JP7068785B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
この旋回型焼入れ装置の従来例として、ワークを載置するように周方向に配列した複数の回転ローラを有するワーク支持部と、ワーク支持部に載置されたワークを周方向に沿って回転させる回転駆動部と、ワークを加熱する加熱部と、ワークの内周又は外周を径方向に加圧する加圧部とを備えた熱処理装置がある(特許文献1)。
特に、加熱部で加熱されたワークは熱膨張するため、スプリングで押圧されるローラはワークに追従しにくくなり、この点からも、ワークの調芯が十分ではないという課題がある。
本発明では、ワークへの付勢力の調整は、付勢ローラのみで十分であるから、ワークの内外においてスプリングでローラを付勢する従来例に比べて、ワークの調芯が容易に行われる。
しかも、熱処理されたワークが径方向に膨張や収縮しても、その膨張や収縮が付勢ローラで吸収されることになるので、この点からも調芯が容易に行えることになる。
この構成では、エアーシリンダ装置で付勢ローラがワークに向けて付勢されるから、エアーシリンダ装置に供給するエアーの量を調整することで、付勢ローラの付勢力をワークの大きさに合わせて正確に調整することができる。
この構成では、ワークの膨張により、付勢ローラを介してエアーシリンダ装置に大きな負荷がかかっても、その負荷を減圧弁により逃がすことができる。そのため、ワークの破損を防止できる。
この構成では、装置が大がかりになりやすい付勢ローラと加熱部とがワークの内外に配置されるので、装置の設置を効率的に行うことができる。
しかも、付勢ローラと固定ローラとがワークを挟んで反対側に位置するので、付勢ローラでワークを付勢する向きが若干ずれたとしても、固定ローラでその移動を確実に規制することができ、ワークの調芯が確実に行える。これに対して、固定ローラと付勢ローラとがワークを挟みワークの内外に配置されているとすると、付勢ローラでワークを付勢する方向が若干ずれたとしても、ワークの回転中心がずれる方向に力が働くことになり、調芯が十分ではなくなる。
この構成では、付勢ローラと固定ローラとがワークの回転中心を挟んで反対側に位置するので、付勢ローラでワークを付勢する向きが若干ずれたとしても、固定ローラでその移動を確実に規制することができ、ワークの調芯が確実に行える。
しかも、装置が大がかりになりやすい付勢ローラと加熱部とがワークの内外に配置されるので、装置の設置を効率的に行うことができる。
この構成では、付勢ローラと固定ローラとが2対用いられ、対となる付勢ローラと固定ローラとを結ぶ線が互いに交差する。そのため、ワークの調芯を異なる2つの方向から行うことになるので、ワークの調芯をより確実に行える。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図4には本発明の第1実施形態が示されている。第1実施形態は、大型の円環形状の加熱対象を加熱及び冷却して焼入れするための旋回型焼入装置である。
第1実施形態の全体構成が図1及び図2に示されている。
図1及び図2において、熱処理装置は、ワークWを支持する治具1と、治具1に支持されたワークWを回転させるための回転駆動部2と、治具1に載置されたワークWを熱処理する熱処理本体部3とを備える。
ワークWは、鋼材のような焼入可能な材料であって、所定の大きさ、例えば、直径が1m以上の円環形状を有する部材である。ワークWは、その軸方向に沿う断面形状が全周で略一定に形成されている。
ワークWは、表面側のみが加熱されるものであっても、内部まで加熱されるものであってもよいが、ここでは軸方向の一方側と他方側とで形状が異なる非対称形状を有し、ワークWの外側表面に無端帯状に設けられた被加熱領域を有している。
