JP2017218372A - 撥水性物品及びその製造方法 - Google Patents

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慎啓 加藤
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敬介 村田
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Shinsuke Yagi
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Abstract

【課題】本発明は、基材と、該基材上のシリカ微粒子を含む被膜と、該被膜上に撥水性化合物を含む被膜とを有する撥水性物品において、超撥水性と耐摩耗性を両立させた撥水性物品及びその製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、式[1]で示す焼結度が0.7〜0.9の被膜であり、該第2被膜が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜であることを特徴とする撥水性物品。【選択図】図1

Description

本発明は、撥水性物品及びその製造方法に関する。
撥水性物品を得るために、表面にフッ素化合物などの撥水性材料をコーティングする方法が従来から行われているが、平滑な基材表面に撥水性材料をコーティングする場合、水滴接触角は120°未満であることが知られている(非特許文献1)。一方、ハスの葉の表面のような凹凸を付与した基材表面に撥水性材料をコーティングすることで、水滴接触角が120°を超える撥水性が発現することが知られている。
水滴接触角が140°以上の超撥水性を有する物品として、疎水性シリカ微粒子を積層させて基材表面に凹凸構造を付与する方法が知られている(特許文献1)。また、シリカ微粒子の結合性を高めるために、シリカ微粒子間にバインダーとして樹脂もしくはシリカゾルを添加した構造が知られている(特許文献2、3)。
超撥水性物品は様々な分野への応用が考えられ、レインコートや靴に応用された場合には、防水のみならず防汚効果が期待でき、通信・放送アンテナなど屋外で使用される物品に応用された場合には、自浄作用も期待される。また、自動車のウインドシールドに応用された場合には、雨天時の視界確保が期待されるため、今後普及する可能性がある。自動車のウインドシールドなどの交換が容易でない場所に、超撥水性物品を設置する場合には、特に、摩耗や衝撃に対する耐久性が要求される。
しかし、清掃時の払拭やワイパーの摺動による摩耗や衝撃、雨や雹の衝撃、その他の飛来物との接触による汚染や衝撃等によって超撥水性物品の表面凹凸構造が損傷を受け、容易に撥水性能等が低下してしまうため、実際は用途が限定されている。そのため、超撥水性物品において耐摩耗性の向上は強く求められてきた。
非特許文献2では、シリカにソーダ灰などからなるアルカリ金属成分を添加することで、融点が低下することが示されている。しかし、この文献によると、二酸化ケイ素と酸化ナトリウムの共晶点は約780℃であり、一般的なソーダライムガラスが軟化し始める温度よりも高温である。
特開2010−155727号公報 特開2008−50380号公報 WO2008/72707号公報 Journal of Colloid and Interface Science,235,130−134(2001) Phase diagrams for ceramists,The American Ceramic Society,pp.94(1964)
特許文献1〜3に記載の撥水性物品は、水滴接触角が140℃以上と撥水性に優れる一方、耐摩耗性を向上させる余地があり(後述の比較例6、7参照)、超撥水性と耐摩耗性を両立させた撥水性物品が強く求められていた。なお、本明細書においては、水滴接触角が140°以上の撥水性のことを超撥水性と言う。
そこで、本発明は、基材と、該基材上のシリカ微粒子を含む被膜と、該被膜上に撥水性化合物を含む被膜とを有する撥水性物品において、超撥水性と耐摩耗性を両立させた撥水性物品及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、種々検討した結果、基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、焼結度が特定の範囲である被膜であり、該第2被膜がフルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物、及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜とすることで、超撥水性と耐摩耗性を両立させた撥水性物品を形成することが出来ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の各発明を含む。
[発明1]
基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、
以下の式[1]で示す焼結度が0.7〜0.9の被膜であり、

焼結度(L/D)=NeckLength(L)/Diameter(D) [1]

(式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。)

