JP5299098B2 - カラーフィルタの製造方法、および着色層形成用塗料セット - Google Patents

カラーフィルタの製造方法、および着色層形成用塗料セット Download PDF

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Description

本発明は、表示装置に用いられるカラーフィルタの製造方法、およびその際に用いられる着色層形成用塗料セットに関するものである。
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、図7に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル101とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
このような液晶表示装置は、上記液晶セルに用いられる液晶材料の配列形態により種々の駆動方式を用いたものが知られている。今日、普及している液晶表示装置の主たるものは、ねじれネマチック方式(TN)、超ねじれネマチック方式(STN)、複数配向分割型垂直配向方式(MVA)、横型電解駆動方式(IPS)、および、OCB(Optically Compensated Bend)等に分類される。なかでも今日においては、上記MVA、および、IPSの駆動方式を有するものが広く普及するに至っている。
一方、液晶表示装置はその特有の問題点として、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化してしまう問題である。このような視野角特性の問題は、近年の液晶表示装置の大画面化に伴って、さらにその問題の重大性を増している。
このような視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されている。その代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。この位相差フィルムを用いる方法は、例えば、図8に示すように所定の光学特性を有する位相差フィルム103を、液晶セル101と偏光板102Aおよび102Bとの間に配置することにより、視野角依存性の問題を改善する方法である。このような方法は位相差フィルム103を液晶表示装置に組み込むことのみで上記視野角依存性の問題点を改善できることから、簡便に視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることが可能な方法として広く用いられるに至っている。
しかしながら、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、各色の着色層によって異なる位相差を有するため、上記の位相差フィルムを用いた場合、各色の着色層が有する位相差の差異は補償することができないという問題があり、視野角依存性の問題点を完全に解決することは困難であった。
そこで上記問題を解決するため、特許文献1では、カラーフィルタの各色の着色層によって、それぞれ最適な位相差を有する位相差層を形成する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、各色の着色層上に位相差層を形成する必要があるため、工程が煩雑で、コストも高くなるという問題があった。
上記の記載は、液晶表示装置に関するものであるが、液晶表示装置に関わらず、例えば有機EL表示装置等のカラーフィルタおよび位相差層を有する表示装置については同様の問題があった。
特開2007−279448号公報
本発明は、黒表示時に斜め方向から観察された場合でも、色みを有する黒表示とならないような視野角拡大に優れた特性を有するカラーフィルタを製造する製造方法、およびその際に用いられる着色層形成用塗料セットを提供することを主目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーション(以下、Rthと称する。)を調整するために、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
本発明によれば、上記焼成工程において、各色の着色層形成用層ごとに焼成温度を変化させて焼成を行うことにより、各色の着色層が有するRthを制御して、各色の着色層が有するRthを調整することができるので、表示装置とした際に、視野角特性に優れたカラーフィルタを製造することが可能となる。
また、各色の着色層を形成する際に、各色の着色層が有するRthの調整を同時に行うことができるため、各色の着色層上にそれぞれ最適なRthを有する位相差層を形成して調整を行う場合に比べて、工程数を減らすことが可能となる。
本発明においては、上記焼成工程では、各色の着色層が有するRthが均一になるように、各色の着色層が有するRthを調整するために、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることが好ましい。これにより、表示装置とした際に、黒表示時に斜め方向から観察された場合であっても色みのない視野角特性に優れたカラーフィルタを製造することが可能となる。
また本発明においては、上記着色層形成用塗料調製工程では、上記着色層形成用塗料が有するRthの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、上記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態(以下、カラーフィルタ未装着表示装置とする。)のRthを相殺することが可能な符号となるように、上記着色層形成用塗料の調製を行い、上記焼成工程では、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層が有するRthを調整するために、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることが好ましい。これにより、各色の着色層が有するRthを制御して、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとを相殺することができるので、カラーフィルタを装着した際に、コントラストが向上したカラーフィルタを製造することが可能となる。
本発明は、カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料セットを提供する。
本発明によれば、少なくとも2以上の着色層形成用塗料中に、反応温度が異なる反応開始剤が含有されていることにより、各着色層形成用塗料を用いて形成された各色の着色層形成用層の焼成温度をそれぞれ異ならせることができる。したがって、本発明の着色層形成用塗料セットを用いて着色層を形成する際には、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることで、各色の着色層が有するRthを制御することが可能となる。
本発明においては、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることが好ましい。このような着色層形成用塗料セットを用いて複数色の着色層を形成した場合には、各着色層形成用塗料を用いて形成された各色の着色層形成用層の焼成温度を異ならせることができるため、各色の上記着色層が有するRthを均一になるように制御することができる。よって、表示装置とした際に、黒表示時に斜め方向から観察された場合であっても色みのない視野角特性に優れたカラーフィルタを製造することが可能となる。
本発明においては、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることが好ましい。このような着色層形成用塗料セットを用いて複数色の着色層を形成した場合には、各着色層形成用塗料を用いて形成された各色の着色層形成用層の焼成温度を異ならせることができるため、各色の着色層が有するRthを制御することができる。したがって、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように着色層のRthが調整することができる。よって、表示装置とした際に、コントラストを向上させることができるカラーフィルタを製造することができる。
また、本発明は、カラーフィルタを製造する際、着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料であって、上記着色層形成用塗料中に10時間半減期温度が110℃以下の熱反応開始剤が0.1質量%〜10質量%の範囲内で添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料を提供する。
本発明によれば、上記着色層形成用塗料を用いることにより、カラーフィルタを製造する際の着色層形成用層の焼成温度を低い温度で焼成することができ、上述したカラーフィルタの製造方法において、特に着色層が有するRthを低減させたい場合に好適に用いることができる。
本発明においては、カラーフィルタの製造時の焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、各色の着色層のRthを調整することが可能となる。これにより、製造されたカラーフィルタを、表示品位に優れたものとすることが可能となる。
本発明においては、中でも、カラーフィルタの製造時の焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、各色の着色層のRthを均一にすることができる。よって、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタを表示装置に用いた際に、黒表示時に斜めから観察された場合でも、色みのない黒表示とすることが可能となる。
また、本発明においては、カラーフィルタの製造時の焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、本発明により製造されるカラーフィルタが表示装置に用いられた際に、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthとを相殺することができる。よって、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタを装着して表示装置とした場合、表示装置のコントラストを向上させることができる。
