JP2007099828A - コーティング材組成物及び塗装品 - Google Patents

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僚三 福崎
Hikari Tsujimoto
光 辻本
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健之 山木
Hiroshi Yokogawa
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Abstract

【課題】高い反射防止性を有すると共に、耐薬品性、防汚性に優れたコーティング材組成物を提供する。
【解決手段】(A)の加水分解性オルガノシランと(B)の加水分解性オルガノシランとシリカ系金属酸化物微粒子とを混合した状態で、(A)及び(B)の加水分解性オルガノシランを加水分解した第一の加水分解物と、(A)の加水分解性オルガノシランと(C)の加水分解性オルガノシランとを共重合した、一方の末端にフッ素置換アルキル基を有する第二の加水分解物と、を含有する。
(A)一般式がSiX(Xは加水分解基)
で表わされる加水分解性オルガノシラン、
(B)撥水基を直鎖部に備えると共にアルコキシ基が結合したシリカ原子を分子内に2個以上有する加水分解性オルガノシラン、
(C)フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン
【選択図】なし

Description

本発明は、反射防止被膜等を形成するために使用されるコーティング材組成物、及びこのコーティング材組成物を塗装して反射防止被膜等として形成した塗装品に関するものである。
ディスプレイの最表面に形成される反射防止被膜は、優れた反射防止性能とともに、傷の発生を防止する表面強度(すなわち耐擦傷性)、指紋等の汚れが簡単に除去できる表面撥水・撥油性(すなわち防汚染性)、クリーナー等の各種薬剤に対する耐薬品性が要求される。
被膜屈折率を考慮しない場合には、UV硬化型、EB硬化型の樹脂コーティング材を使用することによって高い表面強度を得ることができるが、一般にUV硬化型、EB硬化型の樹脂は屈折率が高いので、樹脂リッチの被膜では反射防止能を得ることができず、中空シリカ微粒子等のシリカ系金属酸化物微粒子を複合させることが必要になる。そして単層で十分な反射防止能を得るためにはシリカ系金属酸化物微粒子の比率を増やす必要があり、この場合には被膜のマトリクス材料がUV硬化型、EB硬化型の樹脂であっても、十分な表面強度が得られなくなってしまう。また最近のディスプレイ(特に液晶ディスプレイ)の高精細化に伴なって、反射防止被膜のゴミ等の異物による欠点を極力無くさなければならないが、UV硬化型、EB硬化型の樹脂はコーティング後、希釈溶剤が蒸発してもUVあるいはEBが照射されるまでは、濡れたウエット感のある状態であるので、ゴミ等の異物が付着し易い。このため、コーティングゾーンと共に全乾燥ゾーンまでもクリーン度を維持する必要があり、大掛かりな設備が必要となる。
クリーン度を維持する乾燥ゾーンのエリアを小さくするためには、マトリクス形成材料として熱硬化型の樹脂が好ましいが、一般の有機の熱硬化型樹脂は自身の屈折率が高いために、上記と同様に十分な表面硬度を得ることができない。またパーフルオロ樹脂に代表されるフッ素樹脂の屈折率は1.40未満と低いが、樹脂自身に起因して被膜強度が低くなるので、強度を得るためにはアクリル樹脂との複合が必要となって屈折率が高くなり、結局は十分な反射防止能と表面強度を両立させることは難しい。
一方、SiX(Xは加水分解基)の化学式で表わされる加水分解性オルガノシランを加水分解して得られる加水分解物は、アクリル樹脂等の一般の有機樹脂と比較して被膜屈折率が低く、また優れた機械的強度の被膜を期待することができるマトリクス形成材料である。このため、この加水分解性オルガノシランの加水分解物をマトリクス形成材料として用いると、中空シリカ微粒子等のシリカ系金属酸化物微粒子を複合した被膜を形成する場合に、他の一般有機樹脂よりもシリカ系金属酸化物微粒子の比率を削減することができるものであり、高い表面強度を有する被膜を形成し易い(例えば特許文献1、特許文献2等参照)。
特開2003−201443号 特開2002−79616号
しかし、特許文献1や特許文献2等のコーティング材組成物において、耐薬品性や防汚性が十分ではないという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高い反射防止性を有すると共に、耐薬品性、防汚性に優れたコーティング材組成物及び塗装品を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係るコーティング材組成物は、下記(A)の加水分解性オルガノシランと下記(B)の加水分解性オルガノシランとシリカ系金属酸化物微粒子とを混合した状態で、下記(A)及び下記(B)の加水分解性オルガノシランを加水分解した第一の加水分解物と、下記(A)の加水分解性オルガノシランと下記(C)の加水分解性オルガノシランとを共重合した、一方の末端にフッ素置換アルキル基を有する第二の加水分解物と、を含有して成ることを特徴とするものである。
