JP5317983B2 - 細胞観察をともなった細胞液捕獲と成分分析法および細胞液捕獲・分析装置 - Google Patents

細胞観察をともなった細胞液捕獲と成分分析法および細胞液捕獲・分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、細胞観察をともなったリアルタイムでの細胞内溶液捕獲と成分分析法および細胞液捕獲・分析装置に関するものである。
細胞内での分子メカニズムは生命現象を引き起こす本質的なものであり、生命科学が解明すべき永遠の課題である。しかし、現在までに、生きた細胞の動的変化を直接観察しながら、リアルタイムにないし経時的に当該細胞における膨大な分子群やイオン群を検出し、同定し、カギとなる分子を探索し、ひいては高速にその分子メカニズムを形態などの観察現象と関係づけて解明する分析手法はなかった。もしそのような手法や装置が開発されれば、生命現象のみならず病態や病態を検知するマーカー分子あるいは医薬品となりうる候補分子の発見も今までとは格段に違った短い時間で行えることになり、人類の恩恵は計り知れない。
現在まで、一般にこの様な分析では、分析法の感度が低いため、ある設定された状態に細胞を置き、刺激などの外部因子などの条件設定前後の実に多数の細胞を集めて、すり潰し、その後手間と時間のかかるゲル電気泳動、免疫現象など生体親和性を用いた分子検出、標識化合物を使った検出法など様々な分子解析を行い、その結果は多くの細胞の平均値の域を出ないデータに基づき、生命体の新分子の発見や分子メカニズムを推測している。いわば平均値の科学である。しかし細胞の応答は同じ環境でも同じではないことを我々は長年の細胞のビデオ顕微鏡観察で認識している。
図1の写真200は、アレルギー反応を担うラット肥満細胞の、カルシウムイオノフォアで刺激後の顆粒放出数の経時変化を捉えたものである。この様な一連のビデオ画像から顆粒の放出(破裂)だけを、当該細胞を顕微鏡観察したビデオ画像の連続時間差像解析を行って捉えた一例が写真201であり、右はその結果、同じ培養皿で培養して生育条件がまったく同じ細胞に関して、顕微視野内での異なった細胞での顆粒放出数の時間変化を示す。この様に、同じ環境の、同じ刺激の中にいる細胞でも、すぐに多くの顆粒を放出するものもあれば、なかなか顆粒を放出しないものも存在する。つまり細胞1ヶ1ヶには個性があると言える。その様な真実は細胞をビデオ顕微鏡で観察記録し、解析して初めて分かった事であった。
この様に細胞の挙動を良く観察すると、細胞の応答や動態には、細胞毎に大きな違いがあり、実に様々なバリエーションを見せる。この原因には、同じに見えて内容成分などの違いで少しずつ幅を持った役割を担う細胞があるのか、あるいは、細胞毎に異なる成熟度や当該細胞の細胞周期の中での存在位置の違い、微細環境の微小域での違いなどが考えられるが、そうであれば、今まで沢山の細胞の集合で分析してきた平均値の科学から引き出された結果の確かさを再考する必要がある。真の細胞内分子動態と分子メカニズムを調べるには、1つの細胞の挙動観察と同時に1つの細胞内分子と細胞外放出分子の動態解析ができることが理想であり、それが生命の分子メカニズム解析には必要であると考えられる。それは微小域で起こるすべての現象において言及し得ることであるが、特に有機体である細胞の合目的的挙動は、数十億年の進化をとげてできあがったシステムであるゆえに、興味深く、またその解明された成果の人類に与える影響も、成果の人類の健康・医療などへの応用の幅も大きい。いわば、細胞をリアルタイムに観察して、1細胞の挙動を観察しながら、分子動態を関係づけて解析する方法の開発は、世界の生命科学の解析手法をパラダイムシフトし、その解析スピードを大きく加速させる。いわばこれは今まで誰もが願った生命科学の夢である。
一方、近年ナノテクノロジーの進展とともに、ミクロン、サブミクロン域の微小域の物質の変化を観察しながら、その分子変化をその観察実態とともに捉えることも必要になってきている。ナノテクノロジーに限らず、化学、材料化学などあらゆる微小域での分子変化を追跡する有益な手法としても有用で、その手法確立が望まれているものである。本説明では、微小域空間体として、最も複雑で、生命体という有機体であり、まだ不明なことの多い細胞を、そのもっとも適用の難しい例として取り上げ、本発明を説明するが、本発明の適用は、「細胞」を観察下にある「微小域空間」に置き換えても、まったく同じである。
本発明の適用範囲は広く、一般的に言えば、液体が中心組成である試料はすべて対象となり、その微小域空間内の変化を可視化しながら、その中で変動する分子群を採取し直接質量分析法やICP質量分析などの高感度分子・原子検出法で検出し、その分子・原子組成の変化を分析し、分子・原子のうごめきを探索し、イオンや分子レベルのメカニズムを考察することにおいて、世界でも今まで達成されなかった、従来の方法より高速で直接的な手段を与えることを特徴としている。
今までに細胞内分子の解析に質量分析を利用されたものには、例えば、細胞集団のタンパク質成分の分析を行ったものがある(特許文献1)。
他には、複数のアフィニティー・マイクロカラムで生体液中の複数の生体分子を特異的に抽出し、それを質量分析計で分析するシステムがある(特許文献2)。
特表2002−537561 特表2005−503537
本発明は、細胞の応答は同じではないにもかかわらず、今まで殆ど多細胞の集団系でしか達成されていなかった細胞内分子機構解析手段を1細胞で細胞の個性も含めその挙動を見ながら、リアルタイムで、1細胞レベルであるいはその細胞内小器官までも成分を捕捉し、その分子解析と定量を可能とする高感度で高速かつ直接的で高い信頼性のある手法を実現することを課題としている。また正常な生体組織中の癌組織の様に細胞集合体の1つである生体組織の中の形態や挙動の異なる細胞あるいは細胞間隙でも、その細胞単位での成分を直接的に取り出し、形態の微視的情報とともに分子・原子構成を検出することを可能とし、かつ、病態あるいは異常あるいは何らかの物理的・化学的・生物学的処理を施したものと、その(健常あるいは正常あるいは処理なしの様に)比較状態間で、分子・原子スペクトルを比較し、迅速かつ直接的にその成分の比較状態間での増減・消滅・発現を評価し、原子・分子レベルでのメカニズム解明を支援する分析手段を提供することにある。しかも、細胞は生き物であり、その形態学的挙動と細胞内分子動態は連動することが多い。従って、生命現象のイオンや分子を対象としたメカニズムを解明するには、上記の分析手段が、細胞の形態観察と同時に行われることが望ましい。
また、株化した培養細胞や生体組織中の細胞は、外界からの様々な因子に応答しており、その機能発現のメカニズム解明には、外界から与えられた因子と細胞内分子変動の関連を調べる方法を提供する事も必要な事である。本発明は、個性のある細胞の少なくとも1つ1つについて、その挙動分析と分子動態分析および分子探索分析を同時に可能とし、生命現象の分子メカニズムを迅速かつ直接的に解明する手段を与えることにある。また、近年ナノテクノロジーの進展とともに、200μm以下の微小域の物質の変化を観察しながら、その分子変化をその観察実態とともに捉えることも必要になってきており、その微小域の変化の可視化と分子機構などの解明をもたらす手段を与えることにある。
さらに現在、各種疾患について網羅的な遺伝子解析が進められており、疾患と関連する多くの遺伝子およびその発現産物であるタンパク質等について解明されてきているが、疾患の原因はそのような遺伝子、タンパク質レベルの解析のみでは、必ずしも十分な具体的な対策の提案が出来るものではない。深く明快に疾患原因について解明できる可能性を高めるために、疾患と関連する細胞内の低分子動態の解析も可能にすることで、人間の組織でいえば、指令部である遺伝子から、執行部であるRNAやタンパク質など、そして営業のフロントで働いている実に様々な現場での働き手である低分子群のトータルとしての解析法が確立され、はじめて生命現象の全体像が理解される。
例えば、iPS万能細胞のように、再生医療をめぐり、細胞分化因子の探索は非常に重要であるが、多くは低分子であるその因子の網羅的解析法は、従来は多細胞集団系でしか達成できていなかった。しかし分化する細胞は、全部ではなく、細胞集団の中でも一部であることを我々は顕微観察で知っており、本発明は、その分化の進行度を形態から観察しながら、形態学的に見て分化した細胞のみを選択的にその場で分子分析できる手段をはじめて与えることになる。
また、飲食品分野では、ワイン、日本酒、ビール、ウイスキー、焼酎等のアルコール性飲料、醤油、味噌などの醗酵食品、漬物、キムチ、ピクルスなどの野菜果実加工品、ヨーグルト、チーズ等の酪農食品には酵母、乳酸菌等の微生物細胞についても遺伝子レベルにおける解析、研究等が進んでいるが、風味、香り等微妙な品質を研究したい場合には、それらの遺伝子解析やタンパク質の分析のみでは限度があり、酵母、乳酸菌等の醗酵と関連する微生物の細胞内の低分子動態の解析手段の出現が望まれており、その結果と遺伝子解析やタンパク質の解析結果との統合が望まれている。上記のように、醗酵食品工業においては微生物の研究のみならず、醗酵過程における風味、香り等の微妙な品質管理のためにも、培養液等の微量サンプリングによる低分子動態の解析手段が望まれている。
また植物研究については、一般的な植物生理学・発生学等の各種の研究分野において、動物細胞と比較して一般的に未解明事象が多く、植物の分化、形、色、香をつかさどる分子機構等の解明に低分子の動態の研究が望まれている。また近年、食糧事情等の関係から、遺伝子組み換え植物の需要は高まっており、生態的リスク評価のみならず、遺伝子組み換えによる安全性評価は非常に重要な課題であり、細胞内外の低分子動態の変化を追跡する手段の出現が望まれている。
さらに一般的化学品製造産業等において、例えば、有機半導体、有機導電体、有機光学材料のように高純度が要求される製品の製造過程において、または食品添加物等の健康面での品質保証が重要な製品の製造過程において、微量の因子が、物理化学的性能または安全性等の要求品質に影響を与えるような製造工程では、そのような微量因子のモニタリング、制御など、製造管理、品質管理のために、微小域での迅速な分子動態の解析が望まれている。
しかし、上記の課題を実現するには、超微量である細胞1ヶ内あるいは細胞内小器官1ヶ内の物質の検出を可能とすることがまず重要である。質量分析計の現在の検出感度は、分子探索を行うときに良く使用される4重極−飛行時間型ハイブリッド質量分析計(通称Q−TOF)やフーリエ変換型質量分析計(通称FT/MS)が使用される。その検出限界は最高でも1μmole/L(1μM)程度であり、細胞1ヶの体積は10μmの直径で約1ピコリッター(以下1pLと表記)であり、検出できる分子数で言うと一種類の分子当たり100万ヶ程度存在すると検出できることになる。しかし、いままで、MALDIイオン化法では細胞1ヶの分子検出例があるが、そのピークはイオン化しやすい分子ピークのみが検出され、細胞内に含まれるはずの分子数に比べ圧倒的に数が少なく網羅的分子検出法とはなりえない事がわかった。
またMALDI−TOF法は、最近TOF−TOF法やイオントラップ−TOF法の装置が市販されるようになり簡易MS/MS分析が可能となってきたが、分子同定力に乏しく、定量性に乏しく、また細胞1ヶにマトリックスを添加して、そのマトリックスが結晶化するプロセスでどこに細胞が存在しているか分からず、ましてや、そのサンプルプレートを質量分析計内にセットしてテレビカメラで、ミクロンオーダーで細胞1ヶの場所をレーザーで狙い撃ちするのも容易ではなく、また、細胞のある状態を見ながら、その瞬間と思っても、その後細胞を取り出し、MALDIサンプルプレートに乗せている操作の間にどんどん細胞の状態が変わり、最後に飽和濃度に近い有機分子溶液であるマトリックス添加で、何が起こっているか、含まれている細胞成分が生きた細胞内に存在した時からどう変化しているのかは誰もわからない。
分子同定に必要なMS/MS分析などが可能な前記質量分析計に分子をイオン化導入することが出来、かつMS/MS分析のように、分子一種づつ選び逐次分子を壊して(コリジョンセルに導入して)そのフラグメントスペクトルを取得するには、すべての分子種を分析する間、試料内分子のイオン化を継続させている必要がある。しかし、細胞1ヶの体積わずか1ピコリッターでは、従来のエレクトロスプレーイオン化法では、あっと言う間に試料は無くなり、少なくとも数分は欲しい試料イオン化持続時間が確保できない。
上記の課題を解決するために本発明では以下の構成を有する。本発明の一つの特徴によれば、細胞の動態を観察しながら、前記細胞を構成し又は前記細胞から出された細胞成分を採取してリアルタイムに質量分析する方法であって、
顕微鏡を用いて細胞の動態を観察することに並行して、前記細胞の特定の領域に対して、先端部が前記特定の領域の大きさに対応する口径であるナノスプレーイオン化細管を挿入するステップと、
前記特定の領域内の細胞成分を前記チップの先端部から採取して前記先端部に留める採取ステップと、
イオン化補助溶媒を前記ナノスプレーイオン化細管の後端側から導入するステップと、
質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加することにより、前記細胞成分をナノスプレーイオン化して前記質量分析装置に試料として導入するステップと、
前記質量分析装置において試料として導入された前記細胞成分を質量分析するステップとを備えた方法が提供される。
本発明の別の特徴によれば、細胞の動態を観察しながら、前記細胞を構成し又は前記細胞から出された細胞成分を採取してリアルタイムに質量分析するシステムであって、
質量分析の対象となる細胞成分を含む細胞の動態を観察するための顕微鏡と、
前記細胞の細胞成分を採取するために前記細胞の大きさ以下の口径である先端部とイオン化補助溶媒を導入するための後端部とを有するナノスプレーイオン化細管であって、質量分析の対象となる前記細胞成分をイオン化することが可能なナノスプレーイオン化細管と、
試料導入口を有し、試料として導入されたイオン化後の細胞成分を質量分析する質量分析装置と、
前記質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加する電場印加部とを備え、
顕微鏡で観察している細胞内に侵入して特定の領域の細胞成分を前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取すると共に前記ナノスプレーイオン化細管の後端側からイオン化補助溶媒を導入した後に、前記質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加することにより、前記質量分析装置に前記細胞成分をイオン化して試料として導入して質量分析するシステムが提供される。
前記方法及びシステムの好ましい態様では、ナノスプレーイオン化細管の構造として、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部は、0.1から100μmの口径である。また、前記ナノスプレーイオン化細管の前記先端部の内面は、分子特異的な捕捉を行うように分子親和基を結合させた構造になっている。また、前記ナノスプレーイオン化細管の内面又は外面の少なくとも一方は、導電性であり、前記ナノスプレーイオン化細管は前記電場を印加する際に電極として機能し、又は、前記ナノスプレーイオン化細管の後端側から前記ナノスプレーイオン化細管の先端部へ延びる導電性細線を備え、前記電場を印加する際に前記導電性細線は電極として機能する。また、脂溶性を内部に持つ細胞膜を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、疎水性であり、親水性素材で形成された細胞膜や細胞壁を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、親水性である。
別の好ましい態様では、細胞成分の採取は、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に近づくまでの間に、細胞培養液を含む周辺成分が前記先端部に混入しないように前記ナノスプレーイオン化細管内部の空隙ガス圧を外側から加圧し、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に到達した後に、前記加圧を解除し、前記先端部から質量分析の対象となる細胞成分が吸引される。また、液体含有組織に形成された穴から細胞内又は組織内成分を漏出させることにより質量分析の対象となる細胞成分は前記先端部から採取される。
さらに別の好ましい態様では、前記イオン化補助溶媒は、揮発性酸又は塩基を含有する混合溶媒であり、前記イオン化補助溶媒の導入の後に、前記ナノスプレーイオン化細管に対する振動、遠心力又は圧力の少なくとも1つを用いて、前記イオン化補助溶媒を前記先端部に充満させる。
