以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る波長変換レーザ装置100の概略図である。図1Bは、基本波レーザ光の主光線FWのみを示し、基本波レーザ光が波長変換素子5への入射角を変化させながら通過する様子を示している。
図1Aに示すように、波長変換レーザ装置100は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4、および波長変換素子5を具備している。前記第1凹面ミラー3および第2凹面ミラー4は対向して配置されており、当該第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4との間に、波長変換素子5が配設されている。
基本波レーザ光源1を出射した基本波レーザ光は、集光光学系2により集光点(ビームウエスト位置PBW)が集光制御され、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4とからなる反射面間に入射する。そして、基本波レーザ光は、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4との間に設けられた波長変換素子5に入射し、波長変換素子5においてその一部が第2高調波に変換される(1パス目)。
波長変換素子5を通過(第1パス)した基本波レーザ光および第2高調波レーザ光は、第1凹面ミラー3に達する。ここで、前記第1凹面ミラー3の凹面部には、基本波レーザ光を反射すると共に第2高調波レーザ光(波長変換レーザ光)を透過するコーティングが施されている。よって、基本波レーザ光は第1凹面ミラー3にて反射される一方、第2高調波レーザ光(波長変換レーザ光)は第1凹面ミラー3を透過して外部に出力される。
第1凹面ミラー3で反射された基本波レーザ光は、波長変換素子5に再入射し、その一部が第2高調波に変換される(2パス目)。
波長変換素子5を通過(第2パス)した基本波レーザ光と第2高調波レーザ光は、第2凹面ミラー4に達する。ここで、前記第2凹面ミラー4の凹面部には、基本波レーザ光および第2高調波レーザ光を反射するコーティングが施されている。よって、基本波レーザ光および第2高調波レーザ光は、第2凹面ミラー4で反射され、波長変換素子5に再入射する。そして、再入射した基本波レーザ光の一部が波長変換素子5にて第2高調波に変換される(3パス目)。
波長変換素子5を通過(第3パス)した基本波レーザ光と第2高調波レーザ光は、再度、第1凹面ミラー3に達する。そして、第2高調波レーザ光が第1凹面ミラー3を透過して外部に出力される一方、基本波レーザ光は第1凹面ミラー3で反射されて波長変換素子5に再入射する(4パス目)。
上記を繰り返すことで、基本波レーザ光は、第1凹面ミラー3および第2凹面ミラー4の2つの反射面間を往復する間に、波長変換素子5の通過(第1パス、第2パス、・・・第nパス)を繰り返し、当該通過の度に波長変換レーザ光に変換される。
基本波レーザ光は、反射面(第1凹面ミラー3および第2凹面ミラー4)の曲率およびそれらの配置条件、並びに集光光学系2の設定により、数回から数十回、反射面間を往復した後、反射面間の往復を停止する。基本波レーザ光が往復を停止するまでに発生した波長変換レーザ光は、本実施の形態1では第1凹面ミラー3から出力される。
波長変換素子5における基本波レーザ光から第2高調波への変換効率ηは、波長変換素子5の相互作用長をL、基本波レーザ光のパワーをP、波長変換素子5での基本波レーザ光のビーム断面積をA、位相整合条件からの位相のずれをΔkとすると、
η∝L2P/A×sinc2(ΔkL/2)…(1)
の関係式が成り立つ。
上記(1)式からわかるように、波長変換素子5における基本波レーザ光のビーム断面積が小さい領域で変換効率が高い。すなわち、波長変換素子5の基本波レーザ光の通過領域では、基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWにおいて変換効率が著しく高くなる。本実施の形態では、基本波レーザ光が反射面間に導入される光路上の所定位置に集光光学系2を配することによって、基本波レーザ光が反射面間を往復している間に、基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWが波長変換素子5内で点在するように調整している。
もし、反射面間に配された波長変換素子内でビームウェスト位置PBWが集中すると、光損傷などによる波長変換素子の破壊や、ビームウェスト位置PBWの集中箇所で波長変換が不安定になるという問題が生じる。しかし、上述した本実施の形態の構成のように、基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWを波長変換素子5内で点在させることで、上記問題を解決することができる。
特に、第1凹面ミラー(第1反射面)3および第2凹面ミラー(第2反射面)4の各焦点距離を、それぞれf1およびf2で表すと、反射面間の距離をf1+f2とする共焦点配置(波長変換素子の屈折率を考慮していない場合)において、基本波レーザ光のビームウェスト位置が2つの反射面の共焦点に集中し、波長変換素子の光損傷や波長変換の不安定性が問題となる。
しかし、本実施の形態は、集光光学系2により基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWを調整することで、前記共焦点配置をもちいた場合でも、安定した波長変換レーザ装置の出力を可能とする。すなわち、本実施の形態1では、集光光学系2によって、図1Aのように第1反射面への入射前に基本波レーザ光のビームウェストPBWを形成し、第1および第2反射面の共焦点でビームウェストが数パス内で形成されるのを回避し、波長変換素子5内に点在させた異なるビームウェスト位置PBWで波長変換を行い、安定した波長変換レーザ光を得られるようにしている。集光光学系2によりビームウェスト位置PBWを点在させることは、各ビームウェスト位置PBWの異なる位相整合条件をもつビームパスの波長変換をそれぞれ安定的に行うことができ、合計する波長変換レーザ光を安定に取り出すことができる本実施の形態に必須の構成となる。
図2は、本実施の形態1に係る波長変換素子5に対する基本波レーザ光のパスナンバーと各ビームパスの入射角との関係を示すグラフである。
実施の形態1では、第1凹面ミラー3に焦点距離f1:25mm、第2凹面ミラー4に焦点距離f2:20mmを用いている。これら2つの反射面間への基本波レーザ光の入射は、第2凹面ミラー4を第1凹面ミラー3よりも小さくなるように切断し、この切断部から行っている。2つの反射面の中央間を結ぶ主光線軸MLとは、図1Bに示すように両反射面のそれぞれの曲率中心を結ぶ光軸である。基本波レーザ光は、集光光学系2により主光線軸MLと平行になるように波長変換素子5および第1凹面ミラー3に入射している。波長変換素子5には、分極反転構造を有するMgO:LiNbO3(長さ26mm、幅10mm)を用いた。反射面間の距離は58.4mmとし、共焦点配置からわずかにずらしている。図2に示すように、基本波レーザ光は、反射面間を波長変換素子5への入射角を変化させながら往復し、波長変換素子5の通過を繰り返している。
位相整合条件とは、非線形光学材料(波長変換素子)で発生する波長変換光の位相が一致し、波長変換効率が最大(Δk=0)となる条件である。位相整合条件は、レーザ光の波長、非線形光学材料の屈折率、レーザ光の入射角、波長変換素子の分極反転構造の周期、などによって決まる。従来の構成により波長の変換を行う場合、位相整合条件を一致させるため、温度による非線形光学材料の屈折率の調整とレーザ光の入射角の調整とを行っている。このような従来の構成では、前記の温度や入射角がずれると位相整合条件からずれてΔk>0となり、波長変換効率の低下がみられる。また、従来の構成では、レーザ光の波長がずれると、位相整合条件から外れてしまうため、再調整や構成の見直しが必要であった。
本実施の形態では、通過パスにより波長変換素子への入射角が変化しているため、通過パスにより、位相整合条件を満たす各種ファクタ(レーザ光の波長、非線形光学材料の屈折率(温度)、分極反転周期など)が変化することとなる。このため、本実施の形態の波長変換レーザは複数の位相整合条件を有することとなる。一定のレーザ光波長の波長変換を行う場合、位相整合条件を満たす温度が複数存在し、あるひとつの位相整合条件から温度がずれた場合でも、他の通過パスの位相整合条件と合致し、変換効率の低下を補完することができる。
図3は、実施の形態1における波長変換素子5の温度と変換効率の関係を示している。図3中、L1は本実施の形態の各パスにおける変換効率を示し、L2は本実施の形態における合計変換効率を示し、L3は従来の構成における変換効率を示している。
実施の形態1では、通過パスにより基本波レーザ光の波長変換素子5への入射角が異なることにより位相整合条件を満たす温度が各パスで異なり、各パスでの変換効率を合計する全体での変換効率は、波長変換素子5の温度が変化しても低下しにくくなっている。図27で示す従来の構成の場合、変換効率の半値全幅は1.1度であったが、実施の形態1の変換効率の半値全幅は2.6度であり、従来構成に比して2倍以上の許容幅を持つ。また実施の形態1の合計の変換効率は、繰り返し波長変換素子5に基本波レーザ光が入射することにより、従来の構成よりも広い温度範囲で高い値となっている。実施の形態1では、合計変換効率も高く、従来の構成の2倍の変換効率にあたる60%以上の変換効率を達成している。
本実施の形態に係る波長変換レーザ装置100は、レーザ光を反射し曲率を有する2枚の反射面間に波長変換素子5が配置され、集光光学系2により反射機能のない部位より反射面間にレーザ光が導入される。そして、レーザ光が反射面間を往復して波長変換素子5への入射角を変化させながら波長変換素子5への通過を繰り返すことで、位相整合条件を変化させて波長変換が繰り返される。ここで、レーザ光が反射面間を往復する中で、波長変換素子5内でレーザ光のビームウェスト位置PBWが点在するように集光光学系2を配置する。また、対向配置された一対の反射面の少なくとも一方が波長変換したレーザ光を透過して波長変換レーザ光を出射する。上記の構成により、高変換効率を有しながらも、位相整合条件を複数有することで、温度などの位相整合条件からの許容幅を拡大し、環境変化などに対し安定な波長変換レーザ光が得られる。また、レーザ光のビームウェスト位置PBWを波長変換素子5内において点在させることで、波長変換素子5の光損傷や波長変換の不安定性をなくした高出力の波長変換レーザ光を得ることができる。
実施の形態1では、基本波レーザ光源1として、中心波長1064nm、スペクトルの半値全幅0.1nmのファイバーレーザを用いている。しかし、これに限定されるものではなく、基本波レーザ光源1には、ファイバーレーザの他、固体レーザ、半導体レーザ、気体レーザ、波長変換レーザなどをもちいることができる。また、実施の形態1では、第2高調波への波長変換を行っているが、本実施の形態に係る波長変換レーザ装置100は、適当なレーザ光源を選択することで、和周波、差周波および光パラメトリック発振などの波長変換レーザ光の発生に用いることもできる。
実施の形態1は、反射面間の距離をD、2枚の反射面の各焦点距離をf1およびf2、波長変換素子長をLとするとき、
f1+f2<D<f1+f2+L …(2)
である好ましい形態である。実施の形態1では、f1:25mm、f2:20mm、L:26mm、のとき、Dを58.4mmとしている。上記の関係式(2)を満たすように反射面間の距離Dを設定するとき、2枚の反射面の共焦点配置にも近く、且つビームパスの往復回数が多くなって波長変換素子5への基本波レーザ光の通過数が増大することで、波長変換レーザ光への合計変換効率を高めることができる。反射面の焦点距離とは、反射面が非対称レンズの場合、主光線軸MLに対して反射面間への入射光線がずれた方位の焦点距離である。波長変換素子5の屈折率をnとするとき、反射面間の距離Dは、
D≠f1+f2+(1−1/n)×L (=共焦点配置) …(3)
を満たすことが特に好ましい。ここで共焦点配置とは、2枚の反射面の焦点が同じ位置にくる距離Dである。反射面間の距離Dを共焦点配置とする場合、レーザ光が主光線軸MLに収束し、高出力時に波長変換素子5の光損傷や波長変換の不安定性を引き起こす場合がある。このため、共焦点配置からわずかにずれた位置となる上記(2)式を満たす範囲に反射面間の距離Dを設定することが好ましい。具体的には、共焦点配置から0.1mm〜3mm程度ずらした位置に2枚の反射面を配置するように距離Dを設定する。特に好ましくは、共焦点配置から0.1mm〜3mmだけ距離が短い範囲に距離Dを設定する。共焦点配置となる2枚の反射面間の距離よりも上記範囲だけ短くすることで、基本波レーザ光の反射面間の往復数を確保し、反射面の焦点位置への基本波レーザ光の収束を避けるとともに、反射面間に入射する基本波レーザ光と第2凹面ミラー4(第2反射面)の有効径に対するマージンを大きくすることができる。ここで、反射面の有効系とは、反射面にレーザ光があたる範囲の長手方向の長さである。
実施の形態1の集光光学系2は、図1Aに示すようにファイバーコリメータ2aと平凸レンズ2bからなる。集光光学系2は、2枚の反射面の焦点以外で波長変換素子5内に基本波レーザ光の集光を行い、反射面間を往復する基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWが波長変換素子5内で点在するように制御している。2枚の反射面の焦点では、レーザ光のオーバラップが生じ、波長変換素子の破壊や波長変換の不安定性を引き起こす可能性がある。また波長変換を1箇所で集中して行う場合も同様に、波長変換素子の破壊や波長変換の不安定性を引き起こすこととなる。波長変換素子において、波長変換は集光したビームウェスト位置PBWで強く行われるが、このビームウェスト位置PBWを2枚の反射面の焦点以外に点在させている。本実施の形態では、波長変換素子5内の点在したビームウェスト位置PBWで波長変換を行うことで、安定した波長変換レーザ光を出力している。なお、波長変換素子5内の点在したビームウェスト位置PBWで波長変換が繰り返し行なわれた後に、2枚の反射面の焦点位置にレーザ光のビームウェスト位置PBWが収束しても構わない。
図1Aで示されるように本実施の形態は、集光光学系2により、基本波レーザ光が第1凹面ミラー3で反射する前に第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4との反射面間で集光する好ましい形態である。基本波レーザ光が反射面で反射する前に反射面間で集光点(ビームウェスト位置PBW)を有することにより、反射面の焦点近傍を通過しない多数のレーザ光パスでビームウェストを形成することができる。
本実施の形態は、基本波レーザ光が反射面で最初に反射される前に反射面間でビームウェストが形成されることにより、波長変換素子5内の広い範囲にビームウェスト位置を多数点在させることができ、高出力時でも安定した波長変換を行うことができる。また、レーザ光が反射面(第1凹面ミラー3)で反射される前に波長変換が行なわれるので、波長変換素子5での最初のパスで波長変換されたレーザ光をモニターすることにより、反射面に関わらない波長変換光の調整を行うことができ、コンパクトな波長変換レーザ装置を作製することができる。さらに、レーザ光が反射面で反射される前に波長変換が行なわれるので、合計変換効率を高めることができる。
実施の形態1では、2枚の反射面に球面の凹面ミラーを用いているが、非球面や平面の反射面を用いることができる。2枚の反射面の内少なくとも1枚は曲率を有し、レーザ光の光路を曲げ、反射面間を複数回往復させることと、反射面間にレーザ光のビームウェストが形成されるようにする。2枚の反射面の組み合わせは自由に設計可能であり、レーザ光が2枚の反射面で複数回反射し、2枚の反射面間に設けられた波長変換素子5に少なくとも2種類以上の入射角でレーザ光が入射すればよい。
2枚の反射面の少なくとも一方は、波長変換したレーザ光を出力するため、波長変換したレーザ光を透過する。実施の形態1では、第1凹面ミラー3が波長変換した第2高調波を透過する。第1凹面ミラー3は、反射率99.5%で基本波レーザ光(波長1064nm)を反射すると共に、透過率99%で第2高調波レーザ光(波長532nm)を透過する。第2凹面ミラー4は、基本波(1064nm)の反射率99.5%、第2高調波(532nm)の反射率99%で、基本波レーザ光と第2高調波レーザ光をともに反射する。反射面のレーザ光(基本波)に対する反射率は、高ければ、損失が少なくなり好ましい。波長変換レーザ光に対しては、2枚の反射面が共に透過する構成としてもよいし、1枚だけが透過する構成としてもよい。
実施の形態1では、波長変換素子5に分極反転構造を有するMgO:LiNbO3(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)を用い、その形状は直方体(長さ26mm、幅10mm、厚さ1mm)である。波長変換素子5は、波長変換を行うことができる非線形光学結晶からなる。例えば、波長変換素子5には、KTP、LBO、CLBO、LTなどの非線形光学結晶を用いることができる。特に、分極反転構造を有し擬似位相整合を行う波長変換素子5は、分極反転周期により異なる位相整合条件を同一素子内で形成することができるため、本実施の形態の波長変換レーザ装置に用いることが好ましい。このように、同一素子内で異なる位相整合条件を有することで、波長変換レーザ装置の全体としての温度や波長に対する許容幅を大きくすることができる。
