以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて得られた接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化物層3を介して、第2の接続対象部材4が接続された構造を有する。硬化物層3は複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料により形成されているか、又は該異方性導電材料の硬化を進行させたBステージ状硬化物を硬化させることにより形成されている。第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材2,4は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材2,4としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
上記異方性導電材料は、電子部品又は回路基板の接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。上記Bステージ状硬化物は、電子部品又は回路基板の接続に用いられるBステージ状硬化物であることが好ましい。上記異方性導電材料は、ペースト状の異方性導電ペーストであり、ペースト状の状態で電子部品又は回路基板上に塗布される異方性導電材料であることが好ましい。上記異方性導電材料は、ペースト状の異方性導電ペーストであり、ペースト状の状態で第1の接続対象部材上に塗布される異方性導電材料であることが好ましい。
上記異方性導電材料及び上記Bステージ状硬化物は、半導体チップとガラス基板との接続、又はフレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられることが特に好ましい。上記異方性導電材料及び上記Bステージ状硬化物は、半導体チップとガラス基板との接続に用いられることが好ましく、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられることも好ましい。
上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、半導体チップとガラス基板とであるか、又はフレキシブルプリント基板とガラス基板とであることが好ましい。上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、半導体チップとガラス基板とであることが好ましく、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであることも好ましい。
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(c)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を塗布し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。Bステージ化により、第1の接続対象部材2と異方性導電材料層3Bとが仮接着される。このとき、得られる異方性導電材料層3Bの表面の5mmφのプローブを用いて測定された25℃でのプローブタックが1〜10N/5mmφとなるように、光を照射する。異方性導電材料層3Bは、Bステージ状硬化物である。上記Bステージ状硬化物は、半硬化状態にある半硬化物である。上記Bステージ状硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を塗布しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。塗布及び光の照射が上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を塗布してから光を照射するまでの時間は、0〜3秒の範囲内であることが好ましく、0〜2秒の範囲内であることがより好ましい。
異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるために、光を照射する際の光の照射エネルギーは、好ましくは50mJ/cm2以上、より好ましくは100mJ/cm2以上、好ましくは100000mJ/cm2以下、より好ましくは50000mJ/cm2以下である。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ及びLEDランプ等が挙げられる。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Bに熱を付与(加熱)することにより、異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させる際の加熱温度は、好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。ここでは、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
上記接続構造体を得るために、本発明に係る異方性導電材料又は本発明に係るBステージ状硬化物が用いられる。本発明に係るBステージ状硬化物は、異方性導電材料の硬化を進行させたBステージ状硬化物である。該Bステージ状硬化物は、第1の接続対象部材の上面に積層されていることが好ましい。
本発明に係る異方性導電材料又は本発明に係るBステージ状硬化物を構成する異方性導電材料は、少なくとも1種の硬化性化合物と、熱硬化剤と、光重合開始剤と、導電性粒子とを含有する。上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物を含むか、又は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物と(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物とを含む。
本発明に係る異方性導電材料を用いて、該異方性導電材料に光を照射し、異方性導電材料の硬化を進行させてBステージ状硬化物を得たときに、該Bステージ状硬化物の表面の5mmφのプローブを用いて測定された25℃でのプローブタックは1〜10N/5mmφの範囲内である。また、本発明に係るBステージ状硬化物の表面の5mmφのプローブを用いて測定された25℃でのプローブタックは1〜10N/5mmφの範囲内である。
上記プローブタックの測定には、プローブタック装置が用いられる。該プローブタック装置としては、RHESCA社製の「タッキング試験機 TAC−II」等が用いられる。該プローブタック装置は、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠している。上記プローブタックは、プローブタック装置によるタック力の測定値である。
特定の上記組成を有し、かつ硬化を進行させたBステージ状硬化物の表面のタックが1〜10N/5mmφとなる異方性導電材料の使用により、異方性導電材料の硬化を進行させたBステージ状硬化物に接続対象部材を適度に接着させることができる。また、特定の上記組成を有する異方性導電材料の硬化を進行させたBステージ状硬化物であって、表面の5mmφのプローブを用いて測定された25℃でのプローブタックが1〜10N/5mmφであるBステージ状硬化物の使用により、該Bステージ状硬化物に接続対象部材を適度に接着させることができる。このため、得られる接続構造体の導通信頼性を高めることができる。さらに、Bステージ状硬化物に接続対象部材を適度に接着させることができるので、Bステージ状硬化物及び該Bステージ状硬化物の硬化物を介して接続された接続対象部材の位置ずれを抑制することができる。さらに、仮に位置ずれが生じたとしても、接続対象部材をBステージ状硬化物から容易に剥離することができる。また、位置ずれが生じていなくても、必要に応じて、接続対象部材をBステージ状硬化物から容易に剥離することができる。
