JP5279368B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用水分散体、水分散体の製造方法、及び水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。特に印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。
特に黒インクは、文字を印刷するため、耐候性や耐水性に優れる顔料インクが用いられることが多く、黒顔料としては一般にカーボンブラックが用いられる。これらのカーボンブラック等の顔料表面に直接ポリマーを結合させ、分散性を改善する検討が行われている。
特許文献1には、顔料の官能基と反応し得る反応基を有するグラフト型重合体を顔料表面に導入して得られた顔料複合ポリマーを含有する記録媒体液が開示され、特許文献2には、サクシンイミジル基等をスペーサ基として炭素数50〜200のアルケニル基又はアルキル基を導入し、非水分散体組成物等に適用する修飾顔料生成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜2の技術は保存安定性や印字濃度、耐マーカー性を満足しうるものではない。
一方、特許文献3には、ビニルポリマーに顔料を含有させた水系インクであって、ビニルポリマーとしてマクロマーを用いたグラフトポリマーが開示されており、特許文献4には、着色剤を内包する樹脂と自己分散型カーボンブラックとを含有するインクが開示されている。
また、特許文献5及び6には、カーボンブラックを含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を含むインクであり、カーボンブラックが特定のDBP吸油量等を有するインクジェット記録用水系インクが開示されている。
特許文献7には、特定の酸価を有し、酸基の30〜80mol%を中和した水不溶性ポリマーの粒子に、pH1〜6のカーボンブラックを含有させた水分散体を用いた水系インクが開示され、特許文献8には、pH1〜5の異なる2種類のカーボンブラックを含むインクジェット記録用水分散体が記載されている。
特許文献5〜8には、印字濃度等を改善するために2種類のカーボンブラックを用いることが記載されているが、それぞれのカーボンブラックの表面性が異なるためか、長期保存時にインクの粘度が変化する等、保存安定性や印字濃度、耐マーカー性に改善の余地があった。
特開平9−272831号公報 特表2004−502856号公報 国際公開第00/39226号パンフレット 特開平11−343439号公報 特開2005−42005号公報 特開2005−42098号公報 特開2003−231831号公報 特開2006−111691号公報
本発明は、印字濃度、耐マーカー性、及び保存安定性に優れたインクジェット記録用水系インク、その水系インクに用いられる水分散体、並びにその水分散体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、表面に特定の有機基を有する表面処理カーボンブラックを含有する水分散体、及び表面に特定の有機基を有する表面処理カーボンブラックを含有する水分散体とカーボンブラックを含有する水不溶性ポリマー粒子とを含有する水分散体を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供する。
〔1〕表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を含有するインクジェット記録用水分散体(第1態様)。
Figure 0005279368
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
2−(O−CH2−CHR3n−O− (2)
(式中、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、nは平均付加モル数を示し、0〜20である。)
〔2〕さらにカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)を含有する、前記〔1〕のインクジェット記録用水分散体(第2態様)。
〔3〕下記工程I〜IIIを有するインクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程I:表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物を反応させて、表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を得る工程
工程II−1:水不溶性ポリマー、カーボンブラック(x)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の分散体を得る工程
工程II−2:工程II−1で得られた分散体から有機溶媒を除去して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を得る工程
工程III:工程II−2で得られた水分散体と工程Iで得られた表面処理カーボンブラック(Y)とを混合して、水分散体を得る工程
〔4〕前記〔3〕の方法により得られるインクジェット記録用水分散体(第3態様)。
〔5〕前記〔1〕、〔2〕又は〔4〕の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
本発明のインクジェット記録用水分散体を含有する水系インクは、印字濃度、耐マーカー性及び保存安定性に優れている。
<第1態様のインクジェット記録用水分散体>
本発明の第1態様のインクジェット記録用水分散体は、表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を含有することを特徴とする。
Figure 0005279368
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
2−(O−CH2−CHR3n−O− (2)
(式中、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、nは平均付加モル数を示し、0〜20である。)
〔表面処理カーボンブラック(Y)〕
本発明における、一般式(1)で表される1種類以上の有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を含有する水分散体がインクに含まれると、そのインクが紙表面に印刷された際に、分散しているカーボンブラック表面の有機基同士の相互作用により強固な疎水凝集を起こし易く、印字濃度が向上し、耐マーカー性も向上すると考えられる。
表面処理カーボンブラック(Y)は、表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物を反応させることによって得ることが好ましい。
この反応は、表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物が接触するような条件で行えばよいが、好ましくは反応温度40〜95℃で0.5〜10時間、水等の溶媒中で行うことが好ましい。反応の進行は、実施例記載の酸性基量の測定によって確認することができる。
