JP5293534B2 - 耐指紋性塗膜形成品及び耐指紋性コーティング材組成物 - Google Patents

耐指紋性塗膜形成品及び耐指紋性コーティング材組成物 Download PDF

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Description

本発明は、耐指紋性塗膜形成品及び耐指紋性コーティング材組成物に関するものである。
表示機器の代表とされるディスプレイにおいて、その最表面に形成される反射防止被膜は、指紋汚れが付着しやすく、付着した指紋汚れが目立ち易いという問題がある。そのため、従来、反射防止被膜は、反射防止性能と、傷の発生を防止する表面強度(すなわち耐擦傷性)という基本性能に加えて、指紋汚れが簡単に除去できる表面撥水・撥油性(すなわち防汚染性)が要求されてきた。
例えば、特開2003−266581号公報(特許文献1)では、コーティング材組成物に分子中にフッ素原子を有する加水分解性有機ケイ素化合物を配合することにより、塗膜の表面に撥水・撥油性を付与している。
特開2003−266581号公報
しかしながら、近年、タッチパネル、携帯電話等のディスプレイにおいては、指紋汚れが簡単に除去できることよりも、付着した指紋汚れが目立ちにくい、あるいは指紋汚れが付着しにくいことの方が望まれるようになってきた。
一方、表示機器以外の製品においても、高級感のある外観とするために高光沢性の表面加工が施されている。例えば、携帯電話のハウジングに代表される小型電気製品のハウジング表面に高光沢表面塗装が増えているが、付着した指紋が目立ちやすく、高級感を損なう問題も発生している。その他、光を透過あるいは反射する種々の部位(例えば照明用クリア反射板等の反射部位、保護カバー等の透過部位)においても、付着した指紋汚れが目立ちやすいという同様の問題を抱えている。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、指紋汚れが目立ちにくい低屈折率性の塗膜を備えた耐指紋性塗膜形成品及び耐指紋性塗膜を形成する耐指紋性コーティング材組成物を提供することを課題としている。
前記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は、多孔質シリカ微粒子と、4官能性アルコキシシランの加水分解物あるいは部分加水分解物と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解物あるいは部分加水分解物とから成る塗膜を基材の最表面に備えた耐指紋性塗膜形成品であって、前記塗膜の最表面の2次元表面粗さRaが5〜20nmであることを特徴とする耐指紋性塗膜形成品を提供している。
付着した指紋汚れが目立つ理由は、指紋汚れ中の油脂成分が被膜上でミクロな油滴として存在し、その油滴で透過光あるいは反射光が散乱することによって拡散光に変わるからである。本発明者らは、指紋汚れを目立たなくするためには、被膜表面で油脂成分が油滴とならず、濡れて拡がる状態とすればよく、この指紋汚れの油脂成分の濡れ性向上には、シラン化合物からなる塗膜表面にフェニル基が存在することと、塗膜表面がナノスケールの表面粗さを有していることが有効であることを知見し、本願請求項1の発明に至った。
本願請求項2記載の発明は、請求項1に記載の耐指紋性塗膜形成品の塗膜を形成するための耐指紋性コーティング材組成物であって、多孔質シリカ微粒子と、4官能性アルコキシシランと、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物とから成り、前記多孔質シリカ微粒子は平均一次粒子径が30〜100nmであり、全固形分中に30〜60質量%含有していることを特徴とする。
本願請求項1記載の発明の耐指紋性塗膜形成品においては、前記塗膜の最表面の2次元表面粗さRaを5〜20nmとしてナノスケールレベルで表面粗化させているので、指紋汚れの濡れ面積が増大し、指紋汚れの油脂成分が濡れて拡がりやすく、付着した指紋汚れを目立ちにくくすることができる。かつ、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解物あるいは部分加水分解物を含有する塗膜とし、フェニル基を塗膜表面に存在させているので、指紋汚れの油脂成分が濡れて拡がりやすく、付着した指紋汚れを目立ちにくくすることができる。さらに、多孔質シリカ微粒子を含有させていることから、低反射性とすることができる。
本願請求項2記載の発明の耐指紋性コーティング材組成物においては、前述の耐指紋性塗膜形成品の塗膜を形成するための耐指紋性コーティング材組成物とし、特に、前記多孔質シリカ微粒子の平均一次粒子径と濃度を所定範囲としているので、多孔質シリカ粒子の制御により塗膜の2次元表面粗さRaを設定することができる利点がある。
