ところで、従来のロック機構はロアレールの片側フランジ部をロックする片側ロック機構となっている。そのため、ロック時においてシートに大きな荷重がかかるとロアレールの片側に大きな負荷がかかってしまうため、両側ロック機構にしたいという要求がある。しかしながら、アッパレールの垂直壁があるため、従来のロック機構をそのまま両側ロック機構に適用することは難しい。
さらに、従来のロック機構は引張スプリングとロックプレートとがアッパレールの側方に配設されている大型のものである。そのため、ロック機構のためにアッパレールの側方に専用のスペースが必要となってしまう。
そこで、本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、、その目的は、ロック部材および弾性部材をロアレール内に内蔵するとともに、両側ロック機構であるロック機構、すなわち小型で信頼性の高いロック機構を有する車両用シートスライド装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明の特徴は、底壁部と該底壁部の両端から上方に延びる一対の側壁部と該側壁部の上端から内側下方に折り返された一対の下向きフランジ壁部とを有し、車両のフロアに固定されるロアレールと、垂直壁部と該垂直壁部の両端からそれぞれ外側に折り曲げられた一対の底壁部と該底壁部の各外側端から上方に折り曲げられた一対の上向きフランジ壁部とを有し、前記ロアレールにその長手方向に対して移動可能に支持され、車両シートに支持されるアッパレールと、前記アッパレールの前記垂直壁部に形成された収納孔に挿通されるとともに前記垂直壁部と前記上向きフランジ壁部とに上下方向に移動可能に保持され、前記ロアレールの前記各下向きフランジ壁部に形成された係合爪に係脱可能な係合部を有するロック部材と、前記アッパレールの前記垂直壁部および前記上向きフランジ壁部の各間、かつ前記ロアレールの前記側壁部の上端および前記アッパレールの前記底壁部の間に配設され、前記底壁部に係止された一端を支点として前記ロック部材に当接する他端で前記ロック部材を前記係合爪に係合する上方向に付勢する弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記一端に前記アッパレールに係合保持される係合保持部を有し、前記他端に前記ロック部材の下面に当接し該ロック部材を前記アッパレールの前記垂直壁部に沿って上方に付勢する付勢部を有していることである。
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ロック部材の前記係合部はレール幅方向の両端部に設けられており、前記ロック部材は扁平なプレート状をなすとともに前記長手方向を中心として対称な構造であることである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または請求項2において、前記弾性部材は、1本の線材を中央部で折り返して2本の直線部と前記各直線部を連結する折り返し部とを形成しており、前記折り返し部が、前記アッパレールの前記収納孔に挿通され、前記2本の直線部が前記アッパレールの前記垂直壁部の両側に沿って延在されていることである。
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、前記ロック部材には、係止部が少なくとも1つ以上設けられ、前記弾性部材の付勢部には、前記係止部に係止する凸部が設けられていることである。
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項4の何れか1項において、前記アッパレールの前記収納孔には、少なくとも前記ロック部材が前記ロアレールの前記係合爪に係合しているときに、前記ロック部材のレール長手方向の移動を規制する規制部を有していることである。
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項5の何れか1項において、前記ロック部材の上面に近接する押圧部と、搭乗者が操作する操作部とを有する操作部材を備え、前記操作部材は、前記操作部を操作することで前記押圧部が前記ロック部材の上面を押圧し、前記ロック部材を前記弾性部材の付勢方向に抗して下方向に移動させることである。
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、前記操作部材は、前記アッパレールに回動可能に支持された操作ハンドルであることである。