実施の形態1の波長変換素子5は、主光線軸MLと垂直な入射面を持つように配置されている。波長変換素子5における分極反転構造は、入射面と平行な周期で形成され、その分極反転周期は約7μmである。前記したように分極反転周期は、素子内で同一である必要はなく、周期や向きを変化させた構成としてもよい。波長変換素子5の入出射面は、レーザ光(基本波)と波長変換レーザ光(第2高調波)のAR(Anti Reflection)コートが形成されている。このように、波長変換素子5においては、反射面間での不要な反射を避けるため、レーザ光と波長変換レーザ光のARコートを形成することが好ましい。
実施の形態1では、第1凹面ミラー3の有効径がφ5mm、第2凹面ミラー4の有効径がφ4mm、波長変換素子5におけるレーザ光が往復する幅が5mmであり、波長変換レーザ装置は細長いコンパクトな形状で、ハイパワーの波長変換レーザ光を安定して出力することができる。実施の形態1では、第1凹面ミラー3に入射する基本波レーザ光のビーム径がφ0.3mmであり、反射面間に入射する基本波レーザ光のビーム径が、2つの反射面のうち有効径のより小さい反射面(第2凹面ミラー)4の有効径の1/5以下である好ましい形態である。反射面間に入射する基本波レーザ光のビーム径が、反射面の有効径に対して十分に小さいため、反射面間での基本波レーザ光のオーバラップを緩和するとともに、反射面間でのレーザ光の往復回数を大きくすることができる。このようなオーバラップの緩和と往復回数の増加により、本実施の形態1の波長変換レーザ装置100は、コンパクトであっても高出力と高変換効率を両立させることができる。なお、実施の形態1の構成で、反射面の有効径の1/5よりも入射ビーム径を大きくすると、反射面間の往復回数が3程度となり、変換効率が低くなった。
実施の形態1では、基本波レーザ光源1から出射する基本波レーザ光の中心波長λが1064nm、スペクトル半値全幅Δλが0.1nmとなり、コヒーレンス長(λ2/Δλ)は11.3mmとなる。反射面間の距離Dが58.4mmのため、コヒーレンス長は反射面間距離の2倍未満となっている。本実施の形態は、基本波レーザ光のコヒーレンス長が反射面間の距離の2倍未満となる好ましい形態である。基本波レーザ光のコヒーレンス長が反射面間の距離の2倍以上の場合、反射面間を往復するレーザ光がオーバラップする点で干渉が生じ、ビーム強度が非常に強くなる点ができる。干渉により生じたビーム強度の強い点は、波長変換素子の結晶破壊や波長変換の不安定性を引き起こすこととなる。本実施の形態は、反射面間を往復する基本波レーザ光のコヒーレンス長を往復する距離よりも短くすることで、本発明の構成の場合に生じる干渉性の問題を解決している。
また、実施の形態1では、第1凹面ミラー3および第2凹面ミラー4により基本波レーザ光が反射を繰り返し、波長変換素子5内に3個以上のビームウェストを形成する。このとき、図1Aに示すように、集光光学系2により最初に形成されるビームウェストから順にi、ii、iiiと番号をつける。本実施の形態では集光光学系2により最初に形成されるビームウェストiのビームウェスト半径は75μmとなっている。基本波レーザ光が第1凹面ミラー3(f1:25mm)および第2凹面ミラー4(f2:20mm)による反射を経ることで、ビームウェストiiのビームウェスト半径は60μmとなり、さらにビームウェストiiiのビームウェスト半径は48μmとなる。実施の形態1では、集光光学系と曲率を持つ2枚の反射面により、ビームウェストPBWが波長変換素子5内に3個以上点在し、基本波レーザ光が波長変換素子5内で最初に形成するビームウェストPBWから順にi、ii、iiiとし、これらのビームウェスト半径をr_i、r_ii、r_iiiとするとき、
r_i>r_ii>r_iiiである好ましい形態である。
本実施の形態に係る波長変換レーザ装置100では、基本波レーザ光が波長変換素子5を通過する複数のパスで波長変換光を発生するが、基本波レーザ光は波長変換を繰り返していく内にパワーが低下する。最初または初期にビームウェストが形成される波長変換素子5の部位では、基本波レーザ光のパワーが高いため、その後のパスに比べて波長変換素子5の破壊や波長変換が不安定となる場合がある。
本実施の形態のように、波長変換素子5内に最初に形成されるビームウェストから順々にビームウェスト半径を絞ることでレーザ光のパワー密度を調整することにより、波長変換素子5の破壊等を回避し、安定した波長変換が可能となる。さらに、より後のパスでレーザ光パワーが低下する為に生じる変換効率の低下を抑制し、全体での波長変換効率を高めることもできる。
本実施の形態のように、最初または初期の段階で形成されるビームウェストの半径を、その後に形成されるビームウェストの半径よりも大きくすることで、基本波レーザ光のパワー密度を抑制し、安定した波長変換が可能となる。本実施の形態に係る波長変換レーザ装置100では、特に初めの2個のビームウェスト位置PBWでの強度は、基本波レーザ光のパワー密度が高まり易く、留意する必要がある。なお、より好ましくは、ビームウェストPBWが波長変換素子5内に5個以上点在し、ビームウェスト半径を、r_i>r_ii>r_iii>r_iv>r_v とする。最初に形成されるビームウェストiから5個までのビームウェストの半径を順に絞っていく構成とすることで、より安定した波長変換と、全体での変換効率の向上を達成することができる。
(実施の形態2)
図4に、実施の形態2に係る波長変換レーザ装置200の概略図を示す。実施の形態1と同様の部材については同じ部材番号を付する。図4に示す波長変換レーザ装置200は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4および波長変換素子51を具備している。
波長変換レーザ装置200の波長変換素子51は、分極反転構造を有する非線形光学結晶からなり、2つの反射面の中心間を結ぶ光軸である主光線軸MLに対し、分極反転構造X1が傾いて形成されている。図4のように、主光線軸MLからビームの進行方向に対し傾いた周期で分極反転構造が形成されている。本実施の形態に係る波長変換レーザ装置200は、図2で示したように基本波レーザ光が波長変換素子51に対して入射角を変化させながら入射を繰り返す。分極反転構造X1を有する波長変換素子51に対して基本波レーザ光の入射角が変化するということは、入射角により分極反転の周期が変化することとなる。
ところで、波長変換素子において、分極反転構造X1が入射面に対し平行の場合、基本波レーザ光の入射角の絶対値に応じて分極反転周期が長くなる。このため、実施の形態1では、位相整合条件の変化範囲は、入射角において0度から最大入射角である5.7度までの範囲となる。
基本波レーザ光が2枚の反射面により複数回反射を行うと、基本波レーザ光の波長変換素子への入射角はプラス方向とマイナス方向でほぼ同じ範囲で変化する。本実施の形態2の波長変換レーザ装置200では、分極反転構造X1を主光線軸MLに対して傾けることで、分極反転のレーザ光の通過パスによる周期の変化を、前記入射角と分極反転構造の傾き角をあわせたものに対応したものとすることができる。
本実施の形態2は、分極反転構造X1を主光線軸MLに対し傾いて形成することで、位相整合条件の変化範囲を大きくすることができる好ましい形態である。分極反転構造X1を主光線軸MLに対して傾けることで、温度や基本波レーザ光の波長などに対する波長変換レーザ装置200の許容幅を広くすることができる。したがって、温度などの位相整合条件の許容幅をさらに拡大し、環境変化などに対し安定的に波長変換光を得ることができる。
特に、基本波レーザ光の入射角が最大のときの波長変換素子5内のレーザ光角度以上に分極反転構造を傾けることは、位相整合条件の変化範囲が、実施の形態1の約2倍になり、入射角の変化を最大限に生かす好ましい形態である。なお、分極反転構造を主光線軸MLから傾けるために、波長変換素子自身を主光線軸MLから傾ける構成としてもよい。
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係る波長変換レーザ装置300における基本波レーザ光の主光線FWの光路を模式的に示す図である。実施の形態1および2と同様の部材については、同じ部材番号を付す。図5に示す波長変換レーザ装置300は、基本波レーザ光源1、集光光学系21、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4および波長変換素子5(または波長変換素子51)を具備している。
波長変換レーザ装置300では、集光光学系21により、反射面間の中心間を結ぶ光軸である主光線軸MLから傾けて反射面間に基本波レーザ光を入射させている。第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4からなる反射面間に入射される基本波レーザ光は、主光線軸MLから傾いて入射されるため、主光線軸MLと交差する点がパスによって変化している。これは、反射面間で反射を繰り返すレーザ光線のオーバラップが複数個所に分散されることを意味し、反射面間でレーザ光のパワーが集中することを回避することができる。
本実施の形態は、集光光学系21によりレーザ光を主光線軸MLから傾けて反射面間に入射させる好ましい形態である。本実施の形態では、レーザ光のパワー集中を回避し、波長変換素子5(または51)の結晶破壊や波長変換の不安定性を回避し、高出力の波長変換レーザ光を安定して出射することができる。
本実施の形態に係る反射面は、基本波レーザ光の入射部を除いて、主光線軸MLに対し、反射面中央から点対称の形状を有する。
波長変換レーザ装置300は、基本波レーザ光の反射面間に入射する傾きが主光線軸MLに対し、発散方向(図5の左から右に拡がる方向)である好ましい形態である。2枚の反射面が凹面ミラーからなる場合、基本波レーザ光が主光線軸MLに対し発散方向に傾斜した光路で初めに反射する第1反射面に入射することで、このような傾斜がない場合(すなわち主光線軸MLと平行な場合)に比べて、2回目に反射する第2反射面(第2凹面ミラー4)の有効径を小さくすることができる。波長変換レーザ装置300では、反射面間への基本波レーザ光の入射を第2反射面の切断部から行っているが、この反射面間への入射は、第2反射面側から行うことが好ましい。このとき、上述の通り基本波レーザ光の進行方向を主光線軸MLに対して傾けることによって、第2反射面の有効径を小さくできる。第2反射面の有効径を小さくすれば、基本波レーザ光の反射面間への入射の際の調整を容易とし、反射面間に基本波レーザ光が入射するときの第2反射面におけるケラレをなくすことができる。
基本波レーザ光が第1反射面に入射するときの進行方向の主光線軸MLに対する傾きは、0.1度〜1度の範囲が好ましい。0.1度よりも小さいと傾けた効果がなく、1度よりも大きい場合は反射面の往復回数を著しく低下させることとなるからである。
(実施の形態4)
図6Aないし図6Cに実施の形態4の波長変換素子52、53の模式図を示す。実施の形態1〜3と同様の部材については同じ部材番号を付する。
波長変換素子52、53は、分極反転周期構造の擬似位相整合により波長変換を行う。波長変換素子52は、当該素子の厚さ方向に対して、分極反転形成部52aと分極反転が形成されていない無反転結晶部52bからなる。ここで、波長変換素子52の厚さ方向とは、図1における紙面に対し垂直な方向であって、反射面間を往復するレーザ光の光路のずれが少ない方向である。反射面間でレーザ光が往復するとき、波長変換素子52の厚さ方向に対しては、レーザ光の波長変換素子52への入射角の変化はほとんどなく、図6Aに示すように、レーザ光路A(実線)で示される収束光もしくは、レーザ光路B(点線)で示される略平行光が、繰り返し波長変換素子52に入射する。レーザ光は繰り返し波長変換素子52に入射する間に、回折によりレーザ光のビーム径が大きくなっていく。ビーム径が大きくなり波長変換素子52の入射面から入射できないレーザ光は、反射面間での往復ができなくなり、ロスとなる。
本実施の形態では、レーザ光のロスがなく十分な往復数を確保するために、波長変換素子52の厚さは1mm以上、より好ましくは2mm以上とする。またビームのロスを発生させないためには、波長変換素子52の厚さ方向の中央部とビームの中央とを一致させることが必要となる。このとき、波長変換効率が高いビームウェスト位置PBWは、波長変換素子52の厚さ方向の中央部となるため、分極反転形成部52aが波長変換素子52の厚さ方向の中央に形成されていることが好ましい。分極反転形成部52aが波長変換素子52の中央部に形成されることで、効率よく波長変換を行うことができる。なお、波長変換素子52において、厚さ方向の中央に分極反転形成部52aの一部があればよい。
図27に示す従来の構成の場合、分極反転形成部は集光するレーザ光が1回通過する領域だけでよいため、波長変換素子103を厚くする必要はなく、波長変換素子103の中央に分極反転形成部を設ける必要もなかった。また周期的な分極反転を波長変換素子の厚さ方向に均一に作製することは、分極反転形成のプロセスからして困難であるという課題がある。これに対して、波長変換素子52、53は、本実施の形態に適した分極反転構造をもつ波長変換素子であり、厚さ方向に均一に分極反転形成部を持たず、分極反転形成部52a、53aを波長変換素子52、53の中央にのみ有する。そして、波長変換素子52、53は、分極反転が形成されていない無反転結晶部52b、53bを厚さ方向に有し、分極反転形成部52a、53aが波長変換素子52、53の厚さ方向の中央にあるように調節している。無反転結晶部52b、53bは、分極反転形成部52a、53aと同じ屈折率を有する。
無反転結晶部52b、53bは、非線形光学結晶内の分極反転形成時に分極反転が形成されなかった部位であってもよい。特に好ましい無反転結晶部52b、53bは、次の二つである。ひとつは、非線形光学結晶に分極反転構造を形成後、分極反転が形成されていない結晶を貼り付けた部位である。もうひとつは、非線形光学結晶に分極反転が形成されにくい結晶を貼り付けた後、分極反転構造を形成し、これにより、先に貼り付けた分極反転が形成されにくい結晶において分極反転が形成されなかった部位である。
図6Bに示す波長変換素子52は、分極反転形成部52aを無反転結晶部52bで厚さ方向に両側から挟み、波長変換素子52を厚くし、分極反転形成部52aが中央にあるようにした好ましい形態である。図6Cに示す波長変換素子53は、分極反転を形成するときに分極反転の非周期部53cを作製すると共に、無反転結晶部53bを有することで、分極反転形成部53aが波長変換素子53の厚さ方向の中央にあるようにし、また波長変換素子53を厚くした好ましい形態である。
(実施の形態5)
図7Aおよび図7Bに実施の形態5に係る波長変換レーザ装置400の概略図を示す。図7Aは波長変換素子5の幅方向を示す波長変換レーザ装置400の概略上面図であり、図7Bは波長変換素子5の厚さ方向を示す波長変換レーザ装置400の概略側面図である。実施の形態1〜4と同様の部材については同じ部材番号を付する。図7Aおよび図7Bに示す波長変換レーザ装置400は、基本波レーザ光源1、集光光学系22、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4および波長変換素子5を具備している。
反射面間に入射するレーザ光を集光制御する集光光学系22は、波長変換素子5の厚さ方向のレンズパワーが、波長変換素子5の幅方向のレンズパワーよりも小さく、反射面間へのレーザ光の出射開口数(NA)が厚さ方向の方が幅方向よりも小さい好ましい形態である。この構成によれば、反射面間で、レーザ光は楕円ビームとなる。波長変換レーザ装置400では、図7Aに示すように、波長変換素子5の幅方向については第1凹面ミラー3に基本波レーザ光が入射する前にビームウェストが形成されるのに対し、図7Bに示すように、波長変換素子5の厚さ方向ではゆるい収束光で第1凹面ミラー3の反射後にビームウェストが形成される。反射面を往復し、波長変換素子5に入射を繰り返すレーザ光は、楕円ビームとなり、方向(波長変換素子5の幅方向および厚さ方向)によりビームウェストが形成される位置が異なっている。このように、本実施の形態は、ビームウェスト位置PBWを方向により異ならせることで、ビームウェスト位置PBWが非常に分散し、安定した波長変換を行うことができる。また本実施の形態では、波長変換素子5の厚さ方向のレンズパワーを幅方向よりも小さくすることで、厚さ方向の回折を小さくし、波長変換素子5の厚さ方向でビーム径が大きくなり損失となるのを防ぐことができる。波長変換素子5の厚さ方向のレーザ光の回折が、反射面間を往復するレーザ光に制限を与えるが、本実施の形態では、これを低減することができる。
集光光学系22は、ファイバーコリメータ22aとアナモフィックレンズ22bとの組み合わせからなる。この集光光学系22において、波長変換素子5の厚さ方向の反射面間への出射NAは、波長変換素子5の幅方向のNAに対し1/2未満であることが好ましい。集光光学系22において、厚さ方向の反射面入射方向の出射NAは、収束方向に形成されていても発散方向に形成されていてもよく、そのビームの収束角度もしくは発散角度が、幅方向よりも小さくなるように形成されている。集光光学系22には、シリンドリカルレンズを含むレンズ系を用いることができる。
