JP5293499B2 - リン酸カルシウムの沈着を抑制したコラーゲンビトリゲル - Google Patents
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このような3次元培養を行う手段としては、中空糸を利用して細胞を多層化培養する方法、多数のビーズ担体の周囲に細胞を培養する方法、PUFをはじめとするスポンジ担体の多孔質内で細胞を凝集培養する方法、温度感受性培養担体等の機能性培養担体を利用した多細胞性球状凝集塊(スフェロイド)培養法、ガーゼ等の通液性培養担体を用いた多細胞性再構築体の培養法、生体内臓器の細胞の足場である細胞外マトリックスを連続的3段階灌流法により培養担体に改変して臓器をまるごと培養する器官工学の技術を利用した培養法、および生体の組織を複雑な構造とその構成成分を保持している動物組織の切片から成る培養担体上で細胞を培養する方法等が知られている。
すなわち、この技術は、細胞外マトリックス成分をはじめとするハイドロゲル培養担体が、柔らかく、取扱いが難しいこと等の問題点があることを解決すべく、ハイドロゲルよりも強度を高め、さらに支持体をつけることでその取扱いを簡便にしたものである。
しかしながら、この技術では、細胞外マトリックス含有ハイドロゲル薄膜を再現性良く作製するための条件が設定できておらず、また、充分な透明性を持たせることができていなかった。すなわち、特許文献1に記載された方法では、ハイドロゲル薄膜の強度をハイドロゲルよりも2倍程度上昇させることには成功していたものの、両面培養等の操作、もしくは細胞播種済みの状態での移動には、その強度は未だ不十分なものであった。また、顕微鏡観察にはハイドロゲル薄膜の透明性が必要であるが、特許文献1に記載の方法では、ハイドロゲル薄膜に濁りが残るという問題点があった。
また、竹澤等はこのハイドロゲル薄膜を新しい物性状態のゲルを意味する用語として、ビトリゲル(Vitrigel)という学術用語を設定した(参照:Takezawa T, et al., Cell Transplant. 13:463-473, 2004)。
これまでに、ビトリゲルの透明性を生かし、角膜上皮細胞を播種した後、ビトリゲルを角膜欠損患者に移植する方法は提案されていた。しかし、特許文献1および2で開示されている従来のコラーゲンビトリゲルでは、移植前の長期培養時に生じる白色物質の沈着についての知見がなく、白色物質の沈殿を防ぐことが出来なかった。
すなわち、コラーゲンハイドロゲルを十分乾燥させて得られたコラーゲンビトリゲル(従来のコラーゲンビトリゲル)を使用して、数日間、さらには長期間細胞を培養するとコラーゲンビトリゲルに白色物質の沈着が生じるという問題があった。
コラーゲンビトリゲル上では、種々の細胞培養が可能であり、特に細胞分化を目的とした培養では長期の培養が必要であるから、本発明者は、長期培養におけるコラーゲンビトリゲルの白色物質の沈着を防ぐ方法を提供することを解決すべき課題とした。加えて、長期間の培養でも白色物質の沈着を防ぐコラーゲンビトリゲルを提供することも解決すべき課題とした。
さらに、本発明者は、上記知見を基にして、コラーゲンビトリゲル中に含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を低減させることにより、長期間の培養でも白色物質の沈着を防ぐことができるコラーゲンビトリゲルを提供することに成功した。
「コラーゲンビトリゲル」とは、コラーゲンゲルを乾燥させてガラス化した後に、再水和して作製される細胞培養単体である(参照:インターネットURL:http://atg.ushop.jp/rika/hbin/collagen.htm)。
「ガラス化(vitrification)」とは、鶏卵のタンパク質(白身)を熱変性させたもの(ハイドロゲル)を、十分乾燥することで固くて透明な物質に変えるガラス化技術(Takushi E.,Edible eyeballs from fish.Nature345,298,1990)で定義される。
コラーゲンビトリゲルの「乾燥方法」としては、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができるが、特に限定されない。
なお、上記風乾の方法としては、10℃、40%湿度で無菌に保たれたインキュベーターで2日間乾燥させる、もしくは無菌状態のクリーンベンチ内で一昼夜、室温で乾燥する等といった方法がある。さらに、風乾後は無菌状態を保ったままで、室温もしくは4℃で無菌的に保管する。この保管時間が1ヶ月以上になると、強度・透明度が有意に上昇することが確認されている。
