JP5288398B2 - 拘束焼入れ装置 - Google Patents
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Description
図11において、図示しない加熱装置(加熱炉または誘導加熱装置)で加熱されたワーク2a、2b、2c、2dに、冷却液噴射手段N(図12参照。図11では図示せず)から冷却液が噴射される。冷却液により冷却されると共に、ワーク2は、加圧フレーム10及び上方のローラー5を介して、支持台1及び下方のローラー6、6に向かって圧下される。
ワーク2は、図11の紙面に垂直な方向へ進行し、図示しない焼もどし工程に送られる。
ここで、ワーク2の表面に酸化スケールが残留していると、ワーク2が圧下された際に、残留した酸化スケールがワーク2の半径方向内側に押し込まれ、ワーク2の表面が凹んでしまう。係る凹みは「表面欠陥」と呼ばれ、研摩して除去することが困難である。
噴射冷却液Jwによる焼入れの際にワーク2dに生じる「曲がり」などの変形は、ローラー5、6、6で拘束(加圧)することにより抑制あるいは是正される。
図13では、加圧フレーム10の圧下量を一定とし、それぞれ同寸法のワーク2aと2dを挿入した場合、または同寸法のワーク2bと2cを挿入した場合において、ワーク2に圧下荷重を作用させた結果を示している。ここで、ワーク2a、2b、2c、2dは同一寸法である。
図13は、圧下荷重(加圧力)を3回測定した結果を示している。
図13からも、複数のワーク2に同時に加圧(圧下)する場合には、ワークの加工誤差、熱膨張量のバラツキ、加圧部品(ローラーや軸受など)の製造誤差、組立誤差、摩耗量のバラツキなどによって、各ワークは同時に圧下荷重を受け始めることができず、加圧フレームが停止位置まで移動した後、各ワーク2に作用する圧下荷重は均一とはならず、バラツキがあることが理解される。
そして、損傷した加圧部品を交換するためには、拘束焼入れ装置を具備した製造ラインを停止しなければならない。そのため、当該ラインの稼働時間が減少してしまう。
また、焼入れ冷却工程での製造ラインの停止によって、ワーク2が前工程の加熱炉内で滞留してしまうことになる。そしてワーク2が加熱装置内で滞留すると、加熱時間が増加し、酸化スケールの過度の発生、脱炭層深さの増加、オーステナイト結晶粒の粗大化などの品質不良が発生する。
発明者の研究では、図3、図5、図6で示すような特性(詳細は後述する)であれば、ワーク2に表面欠陥が生じることなく、複数のワーク2を均一に圧下することが可能であるが、従来の弾性装置では、図3、図5、図6で示すような特性を具現することはできない。
また、建設機械の、履帯に使われるピンを受けローラーと加圧ローラーの間に挿入し、ローラーを回転させながら垂直方向に加圧しつつ高圧スプレ焼入れを行う技術が公示されている(例えば、特許文献2)。
さらに、自動車部品に使われるラックギアを形成した棒材に対して、垂直方向、水平方向または斜め方向及びそれらの組合せの方法に加圧しつつ焼入れを行う技術が開示されている(例えば、特許文献3)。
例えば、第1の弾性部材(バネB)として円筒型コイルバネを選択し、第2の弾性部材(バネA)として円錐型コイルバネ、不などピッチコイルバネ、線径を変化させたテーパーコイルバネなどを用いることができる。
ただし、第2の弾性部材(バネA)として例えば円筒型コイルバネを選択し、変形量に対する荷重変化特性が線形であるように設定することが可能である。
係る特性を実現した本発明の拘束焼入れ装置では、ワーク(2)を加圧する初期の段階では、ワーク(2)を圧下する力(加圧する力)が小さいので、冷却液の噴流だけでは除去できないワーク表面の酸化スケールは、小さな圧下力と冷却液噴射との同時作用により十分に除去される。つづいて、ワーク(2)がマルテンサイト変態温度に近くなるに伴って、必要な圧下力がワーク(2)に負荷されるので、焼入れによる曲がりを確実に防止あるいは是正することができる。
