JP5319328B2 - セラミックシート製造用離型フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックシート製造用離型フィルムに関する。
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、積層セラミックコンデンサー、セラミック基板等の各種セラミック電子部品製造時に使用するセラミックシート(グリーンシート)等を製造する際のキャリアフィルムとして用いられる。
積層セラミックコンデンサーを製造する際に使用するセラミックシートは、例えば、キャリアフィルムの上に、セラミック粉体とバインダー剤等を溶媒に分散させたセラミックスラリーをリバースロール法等により塗布し、溶媒を加熱乾燥除去してセラミック層を形成した後、当該セラミック層上に内部電極となる金属膜を蒸着あるいは印刷等により形成し、金属膜/セラミック層/キャリアフィルム複合体を作成し、かかる複合体からキャリアフィルムを剥離除去することにより製造される。
次に、積層セラミックコンデンサーは、上記のようにして製造した金属膜/セラミック層複合体を、所望の寸法で積層し、熱プレス後、矩形状に切断することによりチップ状の積層体を得て、このチップ状の積層体を焼成し、焼成体の所定の表面に外部電極を形成することにより得ることができる。
上記のようなキャリアフィルムに用いられる離型フィルムとして、例えば特許文献1がある。
特開平7−223213号公報
しかしながら、上記のようなセラミックシートの製造工程においては、加熱乾燥によるセラミックシートの収縮等により、セラミックシートが離型フィルムから浮き上がってしまうことがあり、これによって、積層セラミックコンデンサー製造工程においては、内部電極の位置ずれや積層ずれ等を引き起こしてしまう。
そこで、セラミックシート製造時のセラミックシートの浮きを低減させることが必要となる。セラミックシートの浮きを抑えるためには離型フィルムの剥離力を適度な範囲に調整することが必要となる。かかる剥離力の調整としては、例えば一般のポリジメチルシロキサンよりなる離型フィルムにおいては、シリカフィラーやシリコーンレジン等を添加することにより調整する方法が一般的であるが、かかる方法では、セラミックシートに対しては十分な剥離力調整の効果が得られない。また、主鎖に有機樹脂を有し側鎖にジメチルシロキサンを有する変性シリコーンを用いて剥離力を調整する方法では、セラミックシートの浮きは抑えられるものの、剥離力が高くなりすぎる問題がある。
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、剥離力がセラミックシート製造工程適性に優れたセラミックシート製造用離型フィルムを提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、離型層が均質なセラミックシート製造用離型フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムにおいて、かかる離型層が親水性ポリエステル樹脂を構成成分として含むことにより、セラミックシート製造用離型フィルムとして求められる性能を十分に満足する離型フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層が、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤、ハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤、離型層の質量を基準として10質量%以上80質量%以下の親水性ポリエステル樹脂を構成成分として含む塗膜を硬化してなる離型層であるセラミックシート製造用離型フィルムである。
さらに本発明は、
前記離型フィルムの長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たし、
前記離型フィルムの長手方向に垂直な方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における長手方向に垂直な方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たし、
前記離型フィルムの無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、
前記離型フィルムの無荷重下での100℃における長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ
前記長手方向の熱伸長率HSMDと前記長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たすこと、
[式1]
0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
(式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
[式2]
−0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
[式3]
−0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
[式4]
−0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
[式5]
HSMD>HSTD ・・・(5)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤およびハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤が水性エマルションであること、離型層が、ポリエステルフィルムの製造工程中に形成されることのうち、少なくとも1つの態様を具備することにより、さらに優れたセラミックシート製造用離型フィルムを得ることができる。
本発明の離型フィルムは、剥離力がセラミックシート製造工程適性に優れているため、セラミックシート製造工程におけるセラミックシートの浮きを抑制することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、塗膜が均質であるため、均質な離型層となり、セラミックスラリーの塗布異常や剥離異常を抑制することができる。これらによって、セラミックシートや積層セラミックコンデンサーの生産性を向上することができる。
<離型フィルム>
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムである。以下に、本発明の離型フィルムを構成する各構成成分、および本発明の離型フィルムの特性について説明する。
<ポリエステルフィルム>
[ポリエステル]
本発明に用いられるポリエステルフィルムを形成するポリエステルとしては、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
本発明に用いられるポリエステルフィルムがホモポリエステルからなる場合は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。ここで、用いられる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、用いられる脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。本発明に用いられるポリエステルフィルムの代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等を挙げることができる。
一方、本発明に用いられるポリエステルフィルムを形成するポリエステルが、共重合ポリエステルの場合は、全酸成分に対して、20モル%以下の第三成分となるジカルボン酸および/またはグリコールを共重合させた共重合体であることが好ましい。
共重合ポリエステルのモノマー成分となるジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸等)等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。また、共重合ポリエステルのモノマー成分となるグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
本発明に用いられるポリエステルフィルムの材料としては、これらの中でも、80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、あるいは、80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、本発明における好ましい態様を有する離型フィルムは、寸法安定性に優れることから、Tgをはるかに超える温度においての使用であっても、離型フィルムとしての性能を十分に発揮することができる。
[添加剤]
本発明に用いられるポリエステルフィルムの材料となるポリエステルには、フィルムとした場合の易滑性付与を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類としては、易滑性付与が可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。
