以下、本発明を詳細に説明する。
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している硬化物層3とを備える。硬化物層3は、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部である。硬化物層3は、熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電材料(異方性導電材料層)を、加熱して本硬化させることにより形成されている。上記異方性導電材料は、複数の導電性粒子5を含む。
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の電極4bを有する。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4としてフレキシブルプリント基板が用いられている。本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る異方性導電材料では、第2の接続対象部材及び第1の接続対象部材として、フレキシブルプリント基板とガラス基板とが用いられる。
上記硬化物層は、上記異方性導電材料を加熱して本硬化させることにより形成されている。本硬化前の上記異方性導電材料(異方性導電材料層)の25℃での貯蔵弾性率G’25は、5×104Pa以上、1×107Pa以下である。本硬化前の上記異方性導電材料(異方性導電材料層)を25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minは、1×103Pa以上、5×105Pa以下である。
上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minが上記下限以上及び上記上限以下であると、フレキシブルプリント基板とガラス基板とが接続された接続構造体における電極間の導通信頼性を高めることができる。さらに、接続構造体の作製時に、異方性導電材料層中の導電性粒子を除く成分を電極と導電性粒子との間から排除して、電極と導電性粒子とを効果的に接触させることができる。さらに、電極に導電性粒子が押し込まれた凹部を形成することができる。図3に示すように、導電性粒子5が押し込まれることによって、電極2bに凹部2cを形成することも可能である。該凹部は圧痕とも呼ばれる。なお、電極4bに凹部を形成してもよい。さらに、上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minが上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料が硬化した硬化物層において、空隙(ボイド)が生じ難くなる。このため、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続信頼性が高くなり、更に電極間の導通信頼性が高くなる。
熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いて接続構造体を作製する場合に、更に接続構造体における第1,第2の接続対象部材がフレキシブルプリント基板とガラス基板とである場合に、上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minが上記下限以上及び上記上限以下であることは、電極間の導通信頼性を効果的に高め、かつ硬化物層に空隙(ボイド)を生じ難くするのに大きな役割を果たす。
本硬化前の上記異方性導電材料の25℃での貯蔵弾性率G’25は、好ましくは1×105Pa以上、より好ましくは3×105Pa以上、好ましくは5×106Pa以下、より好ましくは1×106Pa以下である。上記貯蔵弾性率G’25が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、かつ硬化物層に空隙(ボイド)がより一層生じ難くなる。
本硬化前の上記異方性導電材料を25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minは、好ましくは5×103Pa以上、より好ましくは1×104Pa以上、好ましくは1×105Pa以下、より好ましくは7×104Pa以下である。上記最低損失弾性率G’’minが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、かつ硬化物層に空隙(ボイド)がより一層生じ難くなる。
なお、上記硬化物層は、上記異方性導電材料をBステージ化せずに、加熱して本硬化させて形成されていてもよい。上記異方性導電材料は、異方性導電材料を加熱して本硬化させる用途に用いられてもよい。
また、上記硬化物層は、熱の付与又は光の照射により硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電材料を形成した後、Bステージ化された異方性導電材料を加熱して本硬化させて形成されていてもよい。上記異方性導電材料は、熱の付与又は光の照射により硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電材料を形成した後、Bステージ化された異方性導電材料を加熱して本硬化させる用途に用いられてもよい。この場合には、上記25℃での貯蔵弾性率G’25は、Bステージ化された異方性導電材料の25℃での貯蔵弾性率G’25であり、上記25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minは、Bステージ化された異方性導電材料を25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minである。上記異方性導電材料層に光を照射する場合には、上記異方性導電材料として、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電材料が用いられる。すなわち、光の照射により硬化を進行させる異方性導電材料である場合には、異方性導電材料は、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子とを含む。
さらに、上記硬化物層は、光の照射により硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電材料を形成した後、Bステージ化された異方性導電材料を加熱して本硬化させて形成されていてもよい。上記異方性導電材料は、光の照射により硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電材料を形成した後、Bステージ化された異方性導電材料を加熱して本硬化させる用途に用いられてもよい。この場合には、上記25℃での貯蔵弾性率G’25は、Bステージ化された異方性導電材料の25℃での貯蔵弾性率G’25であり、上記25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minは、Bステージ化された異方性導電材料を25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minである。
上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minは、回転型動的粘弾性装置を用いて測定される。上記貯蔵弾性率G’25を測定する回転型動的粘弾性装置として、レオロジカ インスツルメンツ社製「VAR−100」等が用いられる。上記貯蔵弾性率G’25は周波数1Hz、歪み1.0E−2及び測定温度25℃の条件で測定される。上記最低損失弾性率G’’minは、周波数1Hz、歪み1.0E−2の条件で、かつ25℃から250℃まで加熱する条件で測定される。
