JP5298549B2 - フォトレジスト用重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトレジスト用重合体の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、異物の混入を十分に低減することができ、異物量の低減されたフォトレジスト用重合体を効率よく且つ安全に得ることができるフォトレジスト用重合体の製造方法に関する。
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、より微細な加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。しかし、従来のリソグラフィープロセスでは、一般に放射線としてi線等の近紫外線が用いられているが、この近紫外線では、サブクオーターミクロンレベルの微細加工が極めて困難であると言われている。そこで、例えば、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用が検討されている。このような短波長の放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができるが、これらのうち、特にKrFエキシマレーザー(波長248nm)或いはArFエキシマレーザー(波長193nm)が注目されている。
このような放射線による照射に適した、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物が数多く提案されている。
そして、前記フォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物に含まれる重合体には、レジスト膜や反射防止膜に求められる光学的性質、化学的性質、塗布性や基板或いは下層膜に対する密着性等の物理的な性質に加え、前記フォトレジスト用の重合体においては、異物の含有量を極力低減することが求められている。特に、微細で精密な形状が要求される半導体材料の製造工程においては、金属異物の混入により、形状欠陥等の悪影響を及ぼすことになるため、高性能な半導体材料を調製する上では、金属異物の低減管理が必須となっている。
また、樹脂組成物に含まれる樹脂に、未反応モノマー、重合開始剤及び連鎖移動剤や、これらのカップリング生成物等、重合反応時に添加又は生成される不純物が残存していると、リソグラフィーにおいて揮発して露光装置を傷めたり、樹脂若しくはリソグラフィー用樹脂組成物として保存中に重合が進行する等してパターン欠陥の原因となる物質が生成したりする可能性がある。
従って、前記樹脂を製造する際には、これらの不純物を除去する精製工程が必要であり、従来より、再沈殿による樹脂の精製工程を備える樹脂の製造方法や精製方法が各種知られている(例えば、特許文献1及び2等参照)。
特開2002−62667号公報 特開2005−132974号公報
しかしながら、従来の樹脂の製造方法においては、金属異物や、未反応モノマー、重合開始剤及び連鎖移動剤、これらのカップリング生成物等、重合反応時に添加又は生成される不純物を十分に低減できているとはいえず、更なる向上が求められているのが現状である。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、異物の混入を十分に低減することができ、異物量の低減されたフォトレジスト用重合体を効率よく且つ安全に得ることができるフォトレジスト用重合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、フォトレジスト用重合体における金属異物の低減を図るために、耐溶剤性等に優れるグラスライニング製の容器を用いることを検討した。また、同時に、重合反応時に添加又は生成される不純物等の低減を図るため、重合体溶液調製工程において、高効率で重合反応を進行させることができる重合溶媒を選択し、且つ沈殿工程において、精製効果の高い沈殿溶媒を選択することを検討した。その結果、フォトレジスト用重合体溶液の調製において用いられる重合溶媒や、沈殿による精製工程の際に用いられる貧溶媒の電気伝導性が低い場合、グラスライニング材質の体積抵抗率が1×1013Ωcm程度と高いために、攪拌中に各工程において用いられる容器内に静電気の帯電が発生し、その静電気により容器の破壊が引き起こされ、金属異物等の異物の混入の原因となることが分かった。
そして、更なる鋭意検討の結果、重合体溶液調製工程及び沈殿工程の各工程に用いられる容器として、フォトリソグラフィーにおいては不純物と考えられていた導電性付与物質を敢えて含有させたグラスライニング組成物から形成されるグラスライニング層を備える容器を用いた場合に、意外にも、金属異物量を十分に低減することができ、且つ各工程において用いられる溶剤に起因する静電気の発生に関する問題も解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のとおりである。
1.フォトレジスト用重合体の製造方法であって、
[1]溶媒の存在下で重合性化合物を重合させることにより、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を調製する重合体溶液調製工程と、
[2]前記重合体溶液からフォトレジスト用重合体を沈殿する沈殿工程と、を備えており、
前記重合体溶液調製工程及び前記沈殿工程において用いられる容器が、それぞれ、導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物から形成されたグラスライニング層を少なくとも内表面に備えた容器であり、
前記重合体溶液調製工程において用いられる重合溶媒が、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種であり、
前記沈殿工程において用いられる貧溶媒が、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種であることを特徴とするフォトレジスト用重合体の製造方法。
