この発明に係る油圧制御装置は、車両や航空機、船舶、産業用機械などの各種の分野の機械・装置類に用いることができる。この発明は、要は、油圧により変速比またはトルク容量のうち、少なくとも一方が制御されるように構成された動力伝達装置の油圧室、あるいは油圧系統に、油圧を給排する油圧制御装置に適用することができる。この発明において、「油圧ポンプの吐出油圧をアキュムレータに蓄圧する制御を開始しても動力伝達装置に供給される油圧が変化しないとき」には、アキュムレータに油圧を蓄圧する制御を開始する前に、動力伝達装置に供給される油圧が変化しない状況であると予測されたこと、および、動力伝達装置に供給される油圧が変化しないように積極的にバルブを制御することの両方が含まれる。
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。図2には、この発明に係る油圧制御装置55を搭載した車両1のパワートレーンが示されており、図3には、車両の動力伝達装置に供給される油圧を制御する油圧制御装置55が示されている。この車両1は、走行用の動力源としてエンジン2を有しており、そのエンジン2から駆動輪3に至る動力伝達経路に、流体伝動装置4、前後進切換装置5、無段変速機6などが設けられている。前記エンジン2は、燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換して出力する動力装置であり、エンジン2としては内燃機関、例えば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジンなどを用いることができる。
前記流体伝動装置4は、入力要素と出力要素との間で流体の運動エネルギにより動力伝達をおこなう伝動装置であり、入力要素としてのポンプインペラ7、および出力要素としてのタービンランナ8を有している。そして、ポンプインペラ7はエンジン2の出力軸であるクランクシャフト9と動力伝達可能に接続され、タービンランナ8はインプットシャフト10と動力伝達可能に接続されている。このインプットシャフト10は動力を伝達する要素として回転可能に設けられており、そのインプットシャフト10とクランクシャフト9との間で摩擦力により動力伝達をおこなうロックアップクラッチ11が設けられている。このロックアップクラッチ11は油圧制御により解放および係合が切り替えられるように構成されている。また流体伝動装置4は、ポンプインペラ7とタービンランナ8との間で伝達されるトルクを増幅することのできるトルクコンバータまたはトルク増幅をおこなうことのできないフルードカップリングのいずれでもよい。この実施例においては、流体伝動装置4としてトルクコンバータを用いているものとし、以下、流体伝動装置4を便宜上「トルクコンバータ4」と記す。
一方、上記前後進切換装置5は、インプットシャフト10の回転方向に対して、無段変速機のプライマリプーリ12の回転方向を正逆に切り換えるための装置である。図2においては、前後進切換装置5としてダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いた例が示されており、その遊星歯車機構は、インプットシャフト10と一体回転するサンギヤ13と、このサンギヤ13と同軸上に設けられたリングギヤ14と、サンギヤ13と噛合されたピニオンギヤ15と、このピニオンギヤ15およびリングギヤ14に噛合されたピニオンギヤ16と、ピニオンギヤ15,16を自転かつ公転可能に保持したキャリヤ17とを有している。このキャリヤ17とプライマリプーリ12とが一体回転するように接続されている。
また、インプットシャフト10とキャリヤ17とを選択的に連結および解放するクラッチC1が設けられている。さらに、リングギヤ14を選択的に固定するブレーキB1が設けられている。このクラッチC1およびブレーキB1は、油圧制御により係合および解放が制御される摩擦係合装置であり、クラッチC1の係合および解放を制御する油圧室18が設けられ、ブレーキB1の係合および解放を制御する油圧室19が設けられている。そして、油圧室18の油圧が高められるとクラッチC1が係合される一方、油圧室18の油圧が低下するとクラッチC1が解放されるように構成されている。すなわち、油圧室18の油圧が増大することにともないクラッチC1のトルク容量が高められる。これに対して、油圧室19の油圧が高められるとブレーキB1が係合される一方、油圧室19の油圧が低下するとブレーキB1が解放される。すなわち、油圧室19の油圧が増大することにともないブレーキB1のトルク容量が高められる。
このクラッチC1およびブレーキB1の具体的な制御を説明すると、D(ドライブ)ポジションが選択されるとクラッチC1が係合され、かつ、ブレーキB1が解放される。すると、エンジントルクがインプットシャフト10に伝達されたとき、インプットシャフト10およびプライマリプーリ12が共に正回転する。これに対して、R(リバース)ポジションが選択されるとクラッチC1が解放され、かつ、ブレーキB1が係合される。すると、エンジントルクがインプットシャフト10に伝達されたとき、リングギヤ14が反力要素となり、プライマリプーリ12が逆回転する。
このようにして、エンジントルクが無段変速機6に伝達される。この無段変速機6は、従来知られているベルト式のものであり、プライマリプーリ12とセカンダリプーリ20とにベルト21を巻き掛けてこれらのプーリ12,20の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ12,20に対するベルト21の巻き掛け半径を変化させることにより、プライマリプーリ12とセカンダリプーリ20との間における変速比を変化させるように構成されている。より具体的に説明すると、各プーリ12,20は、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように配置された可動シーブとを備え、それらの固定シーブと可動シーブとの間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されるように構成されている。そして、プライマリプーリ12には可動シーブをその軸線の方向に前後動させるための油圧室を有する油圧アクチュエータ22が設けられている。一方、セカンダリプーリ20には可動シーブをその軸線の方向に前後動させるための油圧室を有する油圧アクチュエータ23が設けられている。そして、セカンダリプーリ20における油圧アクチュエータ23には、ベルト21を挟み付ける挟圧力を発生させる油圧が供給される。
