以下、本発明を詳細に説明する。
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と、熱硬化剤とを含む。この組成の採用により、金属配線又は導電性粒子などの金属に対して、硬化性組成物の樹脂成分を硬化させた硬化物の接着強度を高くすることができる。これは、チイラン基の硫黄原子と金属とが配位結合するためであると考えられる。さらに、上記変性フェノキシ樹脂はチイラン基を有するので、硬化性組成物を速やかに硬化させることができる。
〔熱硬化性化合物〕
本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化性化合物として、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含む。チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、熱硬化性化合物である。チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を用いた場合には、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂以外の樹脂を用いた場合と比べて、変性フェノキシ樹脂の強靭性により硬化物の伸びが良好になる。このため、硬化性組成物を用いて接続対象部材を接続した場合に、負荷がかかっても、硬化性組成物を硬化させた硬化物の接続対象部材に対する接着強度を高く維持できる。
チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、エポキシ基を有していてもよい。すなわち、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂であってもよい。
本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂に加えて、該チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂とは異なるエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。すなわち、本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂に加えて、チイラン基とエポキシ基とを有し、かつフェノキシ樹脂ではない硬化性化合物、又はチイラン基を有さず、かつエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。エポキシ基を有する硬化性化合物は、熱硬化性化合物である。エポキシ基を有する硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂がチイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂である場合には、本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂に加えて、該チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂とは異なる上記エポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。
上記チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、エピスルフィド化合物である。上記エポキシ基を有する硬化性化合物は、エポキシ化合物である。上記エポキシ基及びチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂は、チイラン基含有エポキシ化合物である。
チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂の使用により、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることが可能になる。硬化性組成物の保存安定性及び取扱い性を高める観点からは、硬化性組成物は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と、エポキシ基を有する硬化性化合物とを含むことが好ましい。
熱硬化性化合物100重量%中、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂の含有量は0.1〜100重量%の範囲内であることが好ましい。熱硬化性化合物100重量%中、上記チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂の含有量は、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂はチイラン基を有するので、エポキシ基を有する硬化性化合物と比べて、反応性が高い。従って、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂の含有量が多いほど、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができる。
なお、上記熱硬化性化合物としてチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂のみを用いる場合には、上記「熱硬化性化合物100重量%」は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂100重量%を示す。上記熱硬化性化合物としてチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂とエポキシ基を有する硬化性化合物とを併用する場合には、上記「熱硬化性化合物100重量%」は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂とエポキシ基を有する硬化性化合物との合計100重量%を示す。
フェノキシ樹脂は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を得ることができる。本明細書において、これらの方法で得られる樹脂を含めて、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と呼ぶ。エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換された樹脂を、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と呼ぶ。
上記変性フェノキシ樹脂の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上、好ましくは9500以下、より好ましくは8000以下である。上記変性フェノキシ樹脂の分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物が液状又は半液状であるため、硬化性組成物の流動性が良好になり、硬化性組成物を加工しやすく、硬化性組成物を取り扱いやすい。なお、本明細書において、「分子量」とは、上記変性フェノキシ樹脂が重合体ではない場合、及び上記変性フェノキシ樹脂の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記変性フェノキシ樹脂が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
変性フェノキシ樹脂がヒドロキシル基又はカルボキシル基などの極性基を有すると、他の成分、特にエポキシ基を有する硬化性化合物との相溶性が高くなる。このため、硬化物の外観を均一にすることができ、更に硬化性組成物の硬化速度を速くすることができる。
エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換する方法は特に限定されない。エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に置き換える際に、全部のエポキシ基をチイラン基に変換してもよく、一部のエポキシ基をチイラン基に変換してもよい。