コラーゲンビトリゲルを充分に乾燥させる時間は、その含有水分量の違いによって異なるが、圧縮破壊強度、透明度、重量の変化を検討した結果、コラーゲンビトリゲル乾燥体の乾燥重量が、コラーゲンゲル重量の1/50〜1/100に減少する範囲となるように乾燥時間を設定することにより、強度及び透明性に優れた薄膜を作製することができる。
コラーゲンビトリゲルの厚みを1μm〜1mmの範囲で作製することが好ましい。なお、コラーゲンビトリゲルの厚みが1μmより薄いと、必要な強度を得られない。一方、乾燥前のゲルの量を増やすことで、1mm以上の厚みのコラーゲンビトリゲルを作製することは可能であるが、乾燥させるのに長時間を要する。
加えて、コラーゲンビトリゲルの単位面積あたりのコラーゲン含有量は、100μg/cm2〜1mg/cm2、好ましくは約250μg/cm2が最適濃度である。コラーゲン含有量が100μg/cm2以下だと、コラーゲンの濃度が薄すぎてゲル化が弱く、充分な強度を有するコラーゲンビトリゲルを作製することができない。
「コラーゲン」としては、タイプI、タイプII、タイプIII及びタイプV等、いかなるタイプのコラーゲンもゲル化ができれば使用可能であるが、好ましくはタイプIを使用する。
また、コラーゲンの溶解に用いる溶媒としては、コラーゲンが溶解し、コラーゲンを変質させるものでなければ特に限定されない。例えば、水、塩酸溶液、メチルアルコール、エチルアルコール、リン酸緩衝液、及びこれらを混合したものを用いることができる。
さらに、コラーゲンをゲル化する方法としては、コラーゲンを至適な塩濃度とpH(好ましくはpH6〜10)に調製し、至適温度(好ましくは37℃)でゲル化することができる。
コラーゲンビトリゲルが、ゲル構成要素である高分子以外に生理活性物質を有していても良い。この生理活性物質としては、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、レクチン、またはゲル化しない細胞外マトリックス成分としてファイブロネクチン、ビトロネクチン、エンタクチン、オステオポエチン等が挙げられる。また、これらを複数含有させることも可能である。
上記の様な生理活性物質を含んだコラーゲンビトリゲルは、まずゲル化する前のゲル構成高分子溶液に、含有させたい生理活性物質を混合し、その後、ゲル化・ガラス化等のコラーゲンビトリゲルの作製工程を経て作製することができる。これにより、細胞増殖・分化・接着などに必要な因子をコラーゲンビトリゲル側から供給することができるので、より良い培養環境を実現することができる。また、含有させた生理活性物質の細胞に対する影響を調べる試験を行うのに非常に有用である。
コラーゲンビトリゲルは、培養容器に挿入して動物細胞を培養する細胞培養担体として用いることができる。培養する動物細胞としては、初代培養細胞、株化細胞、受精卵、およびそれらの細胞に外来遺伝子を導入した細胞が挙げられる。さらに、それらの細胞が、未分化な幹細胞、分化過程にある細胞、終末分化した細胞、および脱分化した細胞であっても良い。また、それらの細胞の培養を開始する手段としては、細胞懸濁液、細切組織片、受精卵、または三次元再構築した多細胞性凝集塊の播種が挙げられる。つまり、既存の方法で培養できる接着性の細胞は本コラーゲンビトリゲル上で培養することが可能である。
また、上述したような動物細胞を、コラーゲンビトリゲルの片面はもちろんのこと、両面に1種類以上の細胞を培養することが可能である。さらに、両面培養においては、各々の面に異種の細胞を培養することが可能である。特に、コラーゲンビトリゲルの一方の面には上皮系細胞、他方の面には間充織細胞を培養することで、上皮間充織相互作用を有した経皮吸収モデルや腸管吸収モデルなど、また、一方の面には血管内皮細胞、他方の面にはガン細胞を培養することで、血管新生モデルやガン浸潤モデルなどの細胞機能アッセイを可能とする。
さらに、コラーゲンビトリゲルを用いて培養した上皮間充織相互作用のある再構築体を、動物実験の代替モデル、培養臓器の開発および培養臓器の移植に適応することができる。コラーゲンビトリゲル担体のみで、臓器癒着防止に応用可能であるが、さらにコラーゲンビトリゲルの片面もしくは両面に細胞を培養し、かつその透明性を生かした角膜上皮細胞を播種した後、コラーゲンビトリゲルを角膜欠損患者へ移植する方法、あるいは高齢化社会に伴い、数回に渡る開腹手術により腹膜中皮組織が欠損し、腸管臓器癒着から腸閉塞等の合併症を引き起こす問題が起きているが、これに対し本培養担体上で腹膜のみならず胸膜、心膜の中皮を培養して、潤滑成分(ヒアルロン酸等)を分泌する優れた培養担体を移植することが可能となる。
