図1は、本発明が適用される画像形成装置の一例を示す。図1(a)は、機構部の側面を示し、(b)はその平面を示す。画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、記録ヘッド走査手段として、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図1(b)に示す矢印方向(主走査方向)に移動走査する。
キャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出記録ヘッドからなる4個の記録ヘッドユニット7y、7c、7m、7k(色を区別しないときは「記録ヘッド7」という)を複数のインク吐出口を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
記録ヘッド7を構成する液体吐出記録ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、色毎に独立した記録ヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の記録ヘッド部材(液体吐出記録ヘッド)で構成することもできる。
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送する搬送手段として、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90度方向に転換させて、搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図1(b)に示すベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
また、図1(b)に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット61が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット61は搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
さらに、図1(b)に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。この維持回復機56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90度搬送方向を転換される。このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ3は維持回復機構56側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
次に、記録ヘッド7を構成している液体吐出記録ヘッドの一例について、図2を参照して説明する。図2(a)は、液体吐出記録ヘッドの液室長手方向に沿う断面を示し、図2(b)は、液体吐出記録ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面を示す。
液体吐出記録ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
さらに、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤で接合し、更にフレーム部材130を接着剤で接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤で接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここでは、PZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、上記した例では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成や1つの基板122に1列の圧電素子121を設ける構成でもよい。
このように構成した液体吐出記録ヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。なお、この液滴吐出記録ヘッドの駆動方法は、上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
図3は、画像形成装置の印刷制御手段の構成を示す。印刷制御手段200は、画像形成装置全体を制御するCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理や入出力信号を処理するASIC205とを備えている。画像形成装置は、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバ)IC208を備える。
また、印刷制御手段200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、記録ヘッド内の温度や環境温度を検出する温度センサ215などの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。
また、印刷制御手段200には、画像形成装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。本実施例では、記録ヘッド内を4ブロックに分割し、各ブロック単位の温度を測定している。測定方法としてブロックの中心部にサーミスタを設けてノズル近傍の温度を測定しているが、赤外線を用いた非接触温度計を用いてノズル近傍の温度を測定するようにしてもよい。記録ヘッド内に埋設したサーミスタでは測定箇所が固定されてしまうが、非接触温度計を用いることで測定箇所を任意に変えることが可能となる。
