以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と、熱硬化性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化剤と、熱伝導率が20W/m・K以上であるフィラーと、導電性粒子とを含む。本発明に係る異方性導電ペーストは、フィルム状又はシート状ではなく、ペースト状である。
本発明の主な第1の特徴は、ペースト状の異方性導電ペーストであり、光硬化させるための光硬化性化合物及び光重合開始剤と、熱硬化させるための熱硬化性化合物及び熱硬化剤とを含むことである。これによって、光の照射により異方性導電ペーストの硬化を進行させて、Bステージ状硬化物を得ることができる。このようなBステージ状硬化物の形成によって、Bステージ状硬化物において導電性粒子の流動及び沈降を顕著に抑制できる。従って、光の照射により異方性導電ペーストの硬化を進行させてBステージ状硬化物にするだけで、導電性粒子の流動及び沈降を抑制して、特定の領域に導電性粒子を容易に配置することが可能である。また、上記Bステージ状硬化物の状態を経て熱硬化により硬化物を形成し、接続構造体を作製することにより、異方性導電ペーストにより形成された硬化物及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。
さらに、本発明は、上記第1の特徴に加えて、異方性導電ペーストが、熱伝導率が20W/m・K以上であるフィラーを含むという第2の特徴も有する。本発明者らは、光の照射により硬化が進行したBステージ状硬化物を熱硬化させる際には、光が照射されていない異方性導電ペーストを熱硬化させる場合よりも、Bステージ状硬化物中で熱が伝わりにくいことを見出した。さらに、本発明者らは、上記熱伝導率が20W/m・K以上であるフィラーの使用により、Bステージ状硬化物の状態であっても、該Bステージ状硬化物に熱を付与することにより、Bステージ状硬化物中で熱が効果的に伝わり、Bステージ状硬化物が速やかに硬化可能になり、熱硬化後の硬化物の均一性を高めことができることを見出した。しかも、本発明者らは、上記Bステージ状硬化物が速やかに熱硬化することによっても、硬化物及び導電性粒子を特定の領域により一層精度よく配置することが可能になり、導通信頼性をより一層高めることができることを見出した。
さらに、従来の異方性導電材料では、熱硬化の際に接続対象部材間に位置する異方性導電材料のみしか硬化しなかった。これに対して、本発明に係る異方性導電ペーストでは、熱伝導性がよいのでフィレット部分にも十分に熱が伝わり、フィレット形成が容易になる。従って、本発明に係る異方性導電ペーストの使用により、接続信頼性がさらに向上する。
以下、先ず、本発明に係る異方性導電ペーストに含まれている各成分の詳細を説明する。
(光硬化性化合物及び熱硬化性化合物)
上記光硬化性化合物は特に限定されない。上記光硬化性化合物として、従来公知の光硬化性化合物を用いることができる。上記光硬化性化合物としては、光硬化性を有し、かつ熱硬化性を有さない光硬化性化合物、並びに光硬化性と熱硬化性とを有する光硬化性化合物が挙げられる。光硬化性と熱硬化性とを有する光硬化性化合物は、光及び熱硬化性化合物でもある。上記光硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物として、従来公知の熱硬化性化合物を用いることができる。上記熱硬化性化合物は、光硬化性を有さず、熱硬化性を有することが好ましい。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光硬化性化合物及び熱硬化性化合物は特に限定されない。上記光硬化性化合物及び熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。
光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。本発明に係る異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
熱硬化性化合物の詳細:
異方性導電ペーストの硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
上記エポキシ化合物及び上記エピスルフィド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記エピスルフィド化合物は、上記式(1−1),(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましい。
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
上記異方性導電ペーストは、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。
さらに、上記異方性導電ペーストは、エポキシ化合物として、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、Bステージ状硬化物をより一層低温で速やかに硬化させることができる。
上記異方性導電ペーストは、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
上記異方性導電ペーストは、エポキシ化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
上記異方性導電ペーストは、エポキシ化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くし、ペースト状の異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。異方性導電ペーストの塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度を速くし、ペースト状の異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。
光硬化性化合物の詳細:
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱硬化性をより一層高め、更に導通信頼性をより一層高める観点からは、上記光硬化性化合物のガラス転移温度は、圧着時の最高到達樹脂温度以下であることが好ましい。上記光硬化性化合物のガラス転移温度は、熱硬化性化合物の発熱反応開始温度よりも低いことがさらに好ましい。上記「最高到達樹脂温度」は、加熱圧着ヘッドで加熱圧着しているときに樹脂成分の温度が最も高くなる到達温度である。例えば、第1,第2の接続対象部材間に異方性導電ペーストを配置して、圧着した時に、異方性導電ペースト(Bステージ状硬化物)に含まれている樹脂成分が到達する最高温度が最高到達樹脂温度である。上記圧着により、Bステージ状硬化物は熱硬化される。
(熱硬化剤)
上記異方性導電ペーストは、熱硬化剤を含むことが好ましい。該熱硬化剤は特に限定されない。該熱硬化剤は、熱硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。該熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。なかでも、Bステージ状硬化物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。Bステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度がより一層速くなる。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。熱硬化性化合物100重量部に対して、熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電ペーストを充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