請求項1に係る発明によれば、ロック部材は、アッパレールの垂直壁部と上向きフランジ壁部に上下方向に移動可能に保持される。そして、弾性部材は、アッパレールの垂直壁部および上向きフランジ壁部の各間、かつロアレールの側壁部の上端およびアッパレールの底壁部の間に配設され、弾性部材により底壁部に係止された一端を支点としてロック部材に当接する他端でロック部材を係合爪に係合する上方向に付勢する。そのため、ロック部材および弾性部材をロアレール内に内蔵することが可能となる。また、ロック部材は、ロアレールの各下向きフランジ壁部に形成された係合爪に係脱可能な係合部を有する。そのため、各下向きフランジ壁部をロックすることができる両側ロック機構となり、小型で信頼性の高いロック機構が実現可能となる。
しかも、一端にアッパレールに係合保持される係合保持部を有し、他端に前記ロック部材の下面に当接しロック部材をアッパレールの垂直壁部に沿って上方に付勢する付勢部を有しているので、弾性部材の付勢部によりロック部材を係合爪に係合する方向に付勢することができる。
請求項2に係る発明によれば、ロック部材の係合部はレール幅方向の両端部に設けられており、ロック部材は扁平なプレート状をなすとともに長手方向を中心として対称な構造であるため、アッパレールに保持されたロック部材をロアレールに対してレール幅方向の両側でロックすることができ、アッパレールに支持される車両シートを傾くことなく安定的にレール長手方向の移動を拘束することができる。
請求項3に係る発明によれば、弾性部材の折り返し部が、アッパレールの収納孔に挿通され、2本の直線部がアッパレールの垂直壁部の両側に沿って延在されているので、弾性部材をコンパクトに構成でき、ロアレール内に収納することが可能となる。
請求項4に係る発明によれば、ロック部材には、係止部が少なくとも1つ以上設けられ、弾性部材の付勢部には、係止部に係止する凸部が設けられているので、弾性部材の付勢部にロック部材を確実に保持することができる。
請求項5に係る発明によれば、収納孔には、少なくともロック部材が係合爪に係合しているときに、ロック部材のレール長手方向の移動を規制する規制部を有しているので、ロック部材をレール長手方向に的確に位置決めすることができ、アッパレールに支持される車両シートのレール長手方向の移動を確実に拘束することができる。
請求項6に係る発明によれば、操作部材は、ロック部材の上面に近接する押圧部と、搭乗者が操作する操作部とを有し、操作部を操作することで押圧部がロック部材の上面を押圧し、ロック部材を弾性部材の付勢方向に抗して下方向に移動させる。そのため、操作部材の操作部を上方に回動させることにより、押圧部を下方に回動させることができる。
請求項7に係る発明によれば、操作部材は、前記アッパレールに回動可能に支持された操作ハンドルであるため、操作部材を上方に回動させることにより、押圧部を下方に回動させることができる。
以下本発明に係る車両用シートスライド装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。車両用シートスライド装置は、図1および図2に示すように、車両のフロアに固定される左右一対のロアレール10と、車両のシートに固定される左右一対のアッパレール20を備えている。
一対のロアレール10は、図4および図5に示すように、底壁部11と、底壁部11の両端から上方に延びる一対の側壁部12と、側壁部12の上端から内側下方に折り返された一対の下向きフランジ壁部13とを有している。ロアレール10は、一枚の板材を折り曲げて形成され、断面略U字状を呈している。
アッパレール20は、垂直壁部21と、垂直壁部21の両端からそれぞれ外側に折り曲げられた一対の底壁部22と、底壁部22の各外側端から上方に折り曲げられた一対の上向きフランジ壁部23とを有している。アッパレール20は、L字形に折り曲げられた2枚の板材を背中合わせに貼り合わせて構成され、断面略逆T字状を呈している。
アッパレール20の一対の底壁部22は、垂直壁部21がロアレール10のフランジ壁部13間を挿通し、かつフランジ壁部23がロアレール10の側壁部12とフランジ壁部13との間に配置されるように、ロアレール10内に収納されている。ロアレール10の両側壁部12の内面とアッパレール20の両フランジ壁部23の外面との間には、摺動部材24がレール長手方向に間隔を有して複数配置され、これら摺動部材24を介してアッパレール20がロアレール10に対してレール長手方向(車両の前後方向)に摺動可能に支持されている。ロアレール10に対するアッパレール20の摺動作用により、アッパレール20に固定された車両のシートが車両の前後方向に位置調整され、後述するロック機構により、所望の前後方向位置でロックされるようになっている。これらロアレール10およびアッパレール20は、レール幅方向に所定の間隔を有して2組平行に配設されている。
