ところで、ガス燃焼機器類の一種である給湯器を被包装物とする場合、同じ現場に対し互いに異なる複数種類の給湯器を出荷する必要のある場合がある。特に集合住宅においては、給湯器の設置場所の構造上の都合等に起因して複数種類の給湯器を同じ現場に出荷する必要が生じる場合が多くなる。ここで、給湯器の外観形状の違いに応じて包装資材である保護トレイを形成すると、保護トレイも互いに形状の異なる複数種類のものが存在することになる。そして、このような形状の異なる複数種類の保護トレイによって複数種類の給湯器が同じ現場に出荷され、その開梱後に保護トレイの回収を図る際に、複数種類の保護トレイを単純に重ね合わせようとすると嵩高いものとなったり、あるいは、重ね合わせ自体が不能となったりする事態が生じることになる。このため、同じ種類(同じ形状)毎に保護トレイを分別して回収する必要が生じ、その回収作業の煩雑さによりリターナブル化を図る上で障害が生じることになる。
例えば、排気方向の違い(排気バリエーション)に応じて複数種類の給湯器を同じ現場に出荷する必要が多々生じることがある。すなわち、通常の排気タイプ(W型)の給湯器ではその前面上部位置に燃焼排ガスの排出口が設けられて燃焼排ガスが斜め上方に向けて排出されるようになっているが、集合住宅では給湯器の設置空間の違いに対応して排気方向を前方直進とするための突出管が一体に附属する排気タイプ(T型)の給湯器が併せて必要になる場合がある。又、いわゆる高効率型の給湯器が適用される場合、その高効率型の給湯器は燃焼排ガスの潜熱回収用の熱交換器が頂部に追加されて通常タイプの給湯器よりも背の高い形状となる。又、燃焼排ガスが上方に向けて排出される排気タイプ(H型)では排気タイプも形状も通常のものとは異なるものとなる。このような場合において、給湯器の種類毎に異なる仕様・形態の保護トレイを形成し、給湯器の種類毎に異なる形態の包装体を形成するようにすると、包装体全体の形状(特に高さ)が不揃いとなって出荷時の積載効率の低下や、搬送の非効率化を招くことになる。又、このように給湯器の種類毎に異なる形態の包装体を形成したり、給湯器の種類の違いにより給湯器の上下で異なる仕様・形態の保護トレイを用いたりすると、回収時においてそれぞれの仕様・形態毎に分別して集積・積層(積み重ね)するというように回収の手間の増大を招いたり、あるいは、分別することなく無理矢理に積み重ねようとするとコンパクト性に反する事態を招いたりすることになって、リターナブル化の進展に反する事態を招くことになる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、包装用の保護部材を被包装物の種類に応じて異なる形態のものに構成して被包装物を適切に保護しつつも、出荷時における積載効率の低下を防止し、かつ、回収時においてはそれら異なる形態の保護部材が混在していたとしてもそれらをコンパクトに積層(積み重ね)可能として開梱後の回収の手間を省略して搬送の容易化を図り、リターナブル性のより向上を図り得る包装システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明による包装システムでは、互いに異なる形状部分を備えた少なくとも2種類の被包装物を保護するために、その被包装物の一部を外側から覆うように一側に開口するトレイ状に構成され、かつ、互いに異なる形状部分に対応して互いに異なる形状の支持部を備えた少なくとも2種類の包装用の保護部材を備えたものとする。そして、上記各保護部材として、開口を共に同じ向きにした状態で一の保護部材に対し他の保護部材を外嵌又は内嵌させて重ね合わせた際に、一の保護部材と他の保護部材との相対間隔を、その一の保護部材と他の保護部材との互いに異なる形状の支持部同士が相互干渉しない状態に維持するストッパ部を備えたものとした(請求項1)。
本発明の場合、互いに異なる形状の支持部を備えた異なる種類の保護部材同士を重ね合わせたとしても、各保護部材の両ストッパ部により両保護部材の相対間隔が所定の状態に維持され、これにより、上記の互いに異なる形状の支持部同士の相互干渉が阻止されることになる。このため、互いに異なる形状部分を備える2種類以上の被包装物が保護部材により包装されて出荷され、配送先で開梱された後に、互いに異なる形状の支持部を備えた2種類以上の保護部材が混在状態になったとしても、それらを重ね合わせることが可能になり、同じ種類毎に回収するという分別回収の手間を排して、保護部材の回収の容易化が図られる。これにより、回収後に再利用する場合のリターナブル性のより向上が図られることになる。
