JP5299098B2 - カラーフィルタの製造方法、および着色層形成用塗料セット - Google Patents
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Description
また、各色の着色層を形成する際に、各色の着色層が有するRthの調整を同時に行うことができるため、各色の着色層上にそれぞれ最適なRthを有する位相差層を形成して調整を行う場合に比べて、工程数を減らすことが可能となる。
本発明においては、中でも、カラーフィルタの製造時の焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、各色の着色層のRthを均一にすることができる。よって、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタを表示装置に用いた際に、黒表示時に斜めから観察された場合でも、色みのない黒表示とすることが可能となる。
また、本発明においては、カラーフィルタの製造時の焼成工程において、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させることにより、本発明により製造されるカラーフィルタが表示装置に用いられた際に、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthとを相殺することができる。よって、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタを装着して表示装置とした場合、表示装置のコントラストを向上させることができる。
また、本発明においては、このように焼成温度を変化させることが可能な着色層形成用塗料セットを提供することにより、上述したように、カラーフィルタの着色層の形成工程において、各色の着色層が有するRthを調整することが可能となる。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のRthを調整するために、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
本発明に用いられる各色の上記着色層のRthについては、赤色着色層には620nmの波長を、緑色着色層には550nmの波長を、青色着色層には450nmの波長をそれぞれ測定波長として、位相差測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて測定された値を用いるものとする。
ここで、「焼成温度」とは、着色層形成用層が焼成により硬化する温度であり、着色層形成用層に用いられる「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」以上の温度で選択されるものである。
また、「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」とは、着色層形成用塗料が熱反応により硬化する温度であり、本発明においては、着色層形成用塗料からなる膜を削り取とったものを示唆走査熱量計(島津製作所製 DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/minで、室温から230℃まで昇温したときに発熱ピークが検出される温度を指すものとする。
上記「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」は、着色層形成用塗料について計測したものであればよいが、中でも、露光後の着色層形成用塗料からなる膜、特に、パターン露光および現像後の着色層形成用塗料からなる膜について計測したものであることが好ましい。すなわち、上記「着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度」は、着色層形成用塗料を用いて着色層を形成する場合における着色層の形成条件に従って、着色層形成用塗料からなる膜をパターン露光、現像した後の膜について計測したものであることが好ましい。
図1は、異なる焼成温度で焼成が行われた着色層が有するRthの分布を示す図である。またこのとき、焼成温度t1と、t2とは、t1<t2の関係を満たすものとする。
図1に示すように、焼成温度t2で焼成が行われた着色層が有するRtht2の絶対値は、焼成温度t2よりも低温である焼成温度t1で焼成が行われた着色層が有するRtht1の絶対値よりも大きな値となる。また、焼成温度t1で焼成が行われた後、再度焼成温度t2で焼成が行われた着色層が有するRtht1→t2の絶対値は、Rtht1の絶対値の値からほとんど変化しない。
まず、着色層が有するRthには、膜の内部応力が寄与していると考えられる。着色層は、モノマー成分、ポリマー成分、顔料、溶剤などを含有する着色層形成用塗料を透明基板上に塗布し硬化することにより形成されるものであり、このような着色層を形成する過程において、温度変化によって膜が膨張したり収縮したりする。このような着色層を形成する過程での温度変化による膜の膨張・収縮の度合いによって、膜の内部応力が変化する。そして、膜の内部応力が変化することで、膜の異方性が変化し、着色層が有するRthの絶対値も変化すると推量される。よって、焼成温度が大きくなるほど異方性を持つ物質は自由度が大きくなるために配向しやすくなり、結果、得られる着色層のRthの絶対値が大きくなると推量される。
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、各色の着色層が有するRthが均一なものとなるように、焼成工程において各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる態様(以下、第1実施態様とする。)と、カラーフィルタが表示装置に用いられた際に、上記カラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、焼成工程において各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる態様(以下、第2実施態様とする。)との2つの実施態様が挙げられる。
以下、各実施態様について、それぞれ説明する。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記焼成工程では、各色の着色層が有するRthが均一になるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
図2は本実施態様のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。図2においては、赤色着色層2R,緑色着色層2G、および青色着色層2Bを有するカラーフィルタを製造するものとする。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、まず、赤色着色層2R,緑色着色層2G、および青色着色層2Bを形成するためのそれぞれの着色層形成用塗料を調製する(着色層形成用塗料調製工程(図示せず))。