ロアレール10の両フランジ壁部13の下端には、図3および図6に示すように、レール長手方向に複数の係合爪14がそれぞれ形成され、これら係合爪14に係脱可能に係合するロック部材30が、弾性部材40によって略上下方向に移動可能に保持されている。ロック部材30は、扁平なプレート状をなすとともに、長手方向を中心として対称な構造となっており、弾性部材40に水平状態で保持されるようになっている。ロック部材30は、図5に示すように、アッパレール20の垂直壁部21に形成されたロック部材収納孔25、およびアッパレール20の両フランジ壁部23に形成された切欠き部26を貫通して、アッパレール20の両側に延在されている。ロック部材30には、図7に示すように、レール幅方向の両端部に、ロアレール10の係合爪14に係脱可能に係合する係合部としての複数の係合突起32が形成され、また、レール長手方向の一端に、係止長孔33が形成され、かつレール長手方向の他端に、係止溝34が2列形成されている。係止長孔33の長径は後述する弾性部材40の直線部41、42のそれらを含めた間隔と一致し、短径は後述する弾性部材40を構成する線材の直径と一致している。そして、係止長孔33はロック部材30の長手方向の中心軸に対して対称となっている。また、係止溝34はロック部材30の長手方向から略U字状に切り欠かれたものであり、直線部41、42のそれらを含めた間隔で形成されている。そして、係止溝34は、ロック部材30の長手方向の中心軸に対して対称に2列形成されている。
図7および図8に示すように、ロック部材収納孔25のレール長手方向側部位は、ロック部材30の前端面30aおよび後端面30bに略上下方向にスライド可能に係合する前壁部25aおよび後壁部25bとなっている。また、切欠き部26のレール長手方向側部位は、ロック部材30の両端部に突設された係合突起32の前端面32aおよび後端面32bに略上下方向にスライド可能に係合する前壁部26aおよび後壁部26bとなっている。なお、ロック部材収納孔25および切欠き部26にそれぞれ形成された各前壁部25a、26aおよび各後壁部25b、26bは、後述する弾性部材40の支点を中心とした円弧面に形成されている。これら前壁部25a、26aおよび後壁部25b、26bによって、ロック部材30のロアレール10の係合爪14への係合によって、アッパレール20のレール長手方向の移動を規制する規制部35を構成している。
ロック部材30を保持する弾性部材40は、1本の線材を中央部で折り返して2本の直線部41、42と各直線部41、42を連結する折り返し部47とを形成しており、折り返し部47が、アッパレール20のロック部材収納孔25に挿通され、2本の直線部41、42がアッパレール20の垂直壁部21の両側に沿って延在されている。弾性部材40は、一端に保持部をなす係合部44を有し、他端にアッパレール20の垂直壁部21に沿って上方に付勢される付勢部46を有している。すなわち、図2および図6に示すように、弾性部材40は、線材の中央部を折り返して2本の平行な直線部41、42を形成しており、折り返し部47をさらに上方に折り曲げて端部凸部43を形成している。また、線材の平行な直線部41、42の先端部は、上方に折り曲げて係合部44を形成し、さらに、線材の平行な直線部41、42の中央には、逆U字状に湾曲して上方に突出する中央凸部45を形成している。そして、これら端部凸部43と中央凸部45との間に、ロック部材30を略水平状態で保持する付勢部46を形成している。
図7に示すように、弾性部材40の端部凸部43はロック部材30の係止長孔33に係止され、中央凸部45はロック部材30の係止溝34に係止されている。そして、ロック部材30は、端部凸部43と中央凸部45によってレール長手方向に挟持された状態で付勢部46上に配設されている。一方、弾性部材40の係合部44は、図4および図6に示すように、アッパレール20の垂直壁部21の底壁部22付近の一部を切り欠いて外側に折り曲げた係合壁部27に係合されている。係合壁部27は、アッパレール20の底壁部22に対し、弾性部材40の線径に相当する隙間を有して平行に延在され、この隙間に弾性部材40の直線部41、42が挿通保持されている。これによって、弾性部材40は、係合部44を支点にして付勢部46を上方向に付勢し、これに保持したロック部材30を常にロアレール10の係合爪14に係合する方向に付勢している。