(A)一般式がSiX(Xは加水分解基) …(1)
で表わされる加水分解性オルガノシラン、
(B)撥水基を直鎖部に備えると共にアルコキシ基が結合したシリカ原子を分子内に2個以上有する加水分解性オルガノシラン、
(C)フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン
また請求項2の発明は、請求項1において、加水分解性オルガノシラン(B)の撥水基が、下記式(2)又は下記式(3)で示されるものであることを特徴とするものである。
Figure 2007099828
(式(2)においてR、Rはアルキル基、nは2〜200の整数)
-(-CF-)- …(3)
(式(3)においてnは2〜20の整数)
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、加水分解性オルガノシラン(B)が、下記式(4)で示されるオルガノシランであることを特徴とするものである。
Figure 2007099828
(式(4)においてR、R、Rはアルキル基、mは1〜3の整数、nは2〜200の整数)
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、加水分解性オルガノシラン(B)が、式(5)の構造を備えた直鎖部に、アルコキシ基が結合したシリカ原子が3個以上結合したオルガノシランであることを特徴とするものである。
-(-CH-)−(-CF-)−(-CH-)- …(5)
(式(5)においてn,pは1〜20の整数)
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、マトリクス形成材料に、式(6)で表されるシリコーンジオール(D)を含有することを特徴とするものである。
Figure 2007099828
(式(6)においてnは20〜100の整数)
本発明の請求項6に係る塗装品は、請求項1乃至5のいずれかに記載のコーティング材組成物の硬化被膜を、基材の表面に備えて成ることを特徴とするものである。
本発明によれば、第二の加水分解物をマトリクスとして硬化被膜を形成することができるので、屈折率が低い硬化被膜を形成することができるものであり、シリカ系金属酸化物微粒子の配合量を少なくしても屈折率が低く優れた反射防止性能を有する硬化被膜を形成することができると共に、高い表面強度の硬化被膜を形成することができるものである。また、マトリクス形成材料に加水分解性オルガノシラン(B)を含有するので、この加水分解性オルガノシラン(B)はアルコキシ基が結合した2個以上のシリカ原子(シリコーンアルコキシド)が被膜の表面に配位して、撥水基がブリッジ状に被膜の表面に結合し、硬化被膜の表面を撥水性にすることができると共に、硬化被膜の表面の緻密化が進んで多孔質の空孔を小さくすることができるものであり、この結果、耐薬品性や防汚性を向上することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係るコーティング材組成物は、マトリクス形成材料とシリカ系金属酸化物微粒子を含有して調製されるものであり、マトリクス形成材料は、加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)と加水分解性オルガノシラン(C)とを用いて形成されるものである。
本発明において用いる加水分解性オルガノシラン(A)は、一般式が
SiX(Xは加水分解基) …(1)
で表わされる4官能加水分解性オルガノシランである。
この式(1)で表される4官能加水分解性オルガノシランとしては、次の式(7)で示されるような4官能オルガノアルコキシシランを挙げることができる。
Si(OR) …(7)
上記式(7)のアルコキシル基「OR」中の「R」は1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好適であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等のアルキル基等を例示することができる。アルコキシド基中に含有されるアルキル基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基等のように直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであってもよい。
また4官能加水分解性オルガノシランの加水分解基Xとしては、上記のアルコキシル基の他に、アセトキシ基、オキシム基(−O−N=C−R(R'))、エノキシ基(−O−C(R)=C(R')R”)、アミノ基、アミノキシ基(−O−N(R)R')、アミド基(−N(R)−C(=O)−R')(これらの基においてR、R'、R”は、例えばそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基等である)や、ハロゲン等を挙げることができる。