治具1は、ワークWを載置するワーク支持部5と、ワーク支持部5の中央に設けられた中央構造部6と、中央構造部6から駆動力をワーク支持部5へ伝達してワーク支持部5に載置されたワークWを環形状に沿って回転させる回転機構7と、ワーク支持部5に載置されたワークWを調芯する調芯機構8と、を備える。
ワーク支持部5は、中央構造部6の下部に接合されて放射方向に延びる8本の放射架台51と、放射架台51の先端側に放射方向に沿って配置された回転ローラ52とを備える。放射架台51及び回転ローラ52は、円周方向に略均等な間隔で配列されている。
回転ローラ52は、鋼又はセラミックスからなり、各放射架台51に径方向に沿って配置されている。
回転機構7は、中央構造部6及びワーク支持部5に設けられ、回転駆動部2の駆動力を回転ローラ52まで伝達するように構成されている。
回転機構7は、中央構造部6の内部に配置された駆動軸71と、各放射架台51の上に回転可能に設けられた従動軸72とを備え、図示しないユニバーサルジョイントを介して回転ローラ52に連結されている。
調芯機構8は、放射架台51に回転自在に設けられワークWの外周面に周面が当接する固定ローラ81と、固定ローラ81とはワークWを挟んで反対側に配置される付勢機構82とを備える。
付勢機構82は、ワークWを径方向の外側から内側に向かう方向に付勢する付勢ローラ83と、付勢ローラ83を進退するエアーシリンダ装置84とを備えている。
固定ローラ81は、付勢ローラ83がワークWを付勢する方向の移動を規制するものである。
図1に示される通り、固定ローラ81は、8本の放射架台51のうち1本の放射架台51の先端に配置された第一固定ローラ811と、当該放射架台51に対して直交配置された放射架台51の先端に配置された第二固定ローラ812とを有する。
[付勢ローラ]
付勢ローラ83は、第一固定ローラ811が配置された放射架台51とはワークWの回転中心(中央構造部6)を挟んで反対側の放射架台51の先端に配置された第一付勢ローラ831と、第二固定ローラ812が配置された放射架台51とはワークWの回転中心を挟んで反対側にある放射架台51の先端に配置された第二付勢ローラ832とを有する。
第一付勢ローラ831と第一固定ローラ811とは対とされ、第二付勢ローラ832と第二固定ローラ812とは対とされる。
第一付勢ローラ831と第一固定ローラ811とを結ぶ線分と第二付勢ローラ832と第二固定ローラ912とを結ぶ線分とは直交している。
図2に示される通り、第一固定ローラ811は、下端が放射架台51に取り付けられた軸81Aと、軸81Aに回転自在に設けられたローラ本体81Bとを有する。第二固定ローラ812は第一固定ローラ811と同じ構造である。
付勢機構82の詳細な構成が図3及び図4に示されている。
図3及び図4において、前述の通り、付勢機構82は付勢ローラ83及びエアーシリンダ装置84を備えて構成されている。
エアーシリンダ装置84は、放射架台51に取り付けられたL字状のベース85と、ベース85の一片部に固定されたシリンダ86と、シリンダ86に進退自在に設けられたピストン87と、ベース85の一片部に取り付けられたガイドロッド88と、ピストン87を進退駆動させるピストン駆動回路9とを備えている。ベース85の他片部は放射架台51に取り付けられている。
ロッド882の先端部及びピストン87の先端部は、付勢ローラ83の取付部とされる。
付勢ローラ83は、ガイドロッド88の先端部とピストン87の先端部とに設けられた取付プレート83Aと、取付プレート83Aに固定されたローラ支持部83Bと、ローラ支持部83Bに固定され上下に延びる軸83Cと、軸83Cに回転自在に設けられたローラ本体83Dとを有する。ローラ本体83Dは、ワークWの外周部に当接される。
図1及び図2に戻り、熱処理本体部3は、治具1の上のワークWを加熱する加熱部としての加熱コイル30と、加熱コイル30の下方に設けられた冷却部4とを備えている。
加熱コイル30は、所定高さに配置された治具1の互いに隣接する放射架台51の各間隙であって、ワークWの内周領域に配置されている。加熱コイル30は、ワークWの回転中心に対して周方向に略均等に配設されるのが好適である。
