JP5415095B2 - ビールまたはビール様飲料製造方法 - Google Patents
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Description
尚、本発明を通じて「ホップエキス」とは、ホップから抽出された苦味成分含有物であって、その苦味成分がイソ化処理に付されていないものを意味し、上述のような「イソ化ホップエキス」とは明確に区別される。
(a)ホップペレットおよびホップエキスの少なくとも一方を水系溶媒と一緒に煮沸し、その液相としてホップ溶液を得ること、および
(b)原料液汁を煮沸して原料煮沸液状物を得ること
をそれぞれ別個に実施し、工程(b)より得られた原料煮沸液状物を少なくとも冷却、発酵、熟成および濾過に順次付すことを含んで成り、
工程(a)より得られたホップ溶液を、工程(b)より得られた原料煮沸液状物に、冷却後かつ濾過前の1つまたはそれ以上の段階で添加することを特徴とする製造方法が提供される。
しかし、本発明はこれに限定されず、麦芽以外のものであって、例えば大豆ペプチド、大豆蛋白、エンドウタンパク、トウモロコシなどの1種またはそれ以上から得られる他の原料液汁を用いてもよい。このような材料から得られる原料液汁も泡に寄与する蛋白質を含み得、麦芽から得られる原料液汁(麦汁)の場合と同様の効果を奏し得る。
尚、本発明を通じて「煮沸」とは、対象とする液状物に熱を加え、少なくともその一部の期間において液状物が沸騰状態となることを意味する。「液状物」は液体のみならず、存在する場合にはホップペレット(またはホップ粕)などの固体をも含む意味で用いる。
「蒸発減量」は、(開始時の液状物重量−終了時の液状物重量)として求められる(減量は全て液体蒸発によるものと考えて差し支えない)。
「高温保持」と言う場合、沸騰状態および非沸騰状態のいずれであってもよく、工程(a)について言う場合はα酸のイソ化反応が進行するような温度、工程(b)について言う場合はS−メチルメチオニン(SMM)がジメチルスルフィド(DMS)となる反応が進行するような温度、いずれも例えば沸点から沸点以下約10℃までの範囲内の温度に保つことを意味する。「高温保持時間」には、沸騰状態となる時間(即ち、沸点温度が維持される期間)も含まれることに留意されたい。
ホップ処理装置10(PIE:Pre-Isomeriser & Evaporator)にてホップ処理を行う。ホップ処理装置10は、図2に示すように、加熱器9を含み、加熱器9の上部には、ホップ投入口1(例えばいわゆるマンホールであり得る)と、溶媒供給ライン3(例えば先端にスプレーボールを備え得る)と、排気ライン5とが備えられ、加熱器9の下部には、液状物12を加熱するためのジャケット7と、排出ライン13とが備えられる。また、ホップ処理装置10は、加熱器9の液状物12を攪拌する攪拌羽根または翼を備えた攪拌機11を攪拌手段として含むことが好ましい。加えて、ホップ処理装置10には、蒸発減量を測定または算出するために必要な任意の適切な計測器(図示せず)、例えば荷重変換器、差圧伝送器、液深を測る液面計などが備えられ得る。
尚、ホップ源としてホップエキスを単独で、またはホップペレットと共に使用する場合、本明細書を通じて、「ホップペレット1kg」当りの蒸発減量分は、ホップ源に用いたホップエキスをホップペレットに換算して蒸発減量分を求めることを意味する。
別途、原料液汁煮沸器20にて麦汁の煮沸を行う。原料液汁煮沸器20には、図3に示すように、原料液汁供給ライン15および排出ライン17が接続され得る。原料液汁煮沸器20には、図3に示すような一般的なローレンコッファ型煮沸釜を用いることができるが、これに限定されない。
(i)麦汁(原料液汁)19を加熱して昇温させ、
(ii)昇温させた麦汁19を非沸騰状態にて高温保持し、および
(iii)非沸騰状態での高温保持の後、最終的に沸騰させる。