また本発明において用いる加水分解性オルガノシラン(B)は、撥水基を直鎖部に備えると共にアルコキシ基が結合したシリカ原子を分子内に2個以上有する加水分解性オルガノシランである。
この加水分解性オルガノシランは、撥水性(疎水性)の直鎖部を備え、アルコキシ基が結合したシリカ原子を分子内に2個以上有するものであり、このシリコーンアルコキシドは直鎖部の少なくとも両末端に結合していることが望ましい。加水分解性オルガノシランにおいて、シリコーンアルコキシドは2個以上有しておればよく、シリコーンアルコキシドの個数の上限は特に限定されない。
上記の加水分解性オルガノシランとしては、直鎖部がジアルキルシロキシ系のものと、直鎖部がフッ素系のものを用いることができる。
ジアルキルシロキシ系の加水分解性オルガノシランの直鎖部は上記の式(2)のように形成されるものであり、直鎖部の長さはn=2〜200の範囲が好ましい。nが2未満(すなわちn=1)であると、直鎖部の撥水性が不十分であり、加水分解性オルガノシランを含有させることによる効果を十分に得ることができない。逆にnが200を超えると、他のマトリクス形成材料との相溶性が悪くなる傾向があり、硬化被膜の透明性に悪影響を及ぼしたり、硬化被膜に外観ムラが発生するおそれがある。
このジアルキルシロキシ系の加水分解性オルガノシランとしては、上記の式(4)で示されるものを用いることができるものであり、特に限定されるものではないが、その具体例として次の式(8)〜(10)のものを挙げることができる。
Figure 2007099828
またフッ素系の加水分解性オルガノシランの直鎖部は上記の式(3)のように形成されるものであり、直鎖部の長さはn=2〜20の範囲が好ましい。nが2未満(すなわちn=1)であると、直鎖部の撥水性が不十分であり、加水分解性オルガノシランを含有させることによる効果を十分に得ることができない。逆にnが20を超えると、他のマトリクス形成材料との相溶性が悪くなる傾向があり、硬化被膜の透明性に悪影響を及ぼしたり、硬化被膜に外観ムラが発生するおそれがある。
このフッ素系の加水分解性オルガノシランとしては、特に限定されるものではないが、その具体例として次の式(11)〜(14)のものを挙げることができる。
Figure 2007099828
これらのなかでも、上記の式(5)で表される(12)や(13)のもののように、直鎖部にアルコキシ基が結合したシリカ原子が3個以上結合するオルガノシランが特に好ましい。このようにアルコキシ基が結合したシリカ原子を3個以上有することによって、撥水性の直鎖部が被膜の表面により強固に結合し、硬化被膜の表面を撥水性にする効果を高く得ることができるものである。
そして、上記の加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)を加水分解することによって、第一の加水分解物を調製することができる。第一の加水分解物の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、200〜5000の範囲が好ましい。200未満であると被膜形成能力が劣り、逆に5000を超えると被膜強度が低下するおそれがある。加水分解の際の温度条件は、20〜30℃程度が好ましい。温度がこの範囲より低いと反応が進まず、逆にこの範囲より温度が高いと反応が早く進みすぎて一定の分子量の確保が困難になると共に、分子量が大きくなりすぎて膜強度が落ちるおそれがある。また、加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)の混合比率は、固形分質量比率として95:5〜10:90の範囲に設定するのが、本発明の効果を良好に発現させるうえで好ましい。
ここで、このように加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)を加水分解して第一の加水分解物を調製するにあたって、本発明では、シリカ系金属酸化物微粒子を混合した状態で加水分解するようにしてあり、シリカ系金属酸化物微粒子と混合させた状態の第一の加水分解物を得るようにしてある。この第一の加水分解物において、加水分解性オルガノシラン(B)は加水分解の際にシリカ系金属酸化物微粒子の表面と反応し、シリカ系金属酸化物微粒子に加水分解性オルガノシラン(B)は化学的に結合された状態になっており、シリカ系金属酸化物微粒子に対する加水分解性オルガノシラン(B)の親和性を高めることができるものである。
尚、加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)を加水分解した後に、シリカ系金属酸化物微粒子を混合した状態でさらに加水分解して第一の加水分解物を得るようにする他に、シリカ系金属酸化物微粒子を混合した状態で加水分解性オルガノシラン(A)と加水分解性オルガノシラン(B)を加水分解することによって、加水分解を行なうと同時にシリカ系金属酸化物微粒子と混合させた状態の第一の加水分解物を得るようにしてもよい。