例えば、油圧アクチュエータ23の油圧が低下するとベルト21に加えられる挟圧力が低下して、無段変速機6のトルク容量が低下する。これに対して、油圧アクチュエータ23の油圧が高められるとベルト21に加えられる挟圧力が増大して、無段変速機6のトルク容量が増大する。なお、油圧アクチュエータ23の油圧が一定に保持されるとベルト21に加えられる挟圧力が一定に保持されて、無段変速機6のトルク容量が一定に保持される。
一方、油圧アクチュエータ22には、ベルト21の巻き掛け半径を変化させて変速比を制御するための油圧が供給される。例えば、油圧アクチュエータ22の油圧が低下すると、プライマリプーリ12におけるベルト21の巻き掛け半径が小さくなる変速、すなわち、ダウンシフトが生じる。これとは逆に、油圧アクチュエータ22の油圧が上昇すると、プライマリプーリ12におけるベルト21の巻き掛け半径が大きくなる変速、すなわち、アップシフトが生じる。なお、油圧アクチュエータ22の油圧が一定に保持されると、プライマリプーリ12におけるベルト21の巻き掛け半径が一定に維持され、変速比が一定に維持される。
つぎに、図3に示された油圧制御装置55の構成を具体的に説明する。図3に示す油圧制御装置55は、エンジン2の出力軸であるクランクシャフト9と動力伝達可能に接続された油圧ポンプ24を有している。クランクシャフト9のトルクにより油圧ポンプ24が駆動されると、オイルパン11に溜められているオイルが油圧ポンプ24に吸入されて、その油圧ポンプ24から油路26へと圧油が吐出される。この油路26に吐出された圧油をトルクコンバータ4側に供給する経路を開閉するプライマリレギュレータバルブ27が設けられている。このプライマリレギュレータバルブ27は入力ポート28および出力ポート29を有しており、入力ポート28は油路26に接続され、出力ポート29には油路30が接続されている。
このプライマリレギュレータバルブ27は、スプールが動作して入力ポート28と出力ポート29とを接続および遮断するように構成されており、そのスプールの動作がソレノイドバルブ(蓄圧切替ソレノイド)31の出力信号により制御されるように構成されている。例えば、ソレノイドバルブ31の出力信号が高圧となるオン(On)状態に制御されると、入力ポート28と出力ポート29とが遮断される。これに対して、ソレノイドバルブ31の出力信号が低圧となるオフ(Off)状態に制御されると、入力ポート28と出力ポート29とが接続される。さらに、油路26と油路30とを接続し、かつ、プライマリレギュレータバルブ27と並列に油路32が設けられている。この油路32にはオリフィス33が設けられている。
さらに、油路30の油圧を制御するセカンダリレギュレータバルブ34が設けられている。このセカンダリレギュレータバルブ34は、入力ポート35およびドレーンポート36,37を有しており、入力ポート35と油路30とが接続され、出力ポート36が油路38を経由して潤滑系統39に接続されている。潤滑系統39はオイルが供給されて潤滑および冷却される部位であり、潤滑系統39には、インプットシャフト10、プライマリプーリ12、セカンダリプーリ20などを支持する軸受、前後進切換装置5を構成する遊星歯車機構が含まれる。さらに、油路30と油路38とを接続する油路53が設けられており、その油路53にはオリフィス54が設けられている。なお、ドレーンポート37は油圧ポンプ24の吸い込み口に接続されている。
さらに、油路30からトルクコンバータ4に至る経路にはロックアップクラッチ11の係合および解放を制御するロックアップコントロールバルブ40が設けられている。このロックアップコントロールバルブ40は、図示しないON/OFFソレノイドバルブの出力信号、および図示しないデューティソレノイドバルブ(DSU)の出力信号が入力されてスプール(図示せず)の作動が切り替えられるように構成されており、そのスプールの作動が切り替えられて圧油の供給経路が変更されて、ロックアップクラッチ11の係合および解放が切り換えられるように構成されている。そして、前記セカンダリレギュレータバルブ34は、油路30の油圧が相対的に低いときはドレーンポート36,37が共に遮断され、油路30の油圧が上昇するとドレーンポート36が開放され、かつ、ドレーンポート37が閉じられ、更に油路30の油圧が上昇すると、ドレーンポート36およびドレーンポート37が共に開放されるように構成されている。
一方、前記油路26には逆止弁41および油路42を介在させてアキュムレータ(蓄圧器)43が接続されている。その逆止弁41は、油圧ポンプ24からアキュムレータ43に向けて圧油が流れる向きでは開き、これとは反対方向の圧油の流れを阻止するように閉弁する一方向弁である。また、アキュムレータ43は、蓄圧室(図示せず)に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。そして、アキュムレータ43は、内部に蓄えられた油圧を油路42に放出して、その油圧を油圧アクチュエータ22,23および油圧室18,19の少なくとも1つに選択的に供給することができるように構成されている。
つぎに、前記油圧アクチュエータ22,23および油圧室18,19に圧油を供給する経路の構成を説明する。まず、油圧アクチュエータ22に接続された油路44が設けられており、その油路44と前記油路42との間に供給側電磁開閉弁PriIn が設けられている。この供給側電磁開閉弁PriIn は圧油が通るポートを有しており、この供給側電磁開閉弁PriIn を電気的に制御してそのポートを開閉することにより、油圧アクチュエータ22に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。これと同様に、油圧アクチュエータ23に接続された油路45が設けられており、その油路45と油路42との間には、供給側電磁開閉弁SecIn が設けられている。この供給側電磁開閉弁SecIn は圧油が通るポートを有しており、この供給側電磁開閉弁SecIn を電気的に制御してそのポートを開閉することにより、油圧アクチュエータ23に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。
