JP5305228B2 - 耐蝕性部材 - Google Patents

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Description

本発明の態様は、一般に、耐蝕性部材およびその作製方法に係り、特に体積抵抗率が低く、大気雰囲気で焼成可能である耐蝕性部材に関する。
従来、半導体製造装置用部材等に用いる耐蝕性と導電性の双方を有する材料として、高い耐プラズマ性を有する酸化イットリウムを用いたセラミック材料が検討されてきた。酸化イットリウムは絶縁体であるが、導電性を示すセラミックを添加すると、その体積抵抗率が低下することが知られている。
特許文献1には、酸化イットリウムにSiCを2〜30wt%添加し、ホットプレスを用いて焼結することで1×10Ω・cm以下となることが記載されている。
また、特許文献2には、酸化イットリウムにTiO2−x(0<x<2)を1〜15wt%添加し、大気焼成後に不活性還元処理や雰囲気焼成あるいはHIP処理を行うことで10〜1014Ω・cmとなることが記載されている。
特許文献3には、酸化イットリウムに金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの何れか一種を0.5〜10wt%添加し、不活性加圧雰囲気焼成を行い10−2〜1010Ω・cmとなることが記載されている。
特許文献4には、酸化イットリウムにランタノイド酸化物を5質量%以下添加してなる耐蝕性部材の製造方法が記載されている。
一方、本出願人は、酸化イットリウム粉末に対し焼結助剤としてホウ素化合物を添加することにより、1400〜1500℃で焼成し、緻密体が得られることを開示している。(特許文献5)
特開2006−069843号公報 特開2001−089229号公報 特開2005−206402号公報 特開2005−335991号公報 特開2007−45700号公報
特許文献1〜3の製法は体積抵抗率の低い酸化イットリウムが得られるが、工程が繁雑であり、特別な設備が必要となる。特許文献4の製法では、残留炭素の影響を考慮するため、酸素過剰の雰囲気での焼成が好ましく、作製には煩雑な工程が必要となり、コスト高となってしまう。
本発明の態様は、上記問題を解決するためになされたもので、大気雰囲気中の焼成により、安価で簡便に製造することができる体積抵抗率の低い耐蝕性部材を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態においては、酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック焼結体からなる耐蝕性部材であって、副成分としてTb とPr 11 のうち少なくとも1種以上を含有してなることを特徴とする耐蝕性部材とする。
本発明の好ましい形態においては、耐蝕性部材が大気雰囲気中で焼成によって得られたことを特徴とする。
本発明の好ましい形態においては、副成分の含有量が5〜60重量%であることを特徴とする
本発明の好ましい形態においては、耐蝕性部材は、体積抵抗率が1014Ω・cm未満であることを特徴とする。
また本発明の一実施形態にかかる耐蝕性部材は、前記セラミック焼結体中にホウ素と希土類との化合物M BO (MはTbまたはPr)を含むことを特徴とする
本発明の態様によれば、大気雰囲気中の焼成により簡便に体積抵抗率の低い耐蝕性部材を提供することができるという効果がある。
本件で使用する語句の説明を以下に行う。
(セラミック材料)
本発明におけるセラミック材料とは、酸化イットリウム粉末の焼成により得られるセラミック材料であって、セラミック材料表面は、焼き肌、研磨・研削面等は問わない。酸化イットリウムを主成分とするとは、セラミック材料を構成する金属元素のうち主たる部分を占めるものがイットリウム元素であることを指す。
(開気孔率)
本発明における開気孔率とは、JIS規格(JIS R1634)に示される測定方法を用い、試料の外形容積を1とした場合、この中に占める開気孔部分の容積を百分比で表したものである。
(密度)
本発明における密度とは、見かけ密度をさす。具体的には、試料の質量を外容積から開気孔を除いた容積で除した値であり、アルキメデス法により測定を行った。
(アルキメデス法)
本発明におけるアルキメデス法とは、JIS規格(JIS R1634)に示される密度測定方法である。飽水方法は真空法、媒液には蒸留水を用いて測定を行った。気孔率の算出方法もJIS R 1634に従って行った。
(導電性)
酸化イットリウム焼結体の体積抵抗率は、室温(25℃)において1014Ω・cm以上である。本発明における導電性とは、絶縁材料である酸化イットリウムの抵抗値を意図的に変化できる1014Ω・cm未満となった性質を導電性と定義した。