加熱コイル30は、図示しない変位手段により進退可能となっており、治具1が所定位置に配置された状態で、ワークWの被加熱領域に対向近接するように構成されている。
冷却部4は、熱処理本体部3の下方に設けられており、冷却液吐出部41が水槽42に配置された構造である。
次に、第1実施形態の熱処理装置を用いてワークWを焼入処理する方法について説明する。
まず、治具1を所定位置に配置して、ワーク支持部5の複数の回転ローラ52の上にワークWを載置する。
[加熱工程]
治具1を搬送あるいは昇降してワークWを所定位置に配置する。そして、加熱コイル30を移動させて、ワークWの被加熱領域に対向配置する。この状態で、ピストン駆動回路9を作動させて第一付勢ローラ831と第二付勢ローラ832とでワークWを互いに直交する径方向に付勢する。第一付勢ローラ831でワークWを付勢する方向には第一固定ローラ811が配置され、第二付勢ローラ832でワークを付勢する方向には第二固定ローラ812が配置されているので、第一固定ローラ811と第二固定ローラ812とでワークWの径方向の移動が規制される。
誘導加熱に伴って、ワークWが熱膨張するが、熱膨張に伴って第一付勢ローラ831と第二付勢ローラ832とがそれぞれ後退することになる。
[冷却工程]
加熱終了後、治具1を下降させて冷却部4の所定位置に配置する。加熱工程と同様に、第一付勢ローラ831と第二付勢ローラ832とでワークWを互いに直交する径方向に付勢するとともに、第一固定ローラ811と第二固定ローラ812とでワークWの径方向の移動を規制する。そして、ワークWを回転させつつ冷却液吐出部41から冷却液をワークWに接触させ、ワークWの全体を冷却する。
冷却に伴って、ワークWが熱収縮するが、熱収縮に伴って第一付勢ローラ831と第二付勢ローラ832とがそれぞれ前進することになる。
冷却後、再び治具1を所定の搬出位置に搬送し、ワークWを搬出することで、焼入処理を終了する。
第1実施形態では次の効果を奏することができる。
(1)環状のワークWを熱処理する熱処理本体部3と、ワークWをワーク周方向に回転させる回転機構7と、ワークWを径方向のうち外側から内側に向かう方向に付勢する付勢ローラ83と、付勢ローラ83がワークWを付勢する方向の移動を規制する固定ローラ81とを備えて熱処理装置を構成した。回転機構7によってワークWを回転させながら、熱処理本体部3でワークWに熱処理を施す際に、付勢ローラ83がワークWを付勢するとともに、固定ローラ81でワークWの移動を規制するので、ワークWの回転中心がずれることが少なく調芯が行われる。ワークWの調芯にあたり、ワークWへの付勢力の調整は、付勢ローラ83のみで十分であるから、調芯が容易に行われる。しかも、熱処理されたワークWが径方向に膨張あるいは収縮しても、その膨張や収縮が付勢ローラ83で吸収されることになるので、この点からも調芯が容易に行えることになる。
(5)加熱コイル30は、ワークWの内周領域に配置されているので、装置が大がかりになりやすい付勢ローラ83と加熱コイル30とがワークWの外内に配置されるので、装置の設置を効率的に行うことができる。
第2実施形態は第1実施形態とは固定ローラ81、付勢ローラ83及び加熱コイル30の配置位置が相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。
図5は、第2実施形態の熱処理装置の平面を示すものであるが、第1実施形態が示される図1に比べて簡略して表示されている。
第2実施形態では、付勢ローラ83はワークWの内周領域に配置され、固定ローラ81はワークWの内周領域であってワークWの回転中心を挟んで付勢ローラ83とは反対側に配置されている。
加熱コイル30は、隣合う放射架台51の間であってワークWの外周領域に配置されている。
第2実施形態におけるワークWの熱処理方法は第1実施形態と同じである。
