JP5290808B2 - ロープ構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、耐疲労性および/または耐熱性に優れたコード、ロープ、ケーブル等のロープ構造体に関する。なお、通常、直径が1/4インチ(6.4mm)から5インチ(127mm)のものをロープとし、それ以上のものをケーブル、それ以下のものをコードと称する場合が多い。
従来、コード、ロープ、ケーブル等のロープ構造体は、陸・海運業、漁業、農業などの産業資材分野で広く使用され、例えば、金属製のワイヤーロープ、さらにはポリエステルやナイロン製の有機繊維ロープ、麻縄などの天然繊維ロープなどがある。
しかしながら、これらの繊維で形成されたロープ構造体では、耐熱性や耐疲労性に乏しいという欠点がある。例えば、金属製ロープでは、摩耗して表面繊維が切断しやすいだけでなく、切断した繊維は安全上問題があったり、スリングベルトのように製品を運搬する際、製品を傷つける虞がある。さらに、金属製ロープを高速で巻き取る際には、摩擦によりロープ自体が発熱するという問題点がある。
また、天然繊維は強度的な問題を抱えている。そして、これらのロープのうち、多くは、高温雰囲気下で使用される機械や各種ロボットに用いられるロープやケーブルとして用いることは困難である。
そこで、耐熱性に優れるロープとして、例えば、無機物のガラス繊維ロープ・セラミック製ロープとして、特開平5−93377号公報(特許文献1)に、セラミックウールからなる芯材と、ガラス糸とステンレス鋼線とを編組した被覆材から構成した耐熱ロープが提案されている。
さらに、特開平6−215642号公報(特許文献2)には、ロボット用に適した耐熱性ケーブルとして、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の表面に配置されたガラス繊維スリーブからなる第1被覆層と、前記第1被覆層の表面に設けられ、耐熱性を有したゴム製の熱収縮チューブからなる第2被覆層とを備えたことを特徴とする耐熱性ケーブルが開示されている。
一方で、有機繊維として、米国特許6945153号明細書(特許文献3)には、ロープの耐用年数を向上させるため、リオトロピック液晶フィラメントまたはサーモトロピック液晶フィラメントと、高強力・高弾性率ポリエチレンフィラメントとから形成した編み込みロープが開示されている。
特開平5−93377号公報(特許請求の範囲) 特開平6−215642号公報(特許請求の範囲) 米国特許6945153号明細書
しかしながら、特許文献1および特許文献2で用いられている無機繊維は、耐衝撃性に問題があり、屈曲性に欠けるため、耐疲労性に優れたロープ構造体を提供することができない。
また、特許文献3においても、さらなる耐疲労性の向上が望まれている。特に、特許文献3のロープは耐熱性にも乏しいため、製鉄所のような高温雰囲気下で使用されたり、高温の製品を吊り下げるためのスリングロープ、高温雰囲気下で使用される機械、各種ロボットに用いられるロープやケーブルとして用いることは困難である。
従って本発明の目的は、耐熱性および/または耐疲労性を実現できるロープ構造体を提供することにある。
本発明の別の目的は、幅広い温度範囲において高強度・高弾性率であるロープ構造体を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、高荷重をかけた場合であっても、優れた耐疲労性を実現できるロープ構造体を提供することにある。
本発明者等は上記した従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリエステルアミド繊維は、幅広い温度、特に高温下でも優れた強度及び弾性率を示すことを見出し、さらにこのようなポリエステルアミド繊維をロープとして用いると、従来使用することができなかった高温雰囲気下であっても高い強度および弾性率を実現できることを見出し、また、一方で、特定の重合度を有するオルガノポリシロキサンを、ポリエステルアミド繊維と組み合わせると、従来では達成できなかった耐疲労性、特に高負荷を加えた場合であっても耐疲労性に優れたロープを得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
下記[化1]で表わされる[A]、[B]、[C]、[D]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、
150℃雰囲気下の強度(T150)が17cN/dtex以上であり、かつ
150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維を含む耐熱性ロープ構造体であって、
この溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、平均重合度が50000〜200000である下記[化2]で表わされるオルガノポリシロキサンを含むオルガノポリシロキサン組成物が付着している耐熱性ロープ構造体である。
なお、[化2]において、式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ同一または異なって、−H、−COOH、−R、または−RCOOHを表し、Rはアルキル基またはアリール基を示す。またm、nは1以上の整数を示す。
Figure 0005290808
Figure 0005290808
前記溶融異方性ポリエステルアミド繊維は、350℃雰囲気下における乾熱収縮率が1%未満であってもよい。また、熱風乾燥機の中で250℃雰囲気下、100hr暴露させた後に取り出して常温25℃雰囲気で測定した時の強度(T250)と25℃雰囲気下の強度(T25)との比(これを耐熱老化性と称する)が、T250/T25=0.80以上であってもよい。
さらに、本発明のロープ構造体では、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、平均重合度が50000〜200000であるオルガノポリシロキサンを含むオルガノポリシロキサン組成物が付着していてもよい。