さらに、油圧室18,19に接続された油路46が設けられており、その油路46と油路42との間には、供給側電磁開閉弁CBInが設けられている。さらに、油圧室18に接続された油路47が設けられ、油圧室19に接続された油路48が設けられている。さらに、油路46を油路47,48のいずれか一方に選択的に接続し、あるいは、油路46を油路47,48のいずれにも接続せずに遮断するマニュアルバルブ49が設けられている。このマニュアルバルブ49には、油路47,48のいずれか一方をオイルパン25に接続するドレーンポート(図示せず)が設けられている。
そして、供給側電磁開閉弁CBInを電気的に制御してそのポートを開閉するとともに、マニュアルバルブ49により油路46と油路47とが接続され、かつ、油路46と油路48とが遮断されると、油路42の圧油を油圧室18に供給することができ、かつ、油圧室19には圧油は供給されない。これに対して、マニュアルバルブ49により油路46と油路48とが接続され、かつ、油路46と油路47とが遮断されると、油路42の圧油を油圧室19に供給することができ、かつ、油圧室18には圧油は供給されない。
さらに、油圧アクチュエータ22,23および油圧室18,19から圧油を排出する経路の構成を説明する。まず、前記油路44から分岐されて油圧アクチュエータ22をオイルパン25に連通させる排出油路50が接続されている。この排出油路50には排出側電磁開閉弁PriEx が設けられている。この排出側電磁開閉弁PriEx は圧油が通るポートを有しており、排出側電磁開閉弁PriEx を電気的に制御してポートを開閉することにより、油圧アクチュエータ22から圧油を排出し、また圧油の排出を停止するように構成されている。
これと同様に、前記油路45から分岐されて油圧アクチュエータ23をオイルパン25に連通させる排出油路51が接続されている。この排出油路51には排出側電磁開閉弁SecEx が設けられている。この排出側電磁開閉弁SecEx は圧油が通るポートを有しており、排出側電磁開閉弁SecEx を電気的に制御してポートを開閉することにより、油圧アクチュエータ23から圧油を排出し、また圧油の排出を停止するように構成されている。
さらに、前記油路46から分岐されて油圧室18,19をオイルパン25に連通させる排出油路52が接続されている。この排出油路52には排出側電磁開閉弁CBExが設けられている。この排出側電磁開閉弁CBExは圧油が通るポートを有しており、排出側電磁開閉弁CBExを電気的に制御してポートを開き、かつ、マニュアルバルブ49により油路46と油路47とを接続すると、油圧室18の圧油をオイルパン25へ排出することができる。一方、排出側電磁開閉弁CBExを電気的に制御してポートを開き、かつ、マニュアルバルブ49により油路46と油路48とを接続すると、油圧室19の圧油をオイルパン25へ排出することができる。
上記の電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBIn,PriEx ,SecEx ,CBExは、ポートを閉じた閉弁状態においても油圧の漏れが生じないように構成されたバルブであり、ポペット弁やニードル弁によって構成されている。例えば、電磁コイルにより形成される磁気吸引力により動作する弁体と、磁気吸引力とは逆向きに弁体を押圧するバネと、バネの力で弁体が押し付けられ、かつ、ポートを有する弁座シート部とを備えている。これらの供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInおよび排出側電磁開閉弁SecEx ,CBExは、電磁コイルへの通電電流を制御することにより、そのポートを通る圧油の流量を制御することができるように構成された電磁比例型の流量制御弁である。より具体的には、電磁コイルへの通電電流が零アンペアであるときに、ポートが閉じられている一方、電磁コイルに通電する電流が相対的に高くなることにともない、ポートの開度が増加するように構成されている。このように、電磁開閉弁のポートの開度が制御されると、圧油の流通面積が変化する。
上記の各電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBIn,PriEx ,SecEx ,CBExのポートの開閉を制御し、あるいは、各電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBIn,PriEx ,SecEx ,CBExのポートの開度を制御するとともに、エンジン2の出力を制御し、さらには、無段変速機1の変速比およびトルク容量を制御し、さらには、クラッチC1およびブレーキB1の係合および解放を制御する電子制御装置56が設けられている。この電子制御装置56には、車速、アクセル開度、シフトポジション、エンジン回転数、無段変速機6の入力回転数および出力回転数、油路42の圧力Pacc、油圧アクチュエータ22の圧力Pin 、油圧アクチュエータ23の圧力Pout、油路46の油圧Pcb 、各電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBIn,PriEx ,SecEx ,CBExの電磁コイルへの電流を検知するセンサやスイッチの信号が入力される。
上述した油圧制御装置55の作用について説明する。油圧ポンプ24はエンジン2のクランクシャフト9に連結されているので、クランクシャフト9が回転しているときには油圧ポンプ24が駆動されて圧油を吐出する。そのクランクシャフト9の回転は、エンジン2に燃料が供給されて自律回転している場合、または車両1が惰力走行しているときに燃料の供給を止めて、車両1の走行慣性力で強制的に回転させられている場合のいずれでも生じる。すなわち、エンジン2の駆動時とエンジンブレーキ状態の被駆動時とのいずれであっても油圧ポンプ24が回転して油圧を発生する。その圧力および油量は、油圧ポンプ24の仕様、クランクシャフト9の回転数(エンジン回転数)ならびにクランクシャフト9のトルクに応じたものとなる。
そして、油圧ポンプ24が駆動されて圧油が油路26へ吐出されているときに、前記アキュムレータ43の内圧が所定値以上であることにより、アキュムレータ43に圧力を蓄える必要がないときには、プライマリレギュレータバルブ27の制御により、油路26と油路30とが接続される。このようにして、油路26と油路30とが接続されると、油圧ポンプ24から吐出された圧油が、ロックアップコントロールバルブ40を経由してトルクコンバータ4に供給される。また、油路39の圧油の一部は、油路53を経由して潤滑系統39にも供給される。前記アキュムレータ43の内圧が、油路26の油圧を超えているときは、逆止弁41が閉じられているため、油圧ポンプ24の吐出油圧がアキュムレータ43に蓄圧されることはない。