該第2被膜が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜であることを特徴とする撥水性物品。
[発明2]
前記シリカ微粒子の平均一次粒子径が1〜200nmであることを特徴とする発明1に記載の撥水性物品。
[発明3]
前記第1被膜表面の十点平均粗さ(Rz)が30〜200nmであることを特徴とする発明1または2に記載の撥水性物品。
[発明4]
前記アルカリ金属化合物が、酢酸アルカリ金属塩であることを特徴とする発明1〜3のいずれかに記載の撥水性物品。
[発明5]
前記第1被膜が、シリカ微粒子よりも融点が高い金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする発明1〜4のいずれかに記載の撥水性物品。
[発明6]
前記基材が、ガラス基材であることを特徴とする発明1〜5のいずれかに記載の撥水性物品。
[発明7]
請求項1に記載の撥水性物品の製造方法であって、
基材に第1被膜形成用塗布液を塗布する第1の塗布工程と、
330〜650℃で加熱して該基材上に第1被膜を形成する第1の加熱工程と、
該第1被膜上に第2被膜形成用塗布液を塗布する第2の塗布工程と、
100〜200℃で加熱して該第1被膜上に第2被膜を形成する第2の加熱工程を含み、
該第1被膜形成用塗布液が、シリカ微粒子と、アルカリ金属化合物と、溶媒とを含み、アルカリ元素/Siのモル比が0.6〜1.8であり、
該第2被膜形成用塗布液が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒を含む、
請求項1に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明8]
前記シリカ微粒子は、平均一次粒子径が1〜200nmであることを特徴とする発明7に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明9]
前記アルカリ金属化合物が、酢酸アルカリ金属塩であることを特徴とする、発明7または8に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明10]
前記第1被膜形成用塗布液中の前記シリカ微粒子の含有量が0.1〜10質量%、前記アルカリ金属化合物の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする、発明7〜9のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
[発明11]
前記第1被膜形成用塗布液中にシリカ微粒子よりも融点が高い金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする、発明7〜10のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
本発明によると、基材と、該基材上のシリカ微粒子を含む被膜と、該被膜上に撥水性化合物を含む被膜とを有する撥水性物品において、超撥水性と耐摩耗性を両立する撥水性物品を得ることが出来る。
本発明の撥水性物品の断面の模式図である。 本発明の撥水性物品の第1被膜における、シリカ微粒子の焼結構造の模式図である。 本発明の撥水性物品の第1被膜における、焼結度の違いを示す電子顕微鏡写真である。 本発明の撥水性物品の第1被膜の電子顕微鏡写真から、焼結度を定量的に評価する方法の概略を示す図である。 本発明の撥水性物品の第1被膜をXPS測定することにより得られた、Na1sスペクトルの抜粋である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
<撥水性物品>
本発明の撥水性物品について説明する。本発明の撥水性物品は、基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、以下の式[1]で示す焼結度が0.7〜0.9の被膜であり、

焼結度(L/D)=NeckLength(L)/Diameter(D) [1]

(式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。)

該第2被膜が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜であることを特徴とする撥水性物品である。
<基材>
前記基材としては、例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されている、フロート法やロールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。これら板ガラスを用いて形成される鏡等の反射性基材、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、網入りガラス、擦りガラス、模様が刻まれたガラス等の半透明から不透明のガラス基材を使用することができる。後述する撥水性物品の製造方法における第1の加熱工程では、330〜650℃で5〜90分間加熱を行うため、その加熱温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、基材は特に限定されるものではない。
前記ガラス基材の他にタイル、瓦、衛生陶器、食器等に使用されるセラミックス材料よりなる基材、ガラス窓等の枠体、調理器、メス、注射針等の医療器具、シンク、自動車のボディ等に使用されるステンレス鋼、アルミニウム、鉄鋼等の金属材料を使用することがある。
<第1被膜>
第1被膜は、前記基材上に形成され、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、以下の式[1]で示す焼結度が0.7〜0.9の被膜である。

焼結度(L/D)=NeckLength(L)/Diameter(D) [1]

(式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。)

第1被膜におけるシリカ微粒子の焼結構造の模式図を図2に示す。
本発明において、焼結度(L/D)とは、下記式[1]で定義された値を言う。ここで、Dは、焼結後のシリカ微粒子の直径を表し、Lは、焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さを表す。結合部(ネック)とは、シリカ微粒子の表面が溶融され、シリカ微粒子相互間が接着されている部分のことである。本発明において、焼結度は0.7〜0.9であり、シリカ微粒子が連結することにより、第1被膜は多孔質化している。焼結度が0.7より小さいと、耐摩耗性が低下しやすく、0.9より大きいと、撥水性が低下しやすくなる。)

焼結度(L/D)=NeckLength(L)/Diameter(D) [1]