さらに別の好ましい態様では、前記方法及びシステムは、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部の3次元位置を制御するマニュピレータであって、前記ナノスプレーイオン化細管の後端側に取り付けられた状態で観察対象の細胞と前記質量分析装置との間に配置されるマニュピレータを用いて実現される。前記マニュピレータは、前記細胞成分の採取時には、観察している細胞の質量分析の対象となる採取位置まで前記先端部を誘導し、前記質量分析装置への前記細胞成分の導入時には、前記質量分析装置の試料導入口へ前記先端部を誘導する。
さらに別の好ましい態様では、細胞成分の採取は、空間的位置が異なる複数の細胞成分、細胞の経時的変化ごとの細胞成分、又は細胞に対して複数の異なる処理を行ったときの細胞の処理前と処理後の細胞成分を、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取し、質量分析は、空間的に、経時的に、又は処理前後で異なる複数の細胞成分の各々の質量スペクトルを導出し、導出された各々の質量スペクトル間の差を抽出することにより、顕微鏡により観測された細胞の中での空間的及び時間的な相違に関連する分子を評価ないし特定することを含んでいる。
さらに別の好ましい態様では、質量分析は、既知の質量スペクトルを予めコンピュータに記憶し、試料として導入された細胞成分の質量スペクトルをナノスプレーイオン化中に導出し、前記細胞成分の前記質量スペクトルと前記既知の質量スペクトルとの差を抽出して前記細胞成分を解析し、質量フィルタにより抽出された前記細胞成分内の特定の分子に対して高次の質量分析を実行することにより、分子を同定することを含んでいる。
また、本発明のさらに別の特徴によれば、細胞を構成する細胞成分を採取すると共に質量分析のために前記細胞成分をナノスプレーイオン化することが可能なナノスプレーイオン化細管であって、
口径が前記細胞内の特定領域以下の大きさである先端部と、
イオン化補助溶媒を導入するための後端部と、
前記ナノスプレーイオン化細管内部で先端まで延びる溶媒親和性表面を持つ溶媒経路細線とを備え、
前記ナノスプレーイオン化細管の外面は疎水性であり、
前記先端部の外面もしくは内面の少なくとも一方は導電性であるか、又は、導入されたイオン化溶媒まで後端側から内部に延びる導電性細線が挿入可能であり、質量分析装置との間に電界を印加できるように構成されているナノスプレーイオン化細管が提供される。
本発明により、今までは、殆ど集合体あるいは多数の細胞を集め、すり潰すなどの前処理の後、細胞内成分を集め、分子解析し、平均値の科学しか出来なかった時代が、細胞内液の有機分子成分や無機成分の分析が、細胞少なくとも1つ、あるいはその集合体の1つである生体組織の中の細胞少なくとも1つの細胞内外成分あるいは細胞内1小器官までを直接的に取り出すことが可能となり、迅速かつ直接的にその成分が分析できるようになる。しかも、いつも合目的的に動き外部因子に応答している細胞は、その挙動と細胞内分子動態が連動することが多く、細胞の顕微観察と分子検出をリアルタイムに行うことで、生命現象の合目的的分子メカニズムを形態変化と分子変化両方の観点から解明することができる。細胞観察では従来からの同位体標識あるいは蛍光標識などの標識既知分子の挙動を観察しながら、その変化との関係性における既知分子の新しい機能のみならず未知分子の発見とその機能およびそれらの分子メカニズムも追跡可能となる。また、細胞内や生体組織中の細胞内には、膨大な種類および数の分子が存在し、外界からの様々な因子に応答して、変化をし続けており、マイナーで鍵を握る多くの活性分子の検出は、共存する他の分子に隠されることがあるが、細胞が、外部因子に応答するなどの変化をする前後あるいは細胞の置かれた状態間の差分スペクトルを求める事やt-検定や多変量解析などの統計的手法を質量スペクトルの分子ピークに対して適用し、その時に変動した、あるいは、ある状態に特異的な分子を評価し探索することができる。個性のある細胞であるので、本発明により、その少なくとも1つ1つについて、その形態学的挙動分析と分子動態分析および分子探索分析の任意の組み合わせあるいは全部を同時に可能とし、生命現象の分子メカニズムを迅速かつ直接的に解明する手段を与えることができる。
更に、本発明は、生命現象のユニットである一つ一つの細胞の挙動と同時にその細胞内の分子動態を、細胞に分析の際のストレスをかけず、高感度で高速かつ直接的で高い信頼性のある手法で追跡できる事も可能とする。その1つは、細胞成分採取用細管の特に先端外面を疎水的あるいは親水的に処理し、細胞など微小空間体に刺入する際、細管外面と細胞膜などの隔壁構成成分との親和性を向上させ、細胞膜などへの刺入の際、細胞膜が歪むことなく、きわめてスムースに挿入され、細胞へのダメージひいては細胞応答への細管刺入の影響を最小限とし、また内容成分の遺漏も少なくなった。また、細胞内あるいは微小空間体内の物質に対し、細管先端内部表面に分子親和基を結合させ、あるいはそこに充填される樹脂の表面物性をさまざまに目的に応じて変えることで、質量分析において分子イオン化の妨げとなる塩の除去もでき、分子やイオンの捕捉を効率化あるいは選択的に濃縮もできるようにし、分子やイオンの選択的で高効率な捕捉、溶出が可能となる。さらに細管外面が疎水性のときは、細胞に細管が近づくまでに細胞培養液成分の先端部への混入が水との反発で、最小限に抑えられ、細管内空気の加圧調整で先端への培養液成分混入を防ぐ操作が簡略化できるメリットも生じた。また、顕微鏡下で、狙った10マイクロメーター程度の細胞位置に細管先端を導くことは至難の業で、これを電動化したマニピュレーターにおいて、一度顕微鏡の視野外で、毎回取り付け位置が若干異なる(しかしミクロの世界では致命的な大きな違いである)細管先端位置を確認し、その数値に基づいて、顕微下の視野中央にセットした狙った細胞のフォーカス点から割り出した位置近くまで自動的に持ち込むことができ、細胞内外成分の捕捉操作の高速化を図ることができる。
その結果、個性のある細胞に対し、その少なくとも1つ1つについて、網羅的な分子分析を高信頼かつ効率よく多くの細胞1つ1つに対して行うことが出来、その挙動分析と分子動態分析および分子探索分析の任意の組み合わせあるいは全部を同時に可能とし、生命現象の分子メカニズムを迅速かつ直接的に解明する手段を与えることができる。今まで殆ど集合体あるいは多数の細胞を集め、すり潰すなどの前処理の後、細胞内成分を集め、分子解析し、手間と時間がかかるのみでなく、結果も平均値であり、また細胞の時間、空間的特異性をあまり反映されなかった細胞分子成分の分析が、細胞内小器官までの空間特異性を持ち、経時的形態変化も加味した、細胞内外の時間、空間特異性の高い分析が可能となる。生体臓器や病態組織例えばがん組織など不均一な細胞の集合体が標的となる場合、生体組織の中の異なった状態にある細胞少なくとも1つの細胞内成分を直接的に取り出し高速に分子解析し、比較することが可能となり、リアルタイムに近い迅速さで、かつ直接的に疾患の鍵をにぎる分子の抽出や分子動態も含め成分分析が可能となる。
細胞が、外部因子に応答するなどの変化をする前後あるいは細胞の置かれた状態間の差分スペクトルを求め、あるいはt-検定、回帰分析、主成分解析、クラスタリング解析などの統計的評価を加える事で、その時に変動した、あるいは、ある状態に特異的な分子を抽出することができる。この時、抽出された分子ピークを、測定中、微量試料の短いナノスプレー時間内に、リアルタイムで選択し、コリジョンセル内でフラグメント化し、その分子構造をMS/MS分析あるいは高分解能質量分析で迅速に決定し、分子メカニズムの解明の高速化と、医薬品候補分子も含め新分子の発見の高速化をもたらすことができる。
細胞状態間でうごめいている分子の動態、再生医療などの細胞分化因子の高速探索、細胞分化制御、細胞増殖因子の発見や制御法、がん細胞など細胞種の分子診断や分子探索、細胞種の同定、皮膚などの生体組織からの侵出液など、針をちょっと皮膚に刺す時に出てくるわずかな血液のみで臨床検査を行ったり、肝臓細胞1ヶで個人の薬物代謝を調べオーダーメイド医療を可能としたり、植物をちょっと刺してその内部の成分を探索したり、従来は1種類の化合物で医薬品を設計していたが、漢方処方に見られる多成分での協調作用によるより自然な医薬品作用の分子メカニズムの解明や複数協調型医薬化合物の探索や開発を可能にしたりなど、様々な人類の生命と健康に資する分析が高速に展開することとなる。
さらに現在、各種疾患について網羅的な解析が進められている多くの遺伝子およびその発現産物であるタンパク質等と関連して、細胞内の低分子動態を明確にすることができる。また、飲食品分野では、風味、香り等微妙な品質を研究できる細胞内の低分子動態の解析手段を与えることができる。
また一般的に未解明事象が動物細胞に較べて多い植物研究については、植物の分化、形、色、香りをつかさどる低分子の細胞内動態の寄与や、近年の食糧事情等の関係から、遺伝子組み換えによる安全性評価への細胞内の低分子動態の追跡にも利用できる。
さらに一般的化学品製造産業等において、例えば、有機半導体、有機導電体、有機光学材料のように高純度が要求される製品の製造管理、あるいは食品添加物等の健康面での品質保証が重要な製品の製造過程において、微量の副生物が、物理化学的性能または安全性等の要求品質に悪影響を与えるような製造工程では、そのような副生物の監視、製造管理、品質管理など、微小域での分子検出と解析が可能となる。
1つの細胞のサイズは小さなもので、直径0.1ミクロンから、卵の様に肉眼で充分に見える大きなものまであるが、この中で、大きな細胞である神経細胞や卵などは、細胞内容積も大きく、含まれる成分も多種多量にあり、細胞内成分の取り出しは容易である。従って課題解決の主なターゲットは、細胞内成分の取り出しが困難な普通の細胞サイズの直径10ミクロン程度のものを考えるとほぼ全てのケースに対応できる。
しかし、その細胞内体積は1ピコリッター以下であり、細胞内小器官においてはさらにその1/10以下である。そしてその中に含まれる分子数は一つの分子種で100万分子程度が現在の質量分析計の検出限界であり、感度的にも非常に厳しい対象である。そのような微細な世界での操作と、超微量な試料体積で超微量な分子をイオン化し検出し分析することが大きな課題である。しかも、リアルタイム性も大切で、細胞が何か変化を示した瞬間を捉えることが可能で、その瞬間、所定の1細胞内の位置の成分を吸引できる必要がある。
図2は、本発明において質量分析法により細胞内分子を検出する際に用いるナノエレクトロスプレーイオン化装置の一実施例であって、ナノスプレーイオン化細管1は、絶縁体(多くはガラスやプラスティック)細管あるいは金属細管をそのまま、あるいは加熱等で引き延ばし、先端内口直径が好ましくは0.1ミクロンから100ミクロン程度の間で細くなっている細管であり、この細管外面に金属(金やニッケルなど)がスパッター法や蒸着法でコーティング6してある。この細管内に試料溶液を入れ、それにイオン化補助液(ポジティブモードの場合は通常蟻酸や酢酸、時にはアンモニアや蟻酸アンモニア等の揮発性塩が、ネガティブモードではアンモニア等が用いられ、それとアセトニトリルあるいはアルコールなどとの混合溶媒が用いられ、また、ペプチドやタンパク質、核酸などを対象とする場合は、有機溶媒の水含量を高めた混合溶媒等も用いられる)を添加、1の先端に遠心力や圧力で試料調整溶液を細管先端まで充満させる。
この操作の後、質量分析装置2の試料導入口とほぼ同軸上に、この導入口から数mmから数cm離れた所に1の先端を配置し、1の導電性コーティング部6と質量分析装置2の試料導入口との間に、好ましくは数百Vから数kVの高圧直流電場を印加4すると、非常に微細な電荷を背負った液粒が霧状に発生する。これをナノスプレー5という。従来のエレクトロスプレー法は、試料液が高圧電場を印加した細管から出て来る所に強いガス流を当て、ネブライザーの様にして試料液を霧化し、試料分子をイオン化するが、その時形成される霧状液滴が大きく、また、大きな液滴を質量分析計に導入すると良くないので、そのスプレーの辺縁の小さく霧になった部位のみを質量分析計に導入する。これでは、ほとんどの試料を捨てているのと同じで、それでなくても超微量な一細胞成分は殆ど導入できず、検出できなかった。電場だけで引き起こされるナノスプレーにより生ずる霧の液滴は非常に微細で、その液流は毎分数ナノリッターから数十ナノリッターであり、しかも、液滴が小さいので、イオン化細管と測定器の試料導入口はほぼ同軸方向にストレートにしかも数mmから数cmの距離で配置でき、その多くが直接質量分析計に導入され、イオン化効率が高い事に注目した。ナノスプレーさらにこのナノスプレーイオン化細管は、先端口径が数ミクロン程度のものが製作でき、一細胞の体積を先端に吸引するのに最適なサイズを持っている。このナノスプレーイオン化細管で、細胞成分を吸引し、先端にその成分を保持したまま、容器を移して試料を散逸するということなく、試料を局在させたまま、直接高効率にイオン化して、測定器に導入する点が、本発明の重要な構成要素である。
この様なナノスプレーイオン化細管1は、内面に導電コーティングされていても、内面と外面両方に導電コーティングされていても、あるいは全体が導電性の例えば金属で形成されていても、あるいは細管そのものには導電性が無くても、細管内の試料溶液に直接電極を挿入し電場を印加しても機能する。この様にして、ナノスプレーイオン化を実現するイオン化細管1は数nLレベルの溶液を、細胞から吸引でき、同時に、上記イオン化補助液を、好ましくは、イオン化細管後端から添加、混入することで、超微量な細胞成分液を先端に局在させながら、安定にナノスプレーする(後述の様に、安定化に関しても構成要素がある。図29,30参照)ので、このチップ1を細胞全部あるいは細胞内液(あるいは勿論必要な時は細胞外液も)吸引に直接使用することで、そのまま細胞液を細管先端内に保持し、そして上記イオン化補助液をその先端とは逆の後方から添加・混入するのみで、細胞内液調製液を簡便な操作で、そのまま質量分析のためのイオン化試料導入を行うことができる事を初めて発見し、世界的にも初めてその方法を確立することができた。これにより、非常に簡便な操作で、細胞内液のような超微量な体積中に今まで検出できなかった位に僅かしか存在しない分子やイオンも、吸引により捕獲し、現在の質量分析装置の感度でも、その細胞液内に含まれる分子を質量分析法で直接、しかも、細胞が変化を起こした時も直接観察しながら、あるいは、細胞内の小器官などの部位特異的にも検出でき、分子同定などの分子探索や同定、ひいては分子メカニズムが高速に解明可能となった。
図3は、上記のナノスプレーイオン化細管1を、顕微鏡ステージ9上のシャーレなどに培養されている細胞8に突き刺す様子を模式的に示している。細胞8はここでは同時に対物レンズ11と適切な照明光学系(ここでは記載を省略した)との組み合わせで同時に観察されており、画像解析などもできるビデオ画像とする為、ビデオカメラ12が対物レンズの結像焦点面にCCDなどの撮像素子の位置が来るように調節されて配置されている。この配置により、細胞を目のみでなく、ビデオ拡大画像としてモニターし、細胞挙動を記録することもでき、また画像解析法により差分や位置・面積変化など自由に細胞などの対象物の動的変化を捉えることができ、また蛍光標識などした分子やイオンの局在や移動、増減などを観察しながら、細胞が変化を示した瞬間など、任意のタイミングで、細胞8の内液や小器官あるいは観察微小域内の局部的な成分を、吸引操作13で吸い上げ、細管1の先端に細胞内液などをこの様に直接的に捕獲でき、かつ、ほぼリアルタイムにその試料をナノスプレーイオン化により質量分析装置にイオン化導入できるようになる。
図4の上図は、1図と同じ、本発明において質量分析法により細胞内分子を検出する際に用いるナノエレクトロスプレーイオン化装置の実施例であって、ナノスプレーイオン化細管1は、この細管外面に金属コーティング6が施されている。しかし、下図のナノスプレーイオン化細管1’の様に、導電性コーティング部6がない、先端が微細口となった細管でも、内部の試料調整溶液内に高電圧印加電極14を挿入して数百Vから数kVの高圧電圧を試料液に直接印加4して、ナノスプレーを引き起こすこともできる。また、この細管は、ガスクロマトグラフに良く利用されるキャピラリー管の様なテーパーのない細管でも良い。また、この細管で吸引された成分は、キャピラリー内の分離媒体(例えばモノリスカラムなど)にそのまま移動させ、分離後、溶出端からナノスプレーイオン化法で質量分析装置に成分を導入することもできる(後述図45参照)。この時のイオン化法において、より極性の低い分子に対しては、さらに紫外レーザー光やキセノンランプや重水素ランプなどの高輝度光をスプレー域に照射して、光励起イオン化法を起こすことも可能である。また、ナノスプレーを起こす電場勾配面を大きく乱すことなく、例えば交互に高電圧をナノスプレーイオン化細管と放電端子に印加し、大気圧化学イオン化法の為のコロナ放電を起こす事も可能であるが、以下は、最も利用範囲が高く、簡単な操作で可能なナノエレクトロスプレーイオン化法に絞って説明する。