印刷制御手段200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブルあるいはネットを介してホストI/F206で受信する。
そして、印刷制御手段200のCPU201は、ホストI/F206に含まれる受信バッファ内の画像データを読み出して解析し、ASIC205において必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、これらの処理が行われた印字データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータ(印字データ)の生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なってもよい。
印刷制御部207は、上述した印字データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この印字データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する。また、印刷制御部207は、ROM202に格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバ208に与える駆動波形選択手段を含み、1つの駆動パルス(駆動信号)または複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する印字データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダ36を構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
図4(a)は、印刷制御部207とヘッドドライバ208の構成例を示す。印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの印字データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル印字データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315を備えている。
このアナログスイッチ315は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)153に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された印字データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
図4(b)、図5(a)は、駆動波形の一例を示す。駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図4(b)に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで構成される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。1印刷周期は、最大の駆動周波数により決まる。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
そして、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図5(a)の(1)に示すように、駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには図5(a)の(2)に示すように、駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには図5(a)の(3)に示すように、駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには、図5(a)の(4)に示すように、微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加する。
中滴を形成する場合、駆動パルスP4で1滴目、駆動パルスP5で2滴目、駆動パルスP6で3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎて、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積を大きくするために立ち上げ電圧は小さくしない。
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
また、微駆動パルスP2は、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積を大きくできる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図5(b)に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサ215からの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスP2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