(式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。
第1被膜をXPS(X線光電子分光)により測定し、第1被膜中にアルカリ金属が存在し、第1被膜がアルカリシリケート組成であることを確認している(後述の実施例参照)。焼結の初期段階では、シリカ微粒子の間にアルカリ金属が局所的に存在し、集中的に焼結が進む。その後、焼結が進むと、シリカ微粒子全体でアルカリ金属との反応が起こり、アルカリ金属が全体的に均一に存在するようになると推測している。このように、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物が焼結して、均一なアルカリシリケート組成になることで、第1被膜を含む撥水性物品の耐摩耗性の向上に寄与していると推測している。
第1被膜表面の十点平均粗さ(Rz)は、通常30〜200nmであり、下限値としては40nmが好ましく、50nmがより好ましく、60nmがさらに好ましい。Rzの上限値としては160nmが好ましく、150nmがより好ましく、140nmがさらに好ましい。本発明において、Rzが30nmよりも小さいと、耐摩耗性が低下しやすく、Rzが200nmよりも大きいと、撥水性が低下しやすくなる。
<第2被膜>
第2被膜は、第1被膜上に形成される被膜であり、フルオロアルキルシラン系化合物やパーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物、シリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜である。フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物を含む被膜を用いると、撥水性物品の撥水性を向上させやすく、第1被膜と化学結合するため耐摩耗性が高くできるので好ましい。
<撥水性物品の製造方法>
本発明の撥水性物品の製造方法について説明する。本発明の撥水性物品の製造方法は、基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品の製造方法であって、基材に第1被膜形成用塗布液を塗布する第1の塗布工程と、330〜650℃で加熱して該基材上に第1被膜を形成する第1の加熱工程と、該第1被膜上に第2被膜形成用塗布液を塗布する第2の塗布工程と、100〜200℃で加熱して該第1被膜上に第2被膜を形成する第2の加熱工程を含み、該第1被膜形成用塗布液が、シリカ微粒子と、アルカリ金属化合物と、溶媒とを含み、アルカリ元素/Siのモル比が0.6〜1.8であり、該第2被膜形成用塗布液が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む、撥水性物品の製造方法である。
<基材>
撥水性物品の製造方法における基材は、前述の撥水性物品における基材と同様である。
<第1被膜形成用塗布液>
第1被膜形成用塗布液は、シリカ微粒子と、アルカリ金属化合物と、溶媒とを含み、アルカリ元素/Siのモル比が0.6〜1.8である。
<シリカ微粒子>
第1被膜形成用塗布液に用いられるシリカ微粒子の平均一次粒子径は、通常1〜200nmである。本発明において、平均一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡観察下で微粒子の粒子径を計測して得られた粒度分布におけるD50値(累積50%粒子径)を言う。微粒子は、鎖状に連なる微粒子の凝集体、または単独で分離した個別粒子として存在するので、前者であれば凝集体を構成する一つの微粒子、後者であれば個別の一つの微粒子の粒子径をそれぞれ測定する。シリカ微粒子の平均一次粒子径が200nmより大きいと撥水性物品の透明性が低下しやすくなる。
シリカ微粒子としては、火炎加水分解法、燃焼加水分解法、噴霧熱分解法、火炎噴霧熱分解法、アーク法、プラズマ分解法などの乾式法によって製造されるシリカ微粒子や、沈殿法、ゲル法などの湿式法で製造されるシリカ微粒子を用いることが出来る。特に、乾式法によって製造されるシリカ微粒子を用いると、被膜の凹凸構造を形成しやすくなるので好ましい。乾式法によって製造されるシリカ微粒子の市販品としては、AEROSIL130(Evonik製)、デンカ熔融シリカUFP−30(デンカ製)などを用いることが出来る。また湿式法によって製造されるシリカ微粒子の市販品としては、オルガノシリカゾル(日産化学工業製)、スノーテックス(日産化学工業製)などを用いることが出来る。
第1被膜形成用塗布液において、シリカ微粒子の含有量は、通常0.1〜10質量%であり、下限値は0.3質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。上限値は、8質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。
<アルカリ金属化合物>
アルカリ金属化合物としては、有機溶媒や水に可溶なものが好ましく、例えば、有機溶媒に可溶なものとしては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム等の酢酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム等のアルカリ炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、ラウリン酸ナトリウム等のアルカリ金属を含む飽和脂肪酸塩などが挙げられる。水に可溶なものとしては、硝酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。これらのなかでは、酢酸アルカリ金属塩が、有機溶媒へ溶解されやすく、成膜後の乾燥しやすさの観点からも好ましい。第1の加熱工程における焼結時に、アルカリ金属化合物がシリカ微粒子の表面を溶融し、シリカ微粒子間を接着する働きがアルカリ金属化合物にあると推測している。
第1被膜形成用塗布液において、アルカリ金属化合物の含有量は、通常0.1〜15質量%であり、下限値は0.3質量%が好ましく、0.6質量%がより好ましい。上限値は、13質量%が好ましく、11質量%がより好ましく、9質量%がさらに好ましい。アルカリ金属塩を多く添加することで加熱温度を低くすることが出来るが、アルカリ金属塩が結晶析出しやすくなって膜が不均一となり、透明性が低下しやすくなる。
