JP5284515B1 - 全有機炭素濃度の測定装置及び測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機物の酸化により生成した二酸化炭素の量の測定を簡単にかつ高い精度で行うことができる測定装置及び測定方法を提供すること。
【解決手段】試料液に紫外線を照射し、試料液に含まれる有機物を酸化分解して二酸化炭素を発生させ、試料液から二酸化炭素を放出させる酸化分解部と、放出された二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部と、吸収された二酸化炭素の量を測定する測定部とを有し、酸化分解部は、試料液に含まれる有機物の酸化分解を行う反応容器と、反応容器を照射するように配置される紫外線光源と、反応容器に接続され反応容器内の試料液をバブリングする気体移送手段とを備え、二酸化炭素吸収部は、反応容器から移送された二酸化炭素を吸収するアルカリ性を呈し、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンを含む液を収容する吸収容器を備え、測定部は、吸収容器内の液の濁度を測定する濁度計を備えている。
【選択図】図1
【解決手段】試料液に紫外線を照射し、試料液に含まれる有機物を酸化分解して二酸化炭素を発生させ、試料液から二酸化炭素を放出させる酸化分解部と、放出された二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部と、吸収された二酸化炭素の量を測定する測定部とを有し、酸化分解部は、試料液に含まれる有機物の酸化分解を行う反応容器と、反応容器を照射するように配置される紫外線光源と、反応容器に接続され反応容器内の試料液をバブリングする気体移送手段とを備え、二酸化炭素吸収部は、反応容器から移送された二酸化炭素を吸収するアルカリ性を呈し、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンを含む液を収容する吸収容器を備え、測定部は、吸収容器内の液の濁度を測定する濁度計を備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は、試料液中に含まれる全有機炭素の濃度を測定する装置及び測定方法に関する。
全有機炭素(以下、TOCという)とは、水中に含まれる有機物の炭素量で表わされる水質指標のひとつである。水質管理が求められる水道水、工業用水、産業排水、下水及び環境水等の水試料についてTOCの濃度が測定され、その値により水質の評価が行われている。
TOC濃度の測定は、試料中に含まれる有機物を酸化分解して二酸化炭素とし、生成した二酸化炭素の量を測定することにより行われる。有機物を酸化分解する工程としては、白金等の触媒を用いて測定試料中に含まれる有機物を高温で燃焼させる燃焼酸化法と、紫外線を用いて有機物を酸化分解させる湿式酸化法とがある。一般的に、下水や産業排水等のTOC濃度が高い試料を測定する場合には燃焼酸化法が、上水や水道水、純水等のTOC濃度が低い試料を測定する場合には湿式酸化法が用いられている。
生成した二酸化炭素の量を測定する工程としては、燃焼酸化法又は湿式酸化法のいずれの方法で生成した二酸化炭素についても、高感度の非分散型赤外線式ガス分析計(以下、「NDIR」という)により定量する方法が一般的に採用されている。
また、特許文献1には、TOC濃度の測定装置を小型化するため、湿式酸化法により生成した二酸化炭素について、ガス透過性膜を介して分離し、導電率センサで定量する方法が記載されている。
下水や産業排水等の有機物が多く含まれる試料を測定するにあたっては、主に、上述の燃焼酸化法と非分散型赤外線式ガス分析計(NDIR)とを組み合わせた測定装置が用いられる。しかしながら、この測定装置では、酸化反応を行う燃焼炉の温度を900度以上とするために消費電力が大きく、高価な白金等の酸化触媒を劣化する度に交換する必要があるため、測定に係るコストが高いという問題があった。また、燃焼炉が大掛かりであり、精密光学機器である高感度のNDIRが組み込まれていることから、装置が大型になると共に装置自体の価格が高額であり、装置を導入し難いという問題があった。
また、特許文献1に記載の湿式酸化法と導電率による二酸化炭素量の測定とを組み合わせた測定装置では、下水や産業排水等のような高濃度の有機物が含まれている試料については対応することができず、水道水等の低濃度の有機物が含まれている試料を評価するための装置に留まっていた。
さらに、湿式酸化法を採用する場合には、高濃度のぺルオキソ二硫酸塩や過塩素酸塩等の酸化薬剤を試料に加えて酸化反応を促進することが行われているが、酸化薬剤を使用しないと下水や産業排水等のような高濃度の有機物を含む試料に対する酸化分解効率は低く、対応することができなかった。
このように、下水や産業排水等の有機物を多く含む試料のTOC濃度を手軽に分析したいというニーズに応えられる、試料中の有機物の効率的な湿式酸化方法及び酸化反応により生成した二酸化炭素の簡単な測定方法並びにそれらを組み合わせた小型で安価なTOC濃度の測定装置は実現していない。
本発明は上述した点に鑑みて案出されたもので、その目的は、NDIRや導電率測定機器を使用せずに、有機物の酸化により生成した二酸化炭素量の測定を簡単かつ高い精度で行うことができる測定装置及び測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、湿式酸化法において、ぺルオキソ二硫酸塩や過塩素酸塩等の酸化薬剤を使用せずに、下水や産業排水等のような試料液に含まれる高濃度の有機物を充分に酸化分解し、高い精度で全有機炭素濃度を測定できる測定装置及び測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上述の新しい測定方法を採用することにより、装置全体が小型であり、安価なTOC濃度の測定装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の全有機炭素の測定装置は、試料液に紫外線を照射し、試料液に含まれる有機物を酸化分解して二酸化炭素を発生させ、試料液から二酸化炭素を放出させる酸化分解部と、放出された二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部と、吸収された二酸化炭素の量を測定する測定部とを有し、酸化分解部は、試料液に含まれる有機物の酸化分解を行う反応容器と、反応容器を照射するように配置される紫外線光源と、反応容器に接続され反応容器内の試料液をバブリングする気体移送手段とを備え、二酸化炭素吸収部は、反応容器から移送された二酸化炭素を吸収するアルカリ性を呈し、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンを含む液を収容する吸収容器を備え、測定部は、吸収容器内の液の濁度を測定する濁度計を備えている。
試料液中の有機物は、酸化分解部の反応容器内で紫外線光源から照射される紫外線により酸化分解されて二酸化炭素となる。このとき、反応容器内の試料液を気体移送手段でバブリングすることにより、試料液の紫外線受光量が増大して酸化分解の効率が高くなり、かつ、発生した二酸化炭素は二酸化炭素ガスとして放出される。放出された二酸化炭素ガスは反応容器から二酸化炭素吸収部に移送され、二酸化炭素吸収部の吸収容器内でアルカリ性を呈する液に吸収されて炭酸イオンとなる。さらに、吸収された二酸化炭素、すなわち炭酸イオンは、難溶性の炭酸塩を形成する金属イオン等の陽イオンと反応せしめることによって難溶性の炭酸塩となって微小粒子を形成する。この難溶性炭酸塩の微小粒子の量は測定部の濁度計で定量され、試料液に含まれている有機物の濃度、すなわち全有機炭素濃度が測定される。
また、本発明の全有機炭素濃度の測定装置の紫外線光源は、複数の照射部を有し、反応容器を複数の方向から照射すると共に反応容器内の試料液を加温するように近接して配置されていることも好ましい。試料液に複数の方向から紫外線を近接して照射することにより、紫外線受光量が増大すると共に試料液が好適に温められ、試料液中の有機物の酸化分解の反応性が高められる。それゆえ、試料液中の有機物を確実に酸化分解して二酸化炭素を発生させることができる。