次に、赤色着色層形成用塗料を用いて、透明基板1上の遮光部3の開口部に赤色着色層形成用層を形成し(着色層形成用層形成工程(図示せず))、赤色着色層形成用層を焼成して赤色着色層2Rを形成する(焼成工程(図2(a)))。
緑色着色層2Gについても同様にして、緑色着色層形成用塗料を用いて、透明基板1上の遮光部3の開口部に緑色着色層形成用層を形成し、緑色着色層形成用層を焼成して緑色着色層2Gを形成する(図2(b))。このときの焼成温度は、赤色着色層2Rを焼成した際の温度と異なる温度である。
また、青色着色層2Bの形成方法も、上述した2色の着色層と同様に形成され(図2(c))、焼成温度については、上述した2色の着色層形成用層を焼成した際の温度とは異なるものとする。
従来、カラーフィルタの製造時に行われている焼成工程では、各色の着色層形成用層が一括して同じ焼成温度で焼成され、各色の着色層が形成される。
一般に、着色層が有するRthは、着色層を形成する際に用いられる着色層形成用塗料の処方により異なるものである。しかしながら、従来の方法では、各色の着色層形成用層を同じ焼成温度で焼成するために、各着色層形成用塗料は、それぞれ処方の調整を行わずに調製されるので、各色の着色層が有するRthは、通常、図3(a)に示すように、それぞれ異なる値となる。表示装置に用いられる位相差層は、上述した各色の着色層のRthについて補償するものではないので、斜め方向から黒表示を観察した場合、特定の波長の光において漏れ光が生じることにより、色みをおびた黒色が観察されるという問題があった。
一方、本実施態様においては、それぞれの着色層形成用塗料の処方を調整し、これに合わせて着色層形成用層の焼成温度を変化させることによって着色層が形成される。これにより、着色層が有するRthを制御して、各色の着色層を形成することができるため、図3(b)に示すように、各色の着色層が有するRthを均一なものとすることが可能となる。
よって、本実施態様の製造方法により製造されたカラーフィルタは、斜め方向から黒表示を観察した際に、特定の波長の光における漏れ光が生じないため、色みを帯びた黒表示とはならず、良好な黒表示を行うことができる。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
本工程は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する工程である。
本工程においては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料が調製される。
このような着色層形成用塗料の材料としては、バインダー成分、顔料、光反応開始剤、および溶剤等が挙げられる。それぞれの着色層形成用塗料が有するRthの符号は、それぞれの着色層形成用塗料に用いられる材料により決定されるものであるため、各材料は、着色層のRthの符号を考慮して選択される。
本工程においては、調製されるそれぞれの着色層形成用塗料が有するRthの符号はすべて正、もしくはすべて負のいずれかであることが好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート基またはメタクリレート基のいずれかであることを意味する。
赤色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層形成用塗料に用いられる顔料としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
これにより、各色の着色層形成用層の焼成温度をそれぞれ異ならせて焼成を行うことが可能となるので、各色の着色層が有するRthをより正確に均一にすることができるからである。
具体的な上記反応開始剤の添加の仕方については、後述する「B.着色層形成用塗料セット」の項で説明するため、ここでの記載は省略する。
本工程に用いられる熱反応開始剤としては、具体的に、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカピバレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等の過酸化化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾビスニトリル類が挙げられる。
本工程は、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する工程である。
本工程においては、透明基板がRthを有さないものであることがより好ましい。このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様のものとすることができる。
本工程は、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する工程であり、各色の着色層が有するRthが均一になるように、各色の着色層形成用層の焼成温度を変化させる工程である。
本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料と焼成温度との関係や、各焼成温度での着色層の硬化の程度等を考慮して、各色の着色層形成用層を焼成する順番が決定される。
本実施態様においては、上述した着色層形成用塗料調製工程、着色層形成用層形成工程、および焼成工程を有している製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することができる。
例えば、上記着色層形成用層形成工程後の工程において、複数色の上記着色層から不純物が溶出しない程度に複数色の上記着色層を焼結させる焼結工程が挙げられる。
以下、焼結工程について説明する。
本工程は、上記着色層形成用層形成工程後の工程において、複数色の上記着色層から不純物が溶出しない程度に複数色の上記着色層を焼結させる工程である。
また、その他の工程としては、例えば、形成された着色層上に保護層を形成する保護層形成工程や、上記透明基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程等が挙げられる。これらの工程については、一般的なカラーフィルタの製造時に行われている工程と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、上記着色層形成用塗料を用いて、上記透明基板上に複数色の着色層形成用層を形成する着色層形成用層形成工程と、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記着色層形成用塗料調製工程では、上記着色層形成用塗料が有するRthの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することが可能な符号となるように、上記着色層形成用塗料の調製を行い、上記焼成工程では、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする製造方法である。