本発明のコラーゲンビトリゲルは、上記従来のコラーゲンビトリゲルの特性を維持しつつ、従来のコラーゲンビトリゲルと比較して、含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を低減させたものである。下記実施例から明らかなように、コラーゲンビトリゲルが含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を予め低くしておけば、該コラーゲンを細胞培養の使用時に使用する培地及び緩衝液中のカルシウム濃度及び/又はリン濃度に影響されることなく、長期間に渡って白色物質の沈着を防ぐことができる。
よって、本発明のコラーゲンビトリゲルの作製方法は、該コラーゲンビトリゲルが含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を低減させることができれば特に限定されない。
例えば、ドーナツ状の支持体を培養用シャーレに入れる。一方、コラーゲン水溶液を予めカルシウム濃度及び/又はリン濃度を低減させた作製培地に入れ、均一に混和する。混和したコラーゲン混合液を先の支持体を入れた培養用シャーレに入れた後、5%CO2/95%空気存在下の37℃の保湿インキュベーターで2時間維持してゲル化する。
さらに、このゲルをクリーンベンチ内で蓋をはずした状態で無菌的に数日間乾燥することでガラス化させる。ガラス化した乾燥コラーゲンビトリゲルにPBSを加えることで、再水和する。
さらに、再水和したコラーゲンビトリゲルを超純水又はPBSで洗浄する。なお、PBSで洗浄した場合には、さらには超純水で追加の洗浄を行うことが好ましい。
さらにクリーンベンチ内で蓋をはずした状態で無菌的に2日間完全に乾燥させ、コラーゲンビトリゲル乾燥体を得る。
その後、室温で無菌的に保管維持し、さらに、使用前に超純水、PBSもしくは使用する培養液で水和することでコラーゲンビトリゲルは作製される。また、シャーレの内壁を周囲に沿って先の鋭敏なピンセットでなぞることで、支持体がついた強度のあるコラーゲンビトリゲルとしてシャーレより脱着回収することが可能である。
しかしながら、カルシウム濃度の高い培地を用いても、その後の洗浄によりコラーゲンビトリゲルに含有するカルシウムを除去すれば良い。
本発明の「コラーゲンビトリゲル乾燥体」とは、コラーゲンゲル重量の1/50〜1/100の範囲まで重量を減少させたものである。
また、コラーゲンビトリゲル乾燥体とは、上記「コラーゲンビトリゲル」を、好ましくは上記記載の乾燥方法で乾燥させて重量を減少させて得る。
本発明のコラーゲンビトリゲルの含有するカルシウム濃度は、乾燥重量当たり0.2%以下であり、好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.03%以下である。
また、本発明のコラーゲンビトリゲルの含有するリン濃度は、乾燥重量当たり0.8%以下であり、好ましくは0.48%以下、より好ましくは0.08%以下である。
上記のようにコラーゲンビトリゲルの含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を低減することにより、少なくとも7日間以上、好ましくは20日間以上、より好ましくは28日間以上において白色物質の沈着を防いで細胞培養することが可能である。
従来のコラーゲンビトリゲル上で細胞培養を長期間行うことによる該コラーゲンビトリゲルに沈着する白色物質の主成分を特定した。詳細は、以下の通りである。