その結果、各ワークが圧下荷重を受け始める時点(ワーク2が荷重を受け始めてからのフレーム10の移動量)にバラツキがあったとしても、ワーク(2)に作用する圧下力にはほとんど差異が無くなり、ワーク(2)に均一な圧下力を作用させることができる。
また、当該加圧部品を交換する頻度が激減し、部品交換のために費やされた時間やコストを低減することができる。
これに対して本発明によれば、前記加圧部品の破損が防止されるので、加熱時間の過度の増加による品質低下も防止できる。
最初に図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る拘束(加圧)焼入れ装置Zを示している。ここで、第1実施形態では、4本のワーク2を同時に拘束(加圧)焼入れする構成になっている。そして図2は、図1の拘束(加圧)焼入れ装置Zにおいて、1本のワーク2を拘束(加圧)焼入れする機構を示している。
下方のローラー6、6は、図示しない回転装置によって、支持台1に対して回転可能に支持されている。
上方のローラー5は、加圧ユニット15の下端部に回転自在に取り付けられている。そして、上方のローラー5の上方には、加圧ユニット15を介して、圧下(加圧)フレーム10が配置されている。
上方部材11には貫通孔11aが形成されており、貫通孔11aにはコイルバネBの上部が収容されている。
上方部材11の上部には板状の押えプレート16が配置されており、押えプレート16は、複数の連結ボルト18によって上方部材11に固定されている。
大径部15aの底部(小径部15bとの境界の段差部、肩部)15eは、下方部材13の上面13fに当接している。そして、加圧ユニット15の小径部15bは、下方部材13に穿孔された貫通孔13hに挿入されている。
小径部15bの内部には、上方のローラー5が回転自在に収容されており、上方のローラー5の下端部は、小径部15の下端部15fより下方に突出している。
コイルバネAは、その大径側端部が、穴15cの底部15dに接して収容されている。コイルバネAの小径側端部は、境界部材21の底部21bに接している。
ロッド17は境界部材21と一体的に構成されており、境界部材21の下方にピン部21aを形成している。ここで、ロッド17と境界部材21とは、相対運動がない連結構造となっていてもよい。そして、ピン部21aは、コイルバネAを位置決めする機能を有している。
境界部材21と押えプレート16との間の領域にはバネBが取り付けられ、バネBの特性は線形である。
ロッド17を回転させることにより、境界部材21と、押えプレート16との間の距離が伸長または短縮し、バネBに初期圧下量を与えている。バネBの初期圧下量を調整した後、ロックナット19を回転して、ロッド17の位置つまりバネBの初期圧下量を固定する。
後述するように、図3におけるM点付近では、バネAとバネBのバネ定数を比較すると、バネAのバネ定数がバネBのバネ定数に比較して、はるかに大きい。すなわち、
バネAのバネ定数≫バネBのバネ定数 である。
図3は、上述した拘束(加圧)焼入れ装置Zにおけるワーク2あるいはローラー4を加圧する特性、換言すればバネA及びバネBによって総合的に得られるバネ特性を示している。
図3において、縦軸はフレーム10の移動に伴ってワーク2が受けた荷重、横軸はワーク2が荷重を受け始めてからのフレーム10の移動量すなわちバネA及びバネBによる総合的なたわみ量である。
バネ特性Kにおいて、たわみ量がM〜Nの領域では、符号K3で示す特性(バネBの特性)であり、特性K3はバネ定数の小さい特性となっている。
また、図3において、符号K2で示す領域では、ワーク2から酸化スケールが完全に除去された後、マルテンサイト変態が進行しているので、ワーク2の曲がりを矯正するのに必要な圧下力をワーク2へ負荷するべく、フレーム10の移動量に対して圧下力の増加が大きい特性となっている。
ここで、図3における点Mの荷重(圧下力)は、ワーク2の曲がり(焼入れ過程の熱応力とマルテンサイト変態応力とによる曲がり)を抑制するのに必要な圧下力(最小圧力)よりも、若干小さい程度である。