Bステージ状硬化物及び該Bステージ状硬化物の硬化物と接続対象部材との位置ずれをより一層抑制し、接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記Bステージ状硬化物の表面の上記プローブタックは、好ましくは2N/5mmφ以上、より好ましくは3N/5mmφ以上である。接続対象部材の位置ずれをより一層抑制し、接続構造体の導通信頼性をより一層高め、更に接続対象部材をBステージ状硬化物からより一層容易に剥離する観点からは、上記Bステージ状硬化物の表面の上記プローブタックは、好ましくは8N/5mmφ以下、より好ましくは5N/5mmφ以下である。
本発明に係る異方性導電材料では、異方性導電材料が半導体チップとガラス基板との接続に用いられる場合には、上記Bステージ状硬化物が、厚み20μmの異方性導電材料に、光の照射エネルギーが70mJ/cm2となるように光を照射し、異方性導電材料の硬化を進行させて得られることが好ましい。本発明に係る異方性導電材料では、異方性導電材料がフレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられる場合には、上記Bステージ状硬化物が、厚み50μmの異方性導電材料に、光の照射エネルギーが6000mJ/cm2となるように光を照射し、異方性導電材料の硬化を進行させて得られることが好ましい。上記異方性導電材料に光を照射して、異方性導電材料の硬化を進行させた後に、硬化の進行が終了した直後に上記プローブタックは測定されることが好ましい。
上記プローブタックを制御する方法としては、粘着成分などの配合成分の配合量の調整、ガラス転移点の調整、並びに粘着付与剤の導入等の方法が挙げられる。
上記「タック」は、25℃のBステージ状硬化物の表面に、直径5mm(5mmφ)の円柱状のプローブを1N/5mmφの圧力で1秒間押し付けた後、600mm/分の速度でプローブをBステージ状硬化物から引き剥がしたときの剥離力を示す。
また、上記Bステージ状硬化物の状態を経て接続構造体を作製することにより、硬化前の異方性導電材料の流動を抑制できる。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。従って、得られる接続構造体の導通信頼性を高めることができる。
さらに、第1の接続対象部材の表面が凹凸である場合に、該凹凸の表面に異方性導電材料を充分に充填させることができ、硬化後にボイドが生じ難くなる。また、Bステージ状硬化物では、導電性粒子が沈降し難くなり、導電性粒子の分散性を高めることができる。
本発明に係る異方性導電材料が第1の接続対象部材の上面に塗布される場合、塗布される異方性導電材料の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。上記Bステージ状硬化物を得るために、厚み10〜30μmの異方性導電材料に、光の照射エネルギーが50〜200mJ/cm2となるように、光を照射することが特に好ましい。
以下、本発明に係る異方性導電材料及び本発明に係るBステージ状硬化物を構成する異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
〔硬化性化合物〕
上記異方性導電材料は、少なくとも1種の硬化性化合物(以下、硬化性化合物Aと記載することがある)を含む。硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化性化合物としては、光及び熱硬化性化合物、光硬化性化合物、並びに熱硬化性化合物が挙げられる。上記光及び熱硬化性化合物は、光硬化性と熱硬化性とを有する。上記光硬化性化合物は、例えば光硬化性を有し、かつ熱硬化性を有さない。上記熱硬化性化合物は、例えば光硬化性を有さず、かつ熱硬化性を有する。
異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化を容易に制御する観点からは、上記硬化性化合物は、上記光及び熱硬化性化合物と、光硬化性化合物及び熱硬化性化合物の内の少なくとも一種とを含むか、又は光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことが好ましい。上記硬化性化合物は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことがより好ましい。
上記異方性導電材料では、上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物を含むか、又は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物と(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物とを含む。エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物が用いられる場合に、熱硬化性化合物又は光硬化性化合物がさらに用いられてもよい。
エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリル化合物である。上記(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基とアクリロイル基とを示す。上記(メタ)アクリル化合物は、メタクリル化合物とアクリル化合物とを示す。
異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ化合物及びエピスルフィド化合物の内の少なくとも一種を含むことが好ましく、エピスルフィド化合物を含むことがより好ましい。
上記エポキシ化合物及び上記エピスルフィド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記エピスルフィド化合物は、上記式(1−1),(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましい。
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。本明細書において、これらの方法で得られる樹脂を含めて、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と呼ぶ。エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換された樹脂を、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と呼ぶ。
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。該上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くし、異方性導電材料を塗布しやすくすることができる。異方性導電材料の塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度を速くし、異方性導電材料を塗布しやすくすることができる。
上記(メタ)アクリル化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記硬化性化合物は、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。エポキシ基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記フェノキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基が導入された(メタ)アクリロイル基を有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。該(メタ)アクリロイル基を有する変性フェノキシ樹脂は、エポキシ基又はチイラン基を有していてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