また、本発明の全有機炭素濃度の測定装置の気体移送手段は、反応容器内の試料液をバブリングすることにより、試料液の液面の高さを15%〜70%増加させるように構成されていることも好ましい。反応容器内の試料液が気泡で攪拌され、試料液及び触媒として用いられる酸化チタン粒子を混合・均一に分散すると共に、紫外線受光面積、すなわち紫外線受光量も増大するために、試料液中の有機物を確実に酸化分解して二酸化炭素を発生させることができる。
さらに、気体移送手段は、気体を反応容器と吸収容器とを循環して移送するように構成されていることも好ましい。一定時間、循環させることで、反応容器で発生・放出させた二酸化炭素を吸収容器内のアルカリ性を呈する液に確実に吸収させることができるため、全有機炭素濃度を高い精度で測定することができる。
さらに、本発明の全有機炭素濃度の測定装置の金属イオンは、アルカリ土類金属イオンであることも好ましい。これにより、吸収液に吸収された二酸化炭素を難溶性の炭酸塩として好適に不溶化させる物質が選択される。吸収容器内の液に吸収された二酸化炭素は、アルカリ土類金属炭酸塩の微小粒子を形成する。
さらに、本発明の全有機炭素濃度の測定装置に用いられるアルカリ土類金属イオンは、ストロンチウムイオンであることも好ましい。これにより、二酸化炭素をさらに好適に不溶化させる物質が選択される。吸収液に吸収された二酸化炭素は、炭酸ストロンチウムなどの微小粒子を形成する。
また、本発明の全有機炭素の測定方法は、試料液に紫外線を照射して試料液に含まれる有機物を酸化分解し、二酸化炭素を発生させる工程と、試料液を酸性条件下でバブリングして、試料液から二酸化炭素を放出させる工程と、放出された二酸化炭素をアルカリ性を呈する吸収液に吸収させる工程と、吸収液に吸収された二酸化炭素と、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンとを反応させて、吸収液中に難溶性の炭酸塩を生成させる工程と、難溶性の炭酸塩を含む吸収液の濁度を測定する工程とを有することを特徴とする。
試料液に含まれる有機物が紫外線により酸化分解され、試料液中に二酸化炭素が発生する。この試料液を酸性条件でバブリングすることにより、試料液に含まれる二酸化炭素のほとんど全量が二酸化炭素ガスとして試料液から放出される。放出された二酸化炭素ガスはアルカリ性の吸収液に吸収されて炭酸イオンとなる。さらに、吸収液中の炭酸イオンは、難溶性の炭酸塩を形成する金属イオン等の陽イオンと反応して難溶性の炭酸塩を形成し、吸収液中で微小粒子を形成する。この吸収液の濁度を測定することにより、試料液に含まれている有機物の濃度、すなわち全有機炭素濃度が測定される。
また、本発明の全有機炭素の測定方法の二酸化炭素を発生させる工程には、試料液に複数の方向から紫外線を照射すると共に試料液の液温を加温することを含むことも好ましい。試料液に複数の方向から紫外線を照射すると共に試料液を加温することにより、試料液中の有機物の酸化分解効率が高められる。それゆえ、試料液中の有機物を確実に酸化分解して二酸化炭素を発生させることができる。
また、本発明の全有機炭素の測定方法の二酸化炭素を発生させる工程には、試料液の液面の高さを15%〜70%増加させるように試料液をバブリングすることを含むことも好ましい。試料液が気泡で攪拌されて試料水や触媒として用いられる酸化チタン粒子が均一に混合・分散されると共に試料液量あたりの紫外線受光量も増大する。それゆえ、試料液中の有機物を確実に酸化分解して二酸化炭素を発生させることができる。
そして、本発明の全有機炭素の測定方法の難溶性の炭酸塩は、アルカリ土類金属炭酸塩であることも好ましい。これにより、吸収液に吸収された二酸化炭素を難溶性の炭酸塩として好適に不溶化させる物質が選択される。吸収液に吸収された二酸化炭素は、アルカリ土類金属炭酸塩の微小粒子を形成する。
また、本発明の全有機炭素の測定方法のアルカリ土類金属炭酸塩は、炭酸ストロンチウムであることも好ましい。これにより、二酸化炭素をさらに好適に不溶化させる物質が選択される。吸収液に吸収された二酸化炭素は、炭酸ストロンチウムの微小粒子を形成する。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する全有機炭素濃度の測定装置及び測定方法を提供することができる。
(1)有機物の酸化反応により生成した二酸化炭素を、NDIRや導電率測定器等の高価な機器を使用することなく、簡単に、かつ高い精度で定量することができる。
(2)白金等の触媒及び燃焼炉、又は酸化薬剤を使用することなく、試料液に含まれる高濃度の有機物を、効率的に酸化分解し、高い精度で全有機炭素濃度を測定することができる。
(3)装置全体が小型であり、装置自体が非常に安価であり、測定に係るコストも安価な全有機炭素濃度の測定装置が得られる。
(1)有機物の酸化反応により生成した二酸化炭素を、NDIRや導電率測定器等の高価な機器を使用することなく、簡単に、かつ高い精度で定量することができる。
(2)白金等の触媒及び燃焼炉、又は酸化薬剤を使用することなく、試料液に含まれる高濃度の有機物を、効率的に酸化分解し、高い精度で全有機炭素濃度を測定することができる。
(3)装置全体が小型であり、装置自体が非常に安価であり、測定に係るコストも安価な全有機炭素濃度の測定装置が得られる。
以下、図1を参照しつつ本発明の一実施形態に係る全有機炭素濃度の測定装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る全有機炭素濃度の測定装置1は、試料液Wに紫外線を照射して、試料液W中の有機物の酸化分解を行い、発生する二酸化炭素を二酸化炭素ガスとして放出させる酸化分解部2を備える。この酸化分解部2は内部に導入された試料液Wの酸化分解反応が行われる反応容器20と、反応容器20の内部に導入された試料液Wに紫外線を照射するべくこの反応容器20の近傍に設置されている紫外線光源21と、反応容器20に接続されており反応容器20内の試料液Wをバブリングする気体移送手段、すなわち、エアポンプ5及び各流路とを有している。さらに、この測定装置1は酸化分解部2で発生して放出された二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部3と、二酸化炭素吸収部3に吸収された二酸化炭素の量を測定する測定部4とを備えている。この二酸化炭素吸収部3は、吸収容器30を備えており、この吸収容器30は、反応容器20の上部に気体流路L3を介して接続されており、反応容器20の下部に流路L1、コック22、気体流路L2、エアポンプ5及び気体流路L4を介して接続されている。これにより、気体は、気体流路L3、気体流路L4、エアポンプ5、気体流路L2、コック22及び流路L1を介して移送され、反応容器20と吸収容器30との間を反応容器20の上部から吸収容器30の向きに循環するように構成されている。吸収容器30の内部には、反応容器20から気体流路L3を介して移送された二酸化炭素を吸収し、難溶性の炭酸塩を形成して不溶化させる吸収液31が収容されている。そして、二酸化炭素の量を測定する測定部4は、吸収液31の濁度を測定する濁度計40と電源41とを有している。
測定装置1の測定対象たる試料液Wは、特に限定されるものではないが、その一例としては、TOCを高濃度で含む下水や産業排水等が挙げられる他、環境水や上水等も挙げられる。
次に、本実施形態における二酸化炭素吸収部3の構成について詳細に説明する。二酸化炭素吸収部3は、吸収容器30とその中に収容される吸収液31とから概略構成される。この吸収容器30には、気体の流入部301と、気体の流出部302とが備えられ、吸収容器30の内部には吸収液31が収容されている。吸収容器30は酸化分解部2の反応容器20の上部と気体流路L3を介して接続されており、気体流路L3を介して移送された気体A2は、吸収容器30に流入部301から流入する。流入部301の位置は吸収液31の液面よりも十分下になるように配置されている。また、気体の流出部302は、吸収液31が流出しないよう、吸収液31の液面よりも上になるように、吸収容器30の上部に配置されている。本実施形態において、吸収容器30は、後述する濁度計40の測定セル(測定容器)としても用いるため、その外周面及び底部は透明のガラス又は透明の樹脂等の材料で形成されているが、測定セルとして使用しない場合には、これに限定されない。
