以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤と導電性粒子5とを含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。上記異方性導電材料は、複数の導電性粒子5を含む。
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の電極4bを有する。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。上記異方性導電材料は、電子部品又は回路基板の接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。上記異方性導電材料として異方性導電ペーストを用いる場合には、異方性導電ペーストの配置は、異方性導電ペーストの塗布により行われる。また、上記異方性導電材料層は、異方性導電ペースト層になる。
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。図2(b)に示すように、異方性導電材料層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。
異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する際には、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの粘度(以下、η1と略記することがある)が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下であるように、異方性導電材料層3AをBステージ化することが好ましい。上記粘度η1を上記下限以上及び上記上限以下にすることにより、異方性導電材料層の流動を充分に抑制できる。このため、電極2b,4b間に、導電性粒子5が配置されやすくなる。さらに、第1の接続対象部材2又は第2の接続対象部材4の外周面よりも側方の領域に、異方性導電材料層が意図せずに流動するのを抑制できる。さらに、上記粘度η1を上記下限以上及び上記上限以下にすることにより、電極2a,4a間の位置ずれを抑制できる。
異方性導電材料層及び導電性粒子5の流動をより一層抑制する観点からは、上記粘度η1は3510Pa・s以上であってもよく、より好ましくは12000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度η1の測定温度は好ましくは20℃以上、好ましくは30℃以下である。上記粘度η1の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
なお、上記粘度η1が2000Pa・s以上、15000Pa・s以下であれば、異方性導電材料層の流動を充分に抑制でき、導通信頼性を高めることができる。但し、上記粘度η1が2000Pa・s以上、3500Pa・s以下である場合と比べて、上記粘度η1が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下である場合の方が、電極間の位置ずれをより一層抑制できる。電極間の位置ずれをより一層抑制する観点からは、上記粘度η1はより好ましくは3510以上、より好ましくは12000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を配置しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の配置と同時に、又は配置の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。配置と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1における導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を配置してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
光の照射により異方性導電材料層3AをBステージ化させる場合には、異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、好ましくは0.1〜100mW/cm2程度である。
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Bに熱を付与することにより、異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、接続部3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3Bに熱を付与し完全に硬化させることが好ましい。
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させる場合には、異方性導電材料層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
接続構造体1を得る際に、異方性導電材料層3Aに光を照射し、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成した後、異方性導電材料層3Bに熱を付与することが好ましい。
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、又は半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用できる。なかでも、本発明に係る接続構造体の製造方法は、COG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材として、半導体チップとガラス基板とを用いることが好ましい。
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電材料の導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体の製造方法により、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
接続構造体1を得る際に、異方性導電材料層3Aに光を照射し、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成した後、異方性導電材料層3Bに熱を付与することが好ましい。
本発明に係る接続構造体の製造方法に用いられる異方性導電材料及び本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有する。
以下、上記異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
(硬化性化合物)
上記硬化性化合物は特に限定されない。上記硬化性化合物として、従来公知の硬化性化合物を用いることができる。上記硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化性化合物としては、光硬化性化合物、並びに熱硬化性化合物が挙げられる。上記光硬化性化合物は光硬化性を有する。上記熱硬化性化合物は熱硬化性を有する。上記光硬化性化合物は、光硬化性と熱硬化性を有していてもよく、光及び熱硬化性化合物であってもよい。上記硬化性化合物は、上記光及び熱硬化性化合物を少なくとも含むか、又は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含む。
上記硬化性化合物は特に限定されない。上記硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
[熱硬化性化合物]
異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表されるエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表されるエピスルフィド化合物であることがより好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素原子を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素原子ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素原子であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素原子であってもよい。
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素原子を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素原子ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素原子であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素原子であってもよい。
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素原子を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素原子ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素原子であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素原子であってもよい。
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表されるエピスルフィド化合物は、チイラン基を少なくとも2つ有する。また、チイラン基を有する基が、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環に結合されている。このような構造を有するので、異方性導電材料を加熱することにより、異方性導電材料を低温で速やかに硬化させることができる。なお、本明細書において、低温とは200℃以下の温度を意味する。
上記エピスルフィド化合物は、上記式(1−1),(2−1)で表されるエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表されるエピスルフィド化合物であることが好ましい。
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。この場合に、上記式(4)、(5)及び(6)で表される構造も、チイラン基をエポキシ基に置き換えた構造であることが好ましい。
さらに、上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料をより一層低温で速やかに硬化させることができる。
上記異方性導電材料は、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。異方性導電ペーストの塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、異方性導電材料の硬化速度を速くし、ペースト状の異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。
[光硬化性化合物]
本発明に係る異方性導電材料は、光の照射によって硬化するように、光硬化性化合物を含有することが好ましい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂及び環状エーテル基含有樹脂等が挙げられる。
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、本発明に係る異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜70:30で含むことがより好ましく、10:90〜50:50で含むことが更に好ましい。
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
(他の成分)
上記異方性導電材料は、溶剤を含有していてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記硬化性化合物が固形である場合に、固形の硬化性化合物に溶剤を添加し、溶解させることにより、硬化性化合物の分散性を高めることができる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
