以下、本発明に係る構成を図1から図19に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
(画像形成装置の構成)
図1及び図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図であり、図1は機構部の全体構成の側面説明図、図2は同機構部の平面説明図である。
画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、記録ヘッド走査手段として、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。キャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(色を区別しないときは「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、各色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数のヘッド部材(液体吐出ヘッド)で構成することもできる。本実施形態では、図12に示すようにヘッドユニット内に3つの記録ヘッドを直列に配置しているが、その数は特に限られるものではなく、例えば、用紙幅を包括するように記録ヘッド7を配置するようにしても良い。
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送する搬送手段として、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニットが着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニットは搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。この維持回復機56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
また、印字待機中にはキャリッジ3は維持回復機構56側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
以上、シリアル方式の画像形成装置について説明したが、本発明に係る画像形成装置は、ライン方式の画像形成装置であってもよい。ライン方式とは、ほぼ被記録媒体の幅方向の長さを持つ記録ヘッドを被記録媒体の搬送方向と直行方向に配置し、画像形成を行う方式である。
次に、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図3では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
さらに、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液体吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
次に、画像形成装置の印刷制御手段としての制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(NVRAM)204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのホストI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ26にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
次に、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の一例について、図6を参照して説明する。印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315とを備えている。
アナログスイッチ315は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号MN0〜MN3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
ここで、この画像形成装置において使用する記録液であるインクについて説明する。本発明に係る画像形成装置では、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテル、および水を少なくとも含んでなるインク構成を用いることにより、普通紙上へ印字した場合でも,(1)良好な色調(十分な発色性,色再現性を有する)、(2)高い画像濃度、(3)文字・画像にフェザリング現象やカラーブリード現象のない鮮明な画質、(4)両面印刷にも耐え得るインク裏抜け現象の少ない画像、(5)高速印刷に適した高いインク乾燥性(定着性)、(6)耐光性,耐水性などの高い堅牢性を有した高画質画像を達成することができ、画像濃度、発色性、色再現性、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性、定着性等を大幅に改善することができる。
次に、このようなインクを使用する場合に好ましい駆動波形の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図7に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで公正される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
そして、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図8(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには図8(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには図8(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8(d)に示すように微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