これに対して、油圧ポンプ24が駆動されて圧油が吐出されているときに、前記アキュムレータ43の内圧が所定値未満であることにより、アキュムレータ43に圧力を蓄える必要があるときには、プライマリレギュレータバルブ27の制御により、油路26と油路30とが遮断される。すると、油圧ポンプ24の吐出油圧により油路26の油圧が上昇して逆止弁41が開き、油圧ポンプ24から吐出された圧油が油路42へ供給されて、アキュムレータ43へ蓄圧される。さらに、油路26の圧油の一部は、油路32を経由して油路30にも供給される。なお、アキュムレータ43に圧力を蓄える必要があるかないかの基準となる所定値は、油路42の油圧Pacc、油圧室18,19における必要油圧、油圧アクチュエータ22,23における必要油圧などに基づいて決まる値であり、予め電子制御装置56に記憶されている。
つぎに、無段変速機6のトルク容量および変速比の制御について説明する。無段変速機6のトルク容量は、入力されたトルクを十分に伝達できる容量に制御され、これはセカンダリプーリ20の油圧アクチュエータ23に供給される油圧に応じた挟圧力によって設定される。より具体的には、アクセル開度やスロットル開度などに基づいて求められる要求駆動力に応じて挟圧力が制御され、要求駆動力が大きい場合には、油圧アクチュエータ23に供給される油圧が高くなるように制御される。その制御は、図3に示す油圧制御装置55では、油圧アクチュエータ23に連通する供給側電磁開閉弁SecIn のポートを開き、かつ、排出側開閉弁SecEx のポートを閉じておき、アキュムレータ23から油圧アクチュエータ22に油圧を供給することによりおこなわれる。このとき、圧油の供給経路となる供給側電磁開閉弁SecIn のポートを通る圧油の流量の制御は、セカンダリプーリ20の油圧アクチュエータ23における目標圧力(あるいは目標挟圧力)と、油圧アクチュエータ23における実際の油圧とに基づいておこなうことができる。
これに対して、無段変速機6に対する入力トルクの低下に基づいて挟圧力を低下させるときには、セカンダリプーリ20の油圧アクチュエータ23に連通されている排出側電磁開閉弁SecEx のポートを開き、かつ、供給側電磁開閉弁SecIn のポートを閉じて、油圧アクチュエータ23の圧油を排出側油路51を経由させてオイルパン25へドレンさせる。このとき、圧油の排出経路となる排出側電磁開閉弁SecEx のポートを通る圧油の流量の制御は、セカンダリプーリ20の油圧アクチュエータ23における目標圧力(あるいは目標挟圧力)と、その油圧アクチュエータ23における実際の油圧とに基づいておこなうことができる。
さらに、無段変速機6による変速比は、アクセル開度などの駆動要求量と車速もしくはタービン回転数などとに基づいて変速マップから求められる。したがって、プライマリプーリ12の溝幅が、目標とする変速比となるように制御される。その制御は、プライマリプーリ12における油圧アクチュエータ22に対して圧油を給排することによりおこなわれ、具体的には、供給側電磁開閉弁PriIn のポート、排出側電磁開閉弁PriEx のポートを開閉することによりおこなわれる。例えば、無段変速機6の変速比を相対的に小さくする(アップシフト)ときには供給側電磁開閉弁PriIn のポートが開かれ、かつ、排出側電磁開閉弁PriEx のポートが閉じられて、油圧アクチュエータ22に圧油が供給される。このようにして、油圧アクチュエータ22のオイル量が増加すると油圧アクチュエータ22の油圧室の圧力Pinが上昇し、プライマリプーリ12の溝幅が狭められる。
これとは逆に、無段変速機6の変速比を相対的に大きくする(ダウンシフト)ときには、排出側電磁開閉弁PriEx のポートが開かれ、かつ、供給側電磁開閉弁PriIn のポートが閉じられて、油圧アクチュエータ22のオイルがオイルパン25へドレーンされる。このようにして、油圧アクチュエータ22のオイル量が減少すると油圧アクチュエータ22の油圧室の圧力Pinが低下すると、ベルト21の張力によりプライマリプーリ12の溝幅が相対的に広げられる。
このように、無段変速機6の変速比を制御する供給側電磁開閉弁PriInおよび排出側電磁開閉弁PriExの開閉制御は、プライマリプーリ12を構成している可動シーブのストローク量や、無段変速機6の入力回転数と出力回転数との比である実際の変速比と、目標変速比との比較結果、あるいは油圧アクチュエータ22と油圧アクチュエータ23との圧力の比較結果に基づいておこなうことができる。
そして、アクセル開度および車速がほぼ一定に維持される定常走行状態では、無段変速機6の変速比および挟圧力を一定に維持することになる。その場合、各電磁開閉弁PriIn ,PriEx ,SecIn ,SecEx のポートを全て閉じ、油圧アクチュエータ22,23に圧油を封じ込める。この状態で、各電磁開閉弁PriIn ,PriEx ,SecIn ,SecEx からの油圧の漏洩は生じないから、アキュムレータ43に蓄えた油圧が低下したり、あるいは各油圧アクチュエータ22,23の圧力を維持するべくアキュムレータ43から油圧を継続して供給したりする必要がなく、したがって油圧の漏洩によるエネルギ損失が生じない。
さらに、前記クラッチC1およびブレーキB1の制御について説明する。前記電子制御装置56により検知されたシフトポジションがDポジションであるときは、クラッチC1を係合させ、かつ、ブレーキB1を解放する制御がおこなわれる。具体的には、供給側電磁開閉弁CBInのポートが開かれ、かつ、排出側電磁開閉弁CBExが閉じられる。また、マニュアルバルブ49により油路46と油路47とが接続され、油路46と油路47とが遮断される。すると、アキュムレータ43の圧力が油路46および油路46を経由して油圧室18に供給されて油圧室18の油圧が上昇し、クラッチC1が係合される一方、油圧室19の圧油がマニュアルバルブ49のドレーンポートから排出されてブレーキB1が解放される。
これに対して、シフトポジションとしてRポジションが検知されているときは、クラッチC1を解放させ、かつ、ブレーキB1を係合する制御がおこなわれる。具体的には、供給側電磁開閉弁CBInのポートが開かれ、かつ、排出側電磁開閉弁CBExが閉じられる。また、マニュアルバルブ49により油路46と油路48とが接続され、かつ、油路46と油路47とが遮断される。すると、アキュムレータ43の油圧が油路42および油路46を経由して油圧室19に供給され、その油圧室19の油圧が上昇してブレーキB1が係合される。一方、油圧室18の圧油がマニュアルバルブ49のドレーンポートから排出されて、クラッチC1が解放される。