外径33mm、内径24mmの円形中空の支持体をナイロンメンブレン(Amersham#RPN1782B)を切り抜いて作製し、滅菌処理後、疎水性ポリスチレン製培養用シャーレ(φ35mm:IWAKI#1000-035)に入れた。氷上で冷却した50ml容量の滅菌コニカルチューブ(IWAKI#2342−050)に2.5mlの細胞培養液{10%非動化ウシ胎児血清(FBS)、20mmol/l HEPES(GIBCO#15630−080)}含有ダルベッコ改変イーグル培地(Mediatech#10-017-CV)と2.5mlの0.5%I型コラーゲン水溶液(高研#IAC50)を加え、均一に混和した。最終濃度0.25%のコラーゲン混合液を先の支持体を入れた疎水性ポリスチレン製培養用シャーレに2.0ml入れた後、5%CO2/95%空気存在下の37℃の保湿インキュベーターで2時間維持してゲル化した。この終濃度0.25%コラーゲンゲルを、クリーンベンチ内でふたをはずした状態で無菌的に2日間完全に乾燥することでガラス化させた。3mlのPBSをガラス化させたコラーゲンビトリゲル乾燥体に加えることで、再水和した。さらに2回3mlのPBSでリンスした。さらにこのコラーゲンビトリゲルを、クリーンベンチ内でふたをはずした状態で無菌的に2日間完全に乾燥させた。その後、室温で無菌的に保管維持した。さらに、使用前には培養液で水和した。
上記で作製したコラーゲンビトリゲル上でTIG-3細胞を5×104cells/cm2で播種し、10%FBS/DMEM培地を用いて7日間培養した。そして、該コラーゲンビトリゲルに白色物質が沈着していることを確認した後に、白色物質を含むコラーゲンビトリゲルを培養液から回収し、乾燥させた。また、白色物質の沈着のないコラーゲンビトリゲルを培養液から回収し、乾燥させた。
さらに、回収した白色物質を含むコラーゲンビトリゲル乾燥体をEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)及びFT-RIにより分析した。加えて、白色物質の沈着のないコラーゲンビトリゲル乾燥体をFT-RIにより分析した。
また、回収した白色物質を含むコラーゲンビトリゲル乾燥体のFT-RI分析結果を図1に示し、白色物質の沈着のないコラーゲンビトリゲル乾燥体のFT-RI分析結果を図2に示す。
なお、各図中の「(1)」は、「ポリアミド化合物類のピーク」を示し、「(2)」は、「リン酸塩素系化合物類」を示す。図1の結果及び図2の結果の比較から明らかなように、白色物質の主成分はリン酸塩系化合物であることが判明した。
本発明者は、以上の分析結果より、白色物質の主成分がリン酸カルシウムであることを特定した。
コラーゲンビトリゲル作製時の培地の種類、培養時の培地の種類及び洗浄液の種類によるコラーゲンビトリゲルに沈着する白色物質への影響を確認した。詳しくは、3種類の作製時の培地及び培養時の培地を使用し、さらに作製時の洗浄液の種類{PBS(リン酸緩衝生理食塩水)又はddw(超純水)}による白色物質の沈着開始時期を確認した。また、実施例1とは異なり、FBSの影響を避けるためにコラーゲンビトリゲル作製時の培地からFBSを除いた。
下記の使用した培地及び洗浄液以外は上記実施例1で記載のコラーゲンビトリゲルの作製方法に従って、本発明のコラーゲンビトリゲルを作製した。
(1)使用した培地
DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)
カルシウム濃度72mg/L、リン濃度28mg/L
DF50(DMEM:Ham'sF12=1:1)
カルシウム濃度42mg/L、リン濃度15mg/L
Ham's F12
カルシウム濃度12mg/L、リン濃度31mg/L
(2)使用した洗浄液
PBS(リン酸緩衝生理食塩水)リン濃度345mg/L
ddw(超純水)
上記作製した各コラーゲンビトリゲル3種類に10%FBSのMedium(DMEM, DF50, Ham's F12)を2ml/wellで添加し、適宜培地交換(培地交換日:3,6,9,13,16,20,23,27日)を行いながら4週間放置した。
なお、サンプルAのみ、TIG-3細胞を5×103cells/mで、培地は10%FBS/DMEMを用いて播き込んだ。
最終的に4種類のサンプル(A,B,E,H)において白色物質の沈着を確認した。白色物質の沈着があったサンプルの中で比較すると、サンプルA及びBでは白色物質がコラーゲンビトリゲルの表面全体に沈着して、顕微鏡下ではコラーゲンビトリゲル表面を全く観察することが出来なかった。それに比べ、サンプルEは白色物質の沈着度合いが低いため、顕微鏡下で観察すると、ビトリゲル表面を確認することができた。サンプルHの白色物質の沈着は、サンプルEの白色物質の沈着と比較して少なかった。
次に、2晩乾燥後の洗浄に使用したPBSとddwの相違において、白色物質が沈着した5種類のサンプルの中で、洗浄する際の溶液のみが異なるサンプルB及びEを比較すると、PBSで洗浄したサンプルBの白色物質沈着は1週間後に開始したのに対し、サンプルEの白色物質沈着は3週間後に開始した。この結果よりPBSが白色物質の沈着に関与していると考えられる。