前記オルガノポリシロキサン組成物は、乳化剤および浸透剤(例えば、ジアルキルスルホクサシアネートおよびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種)から選択される少なくとも一種を含有していてもよい。
さらに、本発明のロープ構造体では、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、フッ素樹脂が付着していてもよい。
さらに、ポリオルガノシロキサン組成物に着目した別の態様では、本発明は、
上記[A]、[B]、[C]、[D]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、
[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、
25℃雰囲気下の強度(T25)が18cN/dtex以上であり、かつ
25℃雰囲気下の弾性率(E25)が750cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、平均重合度が50000〜200000である上記[化2]で表わされるオルガノポリシロキサンを含むオルガノポリシロキサン組成物が付着しているロープ構造体を包含する。
本発明のロープ構造体は、特定のポリエステルアミド繊維から形成されているため、屈曲性に優れるだけでなく、耐熱性が高く、高温下において高い強度及び弾性率を実現できる。
さらに、特定のオルガノポリシロキサンを用いた場合、このオルガノポリシロキサンをポリエステルアミド繊維に対して付着させて得られたロープ構造体は、高荷重をかけた場合であっても優れた耐疲労性を実現できる。
実施例において、ロープ構造体の耐疲労特性を測定する方法を説明するための概略図である。
本発明のロープ構造体は、溶融異方性ポリエステルアミド繊維(または、芳香族ポリエステルアミド繊維)を含んでおり、前記芳香族ポリエステルアミド繊維(単に、ポリエステルアミド繊維と称する場合がある)は、下記に記載する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸されている。
(芳香族ポリエステルアミド)
芳香族ポリエステルアミドは、下記式に示す[A]、[B]、[C]、[D]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比、好ましくは、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]のモル比が100:3〜10:15〜60:10〜45:5〜15のモル比を有する。
Figure 0005290808
なお、ここで、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20とは、反復構成単位[A]に対する、それ以外の構成単位[B]〜[E]までの比を表している。
特に、紡糸性、強度、弾性率、耐疲労性、耐切創性、非吸水性等の観点から、化3に示す反復構成単位の中で構成単位[A]が40〜80モル%、また構成単位[D]がn=2である芳香族ポリエステルアミドが好ましい。
本発明の効果が損なわれない程度に、芳香族ポリエステルアミドは、構成単位として、他の芳香族、脂環族、脂肪族のジオ−ル、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジアミン、ヒドロキシアミン等を含んでいてもよい。具体的には、イソフタル酸、ナフチレンジカルボン酸、ジオキシナフタレン、べンゼンジアミン等が挙げられる。しかしながら、これらのモノマ−が10モル%を越えると本発明の効果は損なわれる虞がある。
なお本発明にいう溶融異方性とは、溶融相において光学的異方性を示すことである。例えば試料をホットステ−ジにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
溶融異方性ポリマ−は分解開始温度(Td)と融点(Tm)の温度差が40℃以上であることが好ましい。溶融紡糸は紡糸機を融点以上に加温して行うのだが、設定温度に対してある程度の幅をもって温度が変化するため、設定温度よりも高温になることがある。もし溶融異方性ポリマ−の分解開始温度(Td)と融点(Tm)の温度差が40℃未満であれば、ポリマ−が配管を滞留中、温度が融点を越えて分解温度に達し、ポリマ−に分解が生じ、紡糸ノズル付近でビス即ち断糸が発生する。
ビスが生じない場合でも、繊維中に分解ガスと考えられる気泡が発生し、力学的性能が低下する。ここで述べる分解開始温度(Td)とはTG曲線(熱重量曲線)における減量開始温度であり、ここで述べるTmとは、示差走査熱量(DSC:例えばmettler 社製、TA3000)で観察される主吸熱ピ−クのピ−クトップ温度であり、以下、融点ピーク温度と称する場合がある(JIS K 7121)。
本発明のポリエステルアミド繊維は、常法によりポリマーを溶融紡糸して得られるが、該芳香族ポリエステルアミドの融点よりさらに10℃以上高い紡糸温度(かつ溶融液晶を形成している温度範囲内)で、剪断速度10sec−1以上、紡糸ドラフト20以上の条件で紡糸するのが好ましい。かかる剪断速度および紡糸ドラフトで紡糸することにより、分子の配向化が進行し優れた強度等の性能を得ることができる。剪断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔当たりのポリマ−と吐出量をQ(cm/sec)とするときr=4Q/πrで計算される。ノズル横断面が円でない場合には、横断面積と同値の面積を有する円の半径をrとする。
本発明で用いられるポリエステルアミド繊維を得るためには、強度、弾性率、耐疲労性、耐切創性、耐熱性などを向上させるために、紡糸原糸を熱処理及び/あるいは延伸熱処理する必要がある。熱処理は、不活性雰囲気のみで行っても良いし、途中から活性雰囲気化で熱処理を行なっても良い。