図5は、この様にして形成される統合型のシステムの一実施例であり、左側のシャーレ15内の培養液16で培養されている細胞8をビデオ顕微鏡11,12で観察し、拡大して見ながら、同時に細胞の動態を記録あるいは画像解析し、その変動を捉えている。その画面をモニター17の左画面19に見ることができる。ビデオカメラからの信号はコンピュータ18内のビデオボードに送られ、画像解析されるデータとして記録蓄積される。ターゲットとする細胞8に、当該ナノスプレーイオン化細管(以下「イオン化細管」と言う)1ないし1’を突き刺し、吸引によって捕獲された細胞内液は、そのまま、あるいはイオン化補助溶媒を混和後、直接質量分析装置のナノスプレーイオン源に、手動、あるいは自動でセットされ、チップと質量分析装置2の試料スプレー導入口の間に高圧電圧を印加すると、ナノスプレーが発生し、捕獲された細胞内液に存在する多くの分子が質量分析法(イオントラップ法、タンデム4重極法、Q−TOF法、イオントラップ−TOF法、FT−MS法など、あるいはこれらの組み合わせなど)で検出されることが分かった。その質量スペクトル20もモニター画面内に並列で示されている。このようなシステムにより、今までできなかった、細胞を観察しながら、任意のタイミングで、生きている細胞の形態変化あるいは合目的的挙動の瞬間に、細胞内(あるいは外)の分子の検出も探索も、直接的にできるようになった。細胞内液を吸引して捕獲する量は微量であるので、この捕獲による細胞内液の減少が細胞挙動に影響を及ぼすことがあり得るが、その後細胞内液量が大きく減少するまで、数回は細胞内液捕獲を続けて分子検出を続けることもできる。少なくとも最初の細胞内成分の捕獲時は、細胞にこの分析操作の細胞に与える影響は最小である。
細胞内や生体組織中の細胞内には、膨大な数の分子が存在し、外界からの様々な因子に応答して、変化をし続けており、微量で鍵を握る多くの活性分子の検出は、共存する他の多量な分子に隠されることがある。また細胞が、例えば細胞外に刺激物質を入れたり、細胞が細胞外液に添加される、抗原など刺激因子など外部因子に応答する状況を形成したり、時間とともに大きく変化する細胞周期にあったりしたとき、その細胞の変化をひき起こす分子が何であるかを見つける手段が必要である。本発明で、細胞が生きた状態で何か形態学的変化を示したとき、細胞内外の分子の検出が直接できるようになり、いわば細胞内外分子検出ができるようになったが、次には、鍵を握る分子をどの様に抽出あるいは探索するかの手法の提供が不可欠である。
本発明において重要な分子探索においては、二つの異なった状態での細胞成分液で得られたスペクトル21aと21bの差を求める(この場合は質量スペクトルを一例とするが、ICP質量分析スペクトルなどの分子やイオン帰属性の高いピークが明確に測定できる分析手法ならどれでも良い)(後述図52も参照)。これにより、22(a−b)の様に差分のスペクトルを得ることができる。質量スペクトルの場合、この1つのピークは1つの分子によってもたらされているので、この分子量を質量分析装置の前段にある質量フィルターで選び、その後コリジョンセルという、この選ばれた分子をさらに導入されたガス分子と互いに衝突させ壊す(フラグメント化という)ことで、選ばれた分子の壊れた分子断片を、さらに質量分析装置内の後段にある質量フィルターや飛行時間型質量分析部で捉え、23の様なスペクトルを得ることができる。これをMS/MSと言い、あるいは更に高次なMS/MS/MS分析を行うこともできる。このスペクトルが見せる分子の特異的な壊れ方で、その分子を同定することができる(図6)。
図7は、図6において示した各細胞状態での全スペクトル内のピークのうち、設定されたある閾値以上の強度を示すピークすべてを、コンピュータープログラムにより、二つの比較したい状態の細胞間のデータで比較し、状態Aに特異的なピークをt−検定で調べた実施例である。ピーク名24は、ここではm/zがそのまま使われ、その精密な質量数がm/z25とともに、状態Aか比較される側の状態Bかのどちらにより属するかというt-値26とともに一覧できるような表として表示されている。これを見ると、1つの細胞から得られた多くのスペクトルのうち、Aの状態に特異的なピークが上から順番に、その状態Aに属する属性指数であるt−値とともに示され、t−値が100ということは、100%完全に状態A特異的なピークであることを示している。このようなt−検定を指標に、ある状態やある時間あるいはある刺激後特異的あるいはある細胞の処理(薬物添加など)に特異的なピーク(質量分析の場合は、すなわち分子)を検出することにより、ある分子が特異的にある状態のある時に出現しているあるいは増減あるいは消失しているなどという分子探索が行え、分子機能および全体の分子メカニズムを調べる有用な情報を得ることができる。解析手法には、他に主成分解析、クラスター解析などの多変量解析に加え相関解析あるいは回帰解析なども有効である。
図8は図7で示したt−検定で見つかった1つのm/z112.1のピークが、どの試料に特異的に発見できるかを示した実施例である。左の11ヶの細胞試料にはこのピークが発見されるが、右6ケの細胞試料にはこのピークは検出されていない。つまり、このピークを示す分子は、左11ヶの細胞の状態に特異的なものであり、この状態でしか発現していない分子であることを示すことができる。その発現する確率というかある状態への依存性あるいは属性はそのt―値では99%であることを示している。このように、個性のある細胞の挙動とその分子メカニズムという生命科学がゴールとする研究が、本発明により、その少なくとも1つ1つの細胞について可能となる。細胞一つ一つの挙動分析と分子動態分析および分子探索分析の任意の組み合わせあるいは全部が同時に可能となり、本発明は生命現象とその分子メカニズムを迅速かつ直接的に解明する手段を与えることになる。
上述の実施例を総合的に図9に示す。細胞8内の細胞質と細胞内小器官である顆粒の成分を位置特異的にナノスプレーイオン化細管(イオン化細管)1で捕捉し、その後、補足試料液に上記イオン化補助液を混和して、高電圧を該イオン化細管と質量分析装置の試料導入口の間に印加し、ナノスプレーを起こし、試料分子をイオン化し、そのまま質量分析装置に導入して得られた顆粒内成分のスペクトル30と、細胞質成分のスペクトル31を比較し、そのうちのm/z112.1のピークについて、細胞質および顆粒の異なった細胞内部位間での属性をt−検定で評価した32。その結果、このピーク強度は顆粒から捉えたスペクトル群Aでは存在するが、細胞質から捉えたスペクトル群Bには存在しないことが分かる。このm/z112.1のマススペクトルピークを示すものを、質量フィルターで選び、MS/MS解析によって、その分子構造を決定すると、そのMS/MSパターンからヒスタミンと同定でき、顆粒に特異的に存在するものとして、ヒスタミンがあると決定できる。他にも様々な分子が見つかっている。これらの分子は、同時に観察されている細胞挙動や部位特異性と関係づけられるのみでなく、他の検出された分子群と関係づけることで、生命現象の分子メカニズムが分かるのみでなく、新しい医薬品の候補として、あるいは、これがガン細胞であれば病因分子の発見やメカニズム解明にもつながり、さらには診断法の開発にも展開しうる。今まで世界的に、この様な分析プロセスをもって、1細胞から分子が、これほど短時間に、しかもその細胞挙動観察下で、検出され、その多くの分子ピークの中から、ある分子ピークが細胞挙動あるいは置かれた細胞の状態に帰属するその帰属度まで含め評価され、さらに、その分子同定まで決定された例はない。
図10は、アレルギー起因細胞である肥満細胞のモデルであるRBL−2H3細胞というセルラインを用いて、本発明を実施した例である。この細胞は図1で示したように細胞内に顆粒を持っており、その顆粒中にヒスタミンやセロトニンと言ったいわゆるケミカルメディエーターと言われるアレルギー反応を引き起こす分子を選択的に貯め込んでいると言われている。スペクトル203は1細胞内の1顆粒内成分を選択的に本発明手法で確立したイオン化細管で採取し、ナノスプレーイオン化法で質量分析装置に導入して得られたスペクトルである。その一部を拡大したスペクトル205にはm/z112のヒスタミン、206にはm/z156のヒスチジン、207にはm/z177のセロトニンと思われるピークが検出されている。
一方スペクトル204は、1細胞の細胞質側を選択的に本発明手法で確立したイオン化細管で採取し、ナノスプレーイオン化法で質量分析装置に導入して得られたスペクトルである。その一部を拡大したスペクトル209にはm/z205のトリプトファン、210にはm/z221には5−ハイドロキシトリプトファン、そしてここにまた208にはm/z177のセロトニンと思われるピークが検出されている。
しかし、この親ピークのみでは、同じ質量数のものは他にも自然界には沢山あり、確定できない。確定するには二つの方法がある。一つはこのピークのみを質量分析装置内の質量フィルターで選び、ついでガス分子を衝突させるなどの分子コリジョンでその選んだ分子を壊し、その分子破片(フラグメント)をスペクトルで捉え、その特異的な壊れ方から分子を同定する、いわゆるMS/MS法によるか、FT/MS装置の様な高分解能質量分析計で、高い質量精度でピークを検出して、精密質量数で他の候補で無いことを証明するかである。
そこで図11に示すように、MS/MS分析を図10のそれぞれのピークに対して行った。その結果、MS/MSスペクトル211とデータベース(例えばMass Bank.jp (http://www.massbank.jp/index.html))との比較から、m/z156.098のピークは確かにヒスチジンであり、スペクトル212からm/z112.098のピークはヒスタミン、スペクトル213のm/z205.107のピークはトリプトファン、スペクトル214のm/z221.156のピークは5−ハイドロキシトリプトファン、そしてスペクトル215のm/z177.118のピークはセロトニンであることが同定できた。ここまで、従来は多くの細胞を集めすり潰して、前処理をし、時には分離法をかけて、試料調整だけでも半日はかかる仕事である。そして、分子測定を行うのである。しかも得られる結果は、平均値であり、ある細胞の明確な状態を反映しているものでもない。
本発明では、この結果を得るまで、細胞観察、試料成分採取までで30分、測定に30分と最短で1時間程度で分子同定できる事になり、その結果の明快さとともに、従来とは比べものにならない位の短時間で分析できる特徴がある。
さらに、各ピークが顆粒に特異的に検出できるか、細胞質に特異的に検出できるか、あるいはどちらでもないかを、t-検定で解析した結果が、図10の拡大スペクトル図の上に書かれたm/z値の下に記載されている。この場合、完全に顆粒側をt−値が+100%、細胞質側をt−値が−100%となるようにして解析したので、m/z112のヒスタミン、m/z156のヒスチジンは、顆粒にほぼ特異的に存在する事を示している。一方m/z205のトリプトファン、m/z221の5−ハイドロキシトリプトファンはほぼ細胞質に存在する事がわかる。そして意外なのは、顆粒内に貯め込まれていると言われていたm/z177のセロトニンは、この分析で初めて、顆粒にも細胞質にもほぼ同じ程度存在していることが分かった。この様に本発明により、分子の同定のみでなく、分子の1細胞内外での局在までも、直接的にかつ短時間に示すことができるようになった。
上記の結果を総合すると、図12に示す様に、さらに1細胞内でのこれら分子の代謝経路が推測できる。分かっている代謝経路と、上記分析で分かった分子の局在を総合すると、セロトニンは細胞質内でトリプトファンから5−ハイドロキシトリプトファンを経て生合成され、輸送によって顆粒内に送られていると考えるのが妥当であろうが、ヒスタミンは共に顆粒内に局在するヒスチジンから生合成され、そのまま顆粒内に貯留されると考えられた。この様に細胞内での分子の代謝経路とその局在までがわかり、正に分子メカニズム解明に、如何に本発明が、短時間でかつ直接的に利用できるかを示すものである。現在質量分析法による代謝分析(通称メタボロミクス)が盛んに行われているが、これらは全て多数の細胞を試料として使用しており、本発明により、いわばリアルタイム1生細胞メタボロミクスが可能な時代をはじめてもたらしたことになると考えている。
さらに、上記の手法により、1細胞内のさらに1顆粒内での分子代謝追跡も可能であるかを検証した。細胞内顆粒1ヶの内容物を採取し、上記の様な解析をさらに沢山のピークに対して行い、図13の様な、1細胞内1顆粒の中での分子代謝過程(これは1顆粒内代謝マップとも言える)を探索した。各分子名の下の四角枠の中に、m/zとそのt-値が記載されている。この結果、従来多くの細胞で決定された代謝マップと比較して、「?」マークを経路に付したイミダゾール4−アセテートが、顆粒内にあまり存在せず、細胞質側に多くあり、顆粒内での代謝過程には欠けている可能性を示した。この様に分子の代謝・輸送過程が、1細胞内の局在性とともに追跡できる手法としても、本発明は利用できる。
本手法は細胞外に放出した分子成分の検出にも使用できる。図14は上記と同じRBL−2H3細胞が218のビデオ画像のように、顆粒を細胞外へ放出(開口放出と言う)した際、その細胞周辺の細胞外液を吸引採取し、同様の分析を行ったものである。細胞外液に出た顆粒内成分は即座に培養液中で薄められる為、特に高い検出感度が必要なケースとなったが、スペクトル219を得て、その部分拡大スペクトル220には、顆粒内に局在するヒスタミンのピークが検出されていることがわかった。
質量スペクトルは、1つの分子が1つのピークを表出する。従って、複雑な分子構成の異なった種類の細胞は、細胞共通な多くの分子ピークとともに、それぞれの種に特異的な分子ピークを混在させて、ある細胞種の質量スペクトルを示していると考えられる。また、その成分の変動は、細胞の挙動の違いの1つの原因とも考えられる細胞周期の違い、微小域での環境の違いなどを反映している事も考えられ、同じ臓器の中でもガン化している部位や、そうでない部位、あるいはその進行中の中間的部位などでの差異も評価でき病態因子解析にも利用できる。
この様な質量スペクトルのピーク構成の違いは、例えば主成分解析など多変量解析法を用いると統計的にかつ効率的に解析できることが多い。
図15は、異なった細胞種間での1細胞質量スペクトルの比較で、細胞種の判別ができるかを試みたものである。異なった5種類の細胞種で捉えた細胞質のスペクトルと細胞の顕微像を示す。これだけではその差が明瞭でないので、これらのスペクトルを元に主成分解析を行った。7種類のセルラインの細胞を1つづつ本手法で分析し、そのスペクトルを主成分解析した例である。図15の122に各細胞の形態像とそのスペクトルそして、その主成分解析の結果もたらされる2次元スコアープロットでは第1主成分と第2主成分への各ピークの構成寄与を2次元的にプロットしたもので、このプロットにすると、おのおのの細胞種はあるゾーンを占めるクラスターを形成することがわかった。これにより、細胞種の分類、逆に言えば、細胞ごとに細胞内にある低分子の種類の分布は異なることがわかった。このことは本手法が細胞の分化にかかわる分子成分や細胞周期の確認など、細胞内分子変化と状態を結びつける事もできる方法であることを示している。図15の123は、そのスペクトル中の各ピーク(図中の各点が各ピークに相当)の分布を2次元ローディングプロットで示している。中心ゾーンは共通性の高い分子ピーク、周辺に行くほど特異性の高いピークであり、これより、どのピークが細胞種特異的なものかを示すことができ、その後、MS/MS解析に進むピークの判別にも使用できることが分かった。
現在、再生医療の確立に向けて、iPS万能細胞など、細胞分化因子の探索と分化制御法の確立が注目されている。従来、細胞分化に関しては、遺伝子やタンパク質など、いわば司令塔の遺伝子から、翻訳されるタンパク質までの、いわば上流の分子に関しては、平均値の科学ではあるが良く研究されて来ている。ところが最終的産物である低分子の挙動は、分析方法が余りなく、研究されないでいる。しかし、細胞分化因子には低分子のものが多く知られており、その研究は極めて重要である。
そこで、本発明がこの細胞分化機構および因子探索にどの様な可能性を持っているかを、検証した。図16は、レチノイン酸処理で神経細胞に分化するP19細胞の分化に関して、1細胞で追跡した。画像223は、分化前のP19細胞の形態を示し、その細胞質成分をイオン化細管で捕捉する所である。この細胞をレチノイン酸処理すると、画像224の様に、2日後細胞は突起を持った神経細胞に分化する。しかしこの図からも分かるように、分化する細胞は全部では無く、その分化した細胞のみの細胞質から採取する必要があることが分かった。ここでも、1細胞でしかも部位選択的に試料成分が採取できる本発明には、この分野の応用に優位性があることが分かった。
