JP5194698B2 - 細胞培養膜、細胞培養キット及び細胞培養膜の製造方法 - Google Patents
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Description
第1の実施の形態に係る細胞培養膜は、カルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)でイオン架橋されたデオキシリボ核酸(DNA)からなる。カルシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜及びマグネシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜のそれぞれは透明であり、光学顕微鏡による細胞の観察に適している。第1の実施の形態に係る細胞培養膜は生体適合性を有し、細胞に対する親和性が高い。また第1の実施の形態に係る細胞培養膜は細胞培養液中において2日間以上溶解せず、形態を維持することが可能である。
まず500mlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM: Dulbecco Modified Eagle Medium)に、体積濃度が10%となるようにウシ胎児血清(FBS: Fetal Bovine Serum)を添加し、さらに体積濃度が1%となるようにペニシリン−ストレプトマイシン(Penicillin Streptomycin)を添加して、細胞培養液を調整した。次に図2に示す凍結保存用チューブ61中のマウス軟骨細胞(ATDC5)を含む-80℃で凍結された細胞凍結保存液62を解凍した。解凍された細胞凍結保存液62を図3に示すボトル63に滴下し、さらに細胞培養液をボトル63に滴下した。その後、マウス軟骨細胞を細胞培養液で懸濁し、第1の懸濁液64を得た。
第1の実施の形態の第1の実施例と同様に、図7に示すシャーレ101のウェル111A, 111C, 111Dの底面に、細胞培養膜10A, 10C, 10Dをそれぞれ配置した。その後、ウェル111A〜111Fのそれぞれを第1の実施例と同じ細胞培養液で満たし、ヒト肝癌細胞(Huh7)をまいた。
図12に示すように、シャーレ101のウェル111Aの底面にカルシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜20Aを配置した。またウェル111Bの底面に、カルシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなり、細胞培養膜20Aよりも小さい細胞培養膜20Bを配置した。またウェル111Cの底面に、カルシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなり、細胞培養膜20Bよりも小さい細胞培養膜20Cを配置した。またウェル111Dの底面に、カルシウムイオンでイオン架橋されたDNAからなり、細胞培養膜20Bと同じ大きさの細胞培養膜20Dを配置した。その後、ウェル111A〜111Fのそれぞれを第1の実施例と同じ細胞培養液で満たし、マウス骨髄由来未分化間葉系細胞(C3H10T1/2)をまいた。
図6に示すシャーレ101のウェル111Aの底面に銅イオン(Cu2+)でイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜を配置し、ウェル111Bの底面に亜鉛イオン(Zn2+)でイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜を配置し、ウェル111Cの底面に第2鉄イオン(Fe3+)でイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜を配置し、ウェル111Dの底面に第1鉄イオン(Fe2+)でイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜を配置した。その後、ウェル111A〜111Fのそれぞれを第1の実施例と同じ細胞培養液で満たし、マウス軟骨細胞(ATDC5)をまいた。マウス軟骨細胞をまいてから1日後、ウェル111A〜111Fを観察した。
第2の実施の形態に係る細胞培養膜はDNAの光産物からなる。DNAの光産物とは、紫外線(UV)照射によって架橋された、デオキシリボ核酸と1価のカチオンの塩である。DNAの光産物は、水(H2O)に対して不溶性である。次に第2の実施の形態に係る細胞培養膜の製造方法について説明する。まず第1の実施の形態と同様に、例えばDNAのナトリウム塩からなる水溶性フィルムをシャーレの底面に形成させる。その後、水溶性フィルムに、室温で1×10-2mJ/mm2以上のUVを照射する。UV照射により、例えば水溶性フィルムに含まれるチミンどうしが架橋し、チミンダイマーが形成される。またUV照射により、チミンの酸素(キノン構造)の部分が、他のチミン又はシトシンと反応して架橋する。あるいはDNAに含まれるリボースの炭素−水素結合(C-H)がUV照射により切断され、ラジカル化した炭素が他の炭素−水素結合と反応する。結果として、光架橋されたデオキシリボ核酸と1価のカチオンの塩から細胞培養膜が形成される。
まずDNAの光産物からなる細胞培養膜を、体積濃度が70%のエタノールで30分間滅菌した。次にシャーレのウェルの底面に、DNAの光産物からなる細胞培養膜を配置した。その後、ウェルを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たし、マウス軟骨細胞(ATDC5)をまいた。マウス軟骨細胞をまいてから1日後、図14に示すようにマウス軟骨細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜に接着していた。図15に示すように、3日後もマウス軟骨細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜の表面に接着しており、図16に示すように7日後もマウス軟骨細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜の表面に接着していた。またDNAの光産物からなる細胞培養膜は細胞培養液に溶解しなかった。