2.前記導電性付与物質が白金である前記1.に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法によれば、重合体溶液調製工程及び沈殿工程の各工程において、導電性を有するグラスライニング層を備える容器を用いるため、各工程における異物の混入を十分に抑制することができる。また、前記容器を用いているため、静電気の発生を抑制することができ、安全且つ効率的にフォトレジスト用重合体を製造することができる。更には、このような異物量が大幅に低減されたフォトレジスト用重合体を用いることで、半導体素子や液晶表示素子等の製造において、異物が起因となる欠陥の発生を十分に抑制することができるとともに、感度や解像度を向上させ、所望のパターンを精度よく形成することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法は、フォトレジスト用重合体の製造方法であって、[1]溶媒の存在下で重合性化合物を重合させることにより、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を調製する重合体溶液調製工程と、[2]前記重合体溶液からフォトレジスト用重合体を沈殿する沈殿工程と、を備えており、前記重合体溶液調製工程及び前記沈殿工程において用いられる容器が、それぞれ、導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物から形成されたグラスライニング層を少なくとも内表面に備えた容器であることを特徴とする。
[1]重合体溶液調製工程
前記重合体溶液調製工程では、重合性化合物を溶媒(重合溶媒)の存在下で重合させることによりフォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液が調製される。
前記重合性化合物としては、通常、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物に含まれるフォトレジスト用樹脂(重合体)の製造に用いられるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(単量体)を挙げることができる。
ここで、例えば、レジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体は、少なくとも、酸によって分解してアルカリ現像液に可溶となる化学構造を有する繰り返し単位、より具体的には、非極性置換基が酸によって解離してアルカリ現像液に可溶な極性基が発現する化学構造を有する繰り返し単位(1)と、半導体基板等の基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(2)とを必須成分としており、必要に応じて、溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(3)を含んで構成されている。
前記酸によって分解してアルカリ可溶性となる繰り返し単位(1)は、従来レジストとして一般的に用いられている化学構造を意味し、酸によって分解してアルカリ可溶性になる化学構造を有する単量体を重合させるか、或いは、アルカリ可溶性の化学構造を有する単量体を重合させた後、アルカリ可溶性の化学構造におけるアルカリ可溶性基を有する置換基(アルカリ可溶性基)を、アルカリに溶解せず酸によって解離する基(酸解離性保護基)で保護することにより得ることができる。
酸によって分解してアルカリ可溶性になる化学構造を有する単量体としては、アルカリ可溶性置換基を含有する重合性化合物に、酸解離性保護基が結合した化合物を挙げることができ、例えば、非極性の酸解離性保護基で保護されたフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のヒドロキシスチレン類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類;p−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルアクリレート、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルトリフルオロメチルアクリレート、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−2−ノルボルネン等のヒドロキシフルオロアルキル基を有する重合性化合物等が挙げられる。
また、前記酸解離性の保護基としては、例えば、tert−ブチル基、tert−アミル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−プロピル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−メチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、8−エチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の飽和炭化水素基;1−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、iso−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシメチル基、tert−ブトキシカルボニル基等の含酸素炭化水素基等が挙げられる。
アルカリ可溶性の化学構造を有する単量体を重合させた後、アルカリ可溶性の化学構造におけるアルカリ可溶性基を、酸解離性保護基で保護する場合は、前記のアルカリ可溶性基を有する化合物をそのまま重合反応に用い、その後、酸触媒のもとでビニルエーテルやハロゲン化アルキルエーテル等のアルカリに溶解しない置換基を与える化合物と反応させることにより、酸解離性保護基を導入することができる。反応に用いる酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、強酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。