上記のシリカ系金属酸化物微粒子としては、内部が空洞でない非中空微粒子や、外殻がシリカ系金属酸化物で形成され内部が空洞となった中空微粒子を用いることができる。非中空のシリカ系金属酸化微粒子としては、特に限定されるものではないが、シリカ微粒子を用いることができる。このシリカ微粒子を配合することによって、コーティング材組成物によって形成される硬化被膜の機械的強度を向上させることができるものであり、さらには表面平滑性と耐クラック性をも改善することができるものである。このシリカ微粒子の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粉体状の形態でもゾル状の形態でもよい。シリカ微粒子をゾル状の形態、すなわちコロイダルシリカとして使用する場合、特に限定されるものではないが、例えば、水分散性コロイダルシリカあるいはアルコール等の親水性の有機溶媒分散性コロイダルを使用することができる。一般にこのようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定することができる。このシリカ微粒子の配合量は特に限定されるものではないが、コーティング材組成物中における固形分全量に対して、0.1〜30質量%になるように設定するのが好ましい。0.1質量%未満ではこのシリカ微粒子の配合による効果が得られないおそれがあり、逆に30質量%を超えると硬化被膜の屈折率を高くするように悪影響を及ぼすおそれがある。
また、外殻がシリカ系金属酸化物で形成されたシリカ系中空微粒子としては、中空シリカ微粒子を用いることができる。中空シリカ微粒子はシリカ系金属酸化物の外殻の内部に空洞が形成されたものであり、このようなものであれば特に限定されるものではないが、具体的には次のようなものを用いることができる。例えば、シリカ系無機酸化物からなる外殻(シェル)の内部に空洞を有した中空シリカ微粒子を用いることができる。シリカ系無機酸化物とは、(a)シリカ単一層、(b)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物の単一層、及び(c)上記(a)層と(b)層との二重層を包含するものをいう。外殻は細孔を有する多孔質なものであってもよいし、細孔が後述する操作により閉塞されて空洞を密封したものであってもよい。外殻は、内側の第1シリカ被覆層及び外側の第2シリカ被覆層からなる複数のシリカ系被覆層であることが好ましい。外側に第2シリカ被覆層を設けることにより、外殻の微細孔を閉塞させて外殻を緻密化したり、さらには、外殻で内部の空洞を密封した中空シリカ微粒子を得ることができるものである。
第1シリカ被覆層の厚みは1〜50nm、特に5〜20nmの範囲とすることが好ましい。第1シリカ被覆層の厚みが1nm未満であると、粒子形状を保持することが困難となって、中空シリカ微粒子を得ることができないおそれがあり、また第2シリカ被覆層を形成する際に、有機珪素化合物の部分加水分解物等が上記核粒子の細孔に入り、核粒子構成成分の除去が困難となるおそれがある。逆に、第1シリカ被覆層の厚みが50nmを超えると、中空シリカ微粒子中の空洞の割合が減少して屈折率の低下が不十分となるおそれがある。さらに、外殻の厚みは、平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあることが好ましい。第2シリカ被覆層の厚みは、第1シリカ被覆層との合計厚みが上記1〜50nmの範囲となるようにすればよく、特に外殻を緻密化する上では、20〜49nmの範囲が好適である。
空洞には中空シリカ微粒子を調製するときに使用した溶媒及び/又は乾燥時に浸入する気体が存在している。また、空洞には空洞を形成するための前駆体物質が残存していてもよい。前駆体物質は、外殻に付着してわずかに残存していることもあるし、空洞内の大部分を占めることもある。ここで、前駆体物質とは、第1シリカ被覆層を形成するための核粒子からその構成成分の一部を除去した後に残存する多孔質物質である。核粒子には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の複合酸化物微粒子を用いる。無機酸化物としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、Ce、P、Sb、MoO、ZnO、WO等の1種又は2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO−Al、TiO−ZrO等を例示することができる。なお、この多孔質物質の細孔内にも上記溶媒あるいは気体が存在している。このときの構成成分の除去量が多くなると空洞の容積が増大し、屈折率の低い中空シリカ微粒子が得られ、この中空シリカ微粒子を配合して得られる透明被膜は低屈折率で反射防止性能に優れる。
