JP5289401B2 - 導波管プレート - Google Patents
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Description
図11は、2つの導波管プレート部品を接続して導波管線路を構成する導波管プレートの構造の一例を示し、図11(a)は上面図、図11(b)は断面図である。
図11において、導波管プレート部品1a、1bには、それぞれの板厚方向にマイクロ波帯、ミリ波帯等の高周波信号を導波管モードにより伝送する導波管線路10a、10bが対向して形成されており、図11に示す導波管線路10a、10bの接続部は、導波管プレート部品1a、1bにそれぞれ別々に設けられた導波管線路間同士を低損失で良好な伝送特性となるように接続する役割を担っている。
ここで、従来の導波管プレートにおいては、導波管線路10aから10bへの高周波信号の伝送特性が、導波管プレート部品1a、1b間の隙間3によって劣化することをチョーク構造4により抑制するようにしている。
このように従来の導波管プレートにおいては、上述のようなチョーク構造4を付加することによって、隙間3による反射損失の増大、及び隙間3から外部への高周波電力の漏れによる通過損失の増大を防ぐことによって、導波管線路10aと10bの接続部分において良好な通過・反射特性を得ることができた。
まず、位置ズレにより発生する導波管線路内壁面の段差により特性インピーダンスの不連続性が生じるため、チョーク構造4の有無に関わらず、反射特性及び外部への漏れによる通過特性の悪化が避けられない。
図12は、図11に示す従来の導波管プレートにおいて、導波管プレート部品1a、1bが、接触面2面内で位置ズレを起こした場合を示す断面図である。
まず、チョーク構造4は、導波管プレート部品1a、1bのいずれかの側の接触面2に設けられており、導波管線路10aと10bのいずれかの導波管端から自由空間中での信号波長の概略1/4の長さLだけオフセットした位置に設けられた掘り込み構造であるため、図12で示すように導波管プレート1a、1bとの間で位置ズレが生じた場合においては、導波管端からチョーク構造4の位置までのオフセット距離Lは、チョーク構造が設けられていない側の導波管プレート部品1bにおいては、位置ズレを起こした長さ分だけ本来意図した長さから外れて(L2)しまうことになる。
aU=a0+a0×Ka
bU=b0+b0×Kb
aL=a0−a0×Ka
bL=b0−b0×Kb
但し、a0、b0は基準とする導波管径、 Ka、Kbは段差係数(%)
以下、この発明の実施形態1における導波管プレートについて図に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施形態1における導波管プレートの導波管線路の断面図で、(a)は導波管プレートの位置ズレがない状態、(b)は導波管プレートの位置ズレがある状態を示している。図2はこの発明の実施形態1における導波管プレートの導波管線路の鳥瞰図を示す。なお、図中において同じ構成または相当する部分には同じ符号を付して説明している。
即ち、導波管プレート部品1a、1bの導波管線路10a、10bの形状は概ね矩形とし、その導波管径の長径と短径とも、導波管プレート部品1aの導波管線路10aの方が導波管プレート部品1bの導波管線路10bよりも大きくされている。この導波管径については図2で詳しく説明する。
このように、この発明における導波管プレートにおいては、その導波管線路10a、10bの導波管径が、分割による接触面を境にして、互いに異なる長さとなるようにしている。このため、導波管プレート部品に位置ズレが生じていない状態(図1(a))においても既に導波管線路中に不連続箇所が生じているため、伝送特性の悪化については、ある程度発生している状態となる。しかしながら、導波管径に段差構造を設けることにより、位置ズレが生じたことによる伝送特性悪化量を最小限に留めることができる。この伝送特性についても後述する図3、図4で詳しく説明する。
図2において、それぞれ対向して設置される2つの導波管プレート部品1a、1bは接触面2で接続され、その間には隙間3も生じている。導波管プレート部品1a、1bにはそれぞれ2つの導波管プレートの接触面に直交する方向を伝搬方向とする導波管線路10a、10bが形成されている。