なお、上記最低損失弾性率G’’minを加熱する温度範囲を、25℃から250℃までとしたのは、異方性導電材料を加熱して本硬化させる際の加熱温度が、好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下であるためである。
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。ここでは、上記異方性導電材料として、熱硬化性成分と導電性粒子5とに加えて、光硬化性成分をさらに含む異方性導電材料を用いた場合の接続構造体1の製造方法を具体的に説明する。
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電材料を用いて、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを配置する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。上記異方性導電材料として異方性導電ペーストを用いる場合には、異方性導電ペーストの配置は、異方性導電ペーストの塗布により行われる。また、上記異方性導電材料層は、異方性導電ペースト層になる。
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。図2(b)に示すように、異方性導電材料層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。このとき、後に本硬化されるBステージ化された異方性導電材料層3B、すなわち本硬化前の異方性導電材料層3Bの25℃での貯蔵弾性率G’25を、5×104Pa以上、1×107Pa以下にする。さらに、後に本硬化されるBステージ化された異方性導電材料層3B、すなわち本硬化前の異方性導電材料層3Bを25℃から250℃まで加熱したときの最低損失弾性率G’’minを、1×103Pa以上、5×105Pa以下にする。
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を配置しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の配置と同時に、又は配置の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。配置と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1における導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を配置してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源や、波長420nm以下の特定波長に強い発光を有する光源等が挙げられる。波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。また、波長420nm以下の特定波長に強い発光を有する光源の具体例としては、LEDランプ等が挙げられる。なかでもLEDランプが好ましい。LEDランプは、被照射物自身の発熱が非常に少なく、発熱による異方導電性材料の硬化を防ぐことができる。
光の照射により異方性導電材料層3AをBステージ化させるために、異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、波長365nmにピークを持つLEDランプ光源を用いる場合は、好ましくは100〜3000mW/cm2程度である。また、異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、好ましくは500mJ/cm2以上、より好ましくは2000mJ/cm2以上、好ましくは100000mJ/cm2以下、より好ましくは20000mJ/cm2以下である。
なお、光の照射により異方性導電材料層をBステージ化せずに、熱の付与により異方性導電材料層をBステージ化してもよい。異方性導電材料層に熱を付与することにより硬化を進行させて、異方性導電材料層をBステージ化する場合には、異方性導電材料層を充分にBステージ化させるための加熱温度は好ましくは80℃以上、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下である。光の照射ではなく熱の付与により異方性導電材料層をBステージ化した場合でも、Bステージされた異方性導電材料層の上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minが上記下限以上及び上記上限以下であれば、電極間の導通信頼性が高くなり、かつ硬化物層に空隙(ボイド)が生じ難くなる。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。なお、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3AをBステージ化させるために光を照射してもよく、熱を付与してもよい。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱して本硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bを加熱してもよい。第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3Bを加熱して本硬化させることが好ましく、第2の接続対象部材4の積層と同時に、異方性導電材料層3Bを加熱して本硬化させることがより好ましい。
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させるために、異方性導電材料層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
なお、異方性導電材料層3Aに光を照射せずに、異方性導電材料層3AをBステージ化しない場合には、異方性導電材料層3Aの上面3aに第2の接続対象部材4を積層し、異方性導電材料層3Aを加熱して、本硬化させればよい。
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
さらに、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化した後に、本硬化させることで、第1の接続対象部材上に配置された異方性ペースト層に含まれている導電性粒子が、硬化段階で大きく流動し難くなる。従って、導電性粒子が所定の領域に配置されやすくなる。具体的には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置することができ、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。このため、接続構造体における電極間の導通信頼性を高めることができる。