シャーレのウェルの底面にDNAの光産物からなる滅菌された細胞培養膜を配置し、ウェルを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たした。その後、ウェルにマウス骨髄由来未分化間葉系細胞(C3H10T1/2)をまいた。マウス骨髄由来未分化間葉系細胞をまいてから1日後、図17に示すようにマウス骨髄由来未分化間葉系細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜に接着していた。図18に示すように3日後もマウス骨髄由来未分化間葉系細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜の表面に接着しており、図19に示すように7日後もマウス骨髄由来未分化間葉系細胞はDNAの光産物からなる細胞培養膜の表面に接着していた。またDNAの光産物からなる細胞培養膜は細胞培養液に溶解しなかった。
第3の実施の形態に係る細胞培養膜は、DNA及び鮭由来I型コラーゲン(井原水産株式会社製)の混合物とカルシウムイオン又はマグネシウムイオンとの塩からなる。第3の実施の形態に係る細胞培養膜の製造方法について説明する。まず1.5gのDNAのナトリウム塩を200mlの純水に溶解させ、DNAのナトリウム塩の水溶液を調整する。また5gの鮭由来I型コラーゲンを100mlの純水に溶解させ、鮭由来I型コラーゲンの水溶液を調整する。次に、40mlのDNAのナトリウム塩の水溶液と20mlの鮭由来I型コラーゲンの水溶液とを混合し、混合液を調整する。その後、混合液を直径100mmのフッ素樹脂シャーレに滴下して乾燥させ、シャーレの底面にDNAのナトリウム塩及び鮭由来I型コラーゲンの混合物からなる水溶性フィルムを形成させる。次に水溶性フィルムを例えば1mol/lのCaCl2水溶液に浸すことにより、ナトリウムイオンをカルシウムイオンに交換する。結果としてDNA及び鮭由来I型コラーゲンの混合物がカルシウムイオンでイオン架橋され、第3の実施の形態に係る細胞培養膜が形成される。その後、細胞培養膜を超純水で洗浄し、乾燥させる。
第3の実施の形態の変形例に係る細胞培養膜は、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる。第3の実施の形態の変形例に係る細胞培養膜の製造方法について説明する。まず第1の実施の形態と同様に、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンでイオン架橋されたDNAを形成させる。イオン架橋されたDNAを純水で洗浄した後、重量濃度が5%の鮭由来I型コラーゲンの水溶液に一晩浸し、イオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる細胞培養膜を形成させる。その後、イオン架橋されたDNAの自由体積に含浸しなかった鮭由来I型コラーゲンを廃棄し、細胞培養膜を乾燥させる。
図6に示すシャーレ101のウェル111A, 111Bのそれぞれの底面に、DNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物のカルシウム塩からなる細胞培養膜を配置した。なおDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物のカルシウム塩は、DNAと鮭由来I型コラーゲンの混合物を形成した後、混合物をカルシウムイオンで架橋して製造された。またシャーレ101のウェル111C, 111Dのそれぞれの底面に、カルシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる細胞培養膜を配置した。なおカルシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物は、DNAをカルシウムイオンで架橋した後、イオン架橋されたDNAを鮭由来I型コラーゲンと混合して製造された。その後、ウェル111A〜111Dを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たし、マウス軟骨細胞(ATDC5)をまいた。
第3の実施の形態の第1の実施例を検証するために、図6に示すシャーレ101のウェル111A, 111Bのそれぞれの底面にカルシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる細胞培養膜を配置し、ウェル111C, 111Dのそれぞれの底面にDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物のカルシウム塩からなる細胞培養膜を配置した。その後、ウェル111A〜111Dを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たし、マウス軟骨細胞(ATDC5)をまいた。
第3の実施の形態の第1の実施例と同様に、図6に示すシャーレ101のウェル111A〜111Dの底面に、DNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物のカルシウム塩からなる細胞培養膜とカルシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる細胞培養膜を配置した。その後、ウェル111A〜111Dを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たし、マウス骨髄由来未分化間葉系細胞(C3H10T1/2)をまいた。
第3の実施の形態の第3の実施例を検証するために、図6に示すシャーレ101のウェル111A, 111Bのそれぞれの底面にカルシウムイオンでイオン架橋されたDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物からなる細胞培養膜を配置し、ウェル111C, 111Dのそれぞれの底面にDNAと鮭由来I型コラーゲンとの混合物のカルシウム塩からなる細胞培養膜を配置した。その後、ウェル111A〜111Dを第1の実施の形態と同じ細胞培養液で満たし、マウス骨髄由来未分化間葉系細胞(C3H10T1/2)をまいた。
第4の実施の形態に係る細胞培養膜は、下記化学式に示す長鎖アルキル基を有する第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる。なおアルキル基の炭素数が13以上になると、下記化学式に示す第四級アンモニウムイオンは細胞毒性を有する。したがってアルキル基の炭素数は6乃至12であることが好ましい。