また、本発明においては、このように焼成温度を変化させることが可能な着色層形成用塗料セットを提供することにより、上述したように、カラーフィルタの着色層の形成工程において、各色の着色層が有するRthを調整することが可能となる。
カラーフィルタのRthの分布と焼成温度との関係を示す図である。 本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。 カラーフィルタのRthの分布の一例を示す図である。 本発明により製造されるカラーフィルタのRthの分布の他の一例を示す図である。 本発明により製造されるカラーフィルタのRthの分布の他の一例を示す図である。 本発明により製造されるカラーフィルタのRthの分布の他の一例を示す図である。 一般的な液晶表示装置の一例を示す概略図である。 位相差フィルムが用いられた液晶表示装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法、着色層形成用塗料セット、および着色層形成用塗料について説明する。
A.カラーフィルタの製造方法
本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のRthを調整するために、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
ここで、「着色層が有するRth」は、着色層の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、厚み方向の屈折率Nzと、着色層の厚みd(nm)とにより、Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×dの式で表される値である。
本発明に用いられる各色の上記着色層のRthについては、赤色着色層には620nmの波長を、緑色着色層には550nmの波長を、青色着色層には450nmの波長をそれぞれ測定波長として、位相差測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて測定された値を用いるものとする。
また、「焼成温度を変化させる」とは、複数色の着色層の中で、1色以上の着色層形成用層を、他の色の焼成温度と異なる温度で焼成することを指すものとする。
ここで、「焼成温度」とは、着色層形成用層が焼成により硬化する温度であり、着色層形成用層に用いられる「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」以上の温度で選択されるものである。
また、「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」とは、着色層形成用塗料が熱反応により硬化する温度であり、本発明においては、着色層形成用塗料からなる膜を削り取とったものを示唆走査熱量計(島津製作所製 DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/minで、室温から230℃まで昇温したときに発熱ピークが検出される温度を指すものとする。
上記「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」は、着色層形成用塗料について計測したものであればよいが、中でも、露光後の着色層形成用塗料からなる膜、特に、パターン露光および現像後の着色層形成用塗料からなる膜について計測したものであることが好ましい。すなわち、上記「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」は、着色層形成用塗料を用いて着色層を形成する場合における着色層の形成条件に従って、着色層形成用塗料からなる膜をパターン露光、現像した後の膜について計測したものであることが好ましい。
また、本発明において、「熱反応により硬化した膜」とは上記「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」以上の温度で焼成されている膜を示し、焼成後の膜について上記熱分析をした際に発熱ピークが検出されない膜を示す。一方、「熱反応により硬化していない膜」とは焼成後の膜について上記熱分析をした際に発熱ピークが検出される膜を示す。
次に、着色層が有するRthと、着色層を製造する際に行われる焼成時の焼成温度との関係について説明する。
図1は、異なる焼成温度で焼成が行われた着色層が有するRthの分布を示す図である。またこのとき、焼成温度t1と、t2とは、t1<t2の関係を満たすものとする。
図1に示すように、焼成温度t2で焼成が行われた着色層が有するRtht2の絶対値は、焼成温度t2よりも低温である焼成温度t1で焼成が行われた着色層が有するRtht1の絶対値よりも大きな値となる。また、焼成温度t1で焼成が行われた後、再度焼成温度t2で焼成が行われた着色層が有するRtht1→t2の絶対値は、Rtht1の絶対値の値からほとんど変化しない。
着色層を形成する際の焼成温度によって着色層のRthの絶対値が変化する理由については明らかではないが、次のように考えられる。
まず、着色層が有するRthには、膜の内部応力が寄与していると考えられる。着色層は、モノマー成分、ポリマー成分、顔料、溶剤などを含有する着色層形成用塗料を透明基板上に塗布し硬化することにより形成されるものであり、このような着色層を形成する過程において、温度変化によって膜が膨張したり収縮したりする。このような着色層を形成する過程での温度変化による膜の膨張・収縮の度合いによって、膜の内部応力が変化する。そして、膜の内部応力が変化することで、膜の異方性が変化し、着色層が有するRthの絶対値も変化すると推量される。よって、焼成温度が大きくなるほど異方性を持つ物質は自由度が大きくなるために配向しやすくなり、結果、得られる着色層のRthの絶対値が大きくなると推量される。
また、低温で焼成した後、高温で再度焼成が行われたカラーフィルタの着色層が有するRthの絶対値が、初めから低温で焼成が行われたカラーフィルタの着色層が有するRthの絶対値からほとんど変化しない理由としては、次のように考えられる。すなわち、低温で焼成することにより着色層が有するRthの絶対値が小さい状態で膜の架橋度を上げることができる。そのため、再度高温で焼成しても異方性を持つ物質の自由度が低く膜の異方性が変化しづらいため着色層が有するRthの絶対値がほとんど変化しないと考えられる。
本発明は、上述した着色層形成時の焼成温度と、カラーフィルタの着色層が有するRthとの関係を用いることにより、カラーフィルタの各色の着色層が有するRthを調整することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、各色の着色層が有するRthが均一なものとなるように、焼成工程において各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる態様(以下、第1実施態様とする。)と、カラーフィルタが表示装置に用いられた際に、上記カラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、焼成工程において各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる態様(以下、第2実施態様とする。)との2つの実施態様が挙げられる。
以下、各実施態様について、それぞれ説明する。
1.第1実施態様
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記焼成工程では、各色の着色層が有するRthが均一になるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
ここで、「各色の上記着色層が有するRthが均一になる」とは、各色の上記着色層が有するRthが、本実施態様により製造されるカラーフィルタを表示装置とした際に、黒表示時に斜め方向から観察された場合であっても、色みを帯びた黒表示が観察されない程度に揃うことを指す。具体的には、カラーフィルタの各色の着色層が有するRthの最大値と最小値の差の絶対値が、5nm以下、好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下の場合を示すこととする。
また、上述したように、本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、上記焼成工程において、各色の着色層が有するRthの絶対値の大きさを制御する方法であるので、本実施態様により製造されるカラーフィルタの各色の着色層が有するRthの符号は、すべて正の符号、もしくはすべて負の符号のいずれかであることが好ましい。各色の着色層が有するRthの符号が正負混在している場合は、焼成温度を変化させるのみでは、各色の着色層が有するRthを均一なものとするのが困難であるからである。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法を、図を用いて説明する。
図2は本実施態様のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。図2においては、赤色着色層2R,緑色着色層2G、および青色着色層2Bを有するカラーフィルタを製造するものとする。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、まず、赤色着色層2R,緑色着色層2G、および青色着色層2Bを形成するためのそれぞれの着色層形成用塗料を調製する(着色層形成用塗料調製工程(図示せず))。
次に、赤色着色層形成用塗料を用いて、透明基板1上の遮光部3の開口部に赤色着色層形成用層を形成し(着色層形成用層形成工程(図示せず))、赤色着色層形成用層を焼成して赤色着色層2Rを形成する(焼成工程(図2(a)))。
緑色着色層2Gについても同様にして、緑色着色層形成用塗料を用いて、透明基板1上の遮光部3の開口部に緑色着色層形成用層を形成し、緑色着色層形成用層を焼成して緑色着色層2Gを形成する(図2(b))。このときの焼成温度は、赤色着色層2Rを焼成した際の温度と異なる温度である。