また、基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(2)を与える単量体としては、例えば、極性基としてフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等を挙げることができ、具体的には、例えば、アルカリ可溶性基を含有する重合性化合物として前記説明したヒドロキシスチレン類やエチレン性二重結合を有するカルボン酸類、ヒドロキシフルオロアルキル基を有する重合性化合物、及び、これらに更に極性基が置換した単量体のほか、ノルボルネン環、テトラシクロドデセン環等の脂環構造に極性基が結合した単量体等を挙げることができる。
置換基として繰り返し単位(2)に導入される前記極性基としては、ラクトン構造を含むものが特に好ましく、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン、2,6−ノルボルナンカルボラクトン、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、メバロン酸δ−ラクトン等のラクトン構造を含む置換基が挙げられる。
また、ラクトン構造以外の極性基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基等のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
更に、必要に応じて含有される、レジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(3)を与える単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデン等のエチレン性二重結合を有する芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、ノルボルネンカルボン酸、2−トリフルオロメチルノルボルネンカルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸に酸安定性非極性基が置換したエステル化合物;ノルボルネン、テトラシクロドデセン等のエチレン性二重結合を有する脂環式炭化水素化合物等が挙げられる。
また、前記カルボン酸にエステル置換する酸安定性非極性置換基の例としては、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、2−アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基等が挙げられる。
これらの単量体は、繰り返し単位(1)、(2)及び(3)のそれぞれにおいて、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体中の各繰り返し単位の組成比は、レジストとしての基本性能を損なわない範囲で選択することができる。即ち、一般に、繰り返し単位(1)は10〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜60モル%である。また、繰り返し単位(2)の組成比は30〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜90モル%であるが、同一の極性基を有する単量体単位については、70モル%以下とすることが好ましい。更に、繰り返し単位(3)の組成比は、50モル%以下であることが好ましく、より好ましくは40モル%以下である。
一方、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物に含まれる重合体は、前述のレジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体の化学構造から、酸で分解してアルカリ可溶性になる繰り返し単位(1)を除いた化学構造のポリマーが使用される。重合体中の各繰り返し単位の組成比は特に限定されず、塗膜の使用目的により適宜調整される。一般には、繰り返し単位(2)の組成比は10〜100モル%の範囲から選択され、繰り返し単位(3)の組成比は0〜90モル%の範囲から選択される。
更に、前記多層レジストにおける上層膜や下層膜を反射防止膜として使用する場合には、前記重合体は、架橋点と、フォトリソグラフィーにおいて照射される放射線を吸収する化学構造とを含む必要があり、架橋点としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の、エステル結合やウレタン結合等により架橋可能な反応性の置換基が挙げられる。架橋点となる反応性置換基を含有する単量体としては、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類の他、これまで例示してきた重合性化合物に前記水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の反応性置換基が置換した単量体を適宜用いることができる。
放射線を吸収する化学構造は、使用する放射線の波長により異なるが、例えばArFエキシマレーザー光に対しては、ベンゼン環及びその類縁体を含む化学構造が好適に用いられる。この様な化学構造を含む単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン等のスチレン類及びその誘導体;置換又は非置換のフェニル(メタ)アクリレート、置換又は非置換のナフタレン(メタ)アクリレート、置換又は非置換のアントラセンメチル(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を有する芳香族含有エステル類等が挙げられる。この放射線を吸収する化学構造を有する単量体は、極性基の有無により前記繰り返し単位(2)又は(3)のどちらとして導入されてもよいが、放射線を吸収する化学構造を有する単量体としての組成比は10〜100モル%の範囲から選択されることが好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
また、前記重合性化合物の重合方法は特に限定されず、溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