吸収液31は、アルカリ性を呈し、難溶性の炭酸塩を形成させる金属塩を含んでいる。反応容器20で行われた有機物の酸化分解反応により発生し、放出された二酸化炭素ガスは、気体流路L3を通じて移送され、吸収容器30の流入部301から吸収液31に流入する。吸収液31がアルカリ性を呈していることから、気体A2中の二酸化炭素は吸収液31に吸収され、炭酸イオンとなる。吸収液31が難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンを含んでいることから、吸収液31中のこの炭酸イオンは難溶性の炭酸塩を形成して微小粒子を生成する。
吸収液31は流入した二酸化炭素を十分に吸収できる程度にアルカリ性を呈していればよい。アルカリ性を呈するためには、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、水酸化カルシウム、水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウム等が好適に用いられる。また、アルカリ性を呈する物質の濃度は、1ミリモル/L以上とし、とくに10ミリモル/L以上にすることによって高濃度の有機物から発生する二酸化炭素も確実に吸収することができる。
上述したように、本実施形態における吸収液31には、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンが含まれている。この金属イオンとしては、炭酸イオンと難溶性の炭酸塩を形成して不溶化し微小粒子を生じさせるものであればどのようなものでもよい。具体的には、アルカリ土類金属を含む第2族元素、コバルト、鉛、亜鉛、ニッケル又はマンガン等の金属イオンが好適に用いられるが、安全性が高く、環境負荷が低い観点から、アルカリ土類金属イオンがより好適に用いられ、カルシウム、バリウム、マグネシウム又はストロンチウムなどのアルカリ土類金属イオンがより好適に用いられる。特に炭酸塩の溶解度が小さいストロンチウムイオンが好ましい。これらの金属イオンを吸収液31に含有させるには、上記の金属イオンの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は水酸化物等を吸収液31に溶解させることが好ましい。また、吸収液31中に含ませる金属イオンの濃度については、吸収液に含まれる炭酸イオン濃度が低い場合には、難溶性の炭酸塩の微小粒子を十分に形成させるために、比較的高濃度の金属イオンが必要になる。例えば、アルカリ土類金属のストロンチウムを用いる場合には、試料液のTOC濃度が5mg−C/L程度の場合には、ストロンチウム塩の濃度は約50ミリモル/L以上であることが望ましく、試料液のTOC濃度が15mg−C/L以上の場合には、ストロンチウム塩の濃度は約25ミリモル/L以上であることが望ましい。なお、本実施形態では吸収液としてのアルカリ性を呈する溶液に難溶性の炭酸塩を形成する金属イオンを含ませ、吸収と同時に難溶性の炭酸塩を形成させているが、吸収液として前述のアルカリ性を呈する液を用い、二酸化炭素を吸収させた後に前述の難溶性の炭酸塩を形成する金属イオンを吸収液に加える手段を設けるような構成としても良い。
次に、本実施形態における測定部4の構成について詳細に説明する。測定部4は、濁度計40と電源41とから概略構成されており、濁度計40は、吸収液31の濁度を測定できるように配置されている。本実施形態においては、二酸化炭素吸収部3の吸収容器30自体が、濁度計40の測定セルとして構成されており、吸収容器30の側面から濁度計40の光源を当てることにより、吸収液31の濁度が測定される。濁度計40は、透過光測定方式、散乱光測定方式、透過光・散乱光演算方式等、種々の方式の濁度計40が用いられる。また、吸収容器30内の吸収液31に直接濁度センサを投入し、濁度を測定するような構成としてもよいし、吸収容器30から吸収液31を別の容器に移したうえで濁度を測定するような構成とすることも可能である。
次に、本実施形態の酸化分解部2の構成について詳細に説明する。酸化分解部2は、反応容器20と、紫外線光源21と、本実施形態での気体移送手段であるエアポンプ5とから概略構成される。この反応容器20には、試料液Wの流入又は試料液のバブリングのための気体A1の流入部201が備えられており、反応容器20内に試料液Wを流入するか、試料液のバブリングのための気体A1を流入するかは、コック22により選択される。同様に、この反応容器20には、気体の流出部202が備えられており、反応容器20は、流出部202と気体流路L3を介して二酸化炭素測定部3の吸収容器30と接続されている。
反応容器20の形状としては、紫外線光源21から照射される紫外線が反応容器20の奥まで到達すると共に、反応容器20の幅方向全体に紫外線が照射され、かつ適量の試料液を入れられるような形状が望ましい。ここで、反応容器20の奥行(反応容器20を楕円の円筒形状とした場合には、楕円の短径)を8mmとした場合、250mg/Lの酸化チタンを懸濁させた水の紫外線の透過率を計測したところ、透過率は約10%であり、光利用率が約90%であった。このことから、反応容器20の奥行を8mmより大きくしても、光の利用効率がほとんど増加しないことが見出された。このことから、反応容器20の奥行は8mm以下とすることが望ましく、酸化チタン濃度を500mg/L以上とすることもあるため、反応容器20の奥行は5mm以下とすることがより望ましい。
また、本実施形態で用いられている紫外線光源21は、装置全体を小型化するために、管径が15mm〜25mm程度のものが採用されていることから、反応容器20の幅(反応容器20を楕円の円筒形状とした場合には、楕円の長径)を30mm以上とすると、反応容器20に、複数の方向からの紫外線照射、又は近接した距離での強い紫外線照射を受け難い部分が増加する。さらに、反応容器20のサイズが小さすぎると、測定する試料液量が少なくなる結果、発生する二酸化炭素の量も少なくなり、測定値に高い精度が得られなくなるおそれがある。また、反応容器20のサイズが大きすぎると、試料液量が少ない場合には液面高さが低くなり、紫外線光源21の一部しか有効に使われず、試料液量を多くすると反応等に長時間を要することになる。このことから、反応容器20の幅は5mm〜30mmが望ましく、反応容器の長さは100mm〜400mm程度が望ましい。
本実施形態において、試料液Wは、酸化分解部2の試料液入口23より流路L0、コック22及び流路L1を介して流入部201から反応容器20に注入される。紫外線光源21により反応容器20内の試料液Wに紫外線が照射されて酸化分解反応が行われ、試料液W中の有機物は二酸化炭素に酸化される。この酸化分解反応を促進するため、光触媒として酸化チタンを用いることが望ましく、特にアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好適に用いられる。試料液Wに添加する酸化チタンの量としては、この試料液WのTOC濃度によって異なるが、下水や産業用排水等の高濃度のTOCを含む試料液を測定する場合には、酸化チタン濃度が200mg/L以上とすることが好ましく、500mg/L以上とすることがさらに好ましい。
さらに、反応容器20内で試料液Wの酸化分解反応を行うにあたり、pHが調整され得る。酸化分解反応時に、試料液WのpHがおよそ3〜9であれば、ほぼ完全に試料液W中の有機物は酸化分解するが、pHが3以下又は10以上になると酸化分解率が低下する。それゆえ、試料液WのpHは3〜9とすることが好ましい。さらに、酸化分解により発生した二酸化炭素は、酸性条件において二酸化炭素ガスとして試料液中から効率よく放出される観点から、試料液Wを酸性域のpH3〜7程度に調整することがより好ましい。
