以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。画像形成装置1内には画像形成部Pが、搬送ベルト8の上方に配設されている。この画像形成部Pは、帯電、露光、現像及び転写の各工程により所定の画像を形成する。
この画像形成部Pには、可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)2が配設されており、感光体ドラム2上に形成されたトナー像が、画像形成部Pに隣接して移動する搬送ベルト8によって担持・搬送されるシート(記録媒体)6上に転写され、さらに、定着ユニット7においてシート6上に定着された後、装置本体より排出される構成となっている。駆動モータ21により感光体ドラム2を図1において時計回りに駆動回転させながら、感光体ドラム2に対する画像形成プロセスが実行される。
次に、画像形成部Pについて詳細に説明する。回転自在に配設された感光体ドラム2の周囲及び上方には、感光体ドラム2を帯電させる帯電ローラ(帯電手段)3と、感光体ドラム2に画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム2上にトナー像を形成する現像ユニット(現像手段)5と、感光体ドラム2上に残留した現像剤(トナー)を回収するクリーニングユニット9と、静電潜像を除去する除電器10と、が設けられている。
先ず、帯電ローラ3によって感光体ドラム2の表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、感光体ドラム2上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像ユニット5は、感光体ドラム2と対向して配置された現像ローラ5aを有し、現像ユニット5には、トナーがトナーコンテナ11によって所定量充填されている。このトナーは、現像ローラ5aにより感光体ドラム2上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。なお、帯電ローラ3の詳細については後述する。
トナー像が転写されるシート6は、シート6を収納する複数の給紙カセット12a、12b、12cと、その上方に設けられるスタックバイパス(手差しトレイ)12dに収容されており、給紙ローラ13、レジストローラ14を介して搬送ベルト8上へ供給され、感光体ドラム2の位置へと搬送される。搬送ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。
搬送ベルト8は、シート搬送方向下流側の駆動ローラ15と、上流側の従動ローラ16とに掛け渡されており、搬送ベルト8が反時計回りに回転を開始すると、シート6がレジストローラ14から搬送ベルト8上へ搬送される。このとき画像書き出し信号がONとなり、シート6の所定位置にトナー像が転写されるように感光体ドラム2上に画像形成を行う。そして、感光体ドラム2の下部において、所定の転写電圧が印加された転写ローラ17で電界付与することにより、感光体ドラム2上のトナー像がシート6上に転写される。このシート6は、搬送ベルト8上に静電吸着力で保持されている。
トナー像が転写されたシート6は、搬送ベルト8から離脱し、定着ユニット7へと搬送される。また、トナー像が転写された後の感光体ドラム2は、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、その表面に残留したトナーがクリーニングユニット9により回収される。搬送ベルト8から定着ユニット7に搬送されたシート6は、定着ローラ7aにより加熱及び加圧されてトナー像がシート6の表面に定着され、所定の画像が形成される。画像が形成されたシート6は、その後排出ローラ18によって排出トレイ19に排出される。
図2は、本実施形態の画像形成装置に用いられる帯電ローラ及び感光体ドラム周辺の概略拡大断面図であり、図3は、図2の帯電ローラの感光体ドラムに対する圧接力が帯電ローラの回転に及ぼす影響を示す図である。なお、図2では、搬送ベルト8、現像ユニット5を省略して示した。また、図1と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