一方、シフトポジションとしてN(ニュートラル)ポジションまたはP(パーキング)ポジションが選択された場合は、供給側電磁開閉弁CBInのポートが閉じられ、かつ、排出側電磁開閉弁CBExのポートが開かれるとともに、マニュアルバルブ49の切替により油路47,48が共に油路46に接続され、油圧室18,19の圧油が油路46,52を経由してオイルパン25に排出されて、ブレーキB1およびクラッチC1が共に解放される。
なお、クラッチC1またはブレーキB1が係合されており、供給側電磁開閉弁CBInのポートが閉じられ、かつ、排出側電磁開閉弁CBExのポートが閉じられているときに、油圧室18または油圧室19の圧油がマニュアルバルブ49で漏れたときには、供給側電磁開閉弁CBInのポートを開いてアキュムレータ43の油圧を油圧室18または油圧室19に供給することにより、油圧室18または油圧室19の油圧の低下を抑制することができる。
上記のように、図3の油圧制御装置55を備えた車両1においては、アキュムレータ43に蓄圧された圧力を放出して各油圧アクチュエータ22,23および油圧室18,19に供給することができる。また、図3に示された車両1においては、エンジン2に燃料を供給して燃焼させてそのエンジン2を自律回転させる制御の他に、フューエルカット制御を実行することもできる。例えば、車両1が惰力走行しているときには、運動エネルギがエンジン2に伝達されてエンジン2が回転させられるため、燃料の供給を停止してエンジン2を空転させる一方、車速が低下してエンジン回転数が所定回転数以下になったら、燃料の供給を開始して燃料を燃焼させ、エンジン2を自律回転させることができる。このように、車両1の惰力走行による運動エネルギでエンジン2が回転させられているときに、エンジン2への燃料の供給を停止することがフューエルカット制御である。
そして、この実施例においては、油圧ポンプ24がクランクシャフト9と動力伝達可能に接続されるため、エンジン2が自律回転するとき、そのトルクにより油圧ポンプ24を駆動することの他に、フューエルカット中に車両1の運動エネルギをクランクシャフト9に伝達し、そのクランクシャフト9のトルクにより油圧ポンプ24を駆動することもできる。さらに、この実施例においては、油圧ポンプ24から吐出された圧油の油圧をアキュムレータ43に蓄圧するにあたり、各種の制御を実行可能であり、その制御例を順次説明する。
(第1制御例)
図3に示す油圧制御装置55を有する車両1において実行可能な第1制御例を、図1のフローチャートにより説明する。まず、フューエルカット制御の実行中であるか否かが判断される(ステップS1)。フューエルカット制御の実行中である例えば、アクセル開度が全閉であること、エンジン回転数が所定値以上であること、車速が所定値以上であること、燃料噴射が停止されていることなどが全て検知されると、フューエルカット制御の実行中であることになる。このステップS1で肯定的に判断された場合は、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInの電磁コイルに供給される電流を検出する(ステップS2)とともに、全ての電流が「零」アンペアであるか否かが判断される(ステップS3)。
このステップS2,S3は、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInのポートが全て閉じられているか開かれているかを、電流から間接的に判断するための処理である。このステップS3で肯定的に判断されるということは、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInのポートが全て閉じられていることになる。そこで、ステップS3で肯定的に判断された場合は、蓄圧許可フラグをOnし(ステップS4)、ステップS1に戻る。つまり、ステップS3で肯定的に判断されるということは、油圧ポンプ24の吐出油圧が変化しても、その油圧変化が油圧アクチュエータ22,23または油圧室18,19のいずれにも伝達されることはないため、ステップS4において蓄圧許可フラグがオン(On)される。
このように、蓄圧許可フラグがオンされているときに、アキュムレータ24の内圧が所定値未満となり、アキュムレータ43に圧力を蓄える必要が生じると、プラーマリレギュレータバルブ27の入力ポート28と出力ポート29とを遮断して、油圧ポンプ24から吐出された油圧をアキュムレータ43に蓄圧する制御をおこなうことができる。また、蓄圧制御をおこなうときには供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInのポートが全て閉じられているため、油圧ポンプ24の吐出油圧が上昇しても、油圧アクチュエータ22,23の油圧、または油圧室18,19の油圧が上昇(変化)することを回避できる。したがって、油圧の上昇により車両1の駆動力が急激に変化してショックとして体感されることを抑制できる。
一方、ステップS3で否定的に判断されるということは、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInのポートのうち、少なくとも1つが開かれていることを意味する。例えば、油圧アクチュエータ22の油圧を相対的に高めて無段変速機6の変速比を相対的に小さくするアップシフトが実行するために、供給側電磁開閉弁PriIn のポートが開かれていると、ステップS3で否定的に判断される。また、油圧アクチュエータ23の油圧を相対的に高める制御を実行するために、供給側電磁開閉弁SecIn のポートが開かれていると、ステップS3で否定的に判断される。さらに、油圧室18または油圧室19の圧油漏れによる油圧低下を防止するために、供給側電磁開閉弁CBInのポートが開かれているときは、ステップS3で否定的に判断される。
このように、ステップS3で否定的に判断される状況で、プライマリレギュレータバルブ27の入力ポート28と出力ポート29とが遮断されて油圧ポンプ24の吐出油圧が上昇すると、ポートが開かれている供給側電磁開閉弁に接続されている油圧アクチュエータ22,23の油圧、または油圧室18,19の油圧が上昇する可能性がある。そこで、ステップS3で否定的に判断された場合は、蓄圧許可フラグをオフ(Off)し(ステップS5)、ステップS1に戻る。このため、アキュムレータ43の内圧が所定値未満となり、アキュムレータ43に圧力を蓄える必要が生じたとしても、「プライマリレギュレータバルブ27により入力ポート28と出力ポート29とを遮断して、油圧ポンプ24から吐出された油圧をアキュムレータ43に蓄圧をする制御」が禁止される。なお、ステップS1で否定的に判断された場合はステップS5に進む。