一般式(1)で表される有機基、すなわち一般式(1)で表される酸素原子を含む炭化水素基において、R1は、好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基、又は一般式(2)で表される有機基であり、より好ましくは一般式(2)で表される有機基である。
一般式(2)で表される有機基、すなわち一般式(2)で表される酸素原子を含む炭化水素基において、R2は、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜7の炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基の1価の炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、シクロヘキシル基等の1価の炭素数3〜6の脂環族基、フェニル基、ベンジル基等の1価の炭素数6〜7の芳香族基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
3は、一般式(2)で表される同一有機基中に1種類でもよく、2種類以上が含まれていてもよい。好ましくは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
nは平均付加モル数を示し、0〜20であり、0〜10が好ましく、0〜5がより好ましい。nがこの範囲であると、水分散体およびインクの粘度が適正になる。
(カーボンブラック(y))
表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)のカーボンブラックの種類は、ハイカラーファーネスブラック、ミディアムカラーファーネスブラック等のファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。カーボンブラックは、オゾン、硝酸、過酸化水素、窒素酸化物等の酸化剤を使用する気相又は液相酸化法、又はプラズマ処理等の表面改質法により酸化処理することもできる。
カーボンブラック(y)の酸性基量は、前記エポキシ化合物を必要量反応させるために、200〜1000μmol/gが好ましく、より好ましくは300〜1000μmol/gであり、更に好ましくは500〜900μmol/gである。
酸性基としては、カーボンブラックを水系媒体に安定に分散しうる程度に十分に親水性が高いものであれば、任意のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(-SO31)、ホスホン酸基(−PO31 2)、リン酸基(−OPO(OM12)、−PO3HM1、−SO21、−SO2NH2 、−SO2 NHCOR4、又はそれらの解離したイオン形(−COO-、-SO3 -、−PO3 2-、−OPO(O-2)等からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸性基が挙げられる。
上記化学式中、M1は、同一でも異なってもよく、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アルカリ土類金属;アンモニウム基;又はモノメチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基;モノエチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基;モノメタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基等の有機アンモニウムである。
4は、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基である。これらの中では、インク中における分散安定性の観点から、カルボキシル基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO31)が好ましい。
酸性基量の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
カーボンブラック(y)は、表面処理カーボンブラック(Y)の水分散体及びインク中での分散安定性を高める観点から、いわゆる自己分散型カーボンブラックが好ましい。自己分散型カーボンブラックは、表面に酸性基を多く有するため、エポキシ化合物を必要量反応させたとしても、得られた表面処理カーボンブラック(Y)はインク中へ安定に分散することができる。
ここで、自己分散型カーボンブラックとは、アニオン性の親水性官能基の1種以上を直接又は他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能であるカーボンブラックを意味する。「分散可能」とは、分散剤なしに水中(25℃、固形分10%)で30日間、目視で確認できる沈殿物がなく、安定に分散していることを意味する。ここで、他の原子団としては、炭素原子数1〜24、好ましくは炭素原子数1〜12のアルカンジイル基、置換基を有してもよいフェニレン基又は置換基を有してもよいナフチレン基が挙げられる。
アニオン性親水性官能基としては、前記の酸性基が挙げられる。
カーボンブラックを自己分散型カーボンブラックとするには、上記のアニオン性親水性官能基の必要量を、カーボンブラックに化学結合させればよい。そのような方法としては、任意の公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第5571311号明細書、同第5630868号明細書、同第5707432号明細書、J.E.Johnson,Imaging Science and Technology's50th Annual Coference(1997)、Yuan Yu, Imaging Science and Technology's 53th Annual Conference(2000)、ポリファイル,1248(1996)等に記載されている方法が挙げられる。
より具体的には、硝酸、硫酸、過硫酸、ペルオキソ二硫酸、次亜塩素酸、クロム酸のような酸化性を有する酸類及びそれらの塩等あるいは過酸化水素、窒素酸化物、オゾン等の酸化剤によってカルボキシ基を導入する方法、過硫酸化合物の熱分解によってスルホン基を導入する方法、カルボキシ基、スルホン基等を有するジアゾニウム塩化合物によって上記の酸性基を導入する方法等があるが、これらの中では、印字濃度の観点から前記酸化性を有する酸類による液相酸化の方法が好ましい。
カーボンブラック(y)の揮発分は、印字濃度の観点から、好ましくは5%を超え、より好ましくは6%以上である。揮発分は、950℃、7分間加熱して得られた値(ASTM D1620−60に準拠)を用いる。