(実施の形態6)
図8Aおよび図8Bに実施の形態6に係る波長変換レーザ装置500の概略図を示す。図8Aは、波長変換素子5の幅方向を示す波長変換レーザ装置500の概略上面図であり、図8Bは、波長変換素子5の厚さ方向を示す波長変換レーザ装置500の概略側面図である。実施の形態1〜5と同様の部材については同じ部材番号を付す。図8Aおよび図8Bに示す波長変換レーザ装置500は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、アナモフィック反射鏡31、第2凹面ミラー4および波長変換素子5を具備している。
本実施の形態では、実施の形態1に用いられている第1凹面ミラーに代えて、アナモフィック反射鏡31が用いられている。アナモフィック反射鏡31の凹面部には、基本波レーザ光を反射すると共に第2高調波レーザ光(波長変換レーザ光)を透過するコーティングが施されている。
アナモフィック反射鏡31とは、波長変換素子5の幅方向と厚さ方向に異なる曲率を有する反射面である。アナモフィック反射鏡31は、波長変換素子5の幅方向にf1:25mmの焦点距離、波長変換素子5の厚さ方向にf1t:20mmの焦点距離をもち、f1t<f1となっている。もう一枚の反射面は、第2凹面ミラー4であり、f2:20mmの焦点距離を有している。波長変換レーザ装置500の反射面間への入射光線のずれた方位は、波長変換素子5の幅方向となる。反射面間の距離Dは、共焦点配置近傍に設定されており、波長変換素子5の幅方向で決まる基本波レーザ光の反射面間の往復回数は確保されている。
本実施の形態は、反射面にアナモフィック反射鏡を用いた好ましい形態である。反射面間を往復する基本波レーザ光が、アナモフィック反射鏡31で反射される際、方向(波長変換素子5の幅方向および厚さ方向)により異なる曲率で反射されるため、基本波レーザ光は楕円ビームとなり、当該方向により異なるビームウェスト位置PBWをとる。このため、波長変換が行われるビームウェスト位置PBWが波長変換素子5内で非常に分散し、高出力でも安定的に波長変換レーザ光を得ることができる。
ここで、アナモフィック反射鏡31(第1反射面)における波長変換素子5の厚さ方向の焦点距離をf1tとし、第2凹面ミラー4(第2反射面)における波長変換素子5の厚さ方向の焦点距離をf2tとする。波長変換レーザ装置500では、f2=f2t=20mmである。反射面間の光路長をDnとすると、本実施の形態では、
0≦(1−Dn/(2×f1t))×(1−Dn/(2×f2t))≦1 …(4)
であることが好ましい。反射面間の光路長Dnは、
Dn=D−(1−1/n)×L …(5)
で表される。上記(4)式の関係を満たすことで、波長変換素子5の厚さ方向に対して、反射面を安定共振器とすることができる。このとき、反射面間を往復するレーザ光は、上記厚さ方向の回折によるビーム径の増大がなくなるため、厚さ方向のロスをなくすことができる。波長変換レーザ装置500は、Dn:44.8mm、f1t:20mm、f2t:20mmであり、上記(4)式を満たす好ましい形態である。
なお、第1および第2反射面の両方をアナモフィック反射鏡としてもよいし、第1反射面と第2反射面との何れか一方のみをアナモフィック反射鏡としてもよい。また反射面間にシリンドリカルレンズなどのアナモフィックレンズを挿入して、反射面の合成焦点距離がアナモフィックとなる構成としてもよい。
(実施の形態7)
図9に実施の形態7に係る波長変換レーザ装置600の概略図を示す。実施の形態1〜6と同様の部材については同じ部材番号を付す。図9に示す波長変換レーザ装置600は、広帯域ファイバーレーザ11、集光光学系23、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4および波長変換素子54を具備している。
波長変換レーザ装置600は、基本波レーザ光を発生するレーザ光源に広帯域ファイバーレーザ11を用いている。広帯域ファイバーレーザ11は、励起LD(Laser Diode)11aと、Ybドープファイバ11bと、ファイバーブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)11cとを有し、Ybの非常に広いゲイン範囲の中でFBG11cにより発振波長をロックしている。広帯域ファイバーレーザ11は、FBG11cが広帯域特性を持ち、発振スペクトルがマルチモードとなり、中心波長λ:1064.4nm、スペクトル半値全幅Δλ:0.8nmである。広帯域FBG11cは、グレーティング周期への複数周期の合成、周期へのランダム性の挿入、周期の繰り返し数の低減、などで設計できる。
集光光学系23は、第1凹面ミラー3の反射後にビームウェストが形成されるように基本波レーザ光を集光している。基本波レーザ光は、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4とからなる一対の反射面間を往復する間に、波長変換素子54への入射角を変化させながら波長変換素子54の通過を繰り返す。反射面間を往復する基本波レーザ光のビームウェスト位置PBWは、集光光学系23により波長変換素子54内で点在するように制御されている。波長変換素子54には、分極反転構造を有するMgO:LiNbO3(長さ13mm、幅10mm、厚さ2mm)を用いている。
図10は、波長変換の波長許容幅を表している。図10中、L4は、波長変換レーザ装置600における基本波レーザ光の波長を変化させた場合の合計変換効率を示し、L5は、従来の波長変換レーザ装置における基本波レーザ光の波長を変化させた場合の変換効率を示している。本実施の形態では、入射角を変化させながら波長変換素子54を基本波レーザ光が繰り返し入射し、位相整合条件を変化させて波長変換が繰り返されるため、非常に広い波長許容幅と高変換効率を両立させることができる。波長変換レーザ装置600では、変換効率が高いレーザ光波長範囲が1nm程度もあり、従来よりも当該範囲は広い。すなわち、波長変換レーザ装置600では、波長許容幅(FWHM)は、従来の0.18nmから0.9nmと5倍もひろがっている。従来は、広帯域のレーザ光源を用いても、出力される波長変換レーザ光は、波長許容幅が狭いため狭帯域となってしまっていた。これに対して、本実施の形態では、広帯域のレーザ光源を用いることで、出力される波長変換レーザ光の広帯域化が可能となる。本実施の形態は、レーザ光のスペクトル半値全幅が0.5nm以上である縦マルチモードの広帯域レーザ光源を用いる好ましい形態である。出力する波長変換レーザ光を広帯域化することにより、レーザ光の干渉性を低下させ、映像分野などで問題となる干渉ノイズを低減することができる。特に、スペックルノイズと呼ばれるレーザの干渉性をもたらすランダムノイズの低減ができる。これまで、波長変換レーザ光については高効率の広帯域化ができず、大きな課題となっていたが、本実施の形態に係る波長変換レーザ装置600は当該課題を解決するものである。
本実施の形態は、レーザ光源が広帯域FBGにより波長ロックしたファイバーレーザである好ましい形態である。広帯域FBGにより波長ロックしたファイバーレーザは、FBGにより、発生するレーザ光の中心波長や帯域幅を設計できるとともに、高出力化ができる。前記FBGの性能は、本実施の形態に係る広帯域の波長変換レーザ光を発生させるためのレーザ光源として非常に適し、波長変換レーザ光の広帯域化、高効率化及び高出力化を実現することができる。
波長変換レーザ装置600では、分極反転周期に対する基本波レーザ光の最大角度θが3degとなっている。波長変換レーザ装置600は、波長変換素子54に入射する基本波レーザ光の波長成分の変換を行うために、基本波レーザ光の中心波長をλ、基本波レーザ光のスペクトル半値全幅をΔλとするとき、
cosθ≦λ/(λ+Δλ/2) …(6)
の関係を満たす好ましい形態である。本実施の形態に係る波長変換レーザ装置600は、波長変換素子54の分極反転周期に対する基本波レーザ光の角度が変化することにより広帯域の波長変換を行っているが、(6)式の関係を満たす範囲に基本波レーザ光の角度変化が生じるようにすることで、波長変換素子54に入射する基本波レーザ光の全域にわたる波長幅の変換を行うことができる。(6)式を満たすことで、レーザ光源にあった波長変換レーザ光の広帯域化を行うことができる。
波長変換レ−ザ装置600では、波長変換素子54の温度を変化させることで、出射する波長変換レーザ光の中心波長を変化させることができる。本実施の形態では、波長変換素子54の温度スイッチング機構を有することが好ましい。波長変換素子54の温度スイッチング機構を有することで、波長可変波長変換レーザ光を出射することができる。波長可変波長変換レーザ光は、分析分野などへの応用が期待されている。
波長変換レーザ装置600のレーザ光源として、波長可変シード光発生器を有するファイバーアンプレーザ装置を用いることも好ましい。ファイバーアンプレーザ装置は、注入されたシード光を増幅し出力する。ファイバーアンプレーザ装置は、ゲイン幅が広帯域であるため、シード光の波長を変化させても、高効率の増幅ができる。波長可変シード光発生器は、シード光を出力する共振器に、以下に示すようなスイッチングする機構を有する。すなわち、波長可変シード光発生器は、複数の共振器から任意の共振器を選択するスイッチング機構、もしくは共振器の共振波長をスイッチングする機構を有する。前記スイッチング機構により、シード光の波長を変化させることにより、ファイバーアンプレーザ装置からの出力の帯域を選択することができる。本実施の形態に係る波長変換レーザ装置600は、波長許容幅が非常に大きいため、波長可変シード光発生器を有するファイバーアンプレーザ装置を用いることで、帯域のスイッチングを行いながら、高効率化と高出力化を実現することができる。本実施の形態の構成は、従来にないレーザ特性が得られる特に好ましい形態である。
(実施の形態8)
図11Aおよび図11Bに実施の形態8に係る波長変換レーザ装置700の概略図を示す。図11Aは、波長変換素子5の幅方向を示す波長変換レーザ装置700の概略上面図であり、図11Bは、波長変換素子5の厚さ方向を示す波長変換レーザ装置700の概略側面図である。実施の形態1〜7と同様の部材については同じ部材番号を付す。
図11Aおよび図11Bに示す波長変換レーザ装置700は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー41、波長変換素子5、反射面間被覆35、波長変換素子ホルダ55および吸収レーザ光放熱ヒートシンク56を具備している。
波長変換レーザ装置700は、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー41とからなる一対の反射面間からレーザ光が外部に漏れないようにする反射面間被覆35を有する。反射面間被覆35は、レーザ光を吸収する。第2凹面ミラー41は、その表面(凹面部)に基本波レーザ光および波長変換レーザ光の反射コートがされ、その裏面に透過光が外部に漏れ出さないように遮光コートがされている。反射面間被覆35と第2凹面ミラー41の遮光コートとにより、反射面間にレーザ光を入射する部位と波長変換レーザ光を出射する部位以外は、レーザ光を吸収する被覆部材により反射面および反射面間がカバーされていることになる。図11Bに示すように、波長変換素子5は、波長変換素子ホルダ55により支持されて、反射面間の主光線軸上に設置されている。吸収レーザ光放熱ヒートシンク56は、波長変換素子ホルダ55がレーザ光を吸収することによって発生した熱、および、反射面間被覆35がレーザ光を吸収することによって発生した熱の放熱を行っている。反射面間被覆35は、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー41とを支持する反射面ホルダも兼ねている。
波長変換レーザ装置700は、反射面ホルダもしくは波長変換素子ホルダにヒートシンクを有し、これらのホルダがレーザ光を吸収して発生した熱の放熱を行う好ましい形態である。本実施の形態に係る波長変換レーザ装置700では、各素子におけるレーザ光の反射、散乱、吸収とレーザ光の回折による影響を受け、レーザ光が反射面間の往復を停止し、波長変換素子ホルダおよび反射面ホルダに吸収され、熱となる。特に、波長変換素子5の厚さが薄いとき、回折により往復できなくなったレーザ光が波長変換素子ホルダに吸収され、発熱する。波長変換レーザ装置700では、反射面間の往復を停止したレーザ光の発熱により、高出力時に波長変換レーザ光の出力が変化するということがあった。本実施の形態は、発熱する反射面ホルダもしくは波長変換素子ホルダにヒートシンクを有することで、反射面間の往復を停止したレーザ光による熱量を放熱し、安定した動作を行うことができる。
波長変換レーザ装置700は、反射面間に基本波レーザ光を入射する部位と波長変換レーザ光を出射する部位以外は、レーザ光を吸収する被覆部材により反射面および反射面間をカバーする好ましい形態である。本実施の形態において、反射面間の往復を停止したレーザ光の一部は、反射面間から外部に出力される。この出力されるレーザ光の方向は、反射面や波長変換素子5の配置により変化するため、個体により異なり、取り扱いが困難である。特に、高出力時は、外部の安全性に配慮を払う必要がある。本実施の形態では、反射面間から外部に出力されるレーザ光を被覆部材により吸収し熱に変換して、波長変換レーザ装置700の外部の安全を確保することができる。
(実施の形態9)
図12に実施の形態9に係る波長変換レーザ装置800の概略図を示す。実施の形態1〜8と同様の部材については同じ部材番号を付す。図12に示す波長変換レーザ装置800は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4、波長変換素子5、レンズ6および内部反射型インテグレータ7を具備している。
波長変換レーザ装置800は、第1凹面ミラー3から出射する線状の波長変換レーザ光の均一化を行う内部反射型インテグレータ7と、第1凹面ミラー3から出射する波長変換レーザ光を内部反射型インテグレータ7の入射面に集光するレンズ6とを有する。内部反射型インテグレータ7は、入射した光を側面で内部反射させることで、出射面でレーザ光の重ね合わせを行いビーム強度の均一化を行う。内部反射型インテグレータ7には、全反射を用いるものと、中空型で内部にコーティングを有するものがある。また、内部反射型インテグレータ7には、矩形の入出射面を有するロッドインテグレータや円形の入射面を有するファイバー型のものがある。
本実施の形態に係る波長変換レーザ装置800では、波長変換レーザ光が線状の不均一な強度分布で第1凹面ミラー3から出力されるため、取り扱いが困難である。また波長変換レーザ光の周波数成分により第1凹面ミラー3から出力される角度も異なる。このため、第1凹面ミラー3から出力されるビームの均一化ということが課題となる。本実施の形態は、第1凹面ミラー3から出力される波長変換レーザ光の強度および周波数成分の平均化を行い、低干渉性で強度分布が均一化された波長変換レーザ光を得ることができる。本実施の形態では、レンズ6で内部反射型インテグレータ7の入射面へ集光するときに、波長変換レーザ光の角度方向の平均化を行うことで周波数平均化を行い、内部反射型インテグレータ7で波長変換レーザ光の強度の平均化を行う。
特に、内部反射型インテグレータ7は、矩形の入射面を有し、長辺方向が、反射面間に入射するレーザ光の主光線軸に対するずれが大きい方向に、一致することが好ましい。長辺方向を上記方向とすることで、波長変換レーザ光の内部反射型インテグレータ7への取り込み効率を大きくし、伝播損失をなくすことができる。
(実施の形態10)
図13に実施の形態10に係る波長変換レーザ装置900の概略図を示す。実施の形態1〜9と同様の部材については同じ部材番号を付す。図13に示す波長変換レーザ装置900は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー3、第2凹面ミラー4および波長変換素子57を具備している。
波長変換素子57は、周期状の分極反転構造X2に対し垂直方向に温度勾配を有する。図13に示すように、波長変換素子57は、同図の上下方向である波長変換素子57の幅方向に温度勾配を有する。このような温度勾配を波長変換素子57に形成するために、波長変換素子57における幅方向の一方の端面には、加熱または冷却を行う図示しない温度制御素子が設けられている。温度制御素子としては、例えば、ペルチェ素子やヒーターを用いることができる。
波長変換素子57には、第1凹面ミラー3と第2凹面ミラー4との間を往復する基本波レーザ光が、入射角を変化させながら繰り返し入射する。このとき、波長変換素子57は、入射角変化に加え、波長変換素子57の温度勾配により、波長変換素子57を通過するレーザ光の位相整合条件を変化させる。この波長変換素子57の温度勾配により、入射角が同じ場合でも、位相整合条件が変化し、波長変換が行われるレーザ光の中心波長が変化する。本実施の形態は、非常に広い波長域の変換が可能な広帯域波長変換レーザ装置として好ましい形態である。波長変換素子57の温度勾配を、周期状の分極反転構造X2の垂直方向とすることにより、レーザ光の各パス内での波長変換素子57の温度変化を抑え、波長変換効率の低下を回避している。
波長変換素子57の上記温度勾配は、線形だけでなく、非線形としてもよい。波長変換素子57内の最高温度と最低温度との差は、1℃以上であることが好ましい。このように温度差を1℃以上とすることで、位相整合条件を波長変換素子57内で十分に変化させることができる。
