加熱条件に相当するものである。
・工程(b)’
ホップ: 実施例1の工程(a)で用いたものと同じ
麦汁: 実施例1の工程(a)で用いた溶媒から工程(a)の間の蒸発減量を差し引いた分と工程(b)で用いた麦汁との混合物に相当するもの、即ち、水 約67Lと実施例1の麦汁 約5000Lとの混合物
原料液汁煮沸器、圧力、pH、温度:実施例1の工程(b)と同じ(但し、昇温後にホップを添加)
蒸発減量:実施例1の工程(a)の蒸発減量および工程(b)の蒸発減量の合計に対して3倍の蒸発減量となるように、沸騰状態での煮沸時間をより長くして実施した。
更に比較例2として、実施例1の工程(a)を行わず、かつ、工程(b)に代えて下記の条件で工程(b)’’のみを実施した。比較例2は、比較例1と同様にホップ処理装置を使用していないにもかかわらず、沸騰状態での煮沸を実施例1と同程度に穏やかにしたものである。
・工程(b)’’
ホップ: 実施例1の工程(a)で用いたものと同じ
麦汁:実施例1の工程(a)で用いた溶媒から工程(a)の間の蒸発減量を差し引いた分と工程(b)で用いた麦汁との混合物に相当するもの、即ち、水 約67Lと実施例1の麦汁 約5000Lとの混合物
原料液汁煮沸器、圧力、pH、温度: 実施例1の工程(b)と同じ(但し、昇温後にホップを添加)
蒸発減量:実施例1の工程(a)の蒸発減量および工程(b)の蒸発減量の合計と実質的に同じ蒸発減量となるように、沸騰状態での煮沸時間を調整して実施した。
実施例1および比較例1、2でそれぞれ得られた原料煮沸液状物を、同一の条件で発酵および熟成させて製品ビールを得た。得られた各々の原料煮沸液状物や製品ビールについて、下記のようにイソα酸比率、リナロール量、40kDa蛋白質量、泡持ちを分析し、また、消費熱量を算出した。
・イソα酸比率(%)
原料煮沸液状物に含まれるα酸およびイソα酸の各量をHPLC(高速液体クロマトグラフ)により測定し、その存在比(重量比)を求めた。
ホップの苦味成分であるα酸はイソ化してイソα酸となることによって可溶化して麦汁に移るので、イソα酸比率は有効利用された苦味成分の割合(苦味利用率)を示す。より少量のホップで麦汁に苦味を効率的に付けるためには、イソα酸比率は高いほうが好ましい。
・リナロール(ppb)
製品ビールをGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)により分析した。
リナロールはホップ香気成分の1つであり、煮沸により蒸散する。
・40kDa蛋白質(mg/L)
製品ビールをゲル電気泳動により分析した。
40kDa蛋白質は麦芽由来の蛋白質で、製品ビールの泡持ちに寄与する物質であり、高温に曝される時間が長くなるにつれて減少する。一般に泡持ちは長いほどよく、そのためには40kDa蛋白質の量(残存量)は多いほどよい。
・泡持ち(秒)
製品ビールをNIBEM法により分析した。尚、NIBEM法はビール製造技術の分野において周知であり、EBC(European Brewery Convention)が発行している分析法の規定「Analytica-EBC」に記載されている。
一般に泡持ちは長いほどよい。
・消費熱量比(−)
実施例1および比較例1、2において加熱のために消費した熱量(cal)の大きさを、蒸発に要した熱量にほぼ相当するものとして、蒸発減量から、水の蒸発潜熱を用いて計算した。尚、消費熱量は、実施例1については工程(a)および工程(b)における加熱のために消費した熱量の合計であり(即ち、工程(a)の蒸発減量および工程(b)の蒸発減量の合計から求めた)、比較例1および2についてはそれぞれ工程(b)’および工程(b)’’における加熱のために消費した熱量である(即ち、それぞれ工程(b)’および工程(b)’’の蒸発減量から各々求めた)。そして、従来一般的な煮沸方法の加熱条件(従来条件)に相当する比較例1の消費熱量に対する、実施例1および比較例2の消費熱量の大きさを消費熱量比(−)とした。
省エネルギーの観点から、消費熱量は小さいほうが好ましい。
結果を表1に示す。
Figure 0005320032
表1からわかるように、実施例1では、比較例1(従来条件)の消費熱量のわずか1/3で、比較例1と同等のイソα酸比率およびリナロール量を得ることができ、従来と同等に高い苦味および低いリナロールの香味が得られた。
これに対して、比較例2では、実施例1と同様に、比較例1の消費熱量の1/3となっているものの、イソα酸比率が大幅に減少し、かつ、リナロール量が大幅に増加していた。このため、従来より苦味が弱くなり、かつ、リナロール等のホップ由来の香味が著しくなる。従来と同等の苦味を得るにはホップの使用量を増加する必要があるが、リナロールの香味が強くなっている上にホップ使用量を増加すると、リナロールの香味がより一層強くなることとなる。
また、表1からわかるように、実施例1では、比較例1よりも多くの40kDa蛋白質が残存しており、よって、比較例1より優れた泡持ちが得られた。
比較例2でも、比較例1よりも多くの40kDa蛋白質が残存しており、よって、比較例1より優れた泡持ちが得られたが、上述のように、イソα酸比率およびリナロールの量の点で問題がある。
工程(a)における蒸発減量を変化させて、この蒸発減量がホップ香気成分量に及ぼす影響を調べた。
・工程(a)
蒸発減量がペレット状原料ホップ1kg当り2.5、5.0、7.5、10.0、15.0kgとなるように沸騰状態での煮沸時間を調整したこと以外は、実施例1の工程(a)と同様にしてホップ処理液状物を得た。尚、工程(a)に用いた溶媒の液量は、ペレット状原料ホップ1kg当り32.3リットルである。