なお、不活性雰囲気下とは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中あるいは減圧下を意味し、酸素等の活性ガスが0.1体積%以下であることをいう。また活性雰囲気下とは、酸素等の活性ガスを1%以上含んでいる雰囲気を言い、好ましくは10%以上の酸素含有気体であり、コスト的には空気を用いることが好ましい。水分が存在すると加水分解反応も併行して進行するので、露点が−20℃以下,好ましくは−40℃以下の乾燥気体を使用する。
熱処理の温度条件は、溶融紡糸前のポリマ−の融点Tm対して、Tm−60℃からTm+20℃の温度範囲であってもよく、好ましくはTm−35℃からTm−2℃の温度範囲であり、このような温度条件で加熱することにより高温下において高い強度をおよび弾性率を実現できる高強力高弾性率ポリエステルアミド繊維を得ることができる。また、加熱処理は、一定の温度で行っても良いし、加熱により漸進的に上昇する繊維の融点にあわせて、順次昇温してもよい。
また、熱処理条件は、単繊維繊度(dtex)あたりに加熱された、(融点との温度差:℃)と(加熱時間:時間)との積によって表わすことも可能であり、この場合、50≦(融点との温度差)×(加熱時間)/(単繊維繊度)≦100程度の熱処理により、本発明で規定する特定の高強度高弾性率ポリエステルアミド繊維を得ることが可能となる。
熱の供給は、気体等の媒体によって行う場合、加熱板、赤外ヒ−タ−等による輻射を利用する方法、熱ロ−ラ−、プレ−ト等に接触させて行う方法、高周波等を利用した内部加熱方法等があり、目的により、緊張下あるいは無緊張下で行われる。熱処理は、フィラメント糸を、カセ状、またはチ−ズ状にして、または、トウ状にしてバッチ式で行うか、あるいは、フィラメントをロ−ラ−上を走行させながら連続式で行うことが出来る。また、繊維をカットファイバ−にして、金網等にのせて熱処理を行っても良い。
さらに、本発明のポリエステルアミド繊維は、必要に応じて、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエステルケトン、フッ素樹脂などの熱可塑性ポリマーを含有していてもよく、酸化チタン、カオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カ−ボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤や、各種樹脂を含んでいても良い。
(ポリエステルアミド繊維の強度)
前記ポリエステルアミド繊維は、150℃雰囲気下の強度(T150)が17cN/dtex以上(例えば、17.5〜40cN/dtex程度)、好ましくは18cN/dtex以上(例えば、18.5〜38cN/dtex程度)であってもよい。
また前記ポリエステルアミド繊維は、室温下(例えば25℃)の強度(T25)が、18cN/dtex以上(例えば、18.5〜45cN/dtex程度)、好ましくは20cN/dtex以上(例えば、20.5〜40cN/dtex程度)を示してもよい。
また、前記ポリエステルアミド繊維は、高温下と低温下での強度の変化が少ないため、例えば、150℃雰囲気下の強度(T150)と、25℃雰囲気下の強度(T25)との比が、T150/T25=0.70以上(例えば、0.71〜1.0程度)、好ましくは0.73以上(例えば、0.74〜0.95程度)であってもよい。
さらに、前記ポリエステルアミド繊維は、低温下(例えば−70℃)で、強度16cN/dtex以上(例えば、16〜40cN/dtex程度)、好ましくは18cN/dtex以上(例えば、18〜38cN/dtex程度)であってもよい。
さらにまた、前記ポリエステルアミド繊維は、例えば、150℃雰囲気下の強度(T150)と、−70℃雰囲気下の強度(T−70)との比が、T150/T−70=0.63以上(例えば、0.64〜1.0程度)、好ましくは0.65以上(例えば、0.66〜0.95程度)であってもよい。
(ポリエステルアミド繊維の弾性率)
前記ポリエステルアミド繊維は、150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710cN/dtex以上(例えば、720〜1500cN/dtex程度)、好ましくは730cN/dtex以上(例えば、740〜1400cN/dtex程度)であってもよい。
また前記ポリエステルアミド繊維は、室温下(例えば25℃)の弾性率(E25)が、750cN/dtex以上(例えば、755〜1500cN/dtex程度)、好ましくは760cN/dtex以上(例えば、765〜1300cN/dtex程度)であってもよい。
また、前記ポリエステルアミド繊維は、高温下と低温下での弾性率の変化も少ないため、例えば、150℃雰囲気下の弾性率(E150)と、25℃雰囲気下の弾性率(E25)との比が、E150/E25=0.85以上(例えば、0.86〜1.0程度)、好ましくは0.87以上(例えば、0.88〜0.98程度)であってもよい。
さらに前記ポリエステルアミド繊維は、低温下(例えば−70℃)の弾性率(E−70)が、700cN/dtex以上(例えば、705〜1400cN/dtex程度)、好ましくは710cN/dtex以上(例えば、715〜1300cN/dtex程度)であってもよい。
さらにまた、前記ポリエステルアミド繊維は、例えば、150℃雰囲気下の弾性率(E150)と、−70℃雰囲気下の弾性率(E−70)との比が、E150/E−70=0.61以上(例えば、0.62〜1.0程度)、好ましくは0.63以上(例えば、0.64〜0.95程度)であってもよい。
(ポリエステルアミド繊維の乾熱収縮率)
前記ポリエステルアミド繊維は、高温雰囲気下における形態安定性が高いため、乾熱収縮試験により求められる乾熱収縮率が、1%以下(例えば、0.01〜0.95%程度)、0.8%以下(例えば、0.05〜0.75%程度)であってもよい。なお、本発明でいう乾熱収縮率とは、実施例に記載された乾熱収縮試験により求められる値であり、その測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の耐熱老化性)