(実施の形態11)
図14に実施の形態11に係る波長変換レーザ装置1000の概略図を示す。実施の形態1〜10と同様の部材については同じ部材番号を付す。図14に示す波長変換レーザ装置1000は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凹面ミラー32、第2凹面ミラー42および波長変換素子50を具備している。
波長変換レーザ装置1000は、基本波レーザ光源1が発生する基本波レーザ光の第3高調波を出力するものである。波長変換レーザ装置1000は、波長変換素子50を具備している。この波長変換素子50は、2種類の周期状の分極反転構造を有している。具体的には、波長変換レーザ装置1000は、基本波から第2高調波に変換する周期状の分極反転構造RPAと、基本波と第2高調波とから第3高調波に変換する周期状の分極反転構造RPBとを有している。
また、波長変換レーザ装置1000は、第1凹面ミラー32、第2凹面ミラー42および色収差補正素子8を具備している。第1凹面ミラー32は、基本波と第2高調波を反射し、第3高調波を透過する。第2凹面ミラー42は、基本波および第2、第3高調波を反射する。色収差補正素子8は、第1凹面ミラー32と波長変換素子50との間および第2凹面ミラー42と波長変換素子50との間にそれぞれ設けられており、基本波と第2高調波の光路が波長変換素子50内で一致するように、色収差の補正を行っている。
本実施の形態は、2種類以上の周期状の分極反転構造をもつ波長変換素子50と、複数波長を反射する反射面を用いる好ましい形態である。本実施の形態では、波長変換素子50にレーザ光が繰り返し入射することを利用して、広い許容幅と高変換効率が可能である。本実施の形態では、2種類以上の周期状の分極反転構造をもつ波長変換素子50と複数波長を反射する反射鏡を用いることで、第3高調波への変換などの様々な種類の波長変換を、高い安定性を有しながら高変換効率で行うことができる。
色収差補正素子8は、第3高調波、和周波または差周波などを発生させるときのように、2種類以上の波長のレーザ光を反射面間で反射させることを繰り返す場合に用いることが好ましい。本実施の形態では、波長変換素子50の波長分散により、2種類以上の波長のレーザ光が反射面間で反射を繰り返すうちに、レーザ光の波長により光路のシフトおよび角度変化が生じてしまうという問題がある。色収差補正素子8は、これを補償し、波長変換素子50内で、2種類以上の波長の光路を一致させ、効率のよい波長変換をもたらすことができる。色収差補正素子8は、波長変換素子50と逆の分散を持つ素子や、プリズム形状を有する素子で構成される。
なお、本実施の形態では、レーザ光源に複数種類の波長のレーザ光を発する光源を用いて、和周波や差周波を発生する波長変換も行うことができる。この場合、ダイクロイックミラーなどを用いて複数波長のレーザ光を同軸化した後、集光光学系により反射面間にレーザ光を入射することが好ましい。
(実施の形態12)
図15に実施の形態12に係る波長変換レーザ装置1100の概略図を示す。実施の形態1と同様の部材については同じ部材番号を付す。図15に示す波長変換レーザ装置1100は、基本波パルスレーザ光源15、集光光学系2、第1凹面ミラー33、第2凹面ミラー45および波長変換素子58を具備している。
基本波パルスレーザ光源15は、レーザ光のパルス幅がμsec以下のパルス出射ができるNd:YAGを用いている。基本波パルスレーザ光源15の発振波長は1.064μmである。なお基本パルスレーザ光源15はパルス出射ができればよく、ファイバーレーザやLDを用いることができる。波長変換素子58には分極反転構造を有するMgO:LiTaO3(PPLT:Periodically Poled Lithium Tantalate)を用い、その形状は直方体(長さ5mm、幅8mm、厚さ1mm)である。また、波長変換素子58の分極反転周期は8μmである。
第1凹面ミラー33の焦点距離fはf=4、第2凹面ミラー45の焦点距離fはf=5であり、当該ミラー間の距離は11.7mmである。PPLT(波長変換素子58)の表面には、基本波レーザ光と波長変換光のARコートが施されている。また、第1凹面ミラー33の凹面部には基本波レーザ光のHR(High Reflectance)コートと波長変換光のARコートが施されている。また、第2凹面ミラー45の凹面部には基本波レーザ光および波長変換光のHRコートが施されている。
基本波パルスレーザ光源15から出射される基本波レーザ光のパルス幅は20nsecであり、その繰り返し周波数は50kHzである。このとき、集光光学系2から波長変換素子58に直接入射する最初のパスのみの波長変換効率は50%であり、複数のパスを合計した波長変換光から計算される合計波長変換効率は78%であった。本実施の形態では、最初のパスでの波長変換効率が高くならないように、最初のパスで形成されるビームウェストiのビームウェスト半径を200μmとし、最初以外のパスのビームウェスト(ii、iii、・・・)の集光径(ビームウェスト径)に比べて最初のパスの集光径をより大きくしている。
本実施の形態は、基本波レーザ光をパルス状に出射するレーザ光源と、周期状の分極反転構造を有する波長変換素子とを用いるものであって、基本波レーザ光のパルス幅をT、波長変換素子の素子長をL、分極反転周期をΛ、基本波レーザ光の波長をλ、光速をcとするとき、
(L・λ)/(0.3・Λ・c)<T …(7)
の関係を満たし、基本波レーザ光が波長変換素子を最初に通過する光路から発生する波長変換光の出力が、波長変換素子の複数の光路から発生した波長変換光の合計出力の2/3未満である好ましい形態である。
本実施の形態のように基本波レーザ光をパルス状に出射することで、瞬間的なパワー強度を高くすれば、波長変換効率を高くすることができる。しかし、パルス幅を短くしすぎると、基本波レーザ光の波長が拡がり、波長変換素子内で位相整合できなくなって波長変換が行われ難くなる場合がある。このとき、上式(7)を満たすように、基本波レーザ光のパルス幅Tを、(L・λ)/(0.3・Λ・c)よりも長くすることで、基本波レーザ光の波長拡がりを抑え、波長変換素子内で安定して位相整合を行い、波長変換光を出力することができる。また、基本波レーザ光をパルス状にした場合、最初に波長変換素子に入射するパスでの瞬間的な波長変換光の光強度が増大し、ビームウェスト位置で波長変換素子が破壊したり、発熱が生じたりする可能性がある。本実施の形態では、最初に波長変換素子を通過する光路から発生する波長変換光の出力を全体の合計出力の2/3未満とすることで、最初の光路において波長変換光が集中して発生するのを防ぎ、波長変換素子の破壊や発熱を抑え、更なる高波長変換効率と安定した動作の両立を実現することができる。より好ましくは、最初に通過する光路の波長変換光の出力を合計出力の1/2未満とする。このように1/2未満とすることで、波長変換レーザ装置は、100W以上の高いピークパワーが必要な場合でも、安定した動作が可能となる。
(実施の形態13)
図16に実施の形態13に係る波長変換レーザ装置1200の概略図を示す。実施の形態1と同様の部材については同じ部材番号を付す。図16に示す波長変換レーザ装置1200は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、第1凸面プリズム36、第2凸面プリズム46および波長変換素子59を具備している。
前記第1凸面プリズム36および第2凸面プリズム46は、基本波レーザ光の反射面となる光学部材であり、凸面側に基本波レーザ光の反射コートがされ、もう一方の端面は平面状となっている。第1および第2凸面プリズム36、46の平面側は、それぞれ波長変換素子59に接合され、波長変換素子59と第1および第2凸面プリズム36、46とは一体化されている。また、波長変換素子59と第1および第2凸面プリズム36、46との境界界面は、不要な反射が生じない様に、これらの材料の屈折率をあわせている。
第1凸面プリズム36の凸面は、波長変換光のARコートを有し、波長変換光が第1凸面プリズム36から出力されるようになっている。第1凸面プリズム36と第2凸面プリズム46の凸面はそれぞれ、曲率半径25mmと曲率半径20mmの球面形状であり、球面中心は波長変換素子59の中央軸と一致している。波長変換素子59には分極反転構造を有するMgO:LiNbO3(PPLN)を用い、その形状は直方体(長さ20mm、幅10mm、厚さ1mm)である。第1および第2凸面プリズム36、46は、波長変換素子59との接合のために波長変換素子59に形状をあわせてあり、厚さを1mmとしている。第2凸面プリズム46は、集光光学系2から基本波レーザ光が波長変換素子59へ入射する部分のみ切断されており、この切断部が基本波レーザ光の入射口となっている。
基本波レーザ光は、2つの凸面プリズムにより反射され、波長変換素子59への入射角を変化させながら通過を繰り返し、波長変換素子59内でビームウェストを点在させている。こうして、波長変換レーザ装置1200は、安定した高効率の波長変換を可能とする。
本実施の形態は、レーザ光の反射面となる光学部材が、波長変換素子に接合され、波長変換素子とレーザ光反射面となる光学部材とが一体化している好ましい形態である。反射面となる光学部材と波長変換素子とを接合することで、反射面と波長変換素子との位置関係のずれがなくなるとともに、その調整も必要なくなり、装置の信頼性の向上と製造工程数の削減が可能となる。
なお、波長変換素子に接合する光学部材は、波長変換素子と屈折率を合わせなくとも、接合面に反射が生じない様にコーティングを有する構成としてもよい。好ましくは、波長変換素子に接合される光学部材は、射出成型で波長変換素子上に形成して作製する。こうすることで、波長変換素子を基準に反射面を作製することができ、かつ低コストでの作製が可能となる。
(実施の形態14)
図17に実施の形態14に係る波長変換レーザ装置1300の概略図を示す。実施の形態1と同様の部材については同じ部材番号を付す。図17に示す波長変換レーザ装置1300は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、結合ミラー38、第2凹面ミラー4および波長変換素子5を具備している。
波長変換レーザ1300は、基本波レーザ光の反射面でかつ波長変換光の透過面となる部材が、結合ミラー38となっている以外は、実施の形態1と同じである。結合ミラー38は、その凹面側が基本波レーザ光の反射面となり、基本波レーザ光の反射を行い、基本波レーザ光の波長変換素子5への再入射と集光を行う。また、結合ミラー38は、波長変換光を透過する、そして、結合ミラー38における波長変換光の出力面側には、各パスから発生した波長変換光それぞれに対応するレンズアレイが形成されている。このレンズアレイにより、各パスの集光が行われると共に、パスの合成が行われ、各パスから発生した波長変換光は1点に集光している。本実施の形態では、4つのパスからの光を1点に集光している。結合ミラー38は、各パスに対応するレンズを有する事で、複数のビームからなる出力光を1点にまとめることが可能となる。結合ミラー38により、波長変換素子5内で分散したビームをまとめることができるのである。
本実施の形態は、波長変換素子内で異なるパスから発生した波長変換光に対して、パス毎に対応するレンズアレイを有する好ましい形態である。パス毎に対応するレンズアレイを有する事で、複数のビームからなる出力光を収束させることができる。特にレンズアレイは、本実施の形態のように基本波レーザ光の反射面となる光学部材に設けることが好ましい。これにより、基本波レーザ光の反射面を調整することで、各パスとレンズアレイの調整を同時に行うことができる。
なお、基本波レーザ光の反射面をもつ部材における波長変換光のみを透過する面は、レンズアレイの他にも、各出射ビームに対して入射角度をそれぞれ異ならせた複数の平面、複数のパターンを有する回折格子など、用いる機器に合わせた形状に加工をすることで、出力する波長変換光を所望の強度分布にすることができる。
(実施の形態15)
本発明の他の目的は、波長変換素子に光吸収などが生じる場合でも高い変換効率が得られ、多モードの波長変換と高出力の変換波の出射を可能とした波長変換レーザ装置を提供することにある。以下に、この目的を達成する実施の形態を説明する。
図18Aは本発明の実施の形態15における波長変換レーザ装置1400の概略構成図である。図18Bは、レーザ光の主光線のみを示し、レーザ光が反射面で反射する度に波長変換素子に対する角度を変化させながら通過する様子を示している。図18Aに示す波長変換レーザ装置1400は、レーザ光源1aおよび1b、集光光学系24および波長変換素子10を具備している。
波長変換レーザ装置1400は、2つの異なる波長のレーザ光を出射するレーザ光源1aおよび1bをもつ。レーザ光源1aは1060nmを発振するファイバーレーザからなり、レーザ光源1bは1080nmを発振するファイバーレーザからなる。ファイバーレーザは、Ybドープファイバからなり、発振波長はファイバーブラッググレーティング(FBG)によりロックされている。レーザ光源1aおよび1bを出射した光は、コリメータ24aを経て、ダイクロイックミラー24bで合波される。合波された光は集光レンズ24cにより集光され、入射部11より波長変換素子10に入射する。集光光学系24は、前記したコリメータ24a、ダイクロイックミラー24bおよび集光レンズ24cからなり、レーザ光を波長変換素子10に集光して入力させる。
波長変換素子10は、周期状の分極反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、長さ10mm、幅5mm、厚さ2mmであり、図18Aおよび図18Bの左右にあたるレーザ光の入出射端面は凸型形状に研磨されている。同図は波長変換素子10の上面図であり、同図の左右が波長変換素子10の長さ方向、同図の上下が波長変換素子10の幅方向である。MgO:LiNbO3は、その厚さ方向が結晶のz軸となり、当該z軸の分極が反転され、図18Bの模式図に示す方向(波長変換素子10の長さ方向)に6.9μmの周期で分極反転が形成されている。波長変換素子10は、波長変換素子に対するレーザ光の角度を利用して、上記2つの波長(1060nm、1080nm)のレーザ光の第2高調波である「530nm」および「540nm」と、当該2つの波長の和周波である「535nm」の3つの波長変換光HWを発生させる。
波長変換素子10の一方の端面12は、曲率半径12mmの凸型球面で、上記レーザ光を反射するための赤外光の反射コートと、波長変換光である緑色光のARコートが形成されている。前記端面12は、複数のビームからなる波長変換光の出射面となっている。波長変換素子10の他方の端面13は、曲率半径が8mmの凸型球面で、赤外光と緑色光の反射コートが形成されている。前記の端面12および端面13は、赤外光であるレーザ光を反射する2枚の反射面となっている。波長変換素子10の入射部11は、端面13の一部に赤外光の反射コートがない部位を作製することによって形成され、レーザ光を反射面間に入射させている。波長変換素子10では、前記の反射コート形成時にその一部をマスクすることで、入射部11を作製している。端面12および端面13は、それぞれの球面の曲率中心が対面するように配置されている。波長変換レーザ装置1400では、端面12と端面13の曲率中心を結ぶ軸を波長変換レーザの主光線軸MLと呼ぶ。
端面12と端面13は、レーザ光に対し凹面ミラーとして働き、集光面となって、波長変換素子10を通過するレーザ光に集光力を与え、集光点(ビームウエスト)を形成する。そして、集光面は曲面となっているため、レーザ光は、反射面間を往復するときに、波長変換素子10に対する角度を変化させながら波長変換素子10の通過を繰り返すこととなる。ところで、端面12と端面13のみの集光力では、集光点が1点に収束してしまう。これを回避するため、集光光学系24により、集光したレーザ光を波長変換素子10に入射させている。反射面間にある集光面と集光光学系2とにより、波長変換素子10を通過するレーザ光に複数のビームウェストを形成させ、波長変換素子10内でビームウェスト位置PBWを点在させている。ビームウェスト位置PBWでは光強度が高まり、光路あたりの変換効率が高められる。もしビームウェスト位置が一箇所のみとなると、光吸収による波長変換素子10の発熱部が1点に集中することとなり、波長変換素子10の破壊や、温度の不均一による変換効率の劣化が生じる。
入射部11から反射面間に入射するレーザ光は、主光線軸MLと略平行に入射され、周期状の分極反転構造に対し傾きを持たず、周期状の分極反転構造を横断する角度で波長変換素子10を通過し、530nmの波長変換光を発生させる。レーザ光および波長変換光が端面12に達すると、波長変換光は端面12から出射される一方、レーザ光は端面12で反射され集光する。このとき、集光光学系24によりレーザ光は集光されているため、端面12の焦点位置と異なり、それよりも前の位置に集光点が形成される。入射部11は主光線軸から2mmだけ波長変換素子10の幅方向にシフトした位置にあり、端面12においてレーザ光は、主光線軸から約19deg傾いて反射される。レーザ光は、周期状の分極反転構造を大きな角度をもって通過するので、レーザ光に対する分極反転の周期が実質的に長くなることとなる。主光線軸から約19deg傾いたこの光路では、1080nmの第2高調波発生に対し位相整合し、波長変換素子10は540nmの波長変換光を発生することとなる。540nmの波長変換光は端面13で反射された後、端面12から出力される。レーザ光は、端面13と端面12とを反射する毎に波長変換素子10に対する角度を変化させながら波長変換素子10を通過する。そして、レーザ光の主光線軸MLからの傾きが約14degのとき、1060nmと1080nmの和周波の発生に位相整合し、波長変換素子10は535nmの波長変換光を発生させる。535nmの波長変換光も、端面12から出射される。また傾きが0degに近いレーザ光の通過光路では、1060nmの第2高調波に位相整合し、530nmの波長変換光が発生し、端面12から出射される。