ここで、表示装置に用いられるカラーフィルタ以外の各構成のRthは、位相差層測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて、620nm(赤色着色層想定)、550nm(緑色着色層想定)、および450nm(青色着色層想定)の3波長について測定された値を用いるものとする。
本実施態様においては、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthが相殺されるようなRthを有するカラーフィルタとすることができればよく、各色の着色層が有するRthは、上記カラーフィルタ未装着表示装置が有するRthにより決定されるものである。
また、例えば上記カラーフィルタ未装着表示装置が正分散型の波長依存性を示す場合は、短波長側のRthの方が長波長側のRthの値よりも大きくなるので、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺するために、短波長側の色の着色層が有するRthは、長波長側の色の着色層が有するRthの値よりも小さくなるように調整される。
また、例えば上記カラーフィルタ未装着表示装置が波長依存性を有さないフラット型になる場合は、Rthは一定となるので、着色層の各色の着色層が有するRthは、それぞれの色において上記カラーフィルタ未装着表示装置が有する所定のRthと相殺されるように調整される。
ここで、各色の着色層が有するRthは、各色の着色層に用いられるそれぞれの着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整される。
まず、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthと、逆分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について図4を用いて説明する。
図4は、本実施態様により製造されるカラーフィルタのRthの分布の一例を示す図である。図4では、カラーフィルタに、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられている場合について示している。また、このとき、上記カラーフィルタ未装着表示装置は、例えば赤色光領域で+30nm、緑色光領域で+25nm、青色光領域で+20nmのRthを有するものとする。
この場合、図4に示すように、本実施態様においては、赤色着色層RのRthが−30nm、緑色着色層GのRthが−25nm、青色着色層BのRthが−20nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
この場合、図5に示すように、本実施態様においては、赤色着色層RのRthが−20nm、緑色着色層GのRthが−25nm、青色着色層BのRthが−30nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
この場合、図6に示すように、本実施態様により製造されるカラーフィルタは、赤色着色層RのRth、緑色着色層GのRth、および青色着色層BのRthがそれぞれ−30nmとなるように、各色の着色層に用いられる各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
例えば、上記カラーフィルタ未装着表示装置中の構成に、逆分散型の波長依存性を示す構成と、正分散型の波長依存性を示す構成とを有する場合には、赤色波長領域および青色波長領域におけるRthの方が緑色波長領域におけるRthよりも大きくなるような波長依存性、もしくは緑色波長領域におけるRthの方が赤色波長領域および青色波長領域におけるRthよりも大きくなるような波長依存性等が考えられる。
このような波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthと、本実施態様により製造されるカラーフィルタが有するRthとを相殺する場合も、上述した逆分散型、正分散型、およびフラット型のそれぞれのカラーフィルタ未装着表示装置が有するRthと本実施態様により製造されるカラーフィルタが有するRthとを相殺する場合と同様にして、カラーフィルタが有するRthの調整が行われる。
また、上記カラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号が正負混在する場合は、それぞれの着色層形成用塗料を調製する際に、各色の着色層に対応する波長領域での上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthも考慮して、各着色層形成用塗料の処方を調整して、各色の上記着色層を形成する際の焼成温度を変化させることにより調整が行われる。
コントラストを向上させることができる理由としては、上記カラーフィルタのRthと上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、上記カラーフィルタを用いた表示装置全体のRthの絶対値を小さなものとすることができるので、漏れ光の光強度を小さなものとすることが可能になるからである。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
本工程は、透明基板上に複数色の着色層を形成する複数の着色層形成用塗料を調製する工程であり、上記着色層形成用塗料が有するRthの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することが可能な符号となるように、上記着色層形成用塗料の調製を行う工程である。
本工程においては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料が調製される。
また、本工程においては、併用されるカラーフィルタ未装着表示装置内のRthの符号が正負混在している場合は、それぞれの着色層形成用塗料について、各色の着色層と対応する色領域におけるカラーフィルタ未装着表示装置のRthの符号と逆の符号を有するように調製が行われる。
着色層形成用層形成工程については、上述した「1.第1実施態様」の項で記載した工程と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
本工程は、上記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する工程であり、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、上記カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層形成用層の焼成温度を変化させる工程である。
本工程においては、それぞれの着色層形成用塗料と焼成温度との関係や、各焼成温度での着色層の硬化の程度等を考慮して、各色の着色層形成用層を焼成する順番が決定される。
