JP5315853B2 - 水硬性組成物 - Google Patents
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Description
さらに、本発明は、速硬性・速乾性に優れるとともに、屋外環境下で施工でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を保持し続ける水硬性組成物を提供することを目的とした。
さらに、本発明者らは、速硬性・速乾性に優れる水硬性成分と、樹脂粉末と特定の中空粒子とを含む水硬性組成物を用いることによって、屋外環境下で施工できるとともに、優れた施工効率を達成でき、屋外での長期供用においても優れた耐久性・耐候性を有するコンクリート構造体が得られることを見出した。
本発明の第2は、
前記本発明の水硬性組成物を用いて得られるコンクリート構造体である。
(1)ポリマー中空粒子は、ポリマー中空粒子表面が炭酸カルシウム微粉末で被覆されたポリマー中空粒子であること。
(2)ポリマー中空粒子は、平均粒子径が5〜300μmであること。
(3)樹脂粉末は、該樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されたアクリル共重合体の再乳化形樹脂粉末であること。
(4)アクリル共重合体は、アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体であること。
(5)樹脂粉末は、該樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであること。
(6)樹脂粉末は、該樹脂粉末100質量%中に、該樹脂粉末の1次粒子の粒径が0.1〜1μmの粒子を97質量%以上含むこと。
(7)樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、1〜50質量部の割合で配合されること。
(8)水硬性成分は、ポルトランドセメントを含むこと。
(9)水硬性成分は、アルミナセメントを含むこと。
(10)水硬性成分は、ポルトランドセメント及びアルミナセメントを含むこと。
(11)水硬性成分は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含むこと。
(12)水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉末及び細骨材を含み、さらに凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも2種以上含むこと。
(13)水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは、屋外のモルタル面又はコンクリート面に施工されること。
(14)水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体表面のショア硬度は、スラリー又はモルタルを施工して6時間後に50以上であること。
さらに、本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用い、樹脂粉末と、ポリマー中空粒子表面が炭酸カルシウム微粉末で被覆されたポリマー中空粒子と組合せて用いることで、本発明の水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルは、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性・耐候性を提供することができる。
さらに、本発明の水硬性組成物は、水硬性成分としてアルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含むことが、速やかな硬化特性と低収縮性を安定して得られることから特に好ましい。
石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
さらに、本発明では、水硬性成分として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いることが特に好ましい。
水硬性成分として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いる場合には、水硬性成分の成分構成は、好ましくはアルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント5〜70質量部及び石膏5〜45質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、さらに好ましくはアルミナセメント25〜70質量部、ポルトランドセメント10〜60質量部及び石膏10〜40質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、より好ましくはアルミナセメント30〜60質量部、ポルトランドセメント20〜50質量部及び石膏15〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、特に好ましくはアルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント30〜40質量部及び石膏20〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成を用いることにより、速硬性・速乾性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少なく、クラックの発生を抑制した硬化体が得られやすく、高耐久な硬化体を得る上で好ましい。