第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜の細胞毒性試験を行った。細胞毒性試験は、「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について」(平成15年医薬審発第0213001号)の別添「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」に従った。具体的には、シャーレの円形の底面の半分を占めるように、半円形のフィルムに成形された細胞培養膜を配置した。次にV79細胞がシャーレの底面と細胞培養膜の両方の上で増殖し、コロニーを形成するか否かを検証した。結果として、アルキル基の炭素数が6乃至12である第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜上ではV79細胞は増殖し、コロニーを形成した。しかし、アルキル基の炭素数が13以上である第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたDNAからなる細胞培養膜上では、V79細胞は増殖しなかった。
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば第1の実施の形態においては、酵素を用いてDNAを精製する方法を示した。これに対し、図1のステップS100で得られた第1のろ過液に、塩化ナトリウム(NaCl)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS: Sodium Dodecyl Sulfate)を加えてもよい。その後、60℃から80℃で第1のろ過液を加熱し、第1のろ過液を遠心分離して上澄み液を得る。上澄み液にエタノールを加えることにより、DNAのナトリウム塩が析出する。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
20A〜20D…細胞培養膜
61…凍結保存用チューブ
62…細胞凍結保存液
63…ボトル
64…第1の懸濁液
65…マウス軟骨細胞
66…シャーレ
67…第2の懸濁液
101…シャーレ
111A〜111F…ウェル
Claims (21)
- カルシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備えることを特徴とする細胞培養膜。
- マグネシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備えることを特徴とする細胞培養膜。
- コラーゲンを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞培養膜。
- 第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備えることを特徴とする細胞培養膜。
- 前記第四級アンモニウムイオンのアルキル基の炭素数が6乃至12であることを特徴とする請求項4に記載の細胞培養膜。
- 紫外線照射で架橋された、デオキシリボ核酸とカチオンの塩を備えることを特徴とする細胞培養膜。
- カルシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備える細胞培養膜と、
前記細胞培養膜に接着している細胞
とを備えることを特徴とする細胞培養キット。 - マグネシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備える細胞培養膜と、
前記細胞培養膜に接着している細胞
とを備えることを特徴とする細胞培養キット。 - 第四級アンモニウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸を備える細胞培養膜と、
前記細胞培養膜に接着している細胞
とを備えることを特徴とする細胞培養キット。 - 紫外線照射で架橋された、デオキシリボ核酸とカチオンの塩を備える細胞培養膜と、
前記細胞培養膜に接着している細胞
とを備えることを特徴とする細胞培養キット。 - デオキシリボ核酸と1価のカチオンの塩を含む水溶性フィルムを形成するステップと、
前記1価のカチオンをカルシウムイオンに交換し、前記デオキシリボ核酸を前記カルシウムイオンでイオン架橋するステップ
とを含むことを特徴とする細胞培養膜の製造方法。 - 前記1価のカチオンを前記カルシウムイオンに交換することが、前記カルシウムイオンを含む水溶液に前記水溶性フィルムを浸すことを含むことを特徴とする請求項11に記載の細胞培養膜の製造方法。
- デオキシリボ核酸と1価のカチオンの塩を含む水溶性フィルムを形成するステップと、
前記1価のカチオンをマグネシウムイオンに交換し、前記デオキシリボ核酸を前記マグネシウムイオンでイオン架橋するステップ
とを含むことを特徴とする細胞培養膜の製造方法。 - 前記1価のカチオンを前記マグネシウムイオンに交換することが、前記マグネシウムイオンを含む水溶液に前記水溶性フィルムを浸すことを含むことを特徴とする請求項13に記載の細胞培養膜の製造方法。
- 前記1価のカチオンがナトリウムイオンであることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の細胞培養膜の製造方法。
- 前記水溶性フィルムをコラーゲンの水溶液に浸すステップを更に含むことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の細胞培養膜の製造方法。
- 前記カルシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸をコラーゲンの水溶液に浸すステップを更に含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の細胞培養膜の製造方法。
- 前記マグネシウムイオンでイオン架橋されたデオキシリボ核酸をコラーゲンの水溶液に浸すステップを更に含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の細胞培養膜の製造方法。
- デオキシリボ核酸とナトリウムイオンの塩を含む水溶性フィルムを形成するステップと、
前記ナトリウムイオンを第四級アンモニウムイオンに交換し、前記デオキシリボ核酸を前記第四級アンモニウムイオンでイオン架橋するステップ
とを含むことを特徴とする細胞培養膜の製造方法。 - 前記第四級アンモニウムイオンのアルキル基の炭素数が6乃至12であることを特徴とする請求項19に記載の細胞培養膜の製造方法。
- デオキシリボ核酸と1価のカチオンの塩を含む水溶性フィルムを形成するステップと、
前記水溶性フィルムに紫外線を照射するステップ
とを含むことを特徴とする細胞培養膜の製造方法。
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