中空シリカ微粒子の平均粒子径は5nm〜2μmの範囲にある。5nmよりも平均粒子径が小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さく、逆に2μmよりも平均粒子径が大きいと、透明性が極端に悪くなり、拡散反射(Anti-Glare)による寄与が大きくなってしまう。硬化被膜に高い透明性が要求される用途として、例えばディスプレイ等の反射を防止するためには、中空シリカ微粒子の平均粒子径は5〜100nmの範囲が好ましい。なお、上記平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
中空微粒子の配合量は特に限定されるものではないが、コーティング材組成物における質量割合が、中空微粒子/その他の成分(固形分)=95/5〜20/80の範囲になるように設定するのが好ましく、より好ましくは80/20〜30/70である。中空微粒子が95より多いと、コーティング材組成物によって得られる硬化被膜の機械的強度が低下するおそれがあり、逆に中空微粒子が20より少ないと、硬化被膜の低屈折率を発現させる効果が小さくなるおそれがある。
また本発明において用いるフッ素置換アルキル基含有加水分解性オルガノシラン(C)としては、下記式(15)〜(17)で表される構成単位を有するものが好適である。
Figure 2007099828
(式中、Rは炭素数1〜16のフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基を示し、Rは炭素数1〜16のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、またはアルコキシ基、水素原子あるいはハロゲン原子を示す。またXは−(C)−を示し、aは1〜12の整数、b+c=2aであり、bは0〜24の整数、cは0〜24の整数である。このようなXとしては、フルオロアルキレン基とアルキレン基とを有する基が好ましい。)
上記の加水分解性オルガノシラン(A)と、このフッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)とを混合し、加水分解させて共重合することによって、一方の末端にフッ素置換アルキル基を有する第二の加水分解物を得ることができるものである。加水分解性オルガノシラン(A)とフッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)の混合比率(共重合比率)は、特に限定されるものではないが、縮合化合物換算の質量比率で、加水分解性オルガノシラン(A)/フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)=95/5〜50/50の範囲が好ましい。フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)の量が5質量%未満であると、フッ素成分による撥水・撥油性や防汚性を十分に発現させることができず、逆に50質量%を超えると、被膜強度の低下や、被膜の白濁が生じ、また塗装時にはじいたりする不良の原因になるおそれがある。第二の加水分解物の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、200〜5000の範囲が好ましい。200未満であると被膜形成能力が劣り、逆に5000を超えると被膜強度が低下するおそれがある。加水分解の際の温度条件は、20〜30℃程度が好ましい。温度がこの範囲より低いと反応が進まず、逆にこの範囲より温度が高いと反応が速く進み過ぎて一定の分子量の確保が困難になると共に、分子量が大きくなり過ぎて膜強度が落ちるおそれがある。
そして、上記のシリカ系金属酸化物微粒子を混合した第一の加水分解物と、第二の加水分解物を混合することによって、第一の加水分解物と第二の加水分解物との混合物をマトリクス形成材料とし、シリカ系金属酸化物微粒子をフィラーとして含有するコーティング材組成物を得ることができるものである。シリカ系金属酸化物微粒子を混合した第一の加水分解物と第二の加水分解物との混合比率は、質量比率で95:5〜50:50の範囲に設定するのが好ましい。第二の加水分解物が質量で5%未満であると、フッ素基含有率が低くなり、防汚の効果を十分に得ることができなくなるものであり、また第一の加水分解物が質量で50%未満であると、加水分解性オルガノシラン(B)由来の撥水基が少なくなり、耐アルカリ性の効果を十分に得ることができなくなるものである。
上記のように調製したコーティング材組成物を基材の表面に塗装して被膜を形成すると共にこの被膜を乾燥硬化させることによって、表面に低屈折率を有する硬化被膜が形成された塗装品を得ることができる。なお、コーティング材組成物が塗装される基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスに代表される無機系基材、金属基材、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートに代表される有機系基材を挙げることができ、また基材の形状としては、板状やフィルム状等を挙げることができる。さらに、基材の表面に1層以上の層が形成されていても構わない。