このように、図1のフローチャートでは、油圧ポンプ24の吐出油圧をアキュムレータ43に蓄圧する制御をおこなうと、油圧アクチュエータ22,23の油圧、または油圧室18,19の油圧が上昇(変化)するか否かを、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInの電流に基づいて間接的に判断している。そして、蓄圧制御をおこなっても油圧アクチュエータ22,23の油圧、または油圧室18,19の油圧の少なくとも1つが上昇しないと判断されると蓄圧許可フラグがOnされる。一方、蓄圧制御をおこなうと油圧アクチュエータ22,23の油圧、または油圧室18,19の油圧の少なくとも1つが上昇すると判断されると、蓄圧許可フラグがOffされる。
なお、図1のフローチャートに示されたステップS1,S2,S3の実行順序を変更すること、あるいは、ステップS1,S3の判断を同時におこなうことも可能である。つまり、ステップS1,S3の判断で共に肯定的に判断されたときにステップS4に進み、ステップS1,S3の少なくとも一方の判断で否定的に判断されたときにステップS5に進むルーチンであればよい。ここで、ステップS2の処理は、ステップS3の判断の後におこなわれることはない。このように、図1のフローチャートのステップの実行順序を変更しても前記と同様の効果を得られる。
(第2制御例)
つぎに、図3に示された車両1において、アキュムレータ43への蓄圧に関連しておこなうことの可能な他の制御例を、図4のフローチャートにより説明する。この図4のフローチャートにおいて、図1のフローチャートと同じ処理をおこなうステップについては、図1のフローチャートと同じステップ番号を付してある。この図4のフローチャートにおいては、ステップS2についで、無段変速機6の変速比が検出され(ステップS11)、ステップS3に進む。無段変速機6の変速比は、入力回転数および出力回転数から求めることができる。
そして、ステップS3で肯定的に判断されると、無段変速機6の変速比が所定値よりも高速(high)側にあるか否かが判断される(ステップS12)。具体的には、無段変速機6の変速比が所定値よりも小さいか否かを判断している。このステップS12の意味は以下のとおりである。前記蓄圧制御を実行すると、油圧ポンプ24の吐出圧が上昇するため、その油圧ポンプ24の駆動に必要なトルクが相対的に大きくなる。つまり、車両1の惰力走行時における運動エネルギにより油圧ポンプ24を駆動しているため、エンジンブレーキ力が増加することとなる。このとき、無段変速機6の変速比が相対的に大きいと、蓄圧制御の実行にともない生じる駆動輪3のトルク変動幅が相対的に大きくなり、車両1の乗員がショックとして体感される虞がある。
そこで、ステップS12は、車両1が惰力走行しているときに蓄圧制御を実行すると、エンジンブレーキ力が強められて、乗員が体感する程度のショックが生じるか否かを、無段変速機6の変速比から間接的に推定しているのである。このステップS12の判断をおこなうために、蓄圧制御を開始したときに増加するエンジンブレーキ力を、車速、無段変速機6の変速比、エンジン回転数などの条件に基づいて予めマップ化して電子制御装置56に記憶してある。そして、ステップS12で肯定的に判断されるということは、蓄圧制御を開始しても車両1の乗員が体感するほどショックが相対的に大きくならないと推定されるため、ステップS4に進む。これに対して、ステップS12で否定的に判断されるということは、蓄圧制御を実行するとショックが乗員により体感される程度に大きくなると推定されるため、ステップS5に進む。
この図4のフローチャートを実行すると、図1のフローチャートと同じ処理をおこなう部分については、図1のフローチャートと同じ効果を得られる。また、図4のフローチャートにおいては、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替える前に、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えると、エンジンブレーキ力が強められて、ショックとして体感されるか否かを推定している。そして、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えると、エンジンブレーキ力が強められて、ショックとして体感されと推定されたときは、蓄圧制御を開始することが禁止される。これに対して、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えることによりエンジンブレーキ力が強められてもショックとして体感されないと推定されるときは、蓄圧制御を開始することが許可される。
なお、図4のフローチャートに示されたステップの実行順序を変更すること、あるいは、ステップS1,S3,S12の判断を同時におこなうことも可能である。つまり、ステップS1,S3,S12の判断で共に肯定的に判断されたときにステップS4に進み、ステップS1,S3,S12のいずれかの判断で否定的に判断されたときにステップS5に進むルーチンであればよい。ここで、ステップS11の処理はステップS12の判断の後におこなわれることはなく、ステップS2の処理はステップS3の判断の後におこなわれることはない。このように、図4のフローチャートのステップの実行順序を変更しても前記と同様の効果を得られる。
(第3制御例)
つぎに、図3に示された車両1において、アキュムレータ43への蓄圧に関連しておこなうことの可能な他の制御例を、図5のフローチャートにより説明する。この図5のフローチャートにおいて、図1または図4のフローチャートと同じ処理をおこなうステップについては、図1または図4のフローチャートと同じステップ番号を付してある。なお、図5のフローチャートは、供給側電磁開閉弁のポートが開いているときに実行される。この図5のフローチャートにおいては、ステップS1で肯定的に判断された場合はステップS11を経由してステップS12に進み、そのステップS12で肯定的に判断された場合はステップS4の処理をおこなう。また、ソレノイド31の信号を検出、具体的には、オン(On)されているかオフ(Off)されているかを検出する(ステップS21)。