(ii)段目では、SMMをDMSとする反応が進行するが、非沸騰状態であるので、沸騰させた場合に比べて少なくとも潜熱に相当するエネルギー分を削減できる。更に、非沸騰状態では沸騰状態に比べて麦汁の流動が抑制されるため、蛋白質の熱凝固反応が進行し難くなり、泡持ちに寄与する物質(例えば40kDa蛋白質)の減少を緩和できる。(ii)段目は、最終的に(iii)段目で麦汁19が煮沸される限り、連続的に、または間欠的に(非沸騰状態の間に沸騰状態や高温保持から逸脱した状態が短期間存在し得る)実施してよい。
(iii)段目は、麦芽香気成分であるDMSを十分に蒸散除去するように、例えば約3〜4重量%の蒸発率が得られるように実施する。尚、「蒸発率」は、(開始時の液状物重量−終了時の液状物重量)/(開始時の液状物重量)×100(重量%)として求められる。
再び図1を参照して、工程(b)を原料煮沸器20にて実施して得られた原料煮沸液状物は、その後、旋回分離、冷却、浮上分離、発酵、熟成および濾過に順次付される。より詳細には、ワールプールにて旋回分離により不要な凝固蛋白質などを除去し、冷却器にて冷却した後に酵母を加え、フローテーションタンクで浮上分離により不要な物質を除去し、発酵タンクで酵母により発酵させて若ビールとし、熟成タンクで熟成し、そして、濾過器に通して最終濾過して製品ビールとなる。
(0)麦汁(原料液汁)の煮沸;
(1)麦汁(原料液汁)の煮沸後かつ旋回分離前;
(2)旋回分離;
(3)旋回分離後かつ冷却前;
(4)冷却後かつ浮上分離前;
(5)浮上分離;
(6)浮上分離後かつ発酵前;
(7)発酵;
(8)発酵後かつ熟成前;
(9)熟成;および
(10)熟成後かつ(最終)濾過前
のうち、段階(4)〜(10)のいずれか1つまたは2つ以上の段階で添加してよい。とりわけ、図1に示すように発酵後かつ(最終)濾過前の段階(8)〜(10)にて添加することが好ましい。
ホップの処理および添加段階が泡持ちに及ぼす影響を調べた(試験1〜5)。
試験1は、ホップ処理装置10にてホップ源としてホップペレットを煮沸し、これにより得られたホップ溶液を図1に示す段階(0)にて添加し、原料液汁煮沸器20にて麦汁と一緒に煮沸した。
試験2〜4は、ホップ処理装置10にてホップ源としてホップペレットを煮沸し(工程(a))、別途、原料液汁煮沸器20にて麦汁を煮沸し(工程(b))、ホップ処理装置10より得られたホップ溶液を図1に示す段階(2)、(7)および(8)にてそれぞれ添加した。
試験5(対照)は、ホップ処理装置10におけるホップ処理を行わず、原料液汁煮沸器20にてホップ源としてホップペレットをそのまま麦汁と一緒に煮沸した。
これら試験1〜5のうち、試験1、2および5は比較例であり、試験3および4が本発明の実施例である。
加熱器の容量: 400L
ホップ源:
ホップペレット: アロマ品種とビター品種を混合したもの 約3kg
水系溶媒: 水 約97L
開始時の液状物(ホップペレットと水系溶媒との混合物)重量: 約100kg
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: 90℃以上まで昇温した後、ホップペレットを添加し、約100℃で約40分間沸騰状態で煮沸
高温保持時間: 約90〜100℃にて約45分間(沸騰状態含む)
pH: 5.2〜5.4
蒸発減量: 約30kg(ホップペレット1kg当り約10kg)
原料液汁煮沸器の容量: 7500L
麦汁: 約5000L
開始時の液状物重量: 約5070kg(試験1:ホップ溶液+麦汁)、約5000kg(試験2〜4:麦汁)、約5003kg(試験5:ホップペレット+麦汁)
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: (i)90℃以上まで昇温した後、(ii)非沸騰状態にて約60分間高温保持し(この間に、試験1ではホップ溶液を、試験5ではホップペレットを添加)、(iii)その後、約100℃で約30分間沸騰状態で煮沸
pH: 5.2〜5.4
・苦味価(B.U.)