実施例2、比較例3、4の塗膜表面の走査電子顕微鏡像を示す図。 実施例2、比較例3、4の塗膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係る耐指紋性塗膜形成品は、多孔質シリカ微粒子と、4官能性アルコキシシランの加水分解物あるいは部分加水分解物と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解物あるいは部分加水分解物とを含有する塗膜を基材の最表面に備えた耐指紋性塗膜形成品であって、前記塗膜の最表面の2次元表面粗さRaを5〜20nmとしている。この範囲の2次元表面粗さ(Ra)とすれば、光の散乱によるヘーズを高くすることなく、表面積増大による指紋汚れの濡れ拡がり効果を得ることができる。即ち、2次元表面粗さ(Ra)が5nm未満であれば表面積増大による濡れ拡がり効果が得られ難く、20nmを超えると光の散乱によりヘーズが高くなるおそれがある。
塗膜の2次元表面粗さ(Ra)を前記範囲に設定する方法は問わないが、例えば、下記(1)〜(3)の方法が考えられる。
(1)プラズマエッチング、機械研磨等のドライエッチング
(2)NaOH水溶液などによるウエットエッチング
(3)特定粒径の粒子を含有させる。この場合、上記2次元表面粗さ(Ra)の範囲とできれば粒子の種類や粒径は問わないが、平均一次粒子径30〜300nm、好ましくは50〜200nmの多孔質シリカ微粒子を塗膜中に30〜60質量%含有させることが好ましい。
次にこの耐指紋性塗膜形成品の塗膜を形成するための耐指紋性コーティング材組成物について詳述する。耐指紋性コーティング材組成物は、4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)と、が配合されてなるマトリクス形成材料に、多孔質シリカ微粒子を必須成分として含有して調製されるものである。
本発明において用いる4官能性アルコキシシラン(A)は、一般式が次式(1)で示される。
Si(OR)4 …(1)
前記式(1)のアルコキシル基「OR」中の「R」は1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。「R」は炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好適であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等のアルキル基等を例示することができる。アルコキシド基中に含有されるアルキル基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基等のように直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであってもよい。なかでも、炭素数が1〜4のメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等を好適に用いることができる。
また、本発明において用いるフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)は、フェニル基を備えると共に加水分解基が結合したケイ素原子を分子内に有するものであり、4官能性アルコキシシランと相溶できるものであればよい。ケイ素原子は分子内に1個あるいは複数有するものを用いることができ、フェニル基は分子内に1個以上有していればよい。フェニル基は置換基を備えていても備えていなくてもよい。加水分解基は分子内に2個以上有することが好ましい。フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)はフェニル基を含んでいればよく、ケイ素原子に直接フェニル基が結合していても、アルキル基を介してフェニル基がケイ素原子に結合していてもよい。
フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)としては、なかでもフェニル基含有アルコキシシラン化合物であることが好ましい。フェニル基含有アルコキシシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルエトキシシランに例示されるフェニルアルコキシシラン;
ジ(p−トリル)ジメトキシシラン、ジ(p−トリル)ジエトキシシランに例示されるようなアルキル置換基が結合したフェニル基がケイ素原子に結合しているアルキル置換フェニルアルコキシシラン;
1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンに例示されるようなフェニル基を介して2つのケイ素元素が結合したビスアルコキシシリルベンゼン;
メチルフェニルジメトキシシランに例示されるようなケイ素原子に直接フェニル基とアルキル基が結合したアルキルフェニルアルコキシシラン;
フェンエチルトリメトキシシランに例示されるような炭素数2〜5の直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキル基を介してフェニル基がケイ素原子に結合しているフェネアルキルアルコキシシラン等を例示することができる。