本発明において、一の被包装物の上記形状部分が他の被包装物の上記形状部分よりも形成位置がより高く形成されている場合に、上記一の被包装物の形状部分を支持するために一の保護部材に形成された支持部を、上記他の被包装物の形状部分を支持するために他の保護部材に形成された支持部よりも上記形成位置の差分だけより低く設定することとし、上記一の被包装物に対し上記一の保護部材で覆った状態の外観形状が、上記他の被包装物に対し上記他の保護部材で覆った状態の外観形状と略同一になる構成とすることができる(請求項2)。このように、一の被包装物と他の被包装物との間で互いに異なる形状部分としてその形成位置に違いがある場合であっても、用いる保護部材もそれに対応して異なる形成位置に形成した支持部を備えるようにすることで、被包装物を保護部材で覆って包装した状態の外観形状を互いに略同一にして共に共通のものとすることが可能となる。これにより、工場におけるストックヤードの効率化が図られる上に、異なる種類の被包装物を同時に混載状態で出荷する場合においても、積載効率の低下を招くことなく、積載効率を良好に維持した状態で出荷させることができるようになる。
本発明の各保護部材としては、底壁と、この底壁の周囲から斜め外方に徐々に拡開するように傾斜した状態で立ち上がる周壁とで構成することができる(請求項3)。この場合、開口を共に同じ向きにした状態で重ね合わせた場合に、一の保護部材の周壁が他の保護部材の周壁に沿って重ね合わされることになり、回収される複数の保護部材をコンパクトな荷姿にすることが可能になる。この場合におけるストッパ部としては、上記周壁の周縁の少なくとも一部を外方に膨出するように形成し、かつ、上記一の保護部材と他の保護部材とを重ね合わせた際に、両ストッパ部が互いに当たることにより相対間隔が維持される構成とすることができる(請求項4)。そして、このような保護部材として、合成樹脂成形により形成することが好ましい(請求項5)。合成樹脂成形により保護部材を形成することで、包装に使用後の洗浄等が容易となり、再利用する場合の取扱いに優れる上に、耐久性をも容易に発揮させることが可能となる。
以上において、周縁が上記被包装物の各端部を構成する周縁位置よりも全周にわたり外周側に突出するよう形成された保護部材を用いて上記被包装物の上下方向両側の各端部に外嵌し、上記被包装物及びこの被包装物の上記各端部に外嵌された状態の一対の保護部材の全体を熱収縮性のフィルムにより覆い、そのフィルムを熱収縮させて上記両保護部材の外表面にそれぞれ密着させることにより、上記一対の保護部材と被包装物とを一体に保持して包装体を形成する構成とすることができる(請求項6)。この場合には、隣接する他の包装体同士の衝突や干渉等が生じたとしても、あるいは、他の壁面等との衝突や干渉等が生じたとしても、上下の保護部材の周縁が先に当たって被包装物の損傷発生を回避することが可能となる。又、全体がフィルムにより覆われた状態となって、外部からの水や埃等の付着を確実に阻止することが可能となる上に、フィルムを透明又は半透明とすることで被包装物の外面の状態等を外部からシースルー状態で視認することが可能となる。
又、この場合における一対の保護部材を、各保護部材が上記被包装物に対し上下から押し付けられるように掛け渡された結束紐により互いに結束するようにすることができる(請求項7)。このように結束することにより、フィルムの膜厚を結束紐が受け持つ耐荷重の分だけ低減化することが可能であり、フィルム材料のコスト低減化が図られることになる上に、緊張状態の結束紐を内包した状態でフィルムを熱収縮させることにより、フィルム内面と被包装物の外面との間の隙間も結束紐のない場合と比べてより広くなり、保護機能・緩衝機能をより一層向上させることが可能となる。
