JP5314982B2 - アゾ金属錯体色素の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、アゾ金属錯体色素については、主に金属イオンやアゾ配位子の変更により、波長制御や溶解性の制御が行われてきた(例えば特許文献1および2参照)。
これに対し本発明者らの検討により、アゾ色素と金属イオンとの錯体形成時の反応条件が、得られるアゾ金属錯体色素の溶解性および溶液中での安定性に大きく影響することが新たに判明した。
そこで本発明者らが上記知見に基づき更に検討を重ねたところ、特定の部分構造を有するアゾ色素と金属イオンとの錯体形成反応を、例えば第一級アミン(n−ブチルアミンなど)や第三級アミン(トリエチルアミンなど)の存在下で行った場合、得られたアゾ金属錯体色素の溶解性が悪い、または、溶液中での安定性が悪いといった問題が生じたのに対し、反応を第二級アミンの存在下で行った場合には、驚くべきことに、溶解性の改善、溶液中での安定性の改善といった特異な現象が見られた。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
[1]下記一般式(B)で表されるアゾ色素と金属イオンとを、第二級アミン存在下で反応させることにより該アゾ色素と金属イオンとの錯体を得るアゾ金属錯体色素の製造方法。
[2]前記第二級アミンは、下記一般式(1)で表される[1]に記載の製造方法。
[3]前記第二級アミンは、下記一般式(2)で表される[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]Q 1 は、隣り合う窒素原子および炭素原子とともに下記一般式(C)で表されるピラゾール環を形成する[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記第二級アミン量は、アゾ色素に対して2.00当量以上6.00当量以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]アゾ色素に対して1.00当量以上1.25当量以下の金属イオンを反応させる[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記反応により、2つ以上の金属イオンを含む多核錯体を得る[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記反応により、アゾ色素と、該アゾ色素の数と同数またはそれ以上の数の金属イオンとの錯体を得る[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記金属イオンは遷移金属イオンである[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記遷移金属イオンは銅イオンである[10]に記載の製造方法。
更に、本発明によれば、色素膜の安定性、耐光性、保存性にも優れるアゾ金属錯体色素を製造することができる。
本発明より得られるアゾ金属錯体色素は、光情報記録媒体の記録層用色素として望ましい上記特性を有し得るため、ブルーレイ・ディスクをはじめとする短波長レーザ対応の光情報記録媒体等の各種光情報記録媒体の記録層用色素として好適である。
以下、前記金属イオン、第二級アミン、アゾ色素について順次説明する。
本発明において金属イオンとは、特に限定されないが、遷移金属イオンが好ましい。遷移金属イオンとは、遷移金属原子のイオンを表す。遷移金属原子とは、周期表のIIIa族〜VIII族の元素およびIb族の元素が含まれ、不完全d電子殻を持つ元素である。遷移金属原子としては、特に限定されないが、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znが好ましく、Co、Ni、Cu、Znがより好ましく、Cuが更に好ましい。
本発明では、後述する部分構造を有するアゾ色素と金属イオンとの錯体を形成するにあたり、アゾ色素と金属イオンとを第二級アミン存在下で反応させる。第二級アミンとしては、特に限定されないが、ジアルキルアミン(例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンなど)、アリールアミン(例えば、N−メチルアニリン、ジフェニルアニリンなど)、ヘテロアリールアミン(N−メチル−2−ピリジルアミンなど)、ジシラザン(例えば、ヘキサメチルジシラザンなど)などが挙げられる。
R21〜R24で表されるアルキル基の詳細は前述の一般式(1)中のアルキル基の説明と同様である。上記アルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1または2のアルキル基であることが特に好ましい。
本発明においてアゾ色素とは、非環状のアゾ基(−N=N−)を有し、金属イオンと錯形成可能な色素化合物を表し、金属錯体中で配位子となっている場合も含む。例えば、1分子中で1つの金属イオンに対して2つのアゾ配位子が配位している場合、1分子中のアゾ色素の数は2つである。アゾ色素が金属イオンと錯形成した場合をアゾ金属錯体色素と呼ぶ。また、本発明においてアゾ配位子とは、アゾ色素が配位子となった場合を言う。
Q1により形成される含窒素複素環は、ピラゾール環またはトリアゾール環であることが好ましく、ピラゾール環であることがより好ましく、環上の1つのN原子が水素原子であるピラゾール環であることがさらに好ましい。