ここで、バネAとしては、ピッチを変化させた不などピッチコイルバネ、またはバネの径が変化するテーパーコイルバネを使用してもよい。
また、図1では明示されていないが、1つのワーク2に対する拘束焼入れについて、バネA及びバネBは、各加圧ユニット15について、入口側に2個、出口側に2個ずつ設けられている。
図1、図2で示すバネBは、図4で示す特性(点線で示す特性)を有しており、バネBの変形量(図4の横軸)が大きくても、バネBに作用する荷重(図4の縦軸)の変化は小さい。すなわち、バネBのバネ定数が小さい。
図5では、バネAの特性と、バネBの特性とが示されている。
図5において、変形量が小さい領域(図5の横軸における左側の領域)ではバネAの特性に依存する。そして、荷重が一定の数値に到達した後(図5における点Mより右側の領域)には、バネAの特性から、バネBの特性に切り換わる。図5で明示されているように、あるいは上述したように、バネBの特性は、バネAの特性に比較して、傾斜が緩やかであり、バネ定数が小さい。
初期圧下力PMは、ワーク2の曲がり(焼入れ過程の熱応力とマルテンサイト変態応力とによる曲がり)を抑制するのに必要な圧下力よりも若干小さくなるように、雄ネジ17aで調節されている。
第1実施形態において、バネBについて初期圧下力PMを設定した場合が図示されているが、バネAについても、初期圧下力P01(図示せず)を設定することが可能である。その場合、バネAの初期圧下力P01は、バネBの初期圧下力PMよりも小さい数値に設定される。
図6を参照して、その理由を説明する。
図6において、フレーム10の移動量が点Mよりも右側の領域K3では、バネBのバネ定数がバネAよりはるかに小さいので、フレーム10の移動量の増加は主にバネBの変形の増加に変わる。そのため図6において、符号K3で示す特性を示す領域では、従来の線形な特性(図6では点線Sで示す特性)を有する場合に比較して、横軸のフレーム移動量の変化量Δyに対する縦軸の圧下力(圧下荷重)の変化量ΔLが小さい。
すなわち、図3で示すような特性を有していれば、図6において、フレーム10の移動量が点Mよりも右側の領域M〜N(領域K3)では、ワーク2が荷重を受け始めてからのフレーム10の移動量にバラツキΔyが存在しても、ローラー4に作用する圧下力のバラツキ(図6ではΔL)は非常に小さくなる。そのため、図3で示すような特性を有していれば、点Mよりも右側の領域M〜N(領域K3)において、ローラー4に作用する圧下力は、ほぼ一定となる。
そして、ローラー4に作用する圧下力が一定となる結果、特定のローラー4のみが破損してしまうことが防止される。
図7の(1)、(2)で示すように、同一のフレーム10に連結されたユニットであっても、特性が異なっている。すなわち、図7の(1)、(2)において、同一のフレーム10に連結されているため、(1)、(2)における横軸の数値(フレーム移動量)は同一である。しかし、ワーク2への荷重(縦軸の数値)は、図7の(1)と(2)では相違している。
図7の(1)、(2)における符号「H」は、フレーム10の移動量の増加を吸収する主要な弾性体がバネAからバネBに変化した点Mからの、バネBの変形量(たわみ量)の増加量を示している。図7(1)、(2)における「H」の差が、ワーク2が荷重を受け始めてからのフレーム10移動量のバラツキΔy(図6を参照して説明)に相当する。
なお、発明者の研究によれば、図7に示す変形量Hのバラツキが1.5mm以内であれば、各ワークに負荷される圧下力(圧下荷重)のバラツキは3%以内に抑えられる。
第2実施形態に係る拘束(加圧)焼入れ装置Z2では、バネAが円筒型のコイルバネで形成されている。バネAは、線形の特性を有していてもよいし、あるいは、非線形の特性を有していてもよい。ただし、線形の特性を有するバネAは、ワーク2の表面に生じた酸化スケールがワーク母材に残存する程度が低く、冷却液の噴射のみで十分に除去できる場合に適用することが望ましい。