・スケールダウン工程(b)
実施例1の工程(b)に代えて、小容量の実験用煮沸装置を用い(以下、小型煮沸装置と記す)、これに実施例1の工程(b)で用いたものと同様に製造した麦汁を10kg入れ、そこに上記工程(a)で得たホップ処理液状物0.14kgを加えた後、煮沸して、原料煮沸液状物を得た。実験系全体の容量がスケールダウンしている以外は、例えば処理時間・pH・蒸発率といったパラメーターは実施例1に合わせた。
上記スケールダウン工程(b)より得られた原料煮沸液状物について、リナロール量を実施例1と同様にGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)により分析して求めた。また、蒸発減量ゼロとして、工程(a)で、ホップを添加した後、十分に分散しているが未だ沸点には到達していない時点(添加後約2分)のホップ処理液状物を麦汁に加えた後、スケールダウン工程(b)で同様に煮沸したものについて、リナロール量を同様に分析して求めた。
結果を表2および図5に示す。
Figure 0005320032
表2および図5から理解されるように、ペレット状原料ホップ1kg当りの蒸発減量を1〜15kgとすることにより、ホップ香気成分であるリナノールを効果的に低減または除去できることが確認された。
本発明の実施形態1において用いられるホップ処理装置を示す概略断面図である。 本発明の実施形態1において用いられる図1のホップ処理装置と原料液汁煮沸器とを示す概略断面図である。 本発明の実施形態1におけるビール製造方法を説明する模式図である。 本発明の実施形態2におけるビール製造方法を説明する模式図である。 本発明の実施例2における蒸発減量対リナノール含量のグラフである。
符号の説明
1 ホップ投入口
3 溶媒供給ライン
5 排気ライン
7 ジャケット(ジャケット式加熱手段)
9 加熱器
10 ホップ処理装置
11 攪拌機(攪拌手段)
12 ホップと溶媒との混合物(処理後にホップ処理液状物となる)
13 排出ライン
15 原料液汁供給ライン
17 排出ライン
19 ホップ処理液状物と麦汁(原料液汁)との混合物(煮沸後に原料煮沸液状物となる)
20 原料液汁煮沸器

Claims (6)

  1. ビールまたはビール様飲料の製造方法であって、
    (a)ホップを、ペレット状原料ホップ1kg当り25〜100リットルに蒸発減量分を加えた量の溶媒と一緒に、ペレット状原料ホップ1kg当り1〜15kgの蒸発減量が得られるように煮沸すること、および
    (b)下記(i)〜(iii):
    (i)原料液汁を加熱して昇温させ、
    (ii)昇温させた原料液汁を非沸騰状態にて、沸点から沸点以下10℃までの範囲内の温度(但し沸点を除く)で高温保持しつつ、工程(a)により得られるホップ処理液状物を加えて、原料液汁とホップ処理液状物との混合物として引き続き非沸騰状態にて高温保持し、および
    (iii)高温保持の後、混合物を加熱して沸騰させること
    を含み、前記(ii)における高温保持時間および前記(iii)における沸騰時間の合計を少なくとも90分間とし、かつ、蒸発率が11重量%を超えない時間として実施される煮沸方法によって、原料液汁とホップ処理液状物との混合物を煮沸すること
    を含んで成り、これによって熱エネルギーの消費を低減することを特徴とする製造方法。
  2. 溶媒の液量は、原料液汁の液量の1/10〜1/200(体積基準)である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程(a)において30〜180分間の高温保持時間が得られるように煮沸を実施する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 原料液汁が麦汁である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 溶媒が、水、原料液汁と同じ液汁、および液糖からなる群より選択される少なくとも1種、または該少なくとも1種に添加剤が添加されて成るものである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 工程(b)に代えて、
    (c)原料液汁を煮沸すること
    を含んで成り、工程(a)および(c)をそれぞれ実施し、工程(a)により得られるホップ処理液状物を、工程(c)により得られる原料煮沸液状物に、工程(c)の後、冷却するまでの1つまたはそれ以上の段階で添加し、
    工程(c)における煮沸は、下記(i’)〜(iii’):
    (i’)原料液汁を加熱して昇温させ、
    (ii’)昇温させた原料液汁を非沸騰状態にて、沸点から沸点以下10℃までの範囲内の温度(但し沸点を除く)で高温保持し、および
    (iii’)高温保持の後、原料液汁を加熱して沸騰させること
    を含み、前記(ii’)における高温保持時間および前記(iii’)における沸騰時間の合計を少なくとも90分間とし、かつ、蒸発率が11重量%を超えない時間として実施される、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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