また、青色着色層2Bの形成方法も、上述した2色の着色層と同様に形成され(図2(c))、焼成温度については、上述した2色の着色層形成用層を焼成した際の温度とは異なるものとする。
次に、各色の着色層が有するRthの分布と、着色層形成用層の焼成温度との関係について説明する。図3は、カラーフィルタの各色の着色層が有するRthの分布を示す図である。
従来、カラーフィルタの製造時に行われている焼成工程では、各色の着色層形成用層が一括して同じ焼成温度で焼成され、各色の着色層が形成される。
一般に、着色層が有するRthは、着色層を形成する際に用いられる着色層形成用塗料の処方により異なるものである。しかしながら、従来の方法では、各色の着色層形成用層を同じ焼成温度で焼成するために、各着色層形成用塗料は、それぞれ処方の調整を行わずに調製されるので、各色の着色層が有するRthは、通常、図3(a)に示すように、それぞれ異なる値となる。表示装置に用いられる位相差層は、上述した各色の着色層のRthについて補償するものではないので、斜め方向から黒表示を観察した場合、特定の波長の光において漏れ光が生じることにより、色みをおびた黒色が観察されるという問題があった。
一方、本実施態様においては、それぞれの着色層形成用塗料の処方を調整し、これに合わせて着色層形成用層の焼成温度を変化させることによって着色層が形成される。これにより、着色層が有するRthを制御して、各色の着色層を形成することができるため、図3(b)に示すように、各色の着色層が有するRthを均一なものとすることが可能となる。
よって、本実施態様の製造方法により製造されたカラーフィルタは、斜め方向から黒表示を観察した際に、特定の波長の光における漏れ光が生じないため、色みを帯びた黒表示とはならず、良好な黒表示を行うことができる。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
a.着色層形成用塗料調製工程
本工程は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する工程である。
本工程においては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料が調製される。
本工程により調製される着色層形成用塗料としては、上記着色層形成用塗料を用いて形成される着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、焼成された各色の着色層が有するRthが均一となるように調製されているのであれば特に限定されるものではない。
このような着色層形成用塗料の材料としては、バインダー成分、顔料、光反応開始剤、および溶剤等が挙げられる。それぞれの着色層形成用塗料が有するRthの符号は、それぞれの着色層形成用塗料に用いられる材料により決定されるものであるため、各材料は、着色層のRthの符号を考慮して選択される。
本工程においては、調製されるそれぞれの着色層形成用塗料が有するRthの符号はすべて正、もしくはすべて負のいずれかであることが好ましい。
また、後述する焼成工程は、上記着色層形成用塗料を用いて形成される着色層形成用層の焼成温度を変化させて焼成することにより、各色の着色層のRthが調整された複数色の着色層を形成する工程である。そのため本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料の処方を調整することで、後述する焼成工程において必要とされる焼成温度となるように、それぞれの着色層形成用塗料が調製される。着色層形成用塗料の処方の調整方法としては、例えば、それぞれの着色層形成用塗料に含有されるバインダー成分を異ならせる方法、少なくとも1以上の着色層形成用塗料に含有される光反応開始剤を他の着色層形成用塗料に含有される光反応開始剤と異ならせる方法、少なくとも1以上の着色層形成用塗料中に後述する熱反応開始剤を添加する方法、等が挙げられる。
本工程に用いられるバインダー成分は、重合可能なモノマー成分と、ポリマー成分とから構成されるものである。このようなモノマー成分、ポリマー成分としては、一般的に着色層の形成に用いられているものと同様とすることができる。
上記ポリマー成分は、重合可能なものであってもよく、重合可能なものでなくてもよい。上記ポリマー成分としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。また、ポリマー成分としては、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物等の1種以上とからなるポリマーまたはコポリマー等が挙げられる。さらに、上記のコポリマーにグリシジル基または水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等が挙げられる。上記のポリマー成分は一例であり、これらに限定されるものではない。
上記のポリマー成分の中で、併せて使用するモノマー成分との相溶性等の観点から、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂とポリメタクリル酸エチル樹脂の共重合体、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルローストリアセテート等を好ましく使用することができる。特に好ましくは、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル酸とスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの2種類以上からなる共重合体、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、および、これらの変性物を使用することができる。
上記モノマー成分としては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、光重合反応により重合可能なものが好ましく用いられる。このようなモノマー成分としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタン構造を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレート基を有するポリウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート基またはメタクリレート基のいずれかであることを意味する。
本工程に用いられる着色層形成用塗料は、各色の顔料を含有する。
赤色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
本工程に用いられる光反応開始剤としては、一般的なカラーフィルタの着色層の形成の際に用いられるものと同様とすることができる。このような、光反応開始剤としては例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
本発明の着色層形成用塗料中に添加される光反応開始剤の添加量としては、所望する着色層を形成することができるのであれば特に限定されるものではないが、1質量%〜20質量%の範囲内、なかでも3質量%〜15質量%の範囲内、特に5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記光反応開始剤の添加量が上記範囲に満たない場合は、本発明の着色層形成用塗料を用いて形成された着色層形成用層を所望する形状にパターン露光できない可能性があるからであり、上記範囲に満たない場合は、カラーフィルタの製造時において、パターン露光後の現像性が悪化するおそれがあるからである。
本工程に用いられる溶剤としては、一般的なカラーフィルタの着色層の形成の際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本工程においては、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させるため、上記着色層形成用塗料に反応開始剤を添加することが好ましい。また、本工程においては、カラーフィルタの複数色の着色層を形成するための、複数の着色層形成用塗料のうち、2以上の着色層形成用塗料にそれぞれ熱硬化の反応温度が異なる反応開始剤を添加することがより好ましい。また、ここで、添加される反応開始剤としては、2種以上の熱反応開始剤であってもよいし、2種以上の光反応開始剤であってもよい。
これにより、各色の着色層形成用層の焼成温度をそれぞれ異ならせて焼成を行うことが可能となるので、各色の着色層が有するRthをより正確に均一にすることができるからである。
具体的な上記反応開始剤の添加の仕方については、後述する「B.着色層形成用塗料セット」の項で説明するため、ここでの記載は省略する。
本工程において、上記着色層形成用塗料中に添加される熱反応開始剤としては、後述する焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を、各色の着色層が有するRthが均一となるように、変化させることが可能であれば特に限定されるものではない。
本工程に用いられる熱反応開始剤としては、具体的に、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカピバレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等の過酸化化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾビスニトリル類が挙げられる。
また、上記着色層形成用塗料は、必要に応じて、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を含有していてもよい。
b.着色層形成用層形成工程
本工程は、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する工程である。
本工程においては、ある色の着色層形成用層を形成し、後述する焼成工程で形成した着色層形成用層を焼成したのち、他の色の着色層形成用層の形成が行われる。これは、各色の着色層形成用層の混色を防止するとともに、後述する焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させて焼成を行うためである。