また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような、耐熱性の有機粒子を用いてもよい。耐熱性有機粒子のまた別の例としては、シリコーン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等からなる粒子を挙げることもできる。さらには、ポリエステルの製造工程中にて、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記のような易滑性を付与するための粒子の形状は、特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限されるものではない。さらに、これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。
なお、粒子の平均粒径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.2μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合は、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となることがある。他方、1μmを超える場合は、得られるポリエステルフィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、離型フィルムの、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを100nm以上600nm以下とすることが困難となる。
また、易滑性を付与するために配合する粒子の含有量は、ポリエステルフィルム中において、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。粒子の含有量が0.01質量%未満の場合は、フィルムの易滑性が不十分となる傾向にある。他方、2質量%を超える場合は、フィルム表面の平滑性が不十分となる傾向にある。
ポリエステルフィルム中に粒子を含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において、配合したい粒子を添加することが可能であるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に粒子を配合し、その後、重縮合反応を進めることが好ましい。また、ベント付き混練押出機を用いて、エチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、あるいは、混練押出機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法等によっても行うことができる。
[層構成]
本発明におけるポリエステルフィルムの構成は、特に限定されるものではなく、単層構成であっても積層構成であってもよい。また、積層構成である場合には、2層、3層構成以外にも、本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。積層構成としても特に限定されるものではなく、例えば、A/B、A/B/A、A/B/C、A/B/A´等の積層構成を挙げることができる。
[ポリエステルフィルムの厚み]
本発明におけるポリエステルフィルム全体の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは9μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上38μm以下、特に好ましくは25μm以上31μm以下である。
<離型層>
本発明における離型層は、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤、ハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤、および親水性ポリエステル樹脂を構成成分として含む塗膜を硬化してなるものである。
[シリコーン樹脂組成物]
本発明において、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤とは、1分子中に不飽和基を少なくとも2個有するポリジメチルシロキサンである。また、ハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤とは、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するポリジメチルシロキサンである。かかる主剤および架橋剤からなる組成物を、以下シリコーン樹脂組成物を呼称する。本発明においては、かかるシリコーン樹脂組成物および後述する親水性ポリエステル樹脂を含む塗液を塗布し、塗膜を形成し、かかる塗膜を硬化させて離型層を形成する。
本発明におけるシリコーン樹脂組成物は、溶剤系でも水系でもよいが、水系のシリコーン樹脂組成物であることが好ましい。特に、水性エマルジョンであることが好ましい。
水系のシリコーン樹脂組成物であれば、親水性ポリエステル樹脂との混和性に優れ、離型層が海島状になり難くなる。すなわち、より均質な塗膜を得ることができ、より均質な離型層を得ることができる。また、親水性ポリエステル樹脂に、付加反応型シリコーンの触媒毒(リン、硫黄、窒素等)が含まれていても、その影響を受け難くなるため、離型層を十分に硬化することが容易となる。これは、水性エマルジョンである場合に特に優れる。また、後述する界面活性剤の選択肢が広がり、例えば水酸基をより多く含む界面活性剤を使用できるようになり、剥離帯電防止性の向上効果を高くすることができる。また、エマルジョンとした際の安定性に優れるため、結果として塗液の安定性を高くすることができる。なお、水系の塗液とすることは、環境の面からも好ましい。
本発明におけるシリコーン樹脂組成物は、加熱することによりを硬化させることができる。それによって塗膜が硬化する。本発明においては、後述するように、インライン塗布工程において塗膜を有するポリエステルフィルムを得て、その後の熱固定工程において熱処理がなされることが好ましい。シリコーン樹脂組成物が熱硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、かかる熱固定工程における熱処理によって架橋反応を促進させ、シリコーン樹脂組成物の硬化を十分に進行させることができ、離型性に優れる等の優れた特性を有する離型層を得ることができる。なお、本発明の目的を損なわない範囲で、前記主剤および架橋剤は、光硬化性官能基や電子線硬化性官能基を有していてもよい。
以下に、本発明において好適に用いることのできる水系のシリコーン樹脂組成物の具体例を示す。
1) Wacker Silicone(ミシガン州、Adrian)の水性の400Eシリコーン樹脂組成物。ポリシロキサン、白金触媒、および、メチル水素ポリシロキサンから成るV20架橋剤系を含む。
2) Dow Corning(ミシガン州、Midland)の水性のX2−7720シリコーン樹脂組成物。メチルビニルポリシロキサン、および、白金ポリシロキサンから成るX2−7721架橋剤系を含むメチル水素ポリシロキサンから成る。
3) PCL(Phone−Poulenc Inc., サウスカロライナ州、Rock Hill)の水性のPC−105シリコーン樹脂組成物。メチルビニルポリシロキサン、白金ポリシロキサンから成るPC−95の触媒成分を含むメチル水素ポリシロキサンから成る。
4) PCL PC−107水性のシリコーン樹脂組成物(PC−105と類似)。上記のPC−95架橋剤を含む。
5) PCL PC−188水性のシリコーン樹脂組成物(PC−105と類似)。上記のPC−95架橋剤を含む。
なお、これらの水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、脱イオン水を加える等によって固形分濃度が適宜調整され、塗剤として用いることができる。
[親水性ポリエステル樹脂]
本発明における親水性ポリエステル樹脂は、水に可溶性または分散性のポリエステル樹脂である。ここで、水に可溶性または分散性とは、多少(20体積%以下、好ましくは10体積%以下)の有機溶剤を含有する水に溶解可能または分散可能なものをいうが、実質的に有機溶剤を含有しない(1体積%以下)水に溶解可能であるものが好ましい。
親水性ポリエステル樹脂としては、下記の多塩基酸成分とジオール成分とから得られるポリエステルを用いることができる。すなわち、多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等を例示することができる。親水性ポリエステル樹脂としては、2種類以上の多塩基酸成分を用いた共重合ポリエステル樹脂が好ましい。かかる共重合ポリエステル樹脂としては、その構成成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を含有することが好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸の含有量は、親水性ポリエステル樹脂における全酸成分100モル%に対して、好ましくは1モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは2モル%以上10モル%以下、特に好ましくは5モル%以上8モル%以下であり、親水性に優れると同時に、シリコーン樹脂組成物との混和性に優れ、より均質な塗膜を得ることができ、それにより、より均質な離型層を得ることができる。さらに、剥離力の調整がより容易となる。本発明における親水性ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を例示することができる。中でもエチレングリコールおよびジエチレングリコールが好ましく、これらを両方含有する態様が好ましく、シリコーン樹脂組成物との混和性により優れる。