左右のアッパレール20には、図1および図2に示すように、操作部を備えた操作部材としての操作ハンドル50が左右両端部51を支軸60によって揺動可能に支持されている。操作ハンドルの左右両端部51の各先端部は搭乗者によって操作されるハンドル操作部52によって一体的に連接されている。操作ハンドル50の左右両端部51は、レール長手方向の後方に延び、その後端には斜め下方に延在してロック部材30の上面に近接する押圧部53が形成されている。押圧部53は、操作ハンドル50のハンドル操作部52の上方向操作によってロック部材30の上面中央部に当接し、ロック部材30を弾性部材40の付勢力に抗して下方向に押圧し、ロアレール10の係合爪14との係合を解除するようになっている。以下、アッパレール20に操作ハンドル50を揺動可能に支持する具体的な構成について説明する。
操作ハンドル50の左右両端部51には、同軸上に取付孔54がそれぞれ形成され、これら取付孔54に支軸60が、図9に示すように、かしめ固定されるようになっている。支軸60には、2つの鍔部60a、60bの間に両鍔部60a、60bよりも小径の小径部60cが形成されている。図2に示すように、アッパレール20の垂直壁部21のレール長手方向の先端部には、ハンドル保持用スプリング70が溶接等によって一体的に取付けられている。ハンドル保持用スプリング70は、弾性変形可能な一対の板ばね70a、70bを上下方向に対向して備え、これら一対の板ばね70a、70bは、レール長手方向の後方に向かって延び、かつ後方に向かうにつれて上下方向の間隔が小さくなるように構成されている。
アッパレール20の垂直壁部21およびハンドル保持用スプリング70には、略U字状の保持孔21a、70cが、レール長手方向の前方に向かって開口され、これら保持孔21a、70cに操作ハンドル50に固定した支軸60の小径部60cが係合されるようになっている。操作ハンドル50の左右両端部51には、支軸60の小径部60cが保持孔21a、70cに係合される際、一対の板ばね70a、70bを押し広げて通過する傾斜部55が形成され、この傾斜部55に連続して、一対の板ばね70a、70bの端部に係合する段部56が形成されている。
これにより、操作ハンドル50の左右両端部51に形成した傾斜部55によって、ハンドル保持用スプリング70の一対の板ばね70a、70bを押し広げながら、操作ハンドル50に固定した支軸60の小径部60cを、アッパレール20の保持孔21a、70cの底部に係合する位置まで挿入させると、操作ハンドル50の傾斜部55が一対の板ばね70a、70bを通り過ぎ、その後、一対の板ばね70a、70bはその弾性復帰力により弾性復帰して段部56に係合する。その結果、操作ハンドル50の後退が阻止され、操作ハンドル50の抜けが防止される。このように、操作ハンドル50は、ハンドル保持用スプリング70のスナップアクションによって、簡単かつ確実にアッパレール20に揺動可能に支持される。
これによって、操作ハンドル50は、ハンドル保持用スプリング70の一対の板ばね70a、70bの付勢力によって通常所定の角度位置に保持され、この状態においては、操作ハンドル50の押圧部53は、ロアレール10の係合爪14に係合しているロック部材30の上面より所定量離間されている。この状態より、操作ハンドル50のハンドル操作部52を一対の板ばね70a、70bの付勢力に抗して上方に操作すると、操作ハンドル50が支軸60を中心にして図1の時計回りに揺動される。その結果、操作ハンドル50の押圧部53が下方に移動され、ロック部材30の上面を押圧してロック部材30を弾性部材40の付勢力に抗して下方に移動させ、ロアレール10の係合爪14との係合を解除するようになっている。
なお、支軸60に形成した小径部60cの幅は、その両側の鍔部60a、60bによって、アッパレール20の垂直壁部21およびハンドル保持用スプリング70に対し遊びがないように挟持できる大きさに定められている。