<アルカリ金属元素/Si比>
第1被膜形成用塗布液において、モル比でアルカリ金属元素/Siは、0.6〜1.8であり、下限値は0.7が好ましく、0.9がより好ましく、1.1がさらに好ましい。上限値は1.7が好ましく、1.6がより好ましい。0.6より小さくなると、耐摩耗性が低下しやすくなり、1.8より大きくなると撥水性が低下しやすくなる。
<溶媒>
本発明において、第1被膜形成用塗布液に用いる溶媒には、水または有機溶媒またはその混合物を用いる。有機溶媒には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、エチルラクテート、ブチルラクトン、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、2−プロパノン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルブチル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、モルフォリン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を用いることが出来る。これらの溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでは、メタノールが酢酸アルカリ金属塩を溶解させやすいため好ましい。
また、第1被膜形成用塗布液には、酸化ケイ素の前駆体を添加しても良い。酸化ケイ素の前駆体とは、化学量論的な二酸化ケイ素だけでなく、低次酸化ケイ素や、一部の酸素がマトリックス等と化学結合したものも意味する。該酸化ケイ素の前駆体を用いることにより、本発明の第1被膜の焼結構造の骨格の太さを増大させることが可能であり、同時に、第1被膜と基材との密着性を向上させることが可能である。また、加水分解を促すために、適宜、水や酸を添加しても良い。
酸化ケイ素の前駆体としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びそれらのメトキシ基がエトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等であるアルキルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−オキセタニルプロピルトリエトキシシラン等が使用できる。これらは単体で用いてもよいし、複数の組み合わせで用いてもよい。加水分解を促すために添加する酸としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、クエン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、グルコール酸、等の有機酸や、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。
また、第1被膜形成用塗布液には、シリカ以外の金属酸化物微粒子や金属微粒子やセラミックス微粒子を添加しても良い。シリカ以外の微粒子としては、アルミナ微粒子、ジルコニア微粒子、チタニア微粒子、二酸化スズ微粒子、タングステン微粒子、モリブデン微粒子、窒化アルミニウム微粒子、窒化ホウ素微粒子などが挙げられる。これらの微粒子は、シリカ微粒子とは別に塗布液に添加しても良いし、あらかじめシリカ微粒子と混合してから添加しても良いし、あらかじめシリカ微粒子との複合粒子化を行った後に添加しても良い。特に、シリカより融点の高い金属酸化物微粒子を用いることにより、本発明の第1被膜の焼結構造を微細化することが可能であり、本発明の第2被膜を塗布した後の水滴接触角を大きくすることが可能である。市販のアルミナ微粒子としては、Alu65、Alu130(エボニック・デグサ製)、TECNAPOW−AL2O3(TECNAN製)、市販のジルコニア微粒子としては、TECNAPOW−ZRO2(TECNAN製)、Zirconeo−Sp(アイテック製)などが挙げられる。
また、第1被膜形成用塗布液には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の界面活性剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤等の成分が含有されていてもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤(商品名「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−370」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−3455」、以上BYK製)やアクリル系界面活性剤(商品名「BYK−350」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−392」、「BYK−394」、「BYK−3441」、以上BYK社)等が挙げられる。
<第1の塗布工程>
第1の塗布工程においては、基材に第1被膜形成用塗布液を塗布する。第1被膜形成用塗布液を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り法、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フローコート法、スピンコート法、ロールコート法、それらの併用等各種塗布方法が適宜採用され得る。
<第1の加熱工程>
第1の加熱工程においては、330〜650℃で加熱して、基材上に第1被膜を形成する。基材上に前記第1被膜形成用塗布液を塗布後、330〜650℃で5〜90分間加熱させることで、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物の焼結体である第1被膜が形成される。加熱は、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。加熱温度の好ましい下限値は350℃、より好ましくは400℃、さらに好ましくは450℃である。加熱温度の好ましい上限値は600℃、より好ましくは550℃である。330℃より低い加熱温度では、撥水性物品の耐摩耗性が低下しやすくなる。