前記ポリエステルアミド繊維は、高温下での耐疲労性、特に長時間高温に曝した場合の耐疲労性に優れており、25℃雰囲気の強度(T25)と、サンプルを250℃雰囲気下、100hr暴露させた後に取り出して25℃雰囲気で測定した時の強度(T250)との比(これを耐熱老化性と称する)、T250/T25が、例えば、0.80以上(例えば、0.82〜0.99程度)、好ましくは0.83以上(例えば、0.85〜0.98程度)、さらに好ましくは0.87以上(例えば、0.88〜0.97程度)であってもよい。なお、本発明でいう耐熱老化性とは、実施例に記載された耐熱老化性試験により求められる値であり、その測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の融点)
前記ポリエステルアミド繊維は、耐熱性が高く、その融点ピーク温度は、370℃以上(例えば、375〜450℃程度)、好ましくは380℃以上(例えば、385〜440℃程度)であってもよい。なお、融点ピーク温度の測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の動的粘弾性)
前記ポリエステルアミド繊維は、高温下でも低温下でも優れた貯蔵弾性率(または動的弾性率)を示すため、25℃雰囲気下において、動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’25)と、150℃雰囲気下において、動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’150)との比が、E’150/E’25=0.50以上(例えば、0.51〜1.0)であり、好ましくは0.52以上(例えば、0.53〜0.90程度)であってもよい。このような貯蔵弾性率を有するポリエステルアミド繊維は、室温(例えば25℃雰囲気下)及び高温下(例えば150℃雰囲気下)での物性変化を低減することができる。
また、前記ポリエステルアミド繊維では、動的粘弾性測定により得られるガラス転移点(Tg)が81℃以上(例えば、81〜118℃程度)であってもよく、好ましくは83℃以上(例えば、84〜110℃程度)であってもよい。このようなガラス転移点を有するポリエステルアミド繊維は、室温の場合とほぼ同じ物性を示すことができる。
なお、本発明の貯蔵弾性率およびガラス転移点の測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の結晶サイズ)
前記ポリエステルアミド繊維では、高温下で高い強力および弾性率を発現する観点から、高融点の結晶構造を分子構造の中に有さなければならない。その結晶に関しては、広角X線回折測定により得られる2θ=29°に現れる回折ピーク強度の半価幅より、その結晶サイズを算出することができ、例えば、そのような結晶サイズとしては、7nm〜11nm程度であってもよく、好ましくは8nm〜10nm程度であってもよい。なお、具体的な測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
[ロープ構造体]
本発明の耐熱性ロープ構造体は、前記ポリエステルアミド繊維を少なくとも含んでおり、ロープ構造体は、例えば、(i)ポリエステルアミド繊維(および必要に応じて用いられるその他の繊維)をフィラメントヤーンとして用い、このヤーンを複数本、合撚あるいは編組して綱やひも状にした形態、(ii)芯材と、ポリエステルアミド繊維を用いた被覆材とで構成され、前記芯材を前記被覆材が被覆する形態などであってもよい。
例えば、上記(i)の場合、ロープ構造体の構成単位である、ポリエステルアミド繊維のフィラメントヤーンは、まず、溶融紡糸して得られたポリエステルアミドフィラメントを集束し、必要に応じて撚りを掛けた後、ポリエステルアミドフィラメントヤーンを形成することができる(ヤーン形成工程)。
ヤーンを構成するフィラメントは、例えば、50〜5000フィラメント程度、好ましくは100〜4000フィラメント程度、より好ましくは150〜3000フィラメント程度であってもよい。
次いで、前記ヤーンを所定の本数集束し、これらのヤーンが撚り合わされ、または編み組みされてストランドを形成する(ストランド形成工程)。なお、ヤーンに撚りがかけられている場合、ストランドに撚りをかけるには、通常、ヤーンとは反対方向の撚りがかけられる。また、ストランド形成工程では、複数回にわたり、第1次ストランド、第1次ストランドから形成される第2次ストランドとして形成されてもよい。
ストランドを構成するヤーンの本数は、例えば、ロープ構造体に求められるサイズおよび強度に応じて自由に設定することができるが、例えば、2〜50本程度、好ましくは2〜30本程度、より好ましくは2〜10本程度であってもよい。
さらに、前記ストランドを所定の本数集束し、これらのストランドが撚り合わされ、または編み組みされて、ロープ構造体(例えば、撚り合わせロープ構造、ブレイドロープ構造、および多重ブレイドロープ構造など)を形成する(ロープ構造体形成工程)。なお、ストランドに撚りがかけられている場合、ロープ構造体に撚りをかけるには、通常、ストランドとは反対方向の撚りがかけられる。
ロープ構造体を構成するストランドの本数は、例えば、ロープ構造体に求められるサイズおよび強度に応じて自由に設定することができるが、例えば、2〜50本程度、好ましくは2〜30本程度、より好ましくは2〜20本程度であってもよい。
なお、その他の繊維(例えば、金属繊維、無機繊維、強度10g/d以上かつ弾性率400g/d以上を有する各種高強度・高弾性率有機繊維など)は、目的に応じて適宜ポリエステルアミド繊維と併用することができ、例えば、その他の繊維はフィラメント、ヤーン、ストランドのいずれの形態であってもよく、その形態に応じて、上述したヤーン形成工程、ストランド形成工程、ロープ構造体形成工程から選択された少なくとも一種の工程において用いられる。