以上、説明したように、本発明の包装システムによれば、互いに異なる形状の支持部を備えた異なる種類の保護部材同士を重ね合わせたとしても、各保護部材の両ストッパ部により両保護部材の相対間隔を所定の状態に維持することができ、これにより、上記の互いに異なる形状の支持部同士の相互干渉を阻止することができるようになる。このため、互いに異なる形状部分を備える2種類以上の被包装物が保護部材により包装されて同じ現場に出荷され、配送先で開梱された後に、互いに異なる形状の支持部を備えた2種類以上の保護部材が混在状態で集められたとしても、それらを混在状態のまま重ね合わせることができるようになる。以上の結果、保護部材を同じ種類毎に回収するという分別回収の手間を不要にして、保護部材の回収の容易化を図ることができ、これにより、回収後に再利用する場合のリターナブル性のより向上を図ることができるようになる。
特に、請求項2によれば、一の被包装物と他の被包装物との間で互いに異なる形状部分としてその形成位置に違いがある場合であっても、用いる保護部材もそれに対応して異なる形成位置に形成した支持部を備えるようにすることで、被包装物を保護部材で覆って包装した状態の外観形状を互いに略同一にして共に共通のものとすることができ、これにより、工場におけるストックヤードの効率化を図ることができる上に、異なる種類の被包装物を同時に混載状態で出荷する場合においても、積載効率の低下を招くことなく、積載効率を良好に維持した状態で出荷させることができるようになる。
請求項3によれば、底壁と、この底壁の周囲から斜め外方に徐々に拡開するように傾斜した状態で立ち上がる周壁とで保護部材を構成することで、開口を共に同じ向きにした状態で重ね合わせた場合に、回収される複数の保護部材をコンパクトな荷姿にすることができるようになる。又、請求項4によれば、ストッパ部として、特別な構成を付加することなく簡易に形成することができ、さらに、請求項5によれば、合成樹脂成形により保護部材を形成することで、包装に使用後の洗浄等が容易となり、再利用する場合の取扱いに優れる上に、耐久性をも容易に発揮させることができるようになる。
請求項6によれば、隣接する他の包装体同士の衝突や干渉等が生じたとしても、あるいは、他の壁面等との衝突や干渉等が生じたとしても、上下の保護部材の周縁が先に当たって被包装物の損傷発生を確実に回避することができるようになる。又、被包装物の全体をフィルムにより覆うことができ、外部からの水や埃等の付着を確実に阻止することができる上に、フィルムを透明又は半透明とすることで被包装物の外面の状態等を外部からシースルー状態で視認することができるようになる。
請求項7によれば、上下の保護部材を結束紐により互いに結束することにより、フィルム材料のコスト低減化のみならず、フィルム内面と被包装物の外面との間の隙間を結束紐のない場合と比べてより広くすることができ、保護機能・緩衝機能をより一層向上させることができるようになる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、被包装物として3種類の異なるタイプ(排気タイプ)の製品(給湯器)を対象として、それぞれの製品に応じた保護形態を備えるように形状を変更した互いに異なる3種類の包装用保護部材としての合成樹脂製保護トレイを用いて主要外形寸法を共通にする包装体を構成し、現場への出荷・搬入後、開梱された3種類の保護トレイを互いに積層(積み重ね)可能にしてコンパクトに回収し得るようにしたものである。以下、3種類の包装体、3種類の製品、3種類の保護トレイについて、それぞれ説明する。
図1は、製品10a(W型排気タイプの給湯器)を対象とした包装体(リターナブル包装体)1aを示す。同図において、符号2a,2aは製品10aの上下端部11a,12aにそれぞれ外嵌された第1の保護トレイ、3,3はそれぞれ結束紐としてのPPバンド、4は熱収縮性フィルムを用いた熱収縮後のフィルムである。なお、他の製品10b(H型排気タイプの給湯器)を対象にした包装体1bの場合、製品10bの下端部11bには第1の保護トレイ2aを外嵌させる一方、製品10bの上端部11bには第2の保護トレイ2bを外嵌させる点で異なるものの、その外観形状は図1に示す包装体1aと同じである。このため、包装体1bの図示を省略している。ここで、以下に示す各図においては、フィルム4を図示の関係上、その肉厚を実際よりも誇張して図示している。