ポリマー中空粒子を使用した場合の効果としては、凍結融解の過程で発生する水硬性組成物を用いた硬化体内部の微小領域の応力を、弾性に富むポリマー中空粒子が部分変形して吸収し、硬化体自体の構造的破壊を回避する効果を挙げることができる。
本発明の水硬性組成物は、ポリマー中空粒子として、ポリマー中空粒子表面が無機質微粉末で被覆されたものを好適に使用できる。中空粒子表面が無機質微粉末によって被覆されていることにより、水硬性成分や樹脂粉末などとプレミックス化する場合のハンドリング(取扱い性)が大幅に向上すると共に、ポリマー中空粒子を含む水硬性組成物と水とを混練してスラリーやモルタルを調製する場合に優れた分散性を安定して得ることができる。
ポリマー中空粒子表面を被覆する無機質微粉末は、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機質微粉末から適宜選択して用いることができる。中空粒子表面が無機質微粉末によって被覆されていることにより、ポリマー中空粒子を水硬性成分や樹脂粉末などとプレミックス化する場合のハンドリング(取扱い性)が大幅に向上すると共に、ポリマー中空粒子を含む水硬性組成物と水とを混練してスラリーやモルタルを調製する場合に優れた分散性を安定して得ることができる。
特に、炭酸カルシウム微粉末自体が化学的に安定性が高いため、炭酸カルシウム微粉末で被覆されたポリマー中空粒子は、耐候性や非凝集性(分散性)に優れることから好適に用いることができる。
ポリマー中空粒子表面を被覆している無機質微粉末の粒子径は、ポリマー中空粒子の粒子径に対応して適宜選択することができ、好ましくは0.1〜20μmの範囲、さらに好ましくは0.5〜10μmの範囲、特に好ましくは1〜5μmの範囲の粒子径を有するものを好適に使用することができる。
無機質微粉末によるポリマー中空粒子表面の被覆率は、好ましくはポリマー中空粒子表面の50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上の表面を被覆していることが、上記のような良好なハンドリング性と優れた分散性とを安定して発揮する上で好ましい。
ポリマー中空粒子のポリマーの種類は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、エチレン酢酸ビニル系及びアクリル系樹脂など熱可塑性ポリマーやこれらを変性したものを使用することができ、特にポリアクリロニトリル樹脂を主成分とするポリマー中空粒子は、良好な耐圧性を有することから好適に用いることができる。
ポリマー中空粒子の粒子径は、ポリマー中空粒子を含む水硬性スラリーまたは水硬性モルタルの硬化体が凍結融解を繰り返す過程で発生する硬化体内部の応力を効果的に吸収するために、好ましくは1〜500μmの範囲、さらに好ましくは3〜300μmの範囲、より好ましくは5〜200μmの範囲、特に好ましくは10〜150μmの範囲の粒子径を有するものを好適に使用できる。
ポリマー中空粒子の平均粒子径は、ポリマー中空粒子を含む水硬性スラリーまたは水硬性モルタルの硬化体が凍結融解を繰り返す過程で発生する硬化体内部の応力を効果的に吸収するために、好ましくは5〜300μmの範囲、さらに好ましくは10〜200μmの範囲、より好ましくは50〜150μmの範囲、特に好ましくは80〜120μmの範囲の粒子径を有するものを好適に使用できる。
ポリマー中空粒子の外層を形成する膜厚は、ポリマー中空粒子を含む水硬性スラリーまたは水硬性モルタルの硬化体が凍結融解を繰り返す過程で発生する硬化体内部の応力を効果的に吸収するために、好ましくは0.01〜5μmの範囲、さらに好ましくは0.05〜3μmの範囲、特に好ましくは0.1〜2μmの範囲の膜厚を有するものを好適に使用できる。ポリマー中空粒子の外層を形成する膜厚が上記範囲であれば、ポリマー中空粒子にかかる外部圧力を適度に吸収できることから好ましい。
ポリマー中空粒子の耐圧性は、好ましくは50kg/cm2以上、さらに好ましくは100kg/cm2以上、特に好ましくは200kg/cm2以上のものを用いることで、ポリマー中空粒子を含む水硬性組成物を用いた硬化体に、優れた凍結融解抵抗性を付与することができる。なお、ポリマー中空粒子の耐圧性とは、ポリマー中空粒子を水中に分散させた容器にエアレスポンプを用いて加圧後、開放して真比重を測定し、その回復率が90%以上を示す圧力とする。
本発明で使用するポリマー中空粒子は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.3〜12質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部、特に好ましくは1〜8質量部の範囲で配合することによって、良好な作業性と高耐久な硬化体特性を併せて得ることができる。ポリマー中空粒子の配合割合が、前記範囲よりも大きい場合、水硬性組成物に水を加えて得られる水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体の圧縮強度が低下する傾向がある。また、配合割合が前記範囲より小さい場合には、水硬性スラリー硬化体又は水硬性モルタル硬化体の耐久性・耐候性の向上効果が十分に得られないことがあるため好ましくない。
樹脂粉末は、乾燥によって発生する収縮応力がひび割れ発生に繋がる過程で、ひび割れの発生に対する抵抗性を向上させる効果及び硬化体組織を緻密化する効果がある。
樹脂粉末としては、樹脂の粉末化方法などの製法については特にその種類は限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができ、また樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に粉末樹脂の表面に付着しているものを用いることができる。
樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いることが好ましい。
樹脂粉末としては、アクリル共重合系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、スチレンブタジエン合成ゴム系、又は酢酸ビニルベオバアクリル共重合系のものを使用することができ、特に、屋外環境下で水硬性組成物を用いた水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体が長期供用された場合にも、高い耐久性・耐候性が得られることからアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を好適に使用できる。
アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を使用した場合の効果としては、前記の通り高い耐久性・耐候性が得られるほかに、水硬性スラリー又は水硬性モルタルを施工した場合の硬化体表面の乾燥に伴う皺や気泡跡の発生、又は、材料分離によるブリージング水の発生を防止して、硬化体表面の仕上りを大幅に向上させる効果、さらには、硬化体の弾性を高めてひび割れの発生を防止する効果が挙げられる。
樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いる。
本発明では、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末として、保護コロイド系アクリルエマルジョンから製造されたアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができ、特に、保護コロイド系アクリルエマルジョンから製造されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができる。
本発明で特に好適に用いられるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末は、保護コロイド系アクリルエマルジョンから製造されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末であり、カチオンタイプのアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末もそのひとつとして好適に用いることができる。
本発明で特に好適に用いられるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは−10℃〜20℃の範囲、さらに好ましくは−5℃〜15℃の範囲、より好ましくは0℃〜12℃の範囲、特に好ましくは6℃〜10℃の範囲のものを好適に使用することができる。
前記範囲の粒径の1次粒子を前記の範囲で含む場合、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を用いた水硬性スラリー又は水硬性モルタルでは、良好な施工性と作業性を得ることができる。
再乳化型樹脂粉末の1次粒子表面が、ポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されていることによって、再乳化の過程で速やかに且つ均一にもとのエマルジョンの状態(樹脂粉末化前の状態)、すなわち、水硬性スラリー又は水硬性モルタル中に1次粒子が均一に分散した状態を実現することができる。
アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末の2次粒子の粒子径は、好ましくは20〜100μmの範囲であり、さらに好ましくは30〜90μmの範囲であり、より好ましくは45〜85μmの範囲であり、特に好ましくは50〜80μmの範囲であることが、再乳化型樹脂粉末を含む水硬性組成物と水とを混練してスラリー化する過程で、再乳化型樹脂粉末の2次粒子が水硬性組成物に含まれている細骨材によって解砕されて容易に再分散し、1次粒子が均一に分散した状態になりやすいことから前記範囲の2次粒子径を有する再乳化型樹脂粉末を用いることが好ましい。
水硬性組成物において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とするのが好ましい。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm2/g以上のものを用いることができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは50〜400質量部、さらに好ましくは100〜300質量部、特に好ましくは150〜250質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.075〜1.5mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.1〜1mmの骨材、特に好ましくは0.15〜0.6mmの骨材を主成分としていることが好ましい。
細骨材の種類は、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機材料、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、廃FCC触媒、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤を使用することができる。