ここで、非特許文献2によると、NaOとSiOの2成分系の共晶点温度はおよそ780℃と知られている。基材にガラス基材を用いた場合、一般的なソーダライムガラスの軟化温度は780℃未満であるため、780℃以上で焼結を行うと、ガラス基材が軟化してしまい、基材の形状を保つことは困難である。本発明において、アルカリ金属化合物としてナトリウム化合物を用いた場合、シリカ微粒子の表層がナトリウムと反応してナトリウムシリケート成分を生成し、ナトリウムシリケート成分が表面エネルギーの低い状態を保とうと粘性流動によって比表面積を小さくする方向へ移動することにより、焼結が進行する。このナトリウムシリケートの粘性流動は780℃よりも低温でも起こるため、加熱温度を330〜650℃と低く出来ると推測している。また、本発明において、平均一次粒子径がナノサイズ(1〜数百nm)のシリカ微粒子を用いると、平均一次粒子径が1マイクロメートル以上の粗大なシリカ粒子を用いた場合よりもシリカ微粒子の熔融温度を低くすることができ、好ましい。
<第2被膜形成用塗布液>
第2被膜形成用塗布液は、撥水性化合物及び溶媒を含む。撥水性化合物としては、フルオロアルキルシラン系化合物やパーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物、ジメチルシリコーンに代表されるシリコーン化合物を用いることが出来る。フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物を用いると、撥水性物品の撥水性を向上させやすく、好ましい。
フルオロアルキルシラン系化合物の市販品としては、エボニック・デグサ製のF8261などが挙げられる。パーフルオロポリエーテルシラン系化合物の市販品としては、オプツールDSXやオプツールAES4などのオプツールシリーズ(ダイキン工業製)、KY130やKY108(信越化学工業製)、フロロサーフFG−5020(フロロテクノロジー製)、Dow2634Coating(東レ・ダウコーニング社製)などのシランカップリング剤が挙げられる。アルキルシラン系化合物としてはメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどが各社から販売されている。例えば、KBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13(信越化学工業製)が挙げられる。シラザン化合物の市販品としては、ヘキサメチルジシラザンSZ31(信越化学工業製)などが挙げられる。シリコーン化合物の市販品としては、ジメチルシリコーン化合物としてYF3800やYF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KF−8010やKF−8012(信越化学工業製)などが挙げられる。
第2被膜形成用塗布液の溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノルマルブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類やそれらの混合物を用いることが好ましい。また、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤を用いることもできる。中でも、イソプロピルアルコール等の低級アルコールは、フルオロアルキルシラン系化合物、酸触媒の溶解性が高く、さらに、第2被膜形成用塗布液の塗布性(塗り伸ばしやすさ)や乾燥時間(作業時間)が適度になるので特に好ましい。
また、第2被膜形成用塗布液には、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物、及びシリコーン化合物の加水分解を促すために、適宜、水や酸を添加しても良い。具体的には、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、クエン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、グルコール酸、等の有機酸や、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。
<第2の塗布工程>
第2の塗布工程においては、前記第1被膜上に第2被膜形成用塗布液を塗布する。
第2被膜形成用塗布液を前記第1被膜上に塗布する塗布方法としては、浸漬法、スキージ法、刷毛塗り法、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、フレキソ法、カーテンフローコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、それらの併用等各種塗布方法が適宜採用され得る。これらの塗布方法の中では、浸漬法、ディッピング法が塗布時に第1被膜の構造を破壊しにくく、内部まで塗布液が浸透するため、好ましい。ここで、前記第1被膜を、水または酸で洗浄してから第2被膜形成用塗布液を塗布しても良い。
<第2の加熱工程>
第2の加熱工程においては、100〜200℃で加熱して第1被膜上に第2被膜を形成する。第1被膜上に第2被膜形成用塗布液を塗布後、100〜200℃で1〜60分間加熱させることで、優れた耐摩耗性と超撥水性を有する固形の撥水性被膜を形成することができる。加熱は、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。
実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例および比較例で得られた撥水性物品は、以下に示す方法により品質評価を行った。本実施例および比較例で作製した撥水性物品は、ガラス基板の片側の全面に第2被膜を形成した構成である。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[膜構造]
触針式表面粗さ計(ET4000A、小坂研究所製)により、膜の十点平均粗さ(Rz)をJIS B0601に準拠して評価した。
[焼結度]
走査型電子顕微鏡にて第1被膜の膜構造を観察し、粒子の焼結度を評価した。電子顕微鏡写真(図3、4参照)から任意に5箇所抽出し、焼結後の粒子の直径(D)および骨格の太さ(L)を計測した。そして、DとLの平均値を下記式[1]に代入し、焼結度(L/D)を求めた。