本実施の形態は、2枚のレーザ光反射面間に波長変換素子と集光面と波長変換光出射面を有し、レーザ光を集光光学系により反射機能のない部位より反射面間に入射させ、レーザ光が反射面間を往復するときに前記波長変換素子に対する角度を変化させながら波長変換素子の通過を繰り返すことで、位相整合条件を変化させて波長変換光の発生を繰り返すようにし、集光光学系および集光面により複数のビームウェスト位置を波長変換素子内で点在させ、複数のビームからなる波長変換光を出射することを特徴としている。
本実施の形態は、レーザ光の波長変換素子に対する角度をパスにより変化させることで、位相整合条件を変化させ、同じ波長変換素子内で、多モードの位相整合を可能とする。また、レーザ光が位相整合条件を変化させながら波長変換素子を多数回通過することで、トータルで非常に幅広い範囲の位相整合と高い変換効率を可能とする。幅広い範囲の位相整合により、広い帯域の波長や広い温度範囲の波長変換を行うことができる。本実施の形態では、反射面間に集光面をもつことで、往復するレーザ光に集光力を与え、レーザ光の光路が長くなっても光強度が高い状態を保ち、変換効率を高めることができる。また集光面により、波長変換素子を通過する光路の角度変化を行う。集光光学系と反射面間の集光面により、ビームウェスト位置を波長変換素子内で点在させることで、波長変換素子の光吸収による損傷や変換効率の劣化を回避することができる。また複数のビームからなる波長変換光を出射することで、低干渉の波長変換光を得ることができる。
本実施の形態は、レーザ光源が発振波長の異なる複数の光源からなり、前記複数のレーザ光源から出射される各レーザ光の第2高調波と、複数のレーザ光間の和周波もしくは差周波と、を含む波長変換光を波長変換素子内で発生し、出射する好ましい形態である。本実施の形態では、2つの第2高調波と和周波を同時に出射している。発振波長の異なる複数のレーザ光を本実施の形態の構成に適用することで、縦モードが異なる多モードの波長変換光を同時に出力することができる。縦マルチモードの波長変換光は、干渉ノイズが小さいため、映像や照明の分野に広く用いることができる。出射される波長変換光の干渉性を低くするためには、複数のレーザ光源の中心波長は互いに0.1nm以上異なることが好ましい。また、同じ波長変換素子内で、レーザ光の角度変化に基づく位相整合条件変化により、各発振波長に対応する多モードの波長変換を行うため、最も短い発振波長と最も長い発振波長との違いは40nm未満であることが好ましい。
波長変換素子10は、その端面が凸型形状のレーザ光反射面となり、集光面とレーザ光反射面の役割を同時に担う好ましい形態である。波長変換素子10の端面をレーザ光反射面および集光面とすることで、波長変換素子の外部に反射面や集光面といった光学部品を配置する構成に比べ、部品を減らし、調整工程を減らすことができる。また、構成をコンパクトにすることができる。特に、本実施の形態のように波長の異なる複数のレーザ光を用いる場合、波長変換素子の端面を凸型反射面とすることで、波長変換素子の色分散によるレーザ光の分離をなくし、複数のレーザ光の波長が異なっても波長変換素子内で繰り返し同じ光路を伝播させることができ、モード間の波長変換と高変換効率を可能とする。
レーザ光源には、ファイバーレーザの他、半導体レーザ、固体レーザなど各種レーザ光源を用いることができる。集光光学系は、レーザ光を入射部から反射面間に入射させると共に、レーザ光の集光制御を行うことができるものであればよく、各種光学部品を用いることができる。波長変換素子には、各種非線形材料を用いることができる。波長変換素子には、例えば、LBOやKTP、周期状の分極反転構造をもつLiNbO3やLiTaO3を用いることができる。
なお、本実施の形態では、波長変換光の出射面を波長変換素子の端面の一方(端面12)のみとしているが、両端面から変換波を出力するように、端面13にも波長変換光の透過コートを施してもよい。
(実施の形態16)
図19は本発明の実施の形態16における波長変換レーザ装置1500の概略構成図である。
波長変換レーザ装置1500は、レーザ光源であるワイドストライプLD1cと、集光光学系25と、レーザ光の反射面且つ集光面となる凹面ミラー37およびシリンドリカル凹面ミラー47と、波長変換素子60とを具備している。
ワイドストライプLD1cは、中心発振波長が1064nm、ストライプ幅が100μmであって、縦横マルチモードの発振をする高出力LDである。波長変換素子60は、長さ25mm、幅5mm、厚さ1mmであり、レーザ光進行方向が長さ方向である。シリンドリカル凹面ミラー47は、波長変換素子60の幅方向に曲率を有し、その端部(図19の手前側)が切断されており、当該切断部位が反射面間へのレーザ光の入射部となっている。ワイドストライプLD1cから出射したレーザ光は、凹面ミラー37およびシリンドリカル凹面ミラー47の曲率中心を結ぶ主光線軸から波長変換素子60の幅方向にずれて、入射部から反射面間に入射する。レーザ光は、曲率を有する凹面ミラー37およびシリンドリカル凹面ミラー47での反射により、波長変換素子60の幅方向に入射角度を変化させながら、波長変換素子60を通過する。レーザ光は、集光光学系25により波長変換素子60内でビームウェストを形成した後、凹面ミラー37に到達し、その後反射面間(凹面ミラー37とシリンドリカル凹面ミラー47との間)を往復する。集光光学系25の集光力および2つのミラー37、47の曲率により、レーザ光は、反射面間を往復する間に、波長変換素子60内の異なる位置に複数のビームウェストを形成する。波長変換レーザ装置1500では、シリンドリカル凹面ミラー47を用いることにより、レーザ光の主光線軸方向で異なるビームウェストを形成し、ビームウェスト位置(集光点)PBWの分散を促進し、波長変換素子60内における光強度の集中を回避することができる。
波長変換素子60は、周期状の分極反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、その長手方向に均一に周期状の分極反転構造が形成されている。波長変換素子60では、集光面の曲率によりレーザ光が角度を変化させながら当該波長変換素子60を通過することで、レーザ光の通過周期を変化させ、レーザ光の第2高調波と縦マルチモード間の和周波である532nmを中心とする波長変換光を発生させる。凹面ミラー37は、曲率半径25mmの球面ミラーで、レーザ光の波長1064nmのHRコートと波長変換光の波長532nmのARコートを有し、波長変換光の出射面となっている。シリンドリカル凹面ミラー47は、波長変換素子60の幅方向に20mmの曲率を有し、レーザ光と波長変換光の反射コートを有する。凹面ミラー37とシリンドリカル凹面ミラー47との間の距離は約36mmであり、当該2枚のミラー37、47の焦点距離合計の近傍となっている。この構成により、レーザ光は波長変換素子60を10回以上通過する。本実施の形態では、レーザ光が波長変換素子60への角度を変化させながら波長変換素子60の通過を繰り返し、波長変換素子60内にビームウェスト位置PBWを点在させることで、広い位相整合条件の範囲を有し、高変換効率と安定した出力を可能とする。
ワイドストライプLD1cは、そのストライプの幅方向と波長変換素子60の幅方向とが一致するように配置される。ここで波長変換素子60の幅方向とは、レーザ光が反射面間を往復するときに長変換素子60への入射角度を変化させる方向を指す。レーザ光は前記幅方向に入射角度を変化させるため、波長変換素子60は幅が大きな形状である必要がある。小型化と低コストのために、波長変換素子60はレーザ光の通過面における幅と厚さ方向では、幅方向の方を長くする必要がある。波長変換素子60は、直方体の形状で、幅が厚さよりも長い。また、前記ストライプの幅方向とは、ワイドストライプLD1cによりレーザ光を絞りきれない方向を指す。レーザ光源と波長変換素子との間にミラーなどが配置されることにより、反射面間にレーザ光が入射する前にレーザ光の方向が変化する場合は、波長変換素子の幅方向とレーザ光の絞りきれない方向を一致させる配置とする。
集光光学系25は、コリメータ25aおよび集光レンズ25bを含み、レーザ光を反射面に入射する前に波長変換素子60内で集光点を形成する。さらに、集光光学系25は、コリメータ25aと集光レンズ25bとの間にλ/2板25cを含み、レーザ光の偏光方向とLiNbO3のz軸方向を揃える役割を果たしている。
本実施の形態は、レーザ光源がマルチモードのレーザ光を出射するワイドストライプLDからなり、ワイドストライプの活性層の幅方向と前記波長変換素子の幅方向が一致し、レーザ光が反射面間を往復する間に波長変換素子が複数ビームからなるマルチモード波長変換光を発生させ、出射する好ましい形態である。従来、ワイドストライプLDはマルチモード発振のため、変換効率が低く、波長変換の基本波光源として用いられなかった。しかし、本実施の形態の構成は、位相整合条件の多様化と、レーザ光の波長変換素子への複数回通過とによる変換効率の上昇が行えるため、発光効率の高いワイドストライプLDを用いた波長変換レーザ装置の実現が可能となる。
また、本実施の形態の構成では、レーザ光が波長変換素子に対する角度を変化させながら波長変換素子を通過するため、当該角度が変化する波長変換素子の幅方向に長さがあり(すなわち、波長変換素子のレーザ光通過面における幅方向が厚さ方向より長く)、ビーム径に対する許容度が大きいという特徴がある。この波長変換素子の幅方向とワイドストライプLDのストライプ幅方向とを一致させることで、ワイドストライプLDを用いたときでも、レーザ光の波長変換素子への複数回通過と位相整合条件の多様化とを実現し、変換効率が高いマルチモード波長変換光の出力が可能となる。またワイドストライプLDの発光効率が高いことから、波長変換レーザ装置としての効率を高めることもできる。
また、実施の形態の波長変換レーザ装置は、縦マルチモードの波長変換光を出射することで、映像や照明用途に最適な低干渉レーザを得ることができる。なお、実施の形態のワイドストライプLDとは、5μm以上のストライプ幅をもちマルチモード発振するLDを指す。特に、高変換効率を得るためにストライプ幅は、5μm以上200μm以下が好ましい。200μmよりもストライプ幅が広いと、光強度が著しく低くなり、変換効率が低下する。また200μmよりもストライプ幅が広いと、電界強度が拡がりすぎ、ワイドストライプLDの発光効率が低下するからである。
(実施の形態17)
図20は本発明の実施の形態17における波長変換レーザ装置1600の概略構成図である。
波長変換レーザ装置1600は、バータイプLD1d、集光光学系となるレンズアレイ26および波長変換素子61を具備している。バータイプLD1dは、1040nmを発振するシングルモードLDストライプが1mm間隔で2個同じスタック内にあり、2本のレーザ光を出射する。レンズアレイ26は、前記LDストライプと同じ間隔でアレイ化され、それぞれのストライプから出射されたレーザ光を波長変換素子61内に焦点をもつように集光する。レンズアレイ26は、波長変換素子61のレーザ光入射部となる61aおよび61bから波長変換素子61内に2本のレーザ光をそれぞれ入射させる。
波長変換素子61は、周期状の分極反転構造を有するLiTaO3結晶からなり、長さ12mm、幅1.5mm、厚さ0.8mmであり、レーザ光の入射側端面および波長変換光の出射側端面に凸型の加工がされている。LiTaO3結晶のz軸の方向は、波長変換素子61の幅方向であり、バータイプLD1dのバー方向と一致している。また、周期状の分極反転構造は、周期の方向が波長変換素子61の長さ方向になるように形成されている。波長変換素子61において、2本のレーザ光は、周期状の分極反転構造により波長変換光である第2高調波に変換される。また、2本のレーザ光がオーバーラップするときは、波長変換素子61は和周波も発生させる。
波長変換素子61において、レーザ光の入射面となる凸型シリンドリカル端面61cは、凸型シリンドリカルに加工され、バータイプLD1dのバー方向に曲率を持ち、その曲率半径は8mmとなっている。この凸型シリンドリカル端面61cは、入射部61aおよび61bを除き、レーザ光および波長変換光の反射コートをもち、レーザ光の反射面且つ集光面になっている。前記入射部61aおよび61bは、レーザ光のARコートをもち、レーザ光を反射面間に挿入する入り口となっている。
また、波長変換素子61において、凸型シリンドリカル端面61cとは長さ方向逆側に位置する凸型球面端面61dは、凸型の球面に加工され、その曲率半径は16mmである。凸型球面端面61dは、レーザ光の反射コートと波長変換光のARコートを持ち、レーザ光に対する反射面且つ集光面であると共に、波長変換光の出射面となっている。凸型球面端面61dは、凸型球面形状であるため波長変換光に対するレンズの集光作用も有し、波長変換光の出射ビームが拡がるのを防ぐ。
波長変換レーザ装置1600では、波長変換素子61の2つの端面61c、61dがレーザ光の反射面且つ集光面となり、レーザ光が波長変換素子61に対する角度を変化させながら波長変換素子61を通過し、当該角度によって異なった位相整合条件で波長変換素子61が波長変換光を発生させている。また、波長変換レーザ装置1600は、集光光学系と集光面によって、波長変換素子内で複数のビームウェスト位置PBWを点在させることにより、安定した高出力特性が得られる。
本実施の形態は、レーザ光源が複数のレーザ光を発射する複数の光源からなり、前記複数のレーザ光は、反射機能のない異なる箇所から前記2枚のレーザ光反射面間に入射する好ましい形態である。このように、波長変換素子が1つのまま、レーザ光源を増やすことで、波長変換光の出力を増加させることができ、波長変換レーザ装置の高出力化及び小型化を可能とする。また、本実施の形態は、複数のレーザ光を合波する光学系も不要となり、低コスト化と小型化が実現できる。実施の形態は、レーザ光の波長変換素子への入射角度を変化させることで、広い位相整合条件の範囲をもつことから、異なる箇所から波長変換素子へ入射させた複数のレーザ光を同時に波長変換することもできる。また、実施の形態は、波長変換素子内でのレーザ光のオーバーラップを利用して、和周波や差周波などの複数のレーザ光を用いる波長変換も行うことができ、多モードの波長変換光を得ることも可能である。高出力の場合、レーザ光の波長変換素子への入射部が損傷することがあるが、本構成を用いて、複数のレーザ光の入射部を異なる箇所とすることで、波長変換素子の損傷を防ぎ、信頼性の高い高出力波長変換レーザ装置が得られる。
本実施の形態に係る波長変換レーザ装置1600は、複数のレーザ光源にバータイプLD(マルチストライプLD)を用い、集光光学系にレンズアレイ26を用いた好ましい形態である。この構成により、コンパクトに複数の光源とこれに対応する集光光学系を配置することができ、複数の光源と集光光学系との調整も容易となる。また、波長変換レーザ装置の小型化が可能となる。波長変換素子61は、その幅および厚さが2mm以下であり、端面がレーザ光の反射面である好ましい形態である。この構成により、波長変換レーザ装置の小型化が実現できるとともに、波長変換光の出射面積も小さくできるので、波長変換光をファイバーなどに導光することが可能となる。
(実施の形態18)
図21Aおよび図21Bは本発明の実施の形態18に係る波長変換レーザ装置1700の概略構成図である。実施の形態15〜17と同様の部材については同じ部材番号を付す。
波長変換レーザ装置1700は、レーザ光源1aと、集光光学系27と、波長変換素子62と、レーザ光の反射面となる第1凹面ミラー34および第2凹面ミラー48とを具備している。レーザ光源1aは、1060nmを発振するYbドープファイバレーザである。集光光学系27は、コリメータ27aと集光レンズ27bとからなる。集光レンズ27bは、波長変換素子62の厚さ方向に偏芯しており、レーザ光を当該厚さ方向に傾ける。第2凹面ミラー48は、D字の形に切断されており、当該切断部がレーザ光の反射面間への入射部となっている。
第1凹面ミラー34は、曲率半径25mmの球面で、レーザ光の反射コートと波長変換光のARコートを有し、波長変換光の出射面となっている。第2凹面ミラー48は、曲率半径20mmの球面で、レーザ光および波長変換光の反射コートをもつ。第1凹面ミラー34と第2凹面ミラー48とは、曲率中心が対面するように配置され、曲率中心を結ぶ軸を波長変換レーザ装置の主光線軸MLと呼ぶ。