加水分解基としては、前述したアルコキシル基のほか、アセトキシ基、オキシム基(−O−N=C−R(R'))、エノキシ基(−O−C(R)=C(R')R”)、アミノ基、アミノキシ基(−O−N(R)R')、アミド基(−N(R)−C(=O)−R')(これらの基においてR、R'、R”は、例えばそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基等である)や、ハロゲン等を挙げることができる。
耐指紋性コーティング材組成物において、前述した4官能性アルコキシシラン(A)は、通常、加水分解物あるいは部分加水分解物の状態で存在している。4官能性アルコキシシラン(A)は予め加水分解物あるいは部分加水分解物としたものを配合してもよい。フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)は、耐指紋性コーティング材組成物において、加水分解物あるいは部分加水分解物の状態で存在していてもよいし、加水分解されない状態で存在していてもよい。
なかでも、4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)が共存させて加水分解され、共加水分解物あるいは共部分加水分解物に調整されていることが好ましい。この場合のフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)はフェニル基含有アルコキシシラン化合物が好適に用いられる。なお、「共加水分解物あるいは共部分加水分解物」には共完全加水分解物、共部分加水分解物のいずれか一方あるいは両方を含むものが含まれる。
また、4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)の共加水分解物あるいは共部分加水分解物において、4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)であるフェニル基含有アルコキシシラン化合物との混合比率は、固形分質量比率として95:5〜20:80の範囲に設定されていることが好ましい。これはフェニル基含有アルコキシシラン化合物の含有比率が5質量%未満であると、用途によっては耐指紋性が十分でないおそれがあり、80質量%を超えると被膜強度が十分でないおそれがあるからである。より好ましくは、フェニル基含有アルコキシシラン化合物の含有比率は、10質量%以上50質量%以下である。
ここで、前述のように4官能性アルコキシシラン(A)とフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)を加水分解して共加水分解物あるいは共部分加水分解物を調製するにあたって、配合順序は特に限定されるものではない。本発明では、共加水分解物あるいは共部分加水分解物を形成する段階で多孔質シリカ微粒子が混合されていることが好ましい。このような配合順序とすることで、被膜形成能と被膜強度に優れたコーティング材組成物を形成することができる。尚、共加水分解物あるいは共部分加水分解物を形成した後で、多孔質シリカ微粒子を配合する場合は多孔質シリカ微粒子混合後にさらに加水分解を行うようにしてもよい。
共加水分解物あるいは共部分加水分解物の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1000〜5000の範囲が好ましい。1000未満であると被膜形成能力が劣り、逆に5000を超えると被膜強度が低下するおそれがある。加水分解の際の温度条件は、20〜60℃程度が好ましい。温度がこの範囲より低いと反応が進まず、逆にこの範囲より温度が高いと反応が早く進みすぎて一定の分子量の確保が困難になると共に、分子量が大きくなりすぎて被膜強度が落ちるおそれがある。
多孔質シリカ微粒子としては、中空シリカ微粒子、メソポーラス状微粒子等が好適に用いられる。
中空シリカ微粒子は、外殻がシリカ系無機酸化物によって構成されるものであり、例えば外殻が、シリカ単一層、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物の単一層、これらが積層した二重以上の層となっているもの等を挙げることができる。このとき、外殻の厚みは例えば1〜50nm、好ましくは5〜20nmの範囲のものを用いることができ、またこの厚みが中空微粒子の平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあるものを用いることができる。また中空シリカ微粒子の平均粒子径は例えば5nm〜2μmの範囲とすることができる。これは、5nmよりも平均粒子径が小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さく、逆に2μmよりも平均粒子径が大きいと、透明性が極端に悪くなり、拡散反射(Anti-Glare)による寄与が大きくなってしまう。塗膜に高い透明性が要求される用途として、例えばディスプレイ等の反射を防止するためには、中空シリカ微粒子の平均粒子径は5〜100nmの範囲が好ましい。なお、前記平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