親水性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であり、シリコーン樹脂組成物との混和性に優れると同時に、離型層の強度に優れる。
親水性ポリエステル樹脂のガラス転移点温度は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜80℃である。この範囲であると、ポリエステルフィルムと離型層との密着性に優れる傾向にある。また、離型層表面における耐傷性に優れる傾向にある。ガラス転移点温度が40℃未満であるとブロッキングが発生しやすくなる傾向にあり、他方、100℃を超えると離型層が硬く、脆くなりすぎる傾向にあり、耐傷性に劣る傾向にある。
本発明における離型層は、上記のような親水性ポリエステル樹脂を、離型層の質量を基準として10質量%以上80質量%以下含有する。含有量が上記数値範囲にあると、セラミックシートに対して適した剥離力を得ることができる。また、シリコーン樹脂組成物との混和性に優れ、均質な塗膜および離型層を得ることができる。含有量が多すぎる場合は、セラミックシートに対する剥離力が重くなる傾向にある。このような観点から、親水性ポリエステル樹脂の含有量の上限は、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。他方、少なすぎる場合は、セラミックシートに対する剥離力が軽くなる傾向にあり、セラミックシート製造工程におけるセラミックシートの浮きの抑制効果に劣る。このような観点から、親水性ポリエステル樹脂の含有量の下限は、好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。
[シランカップリング剤]
さらに、本発明における離型層は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂組成物のいずれか、または双方と結合する反応基を有する有機ケイ素低分子化合物が好ましく、かかる反応基として、メトキシ基、エトキシ基、シラノール基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基、クロル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の少なくとも1種以上を有している有機ケイ素低分子化合物が好ましい。
かかるシランカップリング剤の含有量は、塗液中の固形分100質量%中に、0.1質量%以上20質量%が好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。含有量を上記数値範囲とすることによって、離型層の密着性を高くすることができる。
[界面活性剤]
本発明における離型層は、離型層の固形分質量に対して0.5質量%以上10質量%以下の界面活性剤を含有することが好ましい。離型層が界面活性剤を上記数値範囲の量含有することによって、ロール状の離型フィルムを巻き出す際の剥離帯電、および離型フィルムからセラミックシートを剥離する際の剥離帯電を抑制することができる。また、積層セラミックコンデンサーを製造する際に、内部電極の位置ずれをより抑制することができる。さらに、塗液においては、界面活性剤を添加することにより、ポリエステルフィルム表面に対する濡れ性が良好となり、その結果、局所的なハジキ欠点等が抑制され、より均一な塗膜を得ることができるばかりか、セラミックシートを剥離する際に発生するピンホール欠点を抑制することができる。含有量が少なすぎる場合は、剥離帯電が高くなる傾向にある。また、ポリエステルフィルム表面に対して、塗剤の濡れ性が不十分となる傾向にある。他方、多すぎる場合は、セラミックシートに対する剥離力が重剥離となる傾向にある。このような観点から、界面活性剤の含有量は、離型層の全乾燥質量を基準として、さらに好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。
本発明における界面活性剤としては、イオン系界面活性剤(アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤)、および非イオン系界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)の、いずれの界面活性剤を用いることができるが、中でもノニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等のイオン系界面活性剤を用いた場合は、これらの界面活性剤が離型層を形成するためのシリコーン樹脂組成物に対して触媒毒となり、シリコーン樹脂組成物が十分に硬化しない場合がある。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン型、多価アルコール脂肪酸エステル型、多価アルコールアルキルエーテル型、含窒素型等の界面活性剤、およびノニオン系のシリコーン系界面活性剤、ノニオン系のフッ素系界面活性剤等を例示することができる。
ポリオキシエチレン型界面活性剤としては、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル等を例示することができる。中でも、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等の、炭素数12以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルを好ましく例示することができる。かかるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。多価アルコールアルキルエーテル型界面活性剤としては、アルキルポリグリコキシド等を例示することができる。含窒素型界面活性剤としては、アルキルジエタノールアミド、アルキルアミンオキシド等を例示することができる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等を例示することができる。また、かかる変性シリコーンの構造としては、側鎖変形型、両末端変性型(ABA型)、片末端変性型(AB型)、両末端側鎖変性型、直鎖ブロック型(ABn型)、分岐型等に分類されるが、いずれの構造のものであってもよい。
本発明における界面活性剤としては、中でも、ポリオキシエチレン型界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。これらは、よりシリコーン樹脂組成物の触媒毒となりにくく、また十分な濡れ性を発現することができる。特に好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、さらに触媒毒となりにくく、離型特性をより優れたものとすることができ、また剥離帯電防止性の向上効果をより高くすることができる。
[その他の成分]
本発明における離型層は、本発明の目的を損なわない範囲において、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を加えることができる。また、前記主剤および架橋剤とは異なる、光硬化性官能基や電子線硬化性官能基を有するポリジメチルシロキサンを加えることができる。
[離型層の厚み]
本発明における離型層の厚み(すなわち乾燥後の厚み)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20nm以上90nm以下である。一般に、20nm未満では、軽剥離力等の、離型層としての効果を発揮することが困難となり、他方、90nmを超える場合は、費用の割に得られる効果が少なくなる。
<離型フィルムの特性>
[セラミックシート剥離力]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、上述のようなポリエステルフィルムおよび離型層の構成を採用することにより、後述する測定方法により求められる離型層表面におけるセラミックシート剥離力を、7.3mN/25mm以上500mN/25mm以下とすることができる。そのため、セラミックシート製造用として好適に用いることができる。剥離力が上記数値範囲にあると、セラミックシートの浮きが生じず、且つ剥離工程においては、離型フィルムからセラミックシートを容易に剥離することができる。剥離力が7.3mN/25mmより軽いと、セラミックスラリーを乾燥した後の工程において、セラミックシートの浮きが生じ易くなり、歩留りの低下を引き起こす。他方、500mN/25mmより重いと、セラミックシートが容易に剥離することができなくなり、歩留の低下を引き起こす。このような観点から、セラミックシート剥離力は、好ましくは7.3mN/25mm以上200mN/25mm以下、より好ましくは10mN/25mm以上100mN/25mm以下、さらに好ましくは15mN/25mm以上25mN/25mm以下、特に好ましくは18mN/25mm以上22mN/25mm以下である。