コーティング材組成物を基材の表面に塗装するにあたって、その方法は特に限定されるものではないが、例えば、刷毛塗り、スプレーコート、浸漬(ディッピング、ディップコート)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、テーブルコート、シートコート、枚葉コート、ダイコート、バーコート等の通常の各種塗装方法を選択することができる。
また、基材の表面に形成した被膜を乾燥させた後に、これに熱処理を行なうのが好ましい。この熱処理によって、硬化被膜の機械的強度をさらに向上させることができるものである。熱処理の際の温度は、特に限定されるものではないが、100〜300℃の比較的低温で5〜30分処理することが好ましい。このように低温で熱処理を行なっても、高温で熱処理を行うときと同等の機械的強度を得ることができるので、製膜コストを低減することが可能となり、また高温による熱処理の場合のように、基材の種類が制限されることがなくなるものである。しかも、例えばガラス基材の場合には熱伝導率が低いため、温度の上昇と冷却に時間がかかり、高温による熱処理ほど処理スピードが遅くなるのに対し、低温による熱処理では逆に処理スピードを早めることができるものである。基材の表面に形成する硬化被膜の膜厚は、使用用途や目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、50〜150nmの範囲が好ましい。
そして、本発明に係るコーティング材組成物を用いれば、低屈折率の硬化被膜を容易に形成することができ、反射防止用途に好適である。例えば、基材の屈折率が1.60以下の場合には、この基材の表面に屈折率が1.60以上の硬化被膜を形成してこれを中間層とし、さらにこの中間層の表面に、本発明に係るコーティング材組成物による硬化被膜を形成するのが有効である。中間層を形成するための硬化被膜は、公知の高屈折率材料を用いて形成することができ、またこの中間層の屈折率は1.60以上であれば、本発明に係るコーティング材組成物による硬化被膜との屈折率の差が大きくなり、反射防止性能に優れた反射防止基材を得ることができるものである。また反射防止基材の硬化被膜の着色を緩和するために、中間層を屈折率の異なる複数の層で形成してもよい。反射防止の用途としては、例えば、ディスプレイの最表面、自動車のサイドミラー、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスの内面、その他車両用ガラス、建材ガラス等を挙げることができる。
また、本発明のコーティング材組成物には、マトリクス形成材料の一部としてシリコーンジオール(D)をさらに含有させるようにしてもよい。シリコーンジオール(D)は、上記の式(6)で表わされるジメチル型のシリコーンジオールである。上記の式(6)において、ジメチルシロキサンの繰り返し数nは特に限定されるものではないが、n=20〜100の範囲が好ましい。nが20未満であると、後述のような摩擦抵抗の低減の効果を十分に得ることができず、逆にnが100を超えると、他のマトリクス形成材料との相溶性が悪くなる傾向があり、硬化被膜の透明性に悪影響を及ぼしたり、硬化被膜に外観ムラが発生するおそれがある。シリコーンジオール(D)の配合量は特に限定されるものではないが、コーティング材組成物の全固形分(中空微粒子やマトリクス形成材料の縮合化合物換算固形分)に対して1〜10質量%の範囲が好ましい。
このようにコーティング材組成物にマトリクス形成材料の一部としてシリコーンジオールを含有させると、硬化被膜にはこのシリコーンジオールが導入されるので、硬化被膜の表面摩擦抵抗を小さくすることができる。従って、硬化被膜の表面への引っ掛かりを低減して、傷が入り難くなるようにすることができ、耐擦傷性を向上することができるものである。特に本発明で用いるジメチル型のシリコーンジオールは、被膜を形成した際には被膜の表面にシリコーンジオールが局在し、被膜の透明性を損なわないものである(ヘーズ率が小さい)。またジメチル型のシリコーンジオールは本発明で用いるマトリクス形成材料と相溶性に優れ、しかもマトリクス形成材料のシラノール基と反応性を有するために、マトリクスの一部として硬化被膜の表面に固定されるものであり、単にシリコーンオイル(両末端もメチル基)を混入しただけの場合のように硬化被膜の表面を拭くと除去されてしまうようなことがなく、長期に亘って硬化被膜の表面摩擦抵抗を小さくして耐擦傷性を長期間維持することができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
撥水基を直鎖に備える加水分解性オルガノシラン(B)として、撥水性の直鎖部がフッ素系の
(H3CO)3Si-(CH2)2-(CF2)2-(CH2)2-Si(OCH3)3