本工程に用いられる透明基板としては、着色層、および必要に応じて遮光部を形成可能であり、可視光に対して透明な基材であれば特に限定されるものではない。
本工程においては、透明基板がRthを有さないものであることがより好ましい。このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様のものとすることができる。
具体的には、無アルカリガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。
本工程において形成される着色層形成用層の膜厚としては、一般的なカラーフィルタの着色層の膜厚と同様とすることができ、具体的には、1μm〜5μm程度とすることができる。
また、本工程により形成される着色層形成用層のパターンは、画素に対応して規則的に配列される。着色層形成用層の配列としては、各色の着色層形成用層が巨視的に見て平均的に配列されていれば特に限定されるものではなく、例えばストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が挙げられる。
本工程に用いられる着色層形成用層の形成方法としては、一般的な着色層形成用層を形成する方法と同様とすることができ、例えばフォトリソグラフィ法や、インクジェット法等が挙げられる。
c.焼成工程
本工程は、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する工程であり、各色の着色層が有するRthが均一になるように、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる工程である。
本工程においては、上述した着色層形成用層形成工程において形成された各色の着色層形成用層ごとに焼成が行われる。
本工程においては、各色の上記着色層が有するRthが均一になるように、焼成温度を変化させて各色の上記着色層形成用層の焼成を行うことができるのであれば、各色の着色層形成用層を焼成する順番は特に限定されるものではない。
本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料と焼成温度との関係や、各焼成温度での着色層の硬化の程度等を考慮して、各色の着色層形成用層を焼成する順番が決定される。
本工程における焼成温度としては、各色の上記着色層形成用層を焼成して上記着色層を形成することが可能であり、かつ、各色の着色層が有するRthを均一にすることが可能な温度であれば特に限定されるものではなく、各色の上記着色層に用いられる上記着色層形成用塗料の処方により適宜決定されるものではあるが、120℃〜250℃の範囲内、中でも130℃〜250℃の範囲内、特に150℃〜240℃の範囲内であることが好ましい。焼成温度が上記範囲に満たない場合、もしくは上記範囲を超えるような場合は、設定された焼成温度となるように、上記着色層形成用塗料の処方を調整するのが困難であるからである。
本工程に用いられる焼成装置としては、一般的なカラーフィルタの製造時の焼成で用いられているものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
d.その他の工程
本実施態様においては、上述した着色層形成用塗料調製工程、着色層形成用層形成工程、および焼成工程を有している製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することができる。
例えば、上記着色層形成用層形成工程後の工程において、複数色の上記着色層から不純物が溶出しない程度に複数色の上記着色層を焼結させる焼結工程が挙げられる。
以下、焼結工程について説明する。
(i)焼結工程
本工程は、上記着色層形成用層形成工程後の工程において、複数色の上記着色層から不純物が溶出しない程度に複数色の上記着色層を焼結させる工程である。
上述した焼成工程は、各色の着色層が有するRthが均一となるように焼成温度を調整して焼成を行うため、着色層の硬化が不十分である場合がある。本工程においては、複数色の着色層から不純物が溶出しない程度に、複数色の着色層を焼結させることで、上記着色層上に他の部材を形成する場合や、本製造方法により製造されたカラーフィルタを用いて表示装置を製造する場合において、各色の着色層からの不純物の溶出を抑制することができる。
本工程は、複数色の着色層から不純物が溶出しない程度に、複数色の着色層を焼結させることができるのであれば、上述した着色層形成用層形成行程の後のどの工程で行ってもよく、上述した焼成工程で各色の着色層ごとに行ってもよいし、上記焼成工程において最後の色の着色層形成用層を焼成する際に同時に行ってもよいし、上記焼成工程後に別工程として行ってもよい。本工程においては、なかでも、上記焼成工程において最後の色の着色層形成用層を焼成する際に同時に行うことが好ましい。工程数が少なくて済み、コストを抑えることができるからである。また、焼成工程後の工程において、着色層からの不純物の溶出による悪影響が少なくて済むからである。
本工程における焼結温度としては、複数色の着色層から不純物が溶出しない程度に複数色の着色層を焼結することができる温度であれば特に限定されず、各色の着色層に用いられる着色層形成用塗料の処方により適宜設定される温度であるが、通常120℃〜250℃程度である。
本工程に用いられる装置としては、各色の着色層から不純物が溶出しない程度に各色の着色層を焼結することが可能な装置であれば、特に限定されるものではなく、上述した焼成工程で用いられる焼成装置と同様とすることができる。
(ii)その他の工程
また、その他の工程としては、例えば、形成された着色層上に保護層を形成する保護層形成工程や、上記透明基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程等が挙げられる。これらの工程については、一般的なカラーフィルタの製造時に行われている工程と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
2.第2実施態様
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記着色層形成用塗料調製工程では、上記着色層形成用塗料が有するRthの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することが可能な符号となるように、上記着色層形成用塗料の調製を行い、上記焼成工程では、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
ここで、「当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される」とは、当該カラーフィルタの各色の着色層が有するRthと、各色の上記着色層に対応する波長領域における、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとの差の絶対値が、当該カラーフィルタを用いた表示装置が黒表示時に、斜め方向から観察された場合であっても、色みを帯びた黒表示とならず、かつ、コントラストを向上させることができる程度に0に近い値となることを指す。具体的には、上記Rthの差の絶対値が、5nm以下、中でも3nm以下、特に1nm以下の場合を示すこととする。
またここで、「カラーフィルタ未装着表示装置のRth」とは、表示装置に本実施態様により製造されるカラーフィルタが装着されていない状態の表示装置自体のRthを指す。また、このようなRthは、例えば表示装置に用いられるカラーフィルタ以外の構成について、それぞれRthを測定し、シミュレーションにより求めることができる。
ここで、表示装置に用いられるカラーフィルタ以外の各構成のRthは、位相差層測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて、620nm(赤色着色層想定)、550nm(緑色着色層想定)、および450nm(青色着色層想定)の3波長について測定された値を用いるものとする。
本実施態様において、併用される上記カラーフィルタ未装着表示装置としては、カラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号がすべて正、もしくはすべて負であってもよいし、正負が混在している場合であってもよい。通常は、カラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号がすべて正、もしくはすべて負であるものが併用される。
上記カラーフィルタ未装着表示装置は、一般的な表示装置に用いられる構成を有するものであるが、その構成によっては、カラーフィルタ未装着表示装置が波長依存性を示す場合がある。このような波長依存性としては、例えば、短波長側のRthの方が長波長側のRthの値よりも小さくなる逆分散型の波長依存性や、また例えば、短波長側のRthの方が長波長側のRthの値よりも大きくなる正分散型の波長依存性が挙げられる。また、カラーフィルタ未装着表示装置のRthが波長依存性を有さないフラット型を示す場合もある。
本実施態様においては、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthが相殺されるようなRthを有するカラーフィルタとすることができればよく、各色の着色層が有するRthは、上記カラーフィルタ未装着表示装置が有するRthにより決定されるものである。
例えば、上記カラーフィルタ未装着表示装置が逆分散型の波長依存性を示す場合は、短波長側のRthの方が長波長側のRthの値よりも小さくなるので、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺するために、短波長側の色の着色層が有するRthは、長波長側の色の着色層が有するRthの値よりも大きくなるように調整される。
また、例えば上記カラーフィルタ未装着表示装置が正分散型の波長依存性を示す場合は、短波長側のRthの方が長波長側のRthの値よりも大きくなるので、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺するために、短波長側の色の着色層が有するRthは、長波長側の色の着色層が有するRthの値よりも小さくなるように調整される。