この多孔質シリカ微粒子の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粉体状の形態でもゾル状の形態でもよい。多孔質シリカ微粒子をゾル状の形態、すなわちコロイダルシリカとして使用する場合、特に限定されるものではないが、例えば、水分散性コロイダルシリカあるいはアルコール等の有機溶媒分散性コロイダルを使用することができる。一般にこのようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定することができる。
この多孔質シリカ微粒子の配合量は特に限定されるものではないが、耐指紋性コーティング材組成物中における固形分全量に対して、0.1〜65質量%になるように設定するのが好ましい。0.1質量%未満ではこのシリカ微粒子の配合による塗膜の低屈折率効果が得られないおそれがあり、逆に65質量%を超えると塗膜の強度低下を引き起こすおそれがある。多孔質シリカ微粒子を全固形分中10質量%以上50質量%以下の割合で含有したものは反射防止被膜形成用材料として優れており、好ましい。
前述した(3)のように、2次元表面粗さ(Ra)を多孔質シリカ微粒子のコントロールにより達成する場合、前記多孔質シリカ微粒子は平均一次粒子径が30〜100nmのものが、全固形分中に30〜60質量%配合されていることが好ましい。
前述した成分を、例えば、以下のように配合することにより、本発明の耐指紋性コーティング材組成物を得ることができる。
はじめに、4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)と、アルコール系溶剤と、水と、酸触媒とを混合して、前述した重量平均分子量を有する4官能性アルコキシシラン(A)と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)との共加水分解物あるいは共部分加水分解物を作製する。得られた共加水分解物あるいは共部分加水分解物に平均一次粒子径が30〜100nmのシリカ系金属酸化物微粒子を全固形分中に30〜60質量%となる量を配合し、所望により溶剤で希釈して、本発明の耐指紋性コーティング材組成物を得ることができる。
本実施形態の耐指紋性コーティング材組成物は、4官能性アルコキシシラン(A)とフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)とが、アルコキシ基に対する水比(水のモル比)が1.0〜3.0で反応させたものであることが望ましい。ここでいう水比とは、耐指紋性コーティング材組成物に添加される水のモル数と、4官能性アルコキシシラン(A)とフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)とに含まれるアルコキシ基のモル数(例えば、4官能性アルコキシシランであれば、4官能性アルコキシシランのモル数に、アルコキシ基の数「4」を乗じた値であり、3官能性アルコキシシランであれば、3官能性アルコキシシランのモル数に、アルコキシ基の数「3」を乗じた値である)の総和との比を指す。水比が1.0以下、特に0.5以下であると加水分解反応が不十分で塗膜形成能が低下し、3.0以上、特に5.0であると耐擦傷性が低下する。
溶剤としては、加熱等により容易に揮発させることができる適宜のものを用いることができるが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、キシレン、トルエン等を用いることができる。
溶剤の配合は適宜設定することができる。しかし、耐指紋性コーティング材組成物の塗布の容易さと、塗膜の膜厚制御の容易さと、耐指紋性コーティング材組成物の安定性を考慮した場合、塗料中の溶剤の含有量は、50質量%以上99.8質量%以下の範囲に調整されていることが好ましく、70質量%以上99質量%以下の範囲がさらに好ましい。
前述のように調製した耐指紋性コーティング材組成物を基材の表面に塗装して被膜を形成すると共にこの被膜を乾燥硬化させることによって、最表面に塗膜が形成された塗膜形成品を得ることができる。なお、耐指紋性コーティング材組成物が塗装される基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスに代表される無機系基材、金属基材、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートに代表される有機系基材を挙げることができ、また基材の形状としては、板状やフィルム状等を挙げることができる。さらに、基材の表面に1層以上の層が形成されていても構わない。
耐指紋性コーティング材組成物を基材の表面に塗装するにあたって、その方法は特に限定されるものではないが、例えば、刷毛塗り、スプレーコート、浸漬(ディッピング、ディップコート)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、テーブルコート、シートコート、枚葉コート、ダイコート、バーコート等の通常の各種塗装方法を選択することができる。