を用いた。そしてこの加水分解性オルガノシラン(B)11.70質量部に、加水分解性オルガノシラン(A)としてテトラエトキシシラン31.25質量部、メタノール445.82質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加え、またシリカ系金属酸化物フィラーとして中空シリカIPA(イソプロパノール)分散ゾル(固形分20.5%、平均一次粒子径60nm、外殻厚み約10nm、触媒化成工業製)を58.53質量部添加した。この混合物を25℃恒温槽中で1時間攪拌することによって、第一の加水分解物を得た。この場合の加水分解性オルガノシラン(B)由来の固形分質量割合は第一加水分解物中で50%である。
また、フッ素基置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)として、
CF3-(CF2)7-(CH2)2-Si(OCH3)3
を用い、この加水分解性オルガノシラン(C)3.42質量部に、加水分解性オルガノシラン(A)としてテトラエトキシシラン93.75質量部、メタノール450.13質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加え、この混合物を25℃恒温槽中で1時間攪拌することによって、第二の加水分解物を得た。この場合のフッ素基置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)由来の固形分質量割合は第二加水分解物中で10%である。
上記のようにして得た第一の加水分解物と第二加水分解物を質量比率で80:20になるように混合し、さらに全固形分が3質量%になるようにIPAで希釈することによってコーティング材組成物を得た。
そしてこのコーティング材組成物を1時間静置した後、予め酸化セリウム微粒子で研磨洗浄しておいたソーダライムガラス(屈折率1.54)の表面に、コーティング材組成物をワイヤーバーコータによって塗布し、120℃5分の条件で乾燥した後、100℃で10分間熱処理することによって、厚さ約100nmの硬化被膜を得た。
(実施例2)
撥水基を直鎖に備える加水分解性オルガノシラン(B)2.34質量部に、テトラエトキシシラン56.25質量部、メタノール430.18質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加え、またシリカ系金属酸化物フィラーを58.53質量部添加して加水分解するようにした以外は、実施例1と同様にして第一の加水分解物を得た。この場合の加水分解性オルガノシラン(B)由来の固形分質量割合は第一加水分解物中で10%である。その他は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(実施例3)
撥水基を直鎖に備える加水分解性オルガノシラン(B)18.73質量部に、テトラエトキシシラン12.5質量部、メタノール457.54質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加え、またシリカ系金属酸化物フィラーを58.53質量部添加して加水分解するようにした以外は、実施例1と同様にして第一の加水分解物を得た。この場合の加水分解性オルガノシラン(B)由来の固形分質量割合は第一加水分解物中で80%である。その他は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(実施例4)
撥水基を直鎖に備える加水分解性オルガノシラン(B)として、前記式(2)で示されるR,Rがメチル基であるものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして第一の加水分解物を得た。その他は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(実施例5)
フッ素基置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)1.71質量部に、テトラエトキシシラン98.96質量部、メタノール446.63質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加えて加水分解するようにした以外は、実施例1と同様にして第二の加水分解物を得た。この場合の加水分解性オルガノシラン(C)由来の固形分質量割合は第二加水分解物中で5%である。その他は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(実施例6)
フッ素基置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン(C)17.08質量部に、テトラエトキシシラン52.08質量部、メタノール478.14質量部、0.1規定硝酸水溶液52.70質量部を加えて加水分解するようにした以外は、実施例1と同様にして第二の加水分解物を得た。この場合の加水分解性オルガノシラン(C)由来の固形分質量割合は第二加水分解物中で50%である。その他は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(実施例7)