また、例えば上記カラーフィルタ未装着表示装置が波長依存性を有さないフラット型になる場合は、Rthは一定となるので、着色層の各色の着色層が有するRthは、それぞれの色において上記カラーフィルタ未装着表示装置が有する所定のRthと相殺されるように調整される。
ここで、各色の着色層が有するRthは、各色の着色層に用いられるそれぞれの着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整される。
本実施態様におけるカラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとの関係について図を用いて説明する。
まず、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthと、逆分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について図4を用いて説明する。
図4は、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthの分布の一例を示す図である。図4では、カラーフィルタに、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられている場合について示している。また、このとき、上記カラーフィルタ未装着表示装置は、例えば赤色光領域で+30nm、緑色光領域で+25nm、青色光領域で+20nmのRthを有するものとする。
この場合、図4に示すように、本実施態様においては、赤色着色層RのRthが−30nm、緑色着色層GのRthが−25nm、青色着色層BのRthが−20nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
次に、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthと、正分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について図5を用いて説明する。図5は、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthの分布の一例を示す図である。図5では、カラーフィルタに、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられている場合について示している。このとき、上記カラーフィルタ未装着表示装置は、例えば赤色光領域で+20nm、緑色光領域で+25nm、青色光領域で+30nmのRthを有するものとする。
この場合、図5に示すように、本実施態様においては、赤色着色層RのRthが−20nm、緑色着色層GのRthが−25nm、青色着色層BのRthが−30nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
次に、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthと、フラット型を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について図6を用いて説明する。図6は、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthの分布の一例を示す図である。図6では、カラーフィルタに、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられている場合について示している。このとき、上記カラーフィルタ未装着表示装置は波長分散性を示さず、赤色光領域、緑色光領域、および青色光領域で+30nmのRthを有するものとする。
この場合、図6に示すように、本実施態様により製造されるカラーフィルタは、赤色着色層RのRth、緑色着色層GのRth、および青色着色層BのRthがそれぞれ−30nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
ここで、本実施態様により製造されるカラーフィルタと併用されるカラーフィルタ未装着表示装置が示す波長依存性は、上記カラーフィルタ未装着表示装置中の各構成が示す波長依存性によって決まるものである。上記カラーフィルタ未装着表示装置が示す波長依存性としては、上述した逆分散型、正分散型、およびフラット型以外にも、次のような波長依存性が考えられる。
例えば、上記カラーフィルタ未装着表示装置中の構成に、逆分散型の波長依存性を示す構成と、正分散型の波長依存性を示す構成とを有する場合には、赤色波長領域および青色波長領域におけるRthの方が緑色波長領域におけるRthよりも大きくなるような波長依存性、もしくは緑色波長領域におけるRthの方が赤色波長領域および青色波長領域におけるRthよりも大きくなるような波長依存性等が考えられる。
このような波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthと、本実施態様により製造されるカラーフィルタが有するRthとを相殺する場合も、上述した逆分散型、正分散型、およびフラット型のそれぞれのカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthと本実施態様により製造されるカラーフィルタが有するRthとを相殺する場合と同様にして、カラーフィルタが有するRthの調整が行われる。
また、上記カラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号が正負混在する場合は、それぞれの着色層形成用塗料を調製する際に、各色の着色層に対応する波長領域での上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthも考慮して、各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の上記着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
本実施態様によれば、上述したように、カラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、コントラストを向上させることができる。
コントラストを向上させることができる理由としては、上記カラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、上記カラーフィルタを用いた表示装置全体のRthの絶対値を小さなものとすることができるので、漏れ光の光強度を小さなものとすることが可能になるからである。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
a.着色層形成用塗料調製工程
本工程は、透明基板上に複数色の着色層を形成する複数の着色層形成用塗料を調製する工程であり、上記着色層形成用塗料が有するRthの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することが可能な符号となるように、上記着色層形成用塗料の調製を行う工程である。
本工程においては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料が調製される。
本工程においては、併用されるカラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号がすべて同一である場合は、それぞれの着色層形成用塗料について、カラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号と逆のRthの符号を有するように調製が行われる。
また、本工程においては、併用されるカラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号が正負混在している場合は、それぞれの着色層形成用塗料について、各色の着色層と対応する色領域におけるカラーフィルタ未装着表示装置のRthの符号と逆の符号を有するように調製が行われる。
また、後述する焼成工程で各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させ、所望するRthを有する着色層を形成することができるように、本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料の処方を調整して、それぞれの着色層形成用塗料が調製される。
本工程に用いられる着色層形成用塗料の材料については、上述した「1.第1実施態様」の項で記載したものと同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
b.着色層形成用層形成工程
着色層形成用層形成工程については、上述した「1.第1実施態様」の項で記載した工程と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
c.焼成工程
本工程は、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する工程であり、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させる工程である。
本工程においては、本製造方法により形成されたカラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、焼成温度を変化させて各色の着色層形成用層の焼成を行うのであれば、各色の着色層形成用層を焼成する順番は特に限定されるものではない。
本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料と焼成温度との関係や、各焼成温度での着色層の硬化の程度等を考慮して、各色の着色層形成用層を焼成する順番が決定される。
本工程における焼成温度、焼成装置等については「1.第1実施態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
d.その他の工程