一般にフェノキシ樹脂は水酸基を有する。この水酸基の反応性を利用して、フェノキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基などの不飽和二重結合を導入することができる。例えば、水酸基を有するフェノキシ樹脂に、イソシアネートと、不飽和二重結合を有する化合物とを反応させることで、不飽和二重結合を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
上記硬化性化合物は、不飽和二重結合を有するフェノキシ樹脂(以下、フェノキシ樹脂Fと記載することがある)を含むことが好ましい。フェノキシ樹脂Fは、一般にエポキシ基を有する。フェノキシ樹脂Fは、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。該フェノキシ樹脂Fの使用により、プローブタックを良好な範囲に容易に制御可能であり、接続構造体における導通信頼性及びBステージ状硬化物の剥離性が一層良好になる。
上記フェノキシ樹脂Fは、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にビニル基又はエポキシ基を有することが好ましい。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは50000以下、より好ましくは15000以下である。
上記フェノキシ樹脂Fは、ジオール化合物と2つのエポキシ基を有する化合物とを用いた反応物であることがより好ましい。上記フェノキシ樹脂Fは、ジオール化合物と2つのエポキシ基を有する化合物との反応物に、ビニル基を有する化合物又はエポキシ基を有する化合物を反応させることにより得られるフェノキシ樹脂であることが好ましい。
上記フェノキシ樹脂Fは、側鎖にビニル基を合計で2個以上有するか、又は側鎖にエポキシ基を合計で2個以上有することが好ましい。硬化物の接着性及び耐湿性をより一層高めることができる。
上記フェノキシ樹脂Fは、ビスフェノールFと、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル又はレゾルシノールジグリシジルエーテルとの反応物(以下、反応物Xと記載することがある)に、(メタ)アクリル酸又は2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させることにより得られるフェノキシ樹脂であることが好ましい。このように合成されたフェノキシ樹脂は、速やかに硬化させることができ、更に硬化物の接着性及び耐湿性を高くすることができる。上記フェノキシ樹脂を得る際に、(メタ)アクリル酸を用いることで、(メタ)アクリロイル基を有するフェノキシ樹脂が得られる。
上記反応物Xとしては、ビスフェノールFと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの第1の反応物、ビスフェノールFとレゾルシノールジグリシジルエーテルとの第2の反応物が挙げられる。
上記第1の反応物は、ビスフェノールFに由来する骨格と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来する骨格とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつ1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を両末端に有する。上記第2の反応物は、ビスフェノールFに由来する骨格とレゾルシノールジグリシジルエーテルに由来する骨格とを主鎖に有し、かつレゾルシノールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を両末端に有する。
合成が容易であり、フェノキシ樹脂Fをより一層速やかに硬化させることを可能にし、更に硬化物の接着性及び耐湿性をより一層高める観点からは、上記第1,第2の反応物のうち、上記第1の反応物が好ましい。
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
半導体チップとガラス基板とを接続する場合には、上記光及び熱硬化性化合物は、分子量が2000以下である光及び熱硬化性化合物を含むか、又は上記光硬化性化合物が、分子量が2000以下である光硬化性化合物を含むことが好ましい。この場合には、プローブタックを良好な範囲に容易に制御可能であり、接続構造体における導通信頼性及びBステージ状硬化物の剥離性がより一層良好になる。
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続する場合には、上記光及び熱硬化性化合物が、分子量が2000を超え、10000以下である光及び熱硬化性化合物を含むか、又は上記光硬化性化合物が、分子量が2000を超え、10000以下である光硬化性化合物を含むことが好ましい。この場合には、プローブタックを良好な範囲に容易に制御可能であり、接続構造体における導通信頼性及びBステージ状硬化物の剥離性がより一層良好になる。
なお、上記「分子量」とは、硬化性化合物が重合体ではない場合、及び硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。該重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性を高める観点からは、硬化性化合物A100重量%中、熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
半導体チップとガラス基板とを接続する場合には、硬化性化合物A100重量%中、熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下である。この場合には、半導体チップとガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続する場合には、硬化性化合物A100重量%中、熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。この場合には、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性を高める観点からは、硬化性化合物A100重量%中、光及び熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、100重量%以下、好ましくは90重量%以下である。硬化性化合物Aの全量が、光及び熱硬化性化合物であってもよい。硬化性化合物A100重量%中、光及び熱硬化性化合物の含有量は100重量%であってもよい。
半導体チップとガラス基板とを接続する場合には、硬化性化合物A100重量%中、光及び熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、100重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、より一層好ましくは50重量%以下、更に一層好ましくは20重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下である。この場合には、半導体チップとガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続する場合には、硬化性化合物A100重量%中、光及び熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、100重量%以下、好ましくは90重量%以下である。この場合には、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