上記異方性導電材料の硬化物の接着力を高めることができるので、本発明に係る異方性導電材料は、接着力調整剤を含有することが好ましい。接着力をより一層高める観点からは、上記接着力調整剤は、シランカップリング剤であることが好ましい。
上記異方性導電材料は、フィラーを含有することが好ましい。該フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。
上記フィラーは、表面処理されていることが好ましく、親水性フィラーであることが好ましい。
上記フィラーは特に限定されない。上記フィラーとしては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。上記フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記親水性フィラーとは、表面が親水基で覆われているフィラーを示す。該親水基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシレート基及びカルボキシル基等の極性基、並びにカルボキシレートイオン基、スルホン酸イオン基及びアンモニウムイオン基等のイオン性基等が挙げられる。上記親水性フィラーとしては、従来の上記フィラーが親水性表面処理剤で表面処理された親水性フィラーが挙げられる。
上記親水性表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン及びステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。中でも、上記親水性表面処理剤として、シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記フィラーの含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の全量100重量部に対して、上記フィラーの含有量は好ましくは5重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下、更に好ましくは70重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。上記フィラーの含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を充分に抑制でき、更に異方性導電材料中にフィラーを充分に分散させることができる。
(異方性導電材料の他の詳細)
本発明に係る異方性導電材料の製造方法としては、特に限定されず、上記硬化性化合物と上記熱硬化剤と上記光硬化開始剤と上記導電性粒子と、必要に応じて添加される他の成分とを配合し、遊星式攪拌機等を用いて充分に混合する製造方法が挙げられる。
本発明に係る異方性導電材料について、光の照射により硬化が進行されて、Bステージ化した後の粘度(以下、η1’と略記することがある)は3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下である。上記粘度η1’は3510Pa・s以上であってもよく、好ましくは12000Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度η1’の測定温度は、好ましくは20℃以上、好ましくは30℃以下である。上記粘度η1’の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
上記異方性導電材料の25℃及び2.5rpmでの粘度は、好ましくは20Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下である。すなわち、配置(塗布)前の上記異方性導電材料の25℃及び2.5rpmでの粘度は、好ましくは20Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下である。この場合には、例えば基板等の塗布対象部材(第1の接続対象部材)上に異方性導電材料を塗布した後に、硬化前の異方性導電材料の流動をより一層抑制できる。さらに、電極と導電性粒子との間の樹脂成分を容易に取り除くことができ、電極と導電性粒子との接触面積を大きくすることができる。さらに、塗布対象部材(第1の接続対象部材)の表面が凹凸である場合に、該凹凸の表面に異方性導電材料を充分に充填させることができ、硬化後にボイドが生じ難くなる。また、異方性導電材料中において導電性粒子が沈降し難くなり、導電性粒子の分散性を高めることができる。
本発明に係る異方性導電材料を硬化させる方法としては、異方性導電材料に光を照射した後、異方性導電材料を加熱する方法、並びに異方性導電材料を加熱した後、異方性導電材料に光を照射する方法が挙げられる。また、光硬化の速度及び熱硬化の速度が異なる場合などには、光の照射と加熱とを同時に行ってもよい。なかでも、異方性導電材料に光を照射した後、異方性導電材料を加熱する方法が好ましい。光硬化と熱硬化との併用により、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含むエピスルフィド化合物含有混合物を用意した。
上記エピスルフィド化合物含有混合物15重量部に、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)3重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.2重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
(2)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μm、電極面積30000μm2の銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて紫外線を照射エネルギーが350mJ/cm2となるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
(実施例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、エポキシアクリレートをウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体を得た。
(実施例3)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を5重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が5重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例4)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を15重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が15重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例5)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を1重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が1重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例6)
上記式(1B)で表されるエピスルフィド化合物を用意した。
上記エピスルフィド化合物含有混合物を、上記式(1B)で表されるエピスルフィド化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例7)
下記式(2B)で表されるエピスルフィド化合物を用意した。
上記エピスルフィド化合物含有混合物を、上記式(2B)で表されるエピスルフィド化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(参考例1)
上記エピスルフィド化合物含有混合物30重量部に、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子(実施例1と同じ導電性粒子)を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。Bステージ化するための紫外線の照射エネルギーを70mJ/cm2に変更したこと、並びに得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体を得た。
(参考例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、エポキシアクリレートをウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして接続構造体を得た。
(比較例1)
異方性導電ペーストの作製の際に、エポキシアクリレートと、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物とを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペースト100重量%中、導電性粒子の含有量は10重量%であった。
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μm、電極面積30000μm2の銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。塗布の際及び塗布の後に光を照射しなかった。
次に、異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
(比較例2)
光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)の配合量を8重量部から20重量部に変更したこと、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)の配合量を0.2重量部から0.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。Bステージ化するための紫外線の照射エネルギーを600mJ/cm2に変更したこと、並びに得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体を得た。
(実施例1〜7、参考例1〜2及び比較例1〜2の評価)
(1)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度を測定した。
(2)Bステージ化された異方性導電ペースト層の粘度
光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化させた後であって、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを積層する直前のBステージ化された異方性導電ペースト層の粘度を、レオメーター(Anton Paar社製)を用いて、25℃及び周波数1Hzの条件で測定した。
(3)リークの有無
得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。
(4)ボイドの有無
得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドがあると、接続構造体における導通信頼性が低くなる。
(5)位置ずれの有無
実施例及び比較例における接続構造体をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、透明ガラス基板の電極と半導体チップの電極との間に位置ずれが生じているか否かを評価した。位置ずれを下記の基準で判定した。
[位置ずれの判定基準]
○○:100個の接続構造体中全てで、ずれ幅5μm以下の電極間の位置ずれなし
○:100個の接続構造体中、ずれ幅10μm以下の僅かな電極間の位置ずれがある接続構造体が存在するものの、位置ずれは小さく、全ての接続構造体が使用可能
×:100個の接続構造体中、ずれ幅10μmを超える電極間の位置ずれがある接続構造体が存在する
(6)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。100箇所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。
結果を下記の表1に示す。比較例1についてはBステージ化されなかったため、Bステージ化後の粘度を測定しなかった。比較例2に関しては導通しなかったため、接続抵抗を測定しなかった。