本実施態様においては、上記着色層形成用塗料調製工程、着色層形成用層形成工程、および焼成工程を有しているのであれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することができる。例えば、透明基板上に形成された複数色の着色層の硬化が十分でない場合に、複数色の着色層から不純物が溶出しない程度に焼結させる焼結工程が挙げられる。焼結工程については、「1.第1実施態様」の項で説明した工程と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
また、その他の工程についても、「1.第1実施態様」の項で説明した工程と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
B.着色層形成用塗料セット
本発明の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とするものである。
上記反応開始剤としては、熱を加えることにより、硬化反応を開始させるものであれば、特に限定されるものではない。このような反応開始剤としては、熱反応開始剤、または光反応開始剤を挙げることができる。
ここで、一般に光反応開始剤は紫外光等の光によって、開裂してフリーラジカルを発生し、ポリマー等の重合反応を開始させるものであるが、加熱によっても、重合反応を開始させることが可能である。
ここで、本発明における「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」については、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で説明した温度と同様であるので、ここでの記載は省略する。
従来から用いられている着色層形成用塗料セットにおいては、各着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度はすべて同等の温度である。したがって、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で記載したように、各色の着色層が有するRthを調整するために、各色の着色層形成用層の焼成温度を調整して着色層を形成する場合、各色の着色層が所望する着色層のRthを有するものとなるように、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることができない場合がある。
一方、本発明の着色層形成用塗料セットは、2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度がそれぞれ異なるため、各色の着色層形成用層の焼成温度についても、それぞれ異ならせることが可能となる。よって、各色の着色層形成用層の焼成温度を異ならせることにより、各色の着色層が有するRthを調整することが可能となる。
本発明の着色層形成用塗料セットとしては、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されている態様(以下、第3実施態様とする。)と、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されている態様(以下、第4実施態様とする。)との2つの実施態様を挙げることができる。
以下、それぞれの実施態様について説明する。
1.第3実施態様
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているものである。
本実施態様によれば、上記着色層形成用塗料セットを用いることにより、複数色の着色層を形成するための複数色の着色層形成用層の焼成温度を、それぞれ異ならせることができる。これにより、各色の着色層が有するRthが均一になるように制御することができる。したがって、上記着色層形成用塗料セットを用いて製造されたカラーフィルタは、各色の着色層が有するRthが均一であるため、黒表示時に斜め方向から観察された場合であっても、色みの無い黒表示を行うことが可能なカラーフィルタとすることができる。
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、複数の着色層形成用塗料からなるものである。通常は、赤色、緑色、青色の3つの着色層形成用塗料からなる。
本実施態様においては、各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、すべて同一であることが好ましい。各着色層形成用塗料が有するRthの符号が正負混在している場合は、着色層が有するRthを均一なものにするのが困難となるからである。
このような上記着色層形成用塗料セットの各着色層形成用塗料の材料としては、バインダー成分、顔料、光反応開始剤、および溶剤等が挙げられる。また、上記着色層形成用塗料セットの少なくとも2以上の着色層形成用塗料には、反応温度が異なる反応開始剤がそれぞれ添加される。
ここで、「2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されている」とは、本実施態様の着色層形成用塗料セットにおいて、少なくとも2以上の着色層形成用塗料中に少なくとも反応温度が異なる熱反応開始剤が添加されている、反応温度が異なる光反応開始剤が添加されていている、もしくは、反応温度は異なる熱反応開始剤および光反応開始剤が添加されているかのいずれかを指すものとする。
具体的には、上記着色層形成用塗料セットに用いられる各着色層形成用塗料が、光反応開始剤のみを含む着色層形成用塗料である態様(以下、第1の態様とする。)と、光反応開始剤のみを含む着色層形成用塗料、および光反応開始剤および熱反応開始剤を含む着色層形成用塗料である態様(以下、第2の態様とする。)、光反応開始剤および熱反応開始剤を含む着色層である態様(以下、第3の態様とする。)との3つの態様に分けて説明する。
まず、上記着色層形成用塗料セットが第1の態様である場合、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤と反応温度が異なるものであればよい。
また、上記着色層形成用塗料セットが第2の態様である場合は、着色層形成用塗料セット中の各着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤はすべて同じで、かつ、1以上の着色層形成用塗料に上記光反応開始剤の反応温度と異なる熱反応開始剤が添加されているもの、もしくは、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤と反応温度が異なるものであり、かつ、1以上の着色層形成用塗料に上記光反応開始剤の反応温度と異なる熱反応開始剤が添加されているものであればよい。
また、上記着色層形成用塗料セットが第3の態様である場合は、着色層形成用塗料セット中の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤はすべて同じで、かつ、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤と反応温度が異なるもの、もしくは、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤とは反応温度が異なるものであり、かつ、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤とは反応温度が異なるものであり、かつ、添加された光反応開始剤および熱反応開始剤のいずれも反応温度が異なるものであればよい。
本実施態様の着色層形成用塗料セットが、3種類の着色層形成用塗料からなる場合を挙げてさらに説明する。
本実施態様においては、2以上の着色層形成用塗料にそれぞれ反応温度が異なる熱反応開始剤が添加されていることが好ましい。熱反応開始剤の方が、光反応開始剤よりも焼成温度を広範囲にわたって調整することができるため、各色の着色層が有するRthをより正確に均一なものに焼成することが可能となるからである。
また、2以上の着色層形成用塗料にそれぞれ反応温度が異なる熱反応開始剤が添加され、かつ、それぞれ反応温度が異なる光反応開始剤が添加されていることがより好ましい。
本実施態様に用いられる反応開始剤の組み合わせとしては、各色の着色層形成用層の間での焼成温度の差の絶対値が、10℃〜100℃の範囲内、中でも20℃〜100℃の範囲内、特に30℃〜100℃の範囲内となるような組み合わせが好ましい。上記範囲に満たない場合は、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度の異なる反応開始剤を添加することによる効果があまり大きくないためである。また、上記範囲を超えるような組み合わせとなる反応開始剤は通常、着色層形成用塗料に用いられないからである。
上記反応開始剤の添加量としては、上記反応開始剤が添加された着色層形成用塗料を用いて形成された着色層形成用層を所望する焼成温度で焼成することで、所望するRthを有する着色層を形成することが可能であれば、特に限定されるものではないが、上記着色層形成用塗料中に、1質量%〜20質量%の範囲内、中でも5質量%〜15質量%の範囲内、特に7質量%〜15質量%の範囲内で添加されていることが好ましい。上記範囲に満たない場合、所望する焼成温度で反応を開始することができない可能性があるからであり、上記範囲を超える場合、カラーフィルタ製造工程で、パターン露光した後の現像性が悪化してしまう可能性があるからである。
ここで、上記反応開始剤の添加量とは、着色層形成用塗料中に添加される熱反応開始剤や光反応開始剤の総量とする。
上記バインダー成分、顔料および溶剤については、「A.カラーフィルタの製造方法 1.第1実施態様」の項で説明したものと同様とすることができるのでここでの説明は省略する。
本実施態様においては、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているのであれば特に限定されるものではなく、各着色層形成用塗料に含有されるバインダー成分等の他の材料については同じであってもよいし、異なるものであってもよいが、異なることがより好ましい。これにより、各着色層形成用塗料を用いて形成された着色層形成用層の焼成温度をより広範囲で変化させることができ、各色の着色層が有するRthをより正確に調整することができるからである。