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)~(3)(6)(7)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(8)付勢ローラ83と固定ローラ81とがそれぞれワークWの内周領域であってワークWの回転中心を挟んで離れて配置されているので、付勢ローラ83でワークWを付勢する向きが若干ずれたとしても、固定ローラ81でワークWの移動を確実に規制することができる。
(9)加熱コイル30は、ワークWの外周領域に配置されているので、装置が大がかりになりやすい付勢ローラ83と加熱コイル30とがワークWの内外に配置されるので、装置の設置を効率的に行うことができる。
例えば、前記各実施形態では、付勢ローラ83と固定ローラ81とをワークWの回転中心を挟んで互いに離れた位置に配置したが、本発明では、図6に示される通り、付勢ローラ83と固定ローラ81とをワークWを挟んで近接配置してもよい。即ち、付勢ローラ83をワークWの内周に当接させ、固定ローラ81をワークWの外周に当接させる構成としてもよい。
さらに、本発明では、熱処理するワークWによっては、熱処理本体部3として冷却部4を必ずしも設けることを要せず、加熱コイル30のみとしてもよい。
さらに、加熱部は加熱コイル30に限定されるものではなく、他の加熱手段、例えば、ヒータでもよい。
また、本発明では、付勢ローラ83と固定ローラ81とをそれぞれ1対用いるものでもよい。
Claims (2)
- 環状のワークを熱処理する熱処理本体部と、
前記ワークをワーク周方向に回転させる回転機構と、
前記ワークを径方向の内側から外側に向かう方向と外側から内側に向かう方向とのうち一方に付勢する付勢ローラと、
前記付勢ローラによって付勢される方向に前記ワークが移動することを規制する固定ローラと、を備え、
前記付勢ローラは、前記ワークの外周領域に配置され、エアーシリンダ装置で進退され、
前記エアーシリンダ装置は減圧弁を有し、
前記固定ローラは前記ワークの外周領域であって前記ワークの回転中心を挟んで前記付勢ローラとは反対側に配置され、
前記熱処理本体部は、前記ワークの内周領域に配置された加熱部を有し、
前記付勢ローラは第一付勢ローラと第二付勢ローラとを備え、前記固定ローラは第一固定ローラと第二固定ローラとを備え、前記第一付勢ローラと前記第一固定ローラとは対とされ、前記第二付勢ローラと前記第二固定ローラとは対とされ、前記第一付勢ローラと前記第一固定ローラとを結ぶ線分と前記第二付勢ローラと前記第二固定ローラとを結ぶ線分とは交差している
ことを特徴とする熱処理装置。 - 環状のワークを熱処理する熱処理本体部と、
前記ワークをワーク周方向に回転させる回転機構と、
前記ワークを径方向の内側から外側に向かう方向と外側から内側に向かう方向とのうち一方に付勢する付勢ローラと、
前記付勢ローラによって付勢される方向に前記ワークが移動することを規制する固定ローラと、を備え、
前記付勢ローラは、前記ワークの内周領域に配置され、エアーシリンダ装置で進退され、
前記エアーシリンダ装置は減圧弁を有し、
前記固定ローラは前記ワークの内周領域であって前記ワークの回転中心を挟んで前記付勢ローラとは反対側に配置され、
前記熱処理本体部は、前記ワークの外周領域に配置された加熱部を有し、
前記付勢ローラは第一付勢ローラと第二付勢ローラとを備え、前記固定ローラは第一固定ローラと第二固定ローラとを備え、前記第一付勢ローラと前記第一固定ローラとは対とされ、前記第二付勢ローラと前記第二固定ローラとは対とされ、前記第一付勢ローラと前記第一固定ローラとを結ぶ線分と前記第二付勢ローラと前記第二固定ローラとを結ぶ線分とは交差している
ことを特徴とする熱処理装置。
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