上記の細胞分化前と後の質量スペクトルがそれぞれ225および226である。そのピークからt-検定により、分化後に増加しているピークを抽出して、そのt-値が−99.37%以上のものを、表227にまとめた。これらの分子は細胞分化により有意に増加したピークと言える。その内のm/z118.1のピークをMS/MS解析すると図16の228の様にベタインであることが分かり、そのピークは、図16の229の様に、分化が進むと共に増加していることがわかった。現在、その他の分子ピークについても解析しており、統合的にこの細胞の分化とこれら増減分子との関係を解明中である。この手法は現在話題になっているiPS細胞の分化因子探索とメカニズム解明にも活用でき、今後の再生医療の技術開発を加速し得る分析手法になると考えている。さらに、受精卵の受精後の卵割から始まる発生過程の各部位の運命決定の解析にも、本発明は利用できる。
現在、抗ガン剤など人に大きな負荷を与える薬物の副作用に個人差があることから、個人個人での使用薬物の体内代謝の様子を調べ、最適な薬物治療設計をするオーダーメイド医療の開発が進められている。本発明は、このオーダーメイド医療、あるいはまた、製薬メーカーが開発医薬品の薬物代謝の研究を効率化する場合にも利用できる。その検証の為に、人肝細胞のモデルセルラインであるHepG2(画像230)を用いて、1細胞での薬物代謝追跡が可能かを検証した。マラリアの特効薬として使われたキナクリンを薬物として、その代謝物は図17の231の様なものが知られている。これを該細胞の培養液内に注入し、1細胞での細胞質内成分の質量スペクトル232を捉えた。その結果、代謝物も含め、検出できる事が分かった。医薬品分子の場合は、既にその親化合物とその代謝物は既知であることが多く、問題はその代謝の様子や、細胞内各部あるいは組織内での代謝メカニズムや代謝様式が分かれば充分であることが多く、むしろ定量性を重要視することが多い。この様な決まった分子の高感度定量には、タンデム4重極型質量分析計が良く利用され、分子にもよるが、一般的に、前述までに使用した4重極−TOF型(Q−TOF型)質量分析計より数10倍から100倍程度感度が良い。そしてMRMという、既知の分子群を、二つの質量フィルターの通過m/zの設定の組合せを次々に変えて測定する事ができ、決まった分子群であれば、複数の標的分子種を連続して感度良く測定できる。この感度を利用して、細胞1つの成分が試料注入後カラム内の空間的に拡がり感度低下を起こすクロマトグラフィーを併用する場合(LC−MS分析)でも、ナノ液体クロマトグラフィーで分離して、分子検出の感度と定量性および網羅性を拡げることも出来る。
今後、病院で診断を受ける際にも、本発明は痛い注射での採血を回避することの出来る可能性を持っている。図18の様に、耳たぶなどを針などで軽く刺し、出てくる血液一滴が、そのまま採取され、本発明の手法によりナノスプレーイオン化により質量分析できれば、臨床検査の多項目検査は、一回の微量な採血とその質量スペクトル測定で置き換えられる可能性がある。現在検査されている血中逸脱酵素群も、捕捉試料にそれぞれの特異的基質をナノリッターレベルで添加し、一定時間反応後、その基質から生成された各酵素特異的な生成物を狙って、決まった分子であれば感度の良いタンデム4重極型質量分析計で測定すれば良い。実際に一部その検証を行った所、耳たぶから取った血液のみで、スペクトル237が得られた。確認の為に、添加イオン化溶媒のスペクトル238と比較すると、異なった分子ピークが検出できている事が分かった。臨床検査項目に合った分子ピークの検出法と解析法も前述と同様な手法を用いて確立できる。図18ではイオン化細管は皮膚などの生体組織への刺入には使われていないが、直接イオン化細管を刺入にも使用できる。その場合、細管外部には、シリコンオイルや糖鎖高分子など刺入をスムーズに行わせる潤滑性素材がコートされていても良い。他の体液として、尿、唾液、涙、汗などにも、本測定法は利用できる。
ここまでは測定対象が動物細胞であったが、植物に対しても、食品材料としての分析や残留農薬分析、植物種の同定、植物の栄養状態あるいは病態のモニタリング、有用成分の探索や含有分析など、様々な応用がある。
図19は、ゼラニウムの葉と茎の1細胞に、直接顕微鏡下で、ナノイオン化細管を差し込み、その成分を捉えた結果を示す。画像239は、葉っぱの部分の顕微鏡画像であり、拡大すると緑色の細胞のみでなく、白色のクロロフィルの少ない細胞も混在している事が分かった。その白色細胞にイオン化細管を差し込んで細胞内成分を前述と同様に分析したスペクトルが240である。一方、ゼラニウムの茎(画像241)は更に容易で、242の様なスペクトルを得た。こうして得たスペクトルの各ピークに対し、t-検定を行った結果が表243であり、葉っぱに特異的な分子ピーク(左カラム)や、茎に特異的なピーク(右カラム)が多数存在していることが分かった。その中で、図19の244に示すように、m/z178.70のピークを示す分子は茎に特異的に存在する成分であり、図19の245に示すように、m/z311.17のピークを示す分子は葉に特異的に存在する成分であることが分かった。この様に、本発明は植物に対しても直接的に細胞内分子同定と探索に使用できる事が検証できた。
生命現象は、経時的にダイナミックに変化している。その分子変化を追跡するには、更に様々な分子標識法と本手法とを合体させることで、その解析能は更に拡大する。
図20は、本発明で細胞内外での物質移動や物質代謝を追跡する手法を提示したものである。例えば細胞外液に標識化分子あるいは追跡可能な同位体分子(以下、標識分子と総称)85を加え、本手法では質量分析法によりその質量のマスシフトなどの特異性を指標に追跡することができる。標識分子85は細胞内に取り込まれ、細胞内に移動し細胞内液に存在するもの88、あるいは細胞内小器官に取り込まれた標識化分子86あるいはそれ自身が追跡用同位体分子として分布し、本手法でその局在が検出されたり、膜に取り込まれたり、または膜に結合した標識化分子あるいは追跡用同位体分子87として、膜成分捕獲の際に検出されたり、細胞内に移動する間に代謝ないし修飾された標識化分子あるいは追跡用同位体分子88として検出されたり、細胞内小器官に取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子89あるいはその代謝物89’として検出されたり、あるいは核内に移行ないし取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子90として検出されたり、細胞外液に分泌あるいは再放出された代謝ないし修飾された標識化分子あるいは追跡用同位体分子91として検出される。これにより細胞内外の物質代謝や分子移動などの様子が1細胞で解明できることになる。
図21は、この様にして、肥満細胞のモデル細胞RBL−2H3細胞の外部から細胞内顆粒に選択的に取り込まれるキナクリン(蛍光物質)を追跡した例である。細胞外から導入されたキナクリン分子は、細胞質スペクトル92には93の拡大スペクトルでも検出されず、顆粒の質量スペクトル94に弱いピーク95として検出され、細胞質に留まらず、顆粒に到達していることが分かった。そのMS/MSスペクトル96から、間違いなくキナクリン分子であることが確認された。本手法の空間分解能は細管1の先端口径で決まる。現在先端口径は1マイクロメーターであるので、空間分解能も1マイクロメーターといえる。本手法を用いれば、現在多成分の分子が同時に協調して薬効をもたらしている生薬系の医薬品の薬効メカニズムも解明できる。まず、生薬成分の質量スペクトルを測定し、その生薬成分を混合物のままターゲット細胞あるいは組織の培養液や還流液に注入し、その細胞内に移行した成分ピークを細胞の形態的観測とともに分析することで、細胞内に移行し、薬効を現しているであろう細胞内に取り込まれた成分分子を検出することができる。その経時的変化も、その薬効成分分子の細胞内分子動態情報を教える。今までの1薬効1分子の医薬品の考え方から、より総合的な、多成分協調型医薬品開発の為にも本発明は今まで考えられなかった可能性を供与すると考える。
図22は、安定同位体標識アミノ酸ヒスチジン246を使用して、ヒスチジンが細胞内顆粒にどの様なスピードで取り込まれて、どの様に代謝されていくかを追跡した例である。1細胞の細胞内1顆粒成分の質量スペクトル247の中で、ヒスタミンのピークの1マス上にもう一つの安定同位体のヒスチジンが顆粒内に輸送されて検出されている事がわかる。1分後(248)、10分後(249)、60分後(250)と同位体ヒスチジンのが増加し、ヒスチジンは細胞膜から細胞質を経由して顆粒内に輸送されて行くスピードも含めて検出される事がわかる。さらに、それに応じて、その蓄積代謝分子であるヒスタミンが1分後(251)、10分後(252)、60分後(253)と少し遅れて顆粒内に蓄積され、最後にはかなり蓄積されていることがわかる。さらに採取した成分をイオン化細管に捕捉した後、高効率イオン化アミノ基標識分子などを該細管後端から添加するイオン化補助溶媒中に混在させ試料成分と反応させ、より分子を高いピークで検出できるようにし、そのMS/MS分析で、高分子も含め構造解析できる様にすることも可能である。
また、細胞内成分あるいは血液など体液中の酵素活性測定には、イオン化細管後端から添加するイオン化補助溶媒中に基質を混在させ、あるいは、ナノリッター注入器で、基質を含む水溶液を一定量添加し、しばらく試料中の酵素と酵素反応を起こさせ、その基質と反応物を一定時間後に測定することで、試料の酵素活性を測定することもできる。
更に、細胞内成分あるいは血液など体液中の特定成分と結合することにより消失する成分を上記と同様な方法で、被結合分子を僅かに試料溶液に添加することで、その結合成分の濃度や結合成分の分布や結合率の評価を行うことができる。標識化合物の利用は、本手法の可能性を更に大きく拡げると期待される。
本手法の定量性の確保も重要な課題である。対象物が1ピコリッター以下と極微量であるので、内部標準添加はなかなか厳しい。しかし、ナノスプレーを起こす際、溶出溶媒とイオン化溶液の混合液72を使う場合は、その中に同位体あるいは天然に存在しない内部標準物質を一定量添加して、1細胞質量スペクトルの各ピーク強度の補正を行うことができる。さらに我々は添加溶媒のピーク98が、スペクトル強度の基準として使用できることを突き止めた。図17には、その1例を示す。これは溶出溶媒とイオン化溶液の混合液72の中に含まれるフタル酸ジオクチルエステル由来のピークであった。これにより、簡便にスペクトル強度の補正あるいは規格化ができる。
前述の様に、様々な細胞を中心とした分析に適用して見ると、本発明の幅広い適用性と分析の迅速性、効率性を検証できた。その検証実施の中で、装置としても、手法としても、様々な必要から各種の発明を行ったので、それを後半で記載する。
図24に、本発明の効率的実施において質量分析法により1細胞内分子を検出する際の一連の手法および必要なシステムを示す。用いる導電性細管で形成されたナノスプレーイオン化細管(以下、イオン化細管と略称)1は、ここでは外径は最大で4mm以下の絶縁体(多くはガラスやプラスティック)細管を加熱等で引き延ばし先端に行くにしたがって細くなっているもので、先端内口径が好ましくは、捕獲対象細胞あるいは細胞内小器官のサイズ以下の先端口径に形成した細管であり、この細管外面に金属(多くは金やニッケル)がスパッター法や蒸着法でコーティング6され導電性となっている。
本発明でいう導電性細管とは、内面、外面または両側あるいは材料そのものが導電性表面を有するもので、導電性表面とは、イオン化細管材料そのものが導電性であっても、また導電性物質をコーティングまたは塗布あるいは化学処理であってもよい。また導電性を持つ領域は細管全部でなくても良く、先端部分が広く覆われていれば、それ以外は電圧印加のために電気的に接触する部位から先端部分まで電気的につながっていればそれでも良い。導電性材料としては、導電性金属、導電性有機材料が挙げられるが、それらに限定されるものではなく、また導電性コーティングをする方法としては蒸着、スパッタリング、塗布等が挙げられるが、それらに限定されるものでもない。
導電性細管の細胞や微小域液体と接触する先端は、内部の液体試料がナノエレクトロスプレーイオン化しやすいできるだけ先端系が細い100マイクロメーター以下が望ましいが、径が大きいとナノスプレーの液滴も大きくなりわずかな試料が早くなくなり、かつ感度が悪く、イオン化効率も低下する。好ましいのは50マイクロメーター径以下であるが、より好ましいのは、10マイクロメーター以下のできるだけ小さい方がスプレーの液滴サイズも小さくなり、イオン化効率が良く好ましく、採取する細胞あるいは細胞内小器官のサイズや微小域の採取サイズと同等又はそれ以下が好ましい。最小径としては、細胞内液体あるいは微小域液体が吸引できるサイズであればよい。この最小経は採取する試料の粘性や細管先端内面との親和性とも関係し、粘性が高いと最小経を大きくしないと試料液が吸引しても入らない。細管先端内面との親和性が高いと毛管現象で吸引しなくてもある程度試料液が加圧をなくした時点で自動的に入ることも利用できる。
この細管内に試料溶液3を1細胞あるいは数マイクロメーター以下の細胞内小器官から吸引し、それにイオン化補助液(ポジティブモードの場合は、通常、蟻酸とアセトニトリルあるいはアルコールなどが用いられる)をイオン化細管の後端部からひげの様な細管を持ったエッペンドルフ社製マイクロピペットチップなどで先端試料液面付近から添加、振動などで気泡を除いたりした後、必要であれば、細管1の先端に向かって遠心力や圧力で試料調整溶液を細管先端まで充満させる。
この操作の後、質量分析装置2の試料導入口とほぼ同軸上に、この導入口から数ミリメーターから数センチメーター離れた所に細管1の先端を配置し、1の導電性コーティング部6と質量分析装置2の試料導入口との間に、好ましくは数百Vから数kVの高圧電場4を印加すると、電荷を背負った非常に微細な液粒が霧状に発生する。これをナノスプレー5という。またこの様なナノスプレーイオン化細管(イオン化細管と略称)1は導電性細管であり、導電性の確保には、その外面のみでなく、内面に導電コーティングされていても、内面と外面両方に導電コーティングされていても、あるいは全体が導電性の例えば金属で形成されていても機能する。
この様にして、形成されたナノスプレーイオン化細管チップ1は数ピコリッター以下のレベルの溶液でも、1細胞から吸引でき、同時に、上記イオン化補助液を添加することで、安定にナノスプレーするので、この細管1を顕微鏡ステージ9の上に置かれたシャーレ15内に培養液内に生かされた細胞8全部あるいは細胞8内液あるいは顆粒のような細胞8内小器官(あるいは勿論必要な時は細胞外液も)の吸引に直接使用することで、そのまま捕捉した細胞液10を、あるいは上記イオン化補助液を捕捉した細胞液10に前述のように添加し、たとえばそのイオン化補助液は有機溶媒が主であると、たんぱく質などは沈殿し細管1内壁に結合して動かず、イオン化補助液の有機溶媒成分に低分子が溶出するような形で、細胞内低分子群を簡便な操作で、そのまま質量分析のためのイオン化試料導入を行うことができる事を発見した(後述図32参照)。これにより、ほぼ細胞1ケの内部液の採取の操作が非常に簡便かつ分子測定が直接的かつ迅速になり、細胞内液のような超微量な体積しか存在しないものも含まれる成分分子を質量分析法で解明できることが分かった。
図24はさらに細胞8に挿入するイオン化細管1の挿入をビデオ顕微鏡11,12でモニター17で観察しながら、細管1を先端に結合した電動マニュピレーターのx−y−z軸駆動体35,角度と軸方向駆動体36,駆動制御装置38,マニュピレーター操作ハンドル39で細管先端を操作37して細胞を突き刺す、そのとき細胞成分吸引駆動用チューブ40を介して吸引時の振動を細管1の先端に伝えることなく細胞成分吸引用ピストン41で細胞内成分を吸引捕獲できるようピストン駆動体41で駆動13する様子を示している。この様にして細胞内液3を捕獲したのち、この細管1はマニュピレーターから外され、イオン化補助剤を添加して質量分析計2のナノスプレー位置に移動し、高圧電源より高圧4を印加することで、ナノスプレー5が生じ、質量分析スペクトルとして、内部に含まれる分子ピークが現れることを発見した。以下同一の番号を付与したものについては同じものであり、説明は省略する。
