JP5319713B2 - 高圧ポンプ - Google Patents
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また、シリンダの内底壁はプランジャの方向に広がる略円錐状に形成されるため、内底壁に作用する圧力室の燃料の圧力はシリンダの軸方向の成分と径方向の成分とに分解される。プランジャの移動により圧力室の燃料の圧力が上昇するとき、当該径方向の成分はシリンダを径外方向に広げるようシリンダに作用する。これにより、シリンダの外側壁はシリンダの外側壁に対向するシリンダ取付孔の内壁に押し付けられるため、さらにシリンダを抜けにくくすることができる。
シリンダをシリンダ取付孔に挿入するとき、シリンダの外側壁とシリンダ取付孔の内壁とは接触状態を保ったまま圧入される。このとき、シリンダの外側壁にシリンダ取付孔の内壁と接触する突起部を設けることにより、シリンダ取付孔の内壁との接触面積が小さくなる。これにより、シリンダの圧入に対する抵抗が小さくなるため、シリンダをシリンダ取付孔に圧入しやすくすることができる。
請求項5に記載の発明によると、突起部は、シリンダの軸方向に2つ以上形成されている。前述したようにシリンダの外側壁に形成される突起部は、シリンダ取付孔の内壁と接触している。このとき、シリンダの軸方向に複数の突起部が形成されていると、突起部が2つ以上の場所においてシリンダとシリンダ取付孔との間隔を保つため、シリンダ取付孔とシリンダと中心軸を合わせることができる。これにより、シリンダをシリンダ取付孔に圧入するとき、シリンダ取付孔内でのシリンダの傾きを防止することができる。
シリンダの外側壁に突起部を形成する場合、圧力室に燃料を供給する吸入通路とプランジャを支持するシリンダとの間には空間が形成される。これはシリンダの径方向外側に形成されている突起部がシリンダ取付孔の内壁に接触しているためである。したがって、吸入口を通って圧力室に燃料が流入するとき、燃料はこの空間に漏れ出すこととなる。そこで、請求項6に記載の発明では、突起部は、シリンダの外側壁の上部および下部にそれぞれ形成される。具体的には、突起部の1つはポンプハウジングに形成されている吸入通路の外底壁側の内壁から外底壁までの間の外側壁に環状に形成される。また、もう一つの突起部は、吸入通路のシリンダ取付孔の開口側の内壁からシリンダ取付孔の開口までの間の外側壁に環状に形成される。この2つの突起部、シリンダの外側壁、およびシリンダ取付孔の内壁により形成される空間により、圧力室より漏れ出した燃料を封入することができる。
高圧ポンプが備えるリセス部は、シリンダとシリンダ取付孔との間に形成されており、圧力室に連通している。一方、リセス部は吐出弁と連通するリリーフ弁収容室とも連通している。リリーフ弁収容室は、インジェクタの異常により吐出弁収容室内の燃料の圧力が上昇したとき、開弁して高圧となった燃料を開放するリリーフ弁を収容している。吐出弁収容室内の燃料の圧力が上昇してリリーフ弁が開弁したとき、高圧の燃料はリリーフ弁収容室からリセス部を経由して圧力室に入る。これにより、シリンダにリリーフ用の貫通穴を空ける必要がなくなる。
シリンダをシリンダ取付孔に圧入するとき、シリンダ取付孔の内壁と嵌合するシリンダの外側壁にはシリンダ取付孔の内壁からシリンダの径内方向に圧縮応力がかかる。圧縮応力がかかる壁面の内側に空間がある場合、圧縮応力による空間の変形が懸念される。請求項8に記載の発明は、シリンダ取付孔の内壁と接触して圧縮応力がかかるシリンダの内底壁と外底壁との間の外側壁は、その内側に空間を有しない。これにより、シリンダ取付孔の内壁からの圧縮応力によってシリンダの形状変化は発生しない。したがって、シリンダにかかる圧縮応力を緩和することができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを図1および図2に基づいて説明する。第1実施形態の高圧ポンプは、車両に搭載されて用いられる。高圧ポンプは、燃料タンクから低圧ポンプにて汲み上げられた燃料を加圧し、インジェクタに接続する燃料レールへ供給するものである。
燃料供給部30は、燃料ギャラリ31を有する。燃料ギャラリ31は、ポンプハウジング11の凹部13と蓋部14とによって囲まれた空間である。この燃料ギャラリ31には、ダンパユニット32が配設されている。このダンパユニット32は、2枚の金属製のダイアフラム33,34を接合してなる円形状のダンパ部材35と、支持部材36とで構成されている。ダンパユニット32は、波ばね37を介し蓋部14にて押圧されている。
図1に示すように、プランジャ部70は、プランジャ71、オイルシールホルダ72、スプリングシート73、プランジャスプリング74、およびシリンダ75などを備えている。
調量弁部50は、図1に示すように、ポンプハウジング11に形成される調量弁筒部51、調量弁筒部51の開口を覆う弁部カバー52、及び、コネクタ53等を備えている。調量弁部50には、燃料供給部30から燃料通路58を介して燃料が供給される。