このように、本実施の形態においては、ロアレール10の係合爪14に係合するロック部材30、およびロック部材30を係合爪14に係合する方向に付勢する弾性部材40が、ロアレール10内に収納され、アッパレール20の垂直壁部21の側方にスペースを取らないので、車両用シートスライド装置をコンパクトに構成することができる。
しかも、ロック部材30がアッパレール20のロック部材収納孔25に上下方向に移動可能に収納されていることにより、ロック部材30を組付けるうえで、アッパレール20のフランジ壁部23に形成する切欠き部26は、フランジ壁部26の上部にのみ形成すればよい。従って、図5から明らかなように、アッパレール20の底壁部22まで切欠く必要がなく、底壁部22をレール長手方向の全長に亘って肉部を残存することができるので、アッパレール20の強度を向上することができる。
次に、上記した実施の形態に係る車両用シートスライド装置の動作について説明する。通常は図6に示すように、ロック部材30が弾性部材40の付勢力によって、ロアレール10の係合爪14に係合され、これによって、ロアレール10に対するアッパレール20のレール長手方向の移動が拘束され、アッパレール20に支持された車両のシートは所定の位置に位置決めされている。
操作ハンドル50のハンドル操作部52が着座者によって上方に操作されると、操作ハンドル50が支軸60を中心にして、ハンドル保持用スプリング70の一対の板ばね70a、70bの付勢力に抗して図1の時計回りに揺動される。これによって、操作ハンドル50の押圧部53が下方に移動されて、ロック部材30の上面に当接し、ロック部材30を弾性部材40の付勢力に抗して下方に移動させ、図6に示すように、ロック部材30とロアレール10の係合爪14との係合を解除する。
この状態で、車両のシートを車両の前後方向に位置調整すると、アッパレール20がロアレール10に対してレール長手方向に摺動される。そして、車両のシートが所定の前後方向に位置調整された状態で、操作ハンドル50から手を離すと、操作ハンドル50がハンドル保持用スプリング70の一対の板ばね70a、70bの付勢力によって、図1に示す原位置に復帰される。これにより、操作ハンドル50の押圧部53が上方に移動されるため、ロック部材30は、弾性部材40の付勢力によって上方に移動され、ロック部材30の両端部に突設した複数の係合突起32が、ロアレール10の両フランジ壁部13に形成した係合爪14に係合され、ロアレール10に対するアッパレール20のレール長手方向の移動が拘束される。
この場合、ロック部材30は、アッパレール20の垂直壁部21のロック部材収納孔25に形成された円弧状の前壁部25aおよび後壁部25bに、ロック部材30の前端面30aおよび後端面30bが係合され、かつアッパレール20のフランジ壁部23の切欠き部26に形成された円弧状の前壁部26aおよび後壁部26bに、ロック部材30の係合突起30aの前端面32aおよび後端面32bが係合されるため、ロック部材30は、レール長手方向に移動不能に位置決めされ、アッパレール20、延いては車両のシートをレール長手方向にガタツキなく拘束できるようになる。
上記した実施の形態によれば、ロック部材30は、アッパレール20の垂直壁部21と上向きフランジ壁部22に上下方向に移動可能に保持される。そして、弾性部材40は、アッパレール20の垂直壁部21および上向きフランジ壁部22の各間、かつロアレール10の側壁部12の上端および底壁部11の間に配設され、弾性部材40により底壁部11に係止された一端を支点としてロック部材30に当接する他端でロック部材30を係合爪14に係合する上方向に付勢する。そのため、ロック部材30および弾性部材40をロアレール10内に内蔵することが可能となる。また、ロック部材30は、ロアレール10の各下向きフランジ壁部13に形成された係合爪14に係脱可能な係合突起32を有する。そのため、各下向きフランジ壁部13をロックすることができる両側ロック機構となり、小型で信頼性の高いロック機構が実現可能となる。
上記した実施の形態によれば、ロック部材30の係合突起32はレール幅方向の両端部に設けられており、ロック部材30は扁平なプレート状をなすとともに長手方向を中心として対称な構造であるため、アッパレール20に保持されたロック部材30をロアレール10に対してレール幅方向の両側でロックすることができ、アッパレール20に支持される車両シートを傾くことなく安定的にロック保持することができる。