(光重合開始剤)
上記異方性導電ペーストは、光重合開始剤を含むことが好ましい。該光重合開始剤は特に限定されない。該光重合開始剤は、光硬化性化合物を重合させる。該光重合開始剤として、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。該光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤、ベンゾフェノン光重合開始剤、チオキサントン、ケタール光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。光硬化性化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、更に好ましくは2重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。光重合開始剤の含有量が上記下限以上であると、光重合開始剤を添加した効果を充分に得ることが容易である。光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、異方性導電ペーストを硬化させた硬化物の接着力が充分に高くなる。
(フィラー)
本発明に係る異方性導電ペーストは、熱伝導率が20W/m・K以上であるフィラーを含む。このフィラーの使用により、Bステージ状硬化物に熱を付与したときに、Bステージ状硬化物中において熱が付与された部分から熱が他の部分に効果的に伝わる。このため、Bステージ状硬化物を速やかに硬化させることができ、均一な硬化物を得ることができる。また、フィラーの使用により、硬化物の潜熱膨張を抑制できる。フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フィラーの熱伝導率が20W/m・Kよりも小さいと、Bステージ状硬化物における熱伝導性を充分に高めることは困難である。フィラーの熱伝導率は、好ましくは50W/m・K以上、より好ましくは100W/m・K以上である。フィラーの熱伝導率は50W/m・K以上であることが特に好ましい。フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率300W/m・K程度の無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率200W/m・K程度の無機フィラーは容易に入手できる。
Bステージ状硬化物における熱伝導性をより一層高める観点からは、フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。上記フィラーは、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、Bステージ状硬化物における熱伝導性がより一層高くなる。
上記フィラーは、球状アルミナ、破砕アルミナ、球状窒化ケイ素、球状炭化ケイ素及び球状窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、球状アルミナ又は球状窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、Bステージ状硬化物における熱伝導性がより一層高くなる。
上記フィラーは球状のフィラーであってもよく、破砕されたフィラーであってもよい。上記フィラーは、球状であることが特に好ましい。球状フィラーの場合には、高密度で充填可能であるため、Bステージ状硬化物における熱伝導性がより一層高くなる。
熱硬化性をより一層高め、更に導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フィラーの粒子径は、0.05μm以上であることが好ましく、上記導電性粒子の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。上記フィラーの粒子径は1μm以上であることが好ましい。
上記破砕されたフィラーとしては、破砕アルミナ等が挙げられる。破砕されたフィラーは、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー又はボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することにより得られる。破砕されたフィラーの使用により、Bステージ状硬化物中のフィラーが、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。従って、Bステージ状硬化物の熱伝導性がより一層高くなる。また、破砕されたフィラーは、一般的に、通常のフィラーに比べて安価である。このため、破砕されたフィラーの使用により、異方性導電ペーストのコストを低減できる。
破砕されたフィラーの平均粒子径は、1μm以下であることが好ましい。平均粒子径が1μm以下であると、異方性導電ペースト中に、破砕されたフィラーを高密度に分散させることが容易になる。破砕されたフィラーの平均粒子径は、より好ましくは0.5μm以下、好ましくは0.1μm以上である。破砕されたフィラーの平均粒子径が上記上限以下であると、破砕されたフィラーを高密度に充填させることが容易である。
破砕されたフィラーのアスペクト比は、特に限定されない。破砕されたフィラーのアスペクト比は、1.5以上、20以下であることが好ましい。アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価である。従って、異方性導電ペーストのコストが高くなる。上記アスペクト比が20以下であると、破砕されたフィラーの充填が容易である。
破砕されたフィラーの最長径は、導電性粒子の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。破砕されたフィラーの最長径が上記上限以下であると、硬化物のギャップ精度がよくなり、接続信頼性も高くなる。
破砕されたフィラーのアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて、フィラーの破砕面を測定することにより求めることができる。
上記フィラーが球状のフィラーである場合には、球状のフィラーの平均粒子径は、0.1μm以上、2μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、フィラーを高密度で容易に充填できる。平均粒子径が2μm以下であると、硬化物の絶縁特性がより一層高くなる。
フィラーの最大径は導電性粒子の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。上記フィラーの最大径が上記上限以下であると、硬化物のギャップ精度がよくなり、接続信頼性も高くなる。
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
異方性導電ペースト100重量%中、上記フィラーの含有量は0.1重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。フィラーの含有量が上記範囲内であると、Bステージ状硬化物における熱伝導性がより一層高くなる。Bステージ状硬化物における熱伝導性をより一層高める観点からは、異方性導電ペースト100重量%中のフィラーの含有量は、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは25重量%以下である。フィラーの含有量が上記下限以上であると、Bステージ状硬化物における熱伝導性がより一層高くなる。フィラーの含有量が上記上限以下であると、接続構造体における導通信頼性がより一層高くなる。
Bステージ状硬化物における熱伝導性が顕著に高くなるので、異方性導電ペースト100重量%中、熱伝導率が100W/m・K以上であるフィラーの含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