流動化剤は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、水硬性成分100質量部に対して好ましくは0.01〜3.0質量部、さらに好ましくは0.05〜2.0質量部、特に好ましくは0.1〜1.5質量部を配合することができる。
特に、流動化剤は、ポリエーテル系、あるいは、ポリエーテルポリカルボン酸系の流動化剤を、水硬性成分に対して上記の適正範囲で配合することによって、自己流動性(セルフレベリング性)に優れる水硬性組成物を得ることができる。
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
特に重炭酸ナトリウムや酒石酸二ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
又、上記リチウム塩を使用し、リチウム塩と併用して硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等の凝結促進成分を併用することができ、更に促進効果を高めることができる。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.02〜0.3質量部、特に好ましくは0.02〜0.2質量部の範囲で用いることによって、水硬性組成物の可使時間を確保したのち好適な速硬性・速乾性が得られることから好ましい。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.05〜0.8質量部含むことが好ましい。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、1種類の消泡剤を用いる場合、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.001〜3.0質量部、さらに好ましくは0.005〜2.5質量部、より好ましくは0.01〜2.0質量部、特に0.02〜1.7質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
また、2種類以上の消泡剤を併用する場合の消泡剤の添加量は、それぞれの消泡剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1.3質量部、特に0.02〜1.1質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
さらに、本発明の水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含む水硬性成分と、樹脂粉末と、ポリマー中空粒子とを含み、その他の成分として、無機成分、珪砂などの細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤を含むことができる。
本発明の水硬性組成物を構成する場合に、特に好適な成分構成は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分、樹脂粉末、ポリマー中空粒子、無機成分、珪砂などの細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤を含むものである。
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物(C)と水(W)とを質量比(W/C)が、好ましくは0.10〜0.34の範囲、さらに好ましくは0.11〜0.32の範囲、
より好ましくは、0.12〜0.30の範囲、特に好ましくは0.13〜0.28の範囲になるように配合して混練することが好ましい。
高耐久性な硬化体を得る場合、水硬性スラリー又は水硬性モルタルの施工厚さは、好ましくは施工厚さ0.5mm〜60mmの範囲、さらに好ましくは施工厚さ1.0mm〜40mmの範囲、より好ましくは施工厚さ1.5mm〜30mmの範囲、特に好ましくは施工厚さ2mm〜20mmの範囲で施工することが好ましい。
水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体表面のショア硬度はスラリー又はモルタルを打設してから、
好ましくは6時間後に50以上、
さらに好ましくは5時間後に40以上、
より好ましくは4時間後に10以上、
特に好ましくは3.5時間後に5以上であり、
スラリー又はモルタルの施工(打設)が終了した後、速やかに硬化が進行することによって、短期間の施工作業によってスラリー硬化体又はモルタル硬化体を形成させることができる。
(1)水硬性スラリーの流動性評価:
・フロー値の測定法:
JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの樹脂製パイプ(内容積100ml)を設置し、練り混ぜた水硬性スラリーを樹脂製パイプの上端まで充填した後、パイプを鉛直方向に引き上げる。スラリーの広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とし、スラリーの流動性を評価する。
・セルフレベリング性:
図3に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0ととする。
同様に成形後20分後、30分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をそれぞれL20、L30とする。
・水引き :調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、その後硬化が進行し、表面を軽く触れても、スラリーが付着しなくなるまでの時間とする。
・硬化体表面のショア硬度:
打設後からの所定の経過時間において、硬化した表面の硬度をスプリング式硬度計タイプD型((株)上島製作所製)を用いて、任意の3〜5カ所の表面硬度を測定し、そのスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間の表面硬度とする。
・硬化体表面の性状:
モルタル硬化体表面の仕上り状態は、調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、24時間後に表面の粉化及び気泡発生を評価した。なお、表面仕上りの評価基準は、以下の通りとした。
3:良好、2:やや不良、1:不良。
・凍結融解試験方法:
JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に準拠する。JIS A 1148「コンクリートの凍結融解試験方法」のA法(水中凍結融解試験方法)に従って凍結融解試験を行う。
・相対動弾性係数の測定法:
JIS A 1127によりたわみ振動の一次共鳴振動数を測定する。測定は試験開始前及び凍結融解36サイクルを超えない間隔で行う。試験中における測定は、融解行程終了直後に行う。試験槽から取り出した供試体はその表面を軽くこすり、水洗い後表面の水を拭き取って、速やかにたわみ振動の一次共鳴振動数を測定して、供試体の上下を入れ替えて試験槽に戻す。試験体容器はよく洗い新鮮な水を入れておく。測定終了後は直ちに凍結行程を開始する。
相対動弾性係数は次式によって算出し、四捨五入によって整数に丸める。
1)水硬性組成物 : 下記の原材料を表1に示す配合割合で混合した水硬性組成物を使用した。
・アルミナセメント : フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm2/g。
・ポルトランドセメント : 早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm2/g。
・石膏 : II型無水石膏、セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm2/g。
・細骨材 : 珪砂:5号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ微粉末、リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm2/g。
・樹脂粉末 : アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステルの共重合体、1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されたカチオンタイプの再乳化形樹脂粉末、ニチゴーモビニール社製、LDM7100P。
・中空粒子a : マツモトマイクロスフェアー(ポリマー中空粒子)、80CA、平均粒子径=90〜110μm、炭酸カルシウム被覆処理品、松本油脂製薬社製。
・中空粒子b : マツモトマイクロスフェアー(ポリマー中空粒子)、80GCA、平均粒子径=10〜30μm、炭酸カルシウム被覆処理品、松本油脂製薬社製。
・中空粒子c : セノライト(フライアッシュ・バルーン)、SA、平均粒径=93.9μm、巴工業社製。
・中空粒子d : ファインスフェアー(フライアッシュ・バルーン)、FS−150、平均粒径=66.5μm、巴工業社製。
・中空粒子e : シラックス(シラス・バルーン)、BP−03、平均粒径=10〜200μm、シラックス社製。
・中空粒子f : シラックス(シラス・バルーン)、BP−09L、平均粒径=50〜400μm、シラックス社製。
・中空粒子g : ファインセル(無機系特殊軽量フィラー)、SuperFine、平均粒径=100〜150μm、巴工業社製。
・凝結遅延剤a : 重炭酸ナトリウム、東ソー社製。
・凝結遅延剤b : L−酒石酸ニナトリウム、扶桑化学工業社製。
・凝結促進剤 : 炭酸リチウム、本荘ケミカル社製。
・流動化剤 : ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂製薬社製。
・消泡剤a : ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製、77P。
・消泡剤b : ADEKA社製、アデカネートB115F。
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、表1に示す配合割合で調製した水硬性組成物と水とを、水硬性組成物100質量部に対して水16質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、水硬性モルタルを調製した。
水硬性モルタル硬化体は、JIS R 5201に示される4×4×16cmの型枠に水硬性モルタルを型詰めして、温度20℃、湿度100%の条件で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに温度20℃、湿度65%の気中にて材齢14日まで養生して調製した。
表1に示す成分を配合した水硬性組成物を用いて水硬性モルタルを調製し、モルタルの流動性(フロー値)、セルフレベリング性を測定した。また、水硬性モルタルを型枠に流し込み、水引きまでの所要時間及び所定時間毎のモルタル硬化体表面のショア硬度を測定した。モルタル硬化体表面の表面状態を観察した。これらの結果を表2に示す。
水硬性モルタル硬化体について、凍結融解試験を行って所定サイクル数毎に相対動弾性係数と重量変化率を測定した結果を表3、図1及び図2に示す。
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、表4に示す配合割合で調製した水硬性組成物と水とを、水硬性組成物100質量部に対して水16質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、水硬性モルタルを調製した。