反応容器20内に入れられた試料液Wは、気体移送手段、すなわち、気体流路L4、エアポンプ5、気体流路L2、コック22及び流路L1を介して流入部201から流入した気体A1により、バブリングされる。バブリングはエアポンプ5により通気線速度を調整することで行われ、試料液Wの液面の高さを10%以上増加させるようにバブリングされることが好ましく、15%〜70%増加させるようにバブリングされることがより好ましい。本発明において、液面の高さを増加させる、とは、バブリング前の反応容器20内の試料液Wの液面の高さを基準として、バブリングの気泡の勢いで反応容器20内の試料液Wが下方から持ち上げられて増加した見かけの液面の高さのことをいう。反応容器20の流入部201から空気を送り込み、試料液Wをバブリングすることにより、(1)試料液量あたりの紫外線受光量が増大し、酸化分解効率が高くなる、(2)酸化分解反応の光触媒として使用される酸化チタンが試料液中で沈殿することを防ぎ、懸濁・分散状態が維持されるため、酸化分解効率が高くなる、(3)酸化分解により生じた二酸化炭素が二酸化炭素ガスとして試料液中から放出される、という効果を有する。
前述したように、本実施形態においては、気体は、気体移送手段により酸化分解部2の反応容器20と二酸化炭素吸収部3の吸収容器30との間を循環するように構成されている。すなわち、気体流路L4、エアポンプ5、気体流路L2、コック22及び流路L1を介して流入部201に流入した気体は、反応容器20内で発生した二酸化炭素を含む気体A2として、この反応容器20の流出部202から流出する。この二酸化炭素を含む気体A2は、気体流路L3を介して流入部301から吸収容器30内に流入し、吸収液31を通ることにより、気体A2に含まれていた二酸化炭素が吸収除去される。二酸化炭素が除去された気体A1は、吸収容器30の流出部302から流出し、気体流路L4を介してエアポンプ5に戻るように構成されている。それゆえ、一定時間、気体移送手段により気体を循環させることで、反応容器20で発生した二酸化炭素を吸収容器30の吸収液302に確実に吸収させることができ、全有機炭素濃度を高い精度で測定することができる。また、反応容器20で発生した二酸化炭素を含む気体A2は吸収容器30に吸引されるように循環するため、反応容器20で放出された二酸化炭素を吸収容器30に確実に吸引することができ、全有機炭素濃度を高い精度で測定することができる。
また、紫外線光源21を点灯させる前に、測定装置1内を循環する気体を、気体移送手段により、気体流路L2、コック22及び流路L1を介して反応容器20の流入部201に流入させ、反応容器20の流出部202から流出させ、気体流路L3を介して吸収容器30の流入部301から流入させ、吸収液31を通過させる。これにより、有機物の酸化分解の前に、あらかじめ気体中に含まれる二酸化炭素を確実に吸収液31に吸収させて除去することができる。それゆえ、紫外線光源を点灯させて酸化分解を開始した後の気体の循環においては、酸化分解で生じる以外の二酸化炭素は測定装置1内に混入せず、全有機炭素濃度を高い精度で測定することができる。また、このように、予め気体中の二酸化炭素を確実に除去できることから、測定装置1に使用する気体として、室内の空気を好適に用いることができる。それゆえ、二酸化炭素を含まない空気や窒素ガス等を別途用意する必要はなく、簡単かつコストをかけずに測定を行うことができる。なお、吸収容器30の形状を工夫することにより、気体を循環せずに、二酸化炭素を含まない気体を反応容器20の流入部201から流出部202、吸収容器の流入部301から流出部302を経て送気し、気体流路L4をエアポンプ5に接続しない方法によって二酸化炭素を確実に吸収してもよい。
試料液W中の有機物の酸化分解及び気体移送手段による二酸化炭素や気体の循環を行っている間に、反応容器20、吸収容器30、流路L0〜L1及び/又は気体流路L2〜L4等を介して外部との間で二酸化炭素が出入すると、酸化分解によって生成した二酸化炭素の量を正確に測定できなくなるおそれがある。それゆえ、反応容器20は、紫外線が透過しやすく、かつ、二酸化炭素が透過しにくい素材を使用し、吸収容器30、流路L0〜L1及び気体流路L2〜L4等も二酸化炭素が透過しにくい素材を使用する必要がある。特に限定されないが、例えば、反応容器20には、紫外線をほとんど吸収せず、二酸化炭素透過係数(二酸化炭素分圧が水銀柱1cmの時、厚さ1mm、面積1cm2、1秒あたりの透過cc)が2×10−9cc/mm・cm2・s・cmHg以下のフッ素系樹脂製のものが好適に用いられる。吸収容器30又は流路L0〜L4等については、二酸化炭素透過係数が小さく(例えば2×10−9cc/mm・cm2・s・cmHg以下)、厚さが0.5mm以上のプラスチック素材、金属又はガラス等のガス透過性の低い素材が好適に用いられる。
紫外線光源21は、反応容器20に近接して紫外線を照射するように配置されており、ソケット210を介して電源(図示せず)と接続されている。紫外線光源21としては、紫外線を発光できるものであればよいが、具体的には長波長紫外線ランプ、中波長紫外線ランプ、低波長紫外線ランプ、低圧水銀ランプ又は紫外線LED等が用いられる。特に、光触媒である酸化チタンの酸化効率を高める観点から、波長360nm付近の紫外線を発光するブラックライトランプが好適に用いられる。また、本実施形態の紫外線光源21としては、コンパクトであり電力量が20W以上と比較的大きいU字型のブラックライトランプが用いられているが、複数の直管型のブラックライトランプを並列して構成したもの等も好適に用いられる。このように、複数の照射面を有する紫外線光源21を用いることにより、複数の方向から反応容器20に紫外線を照射できるため、酸化分解効率が向上する。また、短い酸化分解時間で、試料液中の有機物を分解することも可能である。
反応容器20と紫外線光源21とは、酸化分解効率を高めるため、近接して配置されている。本実施形態においては、U字型のブラックライト蛍光ランプの2つの管の中央部に、反応容器20を密着させて配置させている。2つの管の中央部に反応容器20を配置させることで、両方向から紫外線が近距離で同時に照射され、反応容器20内の試料液Wが受ける紫外線受光量が大きくなると共に試料液Wが好適に加温され得る。すなわち、試料液Wが加温されるように反応容器20を紫外線光源21に近接させて配置することが好ましく、試料液Wの温度を60℃以上とすることで、酸化分解効率が高まることから、反応容器20を紫外線光源21に密着させ、試料液Wの温度が60℃以上となるように配置することがさらに好ましい。さらに、反射板を紫外線光源21と反応容器20の外周や紫外線光源21の裏側等に配置し、反応容器20に直接照射されなかった紫外線をこの反射板で反射させることにより反応容器20に照射するように構成することもできる。
次に、図2を参照しつつ、全有機炭素の濃度の測定方法及び本実施形態に係る全有機炭素濃度の測定装置の使用方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る全有機炭素の濃度の測定方法は、試料液Wを準備し、装置内に含まれている二酸化炭素を除去する前準備工程S0、試料液Wに含まれる有機物を酸化分解し、二酸化炭素を発生させる工程S1、発生した二酸化炭素を試料液Wから放出させる工程S2、放出させた二酸化炭素を吸収液31に吸収させる工程S3、吸収液31に吸収された二酸化炭素と難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンとを反応させて、難溶性の炭酸塩を形成して不溶化させる工程S4、吸収液31の濁度を測定する工程S5、及び測定された濁度の値からTOC濃度を求める工程S6から構成される。
(前準備工程)
まず、図2に示す前準備工程S0について説明する。試料液Wを試料液入口23にシリンジ等を用いて注入する。試料液Wは流路L0、コック22、流路L1を介して反応容器20の流入口201から反応容器20内部に流入する。次に、吸収容器30内に吸収液31を準備した後、エアポンプ5を作動させて反応容器20及び吸収容器30間の空気の循環を行う。吸収容器30の流出部302及び気体流路L4を介してエアポンプ5によって駆動された空気A1は、気体流路L2、コック22、流路L1を介して反応容器20の流入部201から流入し、反応容器20内の試料液Wをバブリングする。そして、反応容器20の流出部202からは反応容器20内の空気が流出し、流路L3を介して吸収容器30の流入部301より吸収液31内に流入する。エアポンプ5による空気の循環を一定時間行った後、エアポンプ5を一旦止め、吸収液31の濁度を濁度計40により測定し、ブランク値とする。