前記フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液は、例えば、重合開始剤を使用し、更には必要に応じて連鎖移動剤を使用し、前述の重合性化合物(即ち、重合性不飽和単量体)を後述する溶媒中で重合させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート等の有機過酸化物等のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、4,4−ビス(トリフルオロメチル)−4−ヒドロキシ−1−メルカプトブタン等のチオール化合物を挙げることができる。これらの連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記重合開始剤及び連鎖移動剤の使用量は、重合反応に用いる原料モノマー(重合性化合物)や重合開始剤、連鎖移動剤の種類、重合温度、重合溶媒、重合方法、精製条件等の製造条件により適宜調整することができる。
一般に、重合体の重量平均分子量が高すぎると、塗膜形成時に使用される溶媒やアルカリ現像液への溶解性が低くなる傾向にある。一方、重量平均分子量が低すぎると、塗膜性能が悪くなる傾向にある。そのため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、2000〜40000の範囲になるよう調整することが好ましく、より好ましくは3000〜30000である。
また、重合反応に用いられる重合溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種である。これらの重合溶媒を用いた場合、高収率で、不純物のより少ないフォトレジスト用重合体を得ることができる。更には、得られたフォトレジスト用重合体の分子量分布を狭くでき、レジスト膜や反射防止膜に求められる光学的性質、化学的性質、塗布性や基板或いは下層膜に対する密着性等の物理的な性質を向上させることができる。
前記重合溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、単量体1質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。溶媒の使用量が少なすぎる場合には、単量体が析出したり高粘度になりすぎて重合系を均一に保てなくなるおそれがある。一方、溶媒の使用量が多すぎる場合には、原料モノマーの転化率が不十分であったり、得られる重合体の分子量を所望の値まで高めることができないおそれがある。
また、前記重合における反応条件は特に限定されないが、反応温度は、通常40〜120℃、好ましくは50〜100℃である。また、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
この重合体溶液調製工程において得られる重合体溶液の濃度(固形分濃度)は、1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜50質量%である。
また、この重合体溶液調製工程においては、重合反応容器として、導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物から形成されたグラスライニング層を少なくとも内表面に備える容器が用いられる。本発明においては、この導電性を有する容器が重合体調製工程で用いられることにより、重合攪拌中における前述の好ましい重合溶媒から発生する静電気が緩和され、グラスライニング層の破壊等の不具合が抑制され、安全且つ効率的に重合体溶液を調製することができる。
前記グラスライニング層の体積抵抗率は、1×1010Ωcm以下であることが好ましく、より好ましくは1×10〜1×10Ωcm、更に好ましくは1×10〜1×10Ωcmである。この体積抵抗率が1×1010Ωcm以下である場合には、グラスライニング層における帯電電位の発生を1kV以下に抑えることができ、静電気の発生を十分に抑制することができる。
前記グラスライニング層を形成するためのグラスライニング組成物は、通常、ガラスフリットと、導電性付与物質と、を含有するものである。
前記ガラスフリットの組成は特に限定されず、優れた耐食性(化学耐久性)及び熱的安定性が得られる公知の組成のものを挙げることができる。具体的には、例えば、下記の(A)〜(E)からなる組成のガラスフリットを使用することができる。
(A)SiO+TiO+ZrO:46〜67質量%(40〜75モル%)[但し、SiO:46〜67質量%(40〜75モル%)、TiO:0〜18質量%(0〜20モル%)、ZrO:0〜12質量%(0〜12モル%)である。尚、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である。]
(B)RO:8〜22質量%(7〜22モル%)[但し、NaO:8〜22質量%(7〜22モル%)、KO:0〜16質量%(0〜15モル%)、LiO:0〜10質量%(0〜15モル%)である。尚、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である。]
(C)RO:0.9〜7質量%(1〜7モル%)[但し、CaO:0.9〜7質量%(1〜7モル%)、BaO:0〜6質量%(0〜6モル%)、ZnO:0〜6質量%(0〜6モル%)、MgO:0〜5質量%(0〜6モル%)、SnO:0〜5質量%(0〜6モル%)、SrO:0〜5質量%(0〜6モル%)である。尚、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である。]
(D)B+Al:0〜22質量%(0〜20モル%)[但し、B:0〜22質量%(0〜20モル%)、Al:0〜6質量%(0〜10モル%)である。尚、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である。]
(E)CoO+NiO+MnO:0〜5質量%(0〜4モル%)[但し、CoO:0〜5質量%(0〜4モル%)、NiO:0〜5質量%(0〜4モル%)、MnO:0〜5質量%(0〜4モル%)である。尚、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である。]
また、前記導電性付与物質は、酸やアルカリに強い白金であることが好ましい。また、この白金の形状は、繊維状であることが好ましい。白金の形状が、繊維状である場合には、他の形状の場合よりも導電性が高くなり、より少量の添加量で所望の導電性を得られるため好ましい。