R1として好ましい電子求引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基が挙げられる。R1はσp値が0.30以上1.0以下の電子求引性基であることが好ましい。σp値が0.20以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基およびセレノシアネート基が挙げられる。
次に、前記アゾ色素と金属イオンとの錯体形成反応について説明する。
アゾ色素と金属イオンを反応させて金属アゾキレート色素を得る一般的方法としては、アゾ色素、金属塩(金属錯体、金属酸化物塩を含む)を、有機溶媒中もしくは水中、またはその混合液中において、攪拌する方法が挙げられる。ここで本発明においては第二級アミン存在下にて反応を行う。
(1)1分子中に2つ以上の金属イオンを含む多核錯体
(2)アゾ色素、該アゾ色素の数と同数またはそれ以上の数の金属イオンを含む錯体
が好ましい。本発明によれば、上記第二級アミン存在下での反応により、後述の実施例で示すように、上記(1)、(2)の錯体を得ることができる。上記(1)、(2)に該当する錯体としては、金属イオン5つとアゾ色素4つから形成される5核錯体、金属イオン7つとアゾ色素6つから形成される7核錯体、または、金属イオン2つとアゾ色素2つから形成される複核錯体が好ましく、金属イオン5つとアゾ色素4つから形成される5核錯体、または金属イオン7つとアゾ色素6つから形成される7核錯体がより好ましく、金属イオン7つとアゾ色素6つから形成される7核錯体がさらに好ましい。
1H-NMR(DMSO-d6)[ppm];δ13.70(1H,br),13.31(1H,s),3.331(3H,s),1.413(9H,s),1.331(9H,s)
1H-NMR(DMSO-d6)[ppm];δ13.33(1H,br),7.88(2H,d),7.47(2H,t),7.25(1H,t),2.26(3H,s),1.42(9H,s)
次に、アゾ金属錯体色素の合成例として、例示化合物(M−9)の合成法を示すが、本発明は、下記方法に限定されるものではない。
ESI−TOF−MS:m/z =2556(nega)、1279(nega)
ESI−TOF−MS、およびX線構造解析の結果からは、生成物がアゾ色素6つと銅イオン7つからなる多核銅錯体であることが確認できた。
(M−9)と同様の製造法を用い(但し、反応スケールは各々異なる)、それぞれ原料や当量比を替えることにより表2に示すアゾ金属錯体色素を合成した。化合物の同定はESI−TOF−MS、MALDI−TOF−MS、X線構造解析等により行うことができる。
使用するアゾ色素、金属イオン、アミンの種類および当量比を表3に示すように変更した点以外、例示化合物(M−9)と同様の製造法を用いて比較化合物(A)〜(H)を合成した。
使用するアゾ色素、金属イオンの種類および当量比を表3に示すように変更(アミン不使用)した点以外、例示化合物(M−9)と同様の製造法を用いて比較化合物(I)を合成した。
(1)色素膜形成可否の確認および色素膜の耐光性評価
表4に示す実施例および比較例で合成したアゾ金属錯体色素それぞれ10mgを、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール1ml中に添加して溶解し、色素含有塗布液を調製した。厚さ1.1mmのガラス板上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数500〜1000rpmまで変化させながら常温、窒素雰囲気下で塗布した。塗布後、目視により色素膜形成の可否を確認した。
その後、形成した色素膜を常温で24時間保存した後、メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型、Schott製WG320フィルタ付)を用いて耐光性試験を行った。耐光性試験直前の色素膜および耐光性試験48時間後の色素膜について、UV−1600PC(SHIMADZU社製)を用いて色素膜の吸収スペクトルを測定し、最大吸収波長における吸光度の変化を読み取った。
上記(1)と同様の方法で調製した色素含有塗布液を目視で観察し溶媒に対する色素の溶解性を評価した。
表4に示す実施例および比較例で合成したアゾ金属錯体色素それぞれを、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中でabs.=0.9〜1.1の範囲になるように色素溶液を調製した。このとき、UV−1600PC(SHIMADZU社製)を用いて色素溶液の吸収スペクトルを測定した。これらの色素溶液を60℃に設定された恒温漕に保存し、48時間後の色素溶液の吸収スペクトルを測定した。不安定な色素は吸収波長シフトが観測された為、そのシフト値を読み取り、安定性の判断基準とした。表4中、保存安定性が○と表記されている化合物については、いずれも48時間後の吸収極大のabs.値が初期abs.値に対して90%以上であった。
(注2)λmaxの波長シフト値3nm未満○、3nm以上×
(注3)結晶化していないアモルファス膜が形成可能である場合○、結晶化または膜厚が10nm以下と薄くて存在が確認できない場合×
(注4)Xe光照射48時間後の吸収λmaxにおける色素残存率が80%以上のとき○、70%以上80%未満のとき△、70%未満のとき×。