まず、図2に示す前準備工程S0について説明する。試料液Wを試料液入口23にシリンジ等を用いて注入する。試料液Wは流路L0、コック22、流路L1を介して反応容器20の流入口201から反応容器20内部に流入する。次に、吸収容器30内に吸収液31を準備した後、エアポンプ5を作動させて反応容器20及び吸収容器30間の空気の循環を行う。吸収容器30の流出部302及び気体流路L4を介してエアポンプ5によって駆動された空気A1は、気体流路L2、コック22、流路L1を介して反応容器20の流入部201から流入し、反応容器20内の試料液Wをバブリングする。そして、反応容器20の流出部202からは反応容器20内の空気が流出し、流路L3を介して吸収容器30の流入部301より吸収液31内に流入する。エアポンプ5による空気の循環を一定時間行った後、エアポンプ5を一旦止め、吸収液31の濁度を濁度計40により測定し、ブランク値とする。
この操作により、各流路L1〜L4、反応容器20及び吸収容器30の内部に存在していた二酸化炭素を吸収液31に吸収させて除去することができる。なお、予め、試料液WのpHを酸性範囲の3〜7程度に調整しておくことにより、試料液W中に含まれる無機炭素が二酸化炭素ガスとして放出され、吸収液31に吸収される。それゆえ、試料液Wの有機炭素濃度をより高い精度で測定できる。
(酸化分解工程)
次に、酸化分解反応に係る工程S1について説明する。反応容器20内に十分量の酸化チタンを添加し、試料液WのpH値を酸性範囲の3〜7程度に調整する。なお、試料液Wへの酸化チタンの添加及びpHの調整は前準備工程S0で行われてもよい。次に、紫外線光源21を点灯し、紫外線を反応容器20に照射する。本実施形態における紫外線光源21はU字型形状で複数の照射面を有することから、反応容器20内部の試料液Wに対し、複数の方向から紫外線が照射される。試料液Wに紫外線を照射することにより、試料液Wに含まれる有機物が酸化分解され、二酸化炭素が発生する。このとき、紫外線光源21は反応容器20に密着して配置されているため、紫外線光源21からの照射熱を受けて試料液Wが徐々に加温され、酸化分解効率が高められる。
次に、酸化分解反応に係る工程S1について説明する。反応容器20内に十分量の酸化チタンを添加し、試料液WのpH値を酸性範囲の3〜7程度に調整する。なお、試料液Wへの酸化チタンの添加及びpHの調整は前準備工程S0で行われてもよい。次に、紫外線光源21を点灯し、紫外線を反応容器20に照射する。本実施形態における紫外線光源21はU字型形状で複数の照射面を有することから、反応容器20内部の試料液Wに対し、複数の方向から紫外線が照射される。試料液Wに紫外線を照射することにより、試料液Wに含まれる有機物が酸化分解され、二酸化炭素が発生する。このとき、紫外線光源21は反応容器20に密着して配置されているため、紫外線光源21からの照射熱を受けて試料液Wが徐々に加温され、酸化分解効率が高められる。
酸化分解工程S1においては、エアポンプ5を動かして、反応容器20から吸収容器30の間の空気の循環を行うことが好ましい。エアポンプ5から移送された空気A1は気体流路L2、コック22、流路L1を介して反応容器20の流入部201から流入し、反応容器20内の試料液Wをバブリングする。バブリングは、試料液Wの反応容器20内での液面の高さと比べて、バブリングによって持ち上げられた見かけの液面の高さが15%〜70%増加するようにバブリングされることが好ましい。バブリングの調整は、具体的には、エアポンプ5の通気線速度を調整することで行われる。酸化分解時に、試料液Wがバブリングされることによって、試料液量あたりの紫外線受光量が増大し、酸化分解効率が高くなる。また、このバブリングにより光触媒の酸化チタンが試料液W中で沈殿することを防ぎ、懸濁・分散状態を維持するため、酸化分解効率がさらに高められるという効果をも有する。
(二酸化炭素放出工程)
次に、発生した二酸化炭素を試料液Wから放出させる工程S2について説明する。酸化分解により発生した二酸化炭素は、試料液W中で二酸化炭素又はイオン化して炭酸イオン等の無機炭素イオンの状態で存在する。試料液Wを酸性条件とし、試料液Wをバブリングすることにより、発生した二酸化炭素を二酸化炭素ガスとして試料液W中から効率よく放出させることができる。本発明では、上述の酸化分解工程S1と二酸化炭素放出工程S2とは連続して行われる。すなわち、酸化分解により発生した二酸化炭素が、試料液W中に炭酸イオン等となって溶解せずに、二酸化炭素ガスとして順次放出されるよう構成されている。具体的には、反応容器20内で試料液Wから発生した二酸化炭素は、試料液WのpHが酸性範囲に調整されており、反応容器20の底部からのバブリングも適宜なされていることから、二酸化炭素ガスとして試料液Wから直ちに放出される。放出された二酸化炭素は、反応容器20の流出口202から気体流路L3を通って吸収容器30に吸引される。
次に、発生した二酸化炭素を試料液Wから放出させる工程S2について説明する。酸化分解により発生した二酸化炭素は、試料液W中で二酸化炭素又はイオン化して炭酸イオン等の無機炭素イオンの状態で存在する。試料液Wを酸性条件とし、試料液Wをバブリングすることにより、発生した二酸化炭素を二酸化炭素ガスとして試料液W中から効率よく放出させることができる。本発明では、上述の酸化分解工程S1と二酸化炭素放出工程S2とは連続して行われる。すなわち、酸化分解により発生した二酸化炭素が、試料液W中に炭酸イオン等となって溶解せずに、二酸化炭素ガスとして順次放出されるよう構成されている。具体的には、反応容器20内で試料液Wから発生した二酸化炭素は、試料液WのpHが酸性範囲に調整されており、反応容器20の底部からのバブリングも適宜なされていることから、二酸化炭素ガスとして試料液Wから直ちに放出される。放出された二酸化炭素は、反応容器20の流出口202から気体流路L3を通って吸収容器30に吸引される。
(二酸化炭素吸収工程)
次に、発生した二酸化炭素を吸収液31に吸収させる工程S3について説明する。発生した二酸化炭素を含む気体A2は気体流路L3を介し、さらに流入口301を介して吸収容器30内に流入する。流入口301は吸収液31の液面の下部に設けられているので、気体A2中の二酸化炭素は、アルカリ性を呈する吸収液31に吸収されて炭酸イオンを形成し、吸収液31内に留まる。吸収液31を通過した後の気体A1は、吸収容器30の流出部302から気体流路L4、エアポンプ5、気体流路L2、コック22、流路L1、反応容器20及び気体流路L3を介して吸収容器30の流入部301に戻る。それゆえ、吸収液31を通過した後の気体A1に二酸化炭素が残存したとしても、十分に気体を循環させることによって、吸収液31内に二酸化炭素を確実に吸収させることができる。
次に、発生した二酸化炭素を吸収液31に吸収させる工程S3について説明する。発生した二酸化炭素を含む気体A2は気体流路L3を介し、さらに流入口301を介して吸収容器30内に流入する。流入口301は吸収液31の液面の下部に設けられているので、気体A2中の二酸化炭素は、アルカリ性を呈する吸収液31に吸収されて炭酸イオンを形成し、吸収液31内に留まる。吸収液31を通過した後の気体A1は、吸収容器30の流出部302から気体流路L4、エアポンプ5、気体流路L2、コック22、流路L1、反応容器20及び気体流路L3を介して吸収容器30の流入部301に戻る。それゆえ、吸収液31を通過した後の気体A1に二酸化炭素が残存したとしても、十分に気体を循環させることによって、吸収液31内に二酸化炭素を確実に吸収させることができる。
(不溶化工程)
吸収液31に吸収された二酸化炭素を難溶性の炭酸塩として不溶化させる工程S4について説明する。吸収容器30内の吸収液31に吸収された二酸化炭素(炭酸イオン)は、吸収液31中で難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンと反応せしめることによって、難溶性の炭酸塩を生成する。具体的には、吸収液31に予め含ませるか、二酸化炭素を吸収させた後に加えられるアルカリ土類金属イオンと反応して、アルカリ土類金属炭酸塩を形成する。アルカリ土類金属炭酸塩は、溶解度がきわめて小さいため、不溶化して微小粒子が形成され、吸収液31が濁る。