セラミックシート剥離力は、親水性ポリエステル樹脂の含有量を調整したり、離型層の厚みを調整したりすることによって達成することができる。例えば、親水性ポリエステル樹脂の含有量を本発明が規定する範囲とすることによって、剥離力を上記数値範囲内とすることができる。特に、親水性ポリエステル樹脂の含有量を増加することによって剥離力は重くなる傾向にある。また、離型層の厚みを本発明における好ましい範囲とすることによって、剥離力を上記数値範囲内にしやすくなる。特に、離型層の厚みは薄すぎても厚すぎても剥離力は重くなる傾向にある。また、塗膜を十分に乾燥・硬化することによって、剥離力は軽くなる傾向にある。
[常温剥離力]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、後述する測定方法により求められる離型層表面における常温剥離力が、40mN/25mm以上500mN/25mm以下であることが好ましい。かかる剥離力が上記数値範囲にあると、セラミックシート剥離力を適性な範囲とすることが容易となる。このような観点から、常温剥離力は、より好ましくは41mN/25mm以上300mN/25mm以下、さらに好ましくは45mN/25mm以上65mN/25mm、特に好ましくは50mN/25mm以上55mN/25mmである。
[加熱経時剥離力]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、後述する測定方法により求められる離型層表面における加熱経時剥離力が、50mN/25mm以上700mN/25mm以下であることが好ましい。剥離力が上記数値範囲にあると、経時保管後の使用においても、セラミックシートの浮きが生じ難く、且つ剥離工程においては、離型フィルムからセラミックシートを剥離することが容易になる。剥離力が50mN/25mmより軽いと、経時保管後の使用において、セラミックシートの浮きが生じ易くなる傾向にあり、歩留りが低下する傾向にある。他方、700mN/25mmよりも重いと、セラミックシートを剥離し難くなる傾向にあり、歩留が低下する傾向にある。このような観点から、剥離力は、好ましくは55mN/25mm以上200mN/25mm以下、さらに好ましくは70mN/25mm以上150mN/25mm以下、特に好ましくは120mN/25mm以上140mN/25mm以下である。
常温剥離力および加熱経時剥離力は、親水性ポリエステル樹脂の含有量を調整したり、離型層の厚みを調整したりすることによって達成することができる。例えば、親水性ポリエステル樹脂の含有量を本発明が規定する範囲とすることによって、それぞれの剥離力を上記数値範囲内とすることができる。特に、親水性ポリエステル樹脂の含有量を増加することによって剥離力は重くなる傾向にある。また、離型層の厚みを本発明における好ましい範囲とすることによって、それぞれの剥離力を上記数値範囲内にしやすくなる。特に、離型層の厚みは薄すぎても厚すぎても剥離力は重くなる傾向にある。また、塗膜を十分に乾燥・硬化することによって、剥離力は軽くなる傾向にある。
[常温残留接着率]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、後述する測定方法により求められる常温残留接着率が、80%以上であることが好ましい。常温残留接着率が上記数値範囲にあると、シリコーン成分の転写を抑制することができる。80%より低いと、セラミックシートへのシリコーン成分の転写が多くなる傾向にあり、電極印刷時のハジキや積層不良が発生しやすくなる傾向にあり、歩留りが低下する傾向にある。このような観点から、常温残留接着率は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。
[加熱残留接着率]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、後述する測定方法により求められる加熱残留接着率が、70%以上であることが好ましい。加熱残留接着率が上記数値範囲にあると、長期保管においてもシリコーン成分の転写を抑制することができる。70%より低いと、長期保管によってセラミックシートへのシリコーン成分の転写が多くなる傾向にあり、電極印刷時のハジキや積層不良が発生しやすくなる傾向にあり、歩留りが低下する傾向にある。このような観点から、加熱残留接着率は、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは87%以上、特に好ましくは89%以上である。
常温残留接着率および加熱残留接着率は、主剤と架橋剤との割合を調整することによって達成することができる。例えば、主剤に対する架橋剤の割合を増加することによって、残留接着率の値は高くなる傾向にある。また、塗膜を十分に乾燥・硬化することによって、残留接着率の値は高くなる傾向にある。
[ジヨードメタン接触角]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、上述のようなポリエステルフィルムおよび離型層の構成を採用することにより、離型層表面におけるジヨードメタン接触角を30°以上87.5°%以下とすることができる。そのため、セラミックシート製造用として好適に用いることができる。接触角が上記数値範囲にあると、セラミックシートの剥離力が適性であり、同時にセラミックスラリーの濡れ性が良好である。接触角が30°より低いと、離型フィルムの離型性が実質的に失われ、セラミックシートの剥離力が重くなってしまう。他方、87.5°より高いとセラミックスラリーの塗工時にスラリーがはじき易くなり、塗布斑や塗布端部の収縮、ピンホール等の問題が発生し、歩留りの低下を引き起こす。このような観点から、接触角は、好ましくは80°以上87°以下、さらに好ましくは85°以上87°以下である。
ジヨードメタン接触角は、親水性ポリエステル樹脂の含有量を調整したり、離型層の厚みを調整したりすることによって達成することができる。例えば、親水性ポリエステル樹脂の含有量を本発明が規定する範囲とすることによって、接触角を上記数値範囲内とすることができる。特に、親水性ポリエステル樹脂の含有量を増加することによって接触角は低くなる傾向にある。また、離型層の厚みを本発明における好ましい範囲とすることによって、接触角を上記数値範囲内にしやすくなる。特に、離型層の厚みは薄すぎても厚すぎても接触角は低くなる傾向にある。また、塗膜を十分に乾燥・硬化することによって、接触角は高くなる傾向にある。
[長手方向の伸縮率(SMD)]
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、離型フィルムの長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たすことが好ましい。セラミック層/離型フィルム複合体は、通常、100℃付近の温度下で張力がかかった状態で搬送される。したがって、温度条件として100℃を選択することにより、より実際の工程に即した状況判断が可能となる。
[式1]
0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
(式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)の左辺の値より小さい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対してフィルムの長手方向の収縮応力が大きくなり、その結果、長手方向に不均一に収縮し、セラミックシートの厚み斑を引き起こしやすくなる傾向にある。他方、長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)の右辺の値より大きい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対してフィルムの長手方向の収縮応力が小さいため、フィルムの平坦性が悪くなり、セラミックシートの厚み斑を引き起こしやすくなる傾向にある。長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)を満足する範囲にあれば、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対して、長手方向の収縮応力が適正なバランスを有し、得られるセラミックシートの長手方向の厚み斑に優れる。このような観点から、本発明の離型フィルムは、離型フィルムの長手方向に0.3MPa以上2.5MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、上記式(1)を満たす態様がさらに好ましい。
なお、長手方向の伸縮率SMD、および後記する幅方向の伸縮率STDは、下記式によって求める。式中、Mは、昇温開始前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Mは、昇温開始後100℃に到達した時点のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、伸縮率SMDおよび伸縮率STDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