(体積抵抗率)
本発明における体積抵抗率とは、JIS規格(JIS C2141)に示される試験材料の電気抵抗を単位体積当りに換算した値である。室温(25℃)における体積抵抗率は三端子法を用いて測定した。
絶縁体である酸化イットリウム焼結体に導電性を付与するには、導電性を示すセラミックの添加が有効であることは良く知られている。一般に、SiCやTiO2−x(0<x<2)を添加すると体積抵抗率が低下するが、この場合にはHIP処理、不活性還元雰囲気での焼成等が必要となり、製作時間を要さなければならず、またコスト高となってしまう。
本発明の一実施形態では、酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック材料において、副成分として主成分とは異なる希土類元素酸化物を含有してなる耐蝕性部材とする。
上記希土類元素酸化物とは、酸化イットリウム、酸化テレビウムなどの、元素周期律表の3a族元素の酸化物をさす。
本発明の好ましい形態においては、酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック材料において、前記希土類元素酸化物が酸化テレビウムと酸化プラセオジウムのうち少なくとも1種以上である耐蝕性部材とする。
前記副成分希土類元素酸化物の含有量が5〜60重量%である耐蝕性部材とする。
副成分希土類酸化物の含有量が5重量%より少ないと、抵抗が大きく、導電性部材としての利用は困難となる。また、60重量%以下の場合、安定した焼結体の作製が可能となる。よって、5〜60重量%が好ましい。
より好ましい形態においては、酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック材料において、焼結助剤としてホウ素化合物を添加し、このセラミック材料中にホウ素と希土類との化合物MBO(M=希土類元素)を含む耐蝕性部材とする。
前記焼結助剤としては、例えば酸化ホウ素やホウ酸等のホウ素化合物や、フッ化リチウム等のリチウム化合物、フッ化カリウムなどのカリウム化合物が好適に利用できる。最も好ましくは、ホウ素化合物である。
前記MBO(M=希土類元素)を生成するホウ素化合物としては、酸化ホウ素、ホウ酸に限らず、窒化ホウ素、炭化ホウ素、YBO、YBO等のホウ素化合物が利用可能であり、中でも酸化ホウ素、ホウ酸、YBOが好適に利用できる。
前記焼結助剤を用いることにより、酸化イットリウムの大気焼成温度を1550℃以下に下げることが可能となる。この低温焼成により、SiC発熱体やカンタル発熱体を有する電気炉での焼成が可能となり、簡便に焼結体を作製することができる。
本発明の一実施形態においては、酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック材料において、体積抵抗率が1014Ω・cm未満である耐蝕性部材とする。
また本発明の一実施形態に係る耐蝕性部材は大気雰囲気中で焼成によって得られる耐蝕性部材である。
(混合・原料粉末)
原料の混合方法は、ボールミルのようなセラミックスの製造工程に利用される一般的な方法が利用できる。酸化イットリウム原料粉末および希土類酸化物原料粉末の粒子径に制限はないが、平均10μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下が好ましい。下限値の制限はないが、成形性の低下があることから、0.1μm以上が好ましい。ボールミルのような粉砕工程を伴う混合方法は、粒子径を細かくするだけでなく粗大粒子を粉砕する効果があり、均質で微細な粒子からなるセラミック材料を得るには好ましい。
(成形)
本発明の実施形態における成形方法は、造粒した粉末をプレス成形やCIPなどの乾式成形方法により成形体を得ることができる。乾式成形の場合、バインダーを加えてスプレードライヤーなどを利用し、顆粒にし利用できる。また、押し出し成形、射出成形、鋳込み成形、シート成形などの湿式成形法も利用できる。
(焼成)
本発明の実施形態において、成形体は、乾燥後に適当な温度で脱脂作業を行う。脱脂工程は焼成工程と連続して行うことも可能である。焼成温度は酸化ホウ素を含有しない場合においては1600〜1800℃の焼成が必要である。焼結助剤を含有する場合には1200〜1550℃、好ましくは1400〜1500℃である。焼成は大気雰囲気で、SiC発熱体やカンタル発熱体を有する電気炉での焼成が可能である。
焼結性を高めるために、ホウ素化合物を添加した場合には、焼成中にホウ素化合物が蒸散しやすいことから、マッフル等を施し焼成することが好ましい。ホウ素化合物は焼成の過程でMBO(M=Y、Tb、Pr)を形成し、1100〜1600℃の温度で液相を形成し焼結を促進する。