感光体ドラム2としては、例えばアモルファスシリコン(a−Si)感光体ドラムを用いることができる。また、図2及び図3に示すように、感光体ドラム2は、回転軸(駆動回転中心)2aに設けられた不図示の駆動ギアを介して駆動モータ21(図1参照)と連結されることにより、正逆駆動回転可能となっている。画像形成時の感光体ドラム2の駆動回転方向を正駆動回転方向とし、ここでは、画像形成時に図中時計回り(正駆動回転方向)に駆動回転するようになっている。また、感光体ドラム2は、画像形成時に、駆動回転開始から停止するまで正駆動回転方向に駆動回転するようになっている。すなわち、駆動回転開始時の感光体ドラム2の駆動回転方向は、正駆動回転方向となる。
感光体ドラム2の上方には、感光体ドラム2表面と回転自在に当接し、該ドラム表面を帯電する帯電ローラ3が配置されている。帯電ローラ3は、例えば、金属製のシャフト(従動回転中心)3aの周面に表層に抵抗値105〜106Ω、表面粗さRZ=10μmのエピクロルヒドリンゴム等から成るゴム層(弾性層)を形成した導電性ゴムローラ等のソリッドタイプを好適に用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。その他、例えば、発泡ゴムローラにチューブを被せたスポンジタイプ等を用いることもできる。
帯電ローラ3のシャフト3aは、装置本体に回転可能に支持されており、感光体ドラム2の回転軸2aと帯電ローラ3のシャフト3aとを含む平面(面)Sは、鉛直方向(図2及び図3の上下方向)に配置されている。シャフト3aは、後述するように、圧縮バネ(付勢手段)31によって感光体ドラム2に向かって付勢されている。また、シャフト3aは、バイアス印加装置25と電気的に接続され、バイアス印加装置25からシャフト3aに、交流電圧が重畳された直流電圧から成る帯電バイアスが印加されるようになっている。
具体的には、正帯電トナーを用いる場合には、シャフト3aに正極性のバイアスを印加することによって、ゴム層の抵抗に応じて流れる電流により、感光体ドラム2表面を帯電することができる。なお、シャフト3aに直流電圧を印加することもできる。
クリーニングユニット9には、感光体ドラム2表面の残留トナーを除去するためのクリーニングブレード22と、感光体ドラム2表面の残留トナーを除去するとともに感光体ドラム2表面を摺擦して研磨するクリーニングローラ23と、トナー排出手段としての搬送スクリュー24と、が設けられている。クリーニングブレード22は、感光体ドラム2の表面に、該ドラムの正駆動回転方向(図2の時計回り)に対しカウンターとなるよう当接している。
また、クリーニングユニット9と帯電ローラ3との間には、静電潜像を除去する除電器10が設けられている。感光体ドラム2上に形成された静電潜像が除電器10によって除去された後、帯電ローラ3によって感光体ドラム2表面が新たに帯電され、露光ユニット4(図1参照)によって感光体ドラム2表面に新たに静電潜像が形成される。
感光体ドラム2表面の転写残トナーや外添剤は、クリーニングブレード22により除去され、クリーニングローラ23及び搬送スクリュー24によってトナー排出口(図示せず)からクリーニングユニット9の外部に排出される。なお、図示しないが、クリーニングユニット9には、クリーニングローラ23表面のトナーを所定の層厚とするためのスクレーパや、クリーニングユニット9内の廃トナーを外部に漏らさないためのウレタンシール等も設けられている。
圧縮バネ31は、スプリング等から成り、一端は装置本体の不図示の支持部に、他端は帯電ローラ3のシャフト3aに固定されている。また、圧縮バネ31は、平面S(図3の上下方向)に対し、感光体ドラム2の正駆動回転方向(図3の時計回り)下流側に角度θだけ傾いた方向に沿って配置されている。
これにより、圧縮バネ31は、シャフト3aを、感光体ドラム2の正駆動回転方向下流側(図3の右上側)から感光体ドラム2側に付勢し、かかる圧縮バネ31の付勢力により、帯電ローラ3は、平面Sに対し正駆動回転方向下流側から感光体ドラム2に圧接される。
すなわち、圧縮バネ31が帯電ローラ3を付勢する付勢方向(図3のW方向、第1の方向)は、平面S(第2の方向)に対し、帯電ローラ3と感光体ドラム2との接触部(ニップ部)Aにおける回転移動方向(図3のF方向、接触部Aにおける感光体ドラム2の駆動回転方向であって、帯電ローラ3の従動回転方向)とは反対側に傾いている。これにより、接触部Aにおいて、感光体ドラム2には、平面Sに対し感光体ドラム2の正駆動回転方向上流側(上記反対側)に圧接角度(傾き角度)θだけ傾いた方向(図の左下側)に圧接力Wが作用する。