繊維状の白金(以下、「白金繊維」ともいう)の直径は、0.01μm以上、0.5μm未満であることが好ましい。この直径が0.01μm未満の場合には、白金繊維自体の加工が難しく、製造コストが大幅に上がってしまう。一方、0.5μm以上の場合には、グラスライニング層全体に均一に分散しないおそれがある。
また、白金繊維の長さは、0.5μm以上、1500μm未満であることが好ましい。この長さが0.5μm未満の場合には、白金繊維自体の加工が難しい。一方、1500μm以上の場合には、グラスライニング層の強度が低くなるおそれがある。
前記グラスライニング組成物における白金繊維の添加量は、前記フリット100質量部に対して、0.001〜0.05質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05質量部である。この添加量が0.001質量部未満の場合には、十分な導電性を有するグラスライニング層が得られないおそれがある。一方、0.05質量部を超える場合には、製品への金属分混入の問題が生じるおそれがある。
また、前記グラスライニング層を備える容器は、前記導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物を、公知の容器基材(例えば、低炭素鋼板やステンレス系鋼板等)の少なくとも内表面に、公知の方法により施釉し、焼成することにより得ることができる。
[2]沈殿工程
本発明における沈殿工程では、沈殿操作により、前記重合体溶液から、不純物(特に、残存モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等の低分子成分)が除去されて、共重合体(フォトレジスト用重合体)の精製が行われる。尚、前記低分子成分の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行うことができる。
前記沈殿操作は特に限定されず、従来の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、貧溶媒(沈殿溶媒)中に、必要に応じて濃度調整された前記重合体溶液を滴下することにより行うことができる。また、必要に応じて良溶媒を用いて、前記沈殿操作を2回以上繰り返し、重合体の精製を行ってもよい。
前記貧溶媒は、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種である。これらの貧溶媒を用いて沈殿精製を行った場合、重合体溶液中に残存する不純物を効率良く除去することができ、得られるフォトレジスト用重合体のスラリー液の収率を向上させることができる。
また、前記貧溶媒の使用量は特に限定されず、貧溶媒の種類、重合体溶液中における溶媒の種類やその含有量によって適宜調整される。具体的には、例えば、貧溶媒と接触させる重合体溶液の全量に対して、質量換算で、0.5〜50倍であることが好ましく、より好ましくは1〜30倍、更に好ましくは2〜20倍である。
前記良溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの良溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、この良溶媒は、前述の重合体溶液調製工程で用いられる重合溶媒と同一のものであってもよいし、異なっていてもよい。
また、この沈殿工程により得られるフォトレジスト用重合体を含有するスラリー液の温度は、10〜35℃であることが好ましく、より好ましくは15〜35℃、更に好ましくは20〜35℃である。尚、このスラリー液の温度は、精製装置に備えられた温度制御装置、使用する貧溶媒の温度等により制御することができる。
また、前記沈殿操作においては、導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物から形成されたグラスライニング層を少なくとも内表面に備える容器が用いられる。尚、グラスライニング層を少なくとも内表面に備える容器については、前述の説明をそのまま適用することができる。また、沈殿工程及び前記重合体溶液調製工程において用いられるグラスライニング層を備える容器は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明においては、この導電性を有する容器が沈殿工程において用いられることにより、スラリー分散中の攪拌により前述の好ましい沈殿溶媒から発生する静電気が緩和され、グラスライニング層の破壊等の不具合が抑制される。更には、安全且つ効率的にフォトレジスト用重合体を製造することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
(1)実施例1
<重合体溶液調製工程>
撹拌機、温度計、還流冷却装置、モノマー溶液滴下ノズル、及び開始剤溶液滴下ノズルが少なくとも設置された容積200Lの重合反応容器[導電性付与物質が添加されたグラスライニング組成物〔ガラスフリット組成;SiO、TiO、ZrO、NaO、KO、LiO、CaO、BaO、ZnO、MgO、SnO、SrO、B、Al、CoO、NiO、MnO、導電性付与物質;白金繊維(直径0.1μm、長さ200μm)、白金繊維の添加量;ガラスフリット100質量部に対して0.03質量部〕から形成されたグラスライニング層(体積抵抗率;1×10Ωcm以下)を内表面に備える重合反応容器]に、重合溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)32kgをいれて十分に窒素置換した後、100rpmで攪拌しながら80℃まで昇温した。その後、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(NLM)15kg、及び2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(MAdMA)20kgのMEK溶液と、アゾビスイソブチロニトリル0.5kgのMEK溶液と、をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間熟成した後、室温まで冷却して重合体溶液を調製した。尚、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した結果、モノマーの転化率は91%であり、重合体100質量%に対する残存モノマー量は9質量%であった。また、得られた重合体について、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した結果、分子量分布(分散度Mw/Mn)は1.71であった。