このように、インク粘度の同一条件下で、図5(b)に示すように、駆動波形の波高値を変えると、駆動波形の増減によりインク滴の吐出量も増減する。つまり、駆動波形を大きくすると吐出量も増えて画像の濃度が濃くなる。
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大、中、小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大、中、小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
図6(a)は、画像形成装置によって印刷画像を出力するためのプログラムを搭載した画像処理装置と、画像形成装置であるインクジェットプリンタにより構成された、本発明の画像形成システムの構成例を示す。
この印刷システム(画像形成システム)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる、1または複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500が、所定のインターフェイスまたはネットワークで接続されて構成されている。
画像処理装置400は、図6(b)に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しない光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
画像処理装置400の記憶装置406には、本発明に係るプログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、この画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものでもよいし、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものでもよい。
なお、本発明に係る画像処理方法はインクジェットプリンタ側でも実施できるが、ここでは、インクジェットプリンタ側では、装置内に画像の描画または文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400(ホストコンピュータ)内にソフトウエアとして組み込まれた本発明に係るプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値の記録ドットパターンが生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され、インクジェットプリンタ500が印刷出力する例で説明する。
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画または文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。これらの命令は、特定のプリント言語で記述されている。
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置(ホストコンピュータ)400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットパターンに変換される。
その後、これらの記録ドットパターンに対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインタフェースを経由してインクジェットプリンタ500へ転送される。
インクジェットプリンタ500を用いてコピーする場合は、インクジェットプリンタ500で前述した記録ドットパターンに中間調処理などを施す必要がある。その場合、印刷制御部207が、スキャンされた画像データに対し、前述したような処理を行って中間調処理などが行われた記録ドットパターンを生成する。記録ドットパターンを印字データとも言う。以下、画像処理装置500が中間調処理などを行い、印字データをインクジェットプリンタ500に転送する場合について説明する。
本発明では記録方法として、記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行うことで画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向に記録ヘッドを並べて、同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
ここで、マルチパス印字について説明する。図6(c)は、画像形成装置の構成例を示し、画像形成装置は、入力端子601、記録バッファ602、パス数設定部604、マスク処理部605、マスクパターンテーブル606、記録ヘッドI/F部607、記録ヘッド608を含む。
画像処理装置400から送信されたビットマップデータ(印字データ)は記録バッファ制御部により、記録バッファ602の所定のアドレスに格納される。記録バッファ602は1スキャンと紙送り量分のビットマップデータを格納できる容量を有し、FIFOメモリのような紙送り量単位のリングバッファを構成している。
記録バッファ制御部は、記録バッファ602を制御し、1スキャン分のビットマップデータが記録バッファ602に格納されるとプリンタエンジンを起動し、記録ヘッドの各ノズルの位置に応じて記録バッファ602よりビットマップデータを読み出し、パス数設定部604に入力する。また、記録バッファ制御部は、入力端子601から次回のスキャンのビットマップデータが入力されると、記録バッファ602の空き領域(記録が完了した紙送り量に相当する領域)に格納するように記録バッファ602を制御する。