上記製造方法は、チオシアン酸塩を含む第1の溶液に、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂又は該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、チオシアン酸塩を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加する方法が好ましい。この方法により、上記エポキシ基を有するフェノキシ樹脂の全部又は一部のエポキシ基をチイラン基に変換できる。上記エポキシ基を有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基をチイラン基に変換した結果、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と、チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂及びエポキシ基を有するフェノキシ樹脂の内の少なくとも一種との混合物が得られる。
上記エポキシ基を有する硬化性化合物は特に限定されない。エポキシ基を有する硬化性化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ基を有する硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ基を有する硬化性化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ基を有する硬化性化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
分子量の異なる広いグレードの変性フェノキシ樹脂が入手可能であり、接着性及び反応性等を任意に設定できることから、上述のエポキシ樹脂の中では、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。粘度が特に低いことから変性フェノキシ樹脂との組み合わせで流動性を広範囲に設定でき、更に液状であり良好な粘着性も得やすいことから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、硬化性組成物の硬化物の架橋密度が高くなり、硬化物の耐熱性が高くなるので、1分子内に3個以上のオキシラン基を有する多官能エポキシ樹脂も好適に用いられる。
さらに、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、例えば、下記式(11−1)、(12−1)、(13)、(17)又は(18)で表されるエポキシ化合物を用いてもよい。下記式(11−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(12−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
上記式(11−1)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の全てが水素であってもよい。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の1個又は2個が下記式(14)で表される基であり、かつR13、R14、R15及びR16の4個の基の内の下記式(14)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(12−1)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の全てが水素であってもよい。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の1個又は2個が下記式(15)で表される基であり、かつR63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の下記式(15)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(13)中、R121及びR122はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の内の水素ではない基は、下記式(16)で表される基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の全てが水素であってもよい。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の1個又は2個が下記式(16)で表される基であり、かつR123、R124、R125、R126、R127及びR128の8個の基の内の下記式(16)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(16)中、R131は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(17)中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(18)中、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記硬化性組成物は、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。該上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
本発明に係る硬化性組成物は、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。硬化性組成物の塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、硬化性組成物の硬化速度を速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。
〔熱硬化剤〕
本発明に係る硬化性組成物に含まれている熱硬化剤は特に限定されない。該熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。該熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物等が挙げられる。なかでも、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできる。
上記熱硬化剤のガラス転移温度は好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。上記熱硬化剤のガラス転移温度が上記上限以下であると、硬化物とポリイミド基材とが密着しやすく、硬化物の接着強度がより一層高くなる。上記熱硬化剤のガラス転移温度は好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上である。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は0.01〜200重量部の範囲内であることが好ましく、1〜40重量部の範囲内であることがより好ましい。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は45重量部、より好ましい上限は100重量部、更に好ましい上限は75重量部である。熱硬化剤の含有量が上記下限を満たすと、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
なお、上記熱硬化剤がイミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤である場合、上記硬化性化合物100重量部に対して、イミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤の含有量は1〜15重量部の範囲内であることが好ましい。また、上記熱硬化剤がアミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物である場合、上記硬化性化合物100重量部に対して、アミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物の含有量は15〜40重量部の範囲内であることが好ましい。
〔他の成分〕
本発明に係る硬化性組成物は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は6重量部、より好ましい上限は4重量部である。硬化促進剤の含有量が上記下限を満たすと、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
本発明に係る硬化性組成物は、光照射によっても硬化するように、光硬化性化合物をさらに含んでいてもよい。また、光硬化性化合物が含まれる場合に、本発明に係る硬化性組成物は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。ただし、本発明に係る硬化性組成物を使用する際に、該硬化性組成物に光重合開始剤を添加してもよい。上記光硬化性化合物と上記光重合開始剤との使用により、光の照射により硬化性組成物を硬化させることができる。さらに、硬化性組成物を半硬化させ、硬化性組成物の流動性を低下させることができる。