本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))に関する。本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る異方性導電材料では、上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材として、フレキシブルプリント基板とガラス基板とが用いられる。FOG用途では、L/Sが比較的広いため、導電性粒子の粒径も大きく濃度も低いので、接続時の圧力が低く、充分な圧痕や樹脂充填性が得られず、電極間の導通信頼性、及び硬化物層における空隙(ボイド)の発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る異方性導電材料により、FOG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層における空隙(ボイド)の発生を効果的に抑制できる。
上記異方性導電材料は、ペースト状の異方性導電ペーストであってもよく、フィルム状の異方性導電フィルムであってもよい。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
異方性導電ペーストを用いる場合には、異方性導電フィルムを用いる場合と比較して、導電性粒子が流動しやすく、導通信頼性が低くなる傾向がある。本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る異方性導電材料により、異方性導電ペーストを用いたとしても、導通信頼性を十分に高めることができる。
上記異方性導電材料は、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む。該熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含有することが好ましい。該熱硬化剤は、熱アニオン硬化剤であることが好ましい。また、本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性成分と導電性粒子とに加えて、光硬化性成分をさらに含むことが好ましい。該光硬化性成分は、光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。該光硬化開始剤は、光ラジカル開始剤であることが好ましい。上記異方性導電材料は、硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。上記光硬化性化合物は(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
エポキシ基又はチイラン基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料の使用によって、上記貯蔵弾性率G’25及び最低損失弾性率G’’minを好ましい値に容易に制御でき、接続構造体における電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。さらに、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、熱硬化剤と、光ラジカル開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料の使用によって、上記貯蔵弾性率G’25及び最低損失弾性率G’’minを好ましい値により一層容易に制御でき、接続構造体における電極間の導通信頼性をさらに一層高めることができる。さらに、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、熱アニオン硬化剤と、光ラジカル開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料の使用によって、上記貯蔵弾性率G’25及び最低損失弾性率G’’minを好ましい値により一層容易に制御でき、接続構造体における電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
上記貯蔵弾性率G’25及び最低損失弾性率G’’minを好ましい値に容易に制御し、接続構造体における電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は、重量平均分子量が500以上、5000以下である硬化性化合物を含むことが好ましい。
以下、上記異方性導電材料に含まれる各成分、及び含まれることが好ましい各成分の詳細を説明する。
[熱硬化性化合物]
上記熱硬化性化合物は熱硬化性を有する。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記熱硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記熱硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であってもよい。
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
上記熱硬化性化合物は、フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。この場合に、フェノキシ樹脂と、上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物とを併用してもよい。この場合に、上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物は、フェノキシ樹脂ではないことが好ましい。
上記貯蔵弾性率G’25及び上記最低損失弾性率G’’minを好ましい値に容易に制御し、接続構造体における電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20000以上、好ましくは70000以下である。
本明細書において、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記フェノキシ樹脂と、上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物とを併用する場合には、上記異方性導電材料は、上記フェノキシ樹脂と上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜99:1で含むことが好ましく、10:90〜90:10で含むことがより好ましく、20:80〜80:20で含むことが更に好ましく、30:70〜70:30で含むことが特に好ましい。
[光硬化性化合物]
光の照射によって硬化するように、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物を含むことが好ましい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化(Bステージ化)させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物及び環状エーテル基を有する光硬化性化合物等が挙げられる。
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物の使用により、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。電極間の導通信頼性を効果的に高める観点からは、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