集光光学系27により、主光線軸MLから波長変換素子62の幅方向にシフトした位置から反射面間に入射されたレーザ光は、波長変換素子62内でビームウェストを形成した後、第1凹面ミラー34に達する。レーザ光は、波長変換素子62の厚さ方向に対しては、集光光学系27により、主光線軸MLに対し傾いて入射している。レーザ光は、主光線軸MLと入射した位置のシフト方向に対し、図21Aのように、角度を変化させて、波長変換素子62を繰り返して通過する。また、図21Bのように、レーザ光は、波長変換素子62の厚さ方向に対しても、主光線軸MLから傾いて入射することで、当該厚さ方向の角度変化を繰り返すこととなる。こうして、波長変換素子62を通過する角度を波長変換素子62の幅方向と厚さ方向の2軸で変化させて、レーザ光は波長変換素子62の通過を繰り返す。レーザ光の集光点も波長変換素子62の幅方向と厚さ方向の2軸で点在している。
波長変換素子62は、周期状の分極反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、長さ25mm、幅5mm、厚さ2mmの直方体形状である。波長変換素子62は、その長さ方向に反転周期をもち、波長変換光であるレーザ光の第2高調波を発生させる。様々な角度でレーザ光が波長変換素子62を通過するため、複数の光路のトータルで広い位相整合条件の範囲をもっている。
本実施の形態は、レーザ光が波長変換素子を通過する角度を2軸に変化させて、波長変換素子の通過を繰り返す好ましい形態である。2軸方向に角度変化をさせることで、波長変換素子を通過する光路の体積を増やし、光吸収で波長変換素子に生じる熱を分散させることができる。また、波長変換素子内のレーザ光のビームウェスト位置PBWも2軸に対し分散することで、ビームウェスト位置PBWが集中することを回避できる。高出力時は、波長変換素子の光吸収による発熱で変換効率が低減するが、発熱部を分散させることで温度上昇を緩和し、変換効率が低減することを防ぐことができる。
波長変換レーザ装置1700では、集光光学系27により波長変換素子62内に形成される最初のビームウェストのビーム径に対し、2個目以降のビームウェストのビーム径が小さくなっていく。例えば、最初のビームウェストのビーム径が125μmとすると、2個目のビームウェストのビーム径が100μm、3個目のビームウェストのビーム径が80μmとなっている。2個目および3個目のビームウェストを形成する波長変換素子62内の光路では、波長変換素子62内のビーム径が、最初に通過する光路のビーム径よりも小さく、変換効率が高い。このため、最初に波長変換素子62を通過する光路よりも、2個目と3個目の光路で発生する波長変換光のパワーが大きくなっている。
本実施の形態は、レーザ光が最初に波長変換素子62を通過する光路から出力される波長変換光よりも、その後に波長変換素子62を通過する光路から出力される波長変換光のパワーが大きい好ましい形態である。波長変換素子62を最初に通過する光路は、最もレーザ光のパワーが高いため、光吸収による波長変換素子62の損傷や熱レンズなどが発生しやすいが、波長変換光の発生を抑えることで、光吸収の増大を防ぎ、前記損傷や熱レンズの発生を防ぐことができる。特に、本実施の形態のように、最初に波長変換素子62を通過する光路よりもそれ以降の光路でビームウェストのビーム径を小さくすることが好ましい。これにより、最初に波長変換素子62を通過する光路で位相整合する温度条件などにした場合でも、ビームウェスト位置PBWのビーム径が大きいため光強度が小さく、波長変換素子62の損傷を防ぐことができ、最初に通過する光路の変換効率が高くなりすぎるのを防ぐことができる。
(実施の形態19)
図22は、パルス幅がmsecオーダのパルス光を本実施の形態の波長変換レーザ装置で出力する場合のレーザ光のパワー変調を表す模式図である。実施の形態15〜18と同様の部材については同じ部材番号を付す。本実施の形態では、前記実施の形態18の波長変換レーザ装置1700を用いている。
本実施の形態では、2.4msecのパルス幅の波長変換光を、繰り返し周波数120Hzで出射している。このとき、レーザ光源から出射されるレーザ光も、2.4msecのパルス幅で、繰り返し周波数120Hzで出射され、レーザ光の出力は図22のように変調されている。すなわち、レーザ光のパルス内パワーが初期(パルスの立ち上がり直後)に対し末期(パルスの立ち下がり直前)の方が大きくなっている。本実施の形態では、6Wピークの波長変換光を出射するため、レーザ光のパワーは、パルス内の初期で9W、末期で10Wになるように線形に変調されている。レーザ光のパワーをパルス内で前記のように変調することで、出射する波長変換光のパワーはパルス内で一定となる。
本実施の形態は、レーザ光源からレーザ光が0.1msec以上のパルス幅で出力され、レーザ光のパルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きい好ましい形態である。本実施の形態の波長変換レーザ装置1700では、0.1msec以上のパルス幅のパルス光出射を行うとき、波長変換素子の温度変化によりパルス内でパワー変動を生じることがある。高出力時には、特に光吸収が大きく顕著である。本実施の形態のように、パルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きくなるように変調することで、パルス内でのパワー変動を低減し、パルス内で波長変換光の出力を一定とすることができる。特に、末期のパワーは初期に対し5%以上高いことが好ましい。このように、5%以上パワーを増加させることで、高出力時でもパルス内の末期で生じるパワーダウンを補償することができる。0.1msecよりも短いパルス幅のレーザ光を出力するときは、波長変換素子における温度変化の時間応答性のため、パルス内での温度変化は小さく、パルス内でのパワー変動も小さくなり問題となっていなかった。本実施の形態のパワー変調は、0.1msec以上のパルス幅のレーザ光を出力する場合に必要となる。本実施の形態の波長変換レーザ装置1700では、レーザ光が波長変換素子を複数回通過するため、波長変換素子全体での光吸収が、従来の1回のみ通過する構成に対し、大きくなっている。このため、本実施の形態のパワー変調が、本実施の形態の波長変換レーザ装置1700の構成に対して、有用になるのである。特に、映像用途に本実施の形態の波長変換レーザ装置1700を用いる場合、パルス内の末期での出力ダウンは、諧調の表現を乱すことや表示する輝度の低下となるため、本実施の形態のパワー変調が効果的である。
本実施の形態では、図22に示すように、レーザ光のパルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きくなるように線形に変調されている。しかし、本発明はこれに限定されず、レーザ光のパルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きくなるように変調する構成であればよく、例えば、非線形の変調や初期から末期にかけてパワーレベルが階段状に増加するステップ変調も可能である。
(実施の形態20)
図23は本発明の実施の形態20に係る波長変換レーザ装置1800の概略構成図である。実施の形態15〜19と同様の部材については同じ部材番号を付す。図23に示す波長変換レーザ装置1800は、レーザ光源1e、集光光学系28、第1凹面ミラー38、第2凹面ミラー49、第1非線形光学結晶63および第2非線形光学結晶64を具備している。
波長変換レーザ装置1800は、レーザ光を反射する反射面間に配置される波長変換素子が、第1非線形光学結晶63と第2非線形光学結晶64とから構成されている。レーザ光を出射するレーザ光源1eは、波長1040nmのレーザ光を出射するシングルモードLDである。第1非線形光学結晶63は、周期状の分極反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、レーザ光の第2高調波である520nmの波長の第1波長変換光を発生させる。第2非線形光学結晶64は、LBO(LiB3O5)からなり、前記第1波長変換光の第2高調波である260nmの波長の第2波長変換光を発生させる。
第1非線形光学結晶63および第2非線形光学結晶64は、共に直方体形状でレーザ光が入出射する端面にレーザ光および第1波長変換光のARコートをもつ。第2非線形光学結晶64は、第1非線形光学結晶63側端面に第2波長変換光の反射コートをもち、第1凹面ミラー38側端面に第2波長変換光のARコートを有する。第1凹面ミラー38は、レーザ光および第1波長変換光の反射コートと、第2波長変換光のARコートとをもち、第2波長変換光の出射面となっている。第2凹面ミラー49は、レーザ光と第1波長変換光の反射コートをもつ。第1凹面ミラー38および第2凹面ミラー49は、レーザ光の反射面且つ集光面となっており、また第1波長変換光の反射面且つ集光面ともなっている。第2凹面ミラー49は、D字型に切断され、当該切断部がレーザ光の入射部となっている。
第1非線形光学結晶63は入射部から入射されるレーザ光の進行方向上流側に設けられ、第2非線形光学結晶64は当該レーザ光の進行方向下流側に設けられている。よって、レーザ光源1eからのレーザ光は、集光光学系28を介して最初に第1非線形光学結晶63に入射される。
レーザ光は、コリメータ28aと集光レンズ28bからなる集光光学系28により、入射部からレーザ光反射面間に入射し、第2非線形光学結晶64内でビームウェストを形成した後、第1凹面ミラー38に達する。このとき、第1非線形光学結晶63内で第1波長変換光が発生し、当該第1波長変換光も第2非線形光学結晶64内でビームウェストを形成し、第2非線形光学結晶64内で第2波長変換光が発生する。発生した第2波長変換光は、第1凹面ミラー38から出射される一方、レーザ光と第1波長変換光は第1凹面ミラー38で反射され、第2非線形光学結晶64に入射する。第2非線形光学結晶64内では、第1波長変換光からの変換により第2波長変換光が再び発生し、当該第2波長変換光は第2非線形光学結晶64の第1非線形光学結晶63側端面で反射された後、第1凹面ミラー38から出射される。レーザ光は、第1凹面ミラー38と第2凹面ミラー49との間を往復しながら複数のビームウェストを形成し、入射角度を変化させながら第1波長変換素子(第1非線形光学結晶63)に入射し、第1波長変換光を繰り返し発生させる。第1波長変換素子で発生した第1波長変換光は、第1凹面ミラー38と第2凹面ミラー49との間を往復し、このとき入射角度を変化させながら繰り返し第2波長変換素子(第2非線形光学結晶64)に入射し、第2波長変換光を発生させる。
本実施の形態は、波長変換素子が少なくとも第1の非線形光学結晶63と第2の非線形光学結晶64とからなり、第1の非線形光学結晶63でレーザ光の第1の波長変換光を複数の光路で発生させ、第2の非線形光学結晶64で第1の波長変換光を用いた第2の波長変換光を複数の光路で発生させ、第2波長変換光を出射する好ましい形態である。従来、3倍波や4倍波と呼ばれる高次の波長変換は、変換効率が低く、変換効率を高めるために外部共振器などの共振器構成が必要とされていた。しかし、共振器構成は、共振を保つために光学部品を波長オーダの精度で調整する必要があり、コストや安定性の点で問題があった。これに対し、本実施の形態では、波長変換素子として2つの非線形光学結晶を用い、レーザ光が波長変換素子を通過する角度を変化させていくことを用いて、第1波長変換光が第2非線形光学結晶64内を通過する角度を変化させ、第1波長変換光が第2非線形光学結晶64内を複数回通過するようにしている。このため、第1波長変換光を用いて第2波長変換光を発生させるのに、変換効率が高まり、第2波長変換光を得る位相整合条件の範囲を広くすることができる。このため、本実施の形態に係る波長変換レーザ装置1800は、高次の変換波である第2波長変換光を、高変換効率で、安定して得ることができる。また共振器構成とは異なり、光学部品の調整が容易で、低コスト化や小型化が可能となる。また非線形光学結晶を2種類用いることで、第1波長変換光発生と第2波長変換光発生に対し、それぞれの波長変換光に対する光吸収が小さく変換効率が高い結晶を選択することができ、さらに、レーザ光および第1波長変換光が複数回通過するために生じる発熱を防ぎながら、変換効率を高めることができる。
本実施の形態に係る波長変換レーザ装置1800は、第2波長変換光が380nmよりも短い波長である紫外光である好ましい形態である。従来、紫外光は、非線形光学結晶における光吸収のため、損傷や発熱が問題となり、高出力用として用いられる非線形光学結晶の範囲が限られ、高変換効率が得られなかった。しかし、本構成では、複数の光路で紫外光を発生させるため、高出力でも紫外光の光強度が低く、損傷や発熱が回避され、様々な非線形光学結晶を用いることができる。このため、高出力を得ながら、変換光率を高めることができる。
第2非線形光学結晶64は、第1非線形光学結晶63側の端面に第2波長変換光の反射面を有する好ましい形態である。なお、この形態に代えて、第1非線形光学結晶63における第2非線形光学結晶64側の端面に第2波長変換光の反射面を有する形態とすることも可能である。本実施の形態では、第1非線形光学結晶63と第2非線形光学結晶64との間に、第2の波長変換光の反射面もしくは出射面があることが好ましい。このように、第2の波長変換光を第1非線形光学結晶63に入射しない構成とすることで、第1非線形光学結晶63内での第2波長変換光の光吸収をなくすことができる。これにより、第2波長変換光による第1非線形光学結晶63の発熱をなくし、変換効率を高めることができるとともに、高出力時に用いられる第1非線形光学結晶63の選択範囲を広げることができる。本実施の形態では、第1の非線形光学結晶63に、紫外光を吸収するが非線形光学常数が大きいMgO:LiNbO3結晶を用いることができ、変換効率を高めることができている。
波長変換レーザ装置1800は、集光光学系28で形成される集光点が第2非線形光学結晶64内にあり、これにより第1波長変換光のビームウェストが第2非線形光学結晶64内に複数形成される好ましい形態である。第2波長変換光の発生は、変換効率が低くなりやすいが、第1波長変換光のビームウェストを第2非線形光学結晶64内で複数形成することで、変換効率を高めることができる。
本実施の形態は、第1凹面ミラー38と第2凹面ミラー49の2枚のレーザ光反射面が、第1波長変換光を反射し、第2波長変換光に変換されなかった第1波長変換光が第2非線形光学結晶64を再び通過する好ましい形態である。第1波長変換光をレーザ光反射面で反射させて反射面間を往復させることで、第2の非線形光学結晶64に入射する第1波長変換光の出力を大きくし、変換効率を高めることができる。また、第2非線形光学結晶64を通過する第1の波長変換光の角度が様々に変化することで、様々な位相整合条件をとり、複数の光路をあわせると、非常に広い位相整合範囲をもつことができる。広い位相整合範囲は、温度や入射波長が変化しても、変換効率が高いまま維持することができ、波長変換レーザ装置の安定動作を可能とする。
(実施の形態21)
図24は本発明の実施の形態21に係る波長変換レーザ装置1900の概略構成図である。実施の形態15〜20と同様の部材については同じ部材番号を付す。図24に示す波長変換レーザ装置1900は、レーザ光源1e、集光光学系29、凹面ミラー39、第1非線形光学結晶65および第2非線形光学結晶66を具備している。
波長変換レーザ装置1900は、第1非線形光学結晶65と第2非線形光学結晶66からなる波長変換素子と、レーザ光の集光面となる凹面ミラー39とを、レーザ光の反射面間に有する。レーザ光源1eは、1040nmを発振するシングルモードLDである。第1非線形光学結晶65は、周期状の分極反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、レーザ光の第2高調波である波長520nmの第1波長変換光を発生させる。第1非線形光学結晶65の凹面ミラー39と反対側の端面65aは、レーザ光の反射コートと、第1波長変換光のARコートを持ち、レーザ光の反射面且つ第1波長変換光の出射面となっている。第2非線形光学結晶66は、LBOからなり、第1の波長変換光の第2高調波である波長260nmの第2波長変換光を発生させる。第2非線形光学結晶66の凹面ミラー39と反対側の端面66aは、レーザ光、第1波長変換光および第2波長変換光の反射コートを持ち、レーザ光等の反射面となっている。凹面ミラー39は、レーザ光および第1波長変換光の反射コートと第2波長変換光のARコートとをもち、第2波長変換光の出射面となっている。
波長変換レーザ装置1900では、レーザ光源1eから出射されたレーザ光は、集光光学系29により集光作用を受けた後、第2非線形光学結晶66の近傍(脇)を通過して反射面間へ入射される。すなわち、第2非線形光学結晶66の脇が反射面間への入射部70となっている。レーザ光は、集光光学系29により第2非線形光学結晶66の脇でビームウェストを形成した後、凹面ミラー39で反射し、第1非線形光学結晶65に入射する。第1非線形光学結晶65の端面65aにレーザ光が達するまでに発生した第1波長変換光は、第1非線形光学結晶65の端面65aから出射される。レーザ光は、第1非線形光学結晶65の端面65aで反射され、再び第1非線形光学結晶65で第1波長変換光が発生する。レーザ光と第1波長変換光は、凹面ミラー39で反射したのち、第2非線形光学結晶66に入射し、その内部でビームウェストを形成する。第2非線形光学結晶66では、第1波長変換光から第2波長変換光が発生する。レーザ光と第1および第2波長変換光とは、第2非線形光学結晶66の端面66aで反射した後、凹面ミラー39に達する。そして、凹面ミラー39からは、第2波長変換光が出射される。その後、凹面ミラー39で反射したレーザ光および第1波長変換光は、第1非線形光学結晶65内に先程と異なる入射角で入射する。レーザ光は第1非線形光学結晶65内で、第1波長変換光に変換され、第1波長変換光は第1非線形光学結晶65の端面65aから出射される。端面65aで反射したレーザ光は、再び第1非線形光学結晶65内で第1波長変換光に変換され、第1波長変換光とともに凹面ミラー39で反射された後、第2非線形光学結晶66に、先程と異なる角度で入射する。このようにして、レーザ光は、反射面間を往復しながら、非線形光学結晶への入射角を変化させて非線形光学結晶の通過を繰り返し、第1波長変換光を繰り返し発生させる。さらに、このようにして発生された第1波長変換光からも複数の光路で第2波長変換光が繰り返し発生され、結果的に第1波長変換光と第2波長変換光とが波長変換レーザ装置1900から出射される。