かかる圧接力Wの、平面Sとは垂直方向(接触部Aにおける接線方向、図3の左右方向)における第1分力をWm、平面S方向(接触部Aにおける法線方向、図3の上下方向)における第2分力をWnとすると、Wm=W×sinθ、Wn=W×cosθと表される。なお、感光体ドラム2に対する帯電が略一定になるように、Wn=W×cosθが所定値に設定されるようになっている。
このとき、接触部Aにおいて帯電ローラ3が感光体ドラム2から反作用として受ける応力のうち、接線方向の第1応力Wmからの反作用力は、駆動回転開始時に帯電ローラ3を、正駆動回転方向に駆動回転する感光体ドラム2と従動回転する方向(従動回転方向、図3の反時計回り)に回転させる力のモーメントとなる。なお、かかる力のモーメントが働くのは、帯電ローラ3が、感光体ドラム2表面上を滑ることなく静止、または該表面上を滑ることなく回転している状態、すなわち、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間に摩擦力が連続して作用している場合である。
かかる力のモーメントをMとすると、帯電ローラ3の半径がrのとき、M=r×Wm=r×(W×sinθ)で表される。ここで、帯電ローラ3を従動回転方向に回転させるのに必要な力をFとすると、転がり摩擦係数がμのとき、F=(μ×Wn/r)−Mで表される。この式と、上記Wn及びMの式と、から、F={μ×(W×cosθ)/r}−{r×(W×sinθ)}と表される。
ここで、前述した従来例についての図7に示すように、圧縮バネ31が平面Sに沿って配置され、平面Sに沿って帯電ローラ3が感光体ドラム2に圧接された場合、帯電ローラ3の圧接角度θは0(θ=0)となる。この場合、sinθ=0となるため、上記Mの式は、M=r×(W×sinθ)=0となる。従って、接触部Aにおいて、帯電ローラ3には、帯電ローラ3を従動回転方向(図7の反時計回り)に回転させる力のモーメントは作用しない。なお、このときWnはWと等しくなる(Wn=W)。
従って、帯電ローラ3を図7の反時計回りに回転させるために必要な力Fを示す上記式は、F=(μ×Wn/r)−M={μ×(W×cosθ)/r}−{r×(W×sinθ)}=μ×(W×cosθ)/rと表される。また、W×cosθ=Wである。よって、圧接角度θ=0の場合、Fは、転がり摩擦係数μと圧接力Wのみによって決定され、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間の摩擦力を軽減することは困難である。
一方、上記した図3に示すように、接触部Aにおいて圧接角度θが平面Sに対し感光体ドラム2の正駆動回転方向上流側(図3の左下側)に傾いた場合を正(θ>0)、後述する図4に示すように、下流側(図4の右下側)に傾いた場合を負(θ<0)とする。
図3に示すように、θ>0の場合には、sinθ>0となるため、上記Mの式は、M=r×W×sinθ>0となる。よって、帯電ローラ3を図3の反時計回りに回転させるために必要な力Fを示す上記式は、F={μ×(W×cosθ)/r}−{r×(W×sinθ)}<μ×(W×cosθ)/rとなる。
従って、接触部Aにおいて、帯電ローラ3を従動回転方向(図3の反時計回り)に回転させる力のモーメントが働くため、帯電ローラ3を回転させるための力Fは、θ=0の場合よりも減少する。よって、圧接力Wによって帯電ローラ3に図3の反時計回りの回転力を与えることができ、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間に発生する摩擦力を軽減することができる。
図4は、感光体ドラムに対する圧接角度が負の場合に、帯電ローラの感光体ドラムに対する圧接力が帯電ローラの回転に及ぼす影響を示す図である。一方、図4に示すように、圧接角度θが負(θ<0)の場合には、sinθ<0となるため、上記Mの式は、M=r×Wsinθ<0となる。よって、帯電ローラ3を図4の反時計回りに回転させるために必要な力Fを示す上記式は、F={μ×(W×cosθ)/r}−(r×W×sinθ)>μ×(W×cosθ)/rとなる。
従って、感光体ドラム2が正駆動回転方向(図4の時計回り方向)に駆動回転する場合には、接触部Aにおいて、帯電ローラ3を従動回転方向(図4の反時計回り)とは反対方向(図4の時計回り)に回転させる力のモーメントが働くため、帯電ローラ3を従動回転方向に回転させるための力Fはθ=0の場合よりも増大する。よって、帯電ローラ3は図4の反時計回りには回転し難くなり、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間に発生する摩擦力を軽減することは困難となる。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、圧接角度θがθ>0となるように圧縮バネ31によって帯電ローラ3を感光体ドラム2に圧接させて、感光体ドラム2を正駆動回転方向に駆動回転させることとした。これにより、感光体ドラム2の駆動回転開始時において、圧接力Wにより帯電ローラ3に従動回転方向(図3の反時計回り)の回転力を与えることができる。