異方性導電材料及びBステージ状硬化物を効率的に光硬化させる観点からは、硬化性化合物A100重量%中、上記光硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
半導体チップとガラス基板とを接続する場合には、硬化性化合物A100重量%中、上記光硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。この場合には、半導体チップとガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続する場合には、上記光硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。この場合には、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続時に、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化性が良好になる。
半導体チップとガラス基板とを接続する場合には、異方性導電材料100重量%中、分子量が2000以下である光及び熱硬化性化合物の含有量が10重量%以上、55重量%以下であるか、又は、分子量が2000以下である光硬化性化合物の含有量が10重量%以上、55重量%以下であることが好ましい。この場合には、プローブタックを良好な範囲により一層容易に制御可能であり、接続構造体における導通信頼性及びBステージ状硬化物の剥離性が更に一層良好になる。
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続する場合には、異方性導電材料100重量%中、分子量が2000を超え、10000以下である光及び熱硬化性化合物の含有量が50重量%以上、100重量%以下であるか、又は、分子量が2000を超え、10000以下である光硬化性化合物の含有量が50重量%以上、100重量%以下であることが好ましい。この場合には、プローブタックを良好な範囲により一層容易に制御可能であり、接続構造体における導通信頼性及びBステージ状硬化物の剥離性が更に一層良好になる。
〔熱硬化剤〕
上記異方性導電材料に含まれている熱硬化剤は特に限定されない。該熱硬化剤は、熱硬化性化合物又は光及び熱硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。該熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。なかでも、異方性導電材料及びBステージ状硬化物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くできる。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。熱硬化成分(熱硬化性化合物、又は光及び熱硬化性化合物)100重量部に対して、熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
〔光重合開始剤〕
上記異方性導電材料に含まれている光重合開始剤は特に限定されない。該光重合開始剤は、光硬化性化合物又は光及び熱硬化性化合物を重合させる。該光重合開始剤として、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。該光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤、ベンゾフェノン光重合開始剤、チオキサントン、ケタール光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光重合開始剤として酸素阻害を比較的受けやすい光重合開始剤を用いることにより、Bステージ状硬化物の保存安定性を高めることができる。保存安定性が高いと、プローブタックが低下せずに良好な接着性を保持することができる。酸素阻害を受けやすい光重合開始剤としてはラジカル発生型のラジカル光重合開始剤が挙げられる。
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。光硬化成分(光硬化性化合物、又は光及び熱硬化性化合物)100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、更に好ましくは2重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。光重合開始剤の含有量が上記下限以上であると、光重合開始剤を添加した効果を充分に得ることが容易である。光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の接着力が充分に高くなる。
〔導電性粒子〕
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。上記導電性粒子は、導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層である導電性粒子であってもよい。
上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
はんだ層の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、好ましくは40000nm以下、より好ましくは30000nm以下、更に好ましくは20000nm以下、特に好ましくは10000nm以下である。はんだ層の厚みが上記下限以上であると、導電性を十分に高くすることができる。導電層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子とはんだ層との熱膨張率の差が小さくなり、はんだ層の剥離が生じ難くなる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
〔他の成分〕
上記異方性導電材料は、フィラーをさらに含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム又はアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記Bステージ状硬化物の表面のタックを好適な範囲に容易に制御し、接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フィラーは、ナノシリカであることが好ましい。上記ナノシリカは、平均粒子径が1μm未満であるシリカである。
上記Bステージ状硬化物の表面のタックを好適な範囲に容易に制御し、接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。上記「平均粒子径」は、動的レーザー散乱法によって測定される体積平均径を示す。
上記フィラーの含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物A100重量部に対して、フィラーの含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは50重量部以上、好ましくは500重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは90重量部以下である。フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記Bステージ状硬化物の表面の上記プローブタックを好適な範囲に容易に制御できる。さらに、異方性導電材料におけるフィラーの分散性を高めることができ、かつ異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、異方性導電材料及びBステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