波長変換レーザ装置1900では、第1非線形光学結晶65の端面65aが第1波長変換光の出射面となり、凹面ミラー39が第2波長変換光の出射面となっている。本実施の形態は、第1波長変換光と第2波長変換光とを外部に出射するものであって、第1波長変換光の出射面と第2波長変換光の出射面とが異なる好ましい形態である。これにより、波長変換レーザ装置1900から、複数の異なる波長変換光が得られるとともに、それらを分離する必要なく各波長変換光を用いることができる。本実施の形態では、第1非線形光学結晶65と第2非線形光学結晶66との間に、第2波長変換光の出射面をもつ好ましい形態である。これにより、第2波長変換光が第1非線形光学結晶65に入射することによって、第1非線形光学結晶65において損傷や光吸収が生じることを防ぐことができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。本発明の各実施の形態を組み合わせて用いることもできることは言うまでもない。なお、波長変換レーザ装置は、第2高調波や和周波の他、差周波を出力する構成としてもよい。また、波長変換素子は、当該素子内に、周期の異なる複数種類の分極反転構造を有するように構成してもよい。
(実施の形態22)
図25に実施の形態22に係る画像表示装置2000の概略図を示す。実施の形態1〜21と同様の部材については同じ部材番号を付す。図25に示す画像表示装置2000は、緑色波長変換レーザ装置2100、青色レーザ装置2001、赤色レーザ装置2002、集光レンズ2010、クロスプリズム2011、ロッドインテグレータ71、リレーレンズ2012、フィールドレンズ2013、空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)2014、投射レンズ2015およびスクリーン2016を具備している。
画像表示装置2000は、前記の緑色波長変換レーザ装置2100、青色レーザ装置2001および赤色レーザ装置2002を有するフルカラーレーザプロジェクタである。
緑色波長変換レーザ装置2100は、基本波レーザ光源1、集光光学系2、メニスカスミラー80、第2凹面ミラー4、および波長変換素子5を具備している。すなわち、緑色波長変換レーザ装置2100は、レーザ光の反射面であり且つ波長変換光の透過面となる部材が、第1凹面ミラーに代えてメニスカスミラー80となっている以外は、実施の形態1の波長変換レーザ装置100(図1参照)と同じ構成である。
メニスカスミラー80は、凹面側はレーザ光の反射面となってレーザ光の反射を行い、レーザ光の波長変換素子5への再入射と集光とを行う。また、メニスカスミラー80は、波長変換光を透過し、当該波長変換光に対しては凹面と凸面とをもつメニスカスレンズとして働く。複数のビームからなる波長変換光は、メニスカスミラー80により、ロッドインテグレータ71の入射面に集光されている。本実施の形態では、メニスカスミラー80の凸面は、凹面よりも曲率が大きく、集光レンズとなっている。なお、メニスカスミラー80の凸面の曲率中心と凹面の曲率中心とを同じとして、波長変換光に対する凹面レンズの曲率を打ち消して、波長変換光の複数の光路を略平行化する構成としてもよい。このように、波長変換光を出力するミラーをメニスカスミラーとすることで、複数のパスから出力する波長変換光を、直接集光することや略平行化することができる。本実施の形態に係る緑色波長変換レーザ装置2100は、出力される波長変換光が複数ビームからなるが、メニスカスミラー80を出力ミラーとすることで、容易にビームを扱うことができる。
青色レーザ装置2001および赤色レーザ装置2002から出射された青色および赤色のレーザ光は、集光レンズ2010によりロッドインテグレータ71の入射面に集光される。そして、赤、緑、青のレーザ光は、クロスプリズム2011により合波されてロッドインテグレータ71に入射する。ロッドインテグレータ71により、赤、緑、青のレーザ光は重畳され、矩形の形状の均一な強度分布となる。ロッドインテグレータ71は、緑色波長変換レーザ装置2100が出射する複数のビームを重ね合わせることで、個々のビーム強度が異なっていても、均一な強度分布に整形している。ロッドインテグレータ71を出射したレーザ光は、リレーレンズ2012、フィールドレンズ2013を経て、SLM2014を照明する。SLM2014は、透過型液晶からなり、赤、緑、青のレーザ光を時分割で変調する。SLM2014により変調された光は、投射レンズ2015により拡大され、スクリーン2016に投射される。
本実施の形態に係る画像表示装置は、波長変換レーザ装置(緑色波長変換レーザ装置2100)とそこから出射される複数の波長変換光を重畳する光学系(ロッドインテグレータ71)と、前記波長変換光の変調を行う素子(SLM2014)とを有する好ましい形態である。本実施の形態の波長変換レーザ装置は、複数のパスで波長変換するため、複数の強度の異なるビームを出射するが、これらを重畳することで画像表示装置に必要な均一性を得ることができる。また、画像表示装置には、干渉ノイズを抑制するため低コヒーレンスの光が求められるが、実施の形態の波長変換レーザ装置が出射する複数のビームは、それぞれのビーム間では干渉性が低いため、これらを重畳して用いることで、低コヒーレンスの光を得ることができる。特に、緑色光は、他の色に対し視感度が高く、干渉性ノイズが視聴者に見えやすいため、本実施の形態の構成を用いて、低コヒーレンスの光とすることが望ましい。本実施の形態ではSLM2014を用いて波長変換光の変調を行っており、画像信号に応じた画像をスクリーン2016に表示することが出来る。
なお、SLM2014には、反射型LCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDMD(Digital Micromirror Device:米国テキサス・インスツルメンツ社の商標)などの空間光変調素子を用いることもできる。また3板LCD(Liquid Crystal Display)と呼ばれる、赤、緑、青のレーザ光のそれぞれに対し、空間光変調素子を用いる構成とすることもできる。なお、波長変換光の変調を行う素子は、SLMに限定されるものではなく、波長変換光の強度変調と走査光学系とを組み合わせた構成としてもよい。
本実施の形態では、波長変換光を重畳する光学系にロッドインテグレータを用いたが、フライアイレンズや、レンチキュラーレンズなどを用いることもできる。
本実施の形態では、画像表示装置に適用される波長変換レーザ装置として緑色波長変換レーザ装置2100を用いているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本実施の形態に適用される波長変換レーザ装置としては、例えば前述の実施の形態1〜21に記載の波長変換レーザ装置を用いることができる。
(実施の形態23)
図26に実施の形態23に係る画像表示装置3000の概略図を示す。実施の形態1〜22と同様の部材については同じ部材番号を付す。図26に示す画像表示装置3000は、緑色波長変換レーザ装置2100、青色レーザ装置2001、赤色レーザ装置2002、集光レンズ2010、クロスプリズム2011、導光棒72、導光板73および液晶パネル74を具備している。
画像表示装置3000は、前記の緑色波長変換レーザ装置2100、青色レーザ装置2001および赤色レーザ装置2002を有するフルカラー液晶ディスプレイである。
各レーザ装置を出射した赤、緑、青のレーザ光は、クロスプリズム2011で合波された後、導光棒72に入射する。導光棒72に入射したレーザ光は、導光板73へと導かれる。このとき、導光棒72と導光板73とによりレーザ光は均一な強度分布となって、液晶パネル74を照明する。
本実施例において、緑色波長変換レーザ装置2100を出射した複数のビームからなる出力光は、導光棒72と導光板73とにより重畳される。
本実施の形態に係る画像表示装置は、本実施の形態の波長変換レーザ装置(緑色波長変換レーザ装置2100)と、そこから出射される複数の波長変換光を重畳する光学系(導光棒72および導光板73)と、前記波長変換光の変調を行う素子(液晶パネル74)を有する好ましい形態である。本実施の形態の波長変換レーザ装置は、複数のパスで波長変換するため、複数の強度の異なるビームを出射するが、これらを重畳することで画像表示装置に必要な均一性を得ることができる。また、画像表示装置には、干渉ノイズを抑制するため低コヒーレンスの光が求められるが、本実施の形態の波長変換レーザ装置が出射する複数のビームは、それぞれのビーム間では干渉性が低いため、これらを重畳して用いることで、低コヒーレンスの光を得ることができる。特に、緑色光は、他の色に対し視感度が高く、干渉性ノイズが視聴者に見えやすいため、本実施の形態の構成を用いて、低コヒーレンスの光とすることが望ましい。本実施例では液晶パネル74を用いて波長変換光の変調を行っており、画像信号に応じた画像を表示することが出来る。
なお本実施の形態では、波長変換光を重畳する光学系として、導光棒および導光板を用いたが、円形や楕円形状のマルチモード光ファイバーを用いることもできる。
本実施の形態では、画像表示装置に適用される波長変換レーザ装置として緑色波長変換レーザ装置2100を用いているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の画像表示装置に適用される波長変換レーザ装置としては、例えば前述の実施の形態1〜21に記載の波長変換レーザ装置を用いることができる。
以上のように、本発明の一態様に係る波長変換レーザ装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を反射する2つの反射面と、前記2つの反射面間に設けられ、前記レーザ光を波長変換光に変換する波長変換素子と、前記レーザ光を集光して前記反射面間に入射させる集光光学系とを含み、前記レーザ光が前記波長変換素子への入射角を変化させながら前記反射面間を複数回往復するように当該レーザ光の光路を変化させると共に、当該反射面間で当該レーザ光を集光させるように、当該2つの反射面の少なくとも1つは曲率を有し、前記反射面間を複数回往復するレーザ光のビームウェスト位置を前記波長変換素子内で点在させるように、前記集光光学系が配置されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、少なくとも1つが曲率を有する2枚の反射面間に波長変換素子が配置され、レーザ光が前記波長変換素子への入射角を変化させながら前記反射面間を複数回往復する。よって、レーザ光の波長変換素子への通過パスにより、位相整合条件が変化することとなる。このため、本波長変換レーザ装置は、複数の位相整合条件を有することとなり、たとえある通過パスで位相整合条件からずれた場合でも、他の通過パスでは位相整合条件と合致し、変換効率の低下を補完することができる。これにより、高変換効率を達成しながらも、温度や波長などの位相整合条件の許容幅を拡大し、環境変化などに対し安定な波長変換光を得ることができる。また、スペクトル幅の広いレーザ発振を行う低干渉の波長変換光を得ることができる。さらに、集光光学系により、レーザ光のビームウェスト位置を波長変換素子内において点在させることで、波長変換素子の光損傷や波長変換の不安定性をなくした高出力の波長変換光を得ることができる。
以上のとおり、本波長変換レーザ装置は、高変換効率と安定した高出力出射を可能とし、且つ、スペックルノイズが低減された低干渉性の波長変換光を出力することが可能な波長変換レーザ装置を実現できる。
また、上記の構成において、前記2つの反射面の一方には前記レーザ光を通過させる入射部が形成されており、前記集光光学系で集光されたレーザ光は前記入射部より前記反射面間に入射されることが望ましい。
上記の構成のように、2つの反射面の一方にレーザ光を通過させる入射部を形成することにより、集光光学系で集光されたレーザ光を反射面間に導入する際の光路設計の自由度が高まる。
また、上記の構成において、前記2つの反射面の少なくとも一方は、前記波長変換光を透過して当該波長変換光を出射させることが望ましい。
また、上記の構成において、前記集光光学系は、前記レーザ光が前記反射面で最初に反射される前に、前記波長変換素子内で当該レーザ光のビームウェストが形成されるように、当該レーザ光を集光することが望ましい。
上記の構成によれば、レーザ光が反射面で最初に反射される前に反射面間でビームウェストが形成されることにより、波長変換素子内の広い範囲にビームウェスト位置を多数点在させることができ、高出力時でも安定した波長変換を行うことができる。さらに、レーザ光が反射面で反射される前に波長変換が行なわれるので、合計変換効率を高めることができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子内に前記ビームウェスト位置が少なくとも3つ点在し、前記波長変換素子内に最初に形成されるビームウェストから順にi、ii、iiiとし、当該i、ii、iiiのビームウェスト半径をr_i、r_ii、r_iiiとするとき、
r_i>r_ii>r_iii
の関係を満たすことが望ましい。
上記の構成のように、波長変換素子内に最初に形成されるビームウェストから順々にビームウェスト半径を絞ることでレーザ光のパワー密度を調整することにより、波長変換素子の破壊等を回避し、安定した波長変換が可能となる。さらに、より後のパスでレーザ光パワーが低下する為に生じる変換効率の低下を抑制し、全体での波長変換効率を高めることもできる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子は周期状の分極反転構造を有し、前記2つの反射面の中心同士を結ぶ光軸を主光線軸とするとき、前記分極反転構造が前記主光線軸に対して傾いて形成されていることが望ましい。
上記の構成によれば、温度などの位相整合条件の許容幅をさらに拡大し、環境変化などに対し安定的に波長変換光を得ることができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源がパルス状のレーザ光を出射すると共に、前記波長変換素子が周期状の分極反転構造を有し、前記レーザ光のパルス幅をT、前記波長変換素子の素子長をL、前記分極反転構造の分極反転周期をΛ、前記レーザ光の波長をλ、光速をcとするとき、
(L・λ)/(0.3・Λ・c)<T
の関係を満たすように、前記レーザ光のパルス幅が設定されていることが望ましい。
上記の構成のように、レーザ光をパルス状に出射することで、瞬間的なパワー強度を高くすれば、波長変換効率を高くすることができる。このとき、レーザ光のパルス幅Tを、(L・λ)/(0.3・Λ・c)よりも長くすることで、基本波レーザ光の波長の拡がりが抑制され、波長変換素子内で安定して位相整合を行い、波長変換光を出力することができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光が前記波長変換素子を通過する最初の光路で発生する波長変換光の出力が、前記レーザ光が当該波長変換素子を通過する全ての光路で発生する波長変換光の合計出力の2/3未満であることが望ましい。
上記の構成のように、最初に波長変換素子を通過する光路で発生する波長変換光の出力を全体の合計出力の2/3未満とすることで、最初の光路において波長変換光が集中して発生するのを防ぎ、波長変換素子の破壊や発熱を抑え、更なる高波長変換効率と安定した動作の両立を実現することができる。
また、上記の構成において、前記2つの反射面の中心同士を結ぶ光軸を主光線軸とするとき、前記集光光学系は、前記レーザ光を前記主光線軸に対して傾けて前記反射面間に入射させることが望ましい。
上記の構成によれば、レーザ光は、主光線軸に対して傾いて反射面間に入射されるため、反射面間で反射を繰り返すレーザ光のオーバラップが複数個所に分散され、反射面間でレーザ光のパワーが集中することを回避できる。これにより、波長変換素子の破壊や波長変換の不安定性を回避し、高出力の波長変換光を安定して出射することができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子は、当該素子の厚さ方向に、周期状の分極反転構造が形成された分極反転形成部と、当該分極反転構造が形成されていない非形成部とを含み、当該分極反転形成部が当該素子の厚さ方向の少なくとも中央部に設けられていることが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子は、分極反転形成部だけではなく、分極反転構造が形成されていない非形成部をも含んでおり、分極反転形成部が当該素子の厚さ方向の少なくとも中央部に設けられている構成を容易に実現できる。そして、分極反転形成部が波長変換素子の厚さ方向の少なくとも中央部に形成されていることにより、効率よく波長変換を行うことができる。