上記した実施の形態によれば、弾性部材40は、一端にアッパレール20の係合壁部27に係合保持される係合部44を有し、他端にロック部材30の下面に当接しロック部材30をアッパレール20の垂直壁部21に沿って上方に付勢する付勢部46を有しているので、弾性部材40の付勢部46によりロック部材30を係合爪14に係合する方向に付勢することができる。
上記した実施の形態によれば、弾性部材40は、1本の線材を中央部で折り返して2本の直線部41、42と各直線部41、42を連結する折り返し部47とを形成しており、折り返し部47が、アッパレール20のロック部材収納孔25に挿通され、2本の直線部41、42がアッパレール20の垂直壁部21の両側に沿って延在されているので、弾性部材40をコンパクトに構成でき、ロアレール10内に収納することが可能となる。
上記した実施の形態によれば、ロック部材30には、係止孔33と係止溝34が設けられ、これら係止孔33と係止溝34に係合する凸部43,45が弾性部材40の付勢部46に設けられているので、弾性部材40の付勢部46にロック部材30を確実に保持することができる。
上記した実施の形態によれば、ロック部材収納孔25には、ロック部材30が係合爪14に係合した際に、ロック部材30のレール長手方向の移動を規制する規制部35を有しているので、ロック部材30をレール長手方向に的確に位置決めすることができ、アッパレール20に支持される車両シートのレール長手方向の移動を確実に拘束することができる。
上記した実施の形態によれば、操作ハンドル50は、ロック部材30の上面に近接する押圧部53と、搭乗者が操作するハンドル操作部52とを有し、ハンドル操作部52を操作することで押圧部53がロック部材30の上面を押圧し、ロック部材30を弾性部材40の付勢方向に抗して下方向に移動させる。そのため、操作ハンドル50のハンドル操作部52を上方に回動させることにより、押圧部53を下方に回動させることができる。
上記した実施の形態においては、弾性部材40を1本の線材を折り曲げて形成したが、弾性部材40は2本の一対の部材によって構成してもよいし、上記した実施の形態における折り返し部47等で2本の一対の部材を固着させて1本の部材としてもよい。
上記した実施の形態においては、操作ハンドル50の操作ハンドル部52を搭乗者によって手動で操作するようにしたが、電動にて作動させることもでき、この場合においては、搭乗者によって操作される操作ハンドル部52に代えて操作部が設けられ、操作ハンドル50に代えて操作部材が設けられる。
上記した実施の形態においては、アッパレール20の垂直壁部21に形成したロック部材収納孔25の前後に、ロック部材30の中央前端面30aおよび中央後端面30bに係合する円弧状の前壁部25aおよび後壁部25bを形成するとともに、アッパレール20のフランジ壁部23の切欠き部26の前後に、ロック部材30の係合突起32の両端前端面32aおよび両端後端面32bに係合する円弧状の前壁部26aおよび後壁部26bを形成した例について述べたが、アッパレール20に形成する前壁部および後壁部は、何れか一方に形成するだけでもよい。
また、アッパレール20に形成する前壁部25a、26aおよび後壁部25b、26bは、ロック部材30がロアレール10の係合爪14に係合するときにだけ、ロック部材30の中央前端面30aおよび中央後端面30b、あるいは両端前端面32aおよび両端後端面32bに係合させるようにすることもでき、この場合には、特に円弧状にする必要もない。
さらに、上記した実施の形態においては、操作ハンドル50を、ハンドル保持用スプリング70のスナップアクションによって、簡単かつ確実にアッパレール20に揺動可能に支持できるようにして、その組付性を向上したが、当該構成は本発明にとって必ずしも必要な要件ではなく、操作ハンドル50を適宜の支持軸によってアッパレール20に揺動可能に支持し、別途スプリングによって操作ハンドル50を揺動付勢するようにしてもよい。
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
10…ロアレール、11…底壁部、12…側壁部、13…下向きフランジ壁部、14…係合爪、20…アッパレール、21…垂直壁部、22…底壁部、23…上向きフランジ壁部、25…ロック部材収納孔、26…切欠き部、27…係合保持部、30…ロック部材、32…係合部(係合突起)、33…係止孔、34…係止溝、35…規制部、40…弾性部材、41、43…直線部、43、45…凸部、44…係合部、46…付勢部、47…折り返し部、50…操作ハンドル、52…ハンドル操作部、53…押圧部、60…支軸、70…ハンドル保持用スプリング。