フィラーの比熱は1以下であることが好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。これによりフィラー自身の温度上昇に使われる熱量が減少するため、Bステージ状硬化物における熱伝導性が更に一層高くなる。
(導電性粒子)
上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度とが高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層(はんだ層など)との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
導電性粒子の粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm未満、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
異方性導電ペーストにおける導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
FOB及びFOF用途向け異方性導電ペースト:
上記異方性導電ペーストは、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))との接続、又はフレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板との接続(FOF(Film on Film))に好適に用いられる。
FOB及びFOF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に100〜500μmである。FOB及びFOF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以上であると、電極間に配置される異方性導電ペースト及び接続部の厚みが十分に厚くなり、接着力がより一層高くなる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
フリップチップ用途向け異方性導電ペースト:
上記異方性導電ペーストは、フリップチップ用途に好適に用いられる。
フリップチップ用途では、一般にランド径が15〜80μmである。フリップチップ用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜15μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
COF向け異方性導電ペースト:
上記異方性導電ペーストは、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))に好適に用いられる。
COF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に10〜50μmである。COF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
導電性粒子の表面は、絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡を抑制することができる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電ペースト100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
(他の成分)
上記異方性導電ペーストは、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、Bステージ状硬化物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記熱硬化化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、Bステージ状硬化物を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
上記異方性導電ペーストは、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と熱硬化剤とフェノール性化合物との併用により、異方性導電ペーストの保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に導電性粒子を含む異方性導電ペーストを配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記異方性導電ペーストは、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電ペーストの粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
上記異方性導電ペーストは、貯蔵安定剤をさらに含むことが好ましい。上記異方性導電ペーストは、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート等が挙げられる。上記亜リン酸エステルとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
上記異方性導電ペーストは、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、異方性導電ペーストの保存安定性が高くなる。
上記異方性導電ペーストは、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
(異方性導電ペーストの詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電ペーストの硬化後の硬化物の熱伝導率が1.0W/m・K以上であることが好ましい。上記硬化物は、光及び熱硬化後の硬化物である。光及び熱硬化後の硬化物の熱伝導率は、光硬化後かつ熱硬化前のBステージ状硬化物の熱伝導率と相関がある。上記硬化物の熱伝導率は、より好ましくは2.0W/m・K以上である。
本発明に係る異方性導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは20000mPa・s以上、好ましくは300000mPa・s以下、より好ましくは100000mPa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。なお、ペースト状には液状も含まれる。
本発明に係る異方性導電ペーストは、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電ペーストは、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電ペーストを用いて得られた接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化物層3を介して、第2の接続対象部材4が接続された構造を有する。硬化物層3は複数の導電性粒子5を含む異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材2,4は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材2,4としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(c)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電ペーストを塗布し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペースト層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