さらに、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えることを想定し、その切り替えをおこなうと油路42の油圧Paccがどの程度上昇するか(油圧の増大量)を推定する(ステップS22)。このステップS22の処理をおこなうために、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えたときに、油圧Paccがどの程度上昇するかを実験またはシミュレーションをおこなって得たデータが電子制御装置56に記憶されている。さらに、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替える前後で、現時点でポートが開いている供給側電磁開閉弁のポートを通る圧油の流量が同じとなるように、ポートが開いている供給側電磁開閉弁の電流を変更する処理をおこない(ステップS23)、ステップS1に戻る。
前述したように、供給側電磁開閉弁は、電流Iが相対的に多くなるほどポートの開度が増加するように構成されたバルブが用いられているため、ポートが開いていると、圧油の供給方向で供給側電磁開閉弁よりも上流の油圧が上昇すると、ポートを通る圧油の流量が相対的に多くなる。すなわち、電流Iが相対的に多くなるほどポートを通る圧油の流量が相対的に多くなる。これを、図6のマップにより説明すると、蓄圧制御がおこなわれず、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に小さいときの特性が実線で示されている。また、蓄圧制御がおこなわれ、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に大きいときの特性が破線で示されている。2つの特性は共に電流Iが相対的に多くなるほどポートを通る圧油の流量Qが多くなる。また、電流Iが同じであっても、ポートを通過する圧油の流量Qは、実線よりも破線の方が多くなる。これは、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に大きくなっているからである。
そこで、ステップS23において、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替える前後で、供給側電磁開閉弁に供給する電流を低下させる処理をおこなうと、油路42の油圧Paccが増大しても、供給側電磁開閉弁のポートを通る圧油の流量を同じにすることができる。なお、図5のフローチャートにおいて、ステップS1またはステップS12で否定的に判断された場合はステップS5に進む。
このように、図5のフローチャートにおいて、図1または図4のフローチャートと同じ処理をおこなう部分については、図1または図4のフローチャートと同じ効果を得られる。また、図5のフローチャートにおいては、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替えられる前に、油圧Paccが上昇しても油圧アクチュエータ22,23の油圧または油圧室18,19の油圧が上昇(変化)することがないように、予め供給側電磁開閉弁の電流を求めている。
したがって、図5のフローチャートのステップS23の処理の実行後に、いずれかの供給側電磁開閉弁のポートが開いているときに、アキュムレータ43の内圧が所定値未満となり、油圧ポンプ24の吐出油圧をアキュムレータ43に蓄える必要が生じると、蓄圧制御を開始して油圧Paccが上昇しても、油圧アクチュエータ22,23の油圧または油圧室18,19の少なくとも1つの油圧が上昇(変化)することを抑制できる。したがって、蓄圧制御を開始可能な領域が増える。なお、図5のフローチャートにおいては、ステップS12で肯定的に判断されたときにステップS21に進み、ステップS23の後でステップS4を経由してリターンするように、各ステップの実行順序を変えることもできる。
なお、図3に示された油圧制御装置55においては、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInとして、電流値が零アンペアであるときにポートが開かれており、電流値が増加するほどポートの開度が狭められるように構成された電磁比例型の流量制御弁(ノーマルオープン型)を用いることもできる。より具体的には、電流が最大(Max )でポートが閉となるバルブである。このような電磁比例型の流量制御弁(ノーマルオープン型)が用いられているときに図1のフローチャートを実行するときには、ステップS3において、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInの電流値が全て最大(Max )であるか否かが判断され、そのステップS3で肯定的に判断された場合はステップS4に進む一方、そのステップS3で否定的に判断された場合はステップS5に進むルーチンとすればよい。
これと同様に、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInとして、電磁比例型の流量制御弁(ノーマルオープン型)が用いられているときに、図4のフローチャートを実行するときには、ステップS3において、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInの電流値が全て最大(Max )であるか否かが判断され、そのステップS3で肯定的に判断された場合はステップS12に進む一方、そのステップS3で否定的に判断された場合はステップS5に進むルーチンとすればよい。
さらに、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInとして、電磁比例型の流量制御弁(ノーマルオープン型)が用いられているときに、図5のフローチャートを実行するときの例を説明する。供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInは、電流Iが相対的に少なくなるほどポートを通る圧油の流量Qが多くなる。より具体的に説明すると、図7のマップに示すように、「蓄圧制御なし」であり、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に小さいとき(実線)、または、蓄圧制御がおこなわれ、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に大きいとき(破線)のいずれにおいても、電流Iが相対的に少なくなるほどポートを通る圧油の流量Qが多くなる。そして、電流Iが同じであっても、ポートを通過する圧油の流量Qは、実線よりも破線の方が多くなる。これは、供給側電磁開閉弁の上流の油圧と下流の油圧との差圧が相対的に大きくなっているからである。このため、図5のステップS23において、「蓄圧制御なし」から「蓄圧制御あり」に切り替える前後で、供給側電磁開閉弁に供給する電流を多くする処理をおこなうと、油路42の油圧Paccが増大しても、供給側電磁開閉弁のポートを通る圧油の流量を同じにすることができる。