また、上記(ii)の場合、セラミックウール、導体、電線などの芯材に対する被覆材として、ポリエステルアミド繊維から形成された布帛(例えば、織編物や不織布)を用いてもよい。芯材は、公知または慣用の方法により、これらの布帛により被覆される。また、このような布帛には、芯材の外周にポリアミド繊維を製紐機を用いて編組したものも編物として含まれる。
このようなロープ構造体は、目的に応じて、前述したように直径が小さなコード形態から直径が大きなケーブル形態までのいずれの直径であってもよいが、例えば、直径0.5cm〜15cm程度、好ましくは1cm〜10cm程度であってもよい。
(オルガノポリシロキサン組成物)
本発明のロープ構造体では、必要に応じて、特定のオルガノポリシロキサン組成物を前記ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に適用してもよい。前記オルガノポリシロキサン組成物は、少なくとも、下記に示される特定のオルガノポリシロキサン(単に、ポリシロキサンと称する場合がある)を含有する。
本発明で用いられるオルガノポリシロキサン組成物で最も重要な点は、オルガノポリシロキサンが、平均重合度が50,000〜200,000である高重合度グレードであるということである。明確な理由は定かではないが、以下のようなメカニズムが考えられる。すなわち、ポリエステルアミドフィラメントが束ねられてロープを形成すると、繊維/繊維間には摩擦が生じる。そして、このような摩擦は、ポリエステルアミドフィラメント間であっても発生し、その結果、ポリエステルアミドフィラメントのフィブリル化を引き起こすだけでなく、耐疲労性の低下につながる。
しかしながら、高重合度ポリシロキサンを用いると、ポリシロキサンは、高重合度を維持したままで、フィラメント間に入り込み、平滑性だけでなく皮膜形成能をヤーンに付与するのではないかと考えれる。そして、このような皮膜形成により繊維間、すなわちポリエステルアミドフィラメントの摩擦を低減させてロープ構造体の耐疲労性を向上させるのではないかと考えられる。
なお、このような効果は、低分子量ポリシロキサンを用いても得られず、高重合度ポリシロキサンを用いて特定の繊維で構成されたロープ構造体の耐疲労性を向上させるという思想は、従来技術には存在しなかった知見である。
このような高分子量ポリシロキサンの平均重合度は、例えば、50,000〜200,000程度、好ましくは70,000〜150,000程度である。
本発明に使用するポリシロキサンは特に限定されないが、特に下記化4により示される繰り返し単位からなるものが好ましい。
Figure 0005290808
(式中、X1,X2,X3及びX4は、それぞれ同一または異なって、−H、−OH,−COOH、−R、−NH、−ROH、−RCOOH、または−RNHを表し、Rはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基などのC1−5アルキル基)またはアリ−ル基(例えば、フェニル基)を示す。またm,nは1以上の整数を示す。)
帯電性が低い点では、化4におけるX1,X2,X3及びX4(以下、単にXと称する場合がある)は水素原子、アルキル基又はアリ−ル基からなるポリシロキサン、なかでもXがメチル基であるポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン)が好ましい。
また、表面平滑性の観点からは、X1,X2およびX4がメチル基であり、X3がヒドロキシル基であるポリシロキサンが好ましい。
ポリシロキサンの付着量は、ロープ構造体の耐疲労性を向上できる限り特に限定されないが、例えば、ポリエステルアミド繊維の総量100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、10質量部以下、好ましくは5質量部以下であってもよい。
(乳化剤)
オルガノポリシロキサン組成物は、前記オルガノポリシロキサンに加えて、乳化剤を含んでいてもよい。高重合度ポリシロキサンは、直接フィラメントへ付着させることもできるが、高重合度ポリシロキサンを均一に付着させる観点から、前記ポリシロキサンを乳化剤によりエマルジョン化し、繊維に付着させるのが好ましい。また、乳化剤と高重合度ポリシロキサンとを組み合わせることにより、繊維の表面平滑性を向上することが出来る。
乳化剤としてはノニオン系、アニオン系及びカチオン系などの乳化剤を用いればよい。たとえば、ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンエーテル類(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアリールエ−テルなど)、ポリエチレングリコールエステルなどが例示できる。アニオン系乳化剤としては、例えば、金属石鹸類、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系乳化剤としては、例えば、モノアルキルアンモニウム・クロライド、ジアルキルアンモニウム・クロライドなどの第4級アンモニウム塩が例示できる。
これらの乳化剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。これらの乳化剤のうち、アニオン系及びノニオン系乳化剤を併用したものが特に好ましい。
乳化剤の使用量はポリシロキサン100質量部に対して1〜80質量部程度、好ましくは5〜70質量部程度、さらに好ましくは10〜60質量部程度であってもよい。
(浸透剤)
オルガノポリシロキサン組成物は、前記オルガノポリシロキサンに加えて、浸透剤を含んでいてもよい。特に、高重合度ポリシロキサンのフィラメント間への浸透性を向上するため、前記乳化剤とともに、浸透剤を用いるのが好ましい。