吸収液31に吸収された二酸化炭素を難溶性の炭酸塩として不溶化させる工程S4について説明する。吸収容器30内の吸収液31に吸収された二酸化炭素(炭酸イオン)は、吸収液31中で難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンと反応せしめることによって、難溶性の炭酸塩を生成する。具体的には、吸収液31に予め含ませるか、二酸化炭素を吸収させた後に加えられるアルカリ土類金属イオンと反応して、アルカリ土類金属炭酸塩を形成する。アルカリ土類金属炭酸塩は、溶解度がきわめて小さいため、不溶化して微小粒子が形成され、吸収液31が濁る。
(濁度の測定及びTOC濃度の算出)
次に、濁度の測定に係る工程S5及びTOC濃度の測定に係る工程S6について説明する。前述の不溶化工程S4により、微小粒子を含む吸収液31の濁度を濁度計40を用いて測定する。測定して得た濁度値を標準物質により得られた検量線にあてはめて、TOC濃度を求める。その際、得られた測定値から前準備工程S0で得られたブランク値を差し引くことにより、より精度の高い値が得られる。
次に、濁度の測定に係る工程S5及びTOC濃度の測定に係る工程S6について説明する。前述の不溶化工程S4により、微小粒子を含む吸収液31の濁度を濁度計40を用いて測定する。測定して得た濁度値を標準物質により得られた検量線にあてはめて、TOC濃度を求める。その際、得られた測定値から前準備工程S0で得られたブランク値を差し引くことにより、より精度の高い値が得られる。
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
1.濁度による炭素濃度の定量
図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置において、二酸化炭素測定部の吸収容器(アルカリ性を呈する吸収液は入っていない)に炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液を8mL入れた。次に、塩化ストロンチウム濃度が10ミリモル/L、25ミリモル/L、50ミリモル/L又は100ミリモル/Lとなるように、上述の炭酸ナトリウム水溶液に塩化ストロンチウム水溶液を添加し、炭酸ストロンチウムの微小粒子を生成させた。各塩化ストロンチウム濃度における炭酸ストロンチウム微小粒子を含む液の濁度を濁度計で測定し、塩化ストロンチウム濃度と炭酸ストロンチウム微小粒子による液の濁度との関係を観察した。同様の試験を15mg−C/L及び5mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液についても行った。
図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置において、二酸化炭素測定部の吸収容器(アルカリ性を呈する吸収液は入っていない)に炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液を8mL入れた。次に、塩化ストロンチウム濃度が10ミリモル/L、25ミリモル/L、50ミリモル/L又は100ミリモル/Lとなるように、上述の炭酸ナトリウム水溶液に塩化ストロンチウム水溶液を添加し、炭酸ストロンチウムの微小粒子を生成させた。各塩化ストロンチウム濃度における炭酸ストロンチウム微小粒子を含む液の濁度を濁度計で測定し、塩化ストロンチウム濃度と炭酸ストロンチウム微小粒子による液の濁度との関係を観察した。同様の試験を15mg−C/L及び5mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液についても行った。
結果を図3に示す。横軸は塩化ストロンチウム濃度を示し、縦軸は濁度を示している。炭素濃度が20mg−C/Lの場合をみると、25ミリモル/L以上の塩化ストロンチウム濃度において、濁度は一定の値(約0.69)を示した。このことから、炭素濃度が20mg−C/L(1.67ミリモル/L)の炭酸ナトリウム水溶液中の炭酸イオンを十分に炭酸ストロンチウムとして不溶化させるためには、反応当量の約15倍の塩化ストロンチウムを要することがわかった。同様に、炭素濃度が15mg−C/L(1.26ミリモル/L)の場合には、25ミリモル/L以上の塩化ストロンチウム濃度にて濁度は一定の値(約0.52)を示し、反応当量の約20倍の塩化ストロンチウムを要することが分かった。また、炭素濃度が5mg−C/L(0.42ミリモル/L)の場合には、約50ミリモル/L以上の塩化ストロンチウム濃度にて濁度は一定の値(約0.17)を示し、反応当量の約120倍の塩化ストロンチウムを要することが分かった。次に、上記一定の値を示した濁度と各炭素濃度との関係を図4に示す。横軸は炭素濃度(mg−C/L)を、縦軸は濁度を示している。炭素濃度と濁度とは直線関係になり、この検量線から測定された濁度に対応する炭素濃度を求められることが示された。
これらのことより、炭酸イオンを有する水溶液に塩化ストロンチウム等のアルカリ土類金属塩を添加することにより、難溶性のアルカリ土類金属炭酸塩の微小粒子を形成させ、当該微小粒子の形成により濁った液の濁度を測定することで、水溶液に含まれている炭素濃度を求められることが見出された。
2.反応容器で発生した二酸化炭素の吸収及び濁度による炭素濃度の定量
図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置において、二酸化炭素測定部の吸収容器に100ミリモル/Lの塩化ストロンチウム水溶液8mLを入れ、次に約1.3mmolの水酸化リチウムを入れて溶解させた。次に、酸化分解部の反応容器(幅15mm×高さ300mm×奥行3mm)に炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液を6mL入れ、炭酸ナトリウム水溶液のpHが4となるように硫酸を添加した。エアポンプを用いて反応容器と吸収容器との間を線速度130cm/minで循環通気し、反応容器内をバブリングさせると共に反応容器内で発生した二酸化炭素ガスを吸収容器に吸引させた。所定の循環通気時間における吸収容器内の液の濁度を測定し、循環通気時間と濁度との関係を観察した。結果を表1に示す。実施例1の炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液について測定された濁度の結果も表1に併せて示す。
図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置において、二酸化炭素測定部の吸収容器に100ミリモル/Lの塩化ストロンチウム水溶液8mLを入れ、次に約1.3mmolの水酸化リチウムを入れて溶解させた。次に、酸化分解部の反応容器(幅15mm×高さ300mm×奥行3mm)に炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液を6mL入れ、炭酸ナトリウム水溶液のpHが4となるように硫酸を添加した。エアポンプを用いて反応容器と吸収容器との間を線速度130cm/minで循環通気し、反応容器内をバブリングさせると共に反応容器内で発生した二酸化炭素ガスを吸収容器に吸引させた。所定の循環通気時間における吸収容器内の液の濁度を測定し、循環通気時間と濁度との関係を観察した。結果を表1に示す。実施例1の炭素濃度が20mg−C/Lの炭酸ナトリウム水溶液について測定された濁度の結果も表1に併せて示す。
3分間の循環通気により、実施例1で行われた吸収容器内で炭酸イオンとストロンチウムイオンとを反応させた際の測定値と一致する濁度が測定された。このことから、反応容器内の水溶液を酸性条件下で短時間バブリングすることにより、水溶液に含まれる炭酸イオンのほぼ全量が二酸化炭素ガスとして水溶液中から放出されること、放出された二酸化炭素ガスのほぼ全量がアルカリ性溶液に吸収されること、そして、吸収された二酸化炭素はアルカリ土類金属イオンと反応して難溶性のアルカリ土類金属炭酸塩の微小粒子を形成することが示された。すなわち、アルカリ土類金属炭酸塩の微小粒子の形成により濁った液の濁度を測定することで、反応容器内の水溶液に含まれている炭素濃度を求められることがわかった。
3.下水及び産業排水のTOC濃度の濁度による測定