また、ここでは駆動回転開始から停止まで感光体ドラム2を正駆動回転方向(同じ方向)に駆動回転させたため、駆動回転開始時のみならず、駆動回転開始から停止に至るまで、圧接力Wにより接触部Aにおいて帯電ローラ3に従動回転方向の回転力を与えることができる。
また、ここでは駆動回転開始から所定時間T経過後にバイアス印加装置25から帯電ローラ3に帯電バイアスを印加して、感光体ドラム2の帯電を行うこととした。これにより、駆動回転開始直後の、感光体ドラム2との間での摩擦力が大きいときに帯電ローラ3に帯電バイアスが印加されることを回避できる。
本実施形態により、感光体ドラム2が駆動回転を開始するとき少なくとも、圧縮バネ31が帯電ローラ3を付勢する付勢方向が、平面Sに対し、帯電ローラ3及び感光体ドラム2の接触部Aにおける回転移動方向とは反対側に傾いている構成とすることによって、少なくとも駆動回転の開始時、感光体ドラム2に対する圧接力Wにより帯電ローラ3に従動回転方向の回転力を与えることができるため、駆動回転の開始時に、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間で発生する摩擦力を軽減することができる。
これにより、駆動回転開始時に感光体ドラム2との間で帯電ローラ3に過剰な摩擦力が発生することを抑制できるため、帯電ローラ3表面の破壊を防止することができる。従って、帯電ローラ3表面の耐破壊マージンを大きくすることができる。また、特に、摩擦力が大きくなる駆動回転開始時において過剰な摩擦力の発生を抑制できるため、効果的である。加えて、特に高温高湿度環境下では、駆動回転開始時において帯電ローラ3と感光体ドラム2との密着性が高くなり、これらの間の摩擦力が大きくなり易いため、効果的である。
また、本実施形態では、感光体ドラム2が、駆動回転の開始から停止まで正駆動回転方向に駆動回転することとし、圧縮バネ31の付勢方向が、平面Sに対し、帯電ローラ3及び感光体ドラム2の接触部Aにおける回転移動方向とは反対側に傾いている構成としたため、駆動回転の開始から停止に至るまで帯電ローラ3と感光体ドラム2との間で発生する摩擦力を軽減することができる。これにより、帯電ローラ3表面が連続回転中の摩擦によって受ける負担をより軽減することができ、帯電ローラ3表面の破壊をより防止することができる。
また、本実施形態では、駆動回転開始から所定時間T1経過後に帯電ローラ3に帯電バイアスを印加することとしたため、感光体ドラム2と帯電ローラ3との間で発生する摩擦力を軽減させた状態で帯電バイアスを印加することができる。これにより、帯電ローラ3表面が摩擦及び帯電によって受ける負担を軽減することができるため、より効果的に帯電ローラ3表面の破壊を防止できる。
なお、大きな摩擦力を受けた状態での帯電ローラ3に対する帯電バイアスの印加を回避する、という点を考慮すると、かかる所定時間Tは、0超であれば、特に限定されるものではない。一方、所定時間T1を長くすれば、待機時間が長くなり、画像形成の効率を低下させるおそれがある。従って、例えばかかる観点を考慮して、所定時間Tを適宜設定することができ、所定時間Tを例えば30msecとすることができる。
また、本実施形態では、感光体ドラム2の感光体としてa−Si感光体ドラム、帯電ロローラ3としてエピクロルヒドリンゴム製帯電ローラを用いたため、感光体ドラム2の表面平滑性が高く、帯電ローラ3との密着性が高くなる。また、帯電ローラ3も感光体ドラム2との密着性が高くなる。このため、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間に大きな摩擦力が生じ易い。しかし、このような感光体ドラム2及び帯電ローラ3を用いた場合であっても、駆動回転開始時に、帯電ローラ3を感光体ドラム2に従動回転させ易くなるため、特に効果的である。ただし、感光体ドラム2としては、有機感光体(OPC)を用いることもできる。
なお、圧接角度θは、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間の摩擦力の軽減状況や、装置構成等に応じて適宜設定することができる。ただし、圧接角度θが大きくなれば帯電ローラ3の表面の破壊を抑制できる一方、帯電ローラ3が感光体ドラム2に対してスリップするおそれがある。