図2は、製品10c(T型排気タイプの給湯器)を対象とした包装体1cを示す。この包装体1cの場合には、製品10cの排気筒15cを保護するための突出部21を有する第3の保護トレイ2cを用い、製品10cの下端部11cにその第3の保護トレイ2cを外嵌させる一方、上端部12cにも第3の保護トレイ2cを外嵌させることにより、排気筒15cを上下方向に相対向する突出部21の平面投影領域内に配置して覆うことにより保護するようにしている。
図3は製品10aを示す。この製品10aは、他の製品10b,10cと同様に上下方向に縦長とされた金属製筐体の内部に機器本体が内蔵された瞬間式給湯器であり、通常の排気タイプ(W型)に構成されたものである。この製品10aとしての給湯器は、筐体の一部を構成する前面カバー14の上部に排気口15aが開口し、排気口15aから燃焼排ガスが前方の斜め上方に向けて排出されるようになっている。又、他の製品10b,10cも同様であるが、上記前面カバー14の外周フランジ14aが下端部11a、側壁面13、上端部12aから外周側に突出し、下端部11a(11b,11c;図4又は図5参照)の下端面からは種々の配管用接続部が所定量突出している。
図4は製品10bとしてのH型と称される排気タイプ及び高効率型の給湯器を示す。この製品10bは、内部に内蔵された機器本体の頂部に対し潜熱回収用の熱交換器が追加され、この追加された熱交換器の分だけ上端部12bが上方に膨出し、全体高さが他の製品10a,10cの本来の高さH(図3又は図5参照)よりも出っ張り高さhだけ高くなって全高さがH+hとなっている。加えて、排気口15bが上端部12bの上端面に開口して燃焼排ガスが上方に向けて排出されるようになっている。このように上方に膨出した上端部12bが、製品10aの場合の上端部12aと互いに異なる形状部分を構成することになる。
図5は製品10cとしてのT型と称される排気タイプの給湯器を示す。この製品10cは、内部に内蔵の機器本体から燃焼排ガスを前方直進方向に排出するために、内蔵の機器本体に対し取り外し不能な状態で一体に連結された排気筒15cが前面カバー14を貫通して前方に所定量突出した状態となっている。
以上の製品10a,10b,10cを対象にした包装体1a,1b,1cは次のようにして形成(包装)される。以下では包装体1cを例にして図6を参照しつつ説明するが、他の包装体1a,1bの場合も形成の手順自体は同じである。すなわち、図6に示すように、上向きにした第3の保護トレイ2c(図6の下側に示す保護トレイ2c)に対し製品10cを上から載置することにより製品10cの下端部11cがその下側の保護トレイ2cに内嵌された状態にする。そして、下側の保護トレイ2cとは天地を逆にして下向きにした第3の保護トレイ2cを製品本体1aの上端部12cに対し上から外嵌させる。この際に、上側の保護トレイ2cの突出部21内に排気筒15cの上側領域が凹所20内に入り込んだ状態で覆われるようにする。つまり、突出部21及び内部に区画される凹所20は、本来は排気筒15cの形状・サイズに基づいて、この排気筒15cの平面投影形状よりも大きくなるように形成したものであり、排気筒15cを保護するために第3の保護トレイ2cに一体に形成したものである。そして、上下に保護トレイ2c,2cを外嵌させた仮組の状態で、2本のPPバンド3,3で巻締めて結束し、結束した状態でシュリンク工程ラインに送ってフィルム4によるシュリンク包装を施す。すなわち、周囲からフィルムシートを巻き付けて全体を筒状に覆い、この状態で熱収縮させる。これにより、フィルム4は、筒状の開口側となる位置に収縮開口41が形成されるとともに、上下の両保護トレイ2c,2c間の製品1cの側壁面13等の外周面とフィルム4の内面との間に隙間42(図1又は図2参照)を残した状態で収縮されて張られた状態になる。なお、上記のPPバンド3,3による結束は、所定位置に巻き付けた後に、締結具による締結又は溶着による締結を行えばよい。