図25は、細胞刺入の際の課題を解決する為に考案された。上記のナノスプレーイオン化細管(イオン化細管)1を、顕微鏡ステージ9上のシャーレ15などに培養されている細胞8に突き刺す際に、顕微鏡下でイオン化細管1の先端を認識することは至難の業で、よくイオン化細管の先端を折ることがわかり、ここの過程が細胞内成分採取のステップの隘路であることが分かった。そこで顕微鏡の対物レンズ11とそれに結合したビデオカメラ12でモニター17上に観察できる細胞8の所定の位置にイオン化細管1の先端を誘導する困難さを克服するための装置と手法を示す。イオン化細管1はマニピュレーター36の先端に装着するたびに、マイクロメーター域では大きく異なる位置に装着される。その顕微下での先端位置を二つ以上の位置が固定され、認知されているビデオ顕微装置43−44,45−46で細管1の先端三次元位置48をモニター47上で検出し、その先端位置を電動マニピュレーターの移動ステップ数などで駆動制御装置49で検知し、その後3次元的にx−y−zおよび軸方向に何ステップで顕微観察中の細胞近くまで誘導できるかも駆動制御装置49で割り出す。細胞8の位置は、顕微鏡視野中心であれば、顕微ステージ9又は対物レンズ11の上下位置でフォーカス面として検出でき、従来からz軸顕微ステージ駆動装置にエンコーダーなどを装着した装置があるので、それと上記イオン化細管先端誘導装置とを結合させる。こうして、もっとも困難なイオン化細管1の先端位置を自動あるいは半自動(細胞への刺入は手動が優れていることが多い)でこれからイオン化細管1を細胞に刺入するモニター17上に見られる細胞の近くあるは細胞内に誘導することができ、操作の迅速化、高精度化が図られる。これ以外の番号は以前の図と同じものである。このようにして、困難なミクロ域での特定の位置へ、試料吸引のためのイオン化細管1の誘導の困難を克服することができる。もちろん細胞などの最後の突き刺しなどは、微妙な感覚が必要で問題ある場合もあり、一部を手動にすることも可能であり、そのほうがうまくいくことも多い。
図26はさらにイオン化細管1の細胞内成分吸入から、ナノスプレーにより質量分析計に試料をイオン化導入するまでの操作の自動化を進めた実施例を示す。その場合、前記に加えて、細胞などの微小域試料吸引チューブ51とイオン化補助剤添加チューブ52をインジェクションポンプ50を介して配置し、必要なときに吸引や溶液添加をし、自動化をもたらす例を示した。
図27は、図26とほぼ同じであるが、対象が浮遊細胞など培養皿表面に接着しない細胞の場合、弱く吸引した細胞ホールド用細管チップ38´を先端に結合した電動マニュピレーターのx−y−z軸駆動体35´,角度と軸方向駆動体36´,駆動制御装置38´で、対象細胞を保持し、細胞内液捕獲細管1の先端を操作37して細胞を突き刺すイオン化細管1を細胞に刺入するシステムを示している。勿論、内面修飾されたイオン化細管も、また同時に外面は疎水コートや親水コートなど施され細胞にスムースに挿入される様に加工されたものも取り付けることが出来、また、これらイオン化細管が細胞に近づくまで、イオン化細管の内部を加圧して、途中細胞培地の成分が先端内に混入しない様にすることも、また液体含有組織に形成された穴から細胞内又は組織内成分を漏出させることにより質量分析の対象となる細胞成分を前記先端部から採取する際にも、図24から図27に示したシステムは対応でき、また駆動制御することもできる。
図28は、ナノスプレーイオン化細管(イオン化細管と記載)の表面導電コーティング6のバリエーションを示し、基本的に先端の尖った部分が十分に導電コーティングやスパッタリングされていれば、先端空間周囲に質量分析計試料導入口に向かって漏斗状の等電場面が形成されるので、ナノスプレーを起こすことが出来る。従ってイオン化細管全体が導電性コーティングされている必要はなく、外部電源端子と接触する部位から先端まで導電性材料53がコートあるいは貼り付けられていても良く、導電性が保たれていれば良いことを示している。このことはイオン化細管の内部を見えやすくすることもでき、かつ製造コストを抑えるという製造上のメリットをもたらす。
図29はイオン化細管1に捕獲される液体およびイオン化補助溶媒と親和性のある表面の試料溶媒親和性細心材56(以下、溶媒経路細線と表記)をイオン化細管内に配置した考案で、この溶媒経路細線は、イオン化細管内面に一部の面が、先端から後端まで線上に接合していても、動かなければ管内に一部接合し後は浮いていても良い。好ましいのは、特に先端付近ではイオン化細管内面に接合し、細い先端では、溶媒経路細線も細くなり、口径を塞がない事が重要である。この溶媒経路細線により、図30に示すように、一般のナノスプレーイオン化細管として使用しても、また、それより粘性の高い1細胞試料でも、その中断などが殆ど無くなり、TICが安定したナノスプレー254が実現する様になった。比較の為に溶媒経路細線の無いイオン化細管では、TICが255の図の様に不安定で、一度出なくなると再開も難しいことが多い事が分かった。この様にして溶液内成分の抽出や溶液のスムースな動きを補助することが1細胞ナノスプレーイオン化では重要であり、この様なデバイス改良が、本手法のもう一つの鍵であった。この考案は、表面コートなどの無い一般のナノスプレーチップと呼ばれるものでも、勿論有効な技術として使用できる。また、図29導電性細心材57を細管1の内面内に配置し、それに電極を印加することでさらに積極的な通電とナノスプレーイオン化を起こすことも可能であった。
図31は、イオン化細管1の外部表面を疎水性コート54して、細胞内にそのチップを刺入している図である。これにより、細胞膜構造である脂質2重層の物性に近い外面素材表面となり、動物細胞の場合、膜を細管1で刺入する際、その挿入が非常に容易になることを発見した。これによりイオン化細管1の挿入による細胞8の形態変化からもたらされる細胞への余分な反応を最小限にすることができ、かつ挿入あるいは刺入部分55からの内部成分の漏出も最小限に抑えることができた。さらに、イオン化細管1を細胞培養液の中、細胞まで移動させる間に起こる培養液のイオン化細管1の先端への毛管現象による混入を、チップ疎水表面の水との反発により最小限に抑えることができ、それまで、イオン化細管1に加圧空気をいれ、細胞培養液の混入を防いでいた操作がほとんど不要となり、操作の簡素化が図られることがわかった。植物細胞では、細胞壁がセルロース成分である部分もあり、逆にイオン化細管1の表面の親水性化も有効であることも分かった。
ここでいう親水性表面とは、細管材料に親水性物質を物理的に塗布したものであってもよく、化学的に親水性化合物を直接またはスペーサーを介して結合したものであってもよい。親水性化合物としては、生体内に存在する分子表面が親水性のタンパク質分子、核酸分子、糖分子等及びそれらの複合体を含み、分子表面が親水性のタンパク質分子としては、各種の酵素、サイトカイン、ペプチドホルモン、抗体、受容体タンパク質、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、受容体阻害剤、イオンチャネルタンパク質、チャネル遮断剤、酵素阻害剤などが挙げられるが、それらに限定されない。分子表面が親水性の核酸分子としては、DNA一本鎖であってもよく、RNAであってもよく、それらの組合せでもよい。また核酸の配列数としては数個から数千塩基の範囲であってもよい。これらの分子表面が親水性のタンパク質、分子表面が親水性の核酸および/または分子表面が親水性の糖分子が、細管材料に化学的に結合したものが利用できる。また親水性物質としては水酸基、チオール基、エーテル、チオエーテル、陰イオン及び/または陽イオンなどの高極性官能基を含む。陰イオン官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、燐酸基などが挙げられるが、これらに限定されない。陽イオン官能基としては、アミノ基、アミノエチル基、ジメチルアミノ基、トリメチルアミノ基、グアジニド基、イミダゾリル基、アミノベンジル基、等が挙げられるが、これらに限定されない。また、磁気ビーズの表面に親和性基を結合させ、試料中で成分特異的捕捉を行い、このイオン化細管の先端に磁石でこの分子捕捉磁気ビーズを誘導して、イオン化補助溶媒と溶出溶媒の混合液でナノスプレーイオン化して測定することも出来る。
ここでいう疎水性表面とは、細管材料に疎水性物質を塗布したものであってもよく、化学的に疎水性官能基を有する化合物を、直接、またはスペーサーを介して結合したものであってもよい。疎水性物質としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪酸エステル等々が挙げられるがこれらに限定されない。疎水性官能基としては、オクタデシル基、ドデシル基、ヘキシル基、置換基を有するフェニル基およびナフチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
図32は、この様に細胞成分の超微量での採取にもかかわらず、なぜ1細胞成分の検出がナノスプレーイオン化細管(イオン化細管)1による採取で可能かを示す。1細胞の体積を約1ピコリッターとすると、ナノスプレーチップ先端のほんの僅かな部分にその細胞成分は吸引・捕捉される。これにイオン化補助溶媒236を1マイクロリットル添加し、もしこのまま良く混和すると、細胞成分は約100万倍に希釈され、現在のどの質量分析装置で検出できる感度をはるかに低下した濃度となり検出できない。我々もそうであったが、今までおそらく多くの研究者が試みても1細胞直接分析が実現しなかった理由がそこにあると考えられる。細胞成分そのものは微量ではあるが、濃度は高く、これを先端に保持したまま、その細胞試料液内の成分を溶出するようにイオン化補助溶媒とそのナノスプレーによる流動を利用することで、この様な超微量試料内の分子検出が可能であると考案した。
したがって、イオン化細管1または1‘の先端部に細胞成分を留める為の様々な条件設定が本発明のもう一つの鍵を握っている。本発明では、細胞成分を先端に捕捉した後、低分子の分析では、有機溶媒含量の高いイオン化補助溶媒236を利用する。その時には、細胞成分内の高分子成分、特にタンパク質成分などが沈殿し、細管内面に付着する様な状態になり、その中を、補助溶媒が低分子成分を高分子マトリックスの中から溶出する様な形で低分子成分がナノスプレー中に溶出されていると考えている256。従って、先端内面を選択的に分子親和性基で修飾し、そこに細胞内成分の内、親和性基257により特異的に捕捉し、イオン化補助溶媒236で溶出させることも、1細胞分析を可能にする1つの手法であると考えた。また先端内面に分子捕捉親和性(アフィニティー、イオン交換、疎水性、両イオン親和性など)のある樹脂やメッシュ258などを配置し、イオン化補助溶媒236で溶出させることも、前記のグラディエント溶出も、1つの手法と考えた。
上記の考案により、図33の様に、細胞8の成分液10を採取し、そのイオン化細管1の先端に採取された試料液に対し、イオン化細管1の後端から溶出溶媒またはイオン化補助溶媒あるいはその混合液をそっと添加し、その後ナノスプレーイオン化するプロセスを採用した。勿論、その後溶媒組成の異なる溶媒を添加、一部前の溶媒と混合させることで、グラディエント溶出も可能である。
図34は、そのイオン化細管1の先端内面のさまざまな修飾法を図示したものである。疎水性物質表面結合体あるいはコーティング61、あるいは陽イオン性物質表面結合体あるいはコーティング62、あるいは陰イオン性物質表面結合体あるいはコーティング63、あるいは抗体などの受容体結合表面64、あるいは抗原あるいは基質などの結合表面65と内面を均一にコーティング58したり、酵素などの結合表面66をもたらしたり、あるいは核酸類の結合表面67を形成したり、あるいは内面に繊維状あるいは鎖状充填物質59あるいはモノリス構造体で充填したり、刷毛状に表面結合した物質60で被覆し、その上に上記の修飾分子を結合させることもできる。あるいは最近報告されている温度応答性ポリマーをコーティングあるいは結合させることもできる。
この場合、細胞成分をイオン化細管1の先端から吸引した後、この分子親和性のある繊維状あるいは鎖状充填物質59に成分を捕捉させ、その後分析対象以外の成分を洗い出すための溶液をイオン化細管1の先端部からの吸引もしくは前記細管の後端側からの注入により洗い出し、イオン化を妨げる塩の脱塩も行い、その後、イオン化細管1の後端側から捕捉成分を溶出するイオン化補助溶媒を導入し、選択的な分子群検出を高感度に達成することができる。図35では、イオン化細管1内に分子親和基を表面に持つ樹脂68を充填あるいはリング状に先端内面に配置した例である。前記と同じ洗浄、溶出を行うことで、選択的な分子群濃縮と脱塩ができる。
この様にして細管1の内面を修飾することで、より効率的な分子濃縮が可能となる。この内面修飾するゾーンはチップ内面全面でも先端にしか細胞成分液は捕捉されないので構わないが、好ましくは前述の理由により、先端付近の限局された部分のみが良く、目的・状況に応じて使い分けることが望ましい。勿論、この様な内面修飾されたイオン化細管も外面は疎水コートや親水コートなど施され、細胞にスムーズに挿入される様に加工され、また、細胞に近づくまで、イオン化細管の内部を加圧して、途中細胞培地の成分が先端内に混入しない配慮もなされるべきである。また液体含有組織に形成された穴から細胞内又は組織内成分を漏出させることにより質量分析の対象となる細胞成分を前記先端部から採取する際にも、ナノスプレーイオン化細管の先端内面に分子親和基を結合させたものは、特異的な成分をイオン化細管の先端で捕獲するのには好都合である。
図35は、内面の修飾の一例として、内面にクロマトグラフィー用樹脂を充填した例であるが、その樹脂の表面は図34の下に示したような分子で修飾されていても良い。本手法では、細胞内あるいは微小域内成分を吸引してイオン化細管1内に捕獲するので、当該樹脂を内壁に沿ってのみ配置しておけば、液の吸引と同時に、スプレー時に濃縮した成分の溶出イオン化排出をもたらすことが容易となる。これら疎水性官能基または親水性官能基を化学的に直接、またはスペーサーを介して細管材料と結合する方法およびそれを用いたクロマトグラフィーの応用例としては、例えば、升島努他編、「パートナー分析化学II」172−191(2007)(南江堂)に記載されている。また充填材を用いたクロマトグラフィーの応用例としては、例えば、升島努他、「パートナー分析化学II」145−172(2007)(南江堂)に記載されている。
細胞内液を吸い上げ、それを樹脂表面への吸着を促すために、図36のように樹脂68を固定せずフリット材69の上に置き、細胞液10の吸引後、分子捕捉溶液70をさらに吸引しそのときに樹脂表面に細胞内あるいは微小域内成分を結合させ濃縮する。その後ミクロピペット71から溶出溶媒とイオン化溶液の混合液72を添加し、ナノスプレー5でイオン化する方法である。この方法は若干細胞内液が希釈されるので、タンデム4重極などの高感度質量分析計で既知の分子を追跡する場合には利用できる。
図37は、市販の樹脂充填型のナノスプレーチップを使用した細胞内外分析法の一例である。この場合細胞から細胞内成分を捕獲するのは、導電性にしたものでなくてもよく、マイクロキャピラリーでもよく、それで捕獲した試料を充填樹脂層68の上部に添加し、さらにイオン化補助溶媒を移動相として使用してナノスプレーチップをもたらし、同時に分離を起こすものである。ところが、この手法では、細胞数が1ケでは不可能で、数千細胞必要であった。成分分子のミクロ充填樹脂への分散が、感度を上げられない理由であると考えている。
図37の例をウエル型ナノスプレー73で行った例を図38に示す。この場合内面コーティング58は先端付近に施され、先端付近での濃縮を行うように形成されている。この様にして、捕獲した細胞内液10と分子捕捉溶液70の混液の中で、分子は一度先端に濃縮され、その後、更に適切な溶出溶媒とイオン化補助剤の混合液でナノスプレーでイオン化される様子を示している。
図39は、細胞内液の中のRNAなど核酸成分を増幅して検出する際のプロセスを示す。イオン化細管1に捕獲された細胞内液10は、これに処理用の添加試液を加え76、先端をバーナー74などで封じ、これを温浴(PCRの場合はサーマルサイクラー)75に浸し、PCR増幅、熱変性などの処理をする77、その後、PCR増幅、熱変性などの処理をした試料液78を、チップ先端を放電79などの方法で折り、ナノスプレーにより質量分析計に導入する場合を示す。
図40は、上記のさまざまな細管1内での試料調整で、先端が詰まった際の処置について記述している。細胞液などの捕捉試料液に溶出・イオン化溶媒を加えたもの80を試料とする細管1は、もし先端が詰まった時は放電79あるいはピンセット81などで物理的に折るか、レーザー82などで切断して先端口径を大きくすることで、ナノスプレーイオン化を続けることができる事ができる。
図41には、細胞など微小域から成分溶液を吸引する際のイオン化細管1を改善し、吸引操作を容易にしたものである。従来、イオン化細管1は特殊なホルダーに装着して使用されている。しかし、本手法では、イオン化細管1の後端に、ちょうど注射針の後端に付いている注射シリンジ先端に挿入できるスリーブをインジェクション加工などで形成したもの105である。この様な構成にすれば、従来の医療用注射器に使用されている周辺小物がそのまま使用できる。例えば、106のチュービングは、本ナノスプレーチップ105と吸引ピストンシリンジ(41)あるいは吸引ポンプを振動を伝えないで結合するチューブセット106を介して結合し、細胞内成分の吸引操作を、ミクロ域での先端針の振動なしで達成することができ、また、そのホルダーも107のような簡便なはさみ込みホルダーで105のスリーブの位置で決まる一定の位置精度をもった装着ができる。はさみ込みホルダーは本ナノスプレーチップ105と電気的な接触も実現し、高圧電場印加ももたらすように作ることが容易にできる。