パス数設定部604では、分割パス数を決定し、そのパス数をマスク処理部605へ出力する。マスクパターンテーブル606では予め格納されているマスクパターンテーブル、例えば、1パス記録、2パス記録、4パス記録、8パス記録のマスクパターンから、必要なマスクパターンを決定された分割パス数に応じて選択し、マスク処理部605に出力する。
マスク処理部605は記録バッファ602に格納されているビットマップデータを、マスクパターンを用いてパス記録毎にマスクして記録ヘッドドライバ208に出力すると、ヘッドドライバ208ではそのマスクされたビットマップデータを記録ヘッド608が用いる順に並び替え、記録ヘッド608に転送する。
記録バッファ602は、例えばRAM203で実現され、マスクパターンテーブルは例えばROM202に記憶される。パス数設定部604、マスク処理部605は、印刷制御部207、CPU201の組み合わせ、またはCPU201のいずれかで実現され、記録バッファ制御部はCPU201で実現される。
次に、本発明が課題とする色むらについて説明する。上記した画像形成装置を用いて印字する場合、記録ヘッド内の特性が均一であれば、図7(a)のように、色むらのない均一な画像が形成可能であるが、記録ヘッド内で特性が不均一の場合、図7(b)のように、記録ヘッド幅の領域内で色むらが目立ってしまう。
なお、以下では、色むらを表現する特性として明度を用いる場合があるが、本発明の課題が、色の不均一性であるため、特に断らない限り、例えば濃度や彩度のような明度以外の特性についても明度と同義である。
また、1スキャン内での色変化が許容できたとしても、次のスキャンとの境界で色変化のギャップが発生し、画像の不具合を発生させる。また、解像度や吐出安定性を高めるために、マルチスキャンにより画像を形成する場合に、色むらのある記録ヘッドが複数回、同一場所をスキャンする作像方法では、色変化を強調してしまうおそれもある。
このような記録ヘッドの色むらが生じる原因は種々あり、例えば、図8(a)の(1)に示すように、ドットの大きさや着弾位置が均一であれば、色むらは発生しないが、ノズルごとの製造ばらつきなどによって、吐出するドットの大きさ、形状、着弾位置などが変化した場合は、図8(a)の(2)、(3)のように、紙面のインク被覆にムラができ、これが色むらとなる。
また、インクジェットプリンタの特有の課題としてサテライトがある。すなわち、滴を吐出する際に、飛翔中の滴の尾引きなどによって本来、吐出したいドットとは別に意図しないドットを形成することがあり、これをサテライトと呼ぶ。これは完全に消すことが難しく、着弾位置も制御不可能なことが多く、ノズルによってサテライトの有無や着弾位置にばらつきが出ることで、図8(a)の(4)に示すように、色むらを生じる。
図8(b)に示すように、例えばドットが狙いより大きく出るノズルがある場合、ベタ付近では、すでに紙面がほぼ埋まった状態であるので、紙面のインク被覆量に差は出にくく色むらは生じ難いが、ドット形成量の少ない中間階調においては、ドットの大きさが紙面のインク被覆量につながりやすく色むらが顕著になりやすい。
また、吐出側で出力するドット内容によって、ばらつき方が異なることがある。例えば、記録周波数の問題がある。インクジェットプリンタは、記録ヘッド液室に圧力を加えることでインクを吐出しているため、同じ大きさの液滴を飛ばしていても、滴の吐出周期によって滴面の振動や液室へのインク供給速度が異なることになり、その結果として、ドットの吐出特性が吐出周期によって異なる。これにより、例えば図8(c)に示すように、データ上では同一ドットを形成しても、記録密度が高い場合と低い場合で、実際の紙面上に着弾するドットには差が出てしまう。
また、大/中/小滴のように複数種類の多値の液滴を扱う場合においては、滴種によってノズル液面の振動の仕方が異なるので、滴種によってばらつき方が異なる場合もあり、特定の滴だけが、ばらつく場合もある。図8(d)は、中滴のみの特性が部分的に異なる例を示す。
このため、ノズルだけでなく、各ノズルが出力する階調についても色補正する必要があり、γ補正のように入出力特性を補正することが好ましい。ただし、従来のように、ノズル毎に細かい単位で補正する場合は、ノズル数×階調数×記録ヘッド数と膨大な数のパラメータが必要になる。また、印字モードや環境変化によって色むらの出方が異なる場合もあるため、これらも補正すると、さらに膨大な数のパラメータが必要になり、画像形成装置上に測定器を搭載してリアルタイムで補正する場合には、測定用の画像出力枚数や測定点数やパラメータの作成の数、補正に必要な工数も膨大になるので、ノズル毎の細かい単位より、大きな領域単位で補正することが現実的である。
図9は、補正パラメータの作成を説明する図である。図9(a)は、吐出特性を測定するための階調パッチの出力例を示し、(b)は補正パラメータの作成フローチャートを示す。
初期設定時における吐出特性の補正の手順は、複数の測定点における階調パッチを印刷し(ステップ701)、センサやスキャナ、測色計等によって階調パッチの画像情報を自動ないし手動により測定する(ステップ702)。画像情報としては、例えば明度、濃度、彩度、あるいは輝度などを用い、記録ヘッド内でフラットになるように入出力特性を補正する。ここでは、明度を例に説明する。