以上で包装体1cが完成し、製品1cが互いに同じ形状の一対の保護トレイ2c,2cによりそれぞれ上下を挟み込まれて保持された状態で包装され、かつ、保護されることになる。つまり、上から下に見た状態では排気筒15cを含めた製品1cの平面投影形状よりも上下の保護トレイ2c,2cのそれが外周側に広く張り出した状態となるため、隣接する他の包装体同士の衝突や干渉等が生じたとしても、あるいは、他の壁面等との衝突や干渉等が生じたとしても、上下の保護トレイ2c,2cの周端縁が先に当たって製品1cの損傷を回避することができる。そして、フィルム4により全体が覆われた状態となるため、製品1cに対する外部からの水や埃等の付着を確実に阻止することができる一方、フィルム4を透明又は半透明とすることで製品1cの外面の状態等を外部からシースルー状態で視認することができることになる。以上の作用効果の点は、他の包装体1a,1bにおいても同様に得られる。その際に、特に包装体1cの場合には、突出部21の平面投影形状を、上記の排気筒15cの平面投影形状よりも大きく設定することにより、上下の両突出部21の存在で排気筒15cを確実に保護し得るようにしている。
以下、このような作用・効果を生じさせる第1〜第3の各保護トレイ2a,2b,2cについて詳細に説明する。
図7は第1の保護トレイ2aを示す。この保護トレイ2aは製品10a(図3参照)の上下端部11a,12aと、製品10b(図4参照)の下端部11bとにそれぞれ外嵌させるために用いられるものである。保護トレイ2aは、一方(図例では上方)に開口し、略矩形の底壁22と、この底壁22の周囲からそれぞれ斜め外方に徐々に拡開するように傾斜した状態で立ち上がる周壁23とが合成樹脂成形により一体に形成されたものである。上記底壁22は製品1aの平面形状(下端部11aと上端部12aとの各端面の形状)と略相似形であって所定量大きい矩形とされ、又、上記周壁23が斜め外方に徐々に拡開するように若干の傾斜状態となるように形成されて、後述の回収時に複数の第1の保護トレイ2a,2a,…あるいは複数種類の保護トレイ2a,2b,2cを上下方向にコンパクトに重ね合わせた積層状態で積み重ねし得るようになっている。
又、保護トレイ2aの内部には、底壁22から上方に所定高さだけ立ち上がった位置に6つの段部24a,24b、25a,25b、26a,26bが一体に形成されている。これらの段部の内、前側段部24a,24bは製品10aの前側部分であって前面カバー14の外周フランジ14aを内嵌させた状態で保持するように形成されたものであり、後側段部25a,25bは製品10aの下端部11a又は上端部12aの後側部分をそれらの角部で保持するように形成されたものである。又、左右両側の段部26a,26bは製品10aの下端部11a又は上端部12aの側面壁13側の部分をその角部で保持するように形成されたものである。以上の各段部24a,24b、25a,25b、26a,26bは、それぞれ、周壁23の周縁231位置から所定寸法K1だけ上下方向に隔てた位置で製品10aの下端部11a又は上端部12aと突き当たって支持するように配設されている。この寸法K1は、保護トレイ2aの周壁23の周縁231位置から底壁22の底面位置までの深さよりも短く設定され、その差分の空間により緩衝作用等を発揮させて保護機能を担保するようになっている。
このような段部24a,24b、25a,25b、26a,26bで製品10aの下端部11a又は上端部12aを保持することにより、その製品10aを保護トレイ2aの内側位置において、すなわち、底壁22から所定量離して上下方向に空間を隔てた位置であって周壁23からも所定量離して平面方向に空間を隔てた位置において、かつ、上下方向及び平面方向の双方への相対位置ずれを防止した状態で、保護トレイ2aと製品10aとの相対位置関係を維持して製品10aの下端部11a又は上端部12aを覆い得るようにしている。このため、上記底壁22もしくは周壁23に外部の他の物との衝突力が作用したとしても、上記底壁22及び周壁23の弾性変形による撓み代が十分に確保され上記の衝突力がクッション性を加味した状態で弾性吸収されることになる。これにより、保護トレイ2aによる緩衝機能及び保護機能が十分に発揮されることになる。なお、各段部24a,24b、25a,25b、26a,26bの形成に伴い、保護トレイ2aの外面側には内方側に凹まされた凹所が形成されることになり、この凹所を利用してPPバンド3,3が巻締めされるようになっている。又、周壁23の短辺側に形成された長穴状の貫通孔は、包装体を横持ちする際等に利用される運搬用の手掛け部27,27である。