焼結度(L/D)=NeckLength(L)/Diameter(D) [1]

(式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。)

電子顕微鏡写真と焼結度の値とを比較することにより、A;粒子が連結し、被膜が多孔質化している領域(L/D=0.7〜0.9)、B;焼結度が過少で、一次粒子の形状を留めている領域(L/D=0.7未満)、C;焼結度が過多で、被膜の立体構造の一部が消失している領域(L/D=0.9超〜1.0)といった領域があると考えられる。
[膜組成]
本発明によって得られた第1被膜を、XPS(アルバックファイ製、PHI5000 VersaProbe2)により測定した。
[水接触角]
被膜表面にイオン交換水2μlを置き、液滴を置いた10秒後の液滴と被膜表面とのなす角を、接触角計(CA−X200、協和界面科学製)を用いて室温(約25℃)で測定し、140℃以上を合格とした。
[透明性]
JIS−R3212の規格に則り、ヘーズメーター(日本電色工業製、NDH2000)を用いて測定した。ヘーズが2.0%未満を合格とした。
[耐摩耗性]
撥水性部材の表面にネル素地(#100)を2枚重ねて、10g/cmの荷重をかけて摺動させた後、水滴接触角を測定した。5往復後の水滴接触角が140度以上を合格、140度未満を不合格とした。5往復後も140度以上であったものは、50往復後の水滴接触角も測定した。
[実施例1]
(1)第1被膜形成用塗布液の調製
ガラス容器にシリカ微粒子(Evonik製、AEROSIL130、平均一次粒子径17nm)1.5gとメタノール28.5gを入れ、超音波ホモジナイザーを用いて25℃で1時間撹拌し、5質量%のシリカ微粒子分散液(A)を得た。また、酢酸ナトリウム(キシダ化学製)をメタノールに溶解して、5質量%の酢酸ナトリウム溶液(B)を得た。そして、ガラス容器に、シリカ微粒子分散液(A)2.0g、酢酸ナトリウム溶液(B)4.37g、メタノール3.63gを入れて、25℃にて30分間撹拌した。その後、25℃で超音波処理を5分間行い、第1被膜形成用塗布液を得た。ここで、下記[2]式より、アルカリ元素/Si(モル比)=(4.37g×5wt%/82.03)/(2.0g×5wt%/60.08)=0.00266/0.00166=1.6となっている。