伸縮率(SMD、STD)=(ΔM/M)×100(%)
ΔM=M−M
[長手方向に垂直な方向(幅方向)の伸縮率(STD)]
本発明の離型フィルムは、離型フィルムの幅方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における幅方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たすことが好ましい。ここで、温度条件として100℃を選択することにより、上記と同様に、より実際の工程に即した状況判断が可能となる。なお、伸縮率STDは、上記の式によって、熱処理前後のフィルムの幅方向の長さから求める。
[式2]
−0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
幅方向の伸縮率STDが−0.6%よりも小さい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送工程において、フィルムの幅方向の収縮が大きく、セラミックシートの厚み斑を引き起こしやすくなる傾向にある。他方、幅方向の伸縮率STDが−0.2%よりも大きい場合において、伸縮率STDが0よりも大きい(フィルムが伸長する)場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送中にフィルムの幅方向の伸長によりフィルムの平坦性が崩れ、セラミックシートの厚み斑を引き起こしやすくなる傾向にある。また、セラミック層の収縮と離型フィルムの伸長とのバランスが悪く、セラミック層が部分的に剥離して浮いてしまいやすくなる傾向にある。伸縮率STDが−0.2%を超え0%以下の場合は、セラミック層の収縮と離型フィルムの収縮とのバランスが悪く、セラミック層が離型フィルムから部分的に剥離して浮いてしまいやすくなる傾向にある。
[長手方向の熱伸長率(HSMD)および長手方向に垂直な方向(幅方向)の熱伸長率(HSTD)]
本発明の離型フィルムは、無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、同時に、無荷重下での100℃における幅方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ、長手方向の熱伸長率HSMDと幅方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
[式3]
−0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
[式4]
−0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
[式5]
HSMD>HSTD ・・・(5)
フィルムの長手方向の熱伸長率HSMDと幅方向の熱伸長率HSTDがそれぞれ上記の範囲にあり、かつ、長手方向の熱伸長率HSMDを幅方向の熱伸長率HSTDよりも大きくすることにより、セラミックスラリー塗布後にセラミック層に含まれる溶媒を加熱乾燥除去する際において、離型フィルムの長手方向の収縮と幅方向の収縮のバランスがとれ、その結果、得られる乾燥セラミック層の厚み斑を低減することができる。
なお、長手方向の熱伸長率HSMD、および幅方向の熱伸長率HSTDは、下記式によって求める。式中、Lは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Lは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、熱伸長率HSMDおよび熱伸長率HSTDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
熱伸長率(HSMD、HSTD)=(ΔL/L)×100(%)
ΔL=L−L
[最大高さ(Rmax)]
本発明の離型フィルムは、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが、それぞれ100nm以上600nm以下であることが好ましい。最大高さRmaxは、さらに好ましくは200nm以上550nm以下、特に好ましくは300nm以上500nm以下である。最大高さRmaxは、JIS規格(B0601:表面粗さ−定義および表示、B0651:触針表面粗さ測定器)に準拠し、三次元表面粗さ計を使用して求められる粗さ曲線から、基準長さを抜き取った部分の最大高さをいう。
かかる最大高さRmaxは、離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面における最大突起高さを示し、セラミックシートのピンホール欠点の指標となる。具体的には、離型層を有する側の表面の最大高さRmaxが600nmを超える場合は、当該最大高さRmaxが600nmを超える部分に形成されたのセラミック層の厚みが薄くなり、結果としてピンホール欠点が生じやすくなる。また、離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが600nmを超える場合は、セラミックスラリーを塗布、乾燥後に巻き取る際に、当該最大高さRmaxが600nmを超える部分がセラミック層に押し付けられ、セラミック層表面に凹部が形成され、当該凹部が薄くなり、結果としてピンホール欠点が生じやすくなる。また、これらによって、ピンホール欠点には至らないとしても、セラミックシートにおいて極端に薄い部分が形成されることとなり、セラミックコンデンサーの欠点となってしまう。
すなわち、本発明の離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを上記数値範囲とすることによって、表面平滑性に優れることから、得られるセラミックシートの表面凹凸形状を抑制することができ、厚み斑のより抑制されたセラミックシートを得ることができる。その結果、得られるセラミックシートを用いてセラミックコンデンサーを製造した場合には、内部電極の位置ずれをより抑制することができる。また、セラミックシートにおけるピンホール発生をより抑制することができる。さらに、セラミックシートの剥離性がより良好なものとなる。
なお、最大高さRmaxは、後述する溶融ポリマーを濾過する条件や、ポリエステルフィルムに含有される粒子の態様等を調整することにより達成することができる。
<離型フィルムの製造方法>
上記のような物性を有する離型フィルムを製造する方法につき、その好ましい一例を以下に説明する。
[未延伸ポリエステルフィルム成形工程]
先ず、未延伸ポリエステルフィルム成形工程において、前述のポリエステル原料を押し出し成形して、未延伸ポリエステルフィルムを得る。
押し出し成形にあたっては、押出し機を用いて、ダイより押し出された溶融シートを冷却ロールにて冷却固化して未延伸ポリエステルフィルムを得る。このとき、ポリマー中の粗大粒子を減らす目的において、溶融押出しに先立ち、線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10μm以上30μm以下の不織布型フィルター、好ましくは10μm以上20μm以下の不織布型フィルターを用いて、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。このように、ポリマー中の粗大粒子の個数を減らすことによって、離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを100nm以上600nm以下の数値範囲とすることができる。
さらに、かかる濾過処理の後、ダイの口金の直前で、平均目開き10μm以上50μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下のフィルターを用いて、溶融ポリマーを濾過することが、ポリエステルの熱劣化物をさらに高度に取り除くことができるという観点から好ましく、最大高さRmax値をさらに好ましい数値範囲とすることができる。
また、未延伸ポリエステルフィルムの平面性を向上させるという観点において、ダイより押し出された溶融シートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、例えば、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
[一次延伸工程]
一次延伸工程においては、上記の未延伸ポリエステルフィルム成形工程により得られた未延伸ポリエステルフィルムを、長手方向に延伸(以下、縦延伸と呼称する場合がある。)することにより、長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
このとき、一次延伸工程に先立ち、あらかじめ(Tg−10)℃以上(Tg−2)℃以下の温度条件下で予熱しておくことが、均一な厚みを有するとともに、所望の長手方向の伸縮率SMDおよび熱伸長率HSMDを有する離型フィルムを得るために好ましい。なお、ここでTgは、未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移点温度(単位:℃)を示す。