また、微駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスは、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
次に、画像形成装置に接続された画像処理装置に記憶された画像形成プログラムを実行して、画像形成装置により印刷画像を出力する印刷システムの一実施形態について図10を参照して説明する。印刷システムは、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ(画像形成装置)500とが、所定のインターフェイス又はネットワークで接続されて構成されている。
画像処理装置400は、図11に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
画像処理装置400の記憶装置406には、本発明に係る画像形成プログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
なお、以下に説明する画像形成方法(濃度補正方法)はインクジェットプリンタ側で実施することができるが、この例では、インクジェットプリンタ500側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400内にソフトウェアとして組み込まれたプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
その後、これらの記録ドットパターンに対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインターフェースを経由してインクジェットプリンタ500へ転送されるものである。
本実施形態では、画像形成方法として、記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行い画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
(濃度補正制御)
以下、本発明に係る画像形成装置による記録ヘッド間の濃度差を補正することによりバンディングを抑止する制御(以下、濃度補正方法ともいう)についての詳細を説明する。
図12にヘッドユニット70kの模式図の一例を示す。ヘッドユニット70kは、ブラック(K)のインク滴を吐出する複数のノズル(図示せず)を備えた第1ヘッド71k,第2ヘッド72k,第3ヘッド73kが、ノズルの配列方向に直列に配置されている。
このヘッドユニット70kによる印字結果と濃度との関係を表したグラフの一例を図13に示す。図13に示すように、第1〜第3のヘッドには、記録濃度のばらつきが生じている。この状態で印字走査を行うと、ヘッドつなぎ部に相当する印字箇所において、濃度飛びが生じ、バンディングが発生してしまう。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置は、隣り合うヘッドの濃度特性を比較し、それぞれの濃度特性が近づくように濃度補正を行うものである。具体的には、記録ヘッド間のつなぎ部(ヘッドつなぎ部74)を介して隣接する2つの記録ヘッドの、つなぎ部から各記録ヘッド長の1/2までの範囲を併せて濃度比較領域とし、当該濃度比較領域単位で濃度変化量を制御するものである。このように、ヘッドつなぎ部74からの所定の単位面積(濃度比較領域)あたりの濃度変化量を制御することで、ヘッド間の濃度特性差を濃度飛びが目立たないように制御し、濃度飛びを低減してバンディングを視認し難くしている。
この濃度比較領域毎の濃度変化量の制御について図14を用いて説明する。本実施形態のヘッドユニット70kは、記録ヘッドを3つ搭載し、第2ヘッド72kは、第1ヘッド71kと第3ヘッド73kに挟まれた構成となっている。
そこで、本実施形態では、図14に示すように、第1ヘッドの後半(ヘッド長の1/2)と第2ヘッドの前半(ヘッド長の1/2)を1つの濃度比較領域(A領域)第2ヘッドの後半と第3ヘッドの前半を1つの濃度比較領域(B領域)として各濃度比較領域内で、濃度特性を比較し、それぞれの濃度特性が近づくように単位面積あたりの濃度変化量の制御を行うものである。
さらに、走査により、第1ヘッド71kは、第3ヘッド73kと第2ヘッド72kに挟まれ、第3ヘッド73kは第2ヘッド72kと第1ヘッド71kに挟まれることになるので、各記録ヘッドは、それぞれ2つのヘッドに挟まれ、隣り合うヘッドは両方向に存在すると考えることができる。
即ち、走査により第3ヘッド73kの印字範囲と第1ヘッド71kの印字範囲とは隣り合うため、ヘッドユニット70kの両端に位置する記録ヘッドの開放部75(つなぎ部の反対側)から1/2以下のヘッド長で構成される領域を併せる、即ち、図14に示す例では、第3ヘッド73kの後半と第1ヘッド71kの前半を併せて濃度比較領域(C領域)として、当該濃度比較領域内で、濃度特性を比較し、それぞれの濃度特性が近づくように単位面積あたりの濃度変化量の制御を行うことが好ましい。このようにすることにより、より高精度に濃度補正を行うことが可能となる。
A領域〜C領域の各濃度比較領域内で濃度変化量の制御を行った制御結果(濃度曲線)を図15に示す。図15によれば、各領域間での濃度飛びが低減し、バンディングを抑止できていることが分かる。
さらに、濃度比較領域は、濃度比較領域を形成する2つの記録ヘッド間の濃度差に応じて変化させることが好ましい。即ち、図16(A)に示すように、各ヘッド間(第1ヘッドと第2ヘッド間)での濃度差が大きい場合は、例えば、最大長である各ヘッドの1/2ずつの範囲で濃度比較領域とし、濃度補正を行うことで好適な濃度補正ができるが、図16(B)に示すように、各ヘッド間での濃度差が比較的小さい場合は、濃度補正量が少なくて良いため、濃度比較領域を狭めても好適な濃度補正を行うことが可能である。この場合、すべてのノズルについて濃度比較領域を設定する必要がなく、処理量を低減することが可能となる。