alkali/XSi=(Walkali/Mwalkali)/(WSi/MwSi)[2]
(式[2]において、Xはモル濃度、Wは質量、Mwは分子量をそれぞれ表す。)
(2)基材の準備
10cm角で厚さ2mmのフロートガラス板の表面を酸化セリウムで十分に研磨した後、精製水で洗浄後、乾燥させて基材を準備した。
(3)撥水性物品の作製
(1)で調製した第1被膜形成用塗布液を、(2)で準備したガラス基材の上に、スピンコート法にて500rpmの回転速度で塗布したのち、電気炉を用いて500℃で1時間焼成し膜厚が約200nmの第1被膜形成物品を得た。走査型電子顕微鏡を用いてガラス基材表面に、シリカ微粒子が三次元的に連結し、多孔質被膜となっていることを確認した。また、XPS測定により、Na1sスペクトルを測定したところ、図5のスペクトルが得られ、第1被膜中にNaが存在すること、すなわち第1被膜がアルカリシリケート組成であることを確認した。
次に、第1被膜形成物品を、撥水性化合物であるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン;CF(CFCHCHSi(OC(商品名F8261、Evonik製)をフッ素系不活性溶媒(商品名FC−3283、住友スリーエム製)に溶解させて固形分濃度を0.2質量%とした第2被膜形成用塗布液に3時間浸漬した後取り出し、170℃の電気炉にて10分間加熱処理して、第1被膜上に第2被膜の形成された撥水性物品を得た。
上記の評価方法に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、超撥水性及び良好な耐摩耗性を示した。
[実施例2〜7、比較例1〜5]
表1に示すとおり、アルカリ金属化合物の種類、含有量、アルカリ元素/Si、焼成温度を変え、それ以外は実施例1と同様に実施した。
[実施例8]
撥水性化合物をパーフルオロポリエーテル変性シラン(商品名Dow2634Coating、東レ・ダウコーニング製)とした以外は、実施例1と同様にして撥水性物品を得た。
[実施例9]
ガラス容器にアルミナ微粒子Alu65(エボニック・デグサ製、平均一次粒子径17nm)1.5gとメタノール28.5gを入れ、超音波ホモジナイザーを用いて25℃で1時間撹拌し、5質量%のアルミナ微粒子分散液(C)を得た。そして、ガラス容器に、シリカ微粒子分散液(A)2.0g、アルミナ微粒子分散液(C)2.0g、酢酸ナトリウム溶液(B)4.37g、メタノール1.63gを入れて、25℃にて30分間撹拌することで、塗布液を得た。それ以外は、実施例1と同様にして撥水性物品を得た。
[比較例6]
疎水性シリカ微粒子R972(エボニック・デグザ製、平均一次粒子径16nm)1.5gをエタノール48.1gに分散させ、そこへテトラエトキシシラン0.27g、水0.08g、1N塩酸0.02gを添加し、加水分解させることで、塗布液を得た。このときの疎水性シリカ微粒子は3質量%、テトラエトキシシランは0.25質量%である。該塗布液をガラス基材に塗布後、室温(25℃)で30分間乾燥させた。
[比較例7]
シリカ微粒子IPA−ST−L(日産化学工業製)1.68gとIPA−ST−ZL(日産化学工業製)3.38gをイソプロピルアルコール25.8gに分散させ、塗布液Aを得た。疎水性シリカ微粒子R972(エボニック・デグザ製)0.2gをイソプロピルアルコール10.7gに添加し、変性シリコーン0.1g、テトラエトキシシラン0.07g、50%硝酸0.14gを添加し、超音波処理の後、加水分解させることで、塗布液Bを得た。塗布液Aをガラス基材に塗布後、300℃で10分間乾燥させ、その後、650℃で10分間加熱した。冷却後、塗布液Bを該ガラス基材に塗布後、300℃で1時間加熱した。
表1中、C6FASとは、フルオロアルキルシラン系化合物であるCF(CFCHCHSi(OCのことを指し、PFPEとはパーフルオロポリエーテル変性シラン(商品名Dow2634、東レ・ダウコーニング製)のことを指す。