商業的に入手できるカーボンブラック(y)の原料となる酸性基量の多いカーボンブラックの具体例としては、キャボット社製のCAB−O−JET 200、同300や、オリヱント化学工業株式会社製のBONJET CW−1(酸性基量470)、同CW−2、東海カーボン株式会社製のAqua−Black 162等が挙げられる。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を1個有する化合物が好ましい。
エポキシ化合物の使用量は、印字濃度及び保存安定性の観点から、カーボンブラック(y)100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、0.7重量部以上がより好ましく、0.85重量部以上がより好ましく、1重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上が更に好ましい。また、保存安定性の観点から、9.5重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、7.5重量部以下がより好ましく、7.0重量部以下がより好ましく、6.5重量部以下がより好ましく、6重量部以下が更に好ましい。上記観点から、エポキシ化合物の使用量は、0.5〜9.5重量部が好ましく、0.5〜8重量部がより好ましく、0.7〜8重量部がより好ましく、0.85〜7.5重量部がより好ましく、1〜7.0重量部がより好ましく、1〜6.5重量部がより好ましく、1.5〜6重量部が更に好ましい。
エポキシ化合物の分子量は、反応のし易さ、及び得られる水分散体及びインクの保存安定性の観点から、60〜2000が好ましく、100〜1500がより好ましく、150〜1000が更に好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルポリエチレンオキシドグリシジルエーテル、アルキルポリプロピレンオキシドグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキシレンオキシド、1−フェニルプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド等が挙げられる。
商業的に入手できるエポキシ化合物の具体例としては、ナガセケムテックス社製のデナコールEX−111(アリルグリシジルエーテル)、同EX−121(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、同EX−141(フェニルグリシジルエーテル)、同EX−145(フェノールポリエチレンオキシド(5モル)グリシジルエーテル)、同EX−146(p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル)、同EX−171(ラウリルポリエチレンオキシド(15モル)グリシジルエーテル)、同EX−192(C11〜C15アルキルグリシジルエーテル)等が挙げられる。
<第2態様のインクジェット記録用水分散体>
本発明の第2態様のインクジェット記録用水分散体は、前記の表面処理カーボンブラック(Y)、及びカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)を含有することを特徴とする。
水分散体に、表面処理カーボンブラック(Y)及びカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の両者が含有されると、水分散体調製時に、表面電荷や親水性疎水性等のポリマー粒子(X)との表面性のバランスを保つことができ、分散安定性及び保存安定性を向上させることができる。さらにインクとして紙表面に印刷した際には、耐マーカー性、印字濃度が向上する。
〔カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)〕
本発明において、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)とは、カーボンブラックがポリマー粒子に含有されたものを意味するが、好ましくは、カーボンブラック(x)を水不溶性ポリマーで被覆した粒子である。
(カーボンブラック(x))
カーボンブラック(x)のカーボンブラックの種類は、ハイカラーファーネスブラック、ミディアムカラーファーネスブラック等のファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
カーボンブラック(x)は、ポリマー粒子に含有され易くして、保存安定性に優れる水分散体及び水系インクを得る観点から、酸性基量が少ないものが好ましい。この観点から、カーボンブラック(x)の酸性基量は、0〜200μmol/gが好ましく、0〜100μmol/gがより好ましく、0〜50μmol/gが更に好ましい。
なお、酸性基は任意のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(-SO31)、ホスホン酸基(−PO31 2)、リン酸基(−OPO(OM12)、−PO3HM1、−SO21、−SO2NH2 、−SO2 NHCOR4、又はそれらの解離したイオン形(−COO-、-SO3 -、−PO3 2-、−OPO(O-2)等からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸性基が挙げられる。
上記化学式中、M1は前記と同じであり、同一でも異なってもよい。R4も前記と同じであり、インク中における分散安定性の観点から、カルボキシル基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO31)が好ましい。
カーボンブラック(x)のDBP(ジブチルフタレート)吸油量は、水不溶性ポリマーとの親和性を向上させる観点から、好ましくは20〜200ml/100gであり、より好ましくは30〜150ml/100gである。ここで、カーボンブラックのDBP吸油量は、その嵩高さと正の相関があり、DBP吸油量がこの範囲内であると、水不溶性ポリマーとの親和性が高まり、保存安定性に優れる水分散体及びインクが得られる。なお、DBP吸油量はISO 1126(JIS K6217−4)に基づいた値であり、カーボンブラック100gあたりのジブチルフタレートの吸油量(ml)で表される。以下において「吸油量」はDBP吸油量を意味し、単位はml/100gである。
商業的に入手できるカーボンブラック(x)の具体例としては、キャボット社製のMONARCH800(酸性基量0μmol/g、吸油量68)、MONARCH900(酸性基量0、吸油量64)、MONARCH880(酸性基量0、吸油量105)、MONARCH1100(酸性基量0、吸油量50)、REGAL330R(酸性基量0、吸油量71)、同415R(酸性基量0、吸油量52);デグサ社製のNIPex85(酸性基量0、吸油量48)、NIPex75(酸性基量0、吸油量49)、NIPex70(酸性基量0、吸油量123)、Printex35(酸性基量0、吸油量42)、Printex55(酸性基量0、吸油量46)、Printex75(酸性基量0、吸油量49)、Printex85(酸性基量0、吸油量48)、S−160(酸性基量57、吸油量150)、FW1(酸性基量114、吸油量170);三菱化学株式会社製の#85(酸性基量0、吸油量56)、同#2600(酸性基量0、吸油量77)、同#45L(酸性基量0、吸油量45)、MCF88(酸性基量0、吸油量55);コロンビヤ・カーボン株式会社製のReven2000(酸性基量0、吸油量70)、Reven1500(酸性基量0、吸油量65)等が挙げられる。