水硬性モルタル硬化体は、JIS R 5201に示される4×4×16cmの型枠に水硬性モルタルを型詰めして、温度20℃、湿度100%の条件で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに温度20℃、湿度65%の気中にて材齢14日まで養生して調製した。
表4に示す成分を配合した水硬性組成物を用いて水硬性モルタルを調製し、モルタルの流動性(フロー値)、セルフレベリング性を測定した。また、水硬性モルタルを型枠に流し込み、水引きまでの所要時間及び所定時間毎のモルタル硬化体表面のショア硬度を測定した。モルタル硬化体表面の表面状態を観察した。これらの結果を表5に示す。
水硬性モルタル硬化体について、凍結融解試験を行って所定サイクル数毎に相対動弾性係数と重量変化率を測定した結果を表6及び表7に示す。
(2)樹脂粉末を用い、中空粒子として無機系中空粒子を用いた比較例1〜6の場合、凍結融解試験で122サイクルの相対動弾性係数は、いずれも80%を下回っており、180サイクルでは全ての供試体が崩壊した。
(3)樹脂粉末を用い、中空粒子としてポリマー中空粒子を用いた実施例1〜5の場合、凍結融解試験で90サイクルまで殆ど相対動弾性係数は低下が見られず、優れた耐候性・耐久性を示した。
(4)特に、中空粒子として平均粒子径が90〜110μmのポリマー中空粒子を、水硬性成分100質量部に対して2質量部以上配合した実施例1及び実施例3の場合、凍結融解試験においてほぼ300サイクルまで高い相対動弾性係数が得られ、卓越した耐候性・耐久性を得ることができることが明らかになった。
Claims (9)
- 水硬性成分と、樹脂粉末と、ポリマー中空粒子と、無機成分と、細骨材と、凝結調整剤と、流動化剤と、増粘剤と、消泡剤とを含み、
前記水硬性成分は、アルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント5〜70質量部及び石膏5〜45質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は100質量部である)からなり、
前記無機成分は、高炉スラグ微粉末であり、水硬性成分100質量部に対し10〜200質量部であり、
前記細骨材は、珪砂であり、水硬性成分100質量部に対し30〜500質量部であり、
前記凝結調整剤は、凝結遅延剤及び凝結促進剤を含み、水硬性成分100質量部に対し凝結遅延剤0.01〜1.5質量部であり、凝結促進剤0.01〜1質量部であり、
前記流動化剤は、水硬性成分100質量部に対し0.01〜3.0質量部であり、
前記増粘剤は、水硬性成分100質量部に対し0.001〜2質量部であり、
前記消泡剤は、水硬性成分100質量部に対し0.001〜3.0質量部であり、
前記ポリマー中空粒子は、ポリマー中空粒子表面が炭酸カルシウム微粉末で被覆されたポリマー中空粒子であり、ポリマー中空粒子の平均粒子径が5〜300μmであり、
前記ポリマー中空粒子は、水硬性成分100質量部に対し0.1〜15質量部であり、
前記樹脂粉末は、樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化形樹脂粉末であり、
前記樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対し1〜50質量部である
ことを特徴とする水硬性組成物。 - 前記ポリマー中空粒子は、ポリアクリロニトリル樹脂を主成分とするポリマー中空粒子であることを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物。
- 前記樹脂粉末は、該樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水硬性組成物。
- 前記樹脂粉末は、該樹脂粉末100質量%中に、該樹脂粉末の1次粒子の粒径が0.1〜1μmの粒子を97質量%以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
- 前記水硬性組成物は、水硬性組成物(C)と水(W)とを質量比(W/C)が0.10〜0.34の範囲で混練して、水硬性スラリー又は硬性モルタルを調製することができることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
- 前記水硬性組成物は、水硬性組成物と水とを混練して調製して得られる水硬性スラリー又は硬性モルタルのフロー値(JASS 15M−103に準拠)が120〜270mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
- 前記水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は硬性モルタルは、屋外のモルタル面又はコンクリート面に施工されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
- 前記水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体表面のショア硬度は、スラリー又はモルタルを施工して6時間後に50以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の水硬性組成物を用いたスラリー硬化体層またはモルタル硬化体層を表層に有するコンクリート構造体。
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