従って、例えばかかる観点を考慮すれば、圧接角度θを5°以上45°以下とすることが好ましく、これにより、帯電ローラ3の表面の破壊の抑制のみならず、スリップをも防止することができる。また、圧接角度θを10°以上30°以下とすることがより好ましく、これにより、帯電ローラ3の表面の破壊を一層抑制することができる。また、感光体ドラム2に対する帯電ローラ3の配置は、本実施形態に特に限定されるものではなく、装置構成等に応じて適宜設定することができる。
図5は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置に用いられる帯電ローラ及び感光体ドラムにおいて、帯電ローラの感光体ドラムに対する圧接力が帯電ローラの回転に及ぼす影響を示す図である。図3と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、感光体ドラム2を駆動回転開始から停止まで正駆動回転方向(図5の時計回り)に駆動回転させることとした。一方、帯電ローラ3を、第1実施形態とは異なり、帯電ローラ3のシャフト3aと感光体ドラム2の回転軸2aを通る平面Sが、鉛直方向(図5の上下方向)に対し、感光体ドラム2の正駆動回転方向上流側に角度θだけ傾斜するように配置し、圧縮バネ31を、鉛直方向に沿って配置した。その他の構成は、第1実施形態と全く同様であるため説明を省略する。
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、圧縮バネ31は、平面Sに対し感光体ドラム2の正駆動回転方向下流側に角度θだけ傾いた方向に沿って配置されており、帯電ローラ3は、平面Sに対し感光体ドラム2の正駆動回転方向下流側から感光体ドラム2に圧接されている。すなわち、圧縮バネ31の付勢方向(図5のW方向)は、平面Sに対し、感光体ドラム2及び帯電ローラ3の接触部Aにおける回転移動方向(図5のF方向)とは反対側に傾いている。これにより、接触部Aにおいて、帯電ローラ3の感光体ドラム2に対する圧接力Wは、平面Sに対し正駆動回転方向上流側に圧接角度θだけ傾斜しており、θ>0となっている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様、帯電ローラ3を従動回転方向(図5の反時計回り)に回転させるために要する力Fの上記式、F=μ×Wn/r−M={μ×(W×cosθ)/r}−(r×W×sinθ)において、圧接角度θが正(θ>0)であるため、θ=0(図7参照)の場合よりもFが小さくなる。これにより、回転駆動開始時から停止に至るまで、圧接力Wによって帯電ローラ3に従動回転方向の回転力を与えることができる。
加えて、本実施形態では、圧接力Wの作用する鉛直方向に沿って、帯電ローラ3の自重が加わるため、圧縮バネ31の付勢力を軽減することができる。これにより、圧縮バネ31の負担が軽減され、帯電ローラ3の圧接力Wを長期間にわたって安定させることができる。
図6は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に用いられる帯電ローラ及び感光体において、帯電ローラの感光体ドラムに対する圧接力が帯電ローラの回転に及ぼす影響を示す図である。図3及び図4と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態では、画像形成時、感光体ドラム2が図6の時計回り(破線矢印参照)に駆動回転することとした(正駆動回転方向)。また、上記した図4と同様に、帯電ローラ3を、平面Sに対し感光体ドラム2の正駆動回転方向上流側から感光体ドラム2に圧接した。
かかる配置構成の場合、上記した様に、駆動回転開始時に感光体ドラム2が正駆動回転方向に駆動回転すると、接触部Aにおける帯電ローラ3の感光体ドラム2に対する圧接力Wの平面S対する圧接角度θが負(θ<0)となり、帯電ローラ3を従動回転方向(この場合には図6の反時計回り、破線矢印参照)に回転させる力のモーメントMは、M<0となる。従って、接触部Aにおいて、駆動回転開始時に、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間に発生する摩擦力を軽減することは困難である。