一次延伸工程においては、任意に予熱が施された未延伸ポリエステルフィルムを、(Tg+2)℃以上(Tg+40)℃以下の温度条件下で、長手方向に3.3倍以上4.0倍以下の範囲で延伸することが好ましい。延伸倍率が3.3倍より小さい場合は、長手方向の熱伸長率HSMDがプラス値となる傾向にあり、すなわちフィルムが伸長する傾向にある。他方、延伸倍率が4.0倍より大きい場合は、長手方向の伸縮率SMDが小さくなりすぎる傾向にある。また、長手方向の熱伸長率HSMDが小さくなる傾向にある。延伸倍率を3.3倍以上4.0倍以下とすることは、長手方向の伸縮率SMDおよび熱伸長率HSMDを、所望の数値範囲とするためにも好ましい。
[インライン塗布工程]
本発明においては、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、オフラインにて塗液を塗布することにより離型層を形成しても良いが、インライン塗布工程、すなわち長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、インラインにて、離型層を形成するための組成物(以下、塗液と呼称する場合がある。)を塗布することにより、塗膜を有するポリエステルフィルムを得ることが好ましい。
インライン塗布工程において用いられる塗液としては、前述の水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を含む水性塗液を用いることが好ましい。
また、塗布方法としては、特に限定されるものではなく、水性エマルションの塗布方法として既知の任意の塗布技法を用いることができる。例えば、ローラーコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、または、スロットコーティング等の方法により、一次延伸工程で得られた長手方向一軸延伸ポリエステルフィルム上に塗液を塗布することができる。
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムを製造するにあたっては、上述のように、塗液をインラインで塗布することが好ましい。インラインであると、塗液をインラインで塗布し、その後に二軸目の延伸がなされ、さらに熱固定がなされることで離型フィルムに対する熱処理が完了する。そして、その後はオフラインにて熱がかからない。このため、離型フィルムの製造の目標値として定めた物性、とりわけ、長手方向の伸縮率SMD、幅方向の伸縮率STDや、長手方向の熱伸長率HSMD、幅方向の伸縮率HSTDを、そのまま維持した状態で、実際の使用に用いることができる。また、離型層とポリエステルフィルムとの密着性をより高くすることができる。また、離型層が任意に含有する界面活性剤の種類、および添加量を調整しやすくなり、剥離帯電防止性の向上効果を高くすることができる。
一方、一度製膜したポリエステルフィルムを使用して、オフラインで離型層を形成するための組成物を塗布する方法では、塗液に含まれる溶媒を乾燥除去し、離型層となる樹脂を硬化させる工程を経る必要がある。離型層となる樹脂を硬化する工程では、150℃付近の温度をかける必要があるため、オフラインで離型層を形成した離型フィルムは、離型フィルムの長手方向および幅方向の両者において、伸縮率が大きくなる傾向にあり、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送工程においてフィルムが伸びやすくなる傾向にある。
なお、インラインにて塗液を塗布して塗膜を得た後には、塗布後の予熱、二軸目の延伸、および熱固定の各工程で加えられる熱のみにより、塗膜から溶媒を乾燥除去し、塗液に含まれる樹脂を硬化させ、そして、離型層となる樹脂をポリエステルフィルムに密着させることができる。したがって、塗膜を乾燥硬化させる工程を特別に設ける必要がなく、このため、寸法安定性に優れた離型フィルムが得られるとともに、離型フィルムを得るための工程を煩雑にすることもない。
塗液の固形分濃度は、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、1.5質量%以上10質量%以下が特に好ましい。塗液の固形分濃度が0.5質量%未満である場合は、ポリエステルフィルム表面に塗液を塗布する際に、塗液がポリエステルフィルム表面ではじかれてしまい、均一に塗布できない傾向にある。他方、30質量%を超える場合は、得られる離型層に曇りが生じたり、また、塗剤がゲル化しやすくなったり、コーティングの費用がかかるわりには効果が低くなるという問題が生じる場合がある。
[二次延伸工程]
二次延伸工程においては、上記工程により得られたポリエステルフィルムを、幅方向に延伸(以下、横延伸と呼称する場合がある。)することにより、二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
このとき、二次延伸工程に先立ち、あらかじめ(Tg+10)℃以上(Tg+30)℃以下の温度条件下で補助加熱を施すと、塗液に含まれる溶媒を十分に乾燥することができ、その後に行う二次延伸工程において均一に延伸を行うことができるため好ましい。
二次延伸工程においては、(Tg+10)℃以上(Tg+80)℃以下、好ましくは補助加熱温度以上(Tg+70)℃以下の温度条件下で、幅方向に3.0倍以上5.0倍以下の範囲で延伸する。
なお、本発明における一次延伸工程の延伸倍率(以下、縦延伸倍率と呼称する場合がある。)と二次延伸工程における延伸倍率(以下、横延伸倍率と呼称する場合がある。)との関係は、縦延伸倍率≦横延伸倍率であることが好ましい。縦延伸倍率≦横延伸倍率の関係にあれば、長手方向の伸縮率SMD、幅方向伸縮率STD、および、長手方向の熱伸長率HSMD、幅方向の熱伸長率HSTDを、所望の値に制御することが容易となる。
[熱固定工程]
熱固定工程においては、二次延伸工程によって得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを、熱固定することにより、離型フィルムを得る。
熱固定の温度条件は、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの種類により異なるが、一般に、(Tg+70)℃以上(Tm)℃以下の温度範囲にて行うことが好ましい。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合は、180℃以上235℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。また、ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートである場合には、185℃以上240℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。この温度範囲で熱固定することにより、所望の伸縮率SMDおよびSTD、熱伸長率HSMDおよびHSTDを得ることができる。なお、ここでTmは、ポリエステルの融点(単位:℃)を示す。
また、熱固定は1ゾーンのみで実施するのでなく、複数のゾーンに分けて段階的に実施することが望ましく、好ましくは3ゾーン以上として温度を制御して行うことが望ましい。例えば、熱固定を3ゾーンで実施する場合には、第1ゾーンは180℃以上210℃以下、第2ゾーンは第1ゾーンよりも高く、3ゾーンの中で最大の温度となるように設定する。そして、第3ゾーンは第2ゾーンよりも低い温度とし、180℃以上200℃以下に設定することが好ましい。このように第2ゾーンを最高温度とし、第3ゾーンをそれよりも低い温度として熱固定することにより、得られる離型フィルムの平面性を良好に保ち、セラミックシートの厚み斑を低減することができる。
なお、熱固定時間は、特に限定されるものではなく、例えば1秒以上60秒以下程度行うことが好ましい。
また、離型フィルムの幅方向の熱伸長率HSTDを所望の値とするために、熱固定工程の最後のゾーンにおいて、レール幅を2%以上5%以下程度縮めてフィルムを弛緩処理することが好ましい。
[冷却工程](任意工程)
本発明においては、熱固定工程の後に、任意に冷却工程を設けてもよい。冷却工程を設けることにより、得られるフィルムの平面性を良好に保ち、セラミックシートの厚み斑を低減させることができる。
冷却工程においては、冷却温度を(Tg−30)℃以上(Tg+20)℃以下の範囲として実施することが好ましく、上記の熱固定工程と同様に、複数のゾーンに分けて行うことが好ましい。冷却温度が上記数値範囲よりも低い場合は、熱伸長率HSMD、HSTDがともに小さくなりすぎる傾向にある。他方、冷却温度が上記数値範囲より高い場合は、フィルムの長手方向の中心線付近では物性が各方向に均等であっても、長手方向の側縁部では斜め配向が強くなる現象(ボーイング)を生じるため好ましくない。なお、長手方向の側縁部が斜め配向となる現象は、上記の熱固定温度の好適範囲の下限側でも起こりうるが、その程度は比較的小さい。
<離型フィルムの用途>
本発明によって得られる離型フィルムは、セラミックシート製造の際に離型フィルムに求められる性能を十分に満足していることから、セラミックシート製造用のキャリアフィルムとして好適に用いることができる。本発明によって得られた離型フィルムを用いてセラミックシートを製造すると、離型フィルムとセラミックシートとの剥離力が適性であるため、セラミックシート製造工程においてセラミックシートの浮きが生じにくい。また、離型層が均質であるため、セラミックシートの塗布異常、剥離異常が生じにくい。これらによって、薄膜のセラミックシートが精度よく得られ、また、得られた薄膜のセラミックシートは、小型化・大容量化に伴って内部電極の多層化が求められている積層セラミックコンデンサーに好適に用いることができる。