上記光硬化性化合物は特に限定されない。該光硬化性化合物として、(メタ)アクリル樹脂又は環状エーテル基含有樹脂等が好適に用いられ、(メタ)アクリル樹脂がより好適に用いられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル樹脂とアクリル樹脂とを示す。上記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する。上記(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基とアクリロイル基とを示す。
上記熱硬化性化合物と(メタ)アクリル樹脂とを含む組成物では、上記熱硬化性化合物のエポキシ基又はチイラン基が開環してラジカルが発生したときに、該ラジカルの作用によって(メタ)アクリル樹脂の重合が進行しやすい。しかしながら、上記熱硬化性化合物に対して、フェノール性化合物と貯蔵安定剤とを組み合わせて配合することにより、硬化性組成物の保管時にエポキシ基又はチイラン基が開環し難くなる。この結果、硬化性組成物の保管時に、(メタ)アクリル樹脂の重合が進行し難くなる。
上記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記光硬化性化合物は、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。エポキシ基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記硬化性組成物を効率的に光硬化させる観点からは、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化性化合物(上記光硬化性化合物が(メタ)アクリル樹脂である場合には(メタ)アクリル樹脂)の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、更に好ましい下限は10重量部、特に好ましい下限は50重量部、好ましい上限は10000重量部、より好ましい上限は1000重量部、さらに好ましい上限は500重量部である。
上記光重合開始剤は特に限定されない。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤、ベンゾフェノン光重合開始剤、チオキサントン、ケタール光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は0.2重量部、更に好ましい下限は2重量部、好ましい上限は10重量部、より好ましい上限は5重量部である。光重合開始剤の含有量が上記下限を満たすと、光重合開始剤を添加した効果を充分に得ることが容易である。光重合開始剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化性組成物の硬化物の接着力が充分に高くなる。
本発明に係る硬化性組成物は、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と、熱硬化剤と、フェノール性化合物との併用により、電極間に導電性粒子を含む硬化性組成物を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール性化合物は、共鳴構造をとりかつ酸度が高い1級水酸基を有することが好ましい。上記フェノール性化合物は、立体障害が発現しない程度で、官能基を多く有することが好ましい。酸度が高いことから、上記フェノール性化合物は、ベンゼン環のオルト位又はパラ位に1級水酸基が直接結合している構造を有することが好ましい。
本発明に係る硬化性組成物は、フィラーをさらに含むことが好ましい。フィラーの使用により、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム又はアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明に係る硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、硬化性組成物の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記熱硬化性化合物が固形である場合に、固形の上記熱硬化性化合物に溶剤を添加し、溶解させることにより、上記熱硬化性化合物の分散性を高めることができる。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
本発明に係る硬化性組成物は、貯蔵安定剤をさらに含むことが好ましい。本発明に係る硬化性組成物は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂の貯蔵安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート等が挙げられる。上記亜リン酸エステルとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
本発明に係る硬化性組成物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、硬化性組成物の保存安定性が高くなる。
本発明に係る硬化性組成物は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
〔導電性粒子を含む硬化性組成物〕
本発明に係る硬化性組成物が導電性粒子をさらに含有する場合、硬化性組成物を異方性導電材料として用いることができる。本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する変性フェノキシ樹脂と熱硬化剤とを含むので、硬化性組成物の樹脂成分の硬化物と導電性粒子との接着強度を高くすることができる。
上記導電性粒子は、例えば回路基板と半導体チップとの電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、少なくとも表面が導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。上記導電性粒子は、導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層である導電性粒子であってもよい。
上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
はんだ層の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、好ましくは40000nm以下、より好ましくは30000nm以下、更に好ましくは20000nm以下、特に好ましくは10000nm以下である。はんだ層の厚みが上記下限以上であると、導電性を十分に高くすることができる。導電層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子とはんだ層との熱膨張率の差が小さくなり、はんだ層の剥離が生じ難くなる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。硬化性組成物100重量%中、上記導電性粒子の含有量は0.1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。硬化性組成物100重量%中、上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は10重量%、更に好ましい上限は5重量%である。上記導電性粒子の含有量が上記範囲内にある場合には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡を防止できる。
硬化性組成物が液状又はペースト状である場合、硬化性組成物の粘度(25℃)は、20000〜100000mPa・sの範囲内にあることが好ましい。上記粘度が低すぎると、導電性粒子が沈降することがある。上記粘度が高すぎると、導電性粒子が充分に分散しないことがある。
(硬化性組成物の用途)
本発明に係る硬化性組成物は、様々な接続対象部材を接着するのに使用できる。本発明に係る硬化性組成物は、金属を表面に有する接続対象部材を接着するのに好適に使用できる。
本発明に係る硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料である場合、該異方性導電材料は、異方性導電ペースト又は異方性導電フィルム等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含有する異方性導電フィルムに、導電性粒子を含有しないフィルムが積層されていてもよい。