図42には、本発明による1細胞成分ナノスプレーイオン化における印加電圧のバリエーションを示す。従来から直流高電圧259をイオン化細管と質量分析計の試料導入口の間に印加するが、より効率を上げるため、高圧パルス電圧260を印加したり、高圧直流バイアスに重なった正弦波電圧261を印加する。あるいは高圧直流バイアス重なった矩形波電圧262を印加したり、高圧直流バイアスに重なったのこぎり波電圧263を印加することも出来る。
本手法の定量性確保の更なる課題は、捕獲した細胞液は極微量であり、その体積が重量でも測れず、その解決が必要であった。図43ではその一例を示し、細管1の先端に吸引された細胞内液3の体積を、ビデオ顕微像として拡大して捉え、その2次元画像の回転による3次元積分でその体積を評価するものである。これにより、その後、ほかの溶液を添加102、あるいは吸引103、する際の希釈率も求めることができるようになった。
図44は、本手法を進める際のデータ解析の好ましいプロセスをまとめたもの124である。従来ある統計的手法をこの様な1細胞の状態間因子分析に使用した例はなく、差分解析、t−検定、主成分解析法、回帰分析、それらの適用は1細胞での質量スペクトルに対しては前例がない。これにより1細胞毎の個性に応じた分子ピークの抽出、属性解析、成分解析、関数依存性などの解明ができるようになった。
さらに従来の質量分析計の制御あるいはデータ解析システムの中に含まれていない機能として、この図の様に、ナノスプレー時間が超微量試料の場合、長くて5−10分という短時間であり、その時間内に出来るだけ多くのMS/MS分析で分子同定する為に、最初の1分で全体のスペクトルをとりながら、同時に、比較すべきスペクトルがすでにある場合はそのデータとの比較統計解析(t−検定など)をコンピューターが背後で同時に進めて、残りの貴重なスプレー時間に、今度は自動的にあるいは表示して判断を仰ぐ形式にして、ほぼリアルタイムに分子同定のためのMS/MS分析あるいは、分子同定力の高い高分解能質量分析に迅速に持ちこめる機器制御およびデータ解析ソフトウエアーを考案した。同時にパブリックでインターネットを通して検索できるMSバンクデータベースにすぐにアクセスして、そのスペクトルを自動的に、そのデータバンクのデータ形式に変換して検索をかけ、その結果を得るソフトウエアーとした。
図45は、細胞内成分を捕獲後、そのイオン化細管1(導電性でなくてもこの場合もかまわない)から直接ナノ液体クロマトグラフィー(LC)インジェクター128に注入し、ナノLCカラム129で分離したのちUVなどの検出130後、ナノスプレーイオン化131法でイオン化して検出するものである。この方法では網羅性は向上するが、ナノLCカラムは高価で、劣化しやすく、コストのかかる分析法となる。またリアルタイム分析とはならず、超微量成分が広い分離空間に散逸するので、質量分析計を高感度に設定して行う必要がある。
図46に、この様にして達成された結果の一例を示す。リンパ球系細胞のステロイド処理前108と処理後109の細胞から得られた分子を簡単な分離しながら得られた、3次元質量スペクトルである。ピーク数約1200本ということは数百の分子が少なくとも検出されていることを意味する。
どちらかの状態に特異的なピークは、この図46からはすぐには見えないが、この両者の全スペクトルに対し、t−検定を施すと、図47のように、細胞を処理後減少したピークとしてt−値95%以上のピークが31ピークある(110)ことを示している。また、処理後増加したピークはt−値−95%以上で20ピークある(111)ことを示している。これにより、細胞の二つの状態間で分子量が増減したピーク、つまり状態間で変動した分子を抽出することができ、今後の細胞内分子動態の解析の網羅性を上げることが出来た。
図48では、これらのピークの中で、m/z 302.3のピークを捉え、未処理の細胞と処理後の細胞でのピーク強度を比較した。グラフ112と115は、全イオンクロマトグラムで、その中で、m/z 302.3のピークが現れる保持時間でスペクトルを比較した。するとスペクトル113では見られなかったピークが116の処理後では見えている。この強度をサンプルごとにプロットすると117図のようになり、どの試料も処理後に増加していることを確かに示しており、さらにそのピークも処理後に見えていることが113図と116図の比較でもわかる。m/z 302.3のピークを拡大したものが114図である。
前記ピークをMS/MS分析すると図49のスペクトル118となり、質量スペクトルデータバンク内のデータ119と比較するとこの分子がジヒドロスフィンゴシン120であることがわかった。このようにして分子が迅速に同定でき、もしデータがデータバンクなどに合致するものがあれば、細胞からの内部成分の捕獲から、鍵となる分子ピークの抽出まで2−3時間、そしてMS/MS分析で分子構造を決めるまで2時間で決定できるという圧倒的なスピードと分子同定までできる高精度な分析法となる。さらに細胞の形態変化との連動もできるのが特徴である。
図50はそのときのm/z 302.3のピークの強度の時間経過をその消失関数にあわせて回帰分析を行ったもので、その関数は、良くこのピーク強度の時間変化を表していることを示している。このように、回帰分析により1細胞内での分子の動態をシミュレートすることも可能となる。
今回の質量分析法は、網羅性が確保でき、かつイオン化の最中にMS/MS分析できやすいナノスプレーイオン化法を利用しているが、高分子成分に強いMALDIイオン化法も採用できる。従来は細胞1ヶ丸ごと取り出し、マトリックス溶液を添加し、マトリックスの微結晶化と共に細胞の行き先を認識し、それでも真空中にサンプルプレートは入ってしまうので、テレビ画面を頼りに、細胞1ヶの微小サイズに当たるまでレーザーを打ち続けて探す手間のかかる分析法であり、また細胞1ヶ丸ごとなので、細胞膜成分など、強く出てくる分子に他の分子がマスクされイオン化できないで、少ないピーク数しか検出できない手法であった。本発明により、図51の様に、細胞膜成分を含まない、あるいは細胞膜のみなど、部位特異的な成分捕捉ができ、その試料を、サンプルプレート264上の場所の明確な所にスポットし、マトリックス溶液265を添加し、MALDIイオン化によりナノスプレーが不得意な高分子成分が検出できた。
図52は分析法が質量分析法以外の場合を示した。この方法では、捕獲した細胞内成分を二つの液流を一本のライン内で起こしているシースフロー内に注入し、ラインへの細胞成分の接触や吸着が起こらないようにして原子吸光やICPあるいはICP−MSなどに導入し、細胞内の金属イオンなどの無機物を検出することができる。
図53はマイクロチップ133化した分離系に本手法で捉えた細胞一ケの試料3を添加し、濃縮ゾーン136などでその成分を濃縮してキャピラリー電気泳動134を起こして、分離し、チップ化した先端138に高圧を印加し、ナノスプレー5を誘導するものである。
図54は同様な分離をキャピラリー本体のみで達成した例である。微量な試料溶液はキャピラリー後端の非充填ゾーンに添加されキャピラリー電気泳動により分離する。この場合、キャピラリー内には高分子ゲルなどが存在していてもかまわない。
こうしてこの方法で、図55の様に、細胞を薬物処理する前と後でTICを比較し、ある溶出時間でのスペクトルの比較を行うと、明らかに異なる分子ピークが見られている。
さらに図56では、ハイスループットを目指して1細胞系ではないが、多細胞系での迅速な細胞内分子動態追跡法を示したものである。この図では多細胞がサンプルプレートに空けられたウエル142内に置かれ、細胞培養液143で一定の増殖を起こさせ、そして処理を施し、処理と未処理の細胞群を、細胞捕捉用フィルター144を通して洗い、その後細胞内成分溶出イオン化溶液147で細胞を溶解し、ウエル下部に設けられた導電性のナノスプレー中心突起部145からナノスプレーイオン化を起こし、質量分析計に試料を導入するものである。
図57も同様で、細胞を最後に溶解したのち、ウエルの下部からナノスプレーニードル149を突き刺して、それに高圧電場を印加してナノスプレーを引き起こすところが相違点である。細胞破砕には超音波などを使用してもよい。
図58は、この様にしたウエルをサンプルプレート150内に配して、その下部145または149から次々にルーティーンでナノスプレーを引き起こし、質量分析するものである。
図59は、さらに高速に1細胞質量分析を可能とした例であり、セルソーターから出てくる荷電された細胞含有163を、落ちてくる細胞含有荷電液滴のタイミングに合わせて、ポジティブ高圧パルス166あるいはネガティブ高圧パルス166をパルスナノスプレー167あるいはパルス電極168あるいはパルスレーザー169に印加して細胞含有荷電液滴を微細に吹き飛ばし、質量分析計へ導入するものである。これにより非常に高速の細胞形態を検出する手法との連携で進めることができる。
図60は、図59の発展系であり、ポジティブとネガティブに荷電された細胞含有液滴163をそれぞれ専用のパルス電極168(ポジティブ)と175(ネガティブ)で吹き飛ばし、ポジティブイオン専用質量分析計172およびネガティブ専用計174に導入するものである。これによりさらに1細胞分子解析の高速化を達成できた。
図61は、図59で示したセルソーターと質量分析計を合体したシステムの1例である。これにより、セルソーターで得られる細胞の形態や表面マーカーを反映するスキャッタグラムとデンシトグラムおよび同時に質量分析で得られた各細胞の属性を示す主成分解析結果およびMSスペクトルを同時に得ることができる。
図62は前述の血球細胞でのスキャッタグラム182とリンパ球のみ選んだ蛍光マーカーのデンシトグラムを示す。
図63は選ばれたリンパ球のポジティブモードでのMSスペクトルから割り出された主成分解析結果184により3つの細胞タイプグループがあることがわかり、それらの平均MSスペクトル185が得られた。
これらの分子は、同時に観察されている細胞挙動と関係づけられるのみでなく、他の検出された分子群と関係付けることで、生命現象の分子メカニズムが分かるのみでなく、新しい医薬品の候補として、あるいは、これがガン細胞であれば病因分子の発見やメカニズム解明にもつながり、さらには診断法の開発にも展開しうる。今まで世界的に、この様な分析プロセスをもって、1細胞から分子が、しかもその細胞挙動観察下で、検出され、その多くの分子ピークの中から、ある分子ピークが細胞挙動あるいは置かれた細胞の状態に帰属するその帰属度まで含め評価され、さらに、その分子の構造まで決定された例はない。何よりも、今まで分からなかった生命現象のメカニズムが飛躍的なスピードで解明され、その様々な応用が飛躍的なスピードで進展するようになることは論を待たない。
上述のように、本発明は、生命現象とその分子メカニズムの両方を細胞1つまでミクロなスケールで、迅速かつ直接的に解明する手段を与え、その用途は膨大である。何よりも疾患細胞と正常細胞の動態と分子比較による疾患の分子メカニズムの解明が加速する。そして、細胞内分子メカニズムが分かれば、その分子あるいはメカニズムを利用した創薬や診断法、治療法の開発、新しい分子が見つかれば新医薬品への応用あるいはライフサイエンス用の試薬の開発、など実に多彩な応用が考えられる。何よりも、今まで分からなかった生命現象のメカニズムが飛躍的なスピードで解明されるようになることは論を待たない。
合目的的に動き外部因子に応答している細胞は、その挙動と細胞内分子動態が連動することが多く、細胞の顕微観察と分子検出をリアルタイムに行うことで、生命現象の合目的的分子メカニズムを迅速に解明することができる。本発明は、生命現象とその分子メカニズムの両方を細胞1つまでミクロなスケールで、迅速かつ直接的に解明する手段を与え、その用途は膨大である。何よりも疾患細胞と正常細胞の動態と分子比較による疾患の分子メカニズムの解明が加速する。そして、細胞内分子メカニズムが分かれば、その分子あるいはメカニズムを利用した創薬や診断法、治療法の開発、新しい分子が見つかれば新医薬品への応用あるいはライフサイエンス用の試薬の開発、など実に多彩な応用が考えられる。
また、細胞内や生体組織中の細胞内の様々な分子メカニズムの解明の高速化は、医薬品候補分子も含め新分子の発見、新生命現象の発見の高速化をもたらし、医療や診断あるいはバイオ応用を大きく展開し加速することができる。例えば、再生医療などの万能細胞の細胞分化因子の高速探索、細胞分化制御、細胞増殖因子の発見や制御法、がん細胞など細胞種の分子診断や分子探索、細胞種の同定など様々な分析が高速に展開することとなる。
現在、各種疾患について網羅的な解析が進められている多くの遺伝子およびその発現産物であるタンパク質等と関連して、細胞内の低分子動態を明確にすることができ、統合的な生命現象の解明が可能となり、生命現象の統合的理解は、人類の生命、健康の増進に大きく貢献し、付帯的な様々な事業を生み出しうる。
また、食品分野では、風味、香り等微妙な品質を研究できる細胞内の低分子動態の解析手段を与えることができる。
さらに一般的化学品製造産業等において、例えば、ナノテクノロジーの微小域分子機構の解明や、有機半導体、有機導電体、有機光学材料のように高純度が要求される製品の製造管理、あるいは食品添加物等の健康面での品質保証が重要な製品の製造過程において、微量の副生物が、物理化学的性能または安全性等の要求品質に悪影響を与えるような製造工程では、そのような副生物の監視、製造管理、品質管理など、微小域での分子検出と解析が可能となる。
アレルギー細胞のアレルギー応答における顆粒放出の瞬間とその顆粒放出数の各細胞の時間変化。 ナノスプレーイオン化細管チップ(下図)とその作動図(上図)。 細胞を顕微観察しながら細胞内溶液をナノスプレーイオン化細管チップで吸引する図。 ナノスプレーイオン化細管チップとして、当該チップ表面に導電性コーティングをしている場合(上図)と、導電性コーティングしていない為、捕獲した細胞内溶液をイオン化スプレーとして質量分析に導入するため、チップ内に捕獲した細胞内溶液にイオン化補助溶媒を添加後、高圧電場端子を挿入している(下図)図。 顕微鏡で観察している細胞に、ナノスプレーイオン化細管チップを刺し、1細胞内成分を吸引し、適切なイオン化溶媒を添加した後、すぐに質量分析装置に導入し、細胞の動きや形状などの現象を捉えながら、リアルタイムで細胞内液の分子を質量分析法で検出するためのシステム構成例。 異なった状態の細胞aとbから検出した質量分析スペクトルを比較し、ここでは差分を取ることで、ある状態特異的なピークを抽出し(20(a−b))、そのピークを示す分子を選択してコリジョンセルでフラグメント化して得た質量分析スペクトル((MS/MSスペクトル(21))から分子構造を決定する分子探索および分子同定プロセスの原理図。 異なった状態の細胞aとbから検出した質量分析スペクトルのt−検定の結果、状態aに特異的(t−検定値95%以上)なピークの抽出例とその精密質量数およびその検出条件とt−検定値。 ある状態の11ヶの細胞に特異的に見つかった同じm/z値を示すピークの強度(左のグループ(27))の、比較細胞6ヶでのピーク強度(ほとんどゼロ(右のグループ(28)))に対するグループ依存性。 観察下の肥満細胞から細胞内液を取り出し、本発明による一連のプロセスを経て分子探索を行った例。 1つの肥満細胞モデルRBL−2H3細胞内にある顆粒203および細胞質204の成分の質量スペクトル。顆粒内および細胞質内で見られた各m/zのスペクトルの拡大図205−210とそれぞれのm/zを示すピークのt-検定によるt-値を併記。この場合、t-値は顆粒局在であれば100に近く細胞質局在であれば−100に近くなる。 図10に見られた5つの分子ピークのMS/MS解析。 図10,11の結果による5つの分子の代謝過程とその局在。 肥満細胞モデルRBL−2H3細胞内の1顆粒内成分解析から得られたヒスチジンを中心と代謝マップ。 肥満細胞モデルRBL−2H3細胞のカルシウムイオノフォア刺激により細胞外に放出された成分の検出。 7種の細胞種の1細胞質量分析スペクトルによる分類:主成分解析結果スコアープロット221とローディングプロット222。 P19細胞のレチノイン酸による細胞分化誘導前後の形態変化と1細胞質量スペクトルおよび分子探索。 HepG2細胞を用いた1細胞薬物代謝物の検出。 1細胞質量分析検出法を応用した1点採取血液による血液内成分検出。 植物(ゼラニウム)の葉と茎を対象とした1細胞直接分析と分子探索。 標識分子を利用した1細胞内外分子追跡法。 キナクリンの肥満細胞モデル細胞系での取り込み局在の検出例。 肥満細胞モデル細胞系での同位体標識ヒスチジンの取り込み追跡例。 ピーク強度補正のための溶媒ピークによる内部標準法。 ナノスプレーイオン化細管による細胞内成分捕獲と質量分析導入のシステム構成図。 ナノスプレーイオン化細管による細胞内成分捕獲時におけるチップ先端計測方法とマイクロマニュピレーターの駆動方法。 ナノスプレーイオン化細管による細胞内成分捕獲と質量分析導入の自動化システム構成図。 