<沈殿工程>
その後、得られた重合体溶液(固形分濃度:約25質量%)20kgを、容積200Lの導電性グラスライニング層を備える容器[導電性付与物質が添加されたグラスライニング組成物(ガラスフリット組成;SiO、TiO、ZrO、NaO、KO、LiO、CaO、BaO、ZnO、MgO、SnO、SrO、B、Al、CoO、NiO、MnO、導電性付与物質;白金繊維(直径0.1μm、長さ200μm)、白金繊維の添加量;ガラスフリット100質量部に対して0.03質量部)から形成されたグラスライニング層(体積抵抗率;1×10Ωcm以下)を内表面に備える重合反応容器]中で、100kgのメタノール液中に150rpmで攪拌しながら、12.5g/minの滴下速度で滴下し、沈殿を実施することにより白色のスラリー液を得た。
その後、容器底部にテフロン(登録商標)製のろ布(通気量;3.0cm/cm・sec、濾過面積:1m)を張った加圧濾過器を用い、0.2MPaで窒素加圧された条件にて、スラリー液を濾過することで白色固体(フォトレジスト用重合体)を得た。尚、得られたフォトレジト用重合体について、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した結果、重合体100質量%に対する残存モノマー量は0.08質量%であった。また、分子量分布は1.47であった。
次いで、この白色固体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)50kgに1時間溶解させてフォトレジスト用重合体溶液を得た。得られたフォトレジスト用重合体溶液には未溶解分はなく、清澄な溶液であった。
尚、前記Mw及びMnは、以下のように測定した値である。
東ソー(株)製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」2本、商品名「G3000HXL」1本、商品名「G4000HXL」1本)を使用し、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
(2)比較例1
実施例1における重合体溶液調製工程及び沈殿工程において、導電性付与物質が添加されていないグラスライニング組成物からなるグラスライニング層を少なくとも内表面に備える容器を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフォトレジスト用重合体溶液を得た。尚、比較例1における重合体溶液調製工程で得られたフォトレジスト用重合体においては、分子量分布が1.74であり、モノマーの転化率が91%であり、重合体100質量%に対する残存モノマー量が9質量%であった。また、沈殿工程で得られたフォトレジスト用重合体においては、分子量分布が1.47であり、重合体100質量%に対する残存モノマー量が0.08質量%であった。
(3)性能評価
<金属異物量>
実施例1及び比較例1で得られた各フォトレジスト用重合体溶液において、下記の方法により、金属異物量の測定を行った。
フォトレジスト用重合体溶液1gを石英ルツボに入れて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)を完全に蒸発させた後、550℃で灰化処理を行った。次いで、王水に溶解させ、PerkinElmer社製の誘電結合プラズマ質量分析装置(商品名「ELAN DRC Plus」)によって、金属異物量を測定した。尚、評価した金属の種類は、Na、Si、Ti、K、Li、Ba、Zn、Mg、Sn、Sr、B、Al、Co、Ni、Zr、Ca、Mn及びPtである。
<容器における破損の有無>
実施例1及び比較例1における重合体溶液調製工程及び沈殿工程において用いたグラスライニング層を備える容器の破損状況を目視により確認した。
(4)評価結果
実施例1で得られたフォトレジスト用重合体溶液中の金属異物量は、測定した全ての金属種において測定機器の検出量下限未満(ND=0.5ppb未満)であった。また、実施例1の重合体溶液調製工程及び沈殿工程で用いられたグラスライニング層を備える各容器においては、共に破損は確認されなかった。
比較例1で得られたフォトレジスト用重合体溶液中の金属異物量は、測定した全ての金属種において測定機器の検出量下限未満(ND=0.5ppb未満)であったが、重合体溶液調製工程で用いられた容器及び沈殿工程で用いられた容器の両者において、静電気による破損が確認された。

Claims (2)

  1. フォトレジスト用重合体の製造方法であって、
    [1]溶媒の存在下で重合性化合物を重合させることにより、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を調製する重合体溶液調製工程と、
    [2]前記重合体溶液からフォトレジスト用重合体を沈殿する沈殿工程と、を備えており、
    前記重合体溶液調製工程及び前記沈殿工程において用いられる容器が、それぞれ、導電性付与物質を含有するグラスライニング組成物から形成されたグラスライニング層を少なくとも内表面に備えた容器であり、
    前記重合体溶液調製工程において用いられる重合溶媒が、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種であり、
    前記沈殿工程において用いられる貧溶媒が、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種であることを特徴とするフォトレジスト用重合体の製造方法。
  2. 前記導電性付与物質が白金である請求項1に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
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