熱硬化成分(熱硬化性化合物又は光及び熱硬化性化合物)100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と熱硬化剤とフェノール性化合物との併用により、異方性導電材料の保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に導電性粒子を含む異方性導電材料を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記熱硬化性化合物が固形である場合に、固形の上記熱硬化性化合物に溶剤を添加し、溶解させることにより、上記熱硬化性化合物の分散性を高めることができる。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
上記異方性導電材料は、貯蔵安定剤をさらに含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート等が挙げられる。上記亜リン酸エステルとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
上記異方性導電材料は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、異方性導電材料の保存安定性が高くなる。
上記異方性導電材料は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
(異方性導電材料の他の詳細及び用途)
上記異方性導電材料は、異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムである場合、導電性粒子を含む該異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記異方性導電材料は、ペースト状の異方性導電ペーストであることが好ましい。
本発明に係る異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、上記異方性導電材料は、FOG用途又はCOG用途に好適であり、COG用途により好適である。
FOG用途では、L/Sが比較的広いため、導電性粒子の粒径も大きく濃度も低いので、接続時の圧力が低く、充分な圧痕や樹脂充填性が得られず、電極間の導通信頼性、及び硬化物層における空隙(ボイド)の発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料又はBステージ状硬化物の使用により、FOG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層における空隙(ボイド)の発生を効果的に抑制できる。
COG用途では、L/Sが比較的狭ピッチなことから、異方導電性材料を加熱したときの流動性が不足すると、電極ライン間に異方導電性材料が十分充填されないため、電極間の導通信頼性、及び硬化物層におけるボイドの発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料又はBステージ状硬化物の使用により、COG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層におけるボイドの発生を効果的に抑制できる。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(参考例1)
(1)エピスルフィド化合物含有混合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有混合液を得た。
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ基含有混合液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLとエタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、エピスルフィド化合物含有混合物を得た。
クロロホルムを溶媒として、得られたエピスルフィド化合物含有混合物の1H−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、エピスルフィド基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、レゾルシノールジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換されていることを確認した。また、1H−NMRの測定結果の積分値より、エピスルフィド化合物含有混合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含有することを確認した。
(2)異方性導電ペーストの調製
得られたエピスルフィド化合物含有混合物30重量部に、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」、分子量500)15重量部と、光硬化開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.3重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるナノシリカ(トクヤマ社製、平均粒子径0.02μm)5重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
(3)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
また、ディスペンサーと、該ディスペンサーに接続された光照射装置としての紫外線照射ランプとを備える複合装置を用意した。
複合装置を移動させながら、上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。さらに、複合装置を移動させて、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて、365nmの紫外線を光照射エネルギーが70mJ/cm2となるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化した。塗布してから、すなわち塗布された異方性導電ペーストが上記透明ガラス基板に接したときから、異方性導電ペースト層に光が照射されるまでの時間Tは、0.5秒であった。
次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層(Bステージ状硬化物)の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1.5MPaの圧力をかけて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
(参考例2〜5及び比較例1〜2)
異方性導電ペーストの調製の際に、光硬化性化合物の種類及び配合量のみを下記の表1に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして接続構造体を得た。
下記の表1において、エポキシアクリレートは、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」、分子量500)を示し、ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」、分子量1300)を示す。
(参考例6)
異方性導電ペーストの作製の際に、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物を用いなかったこと以外は参考例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。塗布の際及び塗布の後に光を照射しなかった。