aU=a0+a0×Ka
bU=b0+b0×Kb
(1)
aL=a0−a0×Ka
bL=b0−b0×Kb
ここで、係数Ka及びKbは、対応する導波管線路10a、10bの側の2組の導波管径(aUとaL、bUとbL)の間に段差を与えるための段差係数であり、基準とする導波管径(長径:a0、短径:b0)を基準とした百分率(単位:%)で与えられる。
したがって、段差係数(Ka及びKb)の値が大きくなるにつれて、導波管線路10a、10bにおける導波管径(aUとaL、bUとbL)の間の段差は拡大し、導波管線路10a側の導波管径の方が大きくなる。また、逆に段差係数の値が0の場合においては段差がないことを意味する。
次に、段差係数Ka及びKbを、それぞれKa=20%、Kb=40%とした場合の実施例について示す。
上式において、段差係数をそれぞれKa=20%、Kb=40%とした場合の導波管径は、aU=3.05mm、aL=2.03mm、bU=1.78mm、bL=0.76mmとなり、上述したように、導波管線路10a側の導波管径(aU、bU)の方が導波管線路10b側の導波管径(aL、bL)より大きな寸法値を有した段差構造を形成することとなる。
図3(a)において、横軸はx方向の位置ズレ量[mm]、縦軸は通過損失[dB]を示し、図3(b)において、横軸はx方向の位置ズレ量[mm]、縦軸はズレなし時で規格化した通過損失[dB]を示す。
なお比較の為に、導波管径に段差を設けない場合(段差係数が0の場合)の特性を破線で併記する。
図3(b)に示されているように、導波管径に段差を設けた方がズレ量増加に伴う損失増加の勾配が比較的緩やかになっていることを確認することができる。導波管径に段差を設けない場合においては、0.2mmの位置ズレで通過損失が0.05dB増加するのであるが、一方、導波管径に段差を設ける場合においては、0.3mmの位置ズレで通過損失が0.05dB増加しており、より広い位置ズレの範囲において損失増加が少ないフラットな損失特性を保持することができていることがわかる。言い換えれば、導波管径に段差を設けることによって、位置ズレに対する伝送特性のロバスト性が向上できていると言える。
図4(a)において、横軸はy方向の位置ズレ量[mm]、縦軸は通過損失[dB]を示し、図4(b)において、横軸はy方向の位置ズレ量[mm]、縦軸はズレなし時で規格化した通過損失[dB]を示す。
なお比較の為に、導波管径に段差を設けない場合(段差係数が0の場合)の特性を破線で併記する。
その差は縮まり、位置ズレ量が0.15mmを超えた場合には、超える前に比べて段差の有無による優劣関係が逆転して導波管径に段差を設けた場合の方が通過損失の値が小さくなる領域に遷移する。
このように、y方向の位置ズレにおいても、x方向の位置ズレの場合と同様、位置ズレに対する伝送特性のロバスト性が向上できていることがわかる。
図5、図6において、ともに位置ズレなしの時を(a)、位置ズレありの時を(b)に示す。図5は図2におけるx-z断面であるため、長径であるaU、aLの段差構造だけを確認できるが、短径であるbU、bLの段差構造についても、動作メカニズムの説明を容易にするために表示を省いているが、この実施形態の場合は備えている。
図6(a)に示す位置ズレなし時においては、もともと長径であるaU、aLに段差構造が設けられていないため、2つの導波管線路10a、10bの接触面を境に導波管線路の特性インピーダンスに差異が生じない。このため、高周波電力の反射は隙間3による影響のみであり、他に伝送特性を劣化させる要因はないと言える。
しかしながら、図6(b)に示すように位置ズレが発生した場合においては、互いの導波管線路10a、10bの接触面においてステップ構造が生じるため、上記インピーダンス不整合によって、位置ズレに伴った伝送特性の急激な悪化が進行してしまう。
したがって、図3、図4の位置ズレによる伝送特性の変化グラフで示したように、導波管径に段差を設けた方が、位置ズレに対する伝送特性の劣化量をより広いズレ範囲でフラットに抑えることが可能となる。
また、より広い位置ズレの範囲において損失増加が少ないフラットな損失特性を保持するためには、前述した段差係数の値をできるだけ大きく確保すればよい。ただし、段差係数を大きくしすぎると位置ズレなしの状態において既に許容できないほどの損失を生じてしまう場合があるので、この場合は位置ズレなし時の性能か、位置ズレに対するロバスト性かのどちらを優先させるかのトレードオフ問題となり、導波管プレートに求められる性能・コスト・品質を勘案して適した段差係数を選択すればよい。