上記光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物を用いる場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜70:30で含むことがより好ましく、10:90〜50:50で含むことが更に好ましい。上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜50:50で含むことが特に好ましい。
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光硬化開始剤は、光ラジカル開始剤であることが好ましい。該光ラジカル開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光ラジカル開始剤、ベンゾフェノン光ラジカル開始剤、チオキサントン、ケタール光ラジカル開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光ラジカル開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光ラジカル開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.15重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の導電性の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記低融点金属層における錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層(はんだ層など)であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
異方性導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
導電性粒子の表面は、絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡を抑制することができる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは19重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(DIC社製「EPICLON HP−4032D」)15重量部と、熱硬化剤であるイミダゾールのアミンアダクト体(味の素ファインテクノ社製「PN−23」)3重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光ラジカル開始剤であるアシルホスフィンオキサイト系化合物(BASFジャパン社製「IRGACURE 189」)0.1重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)10重量部とを配合し、さらに導電性粒子A(平均粒径10μm)を配合物100重量%中での含有量が5重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
なお、用いた上記導電性粒子Aは、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
(2)接続構造体の作製
L/Sが100μm/100μmのAl−4%Ti電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが100μm/100μm、1電極あたりの電極面積が200000μm2の金電極パターンが下面に形成されたフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚みが30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。
次に、波長365nmのLEDランプを用いて、照射エネルギーが2000mJ/cm2となるように、異方性導電ペースト層に上方から紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化して、Bステージ化された異方性導電ペースト層(本硬化前の異方性導電ペースト層)を形成した。次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、Bステージ化された異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で本硬化させ、接続構造体を得た。
(実施例2〜4)
接続構造体を作製する際に、下記の表1に示す照射エネルギーとなるように、異方性導電ペースト層に上方から紫外線を照射したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例5)
(1)異方性導電フィルムの調製
熱硬化性化合物であるフェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHC」、重量平均分子量43000)15重量部と、熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(DIC社製「EPICLON HP−4032D」)15重量部と、熱硬化剤であるイミダゾールのアミンアダクト体(味の素ファインテクノ社製「PN−23」)3重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部とを配合し、実施例1で用いた導電性粒子Aを配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加し、更に固形分が35重量%となるよう溶剤であるトルエンを配合した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、組成物を得た。
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、得られた組成物を塗工した後、80℃で15分間真空乾燥して溶剤を除去し、厚みが30μmである異方性導電フィルムを得た。
(2)接続構造体の作製
L/Sが100μm/100μmのAl−4%Ti電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが100μm/100μm、1電極あたりの電極面積が200000μm2の金電極パターンが下面に形成されたフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
上記ガラス基板上に、得られた異方性導電フィルムを配置して異方性導電フィルム層を形成した後、PETフィルムを剥離した。異方性導電フィルム層を形成した後、該異方性導電フィルム層に光を照射しなかった。
次に、異方性導電フィルム層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電フィルム層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電フィルム層を185℃で本硬化させ、接続構造体を得た。
(実施例6)
異方性導電フィルムを調製する際に、フェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHC」、重量平均分子量43000)を、フェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHH」、重量平均分子量57000)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電フィルムを得た。得られた異方性導電フィルムを用いたこと以外は実施例5と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例7)