また、基材の表面に形成した被膜を乾燥させた後に、これに熱処理を行なうのが好ましい。この熱処理によって、塗膜の機械的強度をさらに向上させることができるものである。熱処理の際の温度は、特に限定されるものではないが、60〜300℃の比較的低温で5〜120分処理することが好ましい。300℃よりも高温で処理すると、フェニル基が熱分解する可能性あり、指紋成分の濡れ性を低下させる恐れがある。このように低温で熱処理を行なっても、高温で熱処理を行うときと同等の機械的強度を得ることができるので、製膜コストを低減することが可能となり、また高温による熱処理の場合のように、基材の種類が制限されることがなくなるものである。しかも、例えばガラス基材の場合には熱伝導率が低いため、温度の上昇と冷却に時間がかかり、高温による熱処理ほど処理スピードが遅くなるのに対し、低温による熱処理では逆に処理スピードを早めることができるものである。基材の表面に形成する塗膜の膜厚は、使用用途や目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、50nm〜5μmの範囲が好ましい。特に反射防止用途の場合は50nm〜100nmが好ましい。
この耐指紋性コーティング材組成物で形成された塗膜は2次元表面粗さ(Ra)が5〜20nmとなる。その後、塗膜の2次元表面粗さ(Ra)を5〜20nm内の所望の範囲に設定するために、所望により前述した(1)のプラズマエッチング、機械研磨等のドライエッチング、(2)のNaOH水溶液などによるウエットエッチング等を行ってもよい。
本発明に係る耐指紋性コーティング材組成物を用いれば、低屈折率の塗膜を容易に形成することができ、反射防止用途に好適である。例えば、基材の屈折率が1.60以下の場合には、この基材の表面に屈折率が1.60以上の塗膜を形成してこれを中間層とし、さらにこの中間層の表面に、本発明に係る耐指紋性コーティング材組成物による塗膜を形成するのが有効である。中間層を形成するための塗膜は、公知の高屈折率材料を用いて形成することができ、またこの中間層の屈折率は1.60以上であれば、本発明に係る耐指紋性コーティング材組成物による塗膜との屈折率の差が大きくなり、反射防止性能に優れた反射防止基材を得ることができるものである。反射防止の用途としては、例えば、ディスプレイの最表面、タッチパネルディスプレイの最表面、各種表示ディスプレイの保護カバー等指紋が付着しやすい部位を挙げることができる。
前述した本発明の耐指紋性コーティング材組成物は、特定の粒径の多孔質シリカ微粒子を特定の含有量で含むので、2次元表面粗さ(Ra)を5〜20nmとし、ヘーズを高くすることなく、表面積増大による指紋汚れの濡れ拡がり効果を得ることができ、付着した指紋汚れが目立ちにくい、所謂耐指紋性を備えた塗膜を形成することができる。さらに、マトリクス樹脂としてフェニル基を有する加水分解性シラン化合物を配合し、塗膜表面にフェニル基を存在させているので、指紋の主な油脂成分である中性脂肪(トリグリセリドなど)および中性脂肪が分解した遊離脂肪酸の濡れ拡がり性に優れ、付着した指紋を目立ちにくくすることができる効果を有する。そのうえ、耐指紋性コーティング材組成物は多孔質シリカ微粒子を含み、かつ、4官能性アルコキシシランを配合しているので、低反射性を達成することができる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンで検量線を作成し、その換算値として測定したものである。
(実施例1)
4官能性アルコキシシラン(A)としてのテトラエトキシシラン166.4質量部にメタノール356質量部を加え、さらにフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)としてのフェニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSL8173(商品名)」)39.7質量部、更に水54質量部、0.4規定の塩酸水溶液18質量部を加え、これをディスパーを用いてよく混合して混合液を得た。この混合液を30℃恒温槽中で4時間攪拌して、重量平均分子量を1250に調整した4官能性アルコキシシラン(A)とフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)との共重合加水分解物(以下、「フェニル・シリコーン共加水分解物」と称す)を、塗膜のマトリクス形成材料として得た。
次に、イソプロパノール分散多孔質中空シリカ微粒子(触媒化成工業製「スルーリアCS60−IPA(製品名)」,固形分20質量%、平均一次粒子径60nm、外殻厚み約10nm)を、固形分基準で多孔質シリカ微粒子/フェニル・シリコーン共加水分解物(縮合化合物換算)が質量比で40/60となるように配合し、その後、全固形分が1質量%になるようにIPA/酢酸ブチル/ブチルセロソルブ混合液(希釈後の溶液の全量中の5質量%が酢酸ブチル、全量中の2質量%がブチルセロソルブとなるように、予め混合された用液)で希釈し、実施例1のコーティング材組成物を得た。