本実施態様においては、上記着色層形成用塗料調製工程、着色層形成用層形成工程、および焼成工程を有しているのであれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することができる。例えば、透明基板上に形成された複数色の着色層の硬化が十分でない場合に、複数色の着色層から不純物が溶出しない程度に焼結させる焼結工程が挙げられる。焼結工程については、「1.第1実施態様」の項で説明した工程と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
また、その他の工程についても、「1.第1実施態様」の項で説明した工程と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
本発明の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とするものである。
ここで、一般に光反応開始剤は紫外光等の光によって、開裂してフリーラジカルを発生し、ポリマー等の重合反応を開始させるものであるが、加熱によっても、重合反応を開始させることが可能である。
以下、それぞれの実施態様について説明する。
本実施態様の着色層形成用塗料セットは、カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有するRthが均一になるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているものである。
本実施態様においては、各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、すべて同一であることが好ましい。各着色層形成用塗料が有するRthの符号が正負混在している場合は、着色層が有するRthを均一なものにするのが困難となるからである。
また、上記着色層形成用塗料セットが第2の態様である場合は、着色層形成用塗料セット中の各着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤はすべて同じで、かつ、1以上の着色層形成用塗料に上記光反応開始剤の反応温度と異なる熱反応開始剤が添加されているもの、もしくは、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤と反応温度が異なるものであり、かつ、1以上の着色層形成用塗料に上記光反応開始剤の反応温度と異なる熱反応開始剤が添加されているものであればよい。
また、上記着色層形成用塗料セットが第3の態様である場合は、着色層形成用塗料セット中の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤はすべて同じで、かつ、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤と反応温度が異なるもの、もしくは、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される光反応開始剤とは反応温度が異なるものであり、かつ、着色層形成用塗料セット中の1以上の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤が、他の着色層形成用塗料に添加される熱反応開始剤とは反応温度が異なるものであり、かつ、添加された光反応開始剤および熱反応開始剤のいずれも反応温度が異なるものであればよい。
また、2以上の着色層形成用塗料にそれぞれ反応温度が異なる熱反応開始剤が添加され、かつ、それぞれ反応温度が異なる光反応開始剤が添加されていることがより好ましい。
ここで、上記反応開始剤の添加量とは、着色層形成用塗料中に添加される熱反応開始剤や光反応開始剤の総量とする。
本実施態様の着色層形成用塗料セットはカラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、少なくとも2以上の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、2以上の着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されているものである。
本実施態様においては、各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、各色の着色層に対応する色領域におけるカラーフィルタ未装着表示層のRthを相殺することが可能な符号となるようにする必要がある。各着色層形成用塗料が有するRthの符号は、各着色層形成用塗料の材料により調整される。
本発明の着色層形成用塗料は、カラーフィルタを製造する際、着色層を形成するために用いられる着色層形成用塗料であって、上記着色層形成用塗料中に10時間半減期温度が110℃以下の熱反応開始剤が0.1質量%〜10質量%の範囲内で添加されていることを特徴とするものである。
また、「A.カラーフィルタの製造方法」の項で説明したように、着色層の焼成温度が低くなるほど、着色層が有するRthの絶対値は小さな値となる。したがって、各色の着色層が有するRthを調整する場合は、着色層が有するRthを低減させたいものについて、本発明の着色層形成用塗料を用いることが好ましい。
<着色層形成用塗料の調製>
まず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の顔料分散液を下記の組成で調製した。
(赤色(R)顔料分散液)
・赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP)) 24重量部
・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
6重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 20重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
(緑色(G)顔料分散液)
・緑顔料(C.I.PG58(大日本インキ化学工業株式会社製)) 17.5重量部
・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
11.5重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 21重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
(青色(B)顔料分散液)
・青顔料(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
24重量部
・紫顔料(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
6重量部
・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000) 20重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 50重量部