また、上記の構成において、前記集光光学系は、前記波長変換素子の厚さ方向のレンズパワーの方が、当該波長変換素子の幅方向のレンズパワーよりも小さいことが望ましい。
上記の構成によれば、集光光学系により反射面間に入射されるレーザ光は楕円ビームとなり、前記厚さ方向と幅方向とで異なるビームウェスト位置をとる。このため、波長変換素子内のビームウェスト位置がより分散化され、高出力の波長変換光をより安定して出射することができる。
また、上記の構成において、前記2つの反射面の少なくとも一方が、前記波長変換素子の厚さ方向と幅方向とで曲率が異なるアナモフィック反射鏡からなることが望ましい。
上記の構成によれば、アナモフィック反射鏡により、レーザ光は前記厚さ方向と幅方向とによって異なる曲率で反射されるため、当該レーザ光は楕円ビームとなり、当該厚さ方向と幅方向とで異なるビームウェスト位置をとる。このため、波長変換素子内のビームウェスト位置がより分散化され、高出力の波長変換光をより安定して出射することができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光のコヒーレンス長が、前記反射面間の距離の2倍未満であることが望ましい。
もし、レーザ光のコヒーレンス長が反射面間の距離の2倍以上とした場合、反射面間を往復するレーザ光がオーバラップする点で干渉が生じ、当該干渉により生じたビーム強度の強い点において、波長変換素子の破壊や波長変換の不安定性の問題が生じることがある。しかし、上記の構成のように、レーザ光のコヒーレンス長を前記反射面間の距離の2倍未満とすることで、上記干渉性の問題を回避できる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源は、出射するレーザ光のスペクトル半値全幅が0.5nm以上である縦マルチモードのレーザ光源であることが望ましい。
従来の構成では、波長許容幅が狭いため、広帯域のレーザ光源を用いても、出力される波長変換レーザ光は、狭帯域となってしまっていた。これに対して、本波長変換レーザ装置は、上述のとおり波長に対する位相整合条件の許容幅も広いため、上記の構成のように、レーザ光のスペクトル半値全幅が0.5nm以上である縦マルチモードのレーザ光源(広帯域のレーザ光源)を用いることで、出力される波長変換光の広帯域化が可能となる。このように、波長変換光を広帯域化することにより、レーザ光の干渉性を低下させ、映像分野などで問題となる干渉ノイズを低減することができる。特に、スペックルノイズと呼ばれるレーザの干渉性をもたらすランダムノイズの低減が可能となる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源は、広帯域ファイバーブラッググレーティング(FBG)を有し、当該広帯域FBGにより波長ロックしたファイバーレーザ装置であることが望ましい。
上記の構成によれば、広帯域FBGにより、発生するレーザ光の中心波長や帯域幅を設計できるとともに、高出力化が可能となる。この広帯域FBGにより波長ロックしたファイバーレーザ装置は、広帯域の波長変換レーザ光を発生させるためのレーザ光源として好適であり、波長変換レーザ光の広帯域化と高効率化と高出力化を実現することができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源は、波長可変シード光発生器を有するファイバーアンプレーザ装置であることが望ましい。
上記の構成によれば、ファイバーアンプレーザ装置は、注入されたシード光を増幅し出力する。ファイバーアンプレーザ装置は、ゲイン幅が広帯域であるため、シード光の波長を変化させても、高効率の増幅ができる。ここで、波長可変シード光発生器は、シード光の波長を変化させることにより、ファイバーアンプレーザ装置からの出力光の帯域を選択することを可能とする。上述のとおり、波長に対する位相整合条件の許容幅が広いため、レーザ光源として波長可変シード光発生器を有するファイバーアンプレーザ装置を用いることで、帯域のスイッチングを行いながら、高効率化と高出力化とを実現することができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子を支持する波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに設けられ、放熱を行うヒートシンクとをさらに含むことが望ましい。
上記の構成によれば、レーザ光の吸収によって発熱する波長変換素子ホルダに放熱を行うヒートシンクを設けることで、安定した波長変換動作を行うことを可能とする。
また、上記の構成において、前記レーザ光を吸収する被覆部材をさらに含み、前記被覆部材は、前記反射面間に前記レーザ光を入射させる部位および当該反射面間から前記波長変換光を出射させる部位を除いて、当該2つの反射面および反射面間を被覆することが望ましい。
上記の構成によれば、レーザ光の入射および長変換光の出射のために必要な部位を除き、2つの反射面および反射面間が被覆部材により被覆されているので、レーザ光が反射面間から外部に出力されることなく被覆部材に吸収され、波長変換レーザ装置の外部の安全を確保することができる。
また、上記の構成において、前記反射面間から出射された線状の前記波長変換光を集光する集光部と、前記集光部で集光された前記波長変換光を入射させ、当該波長変換光の強度および周波数を平均化した後に出射する内部反射型インテグレータとをさらに含むことが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換光が線状の不均一な強度分布で出射されたとしても、当該波長変換光は集光部で集光されて内部反射型インテグレータに入射される。そして、波長変換光は、強度および周波数が平均化された状態で内部反射型インテグレータから出射される。このように、波長変換光の強度および周波数成分の平均化を行うことにより、低干渉性で強度分布が均一化された波長変換光を得ることができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子が周期状の分極反転構造を有し、前記レーザ光が前記波長変換素子を通過するときの分極反転周期に対する前記レーザ光の最大角度をθ、当該レーザ光の中心波長をλ、当該レーザ光のスペクトル半値全幅をΔλとするとき、
cosθ≦λ/(λ+Δλ/2)
の関係を満たすことが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子の分極反転周期に対するレーザ光の角度が変化することにより、広帯域の波長変換が行われる。ここで、上記の関係式を満たす範囲にレーザ光の角度変化が生じるようにすることで、波長変換素子に入射するレーザ光の全域にわたる波長幅の変換を行うことができる。すなわち、上式の関係を満たすことにより、レーザ光源が出力するレーザ光に適した波長変換により、波長変換光の広帯域化を行うことができる。
また、上記の構成において、前記2つの反射面間の距離をD、当該2つの反射面の焦点距離をf1およびf2、前記波長変換素子の長さをLとするとき、
f1+f2<D<f1+f2+L
の関係を満たすことが望ましい。
上記の関係式を満たすように反射面間の距離Dを設定することにより、2枚の反射面の共焦点配置にも近くなり、且つビームパスの往復回数が多くなってレーザ光の波長変換素子への通過回数も増大することで、レーザ光から波長変換光への合計変換効率を高めることができる。
また、上記の構成において、前記反射面間に入射する前記レーザ光のビーム径が、当該2つの反射面のうち有効径のより小さい反射面の有効径の1/5以下であることが望ましい。
上記の構成によれば、反射面間に入射するレーザ光のビーム径が、有効径のより小さい反射面の有効径に対しても十分に小さい(1/5以下である)ため、反射面間でのレーザ光のオーバラップを緩和するとともに、反射面間でのレーザ光の往復回数を増大することができる。このようなオーバラップの緩和と往復回数の増加により、本波長変換レーザ装置は、コンパクトであっても高出力と高変換効率を両立させることができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子は、周期状の分極反転構造を有すると共に、前記分極反転構造の分極反転周期に対して垂直方向に温度勾配を有することが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子の分極反転周期に対するレーザ光の入射角度が変化することにより、広帯域の波長変換が行われる。ここで、波長変換素子は、分極反転構造の分極反転周期に対して垂直方向に温度勾配を有しているので、前記入射角度の変化に加え、当該温度勾配により、波長変換素子を通過するレーザ光の位相整合条件を変化させる。この波長変換素子の温度勾配により、入射角度が同じ場合でも、位相整合条件が変化し、波長変換が行われるレーザ光の中心波長が変化する。これにより、非常に広い波長域の変換が可能である。また、波長変換素子の温度勾配を、分極反転周期の垂直方向とすることにより、レーザ光の各パス内での波長変換素子の温度変化を抑え、波長変換効率の低下を回避することができる。
また、上記の構成において、前記反射面は光学部材からなり、前記光学部材が前記波長変換素子に接合されて、光学部材と波長変換素子とが一体化していることが望ましい。
上記の構成によれば、反射面となる光学部材と波長変換素子とを接合することで、反射面と波長変換素子との位置関係のずれがなくなるとともに、その調整工程も必要なくなり、装置の信頼性の向上と製造工程数の削減が可能となる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源が発振波長の異なる複数のレーザ光源からなり、前記波長変換素子は、前記複数のレーザ光源から出射される各レーザ光の第2高調波と、当該複数のレーザ光間の和周波もしくは差周波と、を含む波長変換光を発生させることが望ましい。
上記の構成によれば、発振波長の異なる複数のレーザ光源を有し、当該複数のレーザ光源から出射される各レーザ光の第2高調波と、和周波もしくは差周波と、を同時に発生させる。このように、発振波長の異なる複数のレーザ光を用いることで、縦モードが異なる多モードの波長変換光を同時に出力することができる。そして、縦マルチモードの波長変換光は、干渉ノイズが小さいため、映像や照明の分野に広く用いることができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子は、少なくとも第1非線形光学結晶と第2非線形光学結晶とを含み、前記第1非線形光学結晶は、前記レーザ光を複数の光路で第1波長変換光に変換し、前記第2非線形光学結晶は、前記第1波長変換光を複数の光路で第2波長変換光に変換することが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子として少なくとも第1非線形光学結晶と第2非線形光学結晶とを含み、レーザ光が第1非線形光学結晶を通過する角度を変化させながら、複数の光路で第1波長変換光に変換される。さらに、第1波長変換光が第2非線形光学結晶を通過する角度を変化させながら、複数の光路で第2波長変換光に変換される。このため、第1波長変換光を用いて第2波長変換光を発生させるのに、変換効率が高まり、第2波長変換光を得る位相整合条件の範囲を広くすることができる。これにより、高次の変換波である第2波長変換光を、高変換効率で、安定して得ることができる。また共振器構成をとらないため、光学部品の調整が容易であり、装置の低コスト化および小型化が可能となる。また、第1非線形光学結晶と第2非線形光学結晶という異なる結晶を用いる構成なので、第1波長変換光の発生と第2波長変換光の発生に対し、それぞれの波長変換光に対する光吸収が小さく変換効率が高い結晶を別々に選択することができる。これにより、波長変換素子の発熱を防ぎながら、変換効率を高めることができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光が最初に波長変換素子を通過する光路で発生する波長変換光のパワーよりも、その後に当該波長変換素子を通過する光路で発生する波長変換光のパワーの方が大きいことが望ましい。
上記の構成によれば、レーザ光が最初に波長変換素子を通過する光路で発生する波長変換光のパワーがその後の光路で発生する波長変換光のパワーより低く抑えられている。波長変換素子を最初に通過する光路では、レーザ光のパワーが最も高いため、光吸収による波長変換素子の損傷や熱レンズなどが発生しやすいが、最初の光路での波長変換光の発生を抑えることで、前記損傷や熱レンズの発生を防ぐことができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源は、0.1msec以上のパルス幅を有するパルス状のレーザ光を出射し、前記レーザ光のパルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きいことが望ましい。
上記の構成のように、レーザ光源が0.1msec以上のパルス幅を有するパルス状のレーザ光を出射するとき、波長変換素子の温度変化によりパルス内でパワー変動を生じることがある。しかし、上記の構成のように、パルス内でのパワーが初期に対し末期の方が大きくなるように変調することで、パルス内でのパワー変動を低減し、パルス内で波長変換光の出力を一定とすることができる。
また、上記の構成において、前記集光光学系は、前記レーザ光が前記波長変換素子を通過する角度を2軸に変化させて、当該波長変換素子の通過を繰り返すように、前記レーザ光を前記主光線軸に対して波長変換素子の厚さ方向に傾けて前記反射面間に入射させることが望ましい。
上記の構成によれば、2軸方向に角度変化をさせることで、波長変換素子を通過する光路の体積を増やし、光吸収で波長変換素子に生じる発熱を分散させることができる。このように、発熱部を分散させることで、変換効率の低減を防止することができる。また、波長変換素子内のレーザ光のビームウェスト位置も2軸に対し分散することで、ビームウェスト位置が集中することを回避できる。これにより、波長変換素子の光損傷や波長変換の不安定性をなくした高出力の波長変換光を得ることができる。
また、上記の構成において、前記波長変換素子は、その端面が凸型形状に形成されており、当該端面がレーザ光の集光面且つ前記反射面の役割を担うことが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子の端面を凸型形状に形成し、当該端面をレーザ光の集光面且つ前記反射面とすることで、波長変換素子の外部に反射面や集光面といった光学部品を配置する必要がなくなるので、部品を削減して構成をコンパクトにすることができると共に、調整工程を削減することができる。
また、上記の構成において、前記レーザ光源は、複数のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を含み、前記反射面には前記複数のレーザ光をそれぞれ通過させる複数の入射部が形成されており、前記複数のレーザ光は、それぞれ異なる入射部から前記反射面間に入射されることが望ましい。
上記の構成によれば、波長変換素子を増加させることなく、レーザ光源を増やすことで、波長変換光の出力を増加させることができ、波長変換レーザ装置の高出力化と小型化を可能とする。また、複数のレーザ光をそれぞれ通過させる複数の入射部を有することにより、複数のレーザ光を合波するための光学系が不要となり、低コスト化と小型化が実現できる。また、本波長変換レーザ装置は、レーザ光の波長変換素子への入射角度を変化させることで、広い位相整合条件の範囲をもつことから、それぞれ異なる入射部から波長変換素子へ入射させた複数のレーザ光を同時に波長変換することもできる。また、本波長変換レーザ装置は、波長変換素子内でのレーザ光のオーバーラップを利用して、和周波や差周波などの複数のレーザ光を用いる波長変換も行うことができ、多モードの波長変換光を得ることも可能である。さらに、高出力の場合、レーザ光の波長変換素子への入射部が損傷することがあるが、上記構成のように複数のレーザ光の入射部を異なる箇所とすることで、波長変換素子の損傷を防ぎ、信頼性の高い高出力波長変換レーザ装置が得られる。
また、本発明の他の態様に係る画像表示装置は、上記の各構成の波長変換レーザ装置と、前記波長変換レーザ装置から出射された複数の波長変換光を重畳する光学系と、前記光学系により重畳された波長変換光の変調を行う変調素子とを含むことを特徴としている。
上記の各構成の波長変換レーザ装置は、高変換効率と安定した高出力出射が可能であり、且つ、スペックルノイズが低減された低干渉性の波長変換光を出力することが可能であるため、画像表示装置に好適に用いることができる。この波長変換レーザ装置から出射された複数の波長変換光を光学系にて重畳し、当該光学系により重畳された波長変換光を変調素子にて変調することによって、最適な画像表示を行うことができる。
本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。本発明の各実施の形態を組み合わせて用いることもできることを言うまでもない。