上記図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置を用いて、以下の方法で2種の下水処理水と2種の産業排水のTOC濃度を測定した。酸化分解部の反応容器に下水等の各試料液を6mLと、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように入れ、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。二酸化炭素測定部の吸収容器に100ミリモル/Lの塩化ストロンチウム水溶液8mLを入れ、次に約1.3ミリモルの水酸化リチウムを入れて溶解させた。27WのU字型紫外線ランプ(三共電気株式会社、コンパクト型BLBランプ、品番FPL27BLB)を点けて反応容器を照射し、エアポンプを用いて反応容器と吸収容器との間を線速度130cm/minで循環通気し、反応容器内をバブリングさせると共に反応容器内で発生した二酸化炭素ガスを吸収容器に吸引させた。この時の試料液の温度は75℃であり、試料液の液面高さはバブリングにより約40%増加していた。紫外線照射及び通気循環を20分間行った後の吸収容器内の液の濁度を測定し、TOC濃度を求めた。また、同試料液について、燃焼酸化−NDIR式のTOC分析装置(株式会社島津製作所、TOC5000型)を用いてTOC濃度を測定した。
上記図1に示す本発明の一実施形態に記載の装置を用いて、以下の方法で2種の下水処理水と2種の産業排水のTOC濃度を測定した。酸化分解部の反応容器に下水等の各試料液を6mLと、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように入れ、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。二酸化炭素測定部の吸収容器に100ミリモル/Lの塩化ストロンチウム水溶液8mLを入れ、次に約1.3ミリモルの水酸化リチウムを入れて溶解させた。27WのU字型紫外線ランプ(三共電気株式会社、コンパクト型BLBランプ、品番FPL27BLB)を点けて反応容器を照射し、エアポンプを用いて反応容器と吸収容器との間を線速度130cm/minで循環通気し、反応容器内をバブリングさせると共に反応容器内で発生した二酸化炭素ガスを吸収容器に吸引させた。この時の試料液の温度は75℃であり、試料液の液面高さはバブリングにより約40%増加していた。紫外線照射及び通気循環を20分間行った後の吸収容器内の液の濁度を測定し、TOC濃度を求めた。また、同試料液について、燃焼酸化−NDIR式のTOC分析装置(株式会社島津製作所、TOC5000型)を用いてTOC濃度を測定した。
本発明の方法によって、コロイド状物質などを含む比較的高濃度の下水や産業排水などの有機炭素も精度良く分析できることが実証された。
4.紫外線光源による有機物の酸化分解率
紫外線光源を有する湿式酸化式のTOC濃度測定装置では、装置全体を小型化するために、通常、6W〜8W程度の短い直管型紫外線ランプが1本用いられている。そこで、上記実施例3で用いた全有機炭素濃度の測定装置において、一般的に用いられている直管型ブラックライトランプ(電力8W、長さ287mm、三共電気株式会社製品、品番FL8BLB)と、同程度の長さを有し、本発明で使用されるU字型ブラックライトランプ(電力27W、長さ265mm、三共電気株式会社、品番FPL27BLB)の酸化分解反応の効率を調べた。
紫外線光源を有する湿式酸化式のTOC濃度測定装置では、装置全体を小型化するために、通常、6W〜8W程度の短い直管型紫外線ランプが1本用いられている。そこで、上記実施例3で用いた全有機炭素濃度の測定装置において、一般的に用いられている直管型ブラックライトランプ(電力8W、長さ287mm、三共電気株式会社製品、品番FL8BLB)と、同程度の長さを有し、本発明で使用されるU字型ブラックライトランプ(電力27W、長さ265mm、三共電気株式会社、品番FPL27BLB)の酸化分解反応の効率を調べた。
実施例3で用いた全有機炭素濃度の測定装置に上記2種のブラックライトランプを各々取付け、反応容器(幅15mm×高さ300mm×奥行3mm)を各ブラックライトランプに密着して取付けた。酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。実施例3と同様の方法で、反応時間を10分〜50分として各ブラックライトランプを使用した場合の吸収液の濁度を測定してTOC濃度を求め、酸化分解率を求めた。結果を表3に示す。
この結果、複数の紫外線照射部を有し、複数方向から反応容器を紫外線照射できるU字型ブラックライトランプを用いることにより、従来の直管型ブラックライトランプ1本を用いたものより、大幅に効率的に酸化分解できることがわかった。さらに、U字型ブラックライトランプを使用した場合、酸化薬剤を用いることなく、20分以内の酸化分解時間で、試料液中の有機物が100%分解されることが示された。なお、本実施例で使用したU字型ブラックライトランプの代わりに、複数本の直管型ブラックライトランプを用いて複数の方向から紫外線を照射することによっても分解率を向上させることができる。
5.温度による有機物の酸化分解率
試料液に含まれる有機物の酸化分解効率と、試料液の温度との関係を調べた。試料液の加温は、紫外線ランプの紫外光照射による加熱により行われ、具体的には、紫外線ランプと反応容器との配置距離及びファンの空冷により調節した。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。試料液の温度が40℃〜90℃となるように、紫外線ランプと反応容器との配置距離を調節した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表4に示す。
試料液に含まれる有機物の酸化分解効率と、試料液の温度との関係を調べた。試料液の加温は、紫外線ランプの紫外光照射による加熱により行われ、具体的には、紫外線ランプと反応容器との配置距離及びファンの空冷により調節した。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。試料液の温度が40℃〜90℃となるように、紫外線ランプと反応容器との配置距離を調節した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表4に示す。
この結果、本実施例の条件においては、試料液の温度が40℃ではやや分解率が低いが、約60℃以上の条件において、試料液に含まれるほとんどの有機物を酸化分解できることがわかった。また、試料液を90℃とした場合には、試料液の蒸発が著しくなった。このように、完全分解できる温度は有機物の種類や酸化チタン濃度、反応時間等によって異なるが、温度が高い方が反応速度が高くなり、分解率が上昇する。これらのことから、試料液中の酸化分解反応の効率を高めるため、反応容器を紫外線ランプに近接させて配置する等して、反応容器内の試料液を90℃以下の適切な温度、すなわち、60℃〜90℃に加温することが有効であることが示された。
6.バブリングによる有機物の酸化分解率
試料液の酸化分解効率を高めるため、試料液の紫外線照射量を増やす方法を検討した。そこで、反応容器の下部から空気を送り込み、試料液をバブリングして、試料液量あたりの紫外線受光量を増大させることを検討した。また、この方法では、酸化分解反応の光触媒として主に使用される酸化チタンが反応容器の底部に沈殿してしまい、光触媒として作用しない状態となることを防ぐこともできると考えられた。上記実施例3で使用した測定装置の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。エアポンプを線流速20cm/min〜250cm/minとなるように調整して、反応容器内の試料液をバブリングさせた。バブリングにより増加した試料液の水面高さを測定し、受光面積増加率として求めた。さらに、実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表5に示す。
試料液の酸化分解効率を高めるため、試料液の紫外線照射量を増やす方法を検討した。そこで、反応容器の下部から空気を送り込み、試料液をバブリングして、試料液量あたりの紫外線受光量を増大させることを検討した。また、この方法では、酸化分解反応の光触媒として主に使用される酸化チタンが反応容器の底部に沈殿してしまい、光触媒として作用しない状態となることを防ぐこともできると考えられた。上記実施例3で使用した測定装置の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。エアポンプを線流速20cm/min〜250cm/minとなるように調整して、反応容器内の試料液をバブリングさせた。バブリングにより増加した試料液の水面高さを測定し、受光面積増加率として求めた。さらに、実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表5に示す。