ただし、下式(2)は短径bが長径aの1/2のアスペクト比である前提においての制約であり参考式である。
特に、互いに異ならせた導波管径のうち、長径、短径ともに長い寸法を形成させる側の導波管プレート部品をダイキャストや樹脂成型などの成型による製造方法により製作すると一層効果がある。
また、導波管径の段差構造において、小さい方の導波管径を形成する導波管プレート部品においては、導波管構造そのものを小型化することができるので、多数のチャンネルの導波管線路を引き回しレイアウトする必要性のある部位などに適用するのが好適である。
次にこの発明における実施の形態2の導波管プレートについて図7により説明する。
図7はこの発明の実施形態2における導波管プレートの導波管線路の接続部における動作説明の為の図を示し、図7(a)は導波管プレート部品1a、1bとの間で位置ズレが生じていない場合の断面図、図7(b)は導波管プレート部品1a、1bとの間で位置ズレが生じている場合の断面図、図7(c)は導波管プレート部品1aの上面図を示す。
実施の形態1においては、2つの導波管プレート部品1a、1b間の隙間3による伝送特性劣化を抑制するためのチョーク構造を設けない条件について述べてきたが、実施の形態2では、実施の形態1で述べた段差構造を有する導波管接続部に、従来例と同様のチョーク構造を付加したものである。
また実施形態2においては、図7に示すように、導波管線路10aから10bへの高周波信号の伝送特性が、導波管プレート部品1a、1b間の隙間3によって劣化することを抑制するために、互いに異なる長さとしている導波管径のうち、径の大きい方の導波管線路10aが形成されている導波管プレート部品1a側に、しかも導波管径の長径の辺に沿ってチョーク構造4を付加している。導波管端からチョーク構造4の端部までの距離(オフセット距離L)が自由空間中での信号波長の概略1/4の長さとしており、チョーク構造4は、従来例で述べたのと同様、自由空間中での信号波長の概略1/4の幅と深さの掘り込みを設けた構造としている。
また、上記したように互いに異なる長さとしている導波管径のうち、径の大きい方の導波管線路が形成されている導波管プレート部品1a側にチョーク構造4を設けることにより、位置ズレが生じた場合においても、チョーク構造4の位置は導波管端から自由空間中での信号波長の概略1/4の長さだけオフセットした位置に常に配置されていることになるため、双方の導波管端を電気的短絡点と見なすことができ、位置ズレが生じた場合においてもチョーク構造4としての機能を損ねずに、隙間3による伝送特性劣化を最小限に抑えることができる。
図8(a)において、横軸はx方向の位置ズレ量[mm]、縦軸は通過損失[dB]を示し、図8(b)において、横軸はx方向の位置ズレ量[mm]、縦軸はズレなし時で規格化した通過損失[dB]を示す。
なお比較の為に、導波管径に段差を設けない場合(段差係数が0の場合)の特性を破線で併記する。
図8(b)に示されているように、導波管径に段差を設けた方がズレ量増加に伴う損失増加の勾配が比較的緩やかになっていることを確認することができる。導波管径に段差を設けない場合においては、0.32mmの位置ズレで通過損失が0.05dB増加するのであるが、一方、導波管径に段差を設ける場合においては、0.42mmの位置ズレで通過損失が0.05dB増加しており、より広い位置ズレの範囲において損失増加が少ないフラットな損失特性を保持することができていることがわかる。言い換えれば、導波管径に段差を設けることによって、位置ズレに対する伝送特性のロバスト性が向上できていると言える。
図9(a)において、横軸はy方向の位置ズレ量[mm]、縦軸は通過損失[dB]を示し、図9(b)において、横軸はy方向の位置ズレ量[mm]、縦軸はズレなし時で規格化した通過損失[dB]を示す。
なお比較の為に、導波管径に段差を設けない場合(段差係数が0の場合)の特性を破線で併記する。
その差は縮まり、位置ズレ量が0.2mmを超えた場合には、超える前に比べて段差の有無による優劣関係が逆転して導波管径に段差を設けた場合の方が通過損失の値が小さくなる領域に遷移する。