そしてこのコーティング材組成物を1時間静置した後、予めUV−オゾン洗浄機(エキシマランプ、ウシオ電機製、型式H0011)で表面洗浄した、アクリル板(製品名「デラグラス(登録商標)HA,両面ハードコート処理、ハードコート屈折率1.52、ヘーズ0.10)のハードコート表面にワイヤーバーコータによって塗布して厚さ約100nmの塗膜を形成し、80℃で1時間、酸素雰囲気下で熱処理することによって、塗膜を備えた塗膜形成品を得た。
(実施例2)
4官能性アルコキシシラン(A)としてのテトラエトキシシラン69.3質量部にメタノール356質量部を加え、さらにフェニル基を有する加水分解性シラン化合物(B)としてのフェニルメチルジメトキシシラン(Gelest社製「SIP6740.0(商品名)」)121.3質量部を加えて、得られるフェニル・シリコーン共加水分解物の重量平均分子量を1150に調整した以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして塗膜を有する塗膜形成品を得た。
(比較例1)
多孔質シリカ微粒子/フェニル・シリコーン共加水分解物(縮合化合物換算)を固形物基準で質量比20/80に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして塗膜を有する塗膜形成品を得た。
(比較例2)
多孔質シリカ微粒子/フェニル・シリコーン共加水分解物(縮合化合物換算)を固形物基準で質量比0/100に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして塗膜を有する塗膜形成品を得た。
(比較例3)
多孔質シリカ微粒子/フェニル・シリコーン共加水分解物(縮合化合物換算)を固形物基準で質量比20/80に変更した以外は、実施例2と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして塗膜を有する塗膜形成品を得た。
(比較例4)
多孔質シリカ微粒子/フェニル・シリコーン共加水分解物(縮合化合物換算)を固形物基準で質量比0/100に変更した以外は、実施例2と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして塗膜を有する塗膜形成品を得た。
前記実施例1、2及び比較例1〜4で得た塗膜について、指紋視認性、反射率及び2次元表面粗さを測定し、評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例2、比較例3、4については、塗膜表面の走査電子顕微鏡像を図1に、原子間力顕微鏡像を図2に示す。
Figure 0005293534
(指紋視認性)
塗膜表面に、指端の腹面を押し付けて指紋汚れを付着させ、目視により下記のように5段階評価を行った。
1.指紋痕が明確に視認できる
2.指紋痕がぼんやり視認できる
3.指紋痕としては視認できないが、指紋汚れの付着部分と非付着部分の区別がはっきりと視認できる
4.指紋汚れの付着部分と非付着部分の区別がはっきりと見えない
5.指紋汚れの付着部分をほとんど視認できない
(反射率)
アクリル板の塗膜を形成していない側(裏面)に艶消し黒塗装を施して裏面反射を抑制し、塗膜側の5°相対反射率(最小反射率)を分光光度計(日立製作所製「U−4100(製品名)」)を使用して測定した。
(塗膜の表面粗さ)
塗膜の表面粗さを500nm×500nmの視野で、原子間力顕微鏡((株)島津製作所製「SPM−9500」)を用いて測定した。測定場所を変え、3回測定し、平均値を算出した。
表1にみられるように、実施例1、2のものは、塗膜の表面粗さが比較例よりも大きく、指紋視認性、反射率において良好な結果を示すものであった。一方、比較例1〜4のものは、塗膜の表面粗さが小さく、特に、多孔質シリカ微粒子が含有されていない比較例2および4では、塗膜の表面粗さが原子スケールまで非常に小さくなっており、その結果、指紋視認性が劣り、指紋痕が視認できるものであった。

Claims (2)

  1. 多孔質シリカ微粒子と、4官能性アルコキシシランの加水分解物あるいは部分加水分解物と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解物あるいは部分加水分解物とから成る塗膜を基材の最表面に備えた耐指紋性塗膜形成品であって、前記塗膜の最表面の2次元表面粗さRaが5〜20nmであることを特徴とする耐指紋性塗膜形成品。
  2. 請求項1に記載の耐指紋性塗膜形成品の塗膜を形成するための耐指紋性コーティング材組成物であって、多孔質シリカ微粒子と、4官能性アルコキシシランと、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物とから成り、前記多孔質シリカ微粒子は平均一次粒子径が30〜100nmであり、全固形分中に30〜60質量%含有していることを特徴とする耐指紋性コーティング材組成物。
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