加えて、第1の保護トレイ2aには、上記周壁23の四隅の角部であって周壁23の周縁231位置から外方に膨出し、かつ、周縁231位置から高さSを隔てた両側位置にそれぞれ上下方向に向いた当たり面を有するストッパ部28,28,…が形成されている。この各ストッパ部28の高さSは、後述の如く、第1〜第3の保護トレイ2a,2b,2cの回収時に、特に保護トレイ2a,2bを段部形状の差があっても相互干渉を起こさずに積層状態に積み重ね得るように両保護トレイ2a,2bの上下方向の相対間隔を所定量だけ隔てた状態の位置関係に維持し得る寸法に設定されている。
図8は第2の保護トレイ2bを示している。この第2の保護トレイ2bは製品10b(図4参照)の特に上端部12bに外嵌させるために用いられるものである。第2の保護トレイ2bの基本形態は第1の保護トレイ2aと同じである。このため、同じ構成要素には第1の保護トレイ2aと同じ符号を付してその詳細説明を省略する。第2の保護トレイ2bにおいて第1の保護トレイ2aと異なる点は、後側の段部25c,25dと、左右両側の段部26c,26dとの上下方向に対する形成位置が第1の保護トレイ2aとは異なることである。このような後側の段部25c,25dと、左右両側の段部26c,26dとが、第1の保護トレイ2aとは異なる形状に形成された支持部を構成することになる。すなわち、周壁23の周縁231位置から上記の後側の段部25c,25d及び左右両側の段部26c,26dまでの上下方向寸法K2として、第1の保護トレイ2aにおける段部25a,25b及び段部26a,26bの上下方向寸法K1よりも製品10bの上下方向の出っ張り高さhだけ高く設定されている(K2=K1+h)。これに対し、前側の段部24a,24bは第1の保護トレイ2aのそれらと同様に上下方向寸法K1の位置で製品10bの前側部分を保持するようになっている。これにより、製品10bの特に上端部12bに保護トレイ2bを外嵌させて包装体1bを形成した場合に、製品10aを対象にした包装体1aと全体高さを同一にして、両包装体1a,1bを共通の外観形状に形成することができるようになる。
すなわち、図9に示すように、製品10aの下端部11aに第1の保護トレイ2aを下から外嵌し、上端部12aに第1の保護トレイ2aを上から外嵌して形成した包装体1aと、製品10bの下端部11bに第1の保護トレイ2aを下から外嵌し、上端部12bに第2の保護トレイ2bを上から外嵌して形成した包装体1bとは、共に同じ全体高さTとなり、全体の外観形状も共通のものとなる。これは、製品10bの上端部12bが前側部分を除く部分において製品10aよりも出っ張り高さhだけ上方に膨出した形状になっているのに対し、その出っ張り高さh分だけ支持位置を深くした段部25c,25d及び段部26c,26dを有する第2の保護トレイ2bを製品10bの上端部12bにのみ外嵌させることにより、形成された包装体1bの全体高さTを包装体1aのそれと同じにすることができるのである。これにより、製品10aと製品10bとの間で形状に違いがあって、用いる保護トレイ2a,2bもそれに対応して異なる形状を有していても、それぞれ形成された包装体1a,1bは共に共通の外観形状を備えたものとすることができ、これにより、工場におけるストックヤードの効率化を図ることができる上に、異なる種類の製品10a,10bを同時に混載状態で出荷する場合においても、積載効率の低下を招くことなく、積載効率を良好に維持した状態で出荷させることができるようになる。
図10は第3の保護トレイ2cを示す。この第3の保護トレイ2cは製品10cの上下端部11c,12c(図5又は図6参照)にそれぞれ外嵌させるために用いるものである。第3の保護トレイ2cは、第1の保護トレイ2aと同じ基本形態に加え、突出部21を一体に備えたものである。すなわち、周壁23には、その長辺側の片側の側壁の略中央部位が外側に突出されて突出部21が形成されている。この突出部21は、周壁23に連続する両側壁21a,21aと先端壁21bとで矩形状に突出する形状に形成され、これら両側壁21a,21a及び先端壁21bに対し底壁22から連続する壁が外方に向けて斜め上方に延びて先端壁21bに連続し、これらに区画されて内部に凹所20が形成されている。上記周壁23の端縁である周縁231は、突出部21を除いた部分の形状及びサイズが上記底壁22よりも周壁23の傾斜分だけ外周側にさらに大きく設定され、又、突出部21の周縁の形状・サイズは製品10cの排気筒15c(図5参照)の平面投影形状よりも大きくなるように設定されている。