次に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することにより、異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させる。異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する。図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化されたBステージ状硬化物層3Bを形成する。Bステージ化により、第1の接続対象部材2とBステージ状硬化物層3Bとが仮接着される。Bステージ状硬化物層3Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ状硬化物層は、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電ペーストの塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することも好ましい。塗布及び光の照射が上記のように行われた場合には、異方性導電ペースト層の流動をより一層抑制できる。このため、得られる接続構造体1の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペーストを塗布してから光を照射するまでの時間は、0〜3秒の範囲内であることが好ましく、0〜2秒の範囲内であることがより好ましい。
異方性導電ペースト層3Aの硬化を適度に進行させるために、光を照射する際の光の照射エネルギーは50〜200mJ/cm2の範囲内であることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ状硬化物層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ状硬化物層3Bに熱を付与(加熱)することにより、Bステージ状硬化物層3Bをさらに硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、Bステージ状硬化物層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後にBステージ状硬化物層3Bに熱を付与してもよい。
第1の接続対象部材2の下面又は第2の接続対象部材4の上面からBステージ状硬化物層3Bに熱を付与することが好ましい。このとき、Bステージ状硬化物層3Bにおける熱伝導性が高いので、第1の接続対象部材2の下面からBステージ状硬化物層3Bに熱を付与する場合に、第2の接続対象部材4の上面から熱を付与しなくてもよく、Bステージ状硬化物層3Bにおいて下部から上部にかけて熱を十分にかつ速やかに伝わらせることができる。第2の接続対象部材4の上面からBステージ状硬化物層3Bに熱を付与する場合に、第1の接続対象部材2の下面から熱を付与しなくてもよく、Bステージ状硬化物層3Bにおいて下部から上部にかけて熱を十分にかつ速やかに伝わらせることができる。
熱の付与によりBステージ状硬化物層3Bを硬化させる際の加熱温度は、好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
Bステージ状硬化物層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
Bステージ状硬化物層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電ペーストを用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。ここでは、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。しかも、異方性導電ペーストが上記組成を有するので、Bステージ状硬化物層を速やかに硬化させることができる。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
以下のフィラーを用意した。
[フィラーの種類]
熱伝導率が20W/m・K以上であるフィラー:
(1)窒化アルミニウム(平均粒子径100nm未満、熱伝導率200W/m・K)
(2)窒化ケイ素(平均粒子径50nm未満、熱伝導率45W/m・K)
(3)炭化ケイ素(平均粒子径100nm未満、熱伝導率125W/m・K)
(4)窒化アルミニウム(トクヤマ社製、平均粒子径0.6μm、熱伝導率200W/m・K)
(5)破砕アルミナ(日本軽金属社製、平均粒子径2μm、熱伝導率36W/m・K)
(6)酸化マグネシウム(堺化学工業社製、平均粒子径1.1μm、熱伝導率35W/m・K)
熱伝導率が20W/m・K未満であるフィラー:
(A)シリカ(平均粒子径0.25μm、熱伝導率12W/m・K)
(実施例1)
(1)エピスルフィド化合物含有混合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有混合液を得た。
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ基含有混合液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLとエタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、エピスルフィド化合物含有混合物を得た。
クロロホルムを溶媒として、得られたエピスルフィド化合物含有混合物の1H−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、エピスルフィド基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、レゾルシノールジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換されていることを確認した。また、1H−NMRの測定結果の積分値より、エピスルフィド化合物含有混合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含有することを確認した。
(2)異方性導電ペーストの調製
熱硬化性化合物である得られたエピスルフィド化合物含有混合物30重量部に、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」、ガラス転移温度:56℃)15重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.3重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記(1)のフィラーである窒化アルミニウム10重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子Aを5重量部添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
なお、用いた上記導電性粒子Aは、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、異方性導電ペーストを得た。
(実施例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、エピスルフィド化合物含有混合物を、熱硬化性化合物であるナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP−4032」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例3)