浸透剤としては、ポリシロキサン溶液の表面張力を低下させてポリシロキサンを均一に付着させることができる観点から、ジアルキルスルホサクシネート、シリコーン系界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンなど)などが例示できる。これらの浸透剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。これらの浸透剤のうち、ジアルキルスルホサクシネートが好ましい。
浸透剤の使用量はポリシロキサン100質量部に対して0.5〜10質量部程度、好ましくは1〜8質量部程度、さらに好ましくは1.5〜7質量部程度であってもよい。
(オルガノポリシロキサン組成物の適用工程)
オルガノポリシロキサン組成物は、オルガノポリシロキサン組成物の適用工程により、前記ポリエステルアミドフィラメントの少なくとも一部に適用される。
このような適用工程により得られるロープ構造体では、ポリシロキサンは、ロープ構造体の耐疲労性を向上できる限り、ポリエステルアミドフィラメントの少なくとも一部に対して付着していればよいが、繊維全体に対して付着していてもよい。
ポリシロキサンを付着させる方法としては、ポリエステルアミドフィラメントの少なくとも一部に対してポリシロキサンを付着できる限り特に限定されず、上述の通り、前記フィラメント形成工程、前記ヤーン形成工程、前記ストランド形成工程、および前記ロープ構造体形成工程の少なくとも一つの工程において、オルガノポリシロキサン組成物を適用すればよい。
このような適用方法としては、例えば、含浸処理、吐出処理、塗布処理、浸漬搾液処理などが挙げられ、このような処理を、ロープ構造体全体、またはロープ構造体の各構成単位(例えば、フィラメント、ヤーン、ストランド、布帛)に対して適用してもよい。
例えば、含浸処理では、対象物(すなわち、フィラメント、ヤーン、ストランド、布帛、ロープ構造体から選択される少なくとも一つ)全体を含浸浴に浸漬させた後、対象物に対して乾燥・熱処理を行うことにより、ポリエステルアミドフィラメントに対してポリシロキサン組成物を付着させることができる。
また、吐出処理では、ポリシロキサンを所定濃度(原液または希釈液)で有する溶液とし、その溶液を一定速度で走行する走行糸(例えば、フィラメント、ヤーン、ストランド、ロープ構造体)や、布帛に対し、カラス口等から吐出させ、ポリエステルアミドフィラメントに対してポリシロキサン組成物を付着させることができる。
また、塗布処理では、ポリシロキサン溶液に一部浸した回転ロ−ラ上で走行糸(例えば、フィラメント、ヤーン、ストランド、ロープ構造体)を走行させたり、布帛に対してローラで塗布したりして、ポリエステルアミドフィラメントに対してポリシロキサン組成物を付着させることができる。
また、浸漬搾液処理では、ポリシロキサン溶液中で走行糸(例えば、フィラメント、ヤーン、ストランド、ロープ構造体)を走行させ、この走行糸をマングル等で絞して、ポリエステルアミドフィラメントに対してポリシロキサン組成物を付着させることができる。
これらの処理のうち、吐出処理、塗布処理、浸漬搾液処理は、含浸処理と比較して、乾燥・熱処理に多大の設備、コストがかからないため好ましい。
また、オルガノポリシロキサン組成物を適用する工程は、ポリシロキサンの付着量を高めることができるため、フィラメント形成工程、ヤーン形成工程で行われるのが好ましく、特にフィラメント形成工程で行われるのが好ましい。
(フッ素樹脂)
本発明で特定の高重合度ポリシロキサンを用いる場合、フッ素樹脂を実質的に含まなくとも、ロープ構造体の耐疲労性を向上でき、例えば、湿潤下や高温・高湿環境下におけるロープ構造体の耐疲労性を向上できるため、フッ素樹脂は、必要に応じて適用すればよい。
特に、本発明において、特定の耐熱性ポリエステルアミド繊維を用いる場合、フッ素樹脂と組み合わせるための焼結処理を行ったとしても、繊維の劣化を抑制し、繊維の耐熱性をさらに向上させることができる。
フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(以下PTFEと略)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(以下ETFEと略)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCFE)等を例示することができ、これらをエマルジョン化、あるいは分散するため、上述した乳化剤や各種変性剤等を加えてもよい。
これらの樹脂は、ダイキン工業(株)製、「ポリフロン」、「ネオフロン」、「ダイフロン」や、日本アチソン(株)製「エムラロン」、住友化学工業(株)製「スミフルノン」、旭硝子(株)製「ルミフロン」等として上市されている。
フッ素樹脂は、例えば、フッ素樹脂エマルジョンとして適用することができる。その適用方法としては、前述したオルガノポリシロキサン組成物の適用工程と同様にして、ロープ構造体に付着させることができる。
そして、必要に応じて、フッ素樹脂が付着したロープ構造体を加熱焼成してもよい。この際の焼成温度は、例えば、200〜400℃程度、好ましくは250〜380℃程度であってもよい。
本発明で用いられるポリエステルアミド繊維は、耐熱性に優れるため、このような焼成温度により焼成したフッ素樹脂を付着することができ、耐熱性を向上できるだけでなく、乾燥、湿潤時の耐摩耗性をも向上させることができる。
なお、フッ素樹脂とオルガノポリシロキサン組成物とを併用してもよく、そのような場合、フッ素樹脂とオルガノポリシロキサンとの割合(重量比)は、10/90〜90/10程度であってもよく、15/85〜85/15程度であるのが好ましい。
さらに、耐水性や強度を向上させるため、ロープ構造体は、コーティング剤によりコーティングされてもよい。コーティング剤としては、コールタール、ビチュメン、ポリウレタンなどが例示できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[融点ピーク温度]
DSC装置(metrler社製TA3000)にサンプルを10〜20mgとり、アルミ製パンへ封入した後、キャリヤ−ガスとしてNを100cc/分流し、昇温速度20℃/分で測定し、吸熱ピ−クの位置の示す温度を測定した。