浮遊細胞捕獲法を付加した、ナノスプレーイオン化細管による細胞内成分捕獲と質量分析導入の自動化システム構成図。 ナノスプレーイオン化細管の導電材コーティング例。 ナノスプレーイオン化細管内部に試料溶媒親和性細心材(溶媒経路細線)や導電性細心材を配するもの。 ナノスプレーイオン化細管内部に試料溶媒親和性細心材(溶媒経路細線)を配するものと配さないもののナノスプレーの安定性の比較。 疎水表面をもつナノスプレーイオン化細管による細胞内刺入イメージ。 ナノスプレーイオン化法による1細胞分析を可能とするイオン化細管先端部での分子溶出イメージ。 細胞内成分捕獲液へのイオン補助溶媒の導入法。 ナノスプレーイオン化細管先端内面の各種修飾法。 ナノスプレーイオン化細管先端内面への各種樹脂充填法。 細胞内成分吸引後の浮遊樹脂による濃縮および溶出検出。 細胞内成分吸引後の固定樹脂あるいは内面コートによる濃縮および溶出検出。 ウエル型細胞内成分のイオン化導入法。 細胞内成分捕獲液内での成分増幅あるいは熱変性処理法。 ナノスプレーイオン化細管の先端詰まり解決法。 吸引操作を簡単にする為の改良ナノスプレーイオン化細管と周辺器具。 1細胞ナノスプレーイオン化法における各種印加電圧のかけ方。 極微量吸引体積および希釈率の評価法。 本手法のデータ処理システムの作業内容と連携図。 ナノLC用分離を用いた細胞内成分分析例。 リンパ細胞のステロイド処理前後でのフラクション毎のマススペクトル(3次元表示)。 t-検定で図20のピーク群から属性の高いものとして抽出した質量スペクトルピーク。 m/z 302.3のスペクトルの存在群。 m/z 302.3のMS/MSスペクトルおよび同定された分子構造。 m/z 302.3ピークの経時変化の関数回帰解析。 1細胞ナノスプレーイオン化細管による成分捕捉とMALDI−TOF検出。 1細胞原子吸光分析あるいはICP、ICP−MS分析法。 マイクロ電気泳動チップを用いた1細胞分析例。 マイクロ分離キャピラリーを用いた1細胞分析例。 異なる状態の細胞によるナノ分離例。(a)ステロイド処理前。(b)ステロイド処理後。 サンプルプレート用ウエルを用いた多細胞内成分質量分析例1。 サンプルプレート用ウエルを用いた多細胞内成分質量分析例2。 サンプルプレート型ナノスプレーによる多細胞内成分質量分析例。 セルソーター型高速1細胞質量分析システム。 セルソーター型高速1細胞質量分析システム(ポジティブおよびネガティブ同時型)。 セルソーター型高速1細胞質量分析一体型システムの構成図。 セルソーターによるスキャタグラムおよびデンシティーグラム。 質量分析計から同時に得られた主成分解析結果およびMSスペクトル。
符号の説明
1 ナノスプレーイオン化細管(表面金属コーティング型)
1´ ナノスプレーイオン化細管(試料溶液電極挿入型)
2 質量分析装置
3 試料溶液または細管後端からさらにイオン化補助溶媒を添加した混合液
4 高圧電圧(この場合はポジティブモードの例でありチップ側が+)
5 ナノスプレー
6 細管表面の金属コーティング部
7 ナノスプレーイオン化細管本体部(この例は絶縁体)
8 細胞
9 顕微鏡ステージ
10 捕捉した細胞液
11 対物レンズ
12 ビデオカメラ
13 吸引操作
14 溶液挿入電極部
15 シャーレ
16 細胞培養液
17 モニター
18 コンピューター
19 シャーレ内培養細胞のビデオ顕微画像
20 画面内細胞の標的細胞内液から得られた質量スペクトル
21a 細胞aから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトル
21b 細胞bから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトル
22 21aから21bの差分として得られた質量スペクトルピーク
23 22で得られたピークを親ピークとして選択し得たMS/MSスペクトル
24 質量スペクトルピーク名
25 m/z値
26 t−検定値
27 ある状態に属する11ヶの細胞群(27)に特異的に見つかったm/z値のスペクトルピークを示す、それぞれの細胞から測定された各スペクトルピーク強度
28 27とは異なった状態に属する6ヶの細胞群(28)に見られる、27と同じm/z値のスペクトルピーク強度
29 細胞からナノスプレー細管チップ1で細胞内液を捕獲する時の顕微ビデオ像
30 細胞Aから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトル
31 細胞Bから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトル
32 細胞Aから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトルと細胞Bから捕獲した細胞内液から得られた質量スペクトル間でのt−検定の結果
33 細胞Aで特異的に検出された分子ピークの1つm/z=112.0909のMS/MS解析の結果得られたフラグメントスペクトル
34 細胞Aで特異的に検出された分子ピークm/z=112.0909のMS/MS解析の結果決定されたヒスタミンの化学構造
35 細胞刺入ナノスプレーイオン化細管を細胞位置まで駆動するホルダーのX-Y-Z駆動ステージ(この図では電動型、手動のギア粗動・微動型もあり)
35´細胞ホールド用細管を細胞位置まで駆動するホルダーのX-Y-Z駆動ステー
36 細胞刺入ナノスプレーイオン化細管を細胞位置まで駆動するホルダーの軸方向アクチュエーター(この図では電動型、他に手動のピストン駆動型もあり)
36´細胞ホールド細管を細胞位置まで駆動するホルダーの軸方向アクチュエーター
37 細胞刺入ナノスプレーイオン化細管を細胞位置まで駆動する軸方向アクチュエータによる細胞刺入および吸引後引き戻し移動方向
37´細胞ホールド細管を細胞位置まで駆動する軸方向アクチュエータによる細胞刺入および吸引後引き戻し移動方向
38 細胞刺入ナノスプレーイオン化細管ホルダー駆動制御装置
38´細胞ホールド用細管
39 細胞刺入ナノスプレーイオン化細管ホルダー駆動用端末(この図ではジョイスティック、他にピストン駆動型回転体もあり)
40 細胞成分吸引駆動用チューブ
41 細胞成分吸引用ピストン(注射器でも代用可)
42 細胞成分吸引用ピストン駆動装置
43 ナノスプレーイオン化細管先端検出用対物レンズ1
44 ビデオカメラ1
45 ナノスプレーイオン化細管先端検出用対物レンズ2
46 ビデオカメラ2
47 ナノスプレーイオン化細管先端検出用モニター
48 ナノスプレーイオン化細管先端指定位置マーク(モニター画面上)
49 制御用コンピューター
50 吸引・送液ポンプ
51 吸引チューブ
52 送液チューブ
53 導電性材料
54 ナノスプレーイオン化細管外面コーティング
55 外面免コートナノスプレーイオン化細管(54)の細胞刺入部
56 試料溶媒親和性細心材(溶媒経路細線)
57 導電性細心材
58 内面コーティング
59 繊維状あるいは鎖状充填物質
60 刷毛状に表面結合した物質
61 疎水性物質表面結合体あるいはコーティング
62 陽イオン性物質表面結合体あるいはコーティング
63 陰イオン性物質表面結合体あるいはコーティング
64 抗体などの受容体結合表面
65 抗原あるいは基質などの結合表面
66 酵素などの結合表面
67 核酸類の結合表面
68 61から67の様な表面結合体をもつ充填剤あるいは分子ふるい充填剤
69 フリット材
70 分子捕捉溶液
71 ミクロピペット
72 溶出溶媒とイオン化補助溶媒の混合液
73 ウエル型ナノスプレー部
74 バーナーあるいはトーチ
75 温浴(PCRの場合はサーマルサイクラー)
76 補足した細胞液に処理用の添加試液を加えたもの
77 PCR増幅、熱変性などの処理をする試料液
78 PCR増幅、熱変性などの処理をした試料液
79 放電
80 細胞液などの捕捉試料液に溶出・イオン化溶媒を加えたもの
81 ピンセット
82 レーザー
83 ミラー
84 シリンドリカルレンズ
85 細胞外液に加えた標識化分子あるいは追跡可能な同位体分子
86 細胞内に移動し細胞内液に存在するもの、あるいは細胞内器官に取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子
87 膜に取り込まれたないし結合した標識化分子あるいは追跡用同位体分子
88 細胞内に移動する間に代謝ないし修飾された標識化分子あるいは追跡用同位体分子
89 細胞内器官に取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子
89’ 細胞内器官に取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子の代謝物
90 核内に移行ないし取り込まれた標識化分子あるいは追跡用同位体分子
91 細胞外液に分泌あるいは再放出された代謝ないし修飾された標識化分子あるいは追跡用同位体分子
92 RBL−2H3細胞の本手法により捉えた細胞質成分の質量スペクトル
93 92の○印で囲んだ部分の拡大スペクトル
94 RBL−2H3細胞の本手法により捉えた細胞内顆粒内成分の質量スペクトル
95 94の○印で囲んだ部分の拡大スペクトル
96 m/z 400.2のMS/MSスペクトル
97 96のスペクトルを示す分子であるキナクリン分子の分子構造式
98 MSスペクトルピーク強度補正の為の基準ピークとして使用できる溶媒スペクトルとその中で基準ピークとして使用する特異ピーク(拡大図)
99 超微量の吸引体積を計測する方法
100 顕微鏡で得たナノスプレーイオン化細管先端に捕獲した部分の拡大図
101 超微量の吸引試料に微量溶媒添加などにおける希釈率評価法
102 微量添加液をナノスプレーイオン化細管後部から添加する手法
103 微量添加液をナノスプレーイオン化細管先端部から吸引する手法
104 102あるいは103の手法により形成された先端部内液部の顕微鏡拡大図
105 吸引操作を簡単にする為に吸引装置への簡易結合部を一部に形成したナノスプレーイオン化細管
106 105と吸引ピストンシリンジ(41)あるいは吸引ポンプを振動を伝えないで結合するチューブセットの1例
107 105により試料吸引・イオン化溶媒添加後、ナノスプレーイオン化細管による質量分析計への試料導入をするための装置の1例(クランプ式)
108 ステロイド処理前の細胞のフラクション毎のマススペクトル(3次元表示)
109 ステロイド処理後の細胞のフラクション毎のマススペクトル(3次元表示)
110 108と109のスペクトル群から差分を取り、処理前から減少したピーク群をt-検定法(群への属性の統計的評価)で調べたもの。95%処理前に特異的なピーク群の一覧
111 108と109のスペクトル群から差分を取り、処理後増加したピーク群をt-検定法(群への属性の統計的評価)で調べたもの。95%処理前に特異的なピーク群の一覧
112 111で見つかったm/z302.3のピークが、ステロイド処理前の場合のどこで見つかったか、処理前のTIC(総イオンクロマトグラフィー)中の見つかった位置の表示
113 その時のMSスペクトル(ピークは小さい)
114 113の拡大図
115 111で見つかったm/z302.3のピークが、ステロイド処理後の場合のどこで見つかったか、処理前のTIC中の見つかった位置の表示
116 その時のその時のMSスペクトル(ピークは大きい)
117 t-検定の図(処理後に増加していることが分かる)
118 m/z 302.3のピークのMS/MSスペクトル
119 データバンクにあるDihydrosphingosine標準のMS/MSスペクトル
120 Dihydrosphingosineの構造
121 m/z302.3のピーク強度と、そのレスポンス関数(時間変数)との合致性を調べる回帰分析(この関数に則って変化していることを裏付ける)
122 7種の細胞タイプの1細胞質量スペクトルとその主成分解析によるスコアープロット
123 122における各スペクトルピークの主成分解析によるローディングプロット
124 本手法のデータ処理システムの作業内容と連携図
125 液漏れとめO−リング
126 加圧ポンプ
127 ナノLCポンプ
128 ナノLC用サンプルインジェクター
129 ナノLC用分離(前処理濃縮カラムも可能、あるいは両者の連結も可能)
130 ナノLC用検出器
131 ナノLC用ナノスプレーエミッター
132 ナノインジェクション加圧シリンジ
133 1細胞マイクロ分離チップ
134 1細胞成分分離用マイクロチャンネル(ゲルや樹脂が入っていても良い)
135 1細胞成分濃縮泳動ゾーン
136 試料導入口
137 電極槽
138 ナノスプレー用導電部
139 1細胞マイクロ分離キャピラリー
140 異なる状態の細胞によるナノ分離例(a)ステロイド処理前 (b)ステロイド処理後
141 それぞれで得られたMS部分スペクトル
142 細胞培養を兼ねた細胞成分解析用ウエル
143 細胞培養液
144 細胞捕捉用フィルター
145 導電コーティングされたあるいは導電性の底部と中心突起管部
146 細胞液溶出イオン化溶媒あるいはそれぞれをステップを追って注入
147 細胞内成分溶出イオン化溶液
148 セプタム膜(仕切り膜)
149 ナノスプレー針(142のウエル底に突き刺し、セプタム膜(148)を破り、細胞内成分溶出イオン化溶液をナノスプレーする導電性細管)
150 細胞培養を兼ねた細胞成分解析用ウエルプレート
151 送液ポンプ
152 シースフロー用送液ポンプ
153 シースフロー
154 原子吸光あるいはICPプラズマ導入用ネブライザー
155 セルソーターの細胞検出部
156 セルソーター検出部レーザー光源
157 レーザー光源ストッパー
158 前方レーザー小角散乱光
159 前方レーザー小角散乱光検出器
160 セルソーター内を1ヶずつ流れる細胞
161 シースフロー
162 先端荷電電極
163 荷電された液滴に細胞1ヶが入っている
164 タイミングパルサー駆動装置
165 1細胞含有荷電液滴を形成するための高圧パルス(細胞の特性検出結果に基づいて+あるいは−あるいは無荷電とする)
166 落ちてくる細胞含有荷電液滴のタイミングに合わせて、ポジティブ高圧パルスあるいはネガティブ高圧パルスをパルスナノスプレーあるいはパルス電極あるいはパルスレーザーに信号として送る
167 イオン化溶媒のパルスナノスプレー装置
168 空間パルス電場印加用電極
169 パルスイオン化レーザー
170 細胞含有液滴がパルス波により微細な液滴になって、質量分析計に導入される
171 +荷電細胞含有液滴の落下タイミングに合わせたポジティブ高圧パルス
172 ポジティブモード専用質量分析計
173 −荷電細胞含有液滴の落下タイミングに合わせたネガティブ高圧パルス
174 ネガティブモード専用質量分析計
175 +荷電細胞含有液滴がパルス波により微細な+荷電液滴に
176 −荷電細胞含有液滴がパルス波により微細な−荷電液滴に
177 セルソーター
178 セルソーターおよび質量分析計の制御・データ解析システム
179 セルソーターによるスキャタグラムおよびデンシティーグラムなどのモニター
180 質量分析計から同時に得られた主成分解析結果およびMSスペクトル表示モニター
181 パーソナルコンピューター
182 血球のスキャッタグラム
183 リンパ球のみを選んで、蛍光マーカーのデンシトグラム
184 選ばれたリンパ球のポジティブモードでのMSスペクトルから割り出された主成分解析結果(3つのグループがあることがわかる)
185 主成分解析でグループ分けされた3群のそれぞれのMSスペクトル
200 アレルギー細胞のアレルギー応答における顆粒放出の瞬間のビデオ顕微画像(下は明視野像で捉えたもので矢印の顆粒が下右図では消失している、上は顆粒内に蛍光物質を取り込ませてその消失を見たもの、矢印の顆粒(左)が消失している(右))
201 図200下図の様な明視野像のビデオ画像連続差像解析図の一つ、顆粒消失の瞬間の画像内で動きのある顆粒のみが差像で抽出されている。
202 図201の様な画像解析により、顕微鏡視野内の同じ条件の細胞の顆粒のはじた数の経時変化を調べた図
203 RBL−2H3細胞の顆粒1ヶに含まれる成分の質量スペクトル
204 RBL−2H3細胞1ヶの細胞質に含まれる成分の質量スペクトル
205 RBL−2H3細胞の顆粒1ヶに含まれる成分の内、m/z 112(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
206 RBL−2H3細胞の顆粒1ヶに含まれる成分の内、m/z 156(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
207 RBL−2H3細胞の顆粒1ヶに含まれる成分の内、m/z 177(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