この結果、本実施例の条件においては、通気線速度が20cm/minでは一部の酸化チタンが沈殿し、水面高さも6%しか増加しなかった。また、通気線速度を30cm/min以上に調整して水面高さを約10%以上増加させることにより、反応容器内で酸化チタンは沈殿せず、試料液に懸濁されている状態を維持した。しかし、受光面積が9%しか増加しないため、酸化分解率はやや低い値であった。また、通気線速度を250cm/minとした場合には、液の一部が反応容器からあふれることがあった。それゆえ、水面高さの増加率は15〜70%程度が好ましく、このように水面高さを増加させることによって、酸化分解効率が高められることがわかった。
このように、試料液中に気泡を発生させることによって、反応容器内の酸化チタンが常に浮遊した状態に維持され、試料液量当たりの受光量を増やすことができ、試料液に含まれる有機物を効率的に酸化分解できることを見出した。
7.光触媒の量による有機物の酸化分解率
試料液に添加する光触媒の量と、有機物の酸化分解効率との関係を調べた。光触媒として、具体的には、アナターゼ型酸化チタン粉末を用いた。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度を50mg/L〜500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表6に示す。
試料液に添加する光触媒の量と、有機物の酸化分解効率との関係を調べた。光触媒として、具体的には、アナターゼ型酸化チタン粉末を用いた。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタンを濃度を50mg/L〜500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHを硫酸で3.5に調整した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表6に示す。
この結果、本発明において、実施例の条件のように高濃度のTOC(炭素換算で18mg/L)を測定する際には、酸化チタン濃度を500mg/Lとすることで、試料液に含まれる有機物をほとんど全て酸化分解できることが示された。なお、本実施例で用いた酸化チタンより有機物の酸化分解促進効果が大きな酸化チタンを用いれば、酸化チタンの添加濃度を500mg/L以下とすることも可能であると考えられる。
8.試料液のpHによる有機物の酸化分解率
試料液のpHと、有機物の酸化分解効率との関係を調べた。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタン濃度が500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHで2.2〜12.6に調整した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表7に示す。
試料液のpHと、有機物の酸化分解効率との関係を調べた。実施例3で使用した測定装置の酸化分解部の反応容器に、試料液として炭素換算で18mg/Lのグルコース標準液6mLを入れた後、酸化チタン濃度が500mg/Lとなるように添加し、試料液のpHで2.2〜12.6に調整した。実施例3と同様の方法で、20分間反応容器での酸化分解を行い、吸収液の濁度を測定してTOC濃度と酸化分解率を求めた。結果を表7に示す。
この結果より、試料液のpHがおよそ3〜9であればほぼ完全に酸化分解するが、pHが3以下又は10以上になると酸化分解率が低下することが示された。したがって、試料液中に含まれる有機物の酸化分解効率を高めるためには、試料液のpHは3超9未満とすることが好ましいことがわかった。他方、有機物の酸化分解によって発生した二酸化炭素を二酸化炭素ガスとして試料液中から放出させるためには、試料液中で発生した二酸化炭素がイオン化し難い条件、すなわち酸性条件とする必要があるため、試料液のpHは3超7未満とすることが好ましい。
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
1 全有機炭素濃度の測定装置
2 酸化分解部
20 反応容器
201、301 流入部
202、302 流出部
21 紫外線光源
210 ソケット
22 コック
23 試料液入口
3 二酸化炭素吸収部
30 吸収容器
31 吸収液
4 二酸化炭素測定部
40 濁度計
41 電源
5 エアポンプ
L0〜L1 流路
W 試料液
L2〜L4 気体流路
A1〜A2 気体
2 酸化分解部
20 反応容器
201、301 流入部
202、302 流出部
21 紫外線光源
210 ソケット
22 コック
23 試料液入口
3 二酸化炭素吸収部
30 吸収容器
31 吸収液
4 二酸化炭素測定部
40 濁度計
41 電源
5 エアポンプ
L0〜L1 流路
W 試料液
L2〜L4 気体流路
A1〜A2 気体
Claims (6)
- 試料液に紫外線を照射し、該試料液に含まれる有機物を酸化分解して二酸化炭素を発生させ、該試料液から二酸化炭素を放出させる酸化分解部と、放出された二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部と、吸収された二酸化炭素の量を測定する測定部とを有し、
前記酸化分解部は、前記試料液に含まれる有機物の酸化分解を行う反応容器と、該反応容器を照射するように配置される紫外線光源と、該反応容器に接続され該反応容器内の試料液をバブリングする気体移送手段とを備え、
前記二酸化炭素吸収部は、前記反応容器から移送された二酸化炭素を吸収するアルカリ性を呈し、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンを含む液を収容する吸収容器を備え、
前記測定部は、前記吸収容器内の前記液の濁度を測定する濁度計を備え、
前記気体移送手段は、気体を前記反応容器と前記吸収容器とを循環して移送するように構成されていることを特徴とする全有機炭素濃度の測定装置。 - 前記紫外線光源は、複数の照射部を有し、前記反応容器を複数の方向から照射すると共に前記反応容器内の試料液を加温するように近接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の全有機炭素濃度の測定装置。
- 前記気体移送手段は、前記反応容器内の試料液をバブリングすることにより、該試料液の液面の高さを15%〜70%増加させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の全有機炭素濃度の測定装置。
- 前記金属イオンはアルカリ土類金属イオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の全有機炭素濃度の測定装置。
- 前記アルカリ土類金属イオンはストロンチウムイオンであることを特徴とする請求項4に記載の全有機炭素濃度の測定装置。
- 試料液に紫外線を照射して該試料液に含まれる有機物を酸化分解し、二酸化炭素を発生させる工程と、
前記試料液を酸性条件下でバブリングして、該試料液から二酸化炭素を放出させる工程と、
放出された二酸化炭素をアルカリ性を呈する吸収液に吸収させる工程と、
前記吸収液に吸収された二酸化炭素と、難溶性の炭酸塩を形成させる金属イオンとを反応させて、前記吸収液中に難溶性の炭酸塩を生成させる工程と、
難溶性の炭酸塩を含む前記吸収液の濁度を測定する工程と、を有し、
前記放出された二酸化炭素をアルカリ性を呈する吸収液に吸収させる工程には、前記二酸化炭素を含む気体を前記吸収液に通過させた後、該通過させた気体を前記試料液をバブリングするように移送させる循環工程が含まれることを特徴とする全有機炭素の測定方法。
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