[強度および弾性率]
JIS L 1013に準じ、各温度雰囲気下において、試長20cm、初荷重0.1g/d、引張速度10cm/minの条件で破断強伸度及び弾性率(初期引張抵抗度)を求め、5点以上の平均値を採用した。
[結晶サイズ]
広角X線回折測定装置として、ブルカー社製、「D8 Discover with GADDS」を用いて、カメラ距離10cm、露光時間:600秒、電流110mA、電圧:45kV、コリメータ径0.3mmにより繊維の赤道方向における広角X線回折図を得た。次いで、2θが29°に現れる回折ピーク強度の半価幅より次式を用いて、結晶サイズ(C)を算出した。
Figure 0005290808
ここで、Bは回折ピーク強度の半価幅、θは回折角、λはX線の波長(1.54178オングストローム)を表わす。
[動的粘弾性による貯蔵弾性率、損失弾性率およびガラス転移点]
レオロジー社製「DVEレオスペクトラー」を使用して、昇温速度10℃/分、周波数10Hz、自動静荷重方式にて測定を行ない、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)との比からtanδ=E”/E’を算出した。次いで、各温度について、横軸を温度とし、縦軸をtanδとする温度(℃)−tanδ曲線を作図し、tanδの変曲点(ピーク温度)をガラス転移点とした。また、25℃雰囲気下の貯蔵弾性率(E’25)と150℃雰囲気下の貯蔵弾性率(E’150)との比をE’150/E’25として算出した。
[乾熱収縮率]
サンプルに0.1g/dの荷重を掛けた時のサンプル長をL、これを熱風乾燥機内で350℃雰囲気中10分間暴露させた後、同様にして測定したサンプル長をL’としたときに
(L−L’)/L×100により求める。
[耐熱老化性]
JIS L 1013に準じ、25℃雰囲気下、試長20cm、初荷重0.1g/d、引っ張り速度10cm/minの条件で破断強度(5点以上の平均値を採用)を求め、これをT25とする。
次にサンプルを熱風乾燥機の中で250℃雰囲気下、100hr暴露させた後に取り出して、常温25℃雰囲気で同様にJIS L 1013に準じて測定した時の破断強度をt250としたとき、t250/T25により求める。
[ロープ構造体の屈曲疲労性試験]
図1に示す屈曲疲労性試験機1において、定滑車1および動滑車2に対して、それぞれロープ構造体3,3をかけ、2本のロープ構造体の両端をかしめた後、動滑車2に対して7500lbsfの荷重をかけるとともに、定滑車1を1分当たり6回、44インチストロークで往復させた。そしてロープ構造体が切断に至るまでの往復回数を測定し、その回数をもって耐疲労性を評価した。
<実施例1>
(1)ポリエステルアミドフィラメントの製造工程
p−アセトキシ安息香酸[A]60モル、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸[B]4モル、テレフタル酸[C]18モル、4−4’−ビスフェノ−ル[D]14モル、およびp−アミノフェノ−ル[E]4モルから溶融異方性芳香族ポリエステルアミドを得た。このポリマ−の融点は340℃であった。該ポリマ−を、ノズル径0.1mmφ、ホ−ル数600個の口金より、紡糸温度360℃、紡糸速度1000m/min,剪断速度55200sec−1、ドラフト30で溶融紡糸し、1670dtex/600fのフィラメントを得た。
得られた紡糸原糸の繊維性能は、
強度 (DT)=7.8cN/dtex
伸度 (DE)=1.5%
弾性率 (YM)=577cN/dtex
であった。この紡糸原糸を310℃で8時間熱処理した。得られた熱処理糸は繊維間膠着がほとんどなかった。該熱処理糸(以下、紡糸原糸を熱処理したものをポリエステルアミドフィラメントと称する場合がある)の性能を表1に示す。
(2)ポリシロキサンの付着工程
そして、このポリエステルアミドフィラメントに対して、平均重合度100,000ジメチルポリシロキサンのエマルジョン(松本油脂製薬(株)製「マツモトソフナー318」)95質量部、浸透剤としてジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩5質量部を含むポリシロキサン溶液を付着させた。前記ポリシロキサンの付着量は、ポリエステルアミドフィラメント100質量部に対して、2.5質量部であった。
(3)ロープ形成工程
次いで、ポリシロキサンが付着したポリエステルアミドフィラメントからなるヤーンより、ストランドを形成し、この複合ストランドを12本組み合わせることにより、直径3/4インチのロープを得た。得られたロープの耐屈曲疲労性を測定した。結果を表2に示す。
<実施例2>
ポリエステルアミドフィラメント100質量部に対するポリシロキサンの割合を5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてロープを得た。得られたロープの耐屈曲疲労性の結果を表2に示す。
<実施例
実施例1と同様の方法で紡糸し、得られた紡糸原糸を、290℃で8時間で加熱する以外、実施例1と同様にしてロープを得た。得られたロープの耐屈曲疲労性の結果を表2に示す。
参考例1>
p−アセトキシ安息香酸[A]73モル、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸[B]27モルから溶融異方性芳香族ポリエステルを得た。このポリマ−の融点は280℃であった。該ポリマ−を、ノズル径0.1mmφ、ホ−ル数600個の口金より、紡糸温度310℃、紡糸速度1000m/min,剪断速度55200sec−1、ドラフト30で溶融紡糸し、1670dtex/600fのフィラメントを得た。この紡糸原糸を275℃で8時間熱処理した。得られた熱処理糸は繊維間膠着がほとんどなかった。この該熱処理糸の性能を表1に示す。
(2)ポリシロキサンの付着工程