異方性導電ペーストの調製の際に、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)を、光硬化性化合物であるウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」、ガラス転移温度:24℃)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例4)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムを上記(2)の窒化ケイ素に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例5)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムを上記(3)の炭化ケイ素に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例6)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムを上記(4)の窒化アルミニウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(参考例7)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムを上記(5)の破砕アルミナに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例8)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムを上記(6)の酸化マグネシウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例9)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムの添加量を0.1重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例10)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムの添加量を20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例11)
異方性導電ペーストの調製の際に、フィラーである窒化アルミニウムの添加量を40重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例12)
平均粒子径20μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−220」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ3μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例13)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例14)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例15)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例16)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例17)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例18)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は参考例7と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例19)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例8と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例20)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例9と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例21)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例22)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例11と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(比較例1)
異方性導電ペーストの調製の際に、窒化アルミニウム10重量部を上記(A)のシリカ20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
(実施例、参考例及び比較例の評価)
(1)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度を測定した。
(2)硬化時間
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。導電性粒子Aを用いた場合には、これらの透明ガラス基板及び半導体チップを用いた。
また、L/Sが100μm/100μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが100μm/100μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。導電性粒子Bを用いた場合には、これらの透明ガラス基板及び半導体チップを用いた。
また、ディスペンサーと、該ディスペンサーに接続された光照射装置としての紫外線照射ランプとを備える複合装置を用意した。
複合装置を移動させながら、上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。さらに、複合装置を移動させて、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて、420nmの紫外線を光照射エネルギーが70mJ/cm2となるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化し、Bステージ状硬化物層を形成した。塗布してから、すなわち塗布された異方性導電ペーストが上記透明ガラス基板に接したときから、異方性導電ペースト層に光が照射されるまでの時間Tは、0.5秒であった。
次に、Bステージ状硬化物層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、Bステージ状硬化物層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて、Bステージ状硬化物層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱によりBステージ状硬化物層が硬化するまでの時間を測定した。
(3)リークの有無
得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。リークが生じていない場合を「○」、リークが生じている場合を「×」と判定した。
(4)ボイドの有無
得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドの有無を下記の判定基準で判定した。
[ボイドの有無の判定基準]
○:ボイドなし
△:ボイドが僅かにあるが、使用上問題がないレベル
×:顕著にボイドがあり、使用上問題がある
(5)硬化物の熱伝導率
実施例、参考例及び比較例で作製した異方導電ペーストをフッ素樹脂により形成されたカップに入れ、150℃のオーブン内で5分間放置することにより、硬化物を得た。
京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて、硬化物の熱伝導率を測定した。
結果を下記の表1,2に示す。