本実施態様に用いられる各着色層形成用塗料の材料としては、上述したバインダー成分、顔料、光反応開始剤、溶剤、および熱反応開始剤以外にも、必要な材料を適宜加えることができる。このような材料としては、例えば、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等が挙げられる。
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているものであれば特に限定されるものではない。ここで、上述する着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度は、各色の着色層形成用層を焼成する際の温度となる。したがって、本実施態様の着色層形成用塗料セットは、それぞれの着色層形成用塗料を用いて着色層形成用層を形成した場合、各色の上記着色層形成用層の焼成温度が、90℃〜250℃の範囲内、中でも100℃〜250℃の範囲内、特に120℃〜250℃の範囲内となるような複数の着色層形成用塗料からなることが好ましい。焼成温度が上記範囲に満たない場合、もしくは上記範囲を超えるような場合は、上記着色層形成用塗料の処方を調整するのが困難であるからである。
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタの製造時に用いられるものであり、特に「A.カラーフィルタの製造方法 1.第1実施態様」の項に記載された製造方法を用いたカラーフィルタの製造時に用いられるものである。
2.第4実施態様
本実施態様の着色層形成用塗料セットはカラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているものである。
本実施態様によれば、上記着色層形成用塗料セットを用いることにより、複数色の着色層を形成するための複数色の着色層形成用層の焼成温度を、それぞれ異ならせることができる。これにより、着色層が有するRthを制御することができる。したがって、製造されたカラーフィルタは、表示装置に用いた際に、上記カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるので、コントラストの高いカラーフィルタとすることができる。
実施態様の着色層形成用塗料セットは、複数の着色層形成用塗料からなるものである。通常は、赤色、緑色、青色の3の着色層形成用塗料からなる。
本実施態様においては、各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、各色の着色層に対応する色領域におけるカラーフィルタ未装着表示層のRthを相殺することが可能な符号となるようにする必要がある。各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、各着色層形成用塗料の材料により調整される。
本実施態様に用いられるそれぞれの着色層形成用塗料の材料、各着色層形成用塗料の処方を調整する際に設定される焼成温度等については、「1.第3実施態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタの製造時に用いられるものであり、特に「A.カラーフィルタの製造方法 2.第2実施態様」の項に記載された製造方法を用いたカラーフィルタの製造時に用いられるものである。
C.着色層形成用塗料
本発明の着色層形成用塗料は、カラーフィルタを製造する際、着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料であって、上記着色層形成用塗料中に10時間半減期温度が110℃以下の熱反応開始剤が0.1質量%〜10質量%の範囲内で添加されていることを特徴とするものである。
ここで、「10時間半減期温度」とは、熱反応開始剤を有機溶剤に溶解させたものを、恒温槽である一定温度に保ったときに、10時間でその熱反応開始剤の濃度が半減する温度を指す。一般に「10時間半減期温度」が低いものほど反応温度が低く、高いものほど反応温度が高い。すなわち、着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度を下げたい場合は、「10時間半減期温度」の低い熱開始剤を添加すればよい。
本発明によれば、上述した熱反応開始剤が添加されていることにより、上記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度は、上述した熱反応開始剤が添加されていない場合に比べて、低い温度とすることができる。したがって、上述した着色層形成用塗料を用いて着色層を形成することにより、着色層を焼成する際の焼成温度をより広い範囲で選択することが可能となる。
ここで、上記熱反応開始剤の10時間半減期温度としては、110℃以下であれば特に限定されるものではないが、中でも50℃〜110℃の範囲内、特に60℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。上記範囲を超える場合は、上記着色層形成用塗料を用いても、着色層の焼成温度を所望する温度まで下げることが困難であるからであり、上記範囲に満たない熱反応開始剤は通常用いられないからである。
上述した熱反応開始剤の具体例としては、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で記載したものと同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
本発明の着色層形成用塗料中に添加される熱反応開始剤の添加量としては、上記熱反応開始剤を添加することにより、上記着色層形成用塗料を用いた着色層形成用層の焼成温度を所望のものとすることができるのであれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内、なかでも、1質量%〜7質量%の範囲内、特に3質量%〜7質量%の範囲内であることが好ましい。上記熱反応開始剤の添加量が上記範囲に満たない場合は、本発明の着色層形成用塗料を用いて形成された着色層形成用層の焼成温度を所望の温度で焼成することができなくなる可能性があるからであり、上記範囲に満たない場合は、カラーフィルタの製造時において、パターン露光後の現像性が悪化するおそれがあるからである。
また、本発明の着色層形成用塗料は、上記熱反応開始剤を含有しているものであれば特に限定されるものではなく、通常は、着色剤、バインダー成分、光反応開始剤、溶剤等を含有するものである。このような着色層形成用塗料の材料については「A.カラーフィルタの製造方法」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本発明の着色層形成用塗料は、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で記載したように、着色層を製造する際の着色層の焼成温度を調整して製造されるカラーフィルタの製造方法で用いられるものである。
また、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で説明したように、着色層の焼成温度が低くなるほど、着色層が有するRthの絶対値は小さな値となる。したがって、各色の着色層が有するRthを調整する場合は、着色層が有するRthを低減させたいものについて、本発明の着色層形成用塗料を用いることが好ましい。
本発明の着色層形成用塗料を用いて着色層を形成する際の焼成温度としては、所望する着色層が形成できる温度であれば特に限定されるものではないが、上記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度よりも、10℃〜30℃程度高い温度であることが好ましく、中でも15℃〜30℃程度、特に20℃〜30℃程度高い温度であることが好ましい。上記焼成温度が上記範囲に満たない場合は、上記熱反応開始剤が反応しきらず着色層中に残存し、後の現像工程等に悪影響を及ぼす恐れがあるからであり、上記範囲を超える場合は、熱反応開始剤を添加することによる効果が小さいからである。
また、本発明の着色層形成用塗料は、「B.着色層形成用塗料セット」の項で記載した着色層形成用塗料セットを構成する着色層形成用塗料として用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<着色層形成用塗料の調製>
まず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の顔料分散液を下記の組成で調製した。
(赤色(R)顔料分散液)
・赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP)) 24重量部
・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
6重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 20重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
(緑色(G)顔料分散液)
・緑顔料(C.I.PG58(大日本インキ化学工業株式会社製)) 17.5重量部
・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
11.5重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 21重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
(青色(B)顔料分散液)
・青顔料(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
24重量部
・紫顔料(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
6重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 20重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