そして、このポリエステルアミドフィラメントに対して、平均重合度100,000ジメチルポリシロキサンのエマルジョン(松本油脂製薬(株)製「マツモトソフナー318」)95質量部、浸透剤としてジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩5質量部を含むポリシロキサン溶液を付着させた。前記ポリシロキサンの付着量は、液晶ポリマーフィラメント100質量部に対して、2.5質量部であった。
(3)ロープ形成工程
次いで、ポリシロキサンが付着した液晶ポリマーフィラメントからストランドを形成し、この複合ストランドを12本組み合わせることにより、直径3/4インチのロープを得た。得られたロープの耐屈曲疲労性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005290808
Figure 0005290808
表1から明らかなように、実施例1およびのポリエステルアミド繊維は、室温下で高い強度を有していた。特に、実施例1のポリエステルアミド繊維は、耐熱性にも優れており、熱収縮率が低いだけでなく、耐熱老化性にも優れていた。そのため、実施例1で得られたロープは、ポリエステルアミド繊維の性能に由来して、高温下での乾熱収縮率が低く、耐熱老化性にも優れる。
さらに、表2に示すように、実施例1〜のロープ構造体では、特定のポリシロキサンと組み合わせた場合、高荷重下であるにもかかわらず、非常に高い耐屈曲疲労性を示した
本発明のロープ構造体は、機械やロボットに用いられるコード、ロープ、ケーブルなどとして有用に用いることができ、特に、特定の耐熱性ポリアミドエステル繊維から形成される場合、各種高温雰囲気下で使用される機械や各種ロボットに対して用いられるロープやケーブルとして好適である。また、前記ロープ構造体は、製鉄所などのような高温雰囲気下で使用できるだけでなく、高温に加熱された製品を吊り下げるためのスリングロープとしても有用である。
一方で、ポリアミドエステル繊維と特定のポリシロキサンとを組み合わせた場合、耐疲労性が飛躍的に改善されるため、耐疲労性が求められる海洋または陸上の構造の固定、質量物の吊り下げ用、牽引用、土木工事用、スポーツ、レジャー用などの分野でも、非常に好ましく利用できる。
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
1…定滑車
2…動滑車
3…ロープ構造体

Claims (7)

  1. 下記[A]、[B]、[C]、[D]、[E]
    Figure 0005290808
    の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、
    150℃雰囲気下の強度(T150)が17cN/dtex以上であり、かつ
    150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維を含む耐熱性ロープ構造体であって、この溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、平均重合度が50000〜200000である下記式で表わされるオルガノポリシロキサンを含むオルガノポリシロキサン組成物が付着している耐熱性ロープ構造体。
    Figure 0005290808
    (式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ同一または異なって、−H、−COOH、−R、または−RCOOHを表し、Rはアルキル基またはアリール基を示す。またm、nは1以上の整数を示す。)
  2. 請求項1において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、350℃雰囲気下における乾熱収縮率が1%以下であるロープ構造体。
  3. 請求項1または2において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、熱風乾燥機の中で250℃雰囲気下、100hr暴露させた後に取り出して25℃雰囲気で測定した時の強度(T250)と25℃雰囲気下の強度(T25)との比が、T250/T25=0.80以上であるロープ構造体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、オルガノポリシロキサン組成物が、乳化剤および浸透剤から選択される少なくとも一種を含有するロープ構造体。
  5. 請求項において、浸透剤が、ジアルキルスルホクサシアネートおよびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であるロープ構造体。
  6. 請求項1〜のいずれか一項において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、フッ素樹脂が付着しているロープ構造体。
  7. 下記[A]、[B]、[C]、[D]、[E]
    Figure 0005290808
    の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、
    25℃雰囲気下の強度(T25)が18cN/dtex以上であり、かつ
    25℃雰囲気下の弾性率(E25)が750cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維の少なくとも一部に対して、平均重合度が50000〜200000である下記式で表わされるオルガノポリシロキサンを含むオルガノポリシロキサン組成物が付着しているロープ構造体。
    Figure 0005290808
    (式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ同一または異なって、−H、−COOH、−R、または−RCOOHを表し、Rはアルキル基またはアリール基を示す。またm、nは1以上の整数を示す。)
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