表面処理カーボンブラック(Y)の酸性基量とカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の酸性基量の差〔|(Y)−(X)|〕は、表面電荷や親水性疎水性等の表面性のバランスを保ち、保存安定性、及び耐マーカー性を向上させる観点から、0〜300μmol/gが好ましく、0〜250μmol/gがより好ましく、10〜220μmol/gがより好ましく、50〜220μmol/gが更に好ましい。
表面処理カーボンブラック(Y)及びカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)をそれぞれ2種類以上用いた場合、それぞれの重量割合に応じた酸性基量の平均値を求め、平均値の差として算出する。
本発明の水分散体中における、表面処理カーボンブラック(Y)に対するカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の重量比〔(X)/(Y)〕は、両者の相乗効果を発揮させる観点から、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは50/50〜70/30である。
〔水不溶性ポリマー〕
本発明に用いられる水不溶性ポリマーは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である水不溶性ポリマーが好ましい。溶解量は、ポリマーが塩生成基の種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)(以下「(a)成分」ともいう)と、マクロマー(b)(以下「(b)成分」ともいう)と、炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c)(以下「(c)成分」ともいう)及び/又は芳香環含有モノマー(d)(以下「(d)成分」ともいう)由来の構成単位とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるグラフトポリマーが好ましい。このグラフトポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位と、(c)成分由来の構成単位及び/又は(d)成分由来の構成単位を有する。より好適なポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(c)成分由来の構成単位及び/又は(d)成分由来の構成単位を主鎖に有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである。
(塩生成基含有モノマー(a))
塩生成基含有モノマー(a)は、得られる水分散体の分散安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられるが、特にカルボキシ基が好ましい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(マクロマー(b))
マクロマー(b)は、カーボンブラックとの吸着性を高め、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の分散安定性を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、マクロマー(b)の数平均分子量は、カラムとして東ソー株式会社製、G4000HXL+G2000HXLを用い、溶離液として50mM CH3COOH/1級を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロマー(b)の中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、カーボンブラックとの親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
マクロマー(b)は、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(3)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)-COOC36-〔Si(CH32O〕t-Si(CH33 (3)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
(アルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c))
炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基含有モノマー(c)は、保存安定性、画像濃度、画像均一性の向上の観点から用いられる。(c)成分としては、下記式(4)で表される、炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
CH2=CHR5COOR6 (4)
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6は炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
式(2)において、R6は、好ましくは炭素数14〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基である。
(c)成分の好適例としては、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)パルミチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
(芳香環含有モノマー(d))
モノマー混合物には、印字濃度、画像均一性の向上の観点から、芳香環含有モノマー(d)が含有されることが好ましい。(d)成分としては、炭素数6〜22の芳香環含有モノマーが好ましい。
(d)成分の好適例としては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー(d−1成分)、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレート(d−2成分)が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられる。
(d)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(d−1成分)が好ましく、スチレン系モノマー(d−1成分)としては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(d)成分中の(d−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(d−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(d)成分中の(d−2)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、(d−1)成分と(d−2)成分を併用することも好ましい。