具体的には、図16での変化の範囲内における濃度曲線の傾きが、所定の上限値内に収まる様に変化の範囲を設定する。例えば、濃度曲線の傾きの上限値を45度と設定した場合には、変化の範囲の両端を仮に直線で結んだ場合に、その傾きが45度以内になるように、変化の範囲を可変に設定する。なお、濃度変化を行う範囲をヘッド長の1/2ずつに設定しても上限値を超えてしまう(傾きが大きくなってしまう)場合には、変化の範囲をヘッド長の1/2と設定して補正を行っても良いし、上限値を超えたことをエラーと判断して装置の表示パネルなどでユーザに通知するように設定しても良い。
このように、隣接する2つの記録ヘッド間の濃度差に応じて濃度比較領域の範囲を可変とすることで、より効果的なバンディングの抑止を図ることができ、さらに処理量の低減も図ることができる。なお、濃度差がない場合は、濃度変化させる必要がないため、濃度変化の範囲を「0」(即ち、濃度比較領域を設けない)に設定すればよい。また、濃度差がごくわずかな場合に濃度補正を行うか否かについては、例えば、所定の閾値を設け、閾値以上の濃度差がある場合に濃度補正制御を行うようにすることも好ましい。
以下、濃度変化量の制御の具体例について説明する。先ず、単位面積あたりのインク付着量の制御の具体例について図17を参照しつつ説明する。図17に示すように、本実施形態では、単位面積あたりのインク打ち込み数を変化させることによりインク付着量を制御している。なお、図17に示す例では、単位面積を3×3のマトリクスとしているが、これに限るものではない。
図17は、デフォルトが3×3のマトリクスのうち4ドット打ち込むとして、インク付着量を増やす場合は9ドット打ち込みとし、インク付着量を減らす場合は2ドット打ち込むようにした例である。このようにマトリクスサイズとドットの増減数を可変することで濃度変化量を規定することができ、記録ヘッドの濃度差に応じて可変させることができる。
また、濃度変化量の制御方法としては、上記のようなインク打ち込み数を制御する方法に替え、または、これに併せて、図9に示したように駆動波形の電圧を可変することで、ノズルからのインク吐出量を可変させる制御とすることも好ましい。また、その他の公知または新規の濃度変化量の制御方法を用いてもよく、特に限られるものではない。
次に、記録ヘッド間の濃度差の算出方法について図18、図19を参照しつつ説明する。本実施形態では、図18に示すような濃度差判定用のテストチャートを用いて濃度差を判定している。
この濃度差判定用のテストチャートを用いた濃度差の判定では、先ず、第1ヘッド71kから第3ヘッド73kまでの各々のヘッドに対してパターンI〜IVで構成されたテストパッチを印字する。次に、各々のヘッドのパターンI(最も濃いパターン)が他のヘッドのどのパターンと近いかを判定する。この際の判定方法は、目視による判定や、光学濃度計などによる判定を行うようにすれば良く、特に限られるものではない。
テストチャートによる判定結果の一例を図19に示す。ここで、図19は、下記条件のときの判定結果を示している。
(1)第1ヘッドはいずれとも一致しない。
(2)第2ヘッドは第1ヘッドの「III」と一致する。
(3)第3ヘッドは第1ヘッドの「II」と一致する。
上記条件下では、第1ヘッド71kが最も濃く、次いで第3ヘッド73k、第2ヘッド72kとなり、第1ヘッド71kを基準に相対比較すると図19のようになる。
パターン差が濃度差に対応しているので、第1ヘッド71kと第2ヘッド72kのA領域は2パターン差、第2ヘッド72kと第3ヘッド73kのB領域は1パターン差、第3ヘッド73kと第1ヘッド71kのC領域は1パターン差となり、この結果を基に濃度変化領域および濃度変化量を決定することができる。
なお、上述のようにテストチャートを使用して濃度差を求めることに替え、または、これに併せて、工場出荷時や初期設定時等において、ヘッドの濃度情報(ヘッド特性情報)を記憶装置(ROM202)等に記憶しておき、この情報に基づいて濃度差を求めるようにしても良い。また、濃度差の検出には、その他の公知または新規の濃度差の算出方法を用いてもよく、特に限られるものではない。
また、上記実施形態において説明した画像形成装置における画像形成方法(濃度補正方法)は、ROM等の本体メモリに格納されているプログラムで実行することができる。この濃度補正方法を実行するためのプログラムは、例えばインターネット上からのダウンロードによって提供し、情報処理装置から画像形成装置にインストールすることができる。また、本発明の処理は、情報処理装置のプリンタドライバで行う構成とすることもできる。また本発明は、濃度補正方法を実行するためのプログラムを画像形成装置で実行可能に記録した記録媒体の態様にも適用される。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
なお、上述の実施形態の画像形成装置では、記録ヘッドが圧電素子を用いる圧電型ヘッドの例で説明しているが、電気熱変換素子を用いて膜沸騰で滴吐出を行うサーマル型ヘッドもよいことは勿論である。圧電型ヘッドでは上述したように駆動波形によって大きさ異なる液滴を吐出させることができ、階調画像の形成が容易になる。これに対して、サーマル型ヘッドは、ノズルの高集積化が容易であるので、解像度が高い画像を高速で印刷するのに有利である。
なお、サーマル型ヘッドには、例えば、エッジシュータ方式のヘッドやサイドシュータ方式のヘッドがある。エッジシュータ方式のヘッドにおいては、各部分の精度良い微細化やノズルのマルチ化、あるいは小型化が極めて容易であり、また量産性に富むという利点を有する。また、サイドシュータ方式のヘッドは、吐出エネルギー発生体からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有し、吐出エネルギー発生体に発熱素子を用いた場合に特に効果的である。また、エッジシュータ方式において問題となる気泡が消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象をサイドシュータ方式であれば回避することができる。つまり、サイドシュータ方式において、気泡が成長し、その気泡がノズルに達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらないことから、ヘッドの寿命が相対的に長くなる。