208 RBL−2H3細胞1ヶの細胞質に含まれる成分の内、m/z 177(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
209 RBL−H3細胞1ヶの細胞質に含まれる成分の内、m/z 205(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
210 RBL−2H3細胞1ヶの細胞質に含まれる成分の内、m/z 221(下にt−値記載)付近のスペクトル拡大図
211 RBL−2H3細胞1ヶに含まれる成分の内、m/z 156のピークに対するMS/MSスペクトル
212 RBL−2H3細胞1ヶに含まれる成分の内、m/z 112のピークに対するMS/MSスペクトル
213 RBL−2H3細胞1ヶに含まれる成分の内、m/z 205のピークに対するMS/MSスペクトル
214 RBL−2H3細胞1ヶに含まれる成分の内、m/z 221のピークに対するMS/MSスペクトル
215 RBL−2H3細胞1ヶに含まれる成分の内、m/z 177のピークに対するMS/MSスペクトル
216 本発明による1細胞分析から得られた細胞内でのトリプトファン代謝物とヒスチジン代謝物の細胞内局在の模式図
217 本発明による1細胞および1顆粒直接分子解析で得られたヒスチジン代謝物の1顆粒内での代謝マップ
218 RBL−2H3細胞をカルシウムイオノフォアで刺激した時の顆粒放出の画像
219 RBL−2H3細胞をカルシウムイオノフォアで刺激した時、細胞外成分を捕獲した時のスペクトル
220 219において、ヒスタミンのピーク付近の拡大図とヒスタミンの構造式
223 P19細胞のレチノイン酸による細胞分化誘導前の形態と1細胞試料採取
224 P19細胞のレチノイン酸による細胞分化誘導後の神経分化細胞の形態とそこからの選択的1細胞試料採取
225 P19細胞のレチノイン酸による細胞分化誘導前の1細胞質量スペクトル
226 P19細胞のレチノイン酸による細胞分化誘導後の1細胞質量スペクトル
227 上記分化誘導前後で、分化後に特異的なt−値を示すピークのm/zとt-値
228 227のスペクトルピークのMS/MSスペクトルと同定分子構造
229 上記m/z118.1ピーク強度の分化ステップ依存性
230 HepG2の1細胞採取ビデオ観察画像
231 薬物キナクリンの薬物代謝過程
232 1細胞で捉えられたキナクリンの薬物代謝物のスペクトル
233 耳たぶから刺入針を使った血液1滴採取
234 刺入針(金属製)
235 血液
236 添加したイオン化補助溶媒
237 血液直接採取後の本発明による質量スペクトル測定結果
238 比較のためイオン化補助溶媒のみのスペクトル
239 植物(ゼラニウム)葉の顕微鏡拡大図と1細胞直接試料詐取の様子
240 植物(ゼラニウム)葉1細胞直接試料詐取による本発明により検出した質量スペクトル
241 植物(ゼラニウム)茎の顕微鏡拡大図と1細胞直接試料詐取の様子
242 植物(ゼラニウム)茎1細胞直接試料詐取による本発明により検出した質量スペクトル
243 t−検定による葉特異的ピークと茎特異的ピークの探索表
244 葉および茎でのm/z178の局在の様子
245 葉および茎でのm/z311の局在の様子
246 安定同位体導入ヒスチジン
247 安定同位体導入ヒスチジン含有培地で放置したラット肥満細胞の質量スペクトル
248 ヒスチジンとその同位体ピーク(安定同位体注入後1分)
249 ヒスチジンとその同位体ピーク(安定同位体注入後10分)
250 ヒスチジンとその同位体ピーク(安定同位体注入後60分)
251 ヒスチジン代謝物の一つヒスタミンとその同位体ピーク(安定同位体注入後1分)
252 ヒスチジン代謝物の一つヒスタミンとその同位体ピーク(安定同位体注入後10分)
253 ヒスチジン代謝物の一つヒスタミンとその同位体ピーク(安定同位体注入後60分)
254 溶媒経路細線を中にもつナノスプレーイオン化細管(細管)による1細胞試料測定時のトータルイオンクロマトグラフィー(TIC)
255 溶媒経路細線のない市販ナノスプレーイオン化細管(細管)による1細胞試料測定時のトータルイオンクロマトグラフィー(TIC)
256 先端に補足された細胞成分液の中で、添加イオン化補助溶媒により沈殿した高分子成分から低分子成分がイオン化補助溶媒のスプレーによる先端への移動とともに抽出溶離されて行く様子
257 先端に補足された細胞成分液の中で、先端内面の分子親和基に補足されていた分子成分がイオン化補助溶媒のスプレーによる先端への移動とともに抽出溶離されて行く様子
258 先端に補足された細胞成分液の中で、先端に配置された樹脂表面の基との分子親和性で補足されていた分子成分がイオン化補助溶媒のスプレーによる先端への移動とともに抽出溶離されて行く様子
259 印加する高圧直流電圧
260 印加する高圧パルス電圧
261 印加する高圧直流バイアスに重なった正弦波電圧
262 印加する高圧直流バイアス重なった矩形波電圧
263 印加する高圧直流バイアスに重なったのこぎり波電圧
264 MALDI−TOF用サンプルプレート
265 1細胞内成分液のスポットあるいはナノスプレースポッティングの後、レーザー脱離イオン化用マトリックス溶液の添加
266 1細胞成分のMALDI−TOF質量スペクトル

Claims (21)

  1. 細胞の動態を観察しながら、前記細胞を構成し又は前記細胞から出された細胞成分を採取してリアルタイムに質量分析する方法であって、
    顕微鏡を用いて細胞の動態を観察することに並行して、前記細胞の特定の領域又は前記細胞から出された細胞成分の特定の領域に対して、先端部が前記特定の領域の大きさ以下の口径であるナノスプレーイオン化細管を挿入するステップと、
    前記特定の領域内の細胞成分を前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取して前記先端部に留める採取ステップと、
    イオン化補助溶媒を前記ナノスプレーイオン化細管の後端側から導入するステップと、
    質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加することにより、前記細胞成分をナノスプレーイオン化して前記質量分析装置に試料として導入するステップと、
    前記質量分析装置において試料として導入された前記細胞成分を質量分析するステップとを備えた方法。
  2. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部は、0.1から100μmの口径である請求項1に記載の方法。
  3. 前記ナノスプレーイオン化細管の内面又は外面の少なくとも一方は、導電性であり、又は、
    前記ナノスプレーイオン化細管の後端側から前記ナノスプレーイオン化細管の先端部へ延びる導電性細線を備えている請求項1又は2に記載の方法。
  4. 脂溶性を内部に持つ細胞膜を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、疎水性であり、
    親水性素材で形成された細胞膜や細胞壁を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、親水性である請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 前記ナノスプレーイオン化細管の前記先端部の内面は、分子特異的な捕捉を行うように分子親和基を結合させた構造になっている請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に近づくまでの間に、細胞培養液を含む周辺成分が前記先端部に混入しないように前記ナノスプレーイオン化細管内部を外側から加圧し、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に到達した後に、前記加圧を解除し、前記先端部から質量分析の対象となる細胞成分を吸引により採取する請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  7. 液体含有組織に形成された穴から細胞内又は組織内成分を漏出させることにより質量分析の対象となる細胞成分を前記先端部から採取する請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  8. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部の3次元位置を制御するマニュピレータであって、前記ナノスプレーイオン化細管の後端側に取り付けられた状態で観察対象の細胞と前記質量分析装置との間に配置されるマニュピレータを備え、
    前記マニュピレータは、前記細胞成分の採取時には、観察している細胞の質量分析の対象となる採取位置まで前記先端部を誘導し、前記質量分析装置への前記細胞成分の導入時には、前記質量分析装置の試料導入口へ前記先端部を誘導する請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  9. 前記採取ステップは、
    空間的位置が異なる複数の細胞成分、細胞の経時的変化ごとの細胞成分、又は細胞に対して複数の異なる処理を行ったときの細胞の処理前と処理後の細胞成分を、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取し、
    前記質量分析するステップは、
    空間的に、経時的に、又は処理前後で異なる複数の細胞成分の各々の質量スペクトルを導出し、導出された各々の質量スペクトル間の差を抽出することにより、顕微鏡により観測された細胞の中での空間的及び時間的な相違に関連する分子を評価ないし特定することを含む請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  10. 前記質量分析するステップは、
    既知の質量スペクトルを予めコンピュータに記憶し、
    試料として導入された細胞成分の質量スペクトルをナノスプレーイオン化中に導出し、
    前記細胞成分の前記質量スペクトルと前記既知の質量スペクトルとの差を抽出して前記細胞成分を解析し、
    質量フィルタにより抽出された前記細胞成分内の特定の分子に対して高次の質量分析を実行することにより、分子を同定することを含む請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  11. 細胞の動態を観察しながら、前記細胞を構成し又は前記細胞から出された細胞成分を採取してリアルタイムに質量分析するシステムであって、
    質量分析の対象となる細胞成分を含む細胞の動態を観察するための顕微鏡と、
    前記細胞の特定領域の細胞成分を採取するために前記特定領域の大きさ以下の口径である先端部とイオン化補助溶媒を導入するための後端部とを有するナノスプレーイオン化細管であって、質量分析の対象となる前記細胞成分をイオン化することが可能なナノスプレーイオン化細管と、
    試料導入口を有し、試料として導入されたイオン化後の細胞成分を質量分析する質量分析装置と、
    前記質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加する電場印加部とを備え、
    顕微鏡で観察している細胞内に侵入して特定の領域の細胞成分を前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取すると共に前記ナノスプレーイオン化細管の後端側からイオン化補助溶媒を導入するように構成されており、前記質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加することにより、前記質量分析装置に前記細胞成分をイオン化して試料として導入して質量分析するシステム。
  12. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部は、0.1から100μmの口径である請求項11に記載のシステム。
  13. 前記ナノスプレーイオン化細管の内面又は外面の少なくとも一方は、導電性であり、又は、
    前記電場印加部は、前記ナノスプレーイオン化細管の後端部から前記ナノスプレーイオン化細管の先端部へ延びる導電性細線を備えている請求項11又は12に記載のシステム。
  14. 脂溶性を内部に持つ細胞膜を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、疎水性であり、
    親水性素材で形成された細胞膜や細胞壁を隔壁として持つ細胞を分析対象とする場合、前記ナノスプレーイオン化細管の外面は、親水性である請求項11から13のいずれか1つに記載のシステム。
  15. 前記ナノスプレーイオン化細管の前記先端部の内面は、分子特異的な捕捉を行うように分子親和基を結合させた構造になっている請求項11から14のいずれか1つに記載のシステム。
  16. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に近づくまでの間に、細胞培養液を含む周辺成分が前記先端部に混入しないように、前記ナノスプレーイオン化細管は、内部が外側から加圧され、前記ナノスプレーイオン化細管の先端部が観察中の細胞に到達した後に、前記加圧が解除され、前記先端部から質量分析の対象となる細胞成分を吸引により採取するようになっている請求項11から14のいずれか1つに記載のシステム。
  17. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部の3次元位置を制御するマニュピレータであって、前記ナノスプレーイオン化細管の後端側に取り付けられた状態で観察対象の細胞と前記質量分析装置との間に配置されるマニュピレータをさらに備え、
    前記マニュピレータは、細胞成分の採取時には、観察している細胞内の質量分析の対象となる細胞成分の位置まで前記先端部を誘導し、前記質量分析装置への前記細胞成分の導入時には、前記質量分析装置の試料導入口へ前記先端部を誘導する請求項11から14のいずれか1つに記載のシステム。
  18. 前記ナノスプレーイオン化細管の先端部は、
    空間的位置が異なる複数の細胞成分、細胞の経時的変化ごとの細胞成分、又は細胞に対して複数の異なる処理を行った場合における細胞の処理前と処理後の細胞成分を採取し、
    前記質量分析装置は、
    空間的に、経時的に、又は処理前後で異なる複数の細胞成分の各々の質量スペクトルを導出し、導出された各々の質量スペクトル間の差を抽出することにより、顕微鏡により観測された細胞の中での空間的及び時間的な相違に関連する分子を評価ないし特定する請求項11から14のいずれか1つに記載のシステム。
  19. 前記質量分析装置は、
    既知の質量スペクトルを予めコンピュータに記憶し、
    試料として導入された細胞成分の質量スペクトルをナノスプレーイオン化中に導出し、
    前記細胞成分の前記質量スペクトルと前記既知の質量スペクトルとの差を抽出して前記細胞成分を解析し、
    質量フィルタにより抽出された前記細胞成分内の特定の分子に対して高次の質量分析を実行することにより、分子を同定することを含む請求項11から14のいずれか1つに記載のシステム。
  20. 細胞を構成する細胞成分を採取すると共に質量分析のために前記細胞成分をナノスプレーイオン化することが可能なナノスプレーイオン化細管であって、
    口径が前記細胞内の特定領域以下の大きさである先端部と、
    イオン化補助溶媒を導入するための後端部と、
    前記ナノスプレーイオン化細管内部で先端まで延びる溶媒親和性表面を持つ溶媒経路細線とを備え、
    前記ナノスプレーイオン化細管の外面は疎水性であり、
    前記先端部の外面もしくは内面の少なくとも一方は導電性であるか、又は、導入されたイオン化溶媒まで後端側から内部に延びる導電性細線が挿入可能であり、質量分析装置との間に電界を印加できるように構成されているナノスプレーイオン化細管。
  21. 生体組織を構成する細胞成分を採取して質量分析する方法であって、
    先端部が前記細胞の大きさ以下の口径であるナノスプレーイオン化細管の前記先端部を前記細胞に差し込むステップと、
    前記細胞の細胞成分を試料として前記ナノスプレーイオン化細管の先端部から採取するステップと、
    前記細胞成分を前記ナノスプレーイオン化細管の先端部に溜めた状態で、イオン化補助溶媒を前記ナノスプレーイオン化細管の後端側から導入するステップと、
    質量分析装置の試料導入口と前記ナノスプレーイオン化細管との間に電場を印加することにより、前記細胞成分をイオン化して前記質量分析装置に試料として導入するステップと、
    前記質量分析装置において試料として導入された前記細胞成分を質量分析するステップとを備えた方法。
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