モノマー混合物には、更に、水酸基含有モノマー(e)(以下「(e)成分」ともいう)が含有されていてもよい。水酸基含有モノマー(e)は、分散安定性を高めるという優れた効果を発現させるものである。
(e)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
(モノマー(f))
モノマー混合物には、更に、下記式(5)で表されるモノマー(f)(以下「(f)成分」ともいう)が含有されていてもよい。
CH2=C(R7)COO(R8O)q9 (5)
(式中、R7は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R8は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R9は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜11の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよいアリール基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(f)成分は、吐出性を向上するという優れた効果を発現する。
式(3)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
7の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
8O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
9の好適例としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の脂肪族アルキル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
(f)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(5)中のqの値を示す。以下、同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、保存安定性を高める観点から、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
商業的に入手しうる(e)、(f)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B等が挙げられる。
上記(a)〜(f)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
水不溶性ポリマーの製造時における、上記(a)〜(f)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は該ポリマー中における(x)〜(f)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特にカーボンブラックとの相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、保存安定性、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは2〜70重量%、より好ましくは3〜60重量%である。
(e)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(f)成分の含有量は、分散安定性、保存安定性の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(c)成分+(d)成分〕の合計含有量は、印字濃度向上、画像均一性の観点から、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%、30〜60重量%である。
また、〔(a)成分+(e)成分+(f)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/{(b)成分+(c)成分+(d)成分}〕の重量比は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.08〜0.67、更に好ましくは0.1〜0.5である。
〔水不溶性ポリマーの製造〕
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、印字濃度及びカーボンブラックの分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万が更に好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す方法により測定する。
本発明で用いられるポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の塩生成基を有している場合は水分散体調製の際に、中和剤により中和して用いる。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
塩生成基の中和度は、ポリマー中の全塩生成基に対する添加された中和剤のモル比率によって示され、10〜200%であることが好ましく、20〜150%であることがより好ましく、50〜150%であることが更に好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
<第3態様のインクジェット記録用水分散体>
本発明の第3態様のインクジェット記録用水分散体は、下記工程I〜IIIを有する方法により得られることを特徴とする。
工程I:表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物を反応させて、表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を得る工程
工程II−1:水不溶性ポリマー、カーボンブラック(x)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の分散体を得る工程
工程II−2:工程II−1で得られた分散体から有機溶媒を除去して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を得る工程
工程III:工程II−2で得られた水分散体と工程Iで得られた表面処理カーボンブラック(Y)とを混合して、水分散体を得る工程
なお、工程IIIは工程Iで得られた表面処理カーボンブラック(Y)と工程II−2で得られたカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)を混合する工程であるため、工程Iと工程IIはこの順に行ってもよいし、逆に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