異方性導電フィルムを調製する際に、フェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHC」、重量平均分子量43000)を、フェノキシ樹脂(東都化成社製「YP−50」、重量平均分子量70000)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電フィルムを得た。得られた異方性導電フィルムを用いたこと以外は実施例5と同様にして、接続構造体を得た。
(実施例8〜14)
平均粒子径3μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ0.5μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ1μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
実施例8では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
実施例9では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
実施例10では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
実施例11では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
実施例12では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を得た。
実施例13では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を得た。
実施例14では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例7と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を得た。
(比較例1〜2)
接続構造体を作製する際に、下記の表1に示す照射エネルギーとなるように、異方性導電ペースト層に上方から紫外線を照射したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
(比較例3)
異方性導電フィルムを調製する際に、フェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHC」、重量平均分子量43000)を、フェノキシ樹脂(Inchem社製「PKHB」、重量平均分子量32000)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電フィルムを得た。得られた異方性導電フィルムを用いたこと以外は実施例5と同様にして、接続構造体を得た。
(比較例4)
異方性導電フィルムを調製する際に、フェノキシ樹脂(東都化成社製「YP−50」、重量平均分子量70000)の配合量を25重量部に変更したこと、並びに熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(DIC社製「EPICLON HP−4032D」)の配合量を5重量部に変更したこと以外は実施例7と同様にして、異方性導電フィルムを得た。得られた異方性導電フィルムを用いたこと以外は実施例5と同様にして、接続構造体を得た。
(評価)
(1)25℃での貯蔵弾性率G’25
接続構造体の作製時における本硬化前の異方性導電材料層を、50℃に加温したラミネーターを用いて積層し、厚み500μm以上の測定用サンプルを作製し、25℃での貯蔵弾性率G’25を測定した。回転型動的粘弾性装置(レオロジク インスツルメンツ社製「VAR−100」)を用いて、周波数1Hz、歪み1.0E−2及び測定温度25℃で測定を行い、25℃での貯蔵弾性率G’25を得た。
(2)最低損失弾性率G’’min
接続構造体の作製時における本硬化前の異方性導電材料層を、50℃に加温したラミネーターを用いて積層し、厚み500μm以上の測定用サンプルを作製し、得られたサンプルを25℃から250℃まで加熱して、最低損失弾性率G’’minを測定した。回転型動的粘弾性装置(レオロジカ インスツルメンツ社製「VAR−100」)を用いて、周波数1Hz、歪み1.0E−2の条件で、かつ25℃から250℃まで、昇温速度5℃/分にて加熱する条件で測定を行った。損失弾性率G’’が最も小さくなる値を、最低損失弾性率G’’minとした。
(3)圧痕状態
得られた接続構造体における100箇所の導電性粒子と電極との接続部分について、電極に形成された圧痕の状態を観察した。
偏光顕微鏡を使用し、1電極あたり(200000μm2あたり)に明らかな球状の圧痕が平均100個以上確認できる場合を、良好な圧痕が形成されていると判断した。また、1電極あたり(200000μm2あたり)明らかな球状の圧痕が平均20個未満確認できる場合を、圧痕の形成が不十分と判断した。圧痕状態を下記の判定基準で判定した。
[圧痕状態]
○○:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均100個以上
○:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均20個以上、100個未満
×:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均20個未満
(4)空隙(ボイド)の有無(充填性)
得られた接続構造体において、異方性導電材料層により形成された硬化物層に空隙(ボイド)が生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から光学顕微鏡にて、空隙(ボイド)の発生面積を算出し、下記の基準で判定した。
[空隙(ボイド)の判定基準]
○○:空隙(ボイド)の発生面積が2.5%未満
○:空隙(ボイド)の発生面積が2.5%以上、5%未満
×:空隙(ボイド)の発生面積が5%以上、又は20μm以上の大きさの空隙(ボイド)がある
(5)接続抵抗
得られた20個の接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。20個の接続構造体の接続抵抗の平均値を求めた。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗を下記の判定基準で判定した。
[接続抵抗の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が3Ω未満
○:接続抵抗の平均値が3Ωを超え、5Ω以下
×:接続抵抗の平均値が5Ωを超える、又は測定不可な接続構造体がある
結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1と実施例8、実施例2と実施例9、実施例3と実施例10、実施例4と実施例11、実施例5と実施例12、実施例6と実施例13、実施例7と実施例14を対比した結果、導電層の外側の表面が低融点金属層である導電性粒子を用いた場合に、導電層の外側の表面が低融点金属層ではない導電性粒子を用いた場合と比べて、接続構造体における接続信頼性が高いことを確認した。これは、圧着時に低融点金属層が電極表面を濡れ拡がっており、溶融後に固化した低融点金属が電極と強固に接続されていたためである。