図8において、円筒型のコイルバネAのバネ定数は、バネBのバネ定数の8倍以上であることが好ましい。
図8の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図7の第1実施形態と同様である。
以下、図9、図10の第3実施形態について、図1〜図8の各実施形態とは相違する点を主として説明する。
図9において、バネBと押えプレート16との間にスペーサー22が介在している。図9では明確には示されていないが、スペーサー22を、バネAと境界部材21との間に介在させてもよい。
スペーサー22を設けることにより、バネA及びバネBに対して初期圧下力(予圧)を付与することができる。
これに対して、図9で示すようにスペーサー22を設けることにより、ワーク2が圧下荷重を受け始めてからのフレーム10の移動量と、ローラー4に負荷される圧下荷重との特性は、図10のO1→M1→Nで示す特性、あるいはO2→M2→N2で示すような特性に変化する。
図10で明らかなように、図9で示すようにスペーサー22を設ければ、ローラー4に負荷される圧下荷重の大きさと、必要な圧下荷重となるまでのフレーム10の移動量は、簡単に調整することができる。
1・・・・・・基台、支持台
2・・・・・・ワーク
4・・・・・・ローラー
5・・・・・・上方のローラー
6・・・・・・下方のローラー
10・・・・・加圧フレーム、圧下フレーム
11・・・・・上方部材
11a・・・・貫通孔
12・・・・・支持部材
13・・・・・下方部材
16・・・・・板状部材、押えプレート
17・・・・・ロッド
17a・・・・雄ネジ
18・・・・・連結ボルト
19・・・・・ロックナット
21・・・・・境界部材
22・・・・・スペーサー
Claims (4)
- 基台(1)と、その基台(1)に対して回転可能に支持された下方のローラー(6)とを備え、ワーク(2)がその下方のローラー(6)で下方から支持され、かつ、加圧部材(15)の下端部に回転可能に収容された上方のローラー(5)で上方から支持されており、上方のローラー(5)を下方のローラー(6)側に前記加圧部材(15)を介して加圧するフレーム(10)を有し、加圧部材(15)とフレーム(10)とは加圧部材(15)の上方に同軸に設けた第1の弾性部材(B)と第2の弾性部材(A)とを介して接続するように設けられ、フレーム(10)を下方のローラー(6)に向けて移動させることにより下方のローラー(6)側への加圧する力が第1の弾性部材(B)と第2の弾性部材(A)とを介して加圧部材(15)に伝達されるように構成され、第1の弾性部材(B)のバネ定数は第2の弾性部材(A)のバネ定数よりも小さく、フレーム(10)には第1の弾性部材(B)に初期圧縮力(P M )を作用させる装置(17a)が取り付けられていることを特徴とする拘束焼入れ装置。
- 第1の弾性部材(B)は変形量に対する荷重変化特性が線形であり、第2の弾性部材(A)は変形初期における変形量に対する荷重変化は小さく、その後は変形量に対する荷重変化が増大する特性を有する請求項1の拘束焼入れ装置。
- フレーム(10)は基台(1)と平行に延在している上方部材(11)と下方部材(13)とを有し、上方部材(11)の上方には板状部材(16)が取り付けられており、上方部材(11)には貫通孔(11a)が形成され、第1の弾性部材(B)は第2の弾性部材(A)と隔てる境界部材(21)と板状部材(16)との間により挟持されており、境界部材(21)と一体構造であるロッド(17)が雄ネジ(17a)で板状部材(16)の雌ネジと螺合し、ロッド(17)を回転することにより境界部材(21)と板状部材(16)との距離が変化する請求項1、2のいずれかの拘束焼入れ装置。
- 板状部材(16)と第1の弾性部材(B)の間、または境界部材(21)と第2の弾性部材(A)の間にスペーサー(22)が介在している請求項3の拘束焼入れ装置。
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