本発明では、工程Iによって、酸性基量の多いカーボンブラックの酸性基をエポキシ化合物を反応させて、炭化水素基へと置き換え、さらには工程IIで得られたポリマー粒子と混合する。工程Iの表面処理を行うことによって、保存安定性と印字濃度及び耐マーカー性の両立を達成することができる。この原因は明らかではないが、カーボンブラックの酸性基量と同時に含有されるポリマー粒子の表面性を合わせることで、保存安定性が良くなり、表面が疎水的になることによって、紙上に印刷され、インクの濃度が上がった際に、疎水相互作用によって粘度増加や固化が急激に起こり、印字濃度及び耐マーカー性が向上するものと考えられる。
(工程I)
工程Iは、表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物を反応させて、表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を得る工程である。
エポキシ化合物の使用量は前記のとおりであるが、用いるエポキシ化合物により、反応に用いる触媒、溶媒、温度、時間を適宜決定することができる。
反応方法としては、保存安定性、製造し易さの観点から、該カーボンブラック(y)を溶媒へ分散させておいてエポキシ化合物を混合し、反応させる方法が好ましい。溶媒はカーボンブラックを均一に分散しうるものであればよいが、水であることが好ましい。工程Iにより、印字濃度を維持したまま保存安定性が向上させた表面処理カーボンブラック(Y)を得ることができる。
反応時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜5時間であり、反応温度は、好ましくは40〜95℃、より好ましくは70〜90℃である。
(工程II−1)
工程II−1では、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次にカーボンブラック(x)、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、カーボンブラック(x)の量は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合は中和剤を用いることが好ましいが、中和度に特に制限はない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えばpHが4.5〜10であることが好ましい。水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては前記のものが挙げられる。また、ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、水100gに対する溶解量が20℃において、5g以上のものが好ましく、10g以上のものが更に好ましく、より具体的には5〜80gのものが好ましく、10〜50gのものが更に好ましい。特に、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。
工程II−1における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけでカーボンブラックを含有する水不溶性ポリマーの分散体の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、該ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程II−1の分散温度は、5〜50℃が好ましく、10〜35℃が更に好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、カーボンブラックの小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
(工程II−2)
工程II−2は、工程II−1で得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去して水系にすることで、カーボンブラック(x)含有する水不溶性ポリマーからなるカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)(以下、単に「ポリマー粒子(X)」ともいう)の水分散体を得る工程である。得られた水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されている。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
得られた水分散体は、ポリマー粒子(X)が水を主媒体とする中に分散しており、カーボンブラック(x)の表面には、水不溶性ポリマーが付着しており、被覆されていることが好ましい。
ここで、ポリマー粒子(X)の被覆形態は特に制限はなく、例えば、(1)カーボンブラック(x)の表面に、水不溶性ポリマーがバインダーのように付着して、粒子を形成して分散されている形態、(2)カーボンブラック(x)が水不溶性ポリマーに内包されて分散されている形態、(3)水不溶性ポリマー粒子の表面にカーボンブラック(x)が露出して分散されている形態、(4)カーボンブラック(x)の表面に水不溶性ポリマーが部分付着して分散されている形態等の混合形態が挙げられる。
(工程III)
工程IIIは、工程II−2で得られたポリマー粒子(X)の水分散体と工程Iで得られた表面処理カーボンブラック(Y)を混合して、水分散体を得る工程である。
工程IIIにおける混合は、ポリマー粒子(X)及び表面処理カーボンブラック(Y)をどのような順序で加えてもよく、適度な粘度等を得るために、水又は乾燥防止のためのポリオールのような湿潤剤を加えることで水分散体を得ることができる。水分散体は必要に応じて濾過し、インクジェット印刷時に目詰まり等の原因となる大粒径の不純物を除去したり、腐敗防止のために、防腐剤や防黴剤を加えて、加熱処理を行うことができる。
〔インクジェット記録用水分散体及び水系インク〕
本発明の水系インクは、本発明の水分散体を含有し、必要により、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤の混合方法に特に制限はない。
インクジェット記録用水分散体及び水系インク中における、各成分の含有量は、印字濃度、定着性、耐マーカー性、画像均一性、吐出信頼性及び保存安定性の観点から次のとおりである。
ポリマー粒子(X)と表面処理カーボンブラック(Y)の合計含有量は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%である。
水の含有量は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