表2より明らかなように、実施例1〜9で得られた撥水性物品は、基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、焼結度が0.7〜0.9の被膜である撥水性物品であり、該第2被膜は、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜であり、超撥水性と良好な耐摩耗性を有していた。
実施例9で得られた撥水性物品は、上記特徴に加えて、該第1被膜が、シリカ微粒子とアルミナ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、シリカ微粒子の焼結後の平均粒子径は47nm、アルミナ微粒子の焼結後の平均粒子径は22nmであり、焼結構造が微細化された第1被膜を得た。これは、シリカ微粒子より融点の高いアルミナ微粒子を用いたことにより、アルミナ微粒子はシリカ微粒子ほど焼結しなかったためである。すなわち、焼成温度が500℃の焼結過程において、アルカリアルミネート組成の粘性流動がアルカリシリケート組成の粘性流動よりも小さいために、焼結度に差が生じたと推察する。本実施例では、第2被膜を塗布した後の初期の水接触角がアルミナ微粒子を含まない場合(実施例1)よりも優れ、超撥水性と良好な耐摩耗性を有していた。
実施例1、2、6、7で得られた撥水性物品は、耐摩耗性試験50往復後でも超撥水性を示し、高い耐摩耗性を有しており、第1被膜形成用塗布液のNa/Si比は1.1〜1.6が好ましく、焼成温度はより高温のほうが好ましいことが分かった。
[比較例1]
アルカリ金属化合物を用いなかったところ、焼結度やRzが小さく、実施例より耐摩耗性が劣っていた。
[比較例2]
第1被膜形成用塗布液のアルカリ元素/Siの比を0.5としたところ、焼結度やRzが小さく、実施例よりも耐摩耗性が劣っていた。
[比較例3]
第1被膜形成用塗布液のアルカリ元素/Siの比を2.0としたところ、焼結度やRz
が大きく、実施例よりも初期の水接触角が劣っていた。
[比較例4]
第1被膜形成用塗布液を塗布後の焼成温度を300℃としたところ、焼結度が小さく、実施例よりも耐摩耗性が劣っていた。
[比較例5]
第1被膜形成用塗布液のアルカリ元素/Siの比を2.0、第1被膜形成用塗布液を塗布後の焼成温度を300度としたところ、焼結度が小さく、実施例よりも耐摩耗性が劣っていた。
[比較例6]
特許文献2を参考に、シリカ微粒子の焼結はなく、シリカ微粒子間にシリカバインダーを含む構造としたところ、実施例よりも耐摩耗性が劣っていた。
[比較例7]
特許文献3を参考に、シリカ微粒子の焼結はなく、第1被膜を、親水性シリカ微粒子を含む被膜とし、第2被膜を、疎水性シリカ微粒子と、該疎水性シリカ微粒子間にシリカバインダーを含む構造としたところ、実施例よりも耐摩耗性が劣っていた。
本発明の撥水性物品は、超撥水性と耐摩耗性を両立しており、例えば建築用や車両用の窓ガラスとして用いることが出来る。

Claims (11)

  1. 基材と、該基材上の第1被膜と、該第1被膜上の第2被膜とを有する撥水性物品であって、
    該第1被膜が、シリカ微粒子とアルカリ金属化合物との焼結体を含み、
    以下の式[1]で示す焼結度が0.7〜0.9の被膜であり、

    焼結度(L/D)=Neck Length(L)/Diameter(D) [1]

    (式[1]において、Neck Length(L)は焼結によりシリカ微粒子同士が結合したときの結合部(ネック)の太さ、Diameter(D)は焼結後のシリカ微粒子の直径を表す。)

    該第2被膜が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む被膜であることを特徴とする撥水性物品。
  2. 前記シリカ微粒子の平均一次粒子径が1〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の撥水性物品。
  3. 前記第1被膜表面の十点平均粗さ(Rz)が30〜200nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水性物品。
  4. 前記アルカリ金属化合物が、酢酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水性物品。
  5. 前記第1被膜が、シリカ微粒子よりも融点が高い金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性物品。
  6. 前記基材が、ガラス基材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性物品。
  7. 請求項1に記載の撥水性物品の製造方法であって、
    基材に第1被膜形成用塗布液を塗布する第1の塗布工程と、
    330〜650℃で加熱して該基材上に第1被膜を形成する第1の加熱工程と、
    該第1被膜上に第2被膜形成用塗布液を塗布する第2の塗布工程と、
    100〜200℃で加熱して該第1被膜上に第2被膜を形成する第2の加熱工程を含み、
    該第1被膜形成用塗布液が、シリカ微粒子と、アルカリ金属化合物と、溶媒とを含み、アルカリ元素/Siのモル比が0.6〜1.8であり、
    該第2被膜形成用塗布液が、フルオロアルキルシラン系化合物、パーフルオロポリエーテルシラン系化合物、アルキルシラン系化合物、シラザン化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒を含む、
    請求項1に記載の撥水性物品の製造方法。
  8. 前記シリカ微粒子は、平均一次粒子径が1〜200nmであることを特徴とする請求項7に記載の撥水性物品の製造方法。
  9. 前記アルカリ金属化合物が、酢酸アルカリ金属塩であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の撥水性物品の製造方法。
  10. 前記第1被膜形成用塗布液中の前記シリカ微粒子の含有量が0.1〜10質量%、前記アルカリ金属化合物の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
  11. 前記第1被膜形成用塗布液中にシリカ微粒子よりも融点が高い金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
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