そこで、本実施形態では、駆動回転開始時に、感光体ドラム2を正駆動回転方向とは逆の逆駆動回転方向(図6の反時計回り、実線矢印参照)に駆動回転させ、その後、感光体ドラム2を正駆動回転方向に駆動回転させることとした。
具体的には、駆動回転開始時に、感光体ドラム2を所定回転量Rだけ逆駆動回転方向に駆動回転させた後、正駆動回転方向に駆動回転させることとした。かかる感光体ドラム2の駆動回転方向の切り替えは、不図示の制御部によって行うこととした。その他の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態により、駆動回転開始時には、帯電ローラ3は、平面Sに対し逆駆動回転方向下流側から感光体ドラム2に圧接される。すなわち、圧縮バネ31の付勢方向(図6のW方向)が、平面Sに対し、帯電ローラ3及び感光体ドラム2の接触部Aにおける回転移動方向(図6のF方向)とは反対側に傾いているため、接触部Aにおいて感光体ドラム2に対する圧接力Wの平面S対する圧接角度θが正(θ>0)となり、帯電ローラ3に働く力のモーメントMは、上記第1実施形態と同様にM>0となる。
従って、帯電ローラ3は、圧接力Wにより、従動回転方向(この場合には図6の時計回り、図の実線矢印参照)の回転力が与えられる。よって、最も大きな摩擦力が発生する駆動回転開始時において、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間の摩擦力を軽減できるため、帯電ローラ3表面の破壊を防止できる。そして、駆動回転開始後、感光体ドラム2が所定回転量Rだけ逆駆動回転方向に駆動回転すると、感光体ドラム2の駆動回転方向が逆駆動回転方向から正駆動回転方向に切り替わる。
なお、感光体ドラム2が正駆動回転方向に駆動回転するときには、上記の通り、帯電ローラ3には圧接力Wによる感光体ドラム2に従動回転する方向(図6の反時計回り)の回転力は作用しない。しかし、このとき既に、静止状態にある帯電ローラ3と感光体ドラム2との付着が剥がれた(解放された)後であるため、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間には、静止状態から駆動回転を開始するときのような大きな摩擦力は発生しない。
所定回転量Rは、大きな摩擦力を受けた状態での帯電ローラ3に対する帯電バイアスの印加を回避する、という点を考慮すると、0超であれば、特に限定されない。但し、所定回転量Rが小さすぎると、帯電ローラ3の感光体ドラム2に対する付着を十分に解放することができないおそれがあり、大きすぎると、待機時間が長くなり、画像形成の効率を低下させるおそれがある。従って、例えばかかる観点を考慮して、所定回転量Rを適宜設定することができる。
また、所定回転量Rは、例えば帯電ローラ3に対して上記した所定時間Tで帯電バイアスが印加される場合には、所定時間Tまでに感光体ドラム2の駆動回転を逆駆動回転方向から正駆動回転方向に切り替えることができる。これにより、帯電ローラ3と感光体ドラム2との間での大きな摩擦力の発生を確実に回避した状態で、帯電ローラ3に帯電バイアスを印加できるため、効果的である。また、所定回転量Rは、回転角度で表す他、例えば感光体ドラム2の逆駆動回転方向の駆動回転の開始から、正駆動回転方向の駆動回転に切り替えるまでの時間等として表すこともできる。
本実施形態により、感光体ドラム2が、駆動回転の開始時に逆駆動回転方向に駆動回転した後、正駆動回転方向に駆動回転することとし、圧縮バネ31の付勢方向が、平面Sに対し、感光体ドラム2が逆駆動回転方向に駆動回転するときには帯電ローラ3及び感光体ドラム2の接触部Aにおける回転移動方向とは反対側に傾いており、感光体ドラム2が正駆動回転方向に駆動回転するときには、上記回転移動方向とは同じ側に傾いている構成としたため、配置スペース等の装置本体のレイアウトが制限されるような場合であっても、感光体ドラム2と帯電ローラ3との間で過剰な摩擦力が発生することを抑制できるため、より効果的に帯電ローラ3表面の破壊を防止することができる。
その他、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、感光体ドラム2の回転軸2aよりも上方に帯電ローラ3を配置したが、その他、回転軸2aの下方に帯電ローラ3を配置し、圧縮バネ31により帯電ローラ3を下方から感光体ドラム2に圧接することもできる。
また、圧縮バネ31のバネ荷重(付勢力)や、感光体ドラム2の線速度、帯電バイアス、帯電ローラ3及び感光体ドラム2の外径等は、特に限定されるものではなく、装置構成等に応じて適宜設定することができる。また、上記実施形態では、付勢手段として圧縮バネ31を用いたが、かかる付勢手段は、帯電ローラ3を感光体ドラム2に圧接可能であれば特に限定されるものではなく、その他、引張りバネ等を用いることもできる。