水分散体及び水系インク中の前記分散形態のポリマー粒子(X)と表面処理カーボンブラック(Y)の平均粒径は、吐出信頼性、分散安定性等の観点から、好ましくは40〜400nm、より好ましくは50〜300nm、更に好ましくは60〜200nmである。なお、平均粒径の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
水分散体の固形分10重量%における粘度(20℃)は、水系インクとした時に良好な粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sがより好ましい。また、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sがより好ましい。なお、水分散体及び水系インクの粘度の測定は、E型粘度計を用いて、測定温度20℃、測定時間1分、回転数100rpm、標準ローター(1°34′×R24)使用の条件で測定する。
本発明の水分散体及び水系インクの表面張力(20℃)は、水分散体としては、好ましくは30〜70mN/m、より好ましくは35〜68mN/mであり、水系インクとしては、好ましくは25〜50mN/m、より好ましくは27〜45mN/mである。また、水系インクのpHは4〜10が好ましい。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量、平均粒子径、及び酸性基量の測定は以下のとおり行った。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
標準物質としてポリスチレン、カラムとして東ソー株式会社製、G4000HXL+G2000HXLを用い、溶離液として50mM CH3COOH/1級を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。
(2)水系インク中の前記分散形態のポリマー粒子(X)と表面処理カーボンブラック(Y)の平均粒径の測定
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析) を用いて測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行った。
(3)酸性基量の測定
酸性基量は、NaOHやKOH等の強アルカリと反応した量として、以下の方法により求めた。
(測定条件)
装置:京都電子工業株式会社製、電位差自動滴定装置、AT−610
滴定条件:0.01N−HCl、滴定量0.02ml、間欠時間30秒、25℃
0.01N−NaOHは和光純薬製0.01mol/L水酸化ナトリウム(容量分析用)、0.01N−HClは和光純薬製0.01mol/L塩酸(容量分析用)を使用した。
(測定手順)
カーボンブラックの水分散体を固形分で0.05gとなるように精秤し、イオン交換水を加え50mlとし、0.01N−NaOHを1.5ml(過剰量)添加し30分間攪拌することにより、酸性基を全てNa塩とした。このアルカリ分散液に、0.01N−HClを0.02gずつ、30秒間隔で、分散液を攪拌しながら滴下し、pHを測定する。過剰アルカリが中和される中和点(変曲点1)を起点として、続いて起こる中和変曲点の中で最も酸性よりの中和点(最終変曲点2)を終点としたときの、最終変曲点2−変曲点1の間の0.01N−HClの使用量から粒子の酸性基量を算出し、固形分1g当りの当量として求めた。測定は20℃で行った。
また、カーボンブラック含有ポリマー粒子の酸性基量は、カーボンブラック含有ポリマー粒子の水分散体を固形分で0.05gとなるように精秤し、以下は前記と同様に行った。
製造例1及び2(水不溶性ポリマー溶液の製造)
反応容器内に、メチルエチルケトン10部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.02部、及び表1に示す初期仕込みモノマー(重量部表示)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、初期仕込みモノマー混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す滴下モノマー(重量部表示)を仕込み、次いで前記の重合連鎖移動剤0.08部、メチルエチルケトン80部及び重合開始剤〔2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〕0.5部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、滴下モノマー混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の滴下モノマー混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の反応液の液温を75℃で2時間維持した後、前記の重合開始剤0.6部をメチルエチルケトン10部に溶解した溶液を反応容器内の反応液に加え、更に75℃で1時間を3回繰返した後、85℃で2時間熟成させ、水不溶性ポリマー溶液を得た。
得られた水不溶性ポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって水不溶性ポリマーを単離し、その重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の各モノマーの数値は、有効分の重量部を示す。
Figure 0005279368
製造例3(表面処理カーボンブラック(Y)の製造)
ペルオキソ二硫酸塩で酸化処理された自己分散型カーボンブラック(酸性基量800μmol/g、DBP吸油量105ml/100g、固形分濃度15重量%)80部に対してエポキシ化合物としてメチルグリシジルエーテル(分子量:88、和光純薬工業株式会社製)0.46部を加え、イオン交換水2.59部を添加して80℃で3時間攪拌して表面に一般式(1)で表される有機基(R1=一般式(2)で表される有機基、R2=水素原子、n=0)を有する表面処理カーボンブラック(Y)の水分散体を得た。このときのカーボンブラック100部に対するエポキシ化合物の使用量は3.8部であった。
製造例4
製造例3のメチルグリシジルエーテルの使用量をカーボンブラック100部に対して2.1部にした以外は、製造例3と同様の方法で水分散体を得た。
製造例5
製造例3のメチルグリシジルエーテルの使用量をカーボンブラック100部に対して1.6部にした以外は、製造例3と同様の方法で水分散体を得た。
製造例6(カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体の製造)
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部を、メチルエチルケトン71.5部に溶かし、その中にイオン交換水209.7部と中和剤(5N−水酸化ナトリウム水溶液)を酸価に対して65%加えた混合物で塩生成基を中和し、更に表2に示すカーボンブラック(x)75部を加え、ディスパーを用いて分散した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて180MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散体から、エバポレーターを用いて減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体(固形分量20%)を得た。
得られたカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の平均粒径を表2に示す。
製造例7
製造例6のポリマー溶液の代わりに製造例2で得られたポリマー溶液を用いた以外は、製造例6と同様にしてカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を得た。
実施例1及び比較例1〜2(水系インクの製造)
前記で得られた表面処理カーボンブラック(Y)の水分散体又はカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を顔料分で8部、グリセリン10部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、アセチレングリコールEO付加物(n=10)0.5部を加え、イオン交換水で全量を100部となるように調整し、全体を均一になるように混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インクを得た。
実施例2〜6及び比較例3(水系インクの製造)
前記で得られた表面処理カーボンブラック(Y)の水分散体と、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体とを、顔料分で8部となるように混合した以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。表面処理カーボンブラック(Y)の水分散体とカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の重量比を表2に示す。
実施例7(水系インクの製造)
製造例7で得られたカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を用いた以外は、実施例2と同様にして水系インクを得た。
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
(1)印字濃度
市販のセイコーエプソン株式会社のインクジェットプリンター(品番:EM−930C、ピエゾ方式)を用いて、普通紙「4024」(富士ゼロックス株式会社製)に、ベタ印字し、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所を測定し、平均値を求めた。
(2)耐マーカー性
前記プリンターを用い、前記(1)と同じ普通紙「4024」に対し、テキスト印字し、6時間経過後、市販の蛍光ペン(ゼブラ株式会社製、商品名:ビームライナーS BM−151)でテキスト画像面をなぞった場合、印字サンプルの汚れ度合いを目視により観察し、以下の判断基準に基づいて耐マーカー性を評価した。
〔判断基準〕
A:蛍光ペンでなぞっても尾引き(汚れ)がない。
B:蛍光ペンでなぞると若干尾引きする。
C:蛍光ペンでなぞるとひどい尾引きが発生する。
(3)保存安定性の評価
水系インクをガラス製密閉容器に充填し、70℃、30日保存後のインク粘度をE型粘度計(東機産業株式会社製、RE80L)を用いて20℃で粘度を測定し、下記式より粘度変化率を求めた(数値が100%に近い方が、保存安定性が良い)。
保存安定性(%)=(〔保存後の粘度〕/〔保存前の粘度〕)×100
Figure 0005279368
表2から、実施例1の水系インクは、比較例1の水系インクに比べて、耐マーカー性に優れており、比較例1及び2の水系インクに比べて、普通紙での印字濃度に優れている。実施例2〜7の水系インクは、比較例3の水系インクに比べて、印字濃度及び耐マーカー性が同等又は優れ、保存安定性も優れていることが分かる。

Claims (7)

  1. 表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)、及びカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)を含有してなり、表面処理カーボンブラック(Y)の酸性基量とカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の酸性基量の差〔|(Y)−(X)|〕が300μmol/g以下である、インクジェット記録用水分散体。
    Figure 0005279368
    (式中、R1は、水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
    2−(O−CH2−CHR3n−O− (2)
    (式中、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、nは平均付加モル数を示し、0〜20である。)
  2. 表面処理カーボンブラック(Y)が、表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物とを反応させて得られるものである、請求項に記載のインクジェット記録用水分散体。
  3. カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)が、カーボンブラック(x)を水不溶性ポリマーで被覆したものである、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水分散体。
  4. カーボンブラック(y)の酸性基量が200〜1000μmol/gである、請求項2又は3に記載のインクジェット記録用水分散体。
  5. 下記工程I〜IIIを有するインクジェット記録用水分散体の製造方法。
    工程I:表面に酸性基を有するカーボンブラック(y)とエポキシ化合物を反応させて、表面に一般式(1)で表される有機基を有する表面処理カーボンブラック(Y)を得る工程
    工程II−1:水不溶性ポリマー、カーボンブラック(x)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の分散体を得る工程
    工程II−2:工程II−1で得られた分散体から有機溶媒を除去して、カーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の水分散体を得る工程
    工程III:工程II−2で得られた水分散体と工程Iで得られた表面処理カーボンブラック(Y)とを混合して、表面処理カーボンブラック(Y)の酸性基量とカーボンブラック含有ポリマー粒子(X)の酸性基量の差〔|(Y)−(X)|〕が300μmol/g以下である水分散体を得る工程
  6. 請求項に記載の方法により得られるインクジェット記録用水分散体。
  7. 請求項1〜4及びのいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
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