JP5315386B2 - 温度測定回路 - Google Patents
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半導体ダイオードを用いた温度測定回路について概説すると、一般に、温度測定回路は、半導体装置と同一基板に設けられた半導体ダイオードと、この半導体ダイオードの順方向に定電流を印加する定電流回路と、定電流印加時のアノード−カソード間電圧(以下、両端電圧VFと言う)を検出する検出回路と、この検出回路のアナログ出力を読み込みデジタル信号に変換して出力するAD変換器と、を備え、AD変換器のデジタル信号出力で示される両端電圧VFと、定電流値Iとの次式に示す温度依存性の関係式に基づいて温度(絶対温度)Tを算出している。
ただし、kはボルツマン定数、qは電子の電荷、Iは定電流値、Isはダイオード飽和電流密度である。
となり、温度Tで展開すると
が得られる。この式ではダイオード飽和電流密度Isの項が消去されているため、第1要因の影響を抑えて、精度良く温度Tが求められる。
また、2つの定電流値I1、I2のうちの大きい方の定電流値は、その値が大きいと、半導体ダイオードの抵抗成分が影響し、理想的な半導体ダイオードの上記温度特性の式からのズレが大きくなるため、あまり大きな値を用いることができない。一方、小さい方の電流値については、半導体ダイオードを用いた温度検出ではノイズ電流の影響を受け易いことから、あまり小さな電流値を用いることもできない。すなわち、2つの定電流値I1、I2の下限、及び上限には制限があるため、これらの定電流値I1、I2の差を大きくするには限度があり、両者が近い値だと、これらの定電流値I1、I2の印加によって生じた両端電圧をVF1、VF2の差が非常に小さくなりAD変換器で認識できない、という問題もある。
さらに、2つの定電流値を用いて温度を測定する従来の技術に比べ、定電流値として1つの値だけを用いれば良いので、2つの定電流値の差が大きくなるように各定電流値を設定するという制限が無いため、当該定電流値の設定が容易となる。
また本発明において、前記電源電圧の変動成分の有無にかかわらずに前記定電流回路に起因して前記定電流値に含まれる誤差成分と、前記電源電圧の変動成分を含む電圧値とに基づいて前記定電流値を補正することで、定電流値については、電源電圧の変動成分の有無にかかわらずに定電流回路に起因して定電流値に含まれる誤差成分も補正されることから、より正確な温度が求められる。
また本発明において、前記電源電圧の変動成分の有無にかかわらずに前記AD変換器に起因して含まれる誤差成分と、前記電源電圧の変動成分を含む電圧値とに基づいて前記両端電圧のデジタル変換値を補正することで、両端電圧のデジタル変換値については、電源電圧の変動成分の有無にかかわらずにAD変換器に起因して含まれる誤差成分も補正されることから、より正確な温度が求められる。
図1は、本実施形態に係る温度測定回路1の構成を示す図である。
温度測定回路1は、温度測定対象のIGBT等の半導体装置の回路基板3に設けられ、当該回路基板3の温度Tを測定する回路である。すなわち、温度測定回路1は、図1に示すように、半導体ダイオード5と、定電流回路7と、基準電源9と、マイコン11とを備え、定電流回路7、基準電源9、及びマイコン11が電源電圧HVccを電源として動作する。
定電流回路7は、温度測定時に、半導体ダイオード5の順方向に定電流値Iの定電流を印加する回路であり、その回路構成については後述する。
具体的には、図2に示すように、基準電源9は、定電圧回路として構成されている。すなわち、電力をチャージして基準電圧Vrefを出力する容量20と、この容量20の蓄電量を制御するトランジスタ21と、電源電圧HVccを抵抗Ra、Rbで分圧した電圧Vsと、容量20が出力する基準電圧Vrefとを比較し、両者が常に等しくなるようにトランジスタ21に制御信号を出力する誤差増幅器としてのオペアンプ22とを備えている。
この基準電源9では、電源電圧HVccに変動成分ΔHVccが含まれた場合でも、オペアンプ22の制御によって出力電圧が基準電圧Vrefに維持される。
なお、以下の説明においては、あくまで一例として、AD変換器13の分解能を10ビットとして説明する。
例えば、温度測定回路1が電気自動車のモータを制御するインバータ回路等の半導体装置に設けられている場合、上記電源電圧HVccは、車両が搭載するバッテリの電力をDC/DCコンバータによって直流電圧に変換し、平滑・変圧して生成される。
しかしながら、バッテリが出力する電圧は、バッテリの残容量、バッテリの経時変化、負荷変動、及びバッテリの温度等により変動する。特に、車載のバッテリにあっては、バッテリが放電する電圧は車両という使用条件の特性から変動しやすく、DC/DCコンバータを通じて生成される電源電圧HVccも、上記の要因により変動する。
そこで本実施形態では、AD変換器13が出力するデジタル変換値Xについて、AD変換器13の電源電圧HVccの変動に起因する誤差をCPU15によって効率よく補正して両端電圧VFについて高精度のデジタル変換値X(VF)を得るとともに、電源電圧HVccの変動分を補正した定電流値Iを求め、これらの値を用いて、電源電圧HVccの変動に起因した誤差の影響無く温度を算出することとしている。
以下、係る構成について詳述する。
ただし、後述のように、実際には、AD変換器13でのAD変換時には電源電圧HVccの電圧変動△HVccに起因する誤差を生じることから、この誤差に起因してデジタル変換値X(ref)の値も変わる。式(1)では、デジタル変換値X(Vref)に「ideal」という添字を付すことで、かかる誤差を考慮しない理想的なAD変換であることを明示している。