なお、セラミックシートの製造にあたっては、用意したセラミックスラリーを、本発明のセラミックシート製造用離型フィルムの離型層表面に塗布し、セラミックスラリーに含まれる溶媒を乾燥除去すればよい。セラミックスラリーの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の塗布方法を用いることができる。例えば、セラミック粉体とバインダー剤等を溶媒に分散させたセラミックスラリーを、リバースロール法により塗布し、加熱乾燥により溶媒を除去する方法を用いることができる。用いるバインダー剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール等を用いることができる。また、用いる溶媒としても特に限定されず、例えば、エタノール、トルエン等を用いることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法によって各測定・評価を実施した。
(1)塗膜硬化性評価(スミア評価)
離型フィルム表面を清浄にした人差し指にて、軽く擦り塗膜の白化状態を確認し、硬化性の評価を行なった。
○:白化が認められず、塗膜が硬化している。
×:白化が認められ、塗膜の硬化が不完全である。
(2)セラミックシート剥離力測定
幅450mm、長さ2000mの離型フィルムのロールを準備した。かかる離型フィルムの離型層表面に、下記組成からなるセラミックスラリーを、ダイコーターを用いて、60m/分のフィルム搬送速度で塗布し、乾燥後の厚みが5μmとなるセラミック層を形成し、長さ1900mのセラミック層/離型フィルム複合体を得て、ロール状に巻き取った。その後、離型フィルムからセラミック層を剥離することによりセラミックシートを得た。かかる剥離における剥離力を測定し、セラミックシート剥離力(単位:mN/25mm)とした。ここで、剥離力は任意の3ヶ所の平均値とし、剥離角度180°、剥離速度300mm/分とした。
[セラミックスラリー組成]
・チタン酸バリウム(富士チタン社製、平均粒径:0.7μm):100部
・ポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックBM−S):30部
・可塑剤(フタール酸ジオクチル):5部
・トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4):200部
(3)常温剥離力測定
10cm×20cmの離型フィルムサンプルを切り出し、この離型層表面に25mm幅の日東電工社製31B粘着テープ(ポリエステル粘着テープ)を貼り、2kg×45mm幅の圧着ローラーで1往復荷重をかけた。次いで、テープを貼り合せたサンプルを25mm幅×150mm長さに切り出し、室温にて24時間保管した。保管後のサンプルの31B粘着テープ面側を50mm幅×125mmの長さのアルミ板に貼りつけて固定し、それを引っ張り試験機に固定し、離型フィルムを180゜の角度で剥離速度300mm/分にて剥離し、剥離力を測定した。この測定を3回行い、その平均値を以って常温剥離力(単位:mN/25mm)とした。
(4)加熱経時剥離力測定
10cm×20cmの離型フィルムサンプルを切り出し、この離型層表面に25mm幅の日東電工社製31B粘着テープ(ポリエステル粘着テープ)を貼り、2kg×45mm幅の圧着ローラーで1往復荷重をかけた。テープを貼り合せたサンプルを25mm幅×150mm長さに切り出し、70℃の乾燥機中に24時間放置し、取り出した後、23℃の室内に1時間放置した。放置後のサンプルの31B粘着テープ面側を50mm幅×125mmの長さのアルミ板に貼りつけて固定し、それを引っ張り試験機に固定し、離型フィルムを180゜の角度で剥離速度300mm/分にて剥離し、剥離力を測定した。この測定を3回行い、その平均値を以って加熱経時剥離力(単位:mN/25mm)とした。
(5)常温残留接着率
ポリエステル粘着テープ(日東電工社製31B粘着テープ)を、JIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に貼り付け、剥離する際の剥離力(剥離角度180°、剥離速度300mm/分)を測定し、基礎接着力(f0)とした。また、前記ポリエステル粘着テープをサンプルフィルムの離型層表面に2kgの圧着ローラーで圧着し、30秒間放置した後、粘着テープを剥がし、次いで、剥がした粘着テープを上記のステンレス板に貼り付け、上記と同様にして剥離力を測定し、残留接着力(f)とした。得られた基礎接着力(f0)と残留接着力(f)より下記式を用いて残留接着率(単位:%)を求めた。なお、ステンレス板は、ポリエステル粘着テープを貼り付ける前に、トルエン等を用いて表面を十分に洗浄して用いた。
残留接着率(%)=(f/f0)×100
(6)加熱残留接着率
ポリエステル粘着テープ(日東電工社製31B粘着テープ)を、JIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に貼り付け、剥離する際の剥離力(剥離角度180°、剥離速度300mm/分)を測定し、基礎接着力(f0)とした。また、前記ポリエステル粘着テープをサンプルフィルムの離型層表面に2kgの圧着ローラーで圧着し、それを70℃の乾燥機中に24時間放置し、23℃の室内に1時間放置した後、粘着テープを剥がした。次いで、剥がした粘着テープを上記のステンレス板に貼り付け、上記と同様にして剥離力を測定し、残留接着力(f)とした。得られた基礎接着力(f0)と残留接着力(f)より上記式を用いて残留接着率を求めた。
(7)接触角測定
ジヨードメタンを離型フィルムにおける離型層表面に滴下し、その接触角を測定した。滴下量は3.5μLとし、滴下後30秒経過後の接触角を測定した。かかる測定を任意の5点について実施し、それらの平均値をジヨードメタンの接触角とした。
(8)最大高さ(Rmax)
JIS規格(B0601:表面粗さ−定義および表示、B0651:触針表面粗さ測定器)に準拠し、3次元表面粗さ計(小坂研究所社製、商品名:SE−3AK)により、倍率:2万倍、走査ピッチ:2μm、走査長:1mm、走査本数:100本、カットオフ:0.25mmの条件にて、その面積の最大高さを求め、これを10点測定した結果の平均値をRmax(単位:nm)とした。
(9)荷重下の伸縮率(SMD、STD
TMA(セイコーインスツルメンツ株式会社製、商品名:SS6000)を用い、湿度:50%RH下において、サンプル幅:4mm、チャック間:20mmにて、長手方向に、単位面積あたりそれぞれ0.3MPa、1.0MPa、2.5MPaの荷重をかけて、開始温度:30℃から、昇温速度:10℃/分で昇温させた。100℃に達したときのフィルムの伸縮挙動から、下記式にて0.3MPa、1.0MPa、2.5MPaの各荷重条件下における伸縮率(SMD)(単位:%)を求めた。同様に、幅方向には0.01MPaの荷重をかけて測定を実施し、かかる荷重条件下における伸縮率(STD)(単位:%)を求めた。なお、伸縮率SMD、STDは、各々10枚の試料について採取し、その平均値を求めた。
伸縮率(SMD、STD)=(ΔM/M)×100 (%)
ΔM=M−M
上記式中、Mは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Mは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、伸縮率SMDおよび伸縮率STDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
(10)無荷重下の熱伸長率(HSMD、HSTD
温度100℃に設定されたオーブン中に、予め正確な長さを測定した長さ約30cm四方のフィルムサンプルを懸垂し、無荷重下に30分間保持処理した。30分経過後、オーブンからフィルムサンプルを取り出し、室温に戻した後に、その寸法変化を計測し、下記式にて熱伸長率(HSMD、HSTD)(単位:%)を求めた。なお、伸縮率HSMD、HSTDは、10枚の試料について各々採取し、その平均値を求めた。
熱伸長率(HSMD、HSTD)=(ΔL/L)×100 (%)
ΔL=L−L
上記式中、Lは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Lは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、熱伸長率HSMDおよび熱伸長率HSTDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
<実施例1>
[ポリエステルの製造]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部との混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩を、得られるポリエステル中のマンガンの元素量が80ppmとなるように添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモンを0.03部添加した。引き続き、系内に混入した水を充分留出させた後、内添フィラー(易滑剤)として、平均粒径0.6μmの合成炭酸カルシウム粒子を、得られるポリエステルの質量に対して0.2質量%になるように添加し、充分に撹拌した。次いで、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行うことにより、固有粘度0.65(35℃、オルトクロロフェノール中)のポリエチレンテレフタレート組成物を得た。