第一の加水分解物と第二の加水分解物の他に、コーティング材形成成分として前記式(6)のn≒40であるシリコーンジオール(D)をコーティング材組成物の全固形分に対して1質量%添加するようにした以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(比較例1)
第一の加水分解物の製造に、撥水基を直鎖に含有する加水分解性オルガノシラン(B)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
(比較例2)
第二の加水分解物の製造に、フッ素基置換加水分解性オルガノシラン(C)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング材組成物を得た後、実施例1と同様にして硬化被膜を得た。
上記の実施例1〜7及び比較例1〜2で得た硬化被膜について、ヘイズ、反射率、耐アルカリ性、防汚性を測定した。結果を表1に示す。
(ヘイズ)
ヘイズメータ(日本電色工業社製「NDH2000」)を使用し、ヘイズ値を測定した。
(反射率)
分光光度計(日立製作所製「U−4100」)を使用し、波長550nmの反射率を測定した。
(耐アルカリ性)
25℃の1N−NaOH水溶液に1時間浸漬し、次のA〜Dで判定した。
A:被膜に変化なし
B:被膜に浸漬した跡が見えるが、布で擦っても剥離異常なし
C:浸漬だけでは被膜の剥離はみられないが、布で擦ると被膜が剥離する
D:浸漬により被膜が剥離する
(防汚性)
硬化被膜の表面に指紋を付け、布で拭き取った際の防汚性を次のA〜Dで判定した。
A:数回で指紋を除去できる
B:十数回で指紋を除去できる
C:かなり拭くとなんとか指紋を除去できる
D:指紋を除去することができない(跡が残る)
Figure 2007099828
表1にみられるように、実施例1〜7のものは総て、耐アルカリ性と防汚性の両方において良好な結果を示すものであった。一方、撥水基を直鎖に含有する加水分解性オルガノシラン(B)を用いない比較例1のものは耐アルカリ性が劣り、またフッ素基置換加水分解性オルガノシラン(C)を用いない比較例2ものは防汚性が劣るものであった。

Claims (6)

  1. 下記(A)の加水分解性オルガノシランと下記(B)の加水分解性オルガノシランとシリカ系金属酸化物微粒子とを混合した状態で、下記(A)及び下記(B)の加水分解性オルガノシランを加水分解した第一の加水分解物と、下記(A)の加水分解性オルガノシランと下記(C)の加水分解性オルガノシランとを共重合した、一方の末端にフッ素置換アルキル基を有する第二の加水分解物と、を含有して成ることを特徴とするコーティング材組成物。
    (A)一般式がSiX(Xは加水分解基) …(1)
    で表わされる加水分解性オルガノシラン、
    (B)撥水基を直鎖部に備えると共にアルコキシ基が結合したシリカ原子を分子内に2個以上有する加水分解性オルガノシラン、
    (C)フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン
  2. 加水分解性オルガノシラン(B)の撥水基が、下記式(2)又は下記式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング材組成物。
    Figure 2007099828
    (式(2)においてR、Rはアルキル基、nは2〜200の整数)
    -(-CF-)- …(3)
    (式(3)においてnは2〜20の整数)
  3. 加水分解性オルガノシラン(B)が、下記式(4)で示されるオルガノシランであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング材組成物。
    Figure 2007099828
    (式(4)においてR、R、Rはアルキル基、mは1〜3の整数、nは2〜200の整数)
  4. 加水分解性オルガノシラン(B)が、式(5)の構造を備えた直鎖部に、アルコキシ基が結合したシリカ原子が3個以上結合したオルガノシランであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング材組成物。
    -(-CH-)−(-CF-)−(-CH-)- …(5)
    (式(5)においてn,pは1〜20の整数)
  5. 式(6)で表されるシリコーンジオール(D)を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコーティング材組成物。
    Figure 2007099828
    (式(6)においてnは20〜100の整数)
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のコーティング材組成物の硬化被膜を、基材の表面に備えて成ることを特徴とする塗装品。
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