続いて、各着色層形成用塗料を下記の組成で調製した。各着色層形成用塗料は、表1に示す組成(重量比)の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過することで得た。
Figure 0005299098
なお、表中のポリマーは、アクリル酸メチル:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=55.0:30.0:15.0(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.0モル%付加したものであり、重量平均分子量は22000である。また、表中のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物(TO1382 東亞合成(株)製)を用いた。光反応開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガギュア907 チバスペシャリティケミカルズ社製)を用い、熱反応開始剤としては、t-ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:105℃)(パーブチルZ 日油株式会社製)を用い、増感剤としては、2,4−ジエチルチオキサントン(Chemcure JETX サンケミカル社製)を用いた。
<着色層形成用塗料の反応温度の測定>
表1に示した各色着色層形成用塗料をそれぞれスピンコート法によりガラス基板に塗工した後、ホットプレート上で80℃で3分間プリベークした。次いで、着色層形成用塗料からなる膜が形成された基板を室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。その後、上記膜をアルカリ現像し、乾燥した。この、乾燥後の膜をカッターで削り取り、示差走査熱量測定(DSC-60 島津製作所製)を用いて発熱ピークを検出し、反応温度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005299098
[参考例]
前処理により洗浄したガラス基板上面に、遮光部用フォトレジストをスピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンに形成されたマスクを用いてプロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cmの強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。続いて0.05%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行い、線幅6μmの遮光部を有するBM基板を作製した。
続いて、赤色着色層形成用塗料(RR-1)を、スピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、乾燥し、塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定のパターンを形成できるように設計されたマスクを用いてプロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cmの強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。次いで、塗膜が形成された基板上に、0.05%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して、現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行った。このようにして、赤色着色層を形成した。
次に、青色着色層形成用塗料(BR-1)を使用し、同様に青色着色層を形成した。最後に、緑色着色層形成用塗料(GR-1)を使用し、緑色着色層を形成し、これにより、カラーフィルタを得た。
カラーフィルタの上面に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明共通電極を形成した。
一方、ガラス基板上に所定の複数の箇所に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTのドレイン電極に接続するように透明画素電極を酸化インジウムスズ(ITO)により形成して対向電極基板を作製した。
次に、上記透明共通電極面と透明画素電極面それぞれを覆うように垂直配向膜溶液(JALS−20210−R2)をγ−ブチロラクトンで50%に希釈した溶液を塗布し、乾燥して、配向膜(厚み0.07μm)を形成した。次いで、これらの配向膜が向かい合うようにして両基板を対向させ、両基板間をシール部材で封止し、封止された空間に液晶(メルクジャパン社製MLC−6608)を注入し、注入口を封止して、液晶表示装置を作製した。
[実施例1]
参考例に対し赤色着色層形成用塗料および青色着色層形成用塗料の焼成温度を200℃に変更したこと以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
[実施例2]
赤色着色層形成用塗料を(RR-1)から(RR-2)に変更し、青色着色層形成用塗料を(BR-1)から(BR-2)に変更し、赤色着色層形成用塗料および青色着色層形成用塗料の焼成温度を150℃に変更した。これら以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
<着色層のRthの測定>
参考例、および実施例1、2で得られた着色層について、上述のRthの測定方法によりRthを測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005299098
[評価]
参考例および実施例1、2の液晶表示装置を黒表示させ斜め方向のコントラストおよび色つきの評価を行った。その結果を表4に示す。まず、斜め方向のコントラストについて液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)での黒表示時の漏れ光の強度を輝度計(トプコン社製 分光放射計SR-3)を用いて測定し、参考例の漏れ光強度を100として各々を比較評価した。その結果、実施例1、実施例2はそれぞれ参考例の漏れ光(100)に対し95、90となりコントラストの向上を確認できた。続いて、斜め方向の色つきについて黒表示時に液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)より漏れてくる光を目視観察することで評価した。その結果、参考例は斜め方向から観察した場合色つきが目視ではっきり確認された(表4では×と示す)。実施例1では斜め方向から観察した場合色つきを目視でほぼ確認できない程度に改善が見られた(表4では△と示す)。実施例2では斜め方向から観察した場合でも色つきを目視で確認できず良好な黒表示を確認できた(表4では○と示す)。
Figure 0005299098
実施例2に示すように、各色の着色層形成用塗料の焼成温度を調整することで、着色層のRthを制御することができ、斜め方向の視認性が良好な液晶表示装置を得ることができた。参考例のカラーフィルタでは、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層のRthのバランスが悪くなり、斜方の視認性が不良となった。
1 … 透明基板
2R … 赤色着色層
2G … 緑色着色層
2B … 青色着色層
3 … 遮光部

Claims (5)

  1. 透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、前記着色層形成用塗料を用いて、前記透明基板上に複数色の着色層形成用層をパターン状に形成する着色層形成用層形成工程と、パターン状に形成された前記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
    前記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
  2. 前記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションが均一になるように、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
  3. 前記着色層形成用塗料調製工程では、前記着色層形成用塗料が有する厚み方向のレターデーションの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションを相殺することが可能な符号となるように、前記着色層形成用塗料の調製を行い、
    前記焼成工程では、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有する厚み方向のレターデーションと、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションとが相殺されるように、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
  4. カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、
    少なくとも2以上の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションが均一になるように、2以上の前記着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料セット。
  5. カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、
    少なくとも2以上の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有する厚み方向のレターデーションと、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションとが相殺されるように、2以上の前記着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料セット。
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