(注5)本製造処方で合成した場合、ジイソプロピルアミンを添加した場合とは異なるアゾ金属錯体色素が合成されることがHPLCにより判明した。
次に、化合物(M−1)、(M−9)〜(M−12)、(M−37)を光情報記録用媒体の記録層用色素として適用した例を示す。
(基板の作製)
厚さ1.1mm、外径120mm、内径15mmでスパイラル状のプリグルーブ(トラックピッチ:320nm、溝幅:グルーブ(凹部)幅170nm、溝深さ:37nm、溝傾斜角度:52°、ウォブル振幅:20nm)を有する、ポリカーボネート樹脂からなる射出成形基板を作製した。射出成型時に用いられたスタンパのマスタリングは、レーザーカッティング(351nm)を用いて行なわれた。
基板上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングにより、膜厚60nmの真空成膜層としてのANC光反射層(Ag:98.1at%、Nd:0.7at%、Cu:0.9at%)を形成した。光反射層の膜厚の調整は、スパッタ時間により行った。
参考例1〜6として、化合物(M−1)、(M−9)〜(M−12)、(M−37)それぞれ1gを、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール100ml中に添加して溶解し、色素含有塗布液を調製した。そして、光反射層上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数500〜2200rpmまで変化させながら23℃、50%RHの条件で塗布して、追記型記録層を形成した。
その後、追記型記録層上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングによりNb2O5からなる、厚さ10nmのバリア層を形成した。
カバー層としては、内径15mm、外径120mmで、片面に粘着層(ガラス転移温度−52℃)を有するポリカーボネート製フィルム(帝人ピュアエース、厚さ:80μm)を用い、該粘着層とポリカーボネート製フィルムとの厚さの合計が100μmとなるように設定した。
そして、バリア層上に、カバー層を粘着層を介して載置した後、そのカバー層を押し当て部材にて圧接して、貼り合わせた。
以上の工程により、基板上に、光反射層、追記型記録層、バリア層、粘着層およびカバー層をこの順に有する、参考例1〜6の光情報記録媒体を作製した。これらの光情報記録媒体について、記録再生特性評価を行った。
作製した光情報記録媒体を、405nmレーザ、NA0.85ピックアップを有する記録再生評価機(パルステック工業株式会社製:DDU1000)を用い、カバー層側から光照射を行い、クロック周波数66MHz、線速4.92m/sにて、(1.7)RLL−NRZI変調されたマーク長変調信号(17PP)を記録した。ジッター測定は記録信号をリミットイコライザーに通し、タイムインターバルアナライザ(横河電機株式会社製:TA520)を用いて測定した。
また、参考例1〜6の光情報記録媒体は、55時間Xe光照射した後の光情報記録媒体の記録再生も可能であり、光情報記録媒体下でも耐光性が良好であった。さらに、記録後に高温高湿下168時間保存したが、ジッター変化が殆ど見られず、高温高湿下での保存安定性にきわめて優れることがわかった。
以上の結果から、本発明の製造方法により、記録再生特性、耐光性および保存安定性に優れ、ブルーレイディスク等の短波長レーザー光対応の光情報記録媒体における記録層用色素として好適なアゾ金属錯体色素が得られることが示された。
さらには、製膜性、耐光性、耐熱性、耐湿性に優れ、短波長レーザ光照射による記録再生を行う光情報記録媒体等の記録層用色素として好適な色素を製造することができる。
また、本発明により得られるアゾ金属錯体色素は、写真用材料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、熱転写記録材料、インク等にも適用可能である。
Claims (11)
- 一般式(B)中のQ2はピラゾール環を形成する原子群である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記第二級アミン量は、アゾ色素に対して2.00当量以上6.00当量以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- アゾ色素に対して1.00当量以上1.25当量以下の金属イオンを反応させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記反応により、2つ以上の金属イオンを含む多核錯体を得る請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記反応により、アゾ色素と、該アゾ色素の数と同数またはそれ以上の数の金属イオンとの錯体を得る請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記金属イオンは遷移金属イオンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記遷移金属イオンは銅イオンである請求項10に記載の製造方法。
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