[塗液の調製]
86.65部の脱イオン水に、攪拌下において、主剤として8.45部のシリコーンエマルション400E(Wacker Silicones社製、シリコーン:ビニル基を有するメチルポリシロキサン、架橋剤が添加されている場合は、白金触媒と早熟な反応を防止するための禁止剤が併用されている、固形分濃度50質量%)、0.85部の架橋剤V72(Wacker Silicones社製、メチル水素ポリシロキサンのエマルジョンであり、メチルシロキサンの中で二重結合と反応する、固形分濃度50質量%)、親水性ポリエステル樹脂として3.60部の水溶性ポリエステル樹脂水溶液(互応化学工業株式会社製、プラスコートZ561、固形分濃度25質量%)、0.3部のシランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名:KBM−403)、および、ノニオン系の界面活性剤として0.15部のポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン404)、を添加することにより塗液を得た。なお、塗液の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:70.5質量%
架橋剤:7.0質量%
親水性ポリエステル樹脂:15.0質量%
シランカップリング剤:5.0質量%
界面活性剤:2.5質量%
[未延伸ポリエステルフィルム成形工程]
上記で得られたポリエチレンテレフタレート組成物を、ポリエチレンテレフタレート組成物の水分率が0.05質量%以下となるまで、170℃で5時間乾燥した。引き続き、乾燥されたポリエチレンテレフタレート組成物を押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターを用いて高精度ろ過した後、ダイより押し出して溶融シートとし、かかる溶融シートを静電密着法にて冷却ドラムに接触急冷させることにより、厚さ450μmの未延伸ポリエステルフィルムを得た。
[一次延伸工程]
得られた未延伸ポリエステルフィルムを、75℃で予熱し、引き続き、低速・高速のロール間にてフィルム温度105℃で長手方向に3.6倍に延伸し、その後、急冷することにより長手方向一軸延伸ポリエスエルフィルムを得た。
[インライン塗布工程]
次いで、得られた長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムに、上記で調製した塗液を、得られる離型フィルムにおける離型層の厚みが40nmとなるよう塗布することにより、塗膜を有するポリエステルフィルムを得た。なお、塗液の塗布は、未延伸ポリエステルフィルム成形工程において冷却ドラムに接触しなかった面に施した。
[二次延伸工程]
続いて、得られた塗膜を有するポリエステルフィルムをステンターに供給し、105℃、115℃の2ゾーンにおいて、それぞれ2秒間ずつ予備加熱した後、120℃、130℃、145℃、155℃の4ゾーンにおいて、それぞれ2秒間ずつ、合計で横延伸倍率が4.1倍となるように均一に延伸し、二軸延伸ポリエステルフィルムとした。
[熱固定工程]
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムにつき、210℃、225℃、195℃の3ゾーンにおいて、それぞれ2秒間、合計6秒間の熱固定を実施し、最後の195℃の熱固定ゾーンにおいては、幅方向に2.5%の弛緩処理を実施することにより、全厚み31μmの離型フィルムを得た。得られた離型フィルムを用いて、各種の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1で得られた離型フィルムにおける離型層は、顕微鏡により海島状でないことが確認された。また、剥離力測定によって得られたチャートから、剥離力のバラツキが少ないことが確認された。また、接触角測定においてもバラツキが少ないものであった。
Figure 0005319328
<実施例2>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
84.85部の脱イオン水に、攪拌下において、主剤として6.82部のシリコーンエマルション400E、0.68部の架橋剤V72、親水性ポリエステル樹脂として7.20部の水溶性ポリエステル樹脂水溶液Z561、0.3部のシランカップリング剤KBM−403、および、0.15部の界面活性剤エマルゲン404、を添加することにより塗液を得た。なお、塗液の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:56.8質量%
架橋剤:5.7質量%
親水性ポリエステル樹脂:30.0質量%
シランカップリング剤:5.0質量%
界面活性剤:2.5質量%
実施例2で得られた離型フィルムにおける離型層は、顕微鏡により海島状でないことが確認された。また、剥離力測定によって得られたチャートから、剥離力のバラツキが少ないことが確認された。また、接触角測定においてもバラツキが少ないものであった。
<比較例1>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
親水性ポリエステルとしての水溶性ポリエステル樹脂水溶液の添加は行なわず、88.45部の脱イオン水に、攪拌下において、主剤として10.09部のシリコーンエマルション400E、1.01部の架橋剤V72、0.3部のシランカップリング剤KBM−403、および、0.15部の界面活性剤エマルゲン404、を添加することにより塗液を得た。なお、塗液の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:84.1質量%
架橋剤:8.4質量%
親水性ポリエステル樹脂:0.0質量%
シランカップリング剤:5.0質量%
界面活性剤:2.5質量%

Claims (4)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層が、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤、ハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤、離型層の質量を基準として10質量%以上80質量%以下の親水性ポリエステル樹脂を構成成分として含む塗膜を硬化してなる離型層であるセラミックシート製造用離型フィルム。
  2. 前記離型フィルムの長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たし、
    前記離型フィルムの長手方向に垂直な方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における長手方向に垂直な方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たし、
    前記離型フィルムの無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、
    前記離型フィルムの無荷重下での100℃における長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ
    前記長手方向の熱伸長率HSMDと前記長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たす
    請求項1に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
    [式1]
    0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
    (式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
    [式2]
    −0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
    [式3]
    −0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
    [式4]
    −0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
    [式5]
    HSMD>HSTD ・・・(5)
  3. ビニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる主剤およびハイドロジェン基含有ポリジメチルシロキサンからなる架橋剤が水性エマルションである請求項1または2に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
  4. 離型層が、ポリエステルフィルムの製造工程中に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
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