本発明の一実施形態により得られる耐蝕性部材は、チャンバー、ベルジャー、サセプター、クランプリング、フォーカスリング、キャプチャーリング、シャドーリング、絶縁リング、ライナー、ダミーウエハー、高周波プラズマを発生させるためのチューブ、高周波プラズマを発生させるためのドーム、半導体ウエハーを支持するためのリフトピン、シャワー板、バッフル板、ベローズカバー、上部電極、下部電極、チャンバー内部の部材固定用のネジ、ネジキャップ、ロボットアームなどのプラズマ雰囲気に曝される半導体または液晶製造装置用部材に利用することができる。
また、本発明の一実施形態の耐蝕性部材は、フッ化水素等の腐食溶液や腐食ガス等を搬送するための搬送管等の腐食防止用部材や、腐食溶液を用いた化学的処理等を行う際に使用する坩堝等に利用することができる。
(実施例)
原料として酸化イットリウム粉末(平均粒子径約1μm)、酸化テレビウム粉末、酸化プラセオジウム粉末、及び酸化ホウ素(試薬級)を用意し、分散剤・バインダー・離型剤を加えてボールミルによる粉砕攪拌混合を行った。混合後スプレードライヤーによる造粒を行った。得られた造粒粉末はプレス成形を行った後、CIP成形を行った。スプレードライヤーによる造粒とCIP処理により、成形体密度を向上させると安定して焼結体が得られる。得られた成形体は、脱脂した後、大気雰囲気中で焼成した。焼成温度は酸化ホウ素を含有しない場合には1650〜1800℃、含有する場合には1300〜1550℃とした。表1は得られた焼結体と、焼成温度、気孔率、および体積抵抗率の関係である。
Figure 0005305228
本発明の一実施形態の耐蝕性部材は、緻密質であることが好ましく、気孔率1%未満が好ましい。気孔率が1%以上であると気孔が多くなり電気伝導率が安定しないため好ましくない。本発明の一実施形態で作製した耐蝕性部材は、何れも気孔率1%未満である。
実施例1では酸化イットリウム、酸化テレビウムを構成相とし、実施例2〜7ではこれに加えMBO(M=Y、Tb)からなることが確認された。このことから、添加した酸化ホウ素は単相ではなく希土類との化合物としてのみ存在していることが確認できた。
実施例1は、焼結助剤無添加の結果である。ホウ素化合物は焼結性のみに寄与していると判断できる。
実施例2〜6は、酸化テレビウム添加量を変化させた結果である。抵抗値は10Ω・cm〜1013Ω・cmの範囲にあり、酸化テレビウム添加量が増大するにしたがって低下した。
実施例7では酸化プラセオジウムを添加して試験を行った結果である。酸化テレビウムを添加した場合と同程度の抵抗値を示した。
比較例1、2では、酸化テレビウムの添加量を1および2.5重量%とした結果である。添加量が一定以下であると抵抗値の変化が小さく、所望の値とならない。
比較例3、4では、酸化セリウム添加の結果である。酸化テレビウムを添加した場合と比較すると、抵抗値がほとんど低下していないことが確認できた。
酸化セリウム添加の結果より、価数の異なる希土類元素酸化物同士の組み合わせが導電性を発現するのではなく、添加する希土類元素酸化物の種類とその量に適切な条件があることが確認された。
本発明の一実施形態の耐蝕性部材の評価をするために、サンプルをドライエッチング装置(DEA-506/アネルバ社製)を用い、腐食ガスとしてCF4(40sccm)+O2(10ccm)、マイクロ波出力1KW、周波数:13.56MHz、照射時間30時間にてプラズマ雰囲気に曝した。表2は各試料とエッチング速度の関係である。
本発明の一実施形態の耐蝕性部材は、高純度アルミナに比較して非常にエッチング速度が遅く、優れた耐プラズマ性を有していることが明らかとなった。
Figure 0005305228

Claims (4)

  1. 酸化イットリウムを主成分とし、焼成により得られるセラミック焼結体からなる耐蝕性部材であって、
    副成分としてTbとPr11のうち少なくとも1種以上を含有してなり、
    前記副成分の含有量が5〜60重量%であることを特徴とする耐蝕性部材。
  2. 前記耐蝕性部材が大気雰囲気中で焼成によって得られたことを特徴とする請求項1に記載の耐蝕性部材。
  3. 前記耐蝕性部材は、体積抵抗率が1014Ω・cm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐蝕性部材。
  4. 前記耐蝕性部材は、前記セラミック焼結体中にホウ素と希土類との化合物MBO(MはTbまたはPr)を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の耐蝕性部材。
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