実際に培養する際の培養液の違いであるが、同一作製条件で、培養に用いる培地のみ異なるサンプルBCD、EFG及びHIJをそれぞれ比較すると、DMEM以外の培地を培養に使用することで、白色物質の沈着を抑えることができることから、培養に用いる培地中のカルシウム濃度がコラーゲンビトリゲルの白色物質の沈着に影響を与えていることがわかった。
一方、作製時の培地が異なり、培養時の培地は同一のDMEMを用いたサンプルEHKの内、Kのみが白色物質の沈着が確認されなかった。
すなわち、培養時に用いる培地のカルシウム濃度及びリン濃度はコラーゲンビトリゲルの白色物質の沈着に影響を与えるが、作製時の培地中のカルシウム濃度、さらにはリン濃度を低減させることで白色物質の沈着を抑制できることがわかった。
以上の結果より、コラーゲンビトリゲルが含有するカルシウム濃度及び/又はリン濃度を予め低くしておけば、該コラーゲンビトリゲルを細胞培養に使用する培地及び緩衝液中のカルシウム濃度及び/又はリン濃度に関係なく、長期間に渡って白色物質の沈着を防ぐことができることがわかった。
本発明のコラーゲンビトリゲルのカルシウム及びリンの含有量を測定した。詳細は、以下の通りである。
上記「実施例2」で得られた3種類の培地及び2種類の洗浄方法を用いて作製したコラーゲンビトリゲルをシャーレの内壁を周囲に沿って先の鋭敏なピンセットでなぞることで、支持体がついたコラーゲンビトリゲルとしてシャーレより脱着回収した。これを風乾して分析に供した。
上記により得られたコラーゲンビトリゲル試料を2分割した。分割した試料をそれぞれ秤量し、硝酸及び硫酸で加水分解した後に、希硝酸で加温溶解して定容とした。この溶液について、ICP発光分光分析法で下記測定条件で、カルシウム及びリン濃度を測定し、試料中の含有量を測定した。
測定条件:測定波長 Ca 393.3nm、P 213.6nm
高周波出力 1.3kW
プラズマガス流量 16L/min
補助ガス流量 0.5L/min
キャリアガス流量 1.0L/min
測光高さ 15mm
下記表から明らかなように、本発明のコラーゲンビトリゲルの含有するカルシウム濃度は、乾燥重量当たり0.2%以下であり、好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.03%以下である。また、本発明のコラーゲンビトリゲルの含有するリン濃度は、乾燥重量当たり0.8%以下であり、好ましくは0.48%以下、より好ましくは0.08%以下である。
なお、下記表中のカルシウム濃度の「<」は、検出限界値以下であることを示している。
Claims (8)
- カルシウム濃度がコラーゲンビトリゲルの乾燥重量に対して0.2%以下であることを特徴とするコラーゲンビトリゲル又はコラーゲンビトリゲル乾燥体。
- リン濃度がコラーゲンビトリゲルの乾燥重量に対して0.8%以下であることを特徴とするコラーゲンビトリゲル又はコラーゲンビトリゲル乾燥体。
- カルシウム濃度がコラーゲンビトリゲルの乾燥重量に対して0.2%以下でありかつリン濃度がコラーゲンビトリゲルの乾燥重量に対して0.8%以下であることを特徴とするコラーゲンビトリゲル又はコラーゲンビトリゲル乾燥体。
- 前記コラーゲンがコラーゲンタイプ1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のコラーゲンビトリゲル又はコラーゲンビトリゲル乾燥体。
- コラーゲンタイプ1を乾燥させる工程を経てガラス化した後に、再水和し、さらに超純水で洗浄した後に乾燥して得られる乾燥コラーゲンビトリゲル。
- カルシウム濃度が乾燥重量に対して0.2%以下であることを特徴とする請求項5に記載の乾燥コラーゲンビトリゲル。
- リン濃度が乾燥重量に対して0.8%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の乾燥コラーゲンビトリゲル。
- コラーゲン水溶液をコラーゲンビトリゲル作成培地と混和させ、ゲル化させ、このゲルを乾燥させて乾燥コラーゲンビトリゲルを作製し、この乾燥コラーゲンビトリゲルを再水和させてコラーゲンビトリゲルを作製し、このコラーゲンビトリゲルを超純水で洗浄させ、さらに乾燥させることを特徴とするコラーゲンビトリゲル乾燥体の作製方法。
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