上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
図1に、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、導電性粒子5を含む硬化性組成物、すなわち異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。上記硬化性組成物は、電子部品又は回路基板の接続に用いられることが好ましい。上記硬化性組成物は、ペースト状であり、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗布される硬化性組成物であることが好ましい。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、電子部品又は回路基板等の第1の接続対象部材と、電子部品又は回路基板等の第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
なお、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含んでいなくてもよい。この場合には、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続することなく、第1,第2の接続対象部材を接着して接続するために、上記硬化性組成物が用いられる。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(合成例1)
(1)1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとビスフェノールFとの第1の反応物の合成:
ビスフェノールF(4,4’−メチレンビスフェノールと2,4’−メチレンビスフェノールと2,2’−メチレンビスフェノールとを重量比で31:52:17で含む)72重量部、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル100重量部、及びトリフェニルフォスフィン1重量部を3つ口フラスコに入れ、150℃で溶解させた。その後、180℃で6時間、付加重合反応させることにより第1の反応物を得た。
(2)チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂の合成:
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとビスフェノールFとの上記第1の反応物160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有溶液を得た。
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ化合物含有溶液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去して、変性フェノキシ樹脂を得た。
クロロホルムを溶媒として、得られた変性フェノキシ樹脂の1H−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、チイラン基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、1,6−ヘキサジオールジグリシジルエーテルとビスフェノールFとの上記第1の反応物の一部のエポキシ基がチイラン基に変換されおり、チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂が得られていることを確認した。
このようにして、チイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂を得た。得られたチイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂の重量平均分子量は8000であった。
(実施例1)
合成例1で得られたチイラン基とエポキシ基とを有する変性フェノキシ樹脂33重量部に、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート((メタ)アクリル樹脂、ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部と、フェノール性化合物であるα−メチルベンジルフェノール0.58重量部と、熱硬化剤であるペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部と、平均粒子径3μmの導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストである硬化性組成物を得た。なお、用いた導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
(実施例2)
上記フェノール性化合物として、α−メチルベンジルフェノール0.58重量部にかえて2,6−ジターシャルブチルフェノール0.58重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
(実施例3)
上記フェノール性化合物として、α−メチルベンジルフェノール0.58重量部にかえて2,2’−メチレンビスブチルフェノール0.58重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
(実施例4)
上記フェノール性化合物として、α−メチルベンジルフェノール0.58重量部にかえて2,2’−チオビスフェノール0.58重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
(実施例5)
遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、リン酸エステルであるジエチルハイドロゲンフォスファイト0.01重量部をさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
(実施例6)
光硬化性化合物として、エポキシアクリレート((メタ)アクリル樹脂、ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部にかえて、ウレタンアクリレート((メタ)アクリル樹脂、ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
(比較例1)
ビスフェノールAフェノキシ樹脂(巴工業社製「PKHC」)33重量部に、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート((メタ)アクリル樹脂、ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部と、フェノール性化合物であるα−メチルベンジルフェノール0.58重量部と、熱硬化剤であるペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部と、実施例1で用いた導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストである硬化性組成物を得た。
(比較例2)
ビスフェノールAフェノキシ樹脂(巴工業社製「PKHC」)を、ビスフェノールAとビスフェノールFの混合品であるフェノキシ樹脂(三菱化学社製「4250」)に変更したこと以外は比較例1と同様にして、異方性導電ペーストである硬化性組成物を調製した。
(実施例及び比較例の評価)
(接着力の評価)
4cm×2cmの大きさのガラス板に、得られた硬化性組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように、2cm×2cmの大きさに塗布した。次に、420nmの紫外線を光照射強度が60mW/cm2となるように硬化性組成物に照射した後、コンスタントヒーター方式圧着機(大橋製作所「BD−03SDSS」)を用いて、ガラス板とポリイミドフィルム(東レ社製)とを硬化性組成物の光照射物を介して、圧着温度150℃及び圧力294.2N/cm2の条件で貼り合わせて、接着力の測定用サンプルを得た。
静的材料試験機(島津製作所社製「EZ−Graph」)を用いて、得られた接着力の測定用サンプルについて、引っ張り速度50mm/分で90度剥離試験を行った。得られた90度ピール強度の最大値を接着力の測定値とした。
(硬化時間の評価)
DSC(示差走査熱分析)(測定条件;サンプル量2mg、室温〜150℃、10℃/分昇温)によって、全硬化発熱量の90%の発熱を終えた状態を測定した。これを硬化時間とした。
結果を下記の表1に示す。