筒部51は、略円筒状に形成され、内部が吸入室55となっている。吸入室55には、略円筒状のシートボディ56が配置されている。シートボディ56は、その内部に、吸入弁57を摺動可能に支持している。
吐出弁部90は、図1に示すように、ポンプハウジング11にて形成される円筒状の収容部91を有している。この収容部91にて形成される吐出弁収容室911に、吐出弁92、スプリング93、及び、係止部94が収容されている。また、吐出弁収容室911の開口部分が、吐出口95となっている。吐出口95とは反対側の吐出弁収容室911の深部には、弁座922が形成されている。
図2に示すように、シリンダ75は、ポンプハウジング11に形成されるシリンダ取付孔16に収容されている。シリンダ75は、ポンプハウジング11に対して圧入により挿入されている。シリンダ75は、シリンダ閉塞部751、シリンダ75の中心軸に平行なシリンダ筒部752、およびプランジャ71が挿入されるシリンダ開口部753から形成される有底の略円筒状の形状をしている。
シリンダ内側壁752bは、シリンダ75の中心軸に対して略平行を成している。シリンダ内側壁752bは、プランジャ71の大径部711の外側壁711aと接触している。シリンダ外側壁752aは、特許請求の範囲の記載の「外側壁」に相当する。シリンダ内側壁752bは、特許請求の範囲の記載の「内側壁」に相当する。
次に高圧ポンプ1の作動について説明する。
(1)吸入行程
プランジャ71が上死点から下死点に向かって下降すると、圧力室12は減圧される。このとき、コイル531への通電が停止され、吸入弁57は開弁状態となり、吸入室55と圧力室12とが連通する。一方、吐出弁92は弁座922に着座し、吐出弁収容室911を閉塞する。これにより、燃料ギャラリ31の燃料が吸入室55を経由して圧力室12に吸入される。
プランジャ71が下死点から上死点に向かって上昇するとき、所定の時期まではコイル531への通電が停止され、吸入弁57は開弁状態を維持する。このため、圧力室12の低圧燃料が吸入室55を経由して燃料ギャラリ31に戻される。
圧力室12と燃料ギャラリ31との間の燃料の流れが遮断された状態で、プランジャ71がさらに上死点に向けて上昇すると、圧力室12の燃料の圧力は上昇する。このとき、燃料の圧力は圧力室12を形成するシリンダ75のシリンダ内底壁751b、シリンダ内側壁752b、およびプランジャ71の外壁713の全ての壁にかかる。圧力室12の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、吐出弁92がスプリング94の弾性力及び燃料出口側の燃圧に抗して開弁する。これにより、圧力室12で加圧された燃料は吐出弁収容室911を経由して吐出口91から吐出する。
このように(1)から(3)の行程を繰り返すことで、高圧ポンプ10は吸入した燃料を加圧して吐出する。
次に本発明の実施形態での高圧ポンプ1の効果について、比較例の高圧ポンプと比較して説明する。
(A)図7に示すように比較例の高圧ポンプ2では、シリンダ85はシリンダ取付孔86に収容されている。ここで、比較例でのシリンダ85は略円筒状の形状を成している。これにより、燃料が加圧される圧力室82は、シリンダ収容室86の底面861、シリンダ収容室86の内側壁862、およびプランジャ81の外壁813から形成されている。一方、本実施形態での高圧ポンプ1のシリンダ75は、略コの字状の形状を成している。これにより、圧力室12は、シリンダ75のシリンダ内底壁751b、シリンダ内側壁752b、およびプランジャ71の外壁713により形成される。
次に、本発明の第2実施形態を図3に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、シリンダの形状が一部異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同位置の符号を付し、説明を省略する。
(B)第2実施形態では、シリンダ76はシリンダ外側壁762aの径外方向に環状を形成している第1突起部764を有している。第1突起部764がシリンダ取付孔16の内側壁162に接触することで、シリンダ取付孔16の内側壁162とシリンダ76との接触面積が小さくなる。これにより、シリンダ取付孔16にシリンダ76を圧入するとき、圧入に必要な荷重が小さくなる。したがって、第1実施形態の効果(A)に加えて、シリンダ76をシリンダ取付孔16に圧入しやすくすることができる。
次に、本発明の第3実施形態を図4に基づいて説明する。第3実施形態は、第2実施形態に対して、突起部の数が異なる。なお、第2実施形態と実質的に同一の部位には同位置の符号を付し、説明を省略する。
(C)圧力室12に燃料が供給されるとき、シリンダ77とシリンダ取付孔16との間に形成されているリセス部776に燃料は流出する。リセス部776に流出した燃料は、シリンダ外側壁772aに形成されている第1突起部774および第2突起部775により、リセス部776の外部に漏れ出すことはない。したがって、第1実施形態の効果(A)および第2実施形態の効果(B)に加えて、圧力室12から漏れた燃料を封入することができる。