さらに、図3に示された油圧制御装置55において、供給側電磁開閉弁として、通電と非通電とを交互に繰り返し、その通電割合であるデューティ比を制御することにより、ポートを通る圧油の流量を調整することのできるデューティソレノイドバルブを用いることもできる。供給側電磁開閉弁としてデューティソレノイドバルブを用いるときは、通電と非通電とが交互に繰り返されて、デューティ比に応じた流量の圧油がポートを通る状態が「ポートの開」であり、非通電に維持されてポートが常時閉じられる状態が「ポートの閉」である。そして、供給側電磁開閉弁としてデューティソレノイドバルブを用いた車両において、図1のフローチャートを実行するときには、ステップS2において、各供給側電磁開閉弁のデューティ比を読み込む。また、ステップS3において、各供給側電磁開閉弁のポートが常時閉じられているか否かをデューティ比から間接的に判断し、そのステップS3で全ての供給側電磁開閉弁のポートが常時閉じられていると判断されたときにはステップS4に進み、そのステップS3で、少なくとも1つの供給側電磁開閉弁のポートの開閉がおこなわれていると判断されたときにはステップS5に進むルーチンを採用する。
また、供給側電磁開閉弁としてデューティソレノイドバルブを用いる車両において、図4のフローチャートを実行することもできる。具体的には、ステップS2において、各供給側電磁開閉弁のデューティ比を読み込む。また、ステップS3において、各供給側電磁開閉弁のポートが常時閉じられているか否かをデューティ比から間接的に判断し、そのステップS3で全ての供給側電磁開閉弁のポートが常時閉じられていると判断されたときにはステップS12に進み、そのステップS3で、少なくとも1つの供給側電磁開閉弁のポートの開閉がおこなわれていると判断されたときにはステップS5に進むルーチンを採用する。
さらに、供給側電磁開閉弁としてデューティソレノイドバルブを用いる車両において、図5のフローチャートを実行することもできる。具体的には、ステップS23において、蓄圧制御なしから蓄圧制御ありに切り替えて油圧Paccが上昇しても、ポートが開閉されている供給側電磁開閉弁のポートを通過する圧油の流量が変化しないように、その供給側電磁開閉弁のデューティ比を求めればよい。このように、供給側電磁開閉弁として電磁比例型の流量制御弁、またはデューティソレノイドバルブのいずれが用いられいる車両においても、図1、図4、図5の各フローチャートを実行したときの効果は同様である。
ここで、図2および図3に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、無段変速機6および前後進切換装置5が、この発明の動力伝達装置に相当し、油路42,44,45,46が、この発明の油圧供給経路に相当し、油圧ポンプ24が、この発明の油圧ポンプに相当し、アキュムレータ43が、この発明のアキュムレータに相当し、供給側電磁開閉弁PriIn ,SecIn ,CBInが、この発明のバルブに相当し、車両1が、この発明の車両に相当し、駆動輪3が、この発明の駆動輪に相当し、クランクシャフト9が、この発明の出力軸に相当する。
なお、図3に示された車両1においては、トルクコンバータ4と無段変速機6との間に前後進切換装置5が設けられているが、無段変速機6と駆動輪3との間に前後進切換装置が設けられている構成の車両においても、各フローチャートを実行可能である。さらに、ベルト型の無段変速機6に代えて、トロイダル型無段変速機を備えた車両においても各フローチャートを実行可能である。このトロイダル型無段変速機は、入力ディスクと出力ディスクとの間にパワーローラを介在させたものであり、パワーローラをトラニオンに支持した状態で、直線状に動作させてその変速比を制御するように構成されている一方、入力ディスクおよび出力ディスクに加える挟圧力を制御することにより、トルク容量が制御されるように構成されている。そして、アキュムレータに蓄圧された油圧を放出して、パワーローラを直線状に動作させる油圧室、あるいは挟圧力を制御する油圧室に供給するように構成すればよい。
さらにまた、エンジンと駆動輪との間に、変速比を段階的に変更可能な有段変速機が設けられており、その有段変速機の変速比およびトルク容量を油圧制御するように構成された車両においても、この発明を適用可能である。このような有段変速機としては、複数組の遊星歯車機構を有し、回転要素同士の接続および解放をおこなうクラッチと、回転要素を選択的に固定するブレーキを備えた公知の構造のものが挙げられる。そして、クラッチおよびブレーキの係合および解放を制御する油圧室が設けられており、その油圧室に供給する油圧をアキュムレータから供給するように構成すればよい。
また、図1のフローチャートは、この発明の請求項1ないし4の発明、請求項6の発明に対応しており、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1ないしステップS3が、この発明の判断手段に相当し、ステップS4が、この発明の許可手段に相当し、ステップS5が、この発明の禁止手段に相当する。さらに、図4のフローチャートは、この発明の請求項1ないし4の発明、請求項6の発明に対応しており、図4のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS4が、この発明の許可手段に相当し、ステップS5が、この発明の禁止手段に相当し、ステップS1,S2,S11,S3が、この発明の判断手段に相当する。さらに、図5のフローチャートは、この発明の請求項1、5、6の発明に対応しており、図5のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS4,S21,S22,S23が、この発明の許可手段に相当する。