測定した画像情報からベタの明度が最も低い領域を検索し(ステップ703)、検索したベタを狙い値とし、ベタの狙い値と紙面を結び、補正の狙いとする階調特性を作成する(ステップ704)。これは、階調補正がドットを増減することにより色調整するため、ベタのようにそれ以上ドットを増やせない領域においては、それ以上明度を下げられないため、明度の高い場所に合わせて補正する必要があるためである。
そして、例えば製品の階調特性の狙いが明度リニアであれば、紙面とベタ狙い値を明度リニアになるように、明度特性を補正の狙いとすればよい。ここでは製品がどのような階調特性を狙いとして設計されるかによるため、適宜決め方を設定しておけばよい。この例では、ベタと紙面を明度リニアで繋いだ特性を狙いをする場合について説明する。
また、ベタの狙い値について、基本的に明度の高い領域に他の領域を合わせるため、この値が所定値を満たしていない場合、記録ヘッドに印加する電圧を上げるなどして、ベタの明度が基準を満たすようにしてから、上記した補正手順を実施してもよい。狙いの明度特性が作成された後、各測定領域の測定データを基に、出力値が狙いの明度特性になるように入出力補正曲線を作成する(ステップ705)。
256階調であれば、階調の測定点である256点全てを測定し補正してもよいが、測定階調数を減らし、それをスプライン等の近似曲線により階調特性を作成し、それを基に補正しても良い。階調数が多いと、印字のムラなどによって画像パッチに階調の逆転が発生した場合に、逆補正する場合もあるため、製品の出力画像のダイナミックレンジや印刷のばらつきに応じて適宜、増減することが好ましい。また、補正工程を実施する前に、メンテナンス動作を実施したり、ノズルチェックチャートを印字し、吐出不良がないことを確認するシーケンスを追加した上で、補正パラメータを作成した方がよい。
以上の補正パラメータの作成は、製品出荷時に実施してもよいし、画像形成装置にセンサやスキャナ、測色器等を搭載し、装置上で測定し、補正パラメータの作成を実施してもよい。後者の場合は、特に製品が設置された場所で測定パラメータを作成する必要があるため、補正パラメータの作成にかかる時間や手間が重要であるので、測定階調数を減らし、近似式により階調特性を作成し、補正する方が工数も少なくてよい。
また、上記した記録ヘッドの特性変化は、記録ヘッド毎に異なる場合があるため、上記した補正は各記録ヘッドについて行うことが好ましい。また、同一の記録ヘッドを用いても印字モードによりドットの埋め方が変わるため、入出力の補正曲線も変える必要があり、また、印字モードにより補正曲線が変わる場合もあるので、モードごとに補正パラメータの適用、補正動作の実行ができるように、例えば、記録ヘッド/モードとそれに応じた補正パラメータをROMに保存し、印刷条件に応じて、該当する補正パラメータを適用して印字すればよい。
ところで、上述したように入出力階調を制御することによる補正は、基本的には明度の低い特性を明度の高い特性に合わせることになる(ドット数を増やせる中間階調はこの限りでない)。つまり、大ドットを吐出している部分はドットを間引くことになるため、画像情報が欠落しやすくなる欠点があり、特に文字や細線の細さから色むらが認識され難く、ドット欠落や明度の低さなど画像のディティールや視認性が画質を左右するので、画像オブジェクトにより選択的に補正を実施する機能を有し、特に文字や細線オブジェクトに対して補正を実施しない、あるいは引加電圧によるベタ濃度の補正のみ実施することにより文字や細線の品質を保持しつつ色むらを軽減することが可能になる。
次に、記録ヘッドを複数繋いだ画像形成装置において補正を実施する例を説明する。複数の記録ヘッドを繋ぎ合わせて印刷速度を高速化した画像形成装置がある。
図10(a)は、記録ヘッドを長尺方向に繋ぎ合わせた記録ヘッドを有し、これを用紙の搬送方向と直交する方向に往復移動する、シリアル方式の画像形成装置の一例を示す。この基本構成は、前述した4記録ヘッド搭載の画像形成装置と同様であるが、記録ヘッドが長尺方向に並んでいるため、記録ヘッド内部だけでなく、繋ぎ合わせている記録ヘッドとの明度差も問題となる。この場合、各記録ヘッドの内部特性がフラットであれば、各記録ヘッドを記録ヘッド単位で補正すればよいが、記録ヘッド内部に明度差がある場合、図7(b)のような明度ギャップが1回のスキャンでも生じる可能性があるので、前述した補正方法によって各記録ヘッド内部の特性をフラットに補正した上で、記録ヘッド間の特性を合わせる。この場合、前述したように、階調補正では、ベタ部はそれ以上明度を低くできないので、補正する複数の記録ヘッドで一番明度の高い部分がベタの目標値として補正曲線を形成すればよい。
また、ベタの目標値が所定値を超えない場合、電圧を補正することにより、ベタの明度が基準を超えるように調整した後に、階調補正を実施すればよい。
また、図10(b)に示すように、複数の記録ヘッドを記録ヘッドの長尺方向に並べて配置し、記録ヘッドの長尺方向と直交する方向に用紙を搬送することで、画像を形成するライン式の画像形成装置がある。このような画像形成装置は、基本的に1パスで画像を形成するため、記録ヘッドの特性ムラがそのまま画質を左右するため、色むらの補正は重要であり、また、管理する記録ヘッド数は、シリアル機の数倍から数十倍と大幅に増大するため、より簡単な構成で補正を実施する必要があるが、本発明の補正方法はライン式の画像形成装置に対しても最適な方法である。
以上説明した補正方法により、初期設定時における吐出特性の補正が可能となるが、画像形成装置の動作時において、濃度むらが発生することがある。
画像形成装置の動作時において、濃度むらが発生する場合を、図11を用いて説明する。記録ヘッドの半分が大滴ベタを印字する、図11(a)に示すような印字データを連続印字したときの記録ヘッド内の温度上昇は、図11(b)に示すようになる。