このように、y方向の位置ズレにおいても、x方向の位置ズレの場合と同様、位置ズレに対する伝送特性のロバスト性が向上できていることがわかる。
次にこの発明における実施の形態3の導波管プレートについて図10により説明する。
図10はこの発明の実施形態3における導波管プレートの導波管線路の(a)上面図、(b)正断面図および(c)側断面図である。
実施の形態2においては、2つの導波管プレート部品1a、1b間の隙間3による伝送特性劣化を抑制するためのチョーク構造4を、導波管線路の導波管径の長辺のみに沿って付加したものについて説明したが、実施の形態3の発明はチョーク構造4を導波管径の長辺および短辺に付加して、導波管の周囲をチョーク構造4で取り囲んだものである。
図10に示すように、導波管線路10aの接触面における導波管径のうち、長径をaU、短径をbUとし、導波管線路10bの接触面における導波管径のうち、長径をaL、短径をbLとし、それぞれ実施の形態1の場合と同様に、式(1)で表されるものとする。
また、チョーク構造4は、4辺の導波管径(長径a、短径b)の導波管端から、それぞれ自由空間中での信号波長の概略1/4の長さだけオフセットした位置(オフセット距離L)に、自由空間中での信号波長の概略1/4の幅と深さの掘り込みを設けた構造である。
また以上の実施形態1〜3では、導波管線路10a、10bの導波管径の長径a、短径b両方に段差構造を設けた構造について説明したが、この発明は導波管径の長径a、短径bのどちらか一方を異ならせて段差構造を設けた場合でもよい。
3:導波管プレート1a、1bの間に生じる隙間
4:チョーク構造 10a、10b:導波管線路(導波管)
L:導波管端からチョーク構造4の端部までの距離(オフセット距離)
Claims (5)
- 導波管線路の管軸に垂直な面で分割して2つの部品にて導波管線路を形成する導波管プレートであって、前記2つの導波管プレート部品の接触面を互いに直接接続することにより導波管を構成する導波管プレートにおいて、前記導波管線路の形状は略矩形とし、分割面を境にして一方の導波管プレート部品側の導波管線路の長径aUおよび短径bUと、他方の導波管プレート部品側の導波管線路の長径aLおよび短径bLは、下式になるように夫々両方の径を互いに異ならせ、且つ、導波管線路の長径のうち短い方の寸法を使用周波数における自由空間波長の1/2よりも長くなるように選択し、導波管線路の長径のうち長い方の寸法を使用周波数における自由空間波長よりも短くなるように選択したことを特徴とする導波管プレート。
aU=a0+a0×Ka
bU=b0+b0×Kb
aL=a0−a0×Ka
bL=b0−b0×Kb
但し、a0、b0は基準とする導波管径、 Ka、Kbは段差係数(%) - 請求項1に記載の導波管プレートにおいて、導波管径が大きい方の導波管プレート部品の導波管線路にR形状の加工を付加したことを特徴とする導波管プレート。
- 請求項1または請求項2に記載の導波管プレートにおいて、互いに異ならせた導波管径のうち、長径、短径ともに長い寸法を形成させる側の導波管プレート部品をダイキャストや樹脂成型などの成型による製造方法により製作したことを特徴とする導波管プレート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導波管プレートにおいて、導波管径の大きい寸法を形成させる側の導波管プレート部品側に、導波管長辺の導波管端から使用周波数における自由空間波長の概略1/4の長さだけオフセットした位置に、使用周波数における自由空間波長の概略1/4の幅と深さの掘り込みを設けたチョーク構造を付加したことを特徴とする導波管プレート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導波管プレートにおいて、導波管径の長径、短径ともに大きい寸法を形成させる側の導波管プレート部品側に、導波管長辺および短辺の導波管端から、使用周波数における自由空間波長の概略1/4の長さだけオフセットした位置に、使用周波数における自由空間波長の概略1/4の幅と深さの掘り込みを設けたチョーク構造を付加したことを特徴とする導波管プレート。
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