すなわち、電源電圧HVccが通常動作用に供給される電源である場合、変動成分ΔHVccを含むので、電源電圧HVccの正味の値はHVcc+ΔHVccと表され、またAD変換器13の回路が持つ特性に起因する誤差は、大凡±1〜3LSB(LSB:Least Significant Bit)程度であることが一般的であることから、通常動作時のデジタル変換値X(Vref)は、次式(2)で表される。ただし、(2)式では、AD変換器13の回路の特性に起因する誤差を±3LSBと設定した。
したがって、基準電圧Vrefを実測したデジタル変換値X(Vref)realが得られれば、上記式(4)に基づいて、電源電圧HVccについて、そのときの変動成分ΔHVccを含んだ正味の値(HVcc+ΔHVcc)が求められることとなる。
図3は定電流回路7の一例を示す回路図である。
定電流回路7は、エミッタに流れ込む電流をコレクタに出力するPNPトランジスタ31と、このPNPトランジスタ31を制御するオペアンプ30と、抵抗Rc、Rd、Re、Rf、Rgを備えている。オペアンプ30には、電源電圧HVcc+ΔHVccを抵抗Rc、Rdで分圧した電圧Vtが設定電圧として入力され、またPNPトランジスタ31のエミッタの電圧が帰還電圧として入力され、これらの電圧差である入力オフセット電圧Vosがゼロになるように、PNPトランジスタ31を制御することで、当該PNPトランジスタ31のコレクタから出力される電流を一定の定電流値Iに維持する。
図4(A)及び図4(B)の対比から明らかなように、両端電圧Vf、及び定電流値Iを補正して温度Tを算出することで、補正せずに算出した場合に比べて、全体的に検出誤差の誤差範囲を小さくし、温度Tの精度が高められている。
さらに、従来の温度測定回路のように、互いに異なる定電流値の定電流を半導体ダイオードに印加する複数の定電流回路や、印加する定電流を切り替えるための切替回路を必要としないため、部品点数、実装面積の削減が可能となる。また、互いに異なる2つの定電流値を用いて温度を測定する場合には、2つの定電流値の差が大きくなるように各定電流値を設定するという制限が生じるが、本実施形態では、定電流値Iとして1つの値だけを用いれば良いので、当該定電流値Iの設定が容易となる。
ただし、NPNトランジスタ40のベース電流IBに起因する誤差、及びNPNトランジスタ40のベース−エミッタ間電圧Vbeを考慮すると、実際の定電流値Iは、式(14)のように表され、この式(14)を用いて、バラツキを反映した実際の定電流値Iが算出される。
この定電流回路207においても、PNPトランジスタ41のベース電流IBに起因する誤差、及びPNPトランジスタ41のベース−エミッタ間電圧Vbeを考慮すると、実際の定電流値Iは、上記定電流回路107の式(14)と同一の式(15)のように表され、この式(15)を用いて、バラツキを反映した実際の定電流値Iが算出される。
この定電流回路407においては、オペアンプ51への入力バイアス電流Ibに起因する誤差、入力オフセット電圧Vosの温度特性に起因する誤差、及びNPNトランジスタ43のベース−エミッタ電流Ibeに起因する誤差といったように、定電流回路407に起因する各種の誤差を考慮すると、実際の定電流値Iは式(17)のように表され、この式(17)を用いて、バラツキを反映した実際の定電流値Iが算出される。
5 半導体ダイオード
7、107、207、307、407 定電流回路
9 基準電源
11 マイコン
13 AD変換器
15 CPU
17 メモリ
HVcc 電源電圧
I 定電流値
K 補正係数
T 温度
VF 両端電圧
Vref 基準電圧
X デジタル変換値
ΔHVcc 変動成分
ΔVref 誤差成分
Claims (3)
- 温度測定用の半導体ダイオードと、
前記半導体ダイオードに印加する定電流を電源電圧に基づいて生成する定電流回路と、
前記定電流の印加によって前記半導体ダイオードのアノード−カソード間に生じる両端電圧を、前記電源電圧をフルスケール電圧として所定ビット数のデジタル値に変換して出力するAD変換器と、
前記定電流回路によって印加された定電流の定電流値、及び前記AD変換器から出力された前記両端電圧のデジタル変換値に基づいて温度を算出する温度測定回路において、
前記電源電圧に基づき定電圧の基準電圧を生成し前記AD変換器に出力する基準電源を備え、
前記基準電圧の入力によって前記AD変換器から出力された前記基準電圧のデジタル変換値と、前記電源電圧に変動成分が含まれない場合に前記AD変換器から出力される前記基準電圧のデジタル変換値とに基づいて、前記変動成分を含む前記電源電圧の電圧値を算出し、当該電圧値により前記両端電圧のデジタル変換値、及び前記定電流の定電流値を補正して前記温度を算出する、ことを特徴とする温度測定回路。 - 前記電源電圧の変動成分の有無にかかわらずに前記定電流回路に起因して前記定電流値に含まれる誤差成分と、前記電源電圧の変動成分を含む電圧値とに基づいて前記定電流値を補正する、ことを特徴とする請求項1に記載の温度測定回路。
- 前記電源電圧の変動成分の有無にかかわらずに前記AD変換器に起因して含まれる誤差成分と、前記電源電圧の変動成分を含む電圧値とに基づいて前記両端電圧のデジタル変換値を補正する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度測定回路。
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