記録ヘッドを4つのブロックに分割すると、ブロック(1)、(2)は、連続印字による圧電素子の連続駆動の昇温により徐々にブロック内の温度が高くなるが、ブロック(3)、(4)は、印字データがないため圧電素子が駆動されず、印字枚数が増えても温度変化は生じない(厳密には、インク増粘対策の微駆動や熱伝導により温度上昇は生じる)。
このような状態で、全ての記録ヘッドから、均一な印字データを印字すると濃度むらが発生してしまう。これは、前述した通り、温度上昇によりインク粘度が変化することにより、同じ駆動波形を与えても吐出特性に差が生じるためであり、つまり、温度上昇によりインク粘度が低下し、インク吐出量が増えて濃度が濃くなる。
従来、温度上昇部の駆動波形や階調値を補正する(駆動波形の形状を変える、波高値を小さくする、階調値を小さくする)ことにより、濃度むらを抑制していたが、温度上昇部に補正が集中するため、前述の補正量が大きくなり、その結果、図11(c)に示すように、マクロでの明度が合っていても、ドット配置の違いによるパターンの差が出ることもある。また、駆動波形の形状や波高値は様々な条件下で安定して吐出できるように設計されているが、補正量が大きくなると吐出の安定性が失われる可能性があり、最悪、インク滴を吐出しない場合もある。
そこで、本実施例では、記録ヘッド内の温度変化があるブロックだけではなく、周辺の温度変化のないブロックに対しても補正を行い、濃度むら補正を分散することにより、各ブロックの補正量を小さくし、濃度むらを補正しつつ、温度変化があるブロックと温度変化がないブロックの境界部で特性差(ディザのテクスチャ差など)を低減し、吐出の安定性を維持することが可能となる。
図12を用いて、本発明の補正方法を説明する。複数のノズルからなる記録ヘッドを、各ブロックのノズル数が同一になるように4つのブロックに分割し、各ブロック内の温度を測定したときに、記録ヘッド内に、図12(a)のような温度分布があったとする。この状態で、均一な印字データを印字すると、図12(b)のような濃度値となり、ブロック(2)とブロック(3)の境界部で濃度むらが発生する。
図13は、本発明の補正方法の処理フローチャートを示す。図13の処理は、画像処理装置400のCPU(補正手段)401により実施される。本実施例の補正方法は、ブロック毎の温度を測定し(ステップ801)、隣接するブロック間の温度差を算出し(ステップ802)、温度差が2℃以上のブロックがある場合は(ステップ803でYes)、温度差があるブロック間の平均温度をターゲット丸数字1に設定し(ステップ804)、温度が高い側のブロック(2)を、ターゲット丸数字1に補正するための階調補正量を算出し(ステップ805)、温度が低い側のブロック(3)の測定温度とターゲット丸数字1との平均温度をターゲット丸数字2に設定し(ステップ806)、温度が低い側のブロック(3)を、ターゲット丸数字2に補正するための階調補正量を算出し(ステップ807)、上記算出された階調補正量により、ブロック単位で階調を補正し、温度が高いブロックは階調値を大きく補正し、温度が低いブロックは階調値を小さく補正する(ステップ808)。また、一方のブロックの温度上昇がなく、他方のブロックの温度上昇が2℃未満の場合は補正を行わず、また、温度差が2℃未満の場合(ステップ803でNo)も補正を行わない。なお、上記した例では、隣接するブロックに対する補正処理であるが、これを隣接する記録ヘッドにも適用することができる。
階調値の補正は、記録媒体上の単位面積当たりの液滴吐出量を調整することにより行い、また、単位面積当たりの液滴吐出量は、記録ヘッドを駆動する駆動パルスの波形の形状を補正することにより行う。
本実施例では、2℃を境に補正方法を切り替えているが、インクの種類が異なるような場合は、温度に対するインクの粘度特性変化が異なるため、2℃に対する吐出量変化量が異なるため、補正方法の切り替えの温度を変える必要がある。
図12(c)、(d)は、上記した方法により階調値を補正した結果を示し、ブロック(2)の階調値を128階調から122階調に、ブロック(3)の階調値を128階調から131階調に階調補正することにより、ブロック(2)とブロック(3)の間は9階調の差となり、図12(e)に示す、従来の補正による12階調差から、本発明の補正による9階調差へと、階調差を小さくすることが可能となる。
本実施例では、最高濃度は1.3程度であり、1階調あたりの濃度変化量は0.005として階調値を算出している(最高255階調として算出)。また、本実施例で用いているインクは1℃変化すると濃度が0.02程度変化する。つまり、1℃分の温度変化は4階調値となる。
上記した実施例では、記録ヘッド内部の温度分布に関して説明したが、記録ヘッドを複数個配した長尺の記録ヘッドにおいて、隣接する記録ヘッドにも本発明を適用できる。また、記録ヘッド内の温度伝達性が良く、印字データに偏りがあっても記録ヘッド内の温度が一様となる長尺の記録ヘッドでは、長尺の記録ヘッドを構成する記録ヘッドを1つのブロックとして扱うようにしてもよい。
以上、説明したように、本実施例では、初期設定における吐出特性の補正に加えて、画像形成装置の動作時における吐出特性の変化を補正することが可能となり、濃度むらを抑制し、画像の均一性を向上させることが可能となる。
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウエアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。