表1に示した各色着色層形成用塗料をそれぞれスピンコート法によりガラス基板に塗工した後、ホットプレート上で80℃で3分間プリベークした。次いで、着色層形成用塗料からなる膜が形成された基板を室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。その後、上記膜をアルカリ現像し、乾燥した。この、乾燥後の膜をカッターで削り取り、示差走査熱量測定(DSC-60 島津製作所製)を用いて発熱ピークを検出し、反応温度を測定した。結果を表2に示す。
前処理により洗浄したガラス基板上面に、遮光部用フォトレジストをスピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンに形成されたマスクを用いてプロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cm2の強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。続いて0.05%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行い、線幅6μmの遮光部を有するBM基板を作製した。
次に、青色着色層形成用塗料(BR-1)を使用し、同様に青色着色層を形成した。最後に、緑色着色層形成用塗料(GR-1)を使用し、緑色着色層を形成し、これにより、カラーフィルタを得た。
一方、ガラス基板上に所定の複数の箇所に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTのドレイン電極に接続するように透明画素電極を酸化インジウムスズ(ITO)により形成して対向電極基板を作製した。
次に、上記透明共通電極面と透明画素電極面それぞれを覆うように垂直配向膜溶液(JALS−20210−R2)をγ−ブチロラクトンで50%に希釈した溶液を塗布し、乾燥して、配向膜(厚み0.07μm)を形成した。次いで、これらの配向膜が向かい合うようにして両基板を対向させ、両基板間をシール部材で封止し、封止された空間に液晶(メルクジャパン社製MLC−6608)を注入し、注入口を封止して、液晶表示装置を作製した。
参考例に対し赤色着色層形成用塗料および青色着色層形成用塗料の焼成温度を200℃に変更したこと以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
赤色着色層形成用塗料を(RR-1)から(RR-2)に変更し、青色着色層形成用塗料を(BR-1)から(BR-2)に変更し、赤色着色層形成用塗料および青色着色層形成用塗料の焼成温度を150℃に変更した。これら以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
参考例、および実施例1、2で得られた着色層について、上述のRthの測定方法によりRthを測定した。結果を表3に示す。
参考例および実施例1、2の液晶表示装置を黒表示させ斜め方向のコントラストおよび色つきの評価を行った。その結果を表4に示す。まず、斜め方向のコントラストについて液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)での黒表示時の漏れ光の強度を輝度計(トプコン社製 分光放射計SR-3)を用いて測定し、参考例の漏れ光強度を100として各々を比較評価した。その結果、実施例1、実施例2はそれぞれ参考例の漏れ光(100)に対し95、90となりコントラストの向上を確認できた。続いて、斜め方向の色つきについて黒表示時に液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)より漏れてくる光を目視観察することで評価した。その結果、参考例は斜め方向から観察した場合色つきが目視ではっきり確認された(表4では×と示す)。実施例1では斜め方向から観察した場合色つきを目視でほぼ確認できない程度に改善が見られた(表4では△と示す)。実施例2では斜め方向から観察した場合でも色つきを目視で確認できず良好な黒表示を確認できた(表4では○と示す)。
2R … 赤色着色層
2G … 緑色着色層
2B … 青色着色層
3 … 遮光部
Claims (5)
- 透明基板上に複数色の着色層を形成するための複数の着色層形成用塗料を調製する着色層形成用塗料調製工程と、前記着色層形成用塗料を用いて、前記透明基板上に複数色の着色層形成用層をパターン状に形成する着色層形成用層形成工程と、パターン状に形成された前記着色層形成用層を焼成して複数色の着色層を形成する焼成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。 - 前記焼成工程では、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションが均一になるように、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
- 前記着色層形成用塗料調製工程では、前記着色層形成用塗料が有する厚み方向のレターデーションの符号が、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションを相殺することが可能な符号となるように、前記着色層形成用塗料の調製を行い、
前記焼成工程では、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有する厚み方向のレターデーションと、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションとが相殺されるように、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションを調整するために、各色の前記着色層形成用層の焼成温度を変化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。 - カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、
少なくとも2以上の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、各色の着色層が有する厚み方向のレターデーションが均一になるように、2以上の前記着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料セット。 - カラーフィルタを製造する際、複数色の着色層を形成するために用いられる複数の着色層形成用塗料からなる着色層形成用塗料セットであって、
少なくとも2以上の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度が、それぞれ他の前記着色層形成用塗料の熱硬化の反応温度と異なることで、当該カラーフィルタを表示装置に用いた際に、当該カラーフィルタが有する厚み方向のレターデーションと、前記表示装置が当該カラーフィルタを有さない状態の厚み方向のレターデーションとが相殺されるように、2以上の前記着色層形成用塗料中にそれぞれ反応温度が異なる反応開始剤が添加されていることを特徴とする着色層形成用塗料セット。
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