また、上記実施形態では、帯電ローラ3を清掃するクリーニングローラやクリーニングブラシ等のクリーニング部材を設けていないが、かかるクリーニング部材を必要に応じて適宜設けることもできる。また、本発明は、デジタル複合機やタンデム式のカラー複写機、アナログ方式のモノクロ複写機等の複写機、或いはファクシミリやレーザプリンタ等、種々の画像形成装置に適用可能である。
上記した本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1を用い、図5に示すように、感光体ドラム2を、駆動回転開始から停止まで正駆動回転方向(図5の時計回り)に駆動回転させることとし、帯電ローラ3を、平面Sが鉛直方向に対して感光体ドラム2の正駆動回転方向上流側に角度θ傾斜するように配置し、圧縮バネ31を鉛直方向(図5の上下方向)に沿って配置して、帯電ローラ3を感光体ドラム2の正駆動回転方向下流側から感光体ドラム2に対して圧接した。かかる画像形成装置1を、高温高湿環境下に放置した後、耐久試験を行って、帯電ローラ3表面の破壊の程度を調べた。
感光体ドラム2として、厚さ20μm、外径30mmのa−Si感光体を用い、感光体ドラム2の線速度を250mmとした。また、帯電ローラ3として、ローラ外径12mm、帯電ローラ3の重量を200g(片側荷重として100gf)、バネ荷重を片側400gfとし、帯電ローラ3の圧接力Wとして片側500gfの荷重を加えた。また、表1に示すように、平面Sに対する圧接角度θを3°、5°、10°、30°、45°、50°とした。
そして、画像形成装置1を、32°80%RHの高温高湿環境下に1日間放置した。かかる放置後、感光体ドラム2を正駆動回転方向に駆動回転させ、駆動回転開始から30msec経過後に、帯電ローラ3に対して帯電バイアスとして1300Vppの交流電圧を重畳した400Vの直流電圧を印加することにより感光体ドラム2を表面電位が230Vとなるように帯電して、画像形成を行った。また、各現像後帯電前に、感光体ドラム2表面を除電器10により除電した。
かかる条件で、各圧接角度θについて、100本の帯電ローラ3についてそれぞれ8万枚の印字(画像形成)を行った後の、帯電ローラ3表面の破壊状態を調べた。なお、破壊状態の測定は、帯電ローラ3表面を目視によって観察し、表面の破壊が観察された帯電ローラ3の本数を計数した後、圧接角度θが3°、5°、10°については、破壊が観察された本数の100本中に占める割合、30°、45°、50°については1000本中に占める割合を破壊比率(%)として算出することにより、行った。
また、併せて帯電ローラ3の感光体ドラム2に対するスリップのし難さも観察した。スリップし難さの評価は、スリップが認められなかった場合を○、ややスリップが認められた場合を△、スリップが顕著に認められた場合を×とすることにより、行った。結果を表1に示す。
その結果、表1に示すように、帯電ローラ3表面の破壊比率は、圧接角度θが3°のとき20%、5°のとき3%、10°のとき1%、30°のとき0.2%、45°のとき0.1%、であり、50°のときは0であった(破損が観察されなかった)。また、スリップのし難さについては、圧接角度θが、3°、5°、10°、30°のときには、スリップが認められず、45°のときには、ややスリップが認められたのに対し、50°のときには、顕著にスリップが認められた。
比較例
図7に従来例として示したように、帯電ローラ3を、平面Sが鉛直方向に沿うように配置し、帯電ローラ3を、平面Sに沿って感光体ドラム2に対して圧接したこと以外は、実施例と同様の条件で、8万枚の印字(画像形成)を行い、印字後の、帯電ローラ3表面の破壊状態を調べた。結果を表1に示す。その結果、表1に示すように、スリップは認められなかったものの、帯電ローラ3の破壊比率は、40%であった。
上記の結果、本発明に係る実施例では、比較例に比べて顕著に帯電ローラ3表面の破壊が抑制されていた。また、帯電ローラ3表面の耐破壊マージンが拡大されることがわかった。さらに、圧接角度θが大きくなる程、帯電ローラ3表面の破壊が抑制される一方、スリップし易くなることがわかった。従って、帯電ローラ3の表面の破壊の抑制効果とスリップのし難さとを考慮すれば、圧接角度θが、5°以上45°以下が好ましく、10°以上30%以下がより好ましいことがわかった。