次に、本発明の第4実施形態を図5に基づいて説明する。第4実施形態は、第2実施形態に対して、シリンダの形状およびシリンダとポンプハウジングとの接触位置が異なる。なお、第2実施形態と実質的に同一の部位には同位置の符号を付し、説明を省略する。
次に、本発明の第5実施形態を図6に基づいて説明する。第5実施形態は、第3実施形態に対して、吐出弁部に供給された燃料をリセス部に還流する燃料還流路を設けている点が異なる。なお、第3実施形態と実質的に同一の部位には同位置の符号を付し、説明を省略する。
図6において圧力室12の左側には燃料供給部50、右側には吐出弁部90が設けられている。リリーフ弁収容部60は、吐出弁部90の吐出弁収容室911とリセス部796とを接続するリリーフ弁収容室65を有し、図6において圧力室12の下側に設けられている。
リリーフ弁収容部60は、吐出用弁体921が着座する弁座922よりも下流側の吐出弁収容室911からリセス部796への接続路61、62を有する。
(ア)上述の実施形態では、シリンダはポンプハウジングに対して圧入によりシリンダ取付孔に挿入するとした。しかし、シリンダの挿入方法はこれに限定されなくてもよい。シリンダ挿入前にシリンダを冷やす冷やしばめ、またはハウジングを加熱する焼きばめ、または前述の冷やしばめと焼きばめとの併用であってもよい。
16 ・・・シリンダ取付孔、
163 ・・・開口面、
11 ・・・ポンプハウジング、
12 ・・・圧力室、
501 ・・・吸入通路、
57 ・・・吸入弁、
71 ・・・プランジャ、
713 ・・・外壁、
75、76、77、78、79 ・・・シリンダ、
751、761、771、781 ・・・シリンダ閉塞部
751a、761a、771a、781a ・・・シリンダ外底壁(外底壁)、
751b、761b、771b、781b ・・・シリンダ内底壁(内底壁)、
752、762、772、782 ・・・シリンダ筒部、
752a、762a、772a、782a ・・・シリンダ外側壁(外側壁)、
752b、762b、772b、782b ・・・シリンダ内側壁(内側壁)、
752c、762c、772c、782c ・・・吸入口、
752d、762d、772d、782d ・・・吐出口、
764、774、784 ・・・第1突起部(突起部)、
775 ・・・第2突起部(突起部)、
776、796 ・・・リセス部、
901 ・・・吐出通路、
911 ・・・吐出弁収容室、
92 ・・・吐出弁。
Claims (8)
- 往復移動可能なプランジャと、
有底筒状の形状をしており、前記プランジャを摺動可能に案内する内側壁、当該内側壁に連なる内底壁、並びに外側壁と前記内側壁とを連通する吸入口及び吐出口を有するシリンダと、
前記シリンダを挿入する内壁を有するシリンダ取付孔、前記吸入口と連通する吸入通路、並びに、前記吐出口と連通する吐出通路を有するポンプハウジングと、を備え、
前記シリンダ取付孔に前記シリンダ及び前記プランジャを組み付けたとき、前記シリンダの前記内側壁、前記内底壁、および前記プランジャの挿入される側の先端の外壁とで圧力室が形成され、
前記シリンダの前記外側壁に連なる外底壁は、前記シリンダ取付孔の前記内壁に当接するように形成され、前記内底壁は、前記プランジャの方向に広がる略円錐状に形成されることを特徴とする高圧ポンプ。
- 前記ポンプハウジングの前記吸入通路に前記圧力室に吸入する燃料を調量する吸入弁、及び、前記ポンプハウジングの前記圧力室から前記吐出通路に吐出する燃料の逆流を防止する吐出弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。
- 前記シリンダの前記外側壁には前記シリンダ取付孔の前記内壁と接触する突起部が前記シリンダの径外方向に向けて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧ポンプ。
- 前記突起部は、環状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高圧ポンプ。
- 前記突起部は、前記シリンダの軸方向に2つ以上形成されていることを特徴とする請求項4に記載の高圧ポンプ。
- 前記突起部は、前記吸入通路の前記外底壁側の内壁から前記外底壁までの間の前記外側壁、および前記吸入通路の前記シリンダ取付孔の開口側の内壁から前記シリンダ取付孔の開口面までの間の前記外側壁に形成されることを特徴とする請求項4に記載の高圧ポンプ。
- 前記シリンダ取付孔の前記内壁、前記シリンダの前記外側壁および前記突起部によって区画されて前記シリンダの径外方向に環状に形成され、リリーフ弁収容室を経由して前記吐出弁を収容する吐出弁収容室と連通するリセス部を備えることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記シリンダの前記内底壁と前記外底壁との間の前記外側壁は、前記シリンダ取付孔の前記内壁と嵌合することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
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