製品ビールを苦味価(Bitterness)分析法により分析した。尚、苦味価(Bitterness)分析法はビール製造技術の分野において周知であり、EBC(European Brewery Convention)が発行している分析法の規定「Analytica-EBC」に記載されている。
・泡持ち(秒)
製品ビールをNIBEM法により分析した。尚、NIBEM法はビール製造技術の分野において周知であり、EBC(European Brewery Convention)が発行している分析法の規定「Analytica-EBC」に記載されている。
平均NIBEMは、各試験につき得た8個のサンプルの平均値である。
ホップの処理およびホップ源が泡持ちに及ぼす影響を調べた(試験6〜8)。
試験6は、ホップ処理装置10にてホップ源としてホップペレットおよびホップエキスを用いて煮沸し(工程(a))、別途、原料液汁煮沸器20にて麦汁を煮沸し(工程(b))、ホップ処理装置10より得られたホップ溶液を図1に示す段階(8)にて添加した。
試験7は、ホップ処理装置10にてホップ源としてイソ化ホップエキスを用いて煮沸し(工程(a))、別途、原料液汁煮沸器20にて麦汁を煮沸し(工程(b))、ホップ処理装置10より得られたホップ溶液を図1に示す段階(8)にて添加した。
試験8(対照)は、ホップ処理装置10におけるホップ処理を行わず、原料液汁煮沸器20にてホップ源としてホップペレットおよびホップエキスを用いてそのまま麦汁と一緒に煮沸した。
これら試験6〜8のうち、試験6が本発明の実施例であり、試験7および8は比較例である。
加熱器の容量: 400L
ホップ源:
ホップペレットおよびホップエキス(試験6): ビター品種のホップペレットとビター品種由来のホップエキスを混合したもの 約1kg
イソ化ホップエキス(試験7):Isohop(商標、HAAS社製) 約1kg
水系溶媒: 水 約97L
開始時の液状物(ホップペレットおよびホップエキス(試験6)またはイソ化ホップエキス(試験7)と水系溶媒との混合物)重量: 約100kg
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: 90℃以上まで昇温した後、ホップペレットおよびホップエキス(試験6)またはイソ化ホップエキス(試験7)を添加し、約100℃で約40分間沸騰状態で煮沸
高温保持時間: 約90〜100℃にて約45分間(沸騰状態含む)
pH: 5.2〜5.4
蒸発減量: 約30kg
尚、試験6および7において、ホップ香気の調整のため、アロマ品種のホップペレット約1kgをホップ処理装置10における煮沸終了時点で添加した。
原料液汁煮沸器の容量: 7500L
麦汁: 約5000L
開始時の液状物重量: 約5000kg(試験6〜7:麦汁)、約5001kg(試験8:ホップペレットおよびホップエキスを混合したもの+麦汁)
圧力: 大気圧(約0.1MPa)
温度: (i)90℃以上まで昇温した後、(ii)非沸騰状態にて約60分間高温保持し(この間に、試験8ではホップペレットおよびホップエキスを添加)、(iii)その後、約100℃で約30分間沸騰状態で煮沸
pH: 5.2〜5.4
尚、試験8において、ホップ香気の調整のため、アロマ品種のホップペレット約1kgを原料液汁煮沸器20における煮沸終了時点で添加した。
3 溶媒供給ライン
5 排気ライン
7 ジャケット(ジャケット式加熱手段)
9 加熱器
10 ホップ処理装置
11 攪拌機(攪拌手段)
12 液状物(ホップペレットおよびホップエキスの少なくとも一方と水系溶媒との混合物であり、煮沸後に液相がホップ溶液となる)
13 排出ライン
15 原料液汁供給ライン
17 排出ライン
19 麦汁(原料液汁)(煮沸後に原料煮沸液状物となる)
20 原料液汁煮沸器
Claims (3)
- ビールまたはビール様飲料の製造方法であって、
(a)ホップペレットおよびホップエキスの少なくとも一方を、ホップペレット1kg当り25〜100リットルに蒸発減量分を加えた量の水系溶媒と一緒に、ホップペレット1kg当り1〜15kgの蒸発減量が得られるように煮沸し、その液相としてホップ溶液を得ること、および
(b)原料液汁を煮沸して原料煮沸液状物を得ること
をそれぞれ別個に実施し、工程(b)より得られた原料煮沸液状物を少なくとも冷却、発酵、熟成および濾過に順次付すことを含んで成り、
工程(a)より得られたホップ溶液を、工程(b)より得られた原料煮沸液状物に、発酵後かつ濾過前の1つまたはそれ以上の段階で添加すること、および水系溶媒の液量は、原料液汁の液量の1/10〜1/200(体積基準)であることを特徴とする製造方法。 - 原料液汁が麦汁である、請求項1に記載の製造方法。
- 水系溶媒が、水、原料液汁と同じ液汁、および液糖からなる群より選択される少なくとも1種、または該少なくとも1種に添加剤が添加されて成るものである、請求項1または2に記載の製造方法。
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