次に、異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1.5MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
(参考例1〜6及び比較例1〜2の評価)
(1)プローブタック
参考例1〜5及び比較例1〜2で得られた異方性導電ペーストを、ガラス基板上へ厚みが20μmとなるように塗布した。その後、厚み20μmの異方性導電ペーストに、光の照射エネルギーが70mJ/cm2となるように365nmの紫外線を照射し、異方性導電ペーストの硬化を進行させてBステージ状硬化物を得た。
硬化の進行が終了した直後の上記Bステージ状硬化物の表面に、直径5mmの円柱状のプローブを1N/5mmφの圧力で1秒間押し付けた後、600mm/分の速度でプローブをBステージ状硬化物から引き剥がした。この引き剥がし時の剥離力の値をタックの値とした。なお、測定装置として、RHESCA社製「タッキング試験機 TAC−II」を用いた。
(2)位置ずれの有無
接続構造体を得る際に、半導体チップを積層した後、Bステージ状硬化物を硬化させる前に、透明ガラス基板の電極と半導体チップの電極とが位置ずれしているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。位置ずれがない場合を「○○」、問題が無い程度にわずかに位置ずれがある場合を「○」、大きな位置ずれがある場合を「×」として結果を下記の表2に示した。
(3)剥離性
上記の評価で得られた接続構造体を得る際に、半導体チップを積層した後、Bステージ状硬化物を硬化させる前に、半導体チップをBステージ状硬化物から剥離した。容易にかつ綺麗に剥離でき、再利用できた場合を「○○」、容易には剥離できないものの綺麗に剥離でき、再利用できた場合を「○」、剥離できなかった場合を「×」として結果を下記の表2に示した。
(4)リークの有無
得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。リークが生じていない場合を「○」、リークが生じている場合を「×」として結果を下記の表2に示した。
(5)ボイドの有無
上記の評価で得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層又はBステージ状硬化物により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドがない場合を「○○」、小さなボイドが1箇所のみにある場合を「○」、小さなボイドが2箇所以上ある場合を「△」、大きなボイドがあり使用上問題がある場合を「×」として結果を下記の表2に示した。
結果を下記の表2に示す。なお、下記の表2において「−」は評価していないことを示す。
(実施例6)
(1)エポキシ化合物(1C)の合成
下記式(1C)で表されるエポキシ化合物(1C)を合成した。
上記式(1C)中のRは水素原子を表す。
このエポキシ化合物は下記の反応を行うことで得られたものである。
ビスフェノールF(4,4’−メチレンビスフェノール)72重量部、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル100重量部、及びトリフェニルフォスフィン1重量部を3つ口フラスコに入れ、150℃で溶解させた。その後、180℃で6時間、付加重合反応させることにより第1の反応物を得た。
付加重合反応が進行したことを確認して、第1の反応物が、ビスフェノールFに由来する骨格と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来する骨格とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつ1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を両末端に有することを確認した。
得られた第1の反応物100重量部とアクリル酸4重量部とを配合し、80℃まで昇温した。昇温後、触媒であるジメシチルアンモニウムペンタフルオロベンゼンスルホナート1重量部を入れ、4時間縮合反応させることにより、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にビニル基を有するエポキシ化合物を得た。
得られたエポキシ化合物の重量平均分子量は8000であった。得られたエポキシ化合物の分子量分布におけるピークは1つのみでアクリル酸由来の低分子は観察されなかった。また、NMRにより、水酸基にアクリル酸が反応して、側鎖にビニル基が導入されていることを確認した。
(2)異方性導電ペーストの調製
上記エポキシ化合物(1C)30重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部と、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光ラジカル開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.2重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)10重量部とを配合し、さらに導電性粒子A(平均粒子径10μm、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する)を異方性導電ペースト100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
(3)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのAl−4%Ti電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが形成されたフレキシブルプリント基板を用意した。
参考例1で用いた複合装置を移動させながら、上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ50μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。さらに、複合装置を移動させて、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて、365nmの紫外線を光照射エネルギーが6000mJ/cm2となるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化した。塗布してから、すなわち塗布された異方性導電ペーストが上記透明ガラス基板に接したときから、異方性導電ペースト層に光が照射されるまでの時間Tは、0.5秒であった。
次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層(Bステージ状硬化物)の上面に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1.5MPaの圧力をかけて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
(実施例7〜11及び比較例3)
異方性導電ペーストの調製の際に、光硬化性化合物の種類及び配合量のみを下記の表3に示すように変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして接続構造体を得た。
下記の表3において、エポキシアクリレートは、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)を示し、ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)を示す。
(実施例6〜11及び比較例3の評価)
実施例6〜11及び比較例3で得られた異方性導電ペースト及び接続構造体について、参考例1〜6及び比較例1〜2と同様の評価項目について評価を実施した。
結果を下記の表4に示す。