そして、3種類の包装体1a,1b,1cが工場から同じ現場に出荷・配送されて包装が解かれた後、3種類の保護トレイ2a,2b,2cは回収されて工場に戻されて繰り返し再使用されることになる。この回収時には、図11又は図12に示すように、突出部21を有する第3の保護トレイ2cを最下段にして、他の種類のものが保護トレイ2a,2bの順(図11参照)で、あるいは、保護トレイ2b,2aの順(図12参照)で上下に重ね合わせた状態に積層して積み重ね、これを結束してコンパクトにした荷姿状態で工場に戻されることになる。図11又は図12には3種類の保護トレイ2a,2b,2cをそれぞれ1個ずつ積み重ねたものを図示しているが、これは種類の異なるものを積み重ねた例を示すためのものであり、通常は複数種類のものをそれぞれ任意の個数分積み重ねられることになる。両図に示すように、深さK1の段部25a,25b,26a,26bと、深さK2の段部25c,25d,26c,26dというように形状の異なる2種類の保護トレイ2a,2bについて、いずれを下にしても、あるいは、いずれを上にしても、順不同に積層してもコンパクトに積み重ねることができるようになる。これにより、種類毎に分別して別個に集積して個別種類毎に積層するというような手間のかかる回収作業を行う必要なく、互いに異なる複数種類の保護トレイ2a,2bが混在状態で集積していたとしても、それらをコンパクトに積層して積み重ねることができ、回収の手間を省略して搬送の容易化を図ることができるようになる。この結果、リターナブル性のより向上を図ることができるようになる。
かかる作用効果はストッパ部28による上下方向の相対間隔を所定量に維持する機能に基づくものである。すなわち、図13に示すように3種類の保護トレイ2a,2b,2cを上下に互いに積み重ねると、ストッパ部28,28,28が上下方向で互いに当たり、3種類の保護トレイ2a,2b,2cの上下方向の相対位置関係が各ストッパ部28の高さSに対応する高さだけ離れた状態、つまり、高さSに対応する上下方向間隔だけ隔てられた状態に維持・設定されることになる。このため、保護トレイ2a,2b間の形状の相違がこの高さS分の範囲内で許容・吸収され、第1の保護トレイ2aを下にして第2の保護トレイ2bを上にしても、逆に、第2の保護トレイ2bを下にして第1の保護トレイ2aを上にしても、いずれの順に積層したとしてもコンパクトに積み重ねることができるようになる。この結果、分別回収することなく混在状態での回収を容易に実現させることができるようになる。
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、複数種類の保護トレイ2a,2b,2cの上下方向の相対位置関係を所定寸法に維持するためのストッパ部として、周壁23の四隅位置に形成しているが、これに限らず、周壁23の直線部分の周縁231を所定量外方に突出させてストッパ部を形成するようにしてもよい。又、周壁23の外面側ではなくて底壁22に近い側の内面側に凸部を形成し、この凸部によりストッパ部を構成するようにしてもよい。さらに、周壁23に限らず、底壁22から上方に所定量(例えば寸法Sから底壁22の肉厚分を減じた寸法以上)突出させた突起又は凸部を形成し、これでストッパ部を構成するようにしてもよい。
又、上記のストッパ部28等の上下方向寸法Sに対応する範囲であれば、上下方向の形成位置の違いのみならず、平面方向の形状の違いについても、もちろん吸収・許容することができる。
さらに、上記実施形態では、PPバンド3,3で結束した上でフィルムシートを被せて熱収縮させることによりフィルム4により全体を覆うようにしているが、これに限らず、PPバンド3,3を用いた結束を省略するようにしてもよい。PPバンド3、3による結束前の仮組の状態で、シュリンク工程ラインに運搬してそのままでシュリンク用のフィルムシートで覆って熱収縮させれば、熱収縮後のフィルム4により上下の保護トレイ2a,2aと製品10a、上下の保護トレイ2b,2aと製品10b、あるいは、上下の保護トレイ2c,2cと製